特許第5984269号(P5984269)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984269
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】フロントフロアパネル
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20160823BHJP
   B21D 22/02 20060101ALI20160823BHJP
   B21D 47/00 20060101ALI20160823BHJP
   B21D 53/88 20060101ALI20160823BHJP
   G10K 11/16 20060101ALN20160823BHJP
【FI】
   B62D25/20 G
   B21D22/02 B
   B21D47/00 G
   B21D53/88 Z
   !G10K11/16 J
【請求項の数】15
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-550335(P2013-550335)
(86)(22)【出願日】2012年12月20日
(86)【国際出願番号】JP2012083095
(87)【国際公開番号】WO2013094691
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年11月12日
(31)【優先権主張番号】特願2011-278332(P2011-278332)
(32)【優先日】2011年12月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】100120581
【弁理士】
【氏名又は名称】市原 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100180426
【弁理士】
【氏名又は名称】剱物 英貴
(72)【発明者】
【氏名】米林 亮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利哉
(72)【発明者】
【氏名】中澤 嘉明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 昌也
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−147950(JP,A)
【文献】 米国特許第2858247(US,A)
【文献】 特開2011−202350(JP,A)
【文献】 特開2012−51004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B21D 22/02
B21D 47/00
B21D 53/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車車体の車幅方向の中央に該自動車車体の前後方向へ向けて形成されるフロアトンネル、前記車幅方向の左右の端部に形成されてサイドシルと接合するための左右の上向きフランジ、及び、該左右の上向きフランジと前記フロアトンネルの左右の縦壁部との間に形成される左右の平面部を備える自動車車体の金属製のフロントフロアパネルであって、
前記平面部の外縁部を含む環状の領域に形成される下記凹凸形状部を有するとともに、前記環状の領域を除いた残余の領域に形成される平板状部を有すること
を特徴とするフロントフロアパネル;
凹凸形状部:間隔をあけて順次平行に配された3つの面である第1基準面、中間基準面、及び第2基準面の3つの基準面に基づいて、前記中間基準面を基準に仮想の正方形である第1単位領域および第2単位領域を敷き詰め、前記仮想の正方形の直交する2つの辺に沿った2方向のうちの一方を横方向、他方を縦方向とすると、
前記第1単位領域は、前記横方向へ任意の比率A:B:Aの3分割であって、比率Aに分割された2つの領域である第1分割領域と、比率Bに分割された1つの領域である第2分割領域とに分割されており、
前記第2単位領域は、前記縦方向へ任意の比率A:B:Aの3分割であって、比率Aに分割された2つの領域である第2分割領域と、比率Bに分割された1つの領域である第1分割領域とに分割されており、
前記中間基準面を基準に、前記第1単位領域及び前記第2単位領域がそれぞれ縦方向及び横方向に対して交互に配置され、隣接する前記第1分割領域で形成される略I型を呈する第1基準領域と、隣接する前記第2分割領域で形成される略I型を呈する第2基準領域とを有し、
前記第1基準領域から前記第1基準面に向かって突出する第1領域と、前記中間基準面上において定められた前記第2基準領域から前記第2基準面に向かって突出する第2領域とを有する形状部であって、
前記第1領域は、前記第1基準領域を前記第1基準面上に等倍又は縮小して投影して得られる第1頂面と、該第1頂面の輪郭と前記第1基準領域の輪郭とをつなぐ第1側面とを有し、
前記第2領域は、前記第2基準領域を前記第2基準面上に等倍又は縮小して投影して得られる第2頂面と、該第2頂面の輪郭と前記第2基準領域の輪郭とをつなぐ第2側面とを有する。
【請求項2】
前記凹凸形状部は、前記外縁部において前記略I型を呈する領域を2列以上有する請求項1に記載されたフロントフロアパネル。
【請求項3】
前記環状の領域の面積は前記平面部の面積の40%以上である請求項2に記載されたフロントフロアパネル。
【請求項4】
1又は2以上の前記凹凸形状部が、前記平板状部の一部の領域に、環状に形成される請求項1〜3のいずれか1項に記載されたフロントフロアパネル。
【請求項5】
1又は2以上の前記凹凸形状部が、前記平板状部の一部の領域の領域に、直線状に形成される請求項1〜3のいずれか1項に記載されたフロントフロアパネル。
【請求項6】
直線状に形成された前記2以上の凹凸形状部が互いに交差する請求項5に記載されたフロントフロアパネル。
【請求項7】
前記第1基準領域及び前記第2基準領域は、前記第1分割領域及び前記第2分割領域をそれぞれ連ねた後、両者の面積が変化しないように両者の角部の一部を、円弧状に変形させることにより構成される請求項1〜6のいずれか1項に記載されたフロントフロアパネル。
【請求項8】
前記中間基準面に対する前記第1側面の傾斜角度θ(°)と前記中間基準面に対する前記第2側面の傾斜角度θ(°)とはそれぞれ10〜90°である請求項1〜7のいずれか1項に記載されたフロントフロアパネル。
【請求項9】
順次配された前記第1基準面、前記中間基準面及び前記第2基準面の少なくとも一部がそれぞれ平行な曲面からなる請求項1〜8のいずれか1項に記載されたフロントフロアパネル。
【請求項10】
前記凹凸形状部は、金属板をプレス成形することにより形成される請求項1〜9のいずれか1項に記載されたフロントフロアパネル。
【請求項11】
前記金属板は、成形前の板厚t(mm)が0.65mm以下の鋼板である請求項10に記載されたフロントフロアパネル。
【請求項12】
前記金属板は、成形前の板厚t(mm)が0.5〜2.0mmであるアルミニウム合金板である請求項10に記載されたフロントフロアパネル。
【請求項13】
仮想の正方形からなる前記単位領域の一辺の長さL(mm)と、前記板厚t(mm)との比(L/t)は10〜2000である請求項9〜12のいずれか1項に記載されたフロントフロアパネル。
【請求項14】
仮想の正方形からなる前記単位領域の一辺の長さL(mm)に対し、比率Bに分割された領域がなす矩形形状の短辺の長さをBL(mm)としたとき、0.2L≦BL≦0.6Lである請求項9〜13のいずれか1項に記載されたフロントフロアパネル。
【請求項15】
前記第1領域の突出高さH1(mm)と上記板厚t(mm)との比(H1/t)と、前記第1側面と前記中間基準面とがなす最も大きい傾斜角θ(°)とは、1≦(H1/t)≦−3θ+272の関係を満足するとともに、前記第2領域の突出高さH2(mm)と前記板厚t(mm)との比(H2/t)と、前記第2側面と前記中間基準面とがなす最も大きい傾斜角θ(°)とは、1≦(H2/t)≦−3θ+272の関係を満足する請求項9〜14のいずれか1項に記載されたフロントフロアパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントフロアパネルに関する。より詳細には、本発明は、自動車車体のプラットホームを構成するフロントフロアパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
現在の自動車車体の大部分は、通常フレームボディを構成するフレーム及びボディが一体化されたモノコックボディにより構成され、ボディの下部はプラットフォームと呼ばれる構造を有する。図19は、自動車車体101のプラットホーム102の概略の構造を簡略化して示す説明図である。
【0003】
同図に示すように、自動車車体101のプラットホーム102は旧来のフレームに相当する部分に配置される。プラットホーム102のダッシュパネル103及びフロントフロアパネル104は、それぞれの縁部同士を重ね合わせて接合されるとともに、フロントフロアパネル104及びリアフロアパネル106それぞれの縁部同士を重ね合わせて接合されている。
【0004】
ダッシュパネル103のダッシュアッパーパネル103a及びダッシュロアパネル103bは、それぞれの縁部同士を重ね合わせて接合される。ダッシュパネル103は、エンジンが置かれるエンジンコンパートメント及び乗員が居住するキャビンの間の隔壁である。
【0005】
フロントフロアパネル104は、フロアトンネル104aと、左右の上向きフランジ104bと、左右の平面部104cとを有する。フロアトンネル104aは、車幅方向の中央にプロペラシャフトや各種配管を収容するための空間を形成する。左右の上向きフランジ104bは、閉断面構造の左右のサイドシル105に接合するための接合部である。左右の平面部104cは、フロアトンネル104a及び左右の上向きフランジ104bをつなぐ部分である。
【0006】
リアフロアパネル106のリアフロアフロントパネル106a及びリアフロアリアパネル106bは、それぞれの縁部同士を重ね合わせて接合される。
【0007】
フロントフロアパネル104は、フロントシート等の搭載物から受ける静的荷重や走行中の4つのタイヤからボディへの負荷による、ボディの弾性変形を抑制できる曲げ剛性や捩じり剛性を有することを要求される。さらに、フロントフロアパネル104は、走行時の音や振動の発生を極力抑制して搭乗者に不快感を与えないことや、自動車の燃費向上のための軽量化も要求される。
【0008】
このような要求にこたえるべく従来から、フロントフロアパネルの平面部となる領域に凹凸形状を設けることにより、フロントフロアパネルの重量を増加させずに高い剛性や優れた音振動特性を得られる技術が知られる。
【0009】
例えば、同一の二等辺三角形を、その平面が所定の角度を有するように組み合わせて構成される凸部をフロアパネルに形成することにより、フロアパネルの共振周波数を高めて乗員の不快感を低減するとともにフロアパネルの剛性を高める技術が特許文献1に開示される。
【0010】
ダッシュパネル前面またはフロアパネルの下方に搭載されるヒートインシュレータに、エンボス成形による多数の凸部を形成し、さらに、凸部が平面視六角形を呈するとともに対角を形成する頂点を通る縦断面が円弧状を呈し、かつ凸部同士の間に平板部が直線状に通らないように配列することによって、板厚を増加しなくとも充分な剛性を確保できるインシュレータが特許文献2に開示される。
【0011】
車幅方向中央部に前後方向へ向けて配置されるフロアトンネルを有するフロアパネルに、フロアトンネルと交差して車幅方向へ向けた膨出部を設けることによって、フロアパネルの車幅方向についての剛性を高めながらフロアパネルの板厚を低減する発明が特許文献3に開示される。
【0012】
特許文献1〜3により開示される従来の技術は、いずれも、フロントフロアパネルの全体又は平面部の中央へ凹凸形状部を設けることにより剛性や音振動特性の改善を図るものである。しかし、本発明者らの検討によれば、特許文献1により開示された技術ではフロアパネルの板厚を低減できるほどの剛性向上効果を得られず、特許文献2により開示された技術では板材に多数の凸部を形成するために製造コストが不可避的に上昇し、さらに、特許文献3により開示された技術ではフロアパネルの前後の端部に近づくにつれて、剛性の異方性が増加するという問題がある。
【0013】
非特許文献1や特許文献4〜9には、必ずしもフロントフロアパネルを対象とするものではないが、基準平面から上下方向に突出した凹凸形状の両頂面が同じ形状で面積が等しく、かついずれの断面においても断面二次モーメントが大きくなるようにして剛性の異方性を低減できる凹凸形状部を備える板材又は車両構成部材用パネルが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−286249号公報
【特許文献2】特許第4402745号明細書
【特許文献3】特開2002−302071号公報
【特許文献4】特開2011−27248号公報
【特許文献5】特開2011−101893号公報
【特許文献6】特開2011−110847号公報
【特許文献7】特開2011−110954号公報
【特許文献8】特開2011−110983号公報
【特許文献9】特開2011−230174号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】日本機械学会 第20回設計工学・システム部門講演会 CD−ROM論文集 102−107頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
非特許文献1や特許文献4〜9により開示された技術における凹凸形状部がフロントフロアパネルに形成されれば、フロントフロアパネルの重量を増加することなく高い剛性を得られる可能性がある。実際、慣用技術であるプレス成形によりフロントフロアパネルをこの凹凸形状に成形でき、特にプレス成形の成形下死点において凹凸形状部を成形できれば、凹凸形状部を有するフロントフロアパネルを効率よく製造できるとも考えられる。
【0017】
しかし、本発明者らが検討した結果、金属製(例えば鋼製)のフロントフロアパネルの全面をこの凹凸形状部に成形しようとしても、プレス成形に必要な成形荷重が極めて高くなるため、プレス成形によりこのフロアパネルを製造することが事実上不可能である。このため、この凹凸形状部の形状を、例えばプレス成形時の成形荷重が過大とならずに成形できるよう、凹凸形状部の成形範囲を狭くすることも考えられるが、所望の剛性や音振動特性を確保する方法はいずれの文献にも示唆すらされていない。
【0018】
また、図19を参照して上述したように、フロントフロアパネル104は、フロアトンネル104a、左右の上向きフランジ104b及び左右の平面部104cを有するだけではなく、前端部104dはダッシュロアパネル103bの下端部に接合され、後端部104eはリアフロアフロントパネル106aの先端部に接合され、かつ両側部の左右の上向きフランジ104bは左右のサイドシル105に接合される。このため、凹凸形状部の成形方法によっては剛性の異方性がフロントフロアパネルに発生し、剛性が低くなる方向では所望の剛性や音振動特性が得られなくなる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、特許文献4〜9により開示された凹凸形状部とは異なる後述の形状(図3〜6,図10〜12に示す形状)の凹凸形状部を、特許文献1,3により開示された発明のようにフロントフロアパネルの平面部の中央の一部または全域に形成するのではなく、フロアトンネルの裾やサイドシルとの接合部を含んで環状(ループ状)に形成することによって、凹凸形状部を成形する範囲をできるだけ狭くしながら、フロントフロアパネルの剛性の異方性を実質的に解消するという技術思想に基づく。
【0020】
本発明は、下記(1)〜(15)項に示す通りである。
(1)自動車車体の車幅方向の中央にこの自動車車体の前後方向へ向けて形成されるフロアトンネル、車幅方向の左右の端部に形成されてサイドシルと接合するための左右の上向きフランジ、及び左右の上向きフランジとフロアトンネルの左右の縦壁部との間に形成される左右の平面部を備える自動車車体の金属製のフロントフロアパネルであって、
平面部の外縁部を含む環状の領域に形成される下記凹凸形状部を有するとともに、環状の領域を除いた残余の領域に形成される平板状部を有すること
を特徴とするフロントフロアパネル;
凹凸形状部:間隔をあけて順次平行に配された3つの面である第1基準面、中間基準面、及び第2基準面の3つの基準面に基づいて、中間基準面を基準に仮想の正方形である第1単位領域および第2単位領域を敷き詰め、仮想の正方形の直交する2つの辺に沿った2方向のうちの一方を横方向、他方を縦方向とすると、
第1単位領域は、横方向へ任意の比率A:B:Aの3分割であって、比率Aに分割された2つの領域である第1分割領域と、比率Bに分割された1つの領域である第2分割領域とに分割されており、
第2単位領域は、縦方向へ任意の比率A:B:Aの3分割であって、比率Aに分割された2つの領域である第2分割領域と、比率Bに分割された1つの領域である第1分割領域とに分割されており、
中間基準面を基準に、第1単位領域及び第2単位領域がそれぞれ縦方向及び横方向に対して交互に配置され、隣接する第1分割領域で形成される略I型を呈する第1基準領域と、隣接する第2分割領域で形成される略I型を呈する第2基準領域とを有し、
第1基準領域から第1基準面に向かって突出する第1領域と、中間基準面上において定められた第2基準領域から第2基準面に向かって突出する第2領域とを有する形状部であって、
第1領域は、第1基準領域を第1基準面上に等倍又は縮小して投影して得られる第1頂面と、第1頂面の輪郭と第1基準領域の輪郭とをつなぐ第1側面とを有し、
第2領域は、第2基準領域を第2基準面上に等倍又は縮小して投影して得られる第2頂面と、第2頂面の輪郭と第2基準領域の輪郭とをつなぐ第2側面とを有する。
【0021】
(2)凹凸形状部は、外縁部において略I型を呈する領域を2列以上有する(1)項に記載されたフロントフロアパネル。このときの略I型の配置方法は,例えば略I型が2列を有する場合,幅方向へ略I型を1個と1個を連続的に配置することで2列としても良いし,幅方向へ略I型が0.5個,1個,0.5個を連続的に配置することで計2列としても良い.
(3)環状の領域の面積は平面部の面積の40%以上から85%である(2)項に記載されたフロントフロアパネル。だたし,プレス機の荷重性能が向上すれば,上限値85%は増加する。
【0022】
(4)1又は2以上の凹凸形状部が、環状の領域を除いた残余の平面部の一部の領域に、環状に形成される(1)〜(3)項のいずれか1項に記載されたフロントフロアパネル。
【0023】
(5)1又は2以上の凹凸形状部が、環状の領域を除いた残余の平面部の一部の領域に、直線状に形成される(1)〜(3)項のいずれか1項に記載されたフロントフロアパネル。
【0024】
(6)直線状に形成された2以上の凹凸形状部が互いに交差する(5)項に記載されたフロントフロアパネル。
【0025】
(7)第1基準領域及び第2基準領域は、第1分割領域及び第2分割領域をそれぞれ連ねた後、両者の面積が変化しないように両者の角部の一部を、円弧状に変形させることにより構成される(1)〜(6)項のいずれか1項に記載されたフロントフロアパネル。
【0026】
(8)中間基準面に対する第1側面の傾斜角度θ(°)と中間基準面に対する第2側面の傾斜角度θ(°)とはそれぞれ10〜90°である(1)〜(7)項のいずれか1項に記載されたフロントフロアパネル。
【0027】
(9)順次配された第1基準面、中間基準面及び第2基準面の少なくとも一部がそれぞれ平行な曲面からなる(1)〜(8)項のいずれか1項に記載されたフロントフロアパネル。
【0028】
(10)凹凸形状部は、金属板をプレス成形することにより形成される(1)〜(9)項のいずれか1項に記載されたフロントフロアパネル。
【0029】
(11)金属板は、成形前の板厚t(mm)が0.65mm以下の鋼板である(10)項に記載されたフロントフロアパネル。
【0030】
(12)金属板は、成形前の板厚t(mm)が0.5〜2.0mmであるアルミニウム合金板である(10)項に記載されたフロントフロアパネル。
【0031】
(13)仮想の正方形からなる単位領域の一辺の長さL(mm)と、板厚t(mm)との比(L/t)は10〜2000である(9)〜(12)項のいずれか1項に記載されたフロントフロアパネル。
【0032】
(14)仮想の正方形からなる単位領域の一辺の長さL(mm)に対し、比率Bに分割された領域がなす矩形形状の短辺の長さをBL(mm)としたとき、0.2L≦BL≦0.6Lである(9)〜(13)項のいずれか1項に記載されたフロントフロアパネル。
【0033】
(15)第1領域の突出高さH1(mm)と板厚t(mm)との比(H1/t)と、第1側面と中間基準面とがなす最も大きい傾斜角θ(°)とは、1≦(H1/t)≦−3θ+272の関係を満足するとともに、第2領域の突出高さH2(mm)と板厚t(mm)との比(H2/t)と、第2側面と中間基準面とがなす最も大きい傾斜角θ(°)とは、1≦(H2/t)≦−3θ+272の関係を満足する(9)〜(14)項のいずれか1項に記載されたフロントフロアパネル。
【0034】
なお、特許文献4〜9に開示された技術については、本発明に係るフロントフロアパネルにおける凹凸形状部による剛性向上の程度は、特許文献4〜9に開示された板材又は車両構成部材用パネルの剛性を等方的に高めた凹凸形状部による剛性向上の程度よりも著しく大きい。したがって、特許文献4〜9に開示された板材又は車両構成部材用パネルの板厚を低減するためには、その板材又は車両構成部材用パネルの広い範囲に凹凸形状部を形成しなければならない。
【0035】
具体的に説明すると、本発明は、例えば板厚0.3mmのアルミニウム合金板の剛性を15.4〜22.9倍に向上できる。
【0036】
これに対し、特許文献4により開示された発明は、板厚が0.4mmのアルミニウム合金板の剛性を高々3倍程度に高めるに過ぎず、
特許文献5により開示された発明は、板厚が0.3mmのアルミニウム合金板の剛性を3.2倍程度や、板厚が0.9mmのアルミニウム合金板の剛性を8.4倍程度に高めるに過ぎず、
特許文献6により開示された発明は、板厚が0.4mmのアルミニウム合金板の剛性を1.7〜3.9倍程度に高めるに過ぎず、
特許文献7により開示された発明は、板厚が0.9mmのアルミニウム合金板の剛性を7.1倍程度に高めるに過ぎず、
特許文献8により開示された発明は、板厚が0.9mmのアルミニウム合金板の剛性を9.7倍程度に高めるに過ぎず、さらに、
特許文献9により開示された発明は、板厚が0.3mmのアルミニウム合金板の剛性を3.2倍程度高めるに過ぎない。
【発明の効果】
【0037】
本発明により、プレス成形時の荷重が過大とならずに確実にプレス成形でき、剛性の異方性が小さいことから全方位について所望の剛性や音振動特性を得られ、かつ軽量な金属板からなるフロントフロアパネルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明に係るフロントフロアパネルにおける凹凸形状部の形成範囲を簡略化して模式的に示す説明図である。
図2A】凹凸形状部の形成範囲を示す説明図である。
図2B】凹凸形状部の形成範囲を示す説明図である。
図2C】凹凸形状部の形成範囲を示す説明図である。
図2D】凹凸形状部の形成範囲を示す説明図である。
図3】例1の凹凸形状部を示す部分平面図である。
図4図3のA−A断面の部分拡大図である。
図5】実施例の凹凸形状部を示す斜視図である。
図6】実施例の凹凸形状部を示す説明図である。
図7】実施例の片持ち梁による凹凸形状部の剛性向上率を示すグラフである。
図8】実施例の試験要領を示す説明図である。
図9】実施例の結果を示すグラフである。
図10】実施例における凹凸形状部を示す説明図である。
図11】実施例における凹凸形状部を示す説明図である。
図12】凹凸形状部の最小単位を示す説明図である。
図13A図1に示すフロントフロアパネルの平面部の縁(図1,13A中のハッチング部)に凹凸形状部を形成した解析モデルXを示す説明図である。
図13B図1に示すフロントフロアパネルの平面部の中央(図1のハッチング部を除く部分,図13B中のハッチング部)に凹凸形状部を形成した解析モデルYを示す説明図である。
図13C図1に示すフロントフロアパネルの平面部の縁に凹凸形状部をC字状に形成した解析モデルZを示す説明図である。
図14】解析モデルX〜Zについて凹凸形状部を環状に形成することの有効性を示すグラフである。
図15A】凹凸形状部の幅とフロントフロアパネルの剛性との関係を示すグラフである。
図15B】凹凸形状部の幅とフロントフロアパネルの剛性との関係を示すグラフである。
図16】解析モデルX,X−1,X−3のねじり剛性の解析結果を示すグラフである。
図17A図1に示すフロントフロアパネルの平面部の縁及び中間部(図17A中のハッチング部)に凹凸形状部を形成した解析モデルCを示す説明図である。
図17B図1に示すフロントフロアパネルの平面部の縁及び中央(図17B中のハッチング部)に凹凸形状部を形成した解析モデルDを示す説明図である。
図18】解析モデルC,D,Xのねじり剛性の解析結果を示すグラフである。
図19】自動車車体のプラットホームの概略の構造を簡略化して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明を説明する。なお、以降の説明では、従来図として説明した図19も適宜参照する。また、本明細書において、正方形等の形状の表現は、いずれも幾何学上の狭義の概念に止まらず、一般的に上記の形状と認識できる形状を意味するものであり、各辺が若干曲線となったり、成形上で必要な丸み等が角部や面に生じるいわゆるフィレットといわれる曲面を設けることも当然に含まれる。また、平行の表現は、幾何学上の狭義の概念に止まらず、一般的に平行な面と認識できるものも意味する。
【0040】
図1は、本発明に係るフロントフロアパネル110における凹凸形状部111の形成範囲を一部簡略化して示す説明図である。図2A図2Dは、凹凸形状部111の形成範囲の他の例を模式的に示す説明図である。ここで、図1のフロントフロアパネル110は、図19に示す自動車本体下部のフロントフロアパネル104に対応する。
【0041】
フロントフロアパネル110は、図19に示す従来のフロントフロアパネル104と同様に、フロアトンネル104aと、左右の上向きフランジ104bと、左右の平面部104cとを有する。つまり、フロントフロアパネル110は、自動車車体のプラットホーム102の一部をなす金属製のパネルである。
【0042】
フロアトンネル104aは、車幅方向の中央に、例えばトランスミッションの後端部やプロペラシャフト、さらには各種配管を収容するための空間を形成する。
【0043】
左右の上向きフランジ104bは、車幅方向の左右の端部に形成される。上向きフランジ104bは、閉断面構造のサイドシル105のシルインナパネル105bの縦壁面と接合するための溶接代を構成する。
【0044】
左右の平面部104cは、左右の上向きフランジ104bとフロアトンネル104aの左右の縦壁部との間に形成される。平面部104cは、図示しないシートクロスメンバを介してフロントシート等を搭載する。
【0045】
プラットホーム102は、ダッシュパネル103及び上述したフロントフロアパネル104それぞれの縁部同士を重ね合わせて接合するとともに、フロントフロアパネル104及びリアフロアパネル106それぞれの縁部同士を重ね合わせて接合することにより構成される。
【0046】
ダッシュパネル103は、ダッシュアッパーパネル103a及びダッシュロアパネル103bそれぞれの縁部同士を重ね合わせて接合することにより構成される。ダッシュパネル103は、エンジンコンパートメントとキャビンとの隔壁をなす。また、リアフロアパネル106は、リアフロアフロントパネル106a及びリアフロアリアパネル106bそれぞれの縁部同士を重ね合わせて接合することにより構成される。
【0047】
フロントフロアパネル110は、左右の平面部104cそれぞれの合計8つの外縁部104fを含む環状の領域(図1におけるハッチングにより示される領域)に、環状に凹凸形状部111が形成される。
【0048】
凹凸形状部111は、図1,2Aに示すように環状に形成されるのはもちろん、図2Bに示すように平板状部の一部の領域に、1又は2以上の凹凸形状部111−1が環状に形成されていてもよい。また、図2Cに示すように平板状部の一部の領域に、1又は2以上の凹凸形状部111−2が直線状に形成されていてもよく、この場合に、図2Dに示すように直線状に形成された凹凸形状部111−3及び111−4が互いに交差して形成されていてもよい。本発明では、このようにフロントフロアパネルの一部のもに凹凸形状を付すことで、他の平坦な部分を残すため、クロスメンバーなど、部材の取り付け等の際に有効となる。
【0049】
本発明は、以下に説明する凹凸形状により剛性を高めたフロントフロアパネルであるが、上述したように本発明の凹凸形状は複雑な形状のため、金属の種類、平板の剛性や板厚によっては、前面に凹凸形状を形成するのは困難であるため、フロントフロアパネルの一部、例えば図1に示す例では、環状に凹凸形状部を形成することにより全体として剛性を高めている。具体的には、図1に示す例でいえばフロントフロアパネルの周囲の一定の面積の環状部のみ本発明の凹凸形状が形成された型を用いて、通常の平板をプレス加工することにより本発明のフロントフロアパネルを製造することができる。このとき,平板を加熱してからプレス加工を行う温間成形やホットスタンプ工法でも良い。プレス加工としては、一対の金型を用いるプレス成形により成形することができるが、その具体的製造方法や型の作成などは本技術分野で知られたいずれの方法も用いることができる。なお、凹凸形状は、例えば表面に所望の凹凸形状を刻設された一対の成形ロールを用いるロール成形といった、プレス成形以外の他の塑性加工方法により成形することもできる。
(本発明の凹凸形状)
本発明の凹凸形状は、図3ないし6を参照して後述するように、第1基準領域及び第2基準領域を組み合わせて形成される。第1基準領域及び第2基準領域は、いずれも、略I型を呈するものである。その形態は、後述する実施例に示すように様々な形態をとり得る。例えば後述する凹凸形状部の例1のようにI型の縦棒部分及び横棒部分が同一の幅である輪郭形状でもよいし、凹凸形状部の例2のように、I型の縦棒部分の幅が横棒部分の幅よりも太い輪郭形状でもよい。また、凹凸形状部の例3のように、フィレットが略I型輪郭における角部に設けられてもよい。
【0050】
本発明の凹凸形状部は第1単位領域及び第2単位領域の2種類の単位領域を敷き詰めて形成されており、単位領域をなす仮想の正方形を横方向へ3分割した状態とは、正方形をなす横方向の1辺を3分割する2つの点から引かれた、縦方向の1辺と平行な2本の直線により正方形を分割し、横方向に3つの領域が並んで形成された状態を示す。
【0051】
単位領域をなす仮想の正方形を縦方向に3分割した状態とは、正方形をなす縦方向の1辺を3分割する2つの点から引かれた、横方向の1辺と平行な2本の直線により正方形を分割し、縦方向に3つの領域が並んで形成された状態を示す。
【0052】
それぞれ第1基準面及び第2基準面上の面によって構成される第1頂面及び第2頂面は、第1基準面及び第2基準面から中間基準面とは逆の方向に突出した部位によって構成することもできる。突出した部位の形状は、ドーム形状,稜線形状,錐形状等が例示されるが、これらに限定するものではない。さらにこれらに加え、突出した部位から、突出した方向とは逆方向(中間基準面の方向)へ突出させてもよい。
【0053】
凹凸形状部111を有するフロントフロアパネル110における第1基準領域及び第2基準領域は、第1分割領域及び第2分割領域をそれぞれ連ねた後に、両者の面積が変化しないように、両者の角部の一部を円弧状に変形させて構成してもよい。
【0054】
ここで角部は、第1基準領域の輪郭線において凸角となる角部と、第2基準領域の輪郭線において凸角となる角部を意味する。凹凸形状部111を有するフロントフロアパネル110の凹凸の角部を滑らかな形状にできるので、凹凸形状部111の成形が容易になるとともに、用途の拡大やデザイン性の向上が図られる。
【0055】
図4に示すように、凹凸形状部111を有するフロントフロアパネル110において、中間基準面に対する第1側面の傾斜角度θ(°)と、中間基準面に対する第2側面の傾斜角度θ(°)とは10〜90°の範囲にあることが、成形性を確保しつつ、優れた剛性向上率を有する凹凸形状を得ることができるためには好ましい。
【0056】
一方、第1側面の傾斜角度θ(°)又は第2側面の傾斜角度θ(°)が10°未満であると、第1領域、第2領域それぞれの突出高さを大きくすることが難しくなり、剛性向上率が低下する。また、第1側面の傾斜角度θ(°)又は第2側面の傾斜角度θ(°)が90°を超えると、凹凸形状の形成が困難となる。
【0057】
なお、金属板をプレス成形する場合において第1側面の傾斜角度θ(°)及び第2側面の傾斜角度θ(°)の上限値は、成形性の観点から、70°以下であることがより好ましい。したがって、第1側面の傾斜角度θ(°)及び第2側面の傾斜角度θ(°)は、10〜70°であることがより好ましい。
【0058】
第1側面及び第2側面は、複数の面により構成される。それらの面が全て同じ傾斜角度である必要はなく、部位によって傾斜角度を異ならせてもよい。ただし、いずれの傾斜角度も、上述の好ましい範囲内であることが好ましい。
【0059】
凹凸形状部111を有するフロントフロアパネル110における、順次配された第1基準面、中間基準面及び第2基準面の少なくとも一部又は全部が、平行な曲面からなることが好ましい。これにより、高い剛性を有する優れた凹凸形状部111を有するフロントフロアパネル110が様々な形状に変形可能であり、フロントフロアパネル110の用途が拡大される。
【0060】
フロントフロアパネル110は、金属板をプレス成形することにより凹凸形状部111を形成したものであることが好ましい。このとき、一般的な冷間プレス成形に加えて、金属板の温度を上昇させてからプレス成形を行う温間成形やホットスタンプ工法でも良い。
【0061】
エンボス成形等のプレス成形やロール成形といった塑性加工を金属板に施すことによって、凹凸形状部111が容易に形成される。温間成形やホットスタンプ工法のように、金属板の温度を上昇させてからプレス成形を行う場合でも,容易に形成することができる。このため、フロントフロアパネル110が金属板からなる場合には、凹凸形状部111が比較的容易に形成される。アルミニウム合金板,鋼板さらには銅合金板といった塑性加工可能な各種金属板が、金属板として例示される。
【0062】
フロントフロアパネル110の製造では、上記塑性加工の他に、鋳造や切削等を採用することも可能である。
【0063】
フロントフロアパネル110は、凹凸形状部111を有する限り、金属以外の材料により構成されてもよい。フロントフロアパネル110は、例えば樹脂製板によっても構成可能である。樹脂製のフロントフロアパネル110の凹凸形状部111は、射出成形あるいはホットプレス等によって形成可能である。樹脂製のフロントフロアパネル110は、金属材料製のフロントフロアパネル110よりも、成形上の制約が少ないために、設計の自由度がより広くなる。
【0064】
凹凸形状部111を有するフロントフロアパネル110の素材である金属板の成形前の板厚t(mm)は、鋼板の場合には0.65mm以下であることが好ましく、アルミニウム合金板である場合には0.5〜2.0mmであることが好ましい。金属板がアルミニウム合金板である場合、金属板の板厚が0.5mm未満であるとフロントフロアパネルとして要求される剛性が不足するおそれがあり、金属板の板厚が2.0mm超であると凹凸形状部111の成形が困難になる。
【0065】
凹凸形状部111を有するフロントフロアパネル110における、第1単位領域及び第2単位領域といった単位領域の一辺の長さL(mm)と、金属板の板厚t(mm)との比(L/t)は、10〜2000であることが好ましい。比(L/t)が10未満であると凹凸形状部111の成形が困難になるおそれがあり、比(L/t)が2000を超えると、十分な凹凸形状部111を成形できなくなり、フロントフロアパネルとして要求される剛性が不足するおそれがある。
【0066】
フロントフロアパネル110における、正方形の一辺の長さL(mm)に対し、比率Bに分割された領域がなす矩形形状の短辺の長さをBL(mm)としたとき、0.2L≦BL≦0.6Lの関係を満足することが好ましい。0.2L≦BL≦0.6Lの関係が満足されないと、凹凸形状部111の成形が困難になるおそれがある。
【0067】
凹凸形状部111を有するフロントフロアパネル110における、第1領域の突出高さH1(mm)と板厚t(mm)との比(H1/t)と、第1側面と中間基準面とがなす最も大きい傾斜角θ(°)とは、1≦(H1/t)≦−3θ+272の関係を満足するとともに、第2領域の突出高さH2(mm)と板厚t(mm)との比(H2/t)と、第2側面と中間基準面とがなす最も大きい傾斜角θ(°)とは、1≦(H2/t)≦−3θ+272の関係を満足することが好ましい。
【0068】
上記比(H1/t)が1未満であると、第1領域を形成することによる剛性向上効果が十分に得られないおそれがあり、上記比(H1/t)が−3θ+272を超えると凹凸形状部111の成形が困難になるおそれがある。同様に、上記比(H2/t)が1未満であると、第1領域を形成することによる剛性向上効果が十分に得られないおそれがあり、上記比(H2/t)が−3θ+272を超えると凹凸形状部111の成形が困難になるおそれがある。
【0069】
次に、凹凸形状部の例1〜3を説明する。
(凹凸形状部の例1)
本発明の実施例にかかる凹凸形状部20を有するフロントフロアパネル1を、図3〜6を参照しながら説明する。ここで、図3、4および6に示す凹凸形状部20は、図1および2に示す凹凸形状部111、111−1、111−2、111−3および111−4の一部を拡大してその詳細構造を理解できるようにした図である。したがって、各単位領域の数や大きさは各図に示したものに制限されない。
【0070】
図3は、例1の凹凸形状部20を示す部分平面図である。図3では、中間基準面における第1領域21と第2領域22の輪郭であって、外形線としては現れない部分は破線により示される。後述する図5においても同様である。
【0071】
図4図3のA−A断面の部分拡大図であり、図5は、例1の凹凸形状部20を示す斜視図である。
【0072】
図6は、例1の凹凸形状部を示す説明図である。図6は、フロントフロアパネル110の凹凸形状部20の形状を、中間基準面K3を基準として第1基準領域213及び第2基準領域223の配置によって表わす。後述する図10、11においても同様である。
【0073】
図3〜6に示すような凹凸形状部20を有するフロントフロアパネル110は、凹凸形状部20を有することによって剛性が高められる。
【0074】
凹凸形状部20は、以下に列記のように構成される。
凹凸形状部20は、第1基準面K1,中間基準面K3及び第2基準面K2という3つの基準面を基準として規定される。第1基準面K1,中間基準面K3及び第2基準面K2は、図4に示すように、板厚方向(図4における上下方向)について間隔をあけて順次平行に配置される。
【0075】
中間基準面K3は、図6に示すように、仮想の正方形である第1単位領域231と第2単位領域232を敷き詰めたものとして規定される。この仮想の正方形の辺に沿った2方向の一方が横方向(X方向)と規定され、他方が縦方向(Y方向)と規定される。
【0076】
第1単位領域231は、横方向(X方向)について比率A:B:A=1:1:1に3分割される。比率Aに分割された2つの領域は第1分割領域214として規定され、比率Bに分割された1つの領域は第2分割領域224として規定される。
【0077】
第2単位領域232は、縦方向(Y方向)について比率A:B:A=1:1:1に3分割される。比率Aに分割された2つの領域は第2分割領域224として規定され、比率Bに分割された1つの領域は第1分割領域214として規定される。
【0078】
中間基準面K3において、第1単位領域231と第2単位領域232が縦方向及び横方向について交互に配置される。隣接する第1分割領域214により形成される略I型を呈する領域が第1基準領域213として規定され、隣接する第2分割領域224により形成される略I型を呈する領域が第2基準領域223として規定される。
【0079】
凹凸形状部20は、図3〜5に示すように、第1領域21と第2領域22とを備える。第1領域21は、中間基準面K3上において定められた第1基準領域213から第1基準面K1へ向けて突出して形成される。第2領域22は、中間基準面K3上において定められた第2基準領域223から第2基準面K2へ向けて突出して形成される。
【0080】
第1領域21は、第1頂面211と第1側面212とにより構成される。第1頂面211は、第1基準領域213を第1基準面K1上に等倍又は縮小して投影することにより形成される。第1側面212は、第1頂面211の輪郭と第1基準領域213の輪郭とをつなぐことにより形成される。
【0081】
第2領域22は、第2頂面221と第2側面222とにより構成される。第2頂面221は、第2基準領域223を第2基準面K2上に等倍又は縮小して投影することにより形成される。第2側面222は、第2頂面221の輪郭と第2基準領域223の輪郭とをつなぐことにより形成される。
【0082】
図4に示すように、例1における第1基準面K1,中間基準面K3及び第2基準面K2の3つの基準面は、それぞれ平行な平面である。また、第1頂面211は、その板厚中心が第1基準面K1と一致する位置に配置され、第2頂面221は、その板厚中心が第2基準面K2と一致する位置に配置される。そして、第1基準面K1と中間基準面K3とがなす距離を突出高さH1(mm)とし、第2基準面K2と中間基準面K3とがなす距離を突出高さH2(mm)とする。
【0083】
また、例1では、第1領域21と第2領域22とは形状及び寸法が同じであり、突出方向のみが異なる。第1領域21の突出高さH1(mm)と第2領域22の突出高さH2(mm)は、いずれも1.5mmである。
【0084】
また、例1の凹凸形状部20を有するフロントフロアパネル1の素材は、板厚t=0.30mmのアルミニウム合金製の平板である。
【0085】
凹凸形状部20は、一対の金型を用いるプレス成形により成形される。なお、凹凸形状部20は、例えば表面に所望の凹凸形状を刻設された一対の成形ロールを用いるロール成形といった、プレス成形以外の他の塑性加工方法により成形してもよい。
【0086】
図4に示すように、中間基準面K3に対する第1側面212の傾斜角度θ(°)及び中間基準面K3に対する第2側面222の傾斜角度θ(°)は、いずれも30°である。第1側面212と第2側面222とは、折れ曲がり部を有することなく、一平面により連続して形成される。
【0087】
図6に示すような、例1における中間基準面K3を基準とする第1単位領域231及び第2単位領域232の一辺の長さLは24mmである。
【0088】
第1単位簡域231及び第2単位領域232の一辺の長さL(mm)と、アルミニウム合金板の板厚t(mm)との比(L/t)は80であり、10〜2000の範囲内にある。
【0089】
第1単位領域231及び第2単位領域232の一辺の長さL(mm)に対し、比率Bに分割された領域がなす矩形形状の短辺の長さBLは8mmであり、4.8≦BL≦14.4の範囲内にある。
【0090】
第1領域21の突出高さH1(mm)と板厚t(mm)との比(H1/t)は5である。また、第1側面212と中間基準面K3とがなす傾斜角θ=30°であり、−3θ+272=182である。したがって、1≦(H1/t)≦−3θ+272の関係が成り立つ。
【0091】
同様に、第2領域22の突出高さH2(mm)と板厚t(mm)との比(H2/t)は5である。また、第2側面222と中間基準面K3とがなす傾斜角θ=30°であり、−3θ+272=182である。したがって、1≦(H2/t)≦−3θ+272の関係が成り立つ。
【0092】
例1のフロントフロアパネル110は、上記のような特殊な形状の凹凸形状部20を有する。すなわち、凹凸形状部20は、中間基準面K3を基準に定められた第1基準領域213から第1基準面K1へ向けて突出する第1領域21と、中間基準面K3上において定められた第2基準領域223から第2基準面K2へ向けて突出する第2領域22とを有する。そして、第1領域21は、第1頂面211と、第1頂面211の輪郭と第1基準領域213の輪郭とをつないで形成される第1側面212とからなる。また、第2領域22は、第2頂面221と、第2頂面221の輪郭と第2基準領域223の輪郭とをつないで形成される第2側面222とからなる。
【0093】
第1領域21と第2領域22は、フロントフロアパネル1の厚さ方向に離れた位置に配置される第1頂面211及び第2頂面221と、フロントフロアパネル1の厚さ方向に交差して配置される第1側面212及び第2側面222とからなる。このように、凹凸形状部20は、帳面部など、フロントフロアパネル110の板厚方向の中立面から離れた位置に板材の多くが配置されることとなる。そのため、これら中立面から離れた部分を多く有することで材料が強度部材として効果的に使用されるため、剛性とエネルギー吸収特性をいずれも大幅に向上できる。
【0094】
また、第1基準領域213の面積と、第2基準領域223の面積とは同一である。また、中間基準面K3に対する第1側面212及び第2側面222がなす傾斜角度θ、θを同一とし、第1領域21及び第2領域22の突出高さH1、H2も同一としてある。このため、フロントフロアパネル1の表裏に突出する第1領域21と第2領域22の形状も同一になる。したがって、より効果的に剛性を向上させることができる。
【0095】
また、剛性の向上に伴う制振性向上効果と、凹凸形状による音の反響抑制効果とを得られる。
【0096】
例1のフロントフロアパネル110の剛性向上効果を定量的に判断するため、FEM解析による片持ち梁による曲げ剛性評価と、3点曲げ試験による曲げ剛性評価とを行った。
【0097】
[FEM解析]
例1のフロントフロアパネル110の剛性向上効果及びエネルギー吸収特性を定量的に判断するために、FEM解析を行って片持ち梁による曲げ剛性を評価した。
【0098】
片持ち梁による曲げ剛性評価のFEM解析は、図3に示すように、一端(Z1,Z3)を固定端とするとともに他端(Z2,Z4)を自由端とし、自由端である他端(Z2,Z4)の中央部に1Nの荷重を負荷した際における試験片であるフロントフロアパネル1のたわみ量を求めた。
【0099】
試験片の形状は、120mm×120mmの矩形形状とし、例1に示す凹凸形状部20の形状を便宜的に全面に形成した。凹凸形状は、試験片の一辺と上記単位領域における仮想の正方形の一辺とがなす角度を、0、15、30、45、60、75、90°の各方向へ変化させて成形した。また、板成形後の板厚tは、表面積の増加割合から、0.274mmとした。なお、図3に示す固定端Z1及び自由端Z2は0度方向における固定端及び自由端を示し、固定端Z3及び自由端Z4は90°方向における固定端及び自由端を示す。
【0100】
評価は、凹凸形状部20を形成していない平板状の元板について、同様のFEM解析を行い、得られたたわみ量を比較することにより行った。
【0101】
図7は、例1の片持ち梁による凹凸形状部の剛性向上率を示すグラフであり、FEM解析の結果を、上記角度を横軸とするとともに曲げ剛性の向上率を縦軸として示す。
【0102】
図7のグラフに示すように、0°方向及び90°方向における剛性の向上率(P1,P2)が22.9で最も高く、45°方向における剛性の向上率(P3)が15.4倍で最も低くなること、及び例1の凹凸形状部20の形状は、その形成方向のいずれの方向においても非常に高い剛性の向上率を有することがいずれも明らかとなった。
【0103】
[3点曲げ試験]
図8は、例1の3点曲げ試験の試験要領を示す説明図である。
【0104】
図8に示すように、3点曲げ試験は、横倒しした2つの円筒状支持材を支点間距離S=120mmとなるよう平行に配置して構成した2つの支点Wの上に本発明の凹凸形状を有する試験片31を配置し、先端断面が半円状をなす平板形状の押圧冶具Jによって試験片31の長手方向の中央の位置に荷重を負荷し、試験片31の変位量を計測した。評価は、凹凸形状を形成していない平板状の元板について、同様の3点曲げ試験を行い、荷重一変位線図を比較することにより行った。
【0105】
試験片31は、成形前の形状が100mm×150mm、板厚t=0.3mmのA1050−O材であり、例1に示す凹凸形状部20を便宜的に全面に形成してある。この試験片31における凹凸形状の形成方向は、上記片持ち梁におけるFEM解析の0°方向及び45°方向の場合と同様である。
【0106】
図9は、例1の3点曲げ試験の結果を示すグラフであり、3点曲げ試験の結果から得られた荷重を縦軸とするとともに変位を横軸とした荷重一変位線図である。
【0107】
同図において、実線Xは45°方向に凹凸形状を設けた場合の計測結果であり、実線Yは0°方向に凹凸形状を設けた場合の計測結果であり、実線Zは平板状の元板の計測結果である。
【0108】
図9のグラフにより示すように、実線Xは、実線Zに比べて立ち上がりの傾き角が12.1倍となる。したがって、45°方向に凹凸形状を設けた場合の曲げ剛性は、平板状の元板と比べ、12.1倍に向上することが明らかとなった。また実線Yは、実線Zに比べ立ち上がりの傾き角が15.4倍となる。したがって、0°方向に凹凸形状を設けた場合の曲げ剛性は、平板状の元板と比べ、15.4倍に向上することが明らかとなった。
【0109】
また、荷重と変位の積が試験片31を変形させるエネルギー量(仕事量)である。このため、図9の荷重一変位線図に示すように、実線X及び実線Yは、実線Zに比べて、変形に要するエネルギー量が高いことがわかる。したがって、例1の凹凸形状は、平板状の元板に対してエネルギー吸収量が大幅に向上することが明らかとなった。
【0110】
(凹凸形状部の例2)
図10は、例2における凹凸形状部を示す説明図であり、中間基準面K3を基準として凹凸形状を表現した図である。
【0111】
図10に示すように、例2は、例1の凹凸形状部20を有するフロントフロアパネル110の変形例である。
【0112】
図10に示す中間基準面K3を基準として表現される凹凸形状部20を有するフロントフロアパネル110は、第1単位領域231及び第2単位領域232における分割の比率を変化させた例である。
【0113】
第1単位領域231は、横方向へ比率A:B:A=1:2:1に3分割される。比率Aに分割された領域は第1分割領域214として規定され、比率Bに分割された領域は第2分割領域224として規定される。
【0114】
第2単位領域232は、縦方向へ比率A:B:A=1:2:1に3分割される。比率Aに分割された領域は第2分割領域224として規定され、比率Bに分割された領域は第1分割領域214として規定される。
【0115】
なお、例2の凹凸形状部20を有するフロントフロアパネル110は、図10に示す中間基準面K3に基づいて定められた第1基準領域213及び第2基準領域223から、第1基準面K1及び第2基準面K2へ、それぞれ突出した第1領域21及び第2領域22を有する。他の構成は、例1と同様である。
【0116】
例2は、例1と同様の作用効果を発揮する。
(凹凸形状部の例3)
図11は、例3における凹凸形状部20を示す説明図である。
【0117】
図11に示すように、例3は、例2の凹凸形状部20を有するフロントフロアパネル110において、中間基準面K3を基準に第1基準領域213及び第2基準領域223を定めた後、両者の面積が変化しないように両者の角部の一部を、円弧状に変形させたものである。
【0118】
具体的には、図11に示すように、第1基準領域213の輪郭線がなす4か所の凸角部a1と、第2基準領域223がなす4か所の凸角部a2とを、いずれも円弧状に変形させている。
【0119】
例3では、図11に示す第1基準領域213及び第2基準領域223から、第1基準面K1及び第2基準面K2に対して突出する凹凸形状が形成される。その他の構成は、例1と同様である。
【0120】
例3は、凹凸形状部20を有するフロントフロアパネル110の凹凸の角部の形状を滑らかにするため、成形が容易になるとともに、用途の拡大やデザイン性の向上が図られる。
【0121】
例3は、その他については例1と同様の作用効果を有する。
図12は、本発明の凹凸形状として効果を奏する最少の凹凸形状部20を説明する図である。つまり、本発明の凹凸形状は、複数の単位領域を並べることにより剛性を高めるが、最低どの程度並べれば本発明の効果が得られるかを図12を参照して説明する。
【0122】
図12に示すように、本発明の凹凸形状部111は略I型を呈する領域を2列以上有する必要がある。すなわち、図1に示す環状の凹凸形状部111は、少なくとも略I型を呈する領域を2列以上有すれば、最低限必要な剛性を得ることができる。好ましくは、環状の凹凸形状部111の領域の面積は平面部104cの面積の40%以上となるように形成される。このときの略I型の配置方法は,例えば略I型が2列を有する場合,幅方向へ略I型を1個と1個を連続的に配置して2列としても良いし、幅方向へ略I型が0.5個,1個,0.5個を連続的に配置することで計2列としても良い。
【0123】
従来の鋼製のフロントフロアパネルの板厚は0.65mm程度である。本発明に係るフロントフロアパネル110は、平面部104cに環状の凹凸形状部111を有するために高い剛性を有することから、板厚を0.55mm程度に薄くしても、追加の剛性部材を用いる必要がなく、従来のフロントフロアパネルと同等の剛性を有する。
【0124】
フロントフロアパネル110では、プレス工程の成形下死点で凹凸形状部111を成形するが、凹凸形状部111を平面部104cの全部ではなく一部に形成するので、プレス成形時に必要な成形荷重が極めて高くなることを防止し、プレス工程の成形下死点で凹凸形状部111を成形することができるので、凹凸形状部111を有するフロントフロアパネル110を効率よく生産できる。
【0125】
さらに、フロントフロアパネル110は、凹凸形状部111を平面部104cの外縁部104fを含む環状の領域に形成するので、凹凸形状部111を形成されたフロントフロアパネル110に剛性に異方性がないことから、所望の剛性や音振動特性を確実に得られる。
【実施例1】
【0126】
本発明を、実施例を参照しながら、具体的に説明する。本実施例では、本発明を鋼板に適用するが、これに限らず上述したアルミニウムをはじめとして本技術分野で知られたいずれの材料に適用することもできる。したがって、例えば本発明をアルミニウム合金板へ適用した場合にも本発明の効果は奏するが、鋼板に適用した場合と同様である。このため、アルミニウム合金板へ適用した場合の説明を省略する。
【0127】
図13Aは、図1に示すフロントフロアパネル110の平面部104cの縁(図1,13A中のハッチング部)に凹凸形状部111を形成した解析モデルXを示す説明図であり、図13Bは、平面部104cの中央(図1のハッチング部を除く部分、図13B中のハッチング部)に凹凸形状部111を形成した解析モデルYを示す説明図であり、図13Cは、平面部104cの縁に凹凸形状部111をC字状に形成した解析モデルZを示す説明図である。
【0128】
図13A図13Cに示す解析モデルX〜Zが、以下に列記の条件で、解析された。
解析モデルX〜Zの板厚:0.55mm
解析モデルX〜Zに形成した凹凸形状部111の面積:いずれも平面部104cの43%
解析モデルX〜Zに形成した凹凸形状部111の形状:図3に示す凹凸形状部20
解析モデルX〜Zの凹凸形状111: A:B:A=1:1:1、θ=θ=30°、H1=H2=1.1mm、単位領域の一辺の長さL=16.1mm(図4,12より求めることができる)
解析モデルX,Zでは、形成した凹凸形状部111の幅は、W1=36mm(略I型が2列)、W4=72mm(略I型が4列)とした。また、解析モデルYは、平面部104cの中央へW2=146mm,W3=340mmである範囲に形成した。
【0129】
解析方法及び評価項目:静的陰解法(FEM)による、図1中の丸囲み数字1の方向へのねじり剛性、及び、丸囲み数字2の方向へのねじり剛性を評価した。以下の評価も同様に行った。
【0130】
図14は、解析モデルX〜Zについて凹凸形状部を環状に形成することの有効性を示すグラフである。
【0131】
図14のグラフに示すように、環状の領域に凹凸形状部111を形成した解析モデルXのねじり剛性が、ねじり方向によらず、最も高かった。平面部104cの中央に凹凸形状部111を形成した解析モデルYのねじり剛性が最も低く、平面部104cにC字状に凹凸形状部111を形成した解析モデルZのねじり剛性は、解析モデルXと解析モデルYの中間であった。
【0132】
解析モデルXのねじり剛性は、解析モデルYのねじり剛性に比べて図1中の丸囲み数字1の方向で16%高く、丸囲み数字2の方向で24%高かった。
【0133】
これに対し、解析モデルZのねじり剛性は、解析モデルYのねじり剛性に比べて丸囲み数字1の方向で5%高く、丸囲み数字2の方向で16%高かったものの、解析モデルXより不芳であり、解析モデルXのねじり剛性は、解析モデルZのねじり剛性に比べて丸囲み数字1の方向で10%高く、丸囲み数字2の方向で7%高かった。
【0134】
図14のグラフに示すように、解析モデルXは、丸囲み数字1の方向、及び丸囲み数字2の方向のいずれの方向についても、解析モデルY,Zを上回るねじり剛性を有しており、凹凸形状部111を平面部104cの縁を含んで環状に形成することが有効であることが示される。
【実施例2】
【0135】
フロントフロアパネル110の平面部104cの縁(図1,13A中のハッチング部)に凹凸形状部111を形成した略I型が2列で構成された解析モデルXと、略I型が1列で構成された解析モデルX−1と、略I型が3列で構成された解析モデルX−3とを比較した。拘束条件やねじり方向は実施例1と同じとした。解析モデルX,X−1,X−3の詳細な条件を示す。
【0136】
解析モデルX,X−1,X−3の板厚:0.55mm
解析モデルX,X−1,X−3に形成した凹凸形状部111の面積:いずれも平面部104cの43%
解析モデルX,X−1,X−3の凹凸形状111: A:B:A=1:1:1
解析モデルX、X−1の凹凸形状111の高さ:H1=H2=1.1mm
解析モデルX−3の凹凸形状111の高さ:H1=H2=0.75mm
(略I型が3列の場合,成形性の観点からH1=H2=1.1mmを形成することが困難であると考えられるため,凹凸形状の例1で示されているθ=θ=30°となる高さとした)
解析モデルX,X−1,X−3の概略形状:図1の解析モデルXと同様に形成する幅W1=36mm
図16は、解析モデルX,X−1,X−3のねじり剛性の解析結果を示すグラフである。
【0137】
図16のグラフに示すように、解析モデルX(2個のI型)のねじり剛性が最も高くなった。解析モデルX−1(1個のI型)が低い理由は、異方性が高くなるため、平板と同程度のねじり剛性になる方向が存在するためである。一方、解析モデルX−3(3個のI型)のねじり剛性が解析モデルX(2個のI型)に比べて低い理由は、X−3の凹凸の高さ(H1とH2)がXに比べて低いため、断面二次モーメントが低下するためである。このように、I型の数が増加することに伴って凹凸形状部111の高さが低くなるため、2個のI型で構成された解析モデルXが最もねじり剛性が高くなった。
【実施例3】
【0138】
板厚が0.55mmのフロントフロアパネルであって、A:B:A=1:1:1、θ=θ=30°、幅方向に含まれる略I型の数を2個として凹凸形状部111を形成した平面部104cの縁の幅を、24,36,48mmとしたフロントフロアパネルと、凹凸形状部111を形成しない板厚0.65mmのフロントフロアパネルについて、実施例1と同様にねじり剛性を解析した。
【0139】
図15Aは、凹凸形状部の幅と、フロントフロアパネルの、丸囲み数字1の方向へのねじり剛性との関係を示すグラフである。図15Bは、凹凸形状部の幅と、フロントフロアパネルの、丸囲み数字2の方向へのねじり剛性との関係を示すグラフである。
【0140】
図15A及び図15Bにグラフで示すように、幅を32mm以上(平面部104cの40%以上)とすること、すなわち、フロントフロアパネル110の平面部104bの幅方向に対して略I型を呈する領域を2列並列させることによって、フロントフロアパネルの板厚を0.1mm減肉して0.55mmに低減できることがわかる。
【実施例4】
【0141】
図17Aは、図1に示すフロントフロアパネル110の平面部104cの縁(図1,17A中のハッチング部)に凹凸形状部111を形成した解析モデルCを示す説明図である。図17Bは、図1に示すフロントフロアパネル110の平面部104cの縁及び中央(図17B中のハッチング部)に凹凸形状部111を形成した解析モデルDを示す説明図である。
【0142】
図17Aに示す解析モデルCは、図2Cに示すように平板状部の一部の領域に直線状に形成された凹凸形状部111−2が、環状の凹凸形状部111とつながっているモデルであり、解析モデルDはつながっていないモデルである。
【0143】
解析モデルC,Dを解析モデルXと比較した。拘束条件やねじり方向は実施例3,4と同様である。
【0144】
以下に解析モデルC,D,Xの詳細を示す。
解析モデルC,D,Xの板厚:0.55mm
解析モデルXに形成した凹凸形状部111の面積:平面部104cの43%
解析モデルC,Dに形成した凹凸形状部111の面積:いずれも平面部104cの48%
解析モデルC,D,Xの凹凸形状111: A:B:A=1:1:1,θ1=θ2=30°、H1=H2=1.1mm
解析モデルC,D,Xの凹凸形状部111の概略形状:図4参照
凹凸形状部111を形成する幅W1:36mm(略I型が2列),W5=80mm
図18は、解析モデルC、D、Xのねじり剛性の解析結果を示すグラフである。
【0145】
図18のグラフに示すように、解析モデルC、Dの丸2のねじり剛性は、解析モデルXのねじり剛性よりも1〜2%程度向上する。これは直線状に形成された凹凸形状部111−2の延在する方向が丸2のねじり剛性を高める方向であるためと考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19