特許第5984266号(P5984266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社椿本チエインの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984266
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】チェーンガイド
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/08 20060101AFI20160823BHJP
   F16H 7/18 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   F16H7/08 B
   F16H7/18 B
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-156746(P2013-156746)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-25535(P2015-25535A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2015年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100092200
【弁理士】
【氏名又は名称】大城 重信
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(72)【発明者】
【氏名】近能 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 祐一郎
【審査官】 塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−002952(JP,U)
【文献】 特開2003−139205(JP,A)
【文献】 特開2000−230611(JP,A)
【文献】 実開平01−139159(JP,U)
【文献】 特開2002−070965(JP,A)
【文献】 特開2009−150428(JP,A)
【文献】 特開2003−214506(JP,A)
【文献】 特開2003−130155(JP,A)
【文献】 特開2006−002810(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0139236(US,A1)
【文献】 特開2002−266964(JP,A)
【文献】 米国特許第05045032(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0128100(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/00−7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行するチェーンを摺動案内する案内シューと、該案内シューをチェーン走行方向に沿って補強するプレートとを備えたチェーンガイドであって、
前記案内シューが、チェーン走行方向に延びる走行案内部と、該走行案内部の裏面側に前記プレートを挿入可能なプレート収容部とを有し、
前記プレートが、取付対象に取り付けるために厚み方向に貫通した取付孔を有し、
前記案内シューは、前記プレート収容部に挿入された前記プレートの前記取付孔が露出する取付領域を有し、
前記プレートの厚み方向の側方には、前記取付孔を延長するように突出した軸方向延長部を有し、前記プレートの取付孔の内面が、前記取付孔の軸方向に前記プレートの厚みより長いことを特徴とするチェーンガイド。
【請求項2】
前記案内シューのプレート収容部が、前記取付領域近傍で前記プレートの取付孔と前記取付孔の軸方向で重複しないように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のチェーンガイド。
【請求項3】
前記プレートの取付孔の内面が、取付対象に取り付けるための取付軸の挿入方向奥側に延びるように形成され、
前記内面の取付対象に取り付けるための取付軸の挿入方向手前側の角部が、面取り、あるいは、R面に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチェーンガイド。
【請求項4】
前記案内シューが、テンショナに対応する位置にテンショナ当接領域を有し、
前記プレートが、前記テンショナ当接領域近傍で前記プレート収容部から下方に露出するテンショナ当接面を有し、
前記プレートのテンショナ当接面が、前記取付孔の軸方向に前記プレートの厚みより長いことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のチェーンガイド。
【請求項5】
前記プレートのテンショナ当接面が、前記プレートの前記取付孔の軸方向の両側方に延びるように形成されていることを特徴とする請求項4に記載のチェーンガイド。
【請求項6】
前記プレートのテンショナ当接面が、前記プレートの下方を一方の側方と他方の側方に2回折り返して形成されていることを特徴とする請求項5に記載のチェーンガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行するチェーンを摺動案内する案内シューと、該案内シューをチェーン走行方向に沿って補強するプレートとを備えたチェーンガイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スプロケット間を走行するチェーンを安定させ張力を適正に保持するために、走行するチェーンを摺動案内する案内シューを備えたチェーンガイドを用いることは慣用されている。
例えば、図19に示すように、エンジンルームE内のクランク軸とカム軸の夫々に設けたスプロケットS1、S2間に無端懸回したローラチェーン等の伝動チェーンCHを走行させるエンジンのタイミングシステムであって、タイミングチェーンCHがエンジンルームE内のクランク軸に取り付けた駆動スプロケットS1とカム軸に取り付けた一対の従動スプロケットS2との間に無端懸回されており、このタイミングチェーンCHが揺動するチェーンガイド(揺動ガイド)500とチェーンガイド(固定ガイド)600とによってガイドされるタイミングシステムが公知である。
【0003】
この公知のタイミングシステムでは、固定ガイド600は、2つの固定用の取付軸QでエンジンルームE内に固定され、揺動ガイド500は、揺動用の取付軸Pを中心にタイミングチェーンCHの懸回平面内で揺動可能にエンジンルームE内に取り付けられている。
チェーンテンショナTは、揺動ガイド500を押圧することでタイミングチェーンCHの張力を適正に保持するとともに振動を抑制している。
このようなタイミングシステムに用いられる公知のチェーンガイド(揺動ガイド)500、チェーンガイド(固定ガイド)600は、合成樹脂で一体に形成されているためチェーンガイドの剛性や耐久性を確保するためにはガイド本体を大きくして剛性や耐久性を向上させる必要があるが、エンジンルームEをコンパクトに設計することの障害となるという問題があった。
【0004】
そこで、図20乃至図22に示すように、チェーンガイド500が、走行するチェーンを摺動案内する案内シュー510と、該案内シュー510をチェーン走行方向に沿って補強するプレート520とを備えてなり、案内シュー510の走行案内部511の裏面側にプレート520を下方から挿入可能なプレート収容部であるスリット溝512を設け、剛性や耐久性の高いプレート520を下方からスリット溝512に挿入することで、チェーンガイド500全体として必要な強度、剛性、耐久性を確保しつつ占有スペースを小さくしたものが公知である(特許文献1、2、3等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−2810号公報
【特許文献2】特開2003−130156号公報
【特許文献3】特開2002−266964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のチェーンガイド500は、案内シュー510に対してプレート520を下方からプレート収容部であるスリット溝512に挿入するように構成されているため、案内シュー510の取付対象に取り付けるための取付領域514、および、テンショナに当接するテンショナ当接部515を含んで、プレート収容部であるスリット溝512の下方は全て開放されている。
また、案内シュー510の取付領域514には、取付対象に取り付けるため取付軸Pが挿入される取付孔513が設けられ、この案内シュー510の取付孔513の部分にもスリット溝512が設けられプレート520が挿入されるため、プレート520にも取付軸Pが挿入される取付孔521が設けられている。
【0007】
スリット溝512に挿入されたプレート520は、案内シュー510の取付領域514においては、取付孔521に取付軸Pが挿入されることで脱落が防止されるが、それ以外の箇所では、スリット溝512の下方は全て開放されているため、案内シュー510側に弾性的に変形して確実にプレート520を固定する部材を設ける必要があった。
このため、案内シュー510の弾性的に変形する箇所の耐久性が低下するとともに、プレート520の挿入固定作業にも手間がかかるという問題があった。
また、案内シュー510の取付孔513がプレート520の取付孔521の直径を完全に一致させることは困難であり、図23に示すように、プレート520の取付孔521の直径のほうが小さい場合、取付対象に取り付ける際にプレート520の取付孔521の周縁部が取付軸Pと接触し変形や破損が発生するおそれがあった。
【0008】
これを避けるためには、取り付け時にプレート520の取付孔521と取付軸Pの中心を精度よく一致させる必要があり、組立作業効率が低下するという問題があった。
また、チェーンガイド500は、プレート520の取付孔521の軸方向の長さでのみ取付軸Pに支持されることとなるため、図24に示すように、本来の姿勢に対して傾斜した状態になりやすく、傾斜した場合には、チェーンガイド500によりガイドされるチェーンの走行が不安定となり、騒音や摩耗が増大するという問題があった。
【0009】
逆に、図25に示すように、プレート520の取付孔521の直径のほうが大きい場合、取付軸Pとの間に隙間が生じるため、使用時にプレート520がスリット溝512で移動し、スリット溝512の底部や取付軸Pと衝突を繰り返し、騒音や摩耗が発生したり、破損が生じたりするおそれがあった。
また、樹脂等からなる剛性や強度の低い案内シュー510の取付孔513が取付軸Pにより支持されるため、取付孔の軸方向の寸法をある程度大きく取る必要があった。
【0010】
これらの問題をある程度低減するため、プレート520の取付孔521を露出させ案内シュー510に取付孔を設けない構造とすることが考えられる。
しかしながら、プレート520の取付孔521と案内シュー510の取付孔との直径や位置関係の誤差に起因する問題はなくなるが、図23に示す例と同様に、プレート520の取付孔521の軸方向の長さでのみ取付軸Pに支持されることとなり、その両側部に案内シュー510が存在しないため、図24に示す例以上に傾斜した状態になりやすい。
【0011】
これを抑制するためには、図26の左方に示す(取付軸Pの図示は省略した。)ように、取付対象に突出部Dを設けることが考えられるが、取付対象に構成を増やすことで製造コストが増大するとともに、設計自由度が低減するという問題があった。
また、図26の右方に示す(取付軸Pの図示は省略した。)ように、取付対象との間にブッシュBを設けることが考えられるが、部品点数か増加し、組立の際のブッシュB供給、保持の手数が増え、製造コストが増大するという問題があった。
また、図26の左方、右方のいずれに示すものも、プレート520の取付孔521の軸方向の長さでのみ荷重を受けることとなることによる問題は依然として解決できなかった。
【0012】
本発明は上述した課題を解決するものであり、簡単な構成で、組立作業性が向上し、製造コストが低減されるとともに、振動や傾きが抑制され、騒音、摩耗、破損等の発生が少なく耐久性の高いチェーンガイドを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本請求項1に係る発明は、走行するチェーンを摺動案内する案内シューと、該案内シューをチェーン走行方向に沿って補強するプレートとを備えたチェーンガイドであって、前記案内シューが、チェーン走行方向に延びる走行案内部と、該走行案内部の裏面側に前記プレートを挿入可能なプレート収容部とを有し、前記プレートが、取付対象に取り付けるために厚み方向に貫通した取付孔を有し、前記案内シューは、前記プレート収容部に挿入された前記プレートの前記取付孔が露出する取付領域を有し、前記プレートの厚み方向の側方には、前記取付孔を延長するように突出した軸方向延長部を有し、前記プレートの取付孔の内面が、前記取付孔の軸方向に前記プレートの厚みより長いことにより、前記課題を解決するものである。
【0014】
本請求項2に係る発明は、請求項1に係るチェーンガイドの構成に加え、案内シューのプレート収容部が、前記取付領域近傍で前記プレートの取付孔と前記取付孔の軸方向で重複しないように形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係るチェーンガイドの構成に加え、前記プレートの取付孔の内面が、取付対象に取り付けるための取付軸の挿入方向奥側に延びるように形成され、前記内面の取付対象に取り付けるための取付軸の挿入方向手前側の角部が、面取り、あるいは、R面に形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに係るチェーンガイドの構成に加え、前記案内シューが、テンショナに対応する位置にテンショナ当接領域を有し、前記プレートが、前記テンショナ当接領域近傍で前記プレート収容部から下方に露出するテンショナ当接面を有し、前記プレートのテンショナ当接面が、前記取付孔の軸方向に前記プレートの厚みより長いことにより、前記課題を解決するものである。
【0015】
本請求項5に係る発明は、請求項4に係るチェーンガイドの構成に加え、前記プレートのテンショナ当接面が、前記プレートの前記取付孔の軸方向の両側方に延びるように形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
本請求項6に係る発明は、請求項5に係るチェーンガイドの構成に加え、前記プレートのテンショナ当接面が、前記プレートの下方を一方の側方と他方の側方に2回折り返して形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0016】
本請求項1に係るチェーンガイドによれば、強度、剛性、耐久性に寄与するプレートを案内シューと別材料で形成し、案内シューの走行案内部の裏面側に設けたプレート収容部にプレートを収容可能とすることにより、簡単な構成で容易に組み立てることができ、チェーンガイド全体として必要な強度、剛性、耐久性を確保しつつ占有スペースを小さくすることが可能となる。
そして、プレートが取付対象に取り付けるための取付孔を有し、プレートの厚み方向の側方には、取付孔を延長するように突出した軸方向延長部を有し、プレートの取付孔の内面が取付孔の軸方向にプレートの厚みより長いことにより、取付孔の内面と取付対象の取付軸とが取付孔の軸方向に長く接触することとなり、本来の姿勢に対して傾斜した状態になることがなく、チェーンの走行が安定し、騒音や走行案内部の摩耗を抑制することができる。
また、取付孔の内面と取付対象の取付軸とが広い面積で接触することとなり、集中荷重を受けることがなく取付孔の内面や取付対象の取付軸の摩耗や損傷を抑制することができる。
【0017】
本請求項2に記載の構成によれば、案内シューのプレート収容部が、取付領域近傍でプレートの取付孔と取付孔の軸方向で重複しないように形成されている、すなわち、案内シューに取付孔がなくプレートの取付孔が外部に露出していることにより、両者の取付孔の位置を合わせる必要がなく、取付対象の取付軸を容易に挿入することができ、組立作業性が向上する。
本請求項3に記載の構成によれば、プレートの取付孔の内面が取付対象に取り付けるための取付軸の挿入方向奥側に延び、内面の取付対象に取り付けるための取付軸の挿入方向手前側の角部が、面取り、あるいは、R面に形成されていることにより、取付軸の先端が角部と接触しても円滑に挿入することが可能となり、組立作業性がさらに向上する。
本請求項4に記載の構成によれば、プレートがテンショナ当接領域近傍でプレート収容部から下方に露出するテンショナ当接面を有し、プレートのテンショナ当接面が取付孔の軸方向にプレートの厚みより長いことにより、テンショナ当接面とテンショナとが広い面積で接触することとなり、局所的な摩耗や損傷を抑制することができる。
【0018】
本請求項5に記載の構成によれば、プレートのテンショナ当接面がプレートの取付孔の軸方向の両側方に延びるように形成されていることにより、テンショナ当接面とテンショナとがさらに広い面積で接触することとなり、局所的な摩耗や損傷を抑制することができる。
また、テンショナからテンショナ当接面に受ける押圧力が、取付孔の軸方向の片方に偏らず、チェーンガイドを傾斜させる力が抑制され、チェーンの走行が安定し、騒音や走行案内部の摩耗を抑制することができる。
本請求項6に記載の構成によれば、プレートのテンショナ当接面が、プレートの下方を一方の側方と他方の側方に2回折り返して形成されていることにより、製造時に簡単な加工でテンショナ当接面をプレートの取付孔の軸方向の両側方に延びるように形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係るチェーンガイドの上方からの斜視図。
図2】本発明の第1実施形態に係るチェーンガイドの下方からの斜視図。
図3】本発明の第1実施形態に係るチェーンガイドの側面図。
図4】本発明の第1実施形態に係るチェーンガイドの底面図。
図5】本発明の第1実施形態に係るチェーンガイドの正面図および背面図。
図6図3のI−IおよびII―II断面図。
図7】本発明の第1実施形態に係るチェーンガイドのプレートの上方からの斜視図。
図8】本発明の第1実施形態に係るチェーンガイドのプレートの下方からの斜視図。
図9】本発明の第1実施形態に係るチェーンガイドのプレートの側面図。
図10】本発明の第1実施形態に係るチェーンガイドのプレートの底面図。
図11】本発明の第1実施形態に係るチェーンガイドのプレートの正面図および背面図。
図12図9のIII−IIIおよびIV―IV断面図。
図13】プレートの取付孔の角部の断面説明図。
図14】プレートの取付孔にショルダーボルトを挿入する際の説明図。
図15】プレートの取付孔に取付対象の取付軸を挿入する際の説明図。
図16】プレートの取付孔の軸方向延長部が取付対象までに延びている例の説明図。
図17】プレートのテンショナ当接面の断面説明図。
図18】プレートのテンショナ当接面の変形例の断面説明図。
図19】従来のエンジンのタイミングシステムの説明図。
図20】従来のチェーンガイドの斜視図。
図21図20の他の方向からの斜視図。
図22図20のチェーンガイドの側面図。
図23図22のA−A断面説明図。
図24図23の他の状態の説明図。
図25図23のさらに他の状態の説明図。
図26】取付部の参考例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のチェーンガイドは、走行するチェーンを摺動案内する案内シューと、該案内シューをチェーン走行方向に沿って補強するプレートとを備えたチェーンガイドであって、案内シューが、チェーン走行方向に延びる走行案内部と、該走行案内部の裏面側にプレートを挿入可能なプレート収容部とを有有し、プレートが、取付対象に取り付けるために厚み方向に貫通した取付孔を有し、案内シューは、プレート収容部に挿入されたプレートの取付孔が露出する取付領域を有し、プレートの厚み方向の側方には、取付孔を延長するように突出した軸方向延長部を有し、プレートの取付孔の内面が、取付孔の軸方向に前記プレートの厚みより長いものであって、簡単な構成で、組立作業性が向上し、製造コストが低減されるとともに、振動や傾きが抑制され、騒音、摩耗、破損等の発生が少なく耐久性の高いものであれば、その具体的な構成はいかなるものであってもよい。
【0021】
プレートは、金属材料であり、特に圧延鋼板から製造されるのが好適であるが、剛性、耐久性、成形性、コスト等の諸条件に応じて公知の適宜のものを選択すればよい。
案内部シューの材質は、合成樹脂であるのが望ましいが、摩擦抵抗、剛性、耐久性、成形性、コスト等に諸条件に応じて公知の適宜のものを選択すればよい。
また、プレートの取付孔の内面を取付孔の軸方向にプレートの厚みより長いものとするための取付孔を延長するように突出した軸方向延長部の製造方法はどのようなものでもよいが、例えば、圧延鋼板から製造され必要な孔径よりも小さな孔を有するプレートに対し、一側方からバーリング加工等を施して必要な孔径とするとともに他の側方に突出させるのが好適である。
【実施例1】
【0022】
本発明の第1実施形態に係るチェーンガイド100(揺動ガイド)について図面に基づいて説明する。
チェーンガイド100は、前述した公知のタイミングシステムに適用されるものであり、図1乃至図6に示すように、走行するチェーンを摺動案内する案内シュー110と、該案内シュー110をチェーン走行方向に沿って支持するプレート120とを備えている。
案内シュー110は、チェーン走行方向に延びる走行案内部111と、走行案内部111の裏面側にプレート120を挿入可能なプレート収容部である下方に開放したスリット溝112とを有している。
また、一方の端部近傍に取付対象に取り付けるための取付領域114、および、他方の端部近傍にテンショナに当接するテンショナ当接領域115を有し、合成樹脂材料で例えば射出成形等によって一体に成形されている。
【0023】
取付領域114は、走行案内部111の裏面側に延びるように形成され、取付対象に取り付けるためのボルト等の取付軸が挿通される部分は、プレート120が露出するように構成されている。
テンショナ当接領域115は、走行案内部111の裏面側に延びるように形成され、プレート120のテンショナ当接面124が下方に露出するように構成されている。
なお、本実施形態では、取付領域114とテンショナ当接領域115の間の領域において、スリット溝112は、プレート120の下方が露出する深さに形成されているが、図20乃至図22に示す従来例と同様に、プレート120がスリット溝112内に収容されるように形成されていてもよい。
【0024】
プレート120は、図1乃至図12に示すように、チェーン走行方向に延びる板状の部材からなりチェーン走行方向に沿って所定の湾曲形状が付与されている。
このプレート120は、圧延鋼板等から打ち抜かれた後、一側方からバーリング加工および折り曲げ加工を施して形成される。
取付孔121は、圧延鋼板からの打ち抜き時に形成された必要な孔径よりも小さな孔に対し一側方からバーリング加工を施すことで、他の側方に軸方向延長部123を有し内面122がプレート120の厚みより長くなるように形成される。
テンショナ当接面124は、プレート120に形成された突片に折り曲げ加工を施すことで形成され、折り曲げた際の軸方向延長部125の下面がテンショナ当接面124を構成する。
【0025】
取付孔121の内面122の、軸方向延長部123が延びる根元側の角部126は、図13に示すように、R面に形成され(図示左側)、あるいは、面取りが施され(図示右側)ており、この角部126を取付対象に取り付けるための取付軸の挿入方向手前側とすることで、取付軸を容易に挿入することができ、組立作業性が向上する。
例えば、図14に示すように、取付軸Pとして取付対象Eにねじ込まれるショルダーボルトを用いる場合、角部126を取付対象Eの反対側となるように構成することで、取付軸Pであるショルダーボルトの挿入が容易となる。
また、図15に示すように、取付軸Pが取付対象Eに固定されている場合、反対に角部126を取付対象E側となるように構成することで、取付軸Pに対して容易に取付孔121を嵌合することができる。
【0026】
さらに、取付軸Pとして取付対象Eにねじ込まれるショルダーボルト等を用いて、取付孔121の軸方向延長部123が取付対象E側となるように取り付ける場合、図16に示すように、軸方向延長部123が取付対象Eの側面に当接するようにし、その長さを適宜に設計することで取付対象Eとの位置関係を規定することができ、取付対象Eに突出部を設けたり、ブッシュ等の追加部品を挿入する必要がなく、製造コストを少なくすることができ、設計自由度も向上する。
【0027】
テンショナ当接面124は、図17に示すように、プレート120に形成された突片に折り曲げ加工を施すことで形成され、折り曲げた際の軸方向延長部125の下面がテンショナTに押圧されるテンショナ当接面124を構成している。
また、プレート120が案内シュー110に挿入された際に、図17に示すように、案内シュー110が軸方向延長部125の上面側と当接するように設計することで、テンショナTの押圧力を逃がすことなく走行案内部111まで伝えることができ、チェーンの走行を安定させることができる。
【0028】
また、図18に示すように、プレート120に形成された突片を一方の側方と他方の側方に2回折り返し、一方側に延びる軸方向延長部125bとその先端から折り返して他方側に延びる軸方向延長部125aを形成し、軸方向延長部125aの下面をテンショナ当接面124としてもよい。
このことで、テンショナ当接面124とテンショナTとがさらに広い面積で接触することとなり、局所的な摩耗や損傷をさらに抑制することができる。
また、テンショナTからテンショナ当接面124に受ける押圧力が、取付孔の軸方向の片方に偏らず、チェーンガイド100を傾斜させる力が抑制され、チェーンの走行が安定し、騒音や走行案内部111の摩耗を抑制することができる。
さらに、プレート120が案内シュー110に挿入された際に、図18に示すように、案内シュー110が軸方向延長部125b、125aの両方の上面側と当接するように設計することで、テンショナTの押圧力を逃がすことなく走行案内部111まで伝えることができ、チェーンの走行をさらに安定させることができる。
【0029】
以上説明した実施形態は、本発明に係るチェーンガイド(揺動ガイド)の具体例であるが、本発明に係るチェーンガイドはこれらに限定されるものではなく、取付領域が複数箇所設けられたチェーンガイド(固定ガイド)に適用されてもよく、各構成部材の形状、位置、寸法、配置関係等も、様々な変形が可能である。
また、プレート120の製造方法、取付孔121やテンショナ当接面124の形成方法は、打ち抜き、バーリング加工、折り曲げ加工に限定されるものではなく、いかなる製造方法であってもよい。
【0030】
上記実施形態では、取付孔121の軸方向延長部123は円筒形状であるが、円筒の一部が切り欠かれた形状であってもよく、取付対象Eに取り付けるための取付軸Pが挿入され、幅方向にプレート120の厚みより長い内面122を確保できる形状であれば、いかなる形状であってもよい。
さらに、本実施形態では、プレート収容部を下方に開放したスリット溝112としたが、プレート収容部を側方や他の部分が開放したものとしてもよく、取付孔121の内面122が取付孔の軸方向にプレート120の厚みより長いプレート120が収容されていれば、いかなる形状であってもよく、プレート120がモールド等で案内シュー110にインサートされていてもよい。
【0031】
また、プレート120を、取付孔121の軸方向延長部125がそれぞれ逆に形成された2枚のプレートで構成してもよく、そのことで、取付孔121の内面と取付対象の取付軸Pとを取付孔の軸方向にさらに長く接触させて安定して取り付けることを可能とするとともに、2枚のプレートによって捻り剛性を高めたり、それぞれのプレートを薄くして製造、加工を容易とすることが可能となる。
上記実施形態は、タイミングシステムを有するエンジン内に設けられるものであるが、これに限定されず様々な機器類に適用可能である。
また、チェーンによる伝動機構に限らず、ベルト、ロープ等の類似の伝動機構に適用されてもよく、種々の産業分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
100、500 ・・・ チェーンガイド(揺動ガイド)
600 ・・・ チェーンガイド(固定ガイド)
110、510 ・・・ 案内シュー
111、511 ・・・ 走行案内部
112、512 ・・・ プレート収容部(スリット溝)
113、513 ・・・ 取付孔(案内シューの)
114、514 ・・・ 取付領域
115、515 ・・・ テンショナ当接領域
120、520 ・・・ プレート
121、521 ・・・ 取付孔(プレートの)
122 ・・・ 内面(取付孔の)
123 ・・・ 軸方向延長部(取付孔の)
124 ・・・ テンショナ当接面
125 ・・・ 軸方向延長部(テンショナ当接面の)
126 ・・・ 角部
S1 ・・・ 駆動スプロケット
S2 ・・・ 従動スプロケット
CH ・・・ タイミングチェーン
P ・・・ 取付軸(揺動用)
Q ・・・ 取付軸(固定用)
T ・・・ チェーンテンショナ
E ・・・ 取付対象
D ・・・ 突出部
B ・・・ ブッシュ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26