【文献】
Hitoshi Kanazawa et al.,Time-Spatial Labeling Inversion Tag (t-SLIT) using a Selective IR-Tag On/OFF Pulse in 2D and 3D half-Fourier FSE as Arterial Spin Labeling,Proceedings of International Society for Magnetic Resonance in Medicine[CD−ROM],2002年 1月
【文献】
S. Yamada et al.,Non-Contrast Bulk Flow Imaging of Cerebrospinal Fluid (CSF) using Time-Spatial Labeling Inversion Pulse (time-SLIP),Proceedings of International Society for Magnetic Resonance in Medicine[CD−ROM],2008年 8月
【文献】
Seung-Koo Lee et al.,The Usefulness of SPAMM Technique for Predictability of Postsurgical Outcome in Syringomyelia,Proceedings of International Society for Magnetic Resonance in Medicine[CD−ROM],1998年 4月
【文献】
S C Wayte et al.,Spatial Modulation of Magnetization in the Study of CSF Dynamics: Implications for Neurosurgical Practice,Proceedings of International Society for Magnetic Resonance in Medicine[CD−ROM],1996年 4月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージングは、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF: radio frequency)信号で磁気的に励起し、この励起に伴って発生する核磁気共鳴(NMR: nuclear magnetic resonance)信号から画像を再構成する撮像法である。
【0003】
この磁気共鳴イメージングの分野において、血流像を得る手法としてMRAが知られている。MRAのうち、造影剤を使用しないものは非造影MRAと呼ばれる。非造影MRAでは、ECG (electro cardiogram)同期を行って心臓から拍出された速い流速の血流を捕捉することにより良好に血管を描出するFBI (Fresh Blood Imaging)法が考案されている。
【0004】
MRAでは、血管をより良好に描出するために血液の「ラベリング(「タグ付け」と同意味で用いる)」が行われる。血液をラベリングする手法としては、t-SLIP (Time-SLIP: Time Spatial Labeling Inversion Pulse)法が知られている(例えば特許文献1参照)。このt-SLIP法によれば、非造影MRAにおいて、選択的に特定の血管を描出することができる。
【0005】
図1は、従来のt-SLIP法によるデータ収集法を説明する図である。
図1において横軸は時間を示す。
図1に示すようにt-SLIP法では、領域選択反転回復(IR: inversion recovery)パルスがラベリングパルスとして印加されることによってラベリング領域の血液がラベリングされる。そして、領域選択IRパルスの印加タイミングからBBTI (Black Blood Traveling Time)後にイメージング用のデータ収集が行われる。そして、
図1に示すように、血流の動態観察を行うために、BBTIがデータ収集ごとに変更されてイメージングが行われる。このため、BBTIを小刻みに多数設定すれば、より細かな時間変化に対応する血流の動態を観察することができる。
【0006】
さらに、t-SLIP法において複数のラベリングパルスを印加する手法も考案されている。
図2は、従来のt-SLIP法による複数のラベリングパルスの印加を伴うデータ収集法を説明する図である。
【0007】
図2において横軸は時間を示す。
図2に示すようにt-SLIP法において複数のラベリングパルスを異なるタイミングで印加することにより、1回のデータ収集に対して複数のBBTIを設定することができる。また、ラベリングパルスを印加する空間位置を変えることができる。これにより、様々な血管に加えて脳脊髄液(CSF: cerebrospinal fluid)を選択的に描出または抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
【0019】
(構成および機能)
図3は本発明に係る磁気共鳴イメージング装置の実施の形態を示す構成図である。
磁気共鳴イメージング装置20は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石21、この静磁場用磁石21の内部に設けられたシムコイル22、傾斜磁場コイル23およびRFコイル24を備えている。
【0020】
また、磁気共鳴イメージング装置20には、制御系25が備えられる。制御系25は、静磁場電源26、傾斜磁場電源27、シムコイル電源28、送信器29、受信器30、シーケンスコントローラ31およびコンピュータ32を具備している。制御系25の傾斜磁場電源27は、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zで構成される。また、コンピュータ32には、入力装置33、表示装置34、演算装置35および記憶装置36が備えられる。
【0021】
静磁場用磁石21は静磁場電源26と接続され、静磁場電源26から供給された電流により撮像領域に静磁場を形成させる機能を有する。尚、静磁場用磁石21は超伝導コイルで構成される場合が多く、励磁の際に静磁場電源26と接続されて電流が供給されるが、一旦励磁された後は非接続状態とされるのが一般的である。また、静磁場用磁石21を永久磁石で構成し、静磁場電源26が設けられない場合もある。
【0022】
また、静磁場用磁石21の内側には、同軸上に筒状のシムコイル22が設けられる。シムコイル22はシムコイル電源28と接続され、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給されて静磁場が均一化されるように構成される。
【0023】
傾斜磁場コイル23は、X軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zで構成され、静磁場用磁石21の内部において筒状に形成される。傾斜磁場コイル23の内側には寝台37が設けられて撮像領域とされ、寝台37には被検体Pがセットされる。RFコイル24にはガントリに内蔵されたRF信号の送受信用の全身用コイル(WBC: whole body coil)や寝台37や被検体P近傍に設けられるRF信号の受信用の局所コイルなどがある。
【0024】
また、傾斜磁場コイル23は、傾斜磁場電源27と接続される。傾斜磁場コイル23のX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zはそれぞれ、傾斜磁場電源27のX軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zと接続される。
【0025】
そして、X軸傾斜磁場電源27x、Y軸傾斜磁場電源27yおよびZ軸傾斜磁場電源27zからそれぞれX軸傾斜磁場コイル23x、Y軸傾斜磁場コイル23yおよびZ軸傾斜磁場コイル23zに供給された電流により、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成することができるように構成される。
【0026】
RFコイル24は、送信器29および/または受信器30と接続される。送信用のRFコイル24は、送信器29からRF信号を受けて被検体Pに送信する機能を有し、受信用のRFコイル24は、被検体P内部の原子核スピンのRF信号による励起に伴って発生したNMR信号を受信して受信器30に与える機能を有する。
【0027】
一方、制御系25のシーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30と接続される。シーケンスコントローラ31は、傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させるために必要な制御情報、例えば傾斜磁場電源27に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報を記憶する機能を有する。さらにシーケンスコントローラ31は、記憶した所定のシーケンスに従って、傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることにより、X軸傾斜磁場Gx、Y軸傾斜磁場Gy,Z軸傾斜磁場GzおよびRF信号を発生させる機能を有する。
【0028】
また、シーケンスコントローラ31は、受信器30におけるNMR信号の検波およびA/D (analog to digital)変換により得られた複素データである生データ(raw data)を受けて、この生データをコンピュータ32に与えるように構成される。
【0029】
このため、送信器29には、シーケンスコントローラ31から受けた制御情報に基づいてRF信号をRFコイル24に与える機能が備えられる。一方、受信器30には、RFコイル24から受けたNMR信号を検波して所要の信号処理を実行するとともに、当該信号処理後のNMR信号をA/D変換することにより、デジタル化された複素データである生データを生成する機能が備えられる。また、受信器30には、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える機能が備えられる。
【0030】
また、コンピュータ32の記憶装置36に保存されたプログラムを演算装置35で実行することにより、コンピュータ32には各種機能が備えられる。ただし、プログラムによらず、各種機能を有する特定の回路を磁気共鳴イメージング装置20に設けてもよい。
図4は、
図3に示すコンピュータ32の機能ブロック図である。
【0031】
コンピュータ32は、プログラムにより撮像条件設定部40、シーケンスコントローラ制御部41、k空間データベース42、CSF像生成部43および表示処理部44として機能する。
【0032】
撮像条件設定部40は、入力装置33からの指示情報に基づいてパルスシーケンスを含む撮像条件を設定し、設定した撮像条件をシーケンスコントローラ制御部41に与える機能を有する。特に、撮像条件設定部40は、造影剤を用いずにCSF像を取得するためのパルスシーケンスを設定する機能を備えている。より具体的には、撮像条件設定部40は、ラベリングを行って周期性のないCSFを選択的に描出するためのシーケンスを設定する機能を有する。
【0033】
CSFを識別するためのラベリングは、ラベリングパルスをCSFまたは着目領域に印加することにより行うことができる。ラベリングパルスとして利用可能なパルスとしては、t-SLIP、飽和(SAT: saturation)パルス、SPAMM (spatial modulation of magnetization)パルス、および、ダンテ(DANTE)パルスが知られている。
【0034】
t-SLIPは、領域非選択IRパルスと、領域選択IRパルスとで構成される。ただし、領域非選択IRパルスは、ON/OFFの切換が可能である。領域選択IRパルスの印加領域となるラベリング領域は、撮像領域とは独立に任意に設定することが可能である。尚、複数のt-SLIPが印加されるように撮像条件を設定してもよい。
【0035】
領域選択的90°SATパルスは、選択されたスラブ領域の磁化ベクトルを90°倒して縦磁化を飽和させるパルスである。また、単一のみならず複数の領域選択的90°SATパルスが印加されるように、撮像条件を設定することもできる。複数の領域選択的90°SATパルスを印加する場合には、複数の選択スラブ領域を放射状やストライプ状のパターンに設定することができる。
【0036】
SPAMMパルスは、Rest grid pulseとも呼ばれ、元々心臓の動きをモニタリングするために開発されたものである。SPAMMパルスは、領域非選択的に印加されるパルスであり、傾斜磁場の調整により、ストライプパターン、グリッドパターン(格子状のパターン)、放射状のパターン等の所望のパターンで飽和された領域を形成することができる。そして、飽和パターンが位置マーカとして機能するため、SPAMMパルスの印加を伴うイメージングによって、CSFの流れを示す画像を得ることができる。
【0037】
ダンテパルスも、ストライプパターンやグリッドパターンや放射状のパターン等の所望のパターンで飽和された領域を形成するラベリングパルスである。SPAMMパルスおよびダンテパルスは、同時刻に印加される複数のSATパルスと等価のパルスである。
【0038】
さらに、単一または複数のt-SLIPまたはSATパルスと、SPAMMパルスまたはダンテパルスとを組合せてラベリングパルスとして印加されるように撮像条件を設定することもできる。
【0039】
図5は、
図4に示す撮像条件設定部40において設定されるt-SLIPの印加を伴う撮像条件を示す図である。
【0040】
図5において横軸は時間を示す。
図5に示すように、t-SLIPの印加後、連続的に複数回に亘るデータ収集(DATA ACQUISITION 1, DATA ACQUISITION 2, DATA ACQUISITION 3,…)が繰り返される。このため、時間的に連続した異なる時刻t11, t12, t13, …における時系列のデータを収集することができる。すなわち、1つのラベリングパルスの印加後に各時刻に対応する複数フレーム分のイメージングデータが収集される。
【0041】
より詳細には、従来技術では、
図1に示したように、ラベリングしてから1フレーム分のデータ収集を行い、再度ラベリングしてから1フレーム分のデータ収集を行うという操作を繰り返していた。このため、従来技術では、各々のフレーム毎に、ラベリングされているCSFは異なる。一方、本発明では、
図5に示すようにラベリングを1回行った後に、各々のCSF画像のフレームに対応するデータ収集を連続的に行うため、各フレーム間でラベリングされているCSFは同一となる。従って、本発明におけるCSF像の収集方法では、より正確に、かつ、時間的に連続的にCSFの動態を把握できる。
【0042】
また、領域非選択IRパルスがONの場合には、略同時に領域非選択IRパルスと領域選択IRパルスとが印加される。t-SLIPの印加タイミングから最初のデータ収集タイミングまでの期間t11は、領域選択IRパルスによるラベリング領域の設定位置、CSFを描出しようとしている着目領域の設定位置、背景部分における縦磁化の緩和時間などの撮像条件に応じて適切に設定することができる。
【0043】
t-SLIP法によるイメージングには、flow-in法とflow-out法がある。flow-in法は、領域選択IRパルスを着目領域に印加して着目領域における縦磁化を反転させ、着目領域の外部から着目領域に流入するラベリングされていないCSFを描出する方法である。一方、flow-out法は、領域非選択IRパルスを印加して縦磁化を反転させるとともにラベリング領域に領域選択IRパルスを印加してラベリング領域内におけるCSFの縦磁化を正値に反転させ、ラベリング領域から着目領域に流入するラベリングされたCSFを選択的に描出する方法である。すなわち、flow-in法では、ラベリング領域が着目領域に設定され、flow-out法では、ラベリング領域が着目領域の外部に設定される。
【0044】
このため、CSFが着目領域に流入した後にデータの収集が開始されるようにデータ収集タイミングを決定することができる。また、領域非選択IRパルスによって背景部分の縦磁化を反転させた場合には、縦緩和によって背景部分の縦磁化の絶対値がゼロ付近となるタイミングでデータの収集が開始されるようにデータ収集タイミングを決定してもよい。
【0045】
このようなt-SLIPをラベリングパルスとして用いる手法は、特に磁気共鳴イメージング装置20が3テスラ以上の高磁場を発生させることが可能であり、タグの持続時間を決定する緩和時間が長い場合に有効である。
【0046】
図6は、
図4に示す撮像条件設定部40において設定されるSPAMMパルスの印加を伴う撮像条件を示す図である。
【0047】
図6において横軸は時間を示す。
図6に示すように、SPAMMパルスの印加後、連続的に複数回に亘るデータ収集(DATA ACQUISITION 1, DATA ACQUISITION 2, DATA ACQUISITION 3,…)が繰り返される。このため、時間的に連続した時系列の時刻t21, t22, t23, …におけるデータを収集することができる。そして、t-SLIPを印加する場合と同様の効果が得られる。
【0048】
SPAMMパルスは、RFパルスとmodulated gradientパルスとで構成される。
図6は、2つの90°RFパルスの間にmodulated gradientパルスを設けてSPAMMパルスを構成した例を示している。そして、modulated gradientパルスの波形や印加軸を調整することによって、ストライプパターンやグリッドパターンの幅を制御することができる。SPAMMパルスの印加によって形成された広範囲のパターンは、CSFの流れに伴って移動する。このため、SPAMMパルスをラベリングパルスとして用いる場合には、同時刻において広範囲におけるCSFの動態を観察することが可能なCSF像を得ることができる。また、パターンがCSFの流れにより移動するため、SPAMMパルスの印加タイミングから最初のデータ収集タイミングまでの期間t21は、実施的にゼロとなるように短く設定することができる。
【0049】
なお、グリッドパターンは、ストライプパターンよりも、ラベリングパルスの印加時間が約2倍となる。放射状のパターンは、グリッドパターンよりもラベリングパルスの印加時間がさらに長くなる。従って、ラベリング領域のパターンについては、ストライプパターン、グリッドパターン、放射状のパターンといった所望のパターンを撮像目的や撮像条件に応じて選択することが好ましい。
【0050】
尚、
図5および
図6において、イメージングデータの収集用のシーケンスとしては、SSFP (steady state free precession)シーケンスやFASE (FastASE: fast asymmetric spin echoまたはfast advanced spin echo)シーケンス等の任意のシーケンスが使用できる。
【0051】
また、t-SLIP、SATパルス、SPAMMパルスおよびダンテパルス等のラベリングパルスの印加タイミングを、トリガ信号に基づいて決定する場合、トリガ信号としては、例えば、ECG (electro cardiogram)信号、呼吸センサによる同期信号(呼吸同期)、脈波同期(PPG: peripheral pulse gating)信号等の生体信号や、クロック信号などの任意の信号を用いることができる。ECG信号やPPG信号を用いる場合には、ECGユニットやPPG信号検出ユニットが磁気共鳴イメージング装置20に接続される。
【0052】
また、イメージングデータ収集と同時に、被検体Pの呼吸同期信号やECG信号を取得し、撮像後にCSF画像を表示する際に、各フレームの撮像時刻が呼吸や心拍のどの時相に対応するかの情報を各フレーム毎に並行表示(付帯表示)させてもよい。呼吸同期信号を用いる場合、1フレーム分のイメージングデータ収集に要する期間(
図5および
図6における、DATA ACQISITION 1 の期間)は、呼吸の1周期に対して十分短いことが好ましい。呼吸の1周期が約6秒である場合、1フレーム分のイメージングデータ収集に要する期間は、例えば0.3秒以下であることが好ましい。
【0053】
同様に、イメージングデータ収集と同時に、呼吸による腹部の拡張と収縮などの所定部位の体動をモニタリングし、撮像後にCSF画像を表示する際に、各フレームの撮像時刻が体動のどの時相に対応するかの情報を各フレーム毎に並行表示(付帯表示)させてもよい。この場合も、1フレームのイメージングデータ収集に要する期間は、体動の1周期に対して十分短いことが好ましい。
【0054】
また、SPAMMパルスやダンテパルスなどのラベリングパルスを印加する前に、領域非選択IRパルスを印加してもよい。その場合、以下に説明するように、CSFを観測可能な期間が長くなると考えられるからである。
【0055】
図7は、ラベリングパルスの前に領域非選択IRパルスを印加する場合としない場合のパルスシーケンスを、スピンの縦磁化成分Mzの回復過程と共に示したタイミング図である。
図7(a)〜
図7(d)において、横軸は経過時間tであり、
図7(b)、(c)において、縦軸は縦磁化成分Mzである。ここでは一例として、ラベリングパルスには、飽和パルスとしてのSPAMMパルスを用いる例を示す。
【0056】
図7(a)は、ラベリングパルスの前に領域非選択IRパルスを印加する場合のパルスシーケンスを示し、そのパルスシーケンスに従った場合の縦磁化成分Mzの回復過程は、
図7(b)に示すようになる。縦磁化成分Mzの回復過程の違いが比較し易いよう、
図7(b)の直下に、
図7(c)として、領域非選択IRパルスを印加しない場合の縦磁化成分Mzの回復過程を示す。
図7(d)は、ラベリングパルスの前に領域非選択IRパルスを印加しない場合のパルスシーケンスを示し、
図7(c)に示す縦磁化成分Mzの回復過程は、
図7(d)に示すパルスシーケンスに従った場合のものである。
【0057】
領域非選択IRパルスを印加しない場合、SPAMMパルスでラベリングされたCSFは、
図7(c)に示すように縦磁化成分Mzが90°倒された状態から徐々に静磁場方向に戻る。ここで、ラベリングされたCSFと、ラベリングされていないCSFとのNMR信号の信号レベルの差が所定値以上のとき、即ち、両者の縦磁化成分Mzの差が所定値以上のとき、両者を識別可能(CSFを観測可能)と考える。そのように考えると、領域非選択IRパルスを印加しない場合、CSFを観測可能なデータ収集期間は、
図7(c)に示すΔt-observe2となる。
【0058】
一方、領域非選択IRパルスを印加する場合、ラベリングされないCSFは、
図7(b)に示すように、領域非選択IRパルスの印加後に縦磁化成分Mzが180°反転し、経過時間に伴って縦磁化成分Mzが静磁場方向に回復していく。そして、領域非選択IRパルスの印加後のSPAMMパルスによってラベリングされたCSFは、
図7(b)に示すようにスピンの縦磁化成分Mzが90°だけ静磁場方向に戻る。このため、ラベリングされたCSFは、ラベリングされていないCSFよりも縦磁化成分Mzが早く静磁場方向に回復する。その後、ラベリングされていないCSFの回復に伴って、ラベリングされたCSFと、ラベリングされていないCSFとの縦磁化成分Mzの差が所定値になるまで、CSFを観測可能となる。この場合、CSFを観測可能なデータ収集期間は、
図7(b)に示すΔt-observe1となり、
図7(c)に示すΔt-observe2よりも長くなる。従って、ラベリングパルスの印加前に、領域非選択IRパルスを印加する場合、CSFを観測可能な期間が長くなる。
【0059】
上記のようにラベリングパルスの前に領域非選択IRパルスを印加する場合、NMR信号を処理して画像データを生成する過程において、複素信号である磁気共鳴信号の(絶対値ではなく)実部を用いてREAL再構成処理を行うことが好ましい。
【0060】
より詳細には、先に領域非選択IRパルスを印加する場合、NMR信号は、データ収集の初期において、縦磁化成分Mzが負値となる。これに対し通常の画像再構成処理を行うと、例えば、実部の二乗と虚部の二乗との和の二乗根が絶対値として輝度レベルとなる。この場合、縦磁化成分が−1に相当するNMR信号も、縦磁化成分が1に相当するNMR信号も輝度的には等しく、0〜1の範囲で輝度表示される。
【0061】
一方、REAL再構成処理をして、縦磁化成分が負値(例えば−1)に相当するNMR信号は負値として処理後、所定の信号レベル(縦磁化成分1に相当)を加算すれば、0〜2の範囲で輝度表示できる。即ち、REAL再構成処理をしない場合よりも、ダイナミックレンジを大きくできる。
【0062】
次に、コンピュータ32の他の機能について説明する。
シーケンスコントローラ制御部41は、入力装置33からの情報に基づいて、シーケンスコントローラ31にパルスシーケンスを含む撮像条件を与えることにより駆動制御させる機能を有する。また、シーケンスコントローラ制御部41は、シーケンスコントローラ31から生データを受けてk空間データベース42に形成されたk空間にk空間データとして配置する機能を有する。
【0063】
CSF像生成部43は、k空間データベース42からk空間データを取り込んで画像再構成処理を含むデータ処理によって時系列のCSF像データを生成する機能を有する。
【0064】
表示処理部44は、CSF像データに対してCSF部分の着色処理等の表示処理を施す機能と、表示処理後のCSF像データを表示装置34に表示させる機能を有する。
【0065】
(動作および作用)
次に磁気共鳴イメージング装置20の動作および作用について説明する。
図8は、
図3に示す磁気共鳴イメージング装置20により非造影で被検体PのCSF像を撮像する際の流れを示すフローチャートである。
【0066】
まずステップS1において、撮像条件設定部40は、
図5、
図6、
図7(a)、または、
図7(d)に示すように、ラベリングパルスの印加後に連続データ収集を行うCSF撮像条件を設定する(
図7(a)の場合には、ラベリングパルスの前に印加される領域非選択IRパルスの撮像条件も併せて設定される)。ラベリングパルスとしては、t-SLIP、SATパルス、SPAMMパルスまたはダンテパルス等のパルスを用いればよい。
【0067】
次にステップS2において、設定された撮像条件に従ってCSFのイメージングスキャンが実行される。
【0068】
そのために予め寝台37に被検体Pがセットされ、静磁場電源26により励磁された静磁場用磁石21(超伝導磁石)の撮像領域に静磁場が形成される。また、シムコイル電源28からシムコイル22に電流が供給され、撮像領域に形成された静磁場が均一化される。
【0069】
そして、入力装置33からシーケンスコントローラ制御部41にスキャン開始指示が与えられると、シーケンスコントローラ制御部41は、撮像条件設定部40から取得したパルスシーケンスを含む撮像条件をシーケンスコントローラ31に入力する。シーケンスコントローラ31は、入力されたパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源27、送信器29および受信器30を駆動させることにより、被検体Pがセットされた撮像領域に傾斜磁場を形成させると共に、RFコイル24からRF信号を発生させる。
【0070】
このため、被検体Pの内部における核磁気共鳴により生じたNMR信号が、RFコイル24により受信されて受信器30に与えられる。受信器30は、RFコイル24からNMR信号を受けて、所要の信号処理を実行した後、A/D変換することにより、デジタルデータのNMR信号である生データを生成する。受信器30は、生成した生データをシーケンスコントローラ31に与える。シーケンスコントローラ31は、生データをシーケンスコントローラ制御部41に与え、シーケンスコントローラ制御部41は、k空間データベース42に形成されたk空間に生データをk空間データとして配置する。
【0071】
なお、上記のパルスシーケンス、および、被検体PからのNMR信号の受信(データ収集動作)と並行して、被検体Pからの呼吸同期信号またはECG信号の取得、或いは、被検体Pの所定部位の体動のモニタリングを行ってもよい。
【0072】
次にステップS3において、CSF像生成部43は、k空間データベース42からk空間データを取り込み、このk空間データに画像再構成処理を含むデータ処理を施すことで、時系列のCSF像データを生成する。なお、ステップS2において、ラベリングパルスの印加前に、領域非選択IRパルスした場合には、このステップS3において、画像再構成処理の一部としてREAL再構成処理が用いられる。
【0073】
図9は、
図3に示す磁気共鳴イメージング装置20により撮像されたCSF像データの一例を示す図である。
【0074】
図9はダンテパルスの印加を伴って収集されたある時刻におけるCSF像を示す。ダンテパルスによってストライプパターンが生成されているのが確認できる。また、CSFの流れに伴ってストライプパターンも移動していることが確認できる。このようなCSF像において、より良好にCSFの動態を観察できるように、CSF像データに表示処理を施すことができる。
【0075】
その場合には、ステップS4において、表示処理部44が、CSF像データに対して表示処理を施し、表示処理後のCSF像データを表示装置34に表示させる。
【0076】
図10は、
図9に示すCSF像データに表示処理を施してCSFを識別表示させた例を示す図である。具体的には、
図9に示すCSF像データに信号反転処理を施すとグレースケールが反転する。さらに、CSF領域に対応する信号の閾値を設定し、閾値処理によって抽出されたCSF領域に着色処理を施せば、CSFは、より明瞭に識別表示される。なお、閾値処理によりCSF領域として抽出された位置と信号強度的に連続性を有する領域をリージョングローイング法(Region Growing Algorithms)によってCSF領域として再抽出(拡張)し、再抽出後のCSF領域に着色処理を施してもよい。リージョングローイング法は、スタートポイントの近傍ピクセルが予め指定した条件を満たすかどうかを判定し、前記条件を満たしている場合は前期近傍ピクセルが同じ領域に属すると判断し、これを繰り返すことで、目的とする領域全体を抽出する手法である。
【0077】
図10は、リージョングローイング法によって再抽出したCSF領域に着色処理を施してCSFを明瞭化した画像を、便宜上、グレースケールで(無彩色で)表したものである。
【0078】
また、異なる時刻に対応する複数のCSF像を時系列順に表示させることにより、シネ画像のようにCSFが流れていく様子を動画として観察することができる。そして、カラー画像によって、観察部分であるCSFの詳細な動態を容易に把握できる。その際、ステップS2で呼吸同期信号の取得や、ECG信号の取得、体動のモニタリングを行った場合、各フレームの撮像時刻が呼吸や心拍や体動のどの時相に対応するかの情報を各フレーム毎に並行表示(付帯表示)させればよい。
【0079】
また、撮像開始時刻からの経過時間に応じて、フレーム毎に着色の基準を変えてもよい。一例として、ラべリングパルスとしてSPAMMパルスを用い、ラべリングパルスの前に領域非選択IRパルスを印加しない場合で考える(
図7(c)参照)。飽和パルスとしてのラベリングパルスの印加直後において、ラベリングされた(縦磁化成分Mzがゼロに近い)CSFと、ラベリングされていないCSFとの縦磁化成分Mzの差が大きく、両者のNMR信号のレベル差も大きくなる。ラベリングパルスの印加から時間が経過する従い、ラベリングされたCSFの縦磁化成分Mzも静磁場方向に徐々に回復し、ラベリングされたCSFと、ラベリングされていないCSFとのNMR信号のレベル差は小さくなる。
【0080】
ここで、白色がグレースケール表示の100%に対応し、黒色がグレースケール表示の0%に対応するとした場合、ラベリングされていないCSFからのNMR信号は、データ収集時刻に拘らず信号レベルが最高に近いので、CSF画像ではグレースケールが例えば約100%で(白く)表される。一方、ラベリングされたCSFからのNMR信号は、データ収集時刻が最先のフレームでは、信号レベルが最低に近いのでグレースケールが例えば0%で(黒く)表されるが、データ収集時刻が遅いフレームでは、縦磁化成分Mzの回復により信号レベルが上がるのでグレースケールが例えば50%で(灰色で)表される。
【0081】
そこで、ラベリングされたCSFは全フレームにおいて例えば黄色として共通に表されるように、かつ、ラベリングされていないCSFは全フレームにおいて例えば赤色として共通に表されるように、かつ、抽出したCSF領域が例えば赤色から黄色の着色範囲のみで表されるように画像処理をする。この場合、データ収集開始時刻が最先のフレームでは、グレースケール0%を黄色で表示し、データ収集開始時刻が遅いフレームほど、黄色表示に対応させるグレースケールのパーセンテージを高くする。同時に、データ収集時刻に拘らず、グレースケール100%を赤色に対応させる。このようにすれば、ラベリングされたCSFを全フレームで共通に同じ有彩色で表示することができ、CSFの動きを視覚的に判別し易くなる。
【0082】
図11は、ラベリング領域をストライプパターンにして撮像されたCSF像データに表示処理を施して、CSFを識別表示させた別の例を示す。
【0083】
図12は、ラベリング領域をグリッドパターンにして撮像されたCSF像データに表示処理を施して、CSFを識別表示させた例を示す。
【0084】
図13は、ラベリング領域を放射状のパターンにして撮像されたCSF像データに表示処理を施して、CSFを識別表示させた例を示す。
【0085】
図11、12、13では白黒のグレースケールで示したが、実際には例えば、
図11、12、13における完全に黒く塗り潰した領域がラベリングされたCSFとして黄色で表示され、灰色で塗り潰した領域がラベリングされていないCSFとして赤色で表示される。
【0086】
図11、12、13に示すように、画像全域に亘ってストライプ状、グリッド状、または、放射状のラベリングされたパターンが生成されていることが確認できる。黄色で表示されるラベリングされたCSFは、上記ストライプ状、グリッド状、または、放射状のラベリングパターンの領域からずれており、このことから、CSFが動いていることを確認できる。
【0087】
(効果)
以上、本発明の磁気共鳴イメージング装置20では、(領域非選択IRパルスを印加してから、或いは、印加せずに)ラベリングパルスを印加後、異なる時刻に対応する複数フレーム分のCSF像データを連続的に収集し、CSF像データに着色処理等の表示処理を施してCSFを識別表示させる。即ち、ラベリングを1回行った後に、各々のCSF画像のフレームに対応するデータ収集を連続的に行うため、どのフレームにおいても、ラベリングされているCSFは同一となる。従って、CSFの動態を容易に把握可能なCSF像データを収集できる。また、広範囲におけるCSFの動態を連続的に描出することができる。
【0088】
臨床的に換言すれば、動きが停止しているCSFの場合には停止していることを確実に判定できる。また、正常なCSFの場合にはCSFがどのように動くかを可視化することができる。例えば、水頭症(hydrocephalus)と、蜘蛛膜下出血(subarachnoid hemorrhage)は、CSFが動かなくなり、似た症状となることがあるが、両者は、CSFの動かなくなる場所が異なる。従って、磁気共鳴イメージング装置20によれば、水頭症と蜘蛛膜下出血とを判別可能である。
【0089】
また、磁気共鳴イメージング装置20によれば、CSFの動態を把握可能であるため、CSFの流速を測定可能である。具体的には、ストライプなどのパターンでラベリングされた特定部位のCSFが、次のフレームのCSF画像においてどの程度の距離だけ移動したかを検出し、この移動距離をフレーム間の撮像時刻の時間差で割ることにより、CSFの流速を計算できる。
【0090】
さらに、従来のt-SLIP法のように複数のBBTIを設定する必要がないので、時間差のない画像データを取得することができる。
【0091】
なお、磁気共鳴イメージング装置20では、CSF以外の血液等の流体のイメージングについても同様に行うことができる。特に、周期性のない流体のイメージングに好適である。