【実施例1】
【0022】
本発明の第1実施形態に係るチェーンガイド100(揺動ガイド)について図面に基づいて説明する。
チェーンガイド100は、前述した公知のタイミングシステムに適用されるものであり、
図1乃至
図6に示すように、走行するチェーンを摺動案内する案内シュー110と、該案内シュー110をチェーン走行方向に沿って支持するプレート120とを備えている。
案内シュー110は、チェーン走行方向に延びる走行案内部111と、走行案内部111の裏面側にプレート120を挿入可能なプレート収容部である下方に開放したスリット溝112とを有している。
また、一方の端部近傍に取付対象に取り付けるための
取付領域114、および、他方の端部近傍にテンショナに当接する
テンショナ当接領域115を有し、合成樹脂材料で例えば射出成形等によって一体に成形されている。
【0023】
取付領域114は、走行案内部111の裏面側に延びるように形成され、取付対象に取り付けるためのボルト等の取付軸が挿通される部分は、プレート120が露出するように構成されている。
テンショナ当接領域115は、走行案内部111の裏面側に延びるように形成され、プレート120のテンショナ当接面124が下方に露出するように構成されている。
なお、本実施形態では、
取付領域114と
テンショナ当接領域115の間の領域において、スリット溝112は、プレート120の下方が露出する深さに形成されているが、
図20乃至
図22に示す従来例と同様に、プレート120がスリット溝112内に収容されるように形成されていてもよい。
【0024】
プレート120は、
図1乃至
図12に示すように、チェーン走行方向に延びる板状の部材からなりチェーン走行方向に沿って所定の湾曲形状が付与されている。
このプレート120は、圧延鋼板等から打ち抜かれた後、一側方からバーリング加工および折り曲げ加工を施して形成される。
取付孔121は、圧延鋼板からの打ち抜き時に形成された必要な孔径よりも小さな孔に対し一側方からバーリング加工を施すことで、他の側方に
軸方向延長部123を有し内面122がプレート120の厚みより長くなるように形成される。
テンショナ当接面124は、プレート120に形成された突片に折り曲げ加工を施すことで形成され、折り曲げた際の
軸方向延長部125の下面がテンショナ当接面124を構成する。
【0025】
取付孔121の内面122の、
軸方向延長部123が延びる根元側の角部126は、
図13に示すように、R面に形成され(図示左側)、あるいは、面取りが施され(図示右側)ており、この角部126を取付対象に取り付けるための取付軸の挿入方向手前側とすることで、取付軸を容易に挿入することができ、組立作業性が向上する。
例えば、
図14に示すように、取付軸Pとして取付対象Eにねじ込まれるショルダーボルトを用いる場合、角部126を取付対象Eの反対側となるように構成することで、取付軸Pであるショルダーボルトの挿入が容易となる。
また、
図15に示すように、取付軸Pが取付対象Eに固定されている場合、反対に角部126を取付対象E側となるように構成することで、取付軸Pに対して容易に取付孔121を嵌合することができる。
【0026】
さらに、取付軸Pとして取付対象Eにねじ込まれるショルダーボルト等を用いて、取付孔121の
軸方向延長部123が取付対象E側となるように取り付ける場合、
図16に示すように、
軸方向延長部123が取付対象Eの側面に当接するようにし、その長さを適宜に設計することで取付対象Eとの位置関係を規定することができ、取付対象Eに突出部を設けたり、ブッシュ等の追加部品を挿入する必要がなく、製造コストを少なくすることができ、設計自由度も向上する。
【0027】
テンショナ当接面124は、
図17に示すように、プレート120に形成された突片に折り曲げ加工を施すことで形成され、折り曲げた際の
軸方向延長部125の下面がテンショナTに押圧されるテンショナ当接面124を構成している。
また、プレート120が案内シュー110に挿入された際に、
図17に示すように、案内シュー110が
軸方向延長部125の上面側と当接するように設計することで、テンショナTの押圧力を逃がすことなく走行案内部111まで伝えることができ、チェーンの走行を安定させることができる。
【0028】
また、
図18に示すように、プレート120に形成された突片を一方の側方と他方の側方に2回折り返し、一方側に延びる
軸方向延長部125bとその先端から折り返して他方側に延びる
軸方向延長部125aを形成し、
軸方向延長部125aの下面をテンショナ当接面124としてもよい。
このことで、テンショナ当接面124とテンショナTとがさらに広い面積で接触することとなり、局所的な摩耗や損傷をさらに抑制することができる。
また、テンショナTからテンショナ当接面124に受ける押圧力が、
取付孔の軸方向の片方に偏らず、チェーンガイド100を傾斜させる力が抑制され、チェーンの走行が安定し、騒音や走行案内部111の摩耗を抑制することができる。
さらに、プレート120が案内シュー110に挿入された際に、
図18に示すように、案内シュー110が
軸方向延長部125b、125aの両方の上面側と当接するように設計することで、テンショナTの押圧力を逃がすことなく走行案内部111まで伝えることができ、チェーンの走行をさらに安定させることができる。
【0029】
以上説明した実施形態は、本発明に係るチェーンガイド(揺動ガイド)の具体例であるが、本発明に係るチェーンガイドはこれらに限定されるものではなく、
取付領域が複数箇所設けられたチェーンガイド(固定ガイド)に適用されてもよく、各構成部材の形状、位置、寸法、配置関係等も、様々な変形が可能である。
また、プレート120の製造方法、取付孔121やテンショナ当接面124の形成方法は、打ち抜き、バーリング加工、折り曲げ加工に限定されるものではなく、いかなる製造方法であってもよい。
【0030】
上記実施形態では、取付孔121の
軸方向延長部123は円筒形状であるが、円筒の一部が切り欠かれた形状であってもよく、取付対象Eに取り付けるための取付軸Pが挿入され、幅方向にプレート120の厚みより長い内面122を確保できる形状であれば、いかなる形状であってもよい。
さらに、本実施形態では、プレート収容部を下方に開放したスリット溝112としたが、プレート収容部を側方や他の部分が開放したものとしてもよく、取付孔121の内面122が
取付孔の軸方向にプレート120の厚みより長いプレート120が収容されていれば、いかなる形状であってもよく、プレート120がモールド等で案内シュー110にインサートされていてもよい。
【0031】
また、プレート120を、取付孔121の
軸方向延長部125がそれぞれ逆に形成された2枚のプレートで構成してもよく、そのことで、取付孔121の内面と取付対象の取付軸Pとを
取付孔の軸方向にさらに長く接触させて安定して取り付けることを可能とするとともに、2枚のプレートによって捻り剛性を高めたり、それぞれのプレートを薄くして製造、加工を容易とすることが可能となる。
上記実施形態は、タイミングシステムを有するエンジン内に設けられるものであるが、これに限定されず様々な機器類に適用可能である。
また、チェーンによる伝動機構に限らず、ベルト、ロープ等の類似の伝動機構に適用されてもよく、種々の産業分野において利用可能である。