(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5984275
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】ゼラチンカプセルおよび該ゼラチンカプセルの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/64 20060101AFI20160823BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20160823BHJP
A61K 8/65 20060101ALI20160823BHJP
A61K 8/11 20060101ALI20160823BHJP
A61K 8/66 20060101ALI20160823BHJP
A61K 8/99 20060101ALI20160823BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20160823BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20160823BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20160823BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20160823BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20160823BHJP
A61K 47/42 20060101ALI20160823BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20160823BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
A61K9/64
A23L5/00 C
A61K8/65
A61K8/11
A61K8/66
A61K8/99
A61K8/73
A61Q19/10
A61Q19/00
A61Q5/00
A61Q1/00
A61K47/42
A61K47/46
A61K47/38
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-134001(P2015-134001)
(22)【出願日】2015年7月3日
【審査請求日】2015年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】306017380
【氏名又は名称】株式会社 日本予防医学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100136560
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】眞野 智久
(72)【発明者】
【氏名】淺山 雄彦
(72)【発明者】
【氏名】菊池 洋
(72)【発明者】
【氏名】塩川 健一
【審査官】
伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−070428(JP,A)
【文献】
特開平09−313154(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0068469(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/64
A23L 5/00
A61K 8/11
A61K 8/65
A61K 8/66
A61K 8/73
A61K 8/99
A61K 47/38
A61K 47/42
A61K 47/46
A61Q 1/00
A61Q 5/00
A61Q 19/00
A61Q 19/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチンを含有するカプセル被膜が、内容物を内包するゼラチンカプセルであって、
前記カプセル被膜が、トランスグルタミナーゼと、酵母細胞壁とメチルセルロースからなる群より選ばれる1種以上とを有し、
前記カプセル被膜が、前記トランスグルタミナーゼと前記メチルセルロースとを有し、前記トランスグルタミナーゼの配合量が、前記メチルセルロースの2.0〜20.0質量%であることを特徴とするゼラチンカプセル。
【請求項2】
前記カプセル被膜が、前記トランスグルタミナーゼと前記メチルセルロースとを有し、前記メチルセルロースが、前記カプセル被膜の量の0.2〜2.0質量%である請求項1記載のゼラチンカプセル。
【請求項3】
前記ゼラチンカプセルが、ソフトカプセルである請求項1または2に記載のゼラチンカプセル。
【請求項4】
前記ゼラチンカプセルが、食品、化粧品および医薬品からなる群より選ばれる1種である請求項1〜3のうちいずれか一項に記載のゼラチンカプセル。
【請求項5】
ゼラチンを含有するカプセル被膜が、内容物を内包するゼラチンカプセルの製造方法であって、
前記カプセル被膜に、トランスグルタミナーゼ溶液と、酵母細胞壁とメチルセルロース溶液からなる群より選ばれる1種以上とを、塗布、噴霧、浸漬およびそれらの組合せからなる群より選ばれる1種以上の方法により、前記カプセル被膜に、前記トランスグルタミナーゼと、酵母細胞壁とメチルセルロースからなる群より選ばれる1種以上とを有することを特徴とするゼラチンカプセルの製造方法。
【請求項6】
前記カプセル被膜が、前記トランスグルタミナーゼと前記酵母細胞壁とを有し、前記トランスグルタミナーゼの配合量が、前記酵母細胞壁の固形分量の0.01〜2.0質量%である請求項5記載のゼラチンカプセルの製造方法。
【請求項7】
前記カプセル被膜が、前記トランスグルタミナーゼと前記酵母細胞壁とを有し、前記酵母細胞壁の固形分量が、前記カプセル被膜の量の0.3〜3.0質量%である請求項5または6記載のゼラチンカプセルの製造方法。
【請求項8】
前記カプセル被膜が、前記トランスグルタミナーゼと前記メチルセルロースとを有し、前記トランスグルタミナーゼの配合量が、前記メチルセルロースの2.0〜20.0質量%である請求項5〜7のうちいずれか一項に記載のゼラチンカプセルの製造方法。
【請求項9】
前記カプセル被膜が、前記トランスグルタミナーゼと前記メチルセルロースとを有し、前記メチルセルロースが、前記カプセル被膜の量の0.2〜2.0質量%である請求項5〜8のうちいずれか一項に記載のゼラチンカプセルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼラチンカプセルおよび該ゼラチンカプセルの製造方法に関し、特に、カプセル同士の付着や凝集、変形を防止できるゼラチンカプセルおよび該ゼラチンカプセルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品、化粧品や医薬品等の分野において、機能性食品素材、保湿剤等の化粧品素材、薬剤や薬品等を内包するものとして、ゼラチンカプセルが使用されている。かかるゼラチンカプセルとしては、従来は、動物、特に牛や豚に由来するゼラチンを使用して製造されていた。しかしながら、ウシ海綿状脳症(BSE)や鳥インフルエンザ等の動物に関する病気の懸念や、あるいは宗教上等の理由により動物由来の製品に対して摂食不可能な人が多く存在するようになった。そのため、近年では、魚由来のゼラチンを使用したゼラチンカプセルの製造が望まれている。
【0003】
しかしながら、牛や豚に由来するゼラチンの場合は約30〜40℃、魚由来のゼラチンの場合は約20〜30℃でゼラチン化してしまうため、内容物の漏出やカプセル同士の凝集、カプセルの変形等の安定性に問題が生じていた。
【0004】
そこで、特許文献1には、内容物を収容した状態のカプセル本体の表層部にトランスグルタミナーゼを含む保護層を形成した耐環境性を高めたゼラチンカプセルが開示され、特許文献2には、魚介類から分離した乾燥ゼラチンとトランスグルタミナ−ゼを配合した水に易溶性の新規ゲル化素材が開示され、特許文献3には、ゼラチンを含有する成形被膜をトランスグルタミナーゼで架橋することにより得られる被膜が開示されている。また、特許文献4には、カプセルの皮膜中に、酵母を含むカプセルで、特にカプセルの皮膜中に、酵母細胞壁を含むカプセルが、開示されている。
【0005】
また、特許文献5および6には、酸化防止を目的にしたマイクロカプセルが開示され、特許文献7には、マイクロカプセルの強度および/または不透過性を上げる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−313154号公報
【特許文献2】特開平07−227228号公報
【特許文献3】特開平04−222559号公報
【特許文献4】特開2003−70428号公報
【特許文献5】特開2009−500034号公報
【特許文献6】特開2011−254834号公報
【特許文献7】特表2010−504282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3に記載されている技術は、ゼラチンにトランスグルタミナ−ゼを配合することでゼラチンの安定性は良好にできるものの、夏場の流通時など高温になるとカプセル同士の付着や凝集、変形が生じ、その改良が望まれていた。また、特許文献4に記載されている技術は、カプセル内容物の経時的な変色や臭気成分の揮散を防止することはできるものの、カプセル同士の付着や凝集、変形を十分には防止できず、そのため市場流通や温暖な地域での保存の際のトラブルの原因になり、その改善が望まれていた。
【0008】
さらに、特許文献5〜6記載の技術は、酸化防止を目的にしたマイクロカプセルに関する技術であり、通常の健康食品等に用いられるカプセル同士の付着や凝集、変形については、不明であった。また、特許文献7記載の技術は、マイクロカプセルの強度および/または不透過性を上げることはできるものの、カプセル同士の付着や凝集、変形を十分には防止できるかについては不明であった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、前記の従来技術の問題点を解決し、カプセル同士の付着や凝集、変形を防止できるゼラチンカプセルおよび該ゼラチンカプセルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、ゼラチンを含有するカプセル被膜中に特定の成分を有することによって、前記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明のゼラチンカプセルは、ゼラチンを含有するカプセル被膜が、内容物を内包するゼラチンカプセルであって、前記カプセル被膜が、トランスグルタミナーゼと、酵母細胞壁とメチルセルロースからなる群より選ばれる1種以上とを有
し、
前記カプセル被膜が、前記トランスグルタミナーゼと前記メチルセルロースとを有し、前記トランスグルタミナーゼの配合量が、前記メチルセルロースの2.0〜20.0質量%であることを特徴とするものである。
【0013】
さらに、本発明のゼラチンカプセルは
、前記カプセル被膜が、前記トランスグルタミナーゼと前記メチルセルロースとを有し、前記メチルセルロースが、前記カプセル被膜の量の0.2〜2.0質量%であることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明のゼラチンカプセルは、前記ゼラチンカプセルが、ソフトカプセルであることが好ましく、前記ゼラチンカプセルが、食品、化粧品および医薬品からなる群より選ばれる1種であることが好ましい。
【0017】
本発明のゼラチンカプセルの製造方法は、ゼラチンを含有するカプセル被膜が、内容物を内包するゼラチンカプセルの製造方法であって、前記カプセル被膜に、トランスグルタミナーゼ溶液と、酵母細胞壁とメチルセルロース溶液からなる群より選ばれる1種以上とを、塗布、噴霧、浸漬およびそれらの組合せからなる群より選ばれる1種以上の方法により、前記カプセル被膜に、前記トランスグルタミナーゼと、酵母細胞壁とメチルセルロースからなる群より選ばれる1種以上とを有することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明のゼラチンカプセルの製造方法は、前記カプセル被膜が、前記トランスグルタミナーゼと前記酵母細胞壁とを有し、前記トランスグルタミナーゼの配合量が、前記酵母細胞壁の固形分量の0.01〜2.0質量%であることが好ましく、前記カプセル被膜が、前記トランスグルタミナーゼと前記酵母細胞壁とを有し、前記酵母細胞壁の固形分量が、前記カプセル被膜の量の0.3〜3.0質量%であることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明のゼラチンカプセルの製造方法は、前記カプセル被膜が、前記トランスグルタミナーゼと前記メチルセルロースとを有し、前記トランスグルタミナーゼの配合量が、前記メチルセルロースの2.0〜20.0質量%であることが好ましく、前記カプセル被膜が、前記トランスグルタミナーゼと前記メチルセルロースとを有し、前記メチルセルロースが、前記カプセル被膜の量の0.2〜2.0質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、カプセル同士の付着や凝集、変形を防止できるゼラチンカプセルおよび該ゼラチンカプセルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のゼラチンカプセルである実施例2の3か月後の状態を示す図である。
【
図5】本発明のゼラチンカプセルである実施例12の1か月後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のゼラチンカプセルよび該ゼラチンカプセルの製造方法について具体的に説明する。
本発明のゼラチンカプセルは、ゼラチンを含有するカプセル被膜が、内容物を内包するゼラチンカプセルであって、前記カプセル被膜が、トランスグルタミナーゼと、酵母細胞壁とメチルセルロースからなる群より選ばれる1種以上とを有
し、前記カプセル被膜が、前記トランスグルタミナーゼと前記メチルセルロースとを有し、前記トランスグルタミナーゼの配合量が、前記メチルセルロースの2.0〜20.0質量%であることを特徴とするものである。これにより、カプセル同士の付着や凝集、変形を防止できるゼラチンカプセルを提供することができる。ここで、「カプセル同士の付着や凝集、変形を防止できる」とは、完全に相互付着がなく塊化していない状態だけでなく、わずかに相互付着がある状態や一部塊化しても簡単に解れる状態を含み、カプセルの変形、崩壊および溶解を防止できることをも含むものである。
【0023】
本発明において、ゼラチンとしては、通常の健康食品などの食品、化粧品や医薬品等に使用できるものであれば限定されないが、例えば、牛、豚、鶏、魚等の皮、骨、腱等を原料とし、酸又はアルカリで処理して得られる粗コラーゲンを加熱抽出して製造されたものを用いることができ、ゼラチンの加水分解物や酸素分解物、アシル化ゼラチン等のゼラチン誘導体等を用いることもできる。また、本発明の効果をより顕著に得られることから、魚由来のゼラチンがより好ましい。
【0024】
また、本発明において、前記カプセル被膜中のゼラチンの含有量は、本発明の効果が得られれば特に限定されず、100%ゼラチンカプセルであってもよいし、あるいは他の成分を含んでいてもよい。さらに、本発明において、前記カプセル皮膜には、必要に応じて、通常のカプセル皮膜に用いられる各種添加剤、例えば、ゼラチン以外の水溶性高分子、可塑剤、防腐剤、水分活性低下剤、pH調整剤、着色剤、酸化防止剤等を含有することができる。前記可塑剤としては、例えば、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられ、前記カプセル皮膜における可塑剤の含有量は、柔軟性の点から、ゼラチン100質量部に対して20〜70質量部が好ましく、特に30〜60質量部が好ましい。
【0025】
さらに、本発明において、前記トランスグルタミナーゼは、タンパク質中のグルタミン残基のγ-カルボキシアミド基とリジン残基のε−(γ−グルタミン)リジン結合を形成させ、蛋白質を架橋重合する酵素であり、例えば、食品添加物として認められているものを使用することができる。また、かかるトランスグルタミナーゼは、哺乳類由来のものであっても、微生物由来のものであってもよく、遺伝子組み換え体を用いることができる。さらに、トランスグルタミナーゼとしては、例えば、味の素株式会社製のアクティバシリーズやKS−CT(商品名)等、試薬として発売されている哺乳類由来のトランスグルタミナーゼ、モルモット肝臓由来トランスグルタミナーゼ、ヤギ由来トランスグルタミナーゼ、ウサギ由来トランスグルタミナーゼ、ヒト由来リコンビナントトランスグルタミナーゼなどを挙げることができる。
【0026】
また、本発明において、前記酵母細胞壁は、酵母から水または極性溶剤に可溶性の菌体内成分を酵素処理により除去することにより得られる増粘多糖体で、サッカロミセス属菌(Saccharomyces cerevisiae)の細胞壁から得られた多糖類を主成分とするものであり、例えば、食品添加物として認められているものを使用することができる。さらに、かかる酵母細胞壁は、微生物由来の増粘多糖体であるが、他にも種子由来(グァーガムなど)、樹脂由来(アラビアゴムなど)、海藻由来(アルギン酸など)、植物由来(ペクチンなど)、甲殻由来(キチンなど)等を挙げることができる。さらにまた、かかる酵母細胞壁の一例としては、ビール酵母細胞壁を酸処理などして得られ、例えば、MCフードスペシャリティーズ株式会社製のイーストラップ(商品名)等の市販品を挙げることができる。なお、本発明では、かかる市販品をコーティングしやすい濃度に水、エタノール、メタノール、アセトン等の溶媒で希釈して用いることもでき、可塑剤としてグリセリンなどを添加して用いることもできる。
【0027】
さらに、本発明において、前記メチルセルロースは、通常の健康食品などの食品、化粧品や医薬品等に使用できるものであれば限定されないが、例えば、信越化学工業株式会社製のメトローズ MCE−4(商品名)、メトローズ MCE−15(商品名)、メトローズ MCE−25(商品名)、メトローズ MCE−100(商品名)などを挙げることができる。
【0028】
本発明のゼラチンカプセルは、前記カプセル被膜が、トランスグルタミナーゼと、酵母細胞壁とメチルセルロースからなる群より選ばれる1種以上と有していればよく、トランスグルタミナーゼと酵母細胞壁、トランスグルタミナーゼとメチルセルロース、トランスグルタミナーゼと酵母細胞壁とメチルセルロースのいずれの組合せでもよい。
【0029】
また、本発明において、前記ゼラチンカプセルは、前記トランスグルタミナーゼの配合量が、前記酵母細胞壁の固形分量の0.01〜2.0質量%であることが好ましく、1.0〜1.4質量%であることがより好ましい。前記トランスグルタミナーゼと前記酵母細胞壁の固形分量の配合比率をかかる範囲とすることで、カプセル同士の付着や凝集、変形をよりよい状態で防止できる。
【0030】
さらに、本発明において、前記ゼラチンカプセルは、前記酵母細胞壁の固形分量が、前記カプセル被膜の量の0.3〜3.0質量%であることが好ましく、0.8〜1.6質量%であることがより好ましい。前記酵母細胞壁の固形分量の配合量が3.0質量%より多いとゼラチンカプセルが柔らかくなりすぎるおそれがあり、0.3質量%より少ないと硬くなりすぎるおそれがあり、好ましくない。ここで、「カプセル被膜の量」とは、ゼラチン被膜処方で、任意の内包物を含むカプセルを作製して、棚乾燥後の完成製品となるカプセルの内包物を除くゼラチンを含む被膜総量のことを示す。なお、前記カプセル被膜中のゼラチン量に対しては、前記酵母細胞壁の固形分量が0.1875〜1.875質量%であることが好ましい。
【0031】
また、本発明において、前記ゼラチンカプセルは、前記トランスグルタミナーゼの配合量が、前記メチルセルロースの2.0〜20.0質量%であることが好ましく、5.0〜12.0質量%であることがより好ましく、10.0質量%であることがさらにより好ましい。前記トランスグルタミナーゼと前記メチルセルロースの配合比率をかかる範囲とすることで、カプセル同士の付着や凝集、変形をよりよい状態で防止できる。
【0032】
さらに、本発明において、前記ゼラチンカプセルは、前記メチルセルロースが、前記カプセル被膜の量の0.2〜2.0質量%であることが好ましく、0.4〜0.8質量%であることがより好ましい。前記メチルセルロースの配合量が2.0質量%より多いとゼラチンカプセルが柔らかくなりすぎるおそれがあり、0.2質量%より少ないと硬くなりすぎるおそれがあり、好ましくない。ここで、「カプセル被膜の量」とは、ゼラチン被膜処方で、任意の内包物を含むカプセルを作製して、棚乾燥後の完成製品となるカプセルの内包物を除くゼラチンを含む被膜総量のことを示す。なお、前記カプセル被膜中のゼラチン量に対しては、前記メチルセルロースが0.125〜1.25質量%であることが好ましい。
【0033】
また、本発明において、前記カプセル被膜に、前記トランスグルタミナーゼと、酵母細胞壁とメチルセルロースからなる群より選ばれる1種以上とを有する方法としては、通常の健康食品などの食品、化粧品や医薬品などのカプセルを作製する方法であれば特に限定されないが、トランスグルタミナーゼ溶液と、酵母細胞壁とメチルセルロース溶液からなる群より選ばれる1種以上とを、塗布、噴霧、浸漬およびそれらの組合せからなる群より選ばれる1種以上の方法により、前記カプセル被膜に、前記トランスグルタミナーゼと、酵母細胞壁とメチルセルロースからなる群より選ばれる1種以上とを有するものとすることができ、中でも噴霧の方法により、前記カプセル被膜に、前記トランスグルタミナーゼと、酵母細胞壁とメチルセルロースからなる群より選ばれる1種以上とを有するものとすることが、好ましい。これにより、より製造の作業工程を効率よくすることができる。なお、トランスグルタミナーゼ溶液およびメチルセルロース溶液とは、トランスグルタミナーゼとメチルセルロースをそれぞれ水等の溶媒に溶解または懸濁した液であり、トランスグルタミナーゼやメチルセルロース以外の成分、例えば、水溶性高分子、可塑剤、防腐剤、水分活性低下剤、pH調整剤、着色剤、酸化防止剤等を含んでいてもよい。また、酵母細胞壁は溶液であるが、それ以外の成分、例えば、水溶性高分子、可塑剤、防腐剤、水分活性低下剤、pH調整剤、着色剤、酸化防止剤等を含んでいてもよい。
【0034】
さらに、本発明において、前記カプセル被膜に、前記トランスグルタミナーゼと、前記酵母細胞壁と前記メチルセルロースからなる群より選ばれる1種以上とを有する他の方法としては、前記カプセル被膜中にトランスグルタミナーゼを含有させ、酵母細胞壁とメチルセルロース溶液からなる群より選ばれる1種以上とを、塗布、噴霧、浸漬およびそれらの組合せからなる群より選ばれる1種以上の方法により、前記カプセル被膜に、前記トランスグルタミナーゼと、前記酵母細胞壁と前記メチルセルロースからなる群より選ばれる1種以上とを有するものとすることができる。
【0035】
また、本発明において、前記ゼラチンカプセルとしては、ソフトカプセルでもハードカプセルでもよいが、本発明の効果がより顕著に得られるソフトカプセルであることが好ましい。さらに、前記ゼラチンカプセルの形状は、特に限定されず、例えば、オーバール(フットボール)型、オブロング(長楕円)型、ラウンド(球状)型等を挙げることができる。
【0036】
本発明のゼラチンカプセルは、通常の健康食品などの食品、化粧品や医薬品など種々の用途に利用することができ、カプセル内容物の組成は用途に応じて適宜決定することができる。なお、本発明において、医薬品とは人の治療に用いられる医薬品だけでなく、医薬部外品、医療用具、動物用医薬品、動物用医薬部外品、動物用医療用具等を含む広い概念であり、食品とは、人または動物が食することができるものすべてを含む広い概念であり、化粧品とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用される物や、動物を清潔にすること等を目的に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用される物で、薬用化粧品、入浴料などの雑貨等を含む広い概念である。
【0037】
また、本発明において、前記ゼラチンカプセルに内包される内容物の種類としては、通常の健康食品などの食品、化粧品や医薬品などに使用できるものであれば限定されず、健康食品、食品、飲料、調味料の他、医薬品医療機器法により規制されている医薬品、医薬部外品及び化粧品原料として利用可能な任意の素材を用いることができるが、前記ゼラチンカプセルの内容物が、食品、化粧品および医薬品からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。例えば、ブルーベリー、ビルベリー、エキナセア、キクカ、麦若葉、コウカ、サラシア、ローズマリー、ニンドウ、田七人参、イチョウ葉、ヨモギ、緑茶、ハーブ類、キノコ類、マムシ、動物の肝臓、心臓又は胎盤等の臓器から抽出されたもの、もしくはこれらを酸、塩基又は酵素を用いて製造した加水分解物等の動植物のエキス、穀物、植物、海産物を麹菌、紅麹菌、乳酸菌、酢酸菌、納豆菌、酵母等で発酵させた発酵物のエキス、ビタミンB1類、ビタミンB2類、ナイアシン、ビタミンB6類、ビタミンB12類、パントテン酸、ビオチン、葉酸類、ビタミンC類等の水溶性ビタミン類、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどの脂溶性ビタミン類或いはアミノ酸、ペプチド、タンパク、核酸、DNA、アカメガシワ、アセンヤク、アロエ、イカリソウ、ウイキョウ、ウバイ、ウヤク、ウワウルシ、ウコン、エイジツ、エゾウコギ、エンゴサク、エンメイソウ、オウギ、オウゴン、オウセイ、オウバク、オウヒ、オウレン、オンジ、カイクジン、カイバ、カシュウ、ガジュツ、カッコン、カノコソウ、カミツレ、ガラナ、カンゾウ、キキョウ、キジツ、牛胆汁、キョウニン、クコシ、ケイガイ、ケイヒ、ケツメイシ、ゲンチアナ、ゲンノショウコ、コウジン、コウボク、ゴオウ、ゴカヒ、ゴシツ、ゴシュユ、ゴミシ、サイコ、サイシン、サイム、サルビア、サンキライ、サンザシ、サンシシ、サンシュユ、サンショウ、サンソウニン、サンヤク、ジオウ、シベット、シャクヤク、ジャショウシ、シャゼンソウ、ジュウヤク、シュクシャ、ショウキョウ、ショウズク、ジョテイシ、ジリュウ、シンイ、セネガ、センキュウ、ゼンコ、センブリ、ソウジュツ、ソウハクヒ、ソヨウ、ダイオウ、タイソウ、チョウジ、チョウトウコウ、チンピ、トウガラシ、トウキ、トウジン、トウチュウカソウ、トウニン、トウヒ、トコン、トシシ、トチュウ、ナンテンジツ、ナンバンゲ、ニクジュヨウ、ニンジン、ニンニク、バクモンドウ、ハマボウフウ、ハンゲ、ハンピ、ビャクジュツ、ブクリョウ、ボウイ、ホコツシ、ボタンピ、ホップ、マオウ、モクテンリョウ、ムイラプアマ、モッコウ、ヨクイニン、リュウガンニク、リュウタン、ロートコン、ロクジョウ等の生薬単味エキスや散等、及びこれら生薬等を用いて得られた漢方エキスや散等を挙げることができる。なお、ここでいうエキスの抽出方法は特に限定されるものではなく、水、含水アルコール及び1,3−ブチレングリコール等で抽出する一般公的な方法や日本薬局方に示された方法等により製造されたチンキ、流エキス、軟エキス、乾燥エキス等も使用できる。また、5-フルオロウラシル(5FU)やテガフール、ドキシフルリジン、カペシタビン等のフッ化ピリミジン系代謝拮抗薬、マイトマイシン(MMC)やアドリアシン(DXR)等の抗生物質、メソトレキサート等の葉酸代謝拮抗薬、メルカプトプリン等のプリン代謝拮抗薬、ヒドロキシカルバミド、トレチノインやタミバロテン等のビタミンAの活性代謝物、ハーセプチンやメシル酸イマチニブなどの分子標的薬、ブリプラチンやランダ(CDDP)、パラプラチン(CBDC)、エルプラット(Oxa)、アクプラ等の白金製剤、トポテシンやカンプト(CPT)、タキソール(PTX)、タキソテール(DTX)、エトポシド等の植物アルカロイド薬、ブスルファンやシクロホスファミド、イホマイド等のアルキル化剤、ビカルタミドやフルタミド等の抗男性ホルモン薬、ホスフェストロールや酢酸クロルマジノン、リン酸エストラムスチン等の女性ホルモン薬、リュープリンやゾラデックス等のLH-RH薬、クエン酸タモキシフェンやクエン酸トレミフェン等の抗エストロゲン薬、塩酸ファドロゾールやアナストロゾール、エキセメスタン等のロマターゼ阻害薬、酢酸メドロキシプロゲステロン等の黄体ホルモン薬、クロモグリク酸ナトリウムやトラニラスト等のメディエーター遊離抑制薬、フマル酸ケトチフェンや塩酸アゼラスチン等のヒスタミンH1−措抗薬、塩酸オザグレル等のトロンボキサン阻害薬、プランルカスト等のロイコトリエン拮抗薬、アスピリン、塩酸チクロピジン、シロスタゾール、ワルファリンカリウム等の抗血栓剤、ラパマイシン、タクロリムス、シクロスポリン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、ミゾリビン等の免疫抑制剤、酪酸ヒドロコルチゾン、酪酸クロベタゾン、プロピオン酸アルクロメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、ジプロピオン酸ベタメタゾン、ジフルプレドナートなどのステロイド薬、タクロリムス等の免疫抑制薬、ブフェキサマク、ウフェナマート、イブプロフェンピコノール、ベンダザック等の非ステロイド薬、イオウ、サリチル酸、レゾルシン、チオキソロン、硫化セレン、ナジフロキサシン、硫酸ゲンタマイシン、塩酸テトラサイクリン、リン酸クリンダマイシン、レチノイン酸等のニキビ薬、クロトリマゾール、ビホナゾール、硝酸ミコナゾール、硝酸エコナゾール、硝酸スルコナゾール、塩酸ネチコナゾール、塩酸クロコナゾール、ラノコナゾール、ケトコナゾール、ルリコナゾール、塩酸アモロルフィン、塩酸テルビナフィン、トルナフタート等の抗真菌薬、アンチセンス、リボザイム、siRNA、アプタマー、デコイ核酸等の核酸医薬、アズレン、アラントイン、塩化リゾチーム、グアイアズレン、塩酸ジフェンヒドラミン、酢酸ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、グルタチオン、サポニン、サリチル酸メチル、メフェナム酸、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン及びケトプロフェンから選ばれる化合物並びにそれらの誘導体並びにそれらの塩等の抗炎症剤、等を挙げることができる。なお、内容物の形態は、溶液状、乳化液状、懸濁液状、ペースト状、粉末状、顆粒状等いずれであってもよい。
【0038】
また、本発明のゼラチンカプセルの製造方法は、ゼラチンを含有するカプセル被膜が、内容物を内包するゼラチンカプセルの製造方法であって、前記カプセル被膜に、トランスグルタミナーゼ溶液と、酵母細胞壁とメチルセルロース溶液からなる群より選ばれる1種以上とを、塗布、噴霧、浸漬およびそれらの組合せからなる群より選ばれる1種以上の方法により、前記カプセル被膜に、前記トランスグルタミナーゼと、前記酵母細胞壁と前記メチルセルロースからなる群より選ばれる1種以上とを有することを特徴とするものである。これにより、カプセル同士の付着や凝集、変形を防止できるゼラチンカプセルの製造方法を提供することができる。ここで、「カプセル同士の付着や凝集、変形を防止できる」とは、完全に相互付着がなく塊化していない状態だけでなく、わずかに相互付着がある状態や一部塊化しても簡単に解れる状態を含み、カプセルの変形、崩壊および溶解を防止できることをも含むものである。
【0039】
さらに、本発明のゼラチンカプセルの他の製造方法の一例としては、前記カプセル被膜中にトランスグルタミナーゼを含有させ、酵母細胞壁とメチルセルロース溶液からなる群より選ばれる1種以上とを、塗布、噴霧、浸漬およびそれらの組合せからなる群より選ばれる1種以上の方法により、前記カプセル被膜に前記酵母細胞壁と前記メチルセルロース溶液からなる群より選ばれる1種以上を有するゼラチンカプセルを製造する方法を挙げることができる。
【0040】
また、本発明において、前記ゼラチンカプセルの製造方法では、通常の健康食品などの食品、化粧品や医薬品などのゼラチンカプセルを作製する装置等を使用でき、例えば、ロータリーダイ式成形装置を使用して、前記ゼラチンカプセルを製造することができる。
【0041】
ここで、ロータリーダイ式成形装置とは、一般的に、カプセル皮膜液をフィルム状に成形するキャスティングドラムと、外表面に成形鋳型が形成された一対のダイロールと、ダイロール間に配された内容物充填用のくさび状セグメントと、セグメント内に内容物を圧入すると共にセグメントの先端から内容物を押し出すポンプとを主に具備しているものである。また、成形の工程では、まず、カプセル皮膜液が、キャスティングドラムの表面に流延され、ゲル化することによりフィルム化される。次に、形成されたフィルムの二枚が、セグメントに沿って一対のダイロール間に送入される。そして、一対のダイロールの相反する方向への回転に伴い、二枚のフィルムがヒートシールされて上方に開放したソフトカプセル皮膜が形成されると、この中にセグメントから押し出された内容物が充填される。これと同時に、二枚のフィルムが上部でヒートシールされ、閉じた内部空間に内容物が充填されたソフトカプセルが形成されるものである。
【0042】
前記ロータリーダイ式成形装置としては、例えば、株式会社カマタ製のWH−1、株式会社三協製のSSM−A4−IL、株式会社三協製のSC−10等を使用することができる。
【0043】
以下、本発明について、実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下、表中、「TG量」はトランスグルタミナーゼ量、「YCW量」は酵母細胞壁の固形分量、「CF量」はカプセル被膜の量、「MC量」はメチルセルロース量、「TG溶液」はトランスグルタミナーゼ溶液(50mg/L水)を示す。
【実施例】
【0044】
(実施例1〜4)
ロータリーダイ式成形装置(株式会社カマタ製製:WH−1)を使用して、下記表1の処方に従って、魚由来のゼラチンでソフトカプセルを作製した。次いで、カプセル被膜に対し、下記表2記載の割合(W/W%)の酵母細胞壁(MCフードスペシャリティーズ株式会社製のイーストラップ(商品名))と、酵母細胞壁の固形分量に対し1.2質量%のトランスグルタミナーゼ(味の素株式会社製:アクティバTG−S(商品名))とを噴霧法によりコーティングして、実施例1〜4のソフトカプセルを作製した。得られた実施例1〜4のソフトカプセルについて、下記の経時付着防止性試験、硬度試験および崩壊試験を行い、結果を下記表2中に併記した。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
(経時付着防止性試験)
作製したゼラチンのソフトカプセルを、40℃、湿度75%の環境下で保存し、経時的な状態変化を測定し、下記表3に従って、評価した。なお、表中の経時を表す「d」は「日」、「w」は「週」、「m」は「月」を示す。
【0048】
【表3】
【0049】
(硬度試験)
株式会社サン科学製のRHEO METERCR−500DX−S型の圧力・弾性用感圧軸(寸法:15mm)を定深測定モードで使用して、R/H HOLD:2.0mm、P/T PRESS:5mm/mの条件で、作製したソフトカプセルの硬度を測定した。
【0050】
(崩壊試験)
日本薬局方 一般試験法 崩壊試験法に基づき、崩壊試験器(富山産業株式会社製のDISINTEGRATION TESTER NT−1(M))(電動機)、TMB−8(恒温槽)(補助盤あり)を用いて、作製したソフトカプセルの崩壊試験を行い、得られた結果の平均値を数値として使用した。
【0051】
図1は、本発明のゼラチンカプセル(ソフトカプセル)である実施例2の3ヶ月後の状態を示す図である。実施例1〜4のソフトカプセルは、表2および
図1に示すように、いずれの条件でもカプセルの変形も、相互付着もなく、硬度と崩壊性に加えて経時付着防止性も良好であった。
【0052】
(比較例1〜3)
ロータリーダイ式成形装置(株式会社カマタ製製:WH−1)を使用して、上記表1の処方に従って、魚由来のゼラチンを原料としたソフトカプセルを作製した。水に溶かして、濃度50mg/Lとしたトランスグルタミナーゼ(味の素株式会社製:アクティバTG―S(商品名))溶液を調整し、作製したソフトカプセルを下記表4の条件でトランスグルタミナーゼ溶液に浸漬した後、乾燥し、比較例1〜3のソフトカプセルを作製した。得られた比較例1〜3のソフトカプセルについて、上記の経時付着防止性、硬度試験および崩壊試験を行い、結果を下記表4中に併記した。
【0053】
【表4】
【0054】
図2は、比較例1の3日後の状態を示す図であり、完全に変形・固化していた。また、
図3は、比較例3の5週間後の状態を示す図であり、一部変形し、また塊化しているため、かなり強く振らないとカプセルが解れない状態であった。従って、表4、
図2および
図3に示すように、比較例1〜3のソフトカプセルは、硬度および崩壊性は良好であるものの、経時付着防止性に関しては凝集や変形・固化してしまい不適合であり、特開平09−313154号公報記載のように、トランスグルタミナーゼのみを添加した場合は、極端な変形防止には効果があるものの、カプセル同士の付着や凝集、変形の防止には、まったく効果がなかった。
【0055】
(比較例4〜7)
ロータリーダイ式成形装置(株式会社カマタ製製:WH−1)を使用して、上記表1の処方に従って、下記表5に記載した生物由来のゼラチンを用いてソフトカプセルを作製した。酵母細胞壁(MCフードスペシャリティーズ株式会社製のイーストラップ(商品名))をカプセル被膜に対し、下記表5記載の割合(W/W%)で噴霧法によりコーティングして、比較例4〜7のソフトカプセルを作製した。得られた比較例4〜7のソフトカプセルについて、上記の経時付着防止性、硬度試験および崩壊試験を行い、結果を下記表5中に併記した。
【0056】
【表5】
【0057】
図4は、比較例6の2か月後の状態を示す図であり、相互付着し、強く振ることで解れるものの、ソフトカプセルに変形が見られた。また、比較例4の3日後の状態は
図2と同様の状態であり、完全に変形・固化していた。従って、表5および
図4等より、比較例4〜6のソフトカプセルは、硬度および崩壊性は良好であるものの、経時付着防止性に関しては凝集、あるいは変形・固化してしまい不適合であった。また、比較例7のソフトカプセルは、酵母細胞壁を添加したにもかかわらず、経時付着防止性にまったく効果がなかった。従って、特開2003−70428号公報公報記載のように、酵母細胞壁のみを添加した場合は、臭気成分の揮散防止には効果があるものの、カプセル同士の付着、凝集、変形の防止には、まったく効果がなかった。
【0058】
(実施例5〜8、比較例8および9)
ロータリーダイ式成形装置(株式会社カマタ製製:WH−1)を使用して、上記表1の処方に従って、魚由来のゼラチンでソフトカプセルを作製した。次いで、カプセル被膜に対し、下記表6記載の割合(W/W%)の酵母細胞壁(MCフードスペシャリティーズ株式会社製のイーストラップ(商品名))とトランスグルタミナーゼ(味の素株式会社製:アクティバTG−S(商品名))とを噴霧法によりコーティングして、実施例5〜8、比較例8および9のソフトカプセルを作製した。得られた実施例5〜8、比較例8および9のソフトカプセルについて、上記の経時付着防止性試験、硬度試験および崩壊試験を行い、結果を下記表6中に併記した。
【0059】
【表6】
【0060】
表6の結果から、比較例8のソフトカプセルは、3日後に変形・固化し、比較例9のソフトカプセルは、2か月後の状態は、相互付着しているため強く振らないとカプセルが解れない状態であった。これに対し、実施例5〜8のソフトカプセルは、酵母細胞壁とトランスグルタミナーゼを有するため、カプセルの変形はなく、一部で相互付着しているが軽く振るだけで簡単にカプセルが解れる状態であり、経時付着防止性が良好になった。
【0061】
(実施例9〜12、比較例10および11)
ロータリーダイ式成形装置(株式会社カマタ製製:WH−1)を使用して、上記表1の処方に従って、魚由来のゼラチンでソフトカプセルを作製した。次いで、カプセル被膜に対し、下記表7記載の割合(W/W%)のメチルセルロース(信越化学工業株式会社製のメトローズ MCE−4(商品名))とトランスグルタミナーゼ(味の素株式会社製:アクティバTG−S(商品名))とを噴霧法によりコーティングして、実施例9〜12、比較例10および11のソフトカプセルを作製した。得られた実施例9〜12、比較例10および11のソフトカプセルについて、上記の経時付着防止性試験および崩壊試験を行い、結果を下記表7中に併記した。
【0062】
【表7】
【0063】
表7の結果から、比較例10のソフトカプセルは、3日後に変形・固化し、比較例11のソフトカプセルは、1か月後の状態は、相互付着しているため、強く振らないとカプセルが解れない状態であった。これに対し、
図5は、本発明のゼラチンカプセル(ソフトカプセル)である実施例12の1か月後の状態を示す図であり、
図5および表7に示すように、実施例9〜12のソフトカプセルは、メチルセルロースとトランスグルタミナーゼを有するため、変形も、相互付着も塊化もなくカプセルは解れた状態であり、経時付着防止性が良好になった。
【要約】
【課題】カプセル同士の付着や凝集、変形を防止できるゼラチンカプセルおよび該ゼラチンカプセルの製造方法を提供する。
【解決手段】ゼラチンを含有するカプセル被膜が、内容物を内包し、カプセル被膜がトランスグルタミナーゼと、酵母細胞壁とメチルセルロースからなる群より選ばれる1種以上とを有するゼラチンカプセルおよび該ゼラチンカプセルの製造方法である。トランスグルタミナーゼの量が、酵母細胞壁の固形分量の0.01〜2.0質量%であることが好ましく、酵母細胞壁の固形分量が、カプセル被膜の量の0.3〜3.0質量%であることが好ましい。トランスグルタミナーゼの配合量が、メチルセルロースの2.0〜20.0質量%であることが好ましく、メチルセルロースが、カプセル被膜の量の0.2〜2.0質量%であることが好ましい。
【選択図】
図1