(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984282
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/739 20060101AFI20160823BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
H01L29/78 655G
H01L29/78 655A
H01L29/78 652D
H01L29/78 652K
H01L29/78 653C
【請求項の数】12
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2007-58029(P2007-58029)
(22)【出願日】2007年3月8日
(65)【公開番号】特開2008-34794(P2008-34794A)
(43)【公開日】2008年2月14日
【審査請求日】2010年1月18日
【審判番号】不服2014-15382(P2014-15382/J1)
【審判請求日】2014年8月5日
(31)【優先権主張番号】特願2006-122811(P2006-122811)
(32)【優先日】2006年4月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2006-187439(P2006-187439)
(32)【優先日】2006年7月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】吉川 功
(72)【発明者】
【氏名】脇本 博樹
(72)【発明者】
【氏名】大月 正人
【合議体】
【審判長】
河口 雅英
【審判官】
鈴木 匡明
【審判官】
加藤 浩一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−158507(JP,A)
【文献】
特開2005−032939(JP,A)
【文献】
特開2004−259934(JP,A)
【文献】
特開2000−228519(JP,A)
【文献】
特開2001−274400(JP,A)
【文献】
特開2005−158850(JP,A)
【文献】
特開2002−043571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/739
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一導電型の半導体基板と、該半導体基板の一方の主表面層に選択的に形成される第二導電型のチャネル領域と、前記チャネル領域の表面層に選択的に形成される第一導電型のエミッタ領域と、前記チャネル領域の表面層と前記エミッタ領域の表面層との間に選択的に形成される前記チャネル領域より高不純物濃度の第二導電型のボディ領域と、前記半導体基板表面からチャネル領域を超える深さを有し、並列ストライプ状表面パターンに形成されるトレンチと、該トレンチの側壁に形成されるゲート絶縁膜を介して前記トレンチ内に埋設されるポリシリコンゲート電極と、前記エミッタ領域と前記ボディ領域の双方の表面に跨るコンタクト領域で接触するエミッタ電極と、前記半導体基板の他方の主表面層に形成される第二導電型のコレクタ層と、該コレクタ層表面に接触するコレクタ電極とを備え、前記半導体基板の一方の主表面では、前記トレンチ間の長手方向に第二導電型のチャネル領域と第一導電型の半導体基板の各表面が交互に現われるように配設され、該チャネル領域の表面層に選択的に形成される前記エミッタ領域は、平面視で、前記トレンチ間の中央側から両側の前記トレンチの近傍にそれぞれ延在する辺を有し、当該辺が前記トレンチの長手方向に対して約45度の角度をなし、かつ、前記トレンチ側で広く、前記トレンチ間の中央側で狭い表面形状を備えており、前記エミッタ領域の中央側で狭くなった部分の前記トレンチ間の長手方向の両側に前記ボディ領域を有することを特徴とする縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置。
【請求項2】
前記エミッタ領域の、トレンチに接する辺の長さが、前記コンタクト領域のトレンチ長手方向の長さよりも短いことを特徴とする請求項1に記載の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置。
【請求項3】
前記エミッタ領域の、トレンチに接する辺の長さが、前記コンタクト領域のトレンチ長手方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項1に記載の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置。
【請求項4】
前記コンタクト領域に、該コンタクト領域より広い前記ボディ領域が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置。
【請求項5】
前記コンタクト領域の前記トレンチ長手方向の幅が前記エミッタ領域のトレンチに接する辺の長さより長いことを特徴とする請求項4に記載の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置。
【請求項6】
前記ボディ領域の前記トレンチ長手方向の幅が前記エミッタ領域のトレンチに接する辺の長さより長いことを特徴とする請求項4に記載の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置。
【請求項7】
第一導電型の半導体基板と、該半導体基板の一方の主表面層に選択的に形成される第二導電型のチャネル領域と、前記チャネル領域の表面層に選択的に形成される第一導電型のエミッタ領域と、前記チャネル領域の表面層と前記エミッタ領域の表面層との間に選択的に形成される前記チャネル領域より高不純物濃度の第二導電型のボディ領域と、前記半導体基板表面からチャネル領域を超える深さを有し、並列ストライプ状表面パターンに形成されるトレンチと、該トレンチの側壁に形成されるゲート絶縁膜を介してトレンチ内に埋設されるポリシリコンゲート電極と、前記エミッタ領域と前記ボディ領域および前記チャネル領域の表面にコンタクト領域で接触するエミッタ電極と、前記半導体基板の他方の主表面層に形成される第二導電型のコレクタ層と、該コレクタ層表面に接触するコレクタ電極とを備え、前記半導体基板の一方の主表面では、前記トレンチ間の長手方向に第二導電型のチャネル領域と第一導電型の半導体基板の各表面が交互に現われるように配設される縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置において、該チャネル領域の表面層に選択的に形成される前記エミッタ領域は、平面視で、前記トレンチ間の中央側から両側の前記トレンチの近傍にそれぞれ延在し、かつ、前記トレンチ側で広く、前記トレンチ間の中央側で狭い表面形状を備えており、前記エミッタ領域の中央側で狭くなった部分の前記トレンチ間の長手方向の両側に前記ボディ領域を有し、前記ボディ領域の前記トレンチ長手方向の幅が前記エミッタ領域のトレンチに接する辺の長さより長く、前記ボディ領域が前記トレンチの側壁にかかることを特徴とする縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置。
【請求項8】
前記トレンチの長手方向に前記チャネル領域と前記半導体基板の各表面が交互に現れるように配設される際の、前記チャネル領域と前記半導体基板の繰り返しピッチをZunitとし、Zunitに対するエミッタ領域の比率をREmitterとする場合、REmitter≧0.3であることを特徴とする請求項7記載の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置。
【請求項9】
前記REmitterがREmitter≧0.4であることを特徴とする請求項8記載の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置。
【請求項10】
前記トレンチの長手方向に前記チャネル領域と前記半導体基板の各表面が交互に現れるように配設される際の、前記チャネル領域と前記半導体基板の繰り返しピッチをZunitとする場合、Zunit≧100μmであることを特徴とする請求項7記載の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置。
【請求項11】
前記並列ストライプ状表面パターンに形成されるトレンチとトレンチの繰り返しピッチが5μm以下であることを特徴とする請求項7記載の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置。
【請求項12】
前記トレンチの側壁に形成されるゲート絶縁膜の厚さが150nm乃至200nmのいずれかであることを特徴とする請求項7記載の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気自動車やハイブリッド自動車のモーター駆動用インバーターに適用され、両面冷却タイプとし高電流密度での使用を可能にするトレンチ型絶縁ゲートを有する電力用MOS半導体装置に関する。さらに詳しくは、半導体基板にストライプ状表面パターンで形成されるトレンチとそのトレンチ側壁面に形成されるゲート絶縁膜とこのゲート絶縁膜を挟んで前記トレンチ内に埋め込まれる制御電極を有し、前記トレンチの長手方向に沿う基板表面に第一導電型領域と第二導電型領域が交互に現れるパターンを有し、高電流密度での使用を可能にするように改良したトレンチ型絶縁ゲート構造を有する縦型の電力用MOS半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のパワーエレクトロニクス分野における電源機器の小型化、高性能化への要求を受けて、電力用半導体装置では、高耐圧化、大電流化と共に、低損失化、高破壊耐量化、高速化に対する性能改善が注力されている。そして、大電流化、低損失化が可能な電力用半導体装置として、トレンチ型の絶縁ゲートを備える縦型のMOS半導体装置が多く用いられている。電力用MOS半導体装置は、MOS(金属/酸化膜/半導体)ゲートにより電圧駆動されるものであり、MOSゲートを半導体基板表面に平板状に設けたプレーナMOSゲート構造およびMOSゲートを、半導体基板表面に垂直に形成されたトレンチ内に埋め込み形成したトレンチMOSゲート構造の2種類が広く知られている。最近の縦型半導体装置においては、構造的に低オン抵抗特性が得やすいことから、トレンチMOSゲート構造を有するいわゆる縦型トレンチ型MOS半導体装置が注目されている。
【0003】
このようなトレンチ型絶縁ゲート構造を有する縦型の電力用トレンチ型MOS半導体装置については、そのストライプ状表面繰り返しパターンで表面から垂直方向にエッチング形成されたトレンチを備え、このトレンチ内に絶縁膜を介してゲート電極が埋め込まれたトレンチ型絶縁ゲート構造を有し、前記トレンチ間の長手方向の半導体基板表面にp型チャネル領域とn型半導体基板領域が交互に現れるパターン構造を備えた縦型/トレンチ型IGBTが、低オン電圧と高耐圧を同時に実現可能なものとして既に公知になっている(特許文献1)。
【0004】
トレンチ型IGBTの負荷短絡耐量の確保、オン電圧の低減、入力容量の低減を実現するために、トレンチ型IGBTにおいて、p型ベース領域をトレンチゲートの向きに対して垂直方向にかつ縞状に形成し、さらに、各単位セルのチャネル長を従来のトレンチIGBTに比べて同一または短くなるように略一定に形成する発明が知られている(特許文献2)。
【0005】
このような縦型/トレンチ型IGBTの構造の一例を
図10の斜視図、
図11−1、
図11−2、
図11−3の断面図、
図12の平面図等に示し、さらに対比説明のために
図17に示すプレーナ型IGBTの要部断面図を用い、その構造並びに動作について前記図面等を参照しながら説明する。前記
図11−1〜
図11−3はそれぞれ前記
図10に記載のA−A線、B−B線、C−C線における断面図である。半導体基板111の一方の主面(以下、表面と称す)に選択的に形成されるp型チャネル領域112を有し、その他方の主面(以下、裏面と称す)に、n
+型FS(フィールドストップ)層150、p型コレクタ層151とを有し、多数のトレンチ113が、p型チャネル領域112に直交する表面パターンを有して前記半導体基板111の表面からp型チャネル領域112を貫通してn
−型ドレイン層(n型半導体基板領域)111に達する深さにエッチングにより形成されている。そのトレンチ113の内表面にはゲート酸化膜114が被覆され、さらにその凹部内には導電性多結晶シリコン等からなるゲート電極115が埋設されている。そして隣接するトレンチ113との間のチャネル領域112の表面にはその略中間にp
+型ボディ領域117が配設されている。そしてp
+型ボディ領域117とトレンチ113とにそれぞれ隣接してn
+型エミッタ領域116が設けられている。ゲート電極115上には絶縁層118が配設され、セル領域の全面にアルミ等の金属電極119が設けられ、この絶縁層118がゲート電極115と金属電極119とを絶縁分離している。そして、金属電極119がn
+型エミッタ領域116とp
+型ボディ領域117との表面にコンタクト領域でオーミック接触するように構成されている。
【0006】
かかる構造の縦型/トレンチ型IGBTにおいては、ゲート電極115に所定の閾値以上の電圧を与えることで、トレンチ113の側壁に沿ったp型チャネル領域112表面層にn型の反転層(図示せず)が形成され、
図11−1乃至
図11−3において矢印で示すように電流路が形成される。これにより縦型/トレンチ型IGBTのエミッタ・コレクタ間がオン状態となる。また、ゲート電極115の電圧を閾値以下とすることで、トレンチ113の側壁に沿った前記p型チャネル領域112のn型の反転層が無くなり、前記電流路が消滅して、縦型/トレンチ型IGBTのエミッタ・コレクタ間がオフ状態となる。さらに、トレンチ113に沿って縦方向(基板主面に垂直な方向)(
図11−1)並びに横方向(基板主面に平行な方向)(
図11−2)の電流路(矢印で示す)が形成されることから、公知のプレーナ型あるいはトレンチ型の縦型IGBTと比較して、電流路の面積が格段に拡大される。さらに、基板表面側のトレンチ113間においてn型半導体基板層111の現れている表面領域に少数キャリアの蓄積が生じ、そのオン抵抗を小さくすることができるという利点が生じる。
【0007】
このような、従来の縦型トレンチIGBTの設計耐圧と電流密度には、概ね相関が見られ、600V級のIGBTでは200A〜250A/cm
2、1200V級IGBTでは100A〜150A/cm
2、2500V級IGBTでは40A〜60A/cm
2と、概ね、VI=150kVA程度であった。
【特許文献1】特開2000−228519号公報(
図6、
図7)
【特許文献2】特開2001−274400号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の
図10に示す縦型のトレンチ型IGBTの構成ではターンオフ耐量が小さいという問題がある。この問題は以下のような原因で発生することが判明した。このことについて、再度、
図10、
図11−1乃至
図11−3および
図12を用いて説明する。前記背景技術において説明したように、
図10に示す縦型/トレンチ型IGBTの構成では、
図10のA−A線断面を示す
図11−1のように、いわゆる、トレンチ型絶縁ゲート型IGBTのトレンチ側壁を縦方向(基板主面に垂直な方向)に流れる電流経路(矢印)と、
図10のB−B線断面を示す
図11−2のように、トレンチ側壁を横方向(基板主面に平行な方向)に流れる電流経路(矢印)が形成される。これら二つの電流経路のうち、トレンチ側壁を横方向に流れる電子電流経路(実線矢印)は、むしろ、
図17に示すプレーナ型IGBTの電子電流経路(実線矢印)と類似している。しかし、
図17に示すプレーナ型IGBTでは、破線で示す正孔電流経路が電子電流経路と同一平面内にあるのに対して、
図11−2に示すトレンチ型絶縁ゲートIGBTの構成では電子電流経路(実線矢印)と同一平面内に正孔電流経路が存在しない点で異なる。正孔電流は、斜視図である
図10のトレンチ型IGBTの、上方から見た平面図である
図12において矢印で示されるように、前記
図10に示されるB−B線断面からC−C線断面の方向に相当する
図11−3の方向に流れることになる。言い換えると、この正孔電流はトレンチ側壁からエミッタ電極と半導体層との接触面に沿って流れ込むような電流経路となると言える。従って、
図12の丸印で示された領域において、正孔電流の集中が発生し、かつ、n
+型エミッタ領域116の下部を通ることになる。正孔電流はn
+型エミッタ領域/p型チャネル領域/n型半導体基板層からなるNPNトランジスタのベース電流に相当しており、正孔電流の集中はNPNトランジスタの動作を容易なものとし、結果として、n
+型エミッタ領域/p型チャネル領域/n型半導体基板層/p型コレクタ層からなるIGBTの寄生サイリスタの動作を容易なものとし、このIGBTをターンオフ制御不能にしてしまい、ターンオフ耐量を低下せしめていることがわかった。
【0009】
さらに、電気自動車やハイブリッド自動車のモーター駆動用インバーターに適用され、両面冷却で使用されるパワー半導体デバイスでは、冷却効率が高いため、より高い電流密度での適用が望まれている。すなわち、1200V級デバイスにおいて、前述した従来の電流密度100〜150A/cm
2より高い電流密度300〜500A/cm
2で使用できることが望まれている。このような高電流密度の条件で適用される場合、前記
図10に示す縦型/トレンチ型IGBTの構成では、高電流密度での使用と低オン電圧化の両立に問
題点がある。この問題点について、
図11−1乃至
図12を用いて説明する。一般的に制限電流は次式(1)
【0010】
【数1】
【0011】
で表される。設計の自由度を確保するため、および他の特性を犠牲にしないためには、前記式(1)中の総エミッタ幅Zだけを変えて制限電流Isatを調整することが望ましい。
すなわち、総エミッタ幅を大きくすることで制限電流を大きくできることが望ましい。ここで、総エミッタ幅Zとは、トレンチ13間にある単位セルにおけるエミッタ領域16がトレンチ13と接触する部分の幅(長さ)について単位面積当たりの全セル数を合計した幅(長さ)である。以下、エミッタ幅をエミッタ長さということもあるが、同じことである。
【0012】
一方、従来技術において示したように、前記
図10に示す縦型/トレンチ型IGBTの構成では、
図11−1に示す、いわゆる、トレンチ型IGBTのトレンチ側壁のチャネル領域112内をエミッタ領域116から側壁に沿って基板の厚さ方向に流れる電流経路と
図11−3に示すトレンチ側壁に沿ったチャネル領域112内を基板の主面に平行な横方向に流れる電流経路が形成される。低いオン電圧を達成するためには、このトレンチの側壁に沿って主面に平行な横方向に流れる電流経路を確保する必要がある。
【0013】
しかしながら、前記
図10に示す縦型/トレンチ型IGBTの構成を保ちながら、制限電流を大きくするために、前記式(1)に従い、総エミッタ幅だけを広くすると、トレンチ長手方向でエミッタ領域が必然的にチャネル領域端に近づいてしまい、十分にトレンチ側壁を横方向に流れる電流経路が形成できないために、高電流密度で低オン電圧化が困難であることが判明した。
【0014】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、ターンオフ耐量の向上と低オン抵抗化または/および大電流密度化を達成できる縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
特許請求の範囲の請求項1記載の発明によれば、第一導電型の半導体基板と、該半導体基板の一方の主表面層に選択的に形成される第二導電型のチャネル領域と、前記チャネル領域の表面層に選択的に形成される第一導電型のエミッタ領域と、前記チャネル領域の表面層と前記エミッタ領域の表面層との間に選択的に形成される前記チャネル領域より高不純物濃度の第二導電型のボディ領域と、前記半導体基板表面からチャネル領域を超える深さを有し、並列ストライプ状表面パターンに形成されるトレンチと、該トレンチの側壁に形成されるゲート絶縁膜を介して前記トレンチ内に埋設されるポリシリコンゲート電極と、前記エミッタ領域と前記ボディ領域の双方の表面に跨るコンタクト領域で接触するエミッタ電極と、前記半導体基板の他方の主表面層に形成される第二導電型のコレクタ層と、該コレクタ層表面に接触するコレクタ電極とを備え、前記半導体基板の一方の主表面では、前記トレンチ間の長手方向に第二導電型のチャネル領域と第一導電型の半導体基板の各表面が交互に現われるように配設され、該チャネル領域の表面層に選択的に形成される前記エミッタ領域は
、平面視で、前記トレンチ間の中央側から両側の前記トレンチの近傍にそれぞれ延在する辺を有し、当該辺が前記トレンチの長手方向に対して約45度の角度をなし、かつ、前記トレンチ側で広く、
前記トレンチ間の中央側で狭
い表面形状を備えており、前記エミッタ領域の中央側で狭くなった部分の
前記トレンチ間の長手方向の両側に前記ボディ領域を有する縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置とすることにより、本発明の目的が達成される。
【0016】
特許請求の範囲の請求項2記載の発明によれば、前記エミッタ領域の、トレンチに接する辺の長さが、前記コンタクト領域のトレンチ長手方向の長さよりも短い縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置とする。
特許請求の範囲の請求項3記載の発明によれば、前記エミッタ領域の、トレンチに接する辺の長さが、前記コンタクト領域のトレンチ長手方向の長さよりも長い縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置にする。
【0017】
特許請求の範囲の請求項4記載の発明によれば、前記コンタクト領域に
、該コンタクト領域より広い
前記ボディ領域が形成されている特許請求の範囲の請求項1に記載の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置にする。
【0018】
特許請求の範囲の請求項
5記載の発明によれば、前記コンタクト領域の前記トレンチ長手方向の幅が前記エミッタ領域
のトレンチに接する辺の長さより特許請求の範囲の請求項
4記載の長い縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置にする。
特許請求の範囲の請求項
6記載の発明によれば、前記ボディ領域の前記トレンチ長手方向の幅が前記エミッタ領域
のトレンチに接する辺の長さより長い特許請求の範囲の請求項
4記載の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置にする。
【0020】
特許請求の範囲の請求項7記載の発明によれば、第一導電型の半導体基板と、該半導体基板の一方の主表面層に選択的に形成される第二導電型のチャネル領域と、前記チャネル領域の表面層に選択的に形成される第一導電型のエミッタ領域と、前記チャネル領域の表面層と前記エミッタ領域の表面層との間に選択的に形成される前記チャネル領域より高不純物濃度の第二導電型のボディ領域と、前記半導体基板表面からチャネル領域を超える深さを有し、並列ストライプ状表面パターンに形成されるトレンチと、該トレンチの側壁に形成されるゲート絶縁膜を介してトレンチ内に埋設されるポリシリコンゲート電極と、前記エミッタ領域と前記ボディ領域および前記チャネル領域の表面にコンタクト領域で接触するエミッタ電極と、前記半導体基板の他方の主表面層に形成される第二導電型のコレクタ層と、該コレクタ層表面に接触するコレクタ電極とを備え、前記半導体基板の一方の主表面では、前記トレンチ間の長手方向に第二導電型のチャネル領域と第一導電型の半導体基板の各表面が交互に現われるように配設される縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置において、該チャネル領域の表面層に選択的に形成される前記エミッタ領域
は、平面視で、前記トレンチ間の中央側から両側の前記トレンチの近傍にそれぞれ延在し、かつ、前記トレンチ側で広く、
前記トレンチ間の中央側で狭
い表面形状を備えており、前記エミッタ領域の中央側で狭くなった部分の
前記トレンチ間の長手方向の両側に前記ボディ領域を有し、前記ボディ領域の前記トレンチ長手方向の幅が前記エミッタ領域のトレンチに接する辺の長さより長く
、前記ボディ領域が前記トレンチの側壁にかかる縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置とすることによっても、前記本発明の目的は達成される。
【0021】
特許請求の範囲の請求項
8記載の発明によれば、
前記トレンチの長手方向に前記チャネル領域と前記半導体基板の各表面が交互に現れるように配設される際の、前記チャネル領域と前記半導体基板の繰り返しピッチをZunitとし、Zunitに対するエミッタ領域の比率をREmitterとする場合、
REmitter≧0.3である特許請求の範囲の請求項
7記載の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置とする。
特許請求の範囲の請求項
9記載の発明によれば、前記
REmitterが
REmitter≧0.4である特許請求の範囲の請求項
8記載の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置とする。
【0022】
特許請求の範囲の請求項
10記載の発明によれば、前記トレンチの長手方向に前記チャネル領域と前記半導体基板の各表面が交互に現れるように配設される際の、前記チャネル領域と前記半導体基板の繰り返しピッチをZunitとする場合、Zunit≧100μmである特許請求の範囲の請求項
7記載の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置とする。
特許請求の範囲の請求項
11記載の発明によれば、前記並列ストライプ状表面パターンに形成されるトレンチとトレンチの繰り返しピッチが5μm以下である特許請求の範囲の請求項
7記載の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置とする。
【0023】
特許請求の範囲の請求項
12記載の発明によれば、前記トレンチの側壁に形成されるゲート絶縁膜の厚さが150nm乃至200nmのいずれかである特許請求の範囲の請求項
7記載の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置とする。
【発明の効果】
【0024】
以上に説明した本発明によれば、ターンオフ耐量の向上と低オン抵抗化または/および大電流密度化を達成できる縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明にかかる縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置について、図面を用いて詳細に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施例の記載に限定されるものではない。
図1〜
図9はそれぞれ本発明の実施例1にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図である。
図13は本発明の実施例1にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図である。
図14は本発明の実施例1にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図である。
図15は本発明の実施例2にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図である。
図16は本発明の実施例3にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図である。
図18は本発明と従来とにかかる縦型トレンチゲート構造IGBTのターンオフ波形図である。
図19−1〜
図22は本発明の実施例4にかかる縦型IGBTの製造工程のうち、実施例1と異なる製造工程を示す半導体基板の要部断面図である。
図23−1〜
図23−2は本発明の実施例4にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図である。
図24は本発明の実施例5にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図である。
図25は本発明の実施例6にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図である。
図26は本発明の実施例7にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図である。
図27は本発明の実施例8にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図である。
図28、
図29は本発明の実施例9にかかる縦型IGBTの製造工程のうち、実施例1と異なる製造工程を示す半導体基板の要部断面図である。
図30−1、
図30−2は本発明の実施例9にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図である。
図31は本発明の実施例10にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図である。
図32は本発明の実施例11にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図である。
図33は本発明の実施例12にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図である。
図34は本発明の実施例11にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図であり、
図32と同じである。
図35は本発明の実施例13にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図である。
図36、
図37は実施例13と従来例とのIGBTの出力特性比較図である。
図38、
図39はゲート酸化膜を厚くした場合と従来例とのIGBTの出力特性比較図である。
図40、
図41は電流密度400A/cm
2での、ハーフユニットセル長さとオン電圧との関係図である。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置にかかる実施例1について、
図1乃至
図9、
図13乃至
図16を参照して説明する。なお、実施例1では電力用縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置として、耐圧600VのIGBTの製造工程を示す。
従来の技術と同様に表面にベース領域となるn
−領域を有する面方位(100)面で比抵抗が約30Ωcmのn
−型の半導体シリコン基板11を用意する(
図1)。その基板表面に図示しないガードリング層(セル領域の周囲に形成されて表面での電界緩和機能を持つ耐圧構造の一種)形成のためのレジストマスクパターンを形成し、p型不純物をイオン注入し、レジスト除去後に熱処理を行うことで、チップの周辺部にガードリング層(図示せず)を形成する。この熱処理の際に酸化膜30を形成し、ホトリソグラフィの工程によりこの酸化膜30に開口部を形成する。
【0027】
図2に示すように、この酸化膜30をマスクとして所定の深さまで開口部の半導体シリコン基板11をエッチングすることによりトレンチ13を形成する。本実施例1では酸化膜30に5μm間隔で幅0.8μmの開口部を設け、異方性のRIE(Reactive
Ion Etching)エッチングをすることでトレンチ13を形成した。シリコン基板11へのトレンチ13形成に伴って形成される内表面欠陥層を除去するために、まず酸化処理によりトレンチ内部に図示しない犠牲酸化膜を形成する。この犠牲酸化膜を除去することにより前記内表面欠陥層を除去する。そして、一旦、セル領域の酸化膜を全て除去し、その後、ゲート酸化膜形成を行うことにより、トレンチ13の内部に膜厚80〜120nmのゲート酸化膜14を形成する(
図3)。
【0028】
次に、
図3の鎖線で示すように、シリコン基板上に膜厚が0.5〜1.0μmのリンやボロン等の不純物原子がドープされた導電性の多結晶シリコン膜15−1、15−2を減圧CVD法により全面に被着してトレンチ13の内部にも埋め込む。次に異方性または等方性のガスエッチングにより、ドープド多結晶シリコン膜15−1をエッチバックする。シリコン基板11表面に酸化膜14が露出した段階で多結晶シリコン膜15−1のエッチングを停止すると、
図3に示すようにトレンチ13内に埋め込まれたゲート電極15−2が形成される。堆積した膜厚と同程度の量をエッチバックするので、ゲート電極15−2はトレンチ13の頂部から100〜150nm程度深くエッチングされる。以降はこのゲート電極15−2を単に符号15で表す。
【0029】
図4に示すようにシリコン基板11表面側の酸化膜14のみを除去してシリコン基板面を露出させる。このとき、酸化膜14の除去方法として異方性エッチングを用いると、トレンチ側壁部上部の酸化膜14がエッチングされることなく厚いまま残るので、好ましい。さらにこの後の工程で形成されるp型チャネル領域、p
+型ボディ領域、n
+型エミッタ領域のイオン注入面が同一面となるほか、p型チャネル領域の形成がトレンチ形成後に行われることとなり、p型チャネル領域の拡散深さを浅くすることが可能となる。さらには、ボロンが熱酸化膜形成中に酸化膜に取り込まれることも防ぐことができるため都合がよい。
【0030】
図5(a)に示すようにボロンイオンあるいは砒素イオンが十分に透過しうる厚さ、例えば20〜50nmの熱酸化膜14aを形成する。
図5(a)の平面図である
図5(b)に示すように、並列トレンチのトレンチ間のシリコン基板領域11表面に、並列トレンチに直交するパターンでp型チャネル領域12となるp型の拡散領域を例えば加速電圧50keV程度、ドーズ量1×10
13cm
−2〜5×10
14cm
−2程度のボロンのイオン注入および1100℃程度の熱拡散処理により選択的に形成する。本実施例1では、トレンチ長手方向の、ボロンイオンが注入されるシリコン基板の表面幅を約6μm、ボロンイオンが注入されない幅(熱処理による拡散後の幅)を約14μmとした。
図5(b)に斜線で示されるp型チャネル領域12は熱拡散後の幅である。形成されたチャネル領域12の、トレンチ13間の中央表面に、p
+型ボディ領域17を形成する(
図6(a)、(b))。これはp
+型ボディ領域17となる部分にホトリソグラフィの工程によりレジストマスクの開口を形成し、例えば加速電圧100keV程度、ドーズ量1×10
15cm
−2〜5×10
15cm
−2程度のボロンイオン注入および1000℃程度の熱拡散処理をすることにより形成することができる。本実施例1では、p
+型ボディ領域17のトレンチ13の長手方向の幅を約5.5μm、トレンチ13の短手方向の幅を2μmとし、トレンチ13間の中央部に配置されるように形成した。
【0031】
次に、ホトリソグラフィ工程と、続く砒素イオン注入および熱処理により、トレンチ/トレンチ間のチャネル領域12において、
図7(a)、(b)に示すようにトレンチ長手方向の長さが、トレンチ13近傍からトレンチ/トレンチ間の中央部に近づくほど短くなるパターンを有するn
+型のエミッタ領域16を形成する。
図7(a)は
図7(b)のX−X線断面図である。以降の各断面図も同様な箇所での断面である。このイオン注入は、例えば、
図7(a)に部分的に矢印で示すように、As(砒素)イオンをレジストマスク23を用いて100〜200keV程度、ドーズ量1×10
15cm
−2〜5×10
15cm
−2程度で行われる。
【0032】
次に、
図8(a)の断面図および
図8(b)の一部破断平面図に示すようにBPSG(Boro Phospho Silicate Glass)等の絶縁膜18を基板全面に被着し、ホトリソグラフィの工程により基板11表面のn
+型エミッタ領域16とp
+型ボディ領域17とに金属電極(エミッタ電極)19を接触させるためのコンタクト領域40を開口する。この結果、トレンチ13内のゲート電極15は前記BPSG絶縁層18により被覆される。このとき、前記コンタクト領域40のトレンチ長手方向の開口幅が、n
+型エミッタ領域16のトレンチ長手方向の長さよりも短くなるようにする。
【0033】
具体的には、前記n
+型エミッタ領域のトレンチ長手方向の長さ5.0μmに対して、前記コンタクト領域のトレンチ長手方向の開口長さを4.5μm、トレンチ短手方向の開口長さはp
+型ボディ領域17のトレンチ短手方向長さと同じ2μmとなるようにした。
図13に、前記コンタクト領域40周辺の、トレンチ13間のp型チャネル領域12の表面に形成されるp
+型ボディ領域17とn
+型エミッタ領域16の拡大パターンとコンタクト領域40の各領域の寸法をまとめて示す。
【0034】
ただし、p型チャネル領域、n
+型エミッタ領域、p
+型ボディ領域はイオン注入後の熱処理による不純物拡散により基板面方向にも拡がるので、これらの領域に関する前述の寸法関係はマスク開口時の寸法による場合のものである。
図13では熱拡散により拡がるp型チャネル領域とp
+型ボディ領域をそれぞれ、符号12a、17aで示した。
その後、アルミニウム等の金属膜をスパッタリングなどにより被着し、ホトリソグラフィの工程によりパターニングして、アロイ化することで、セル領域部分の全面にn
+型エミッタ電極となる金属電極層19を形成する。更に必要に応じてチップ全面にパッシベーション膜を被着することも好ましい。
【0035】
図8(a)に示すシリコン基板11を他方の主面から耐圧によって決まる所要の厚さ(たとえば80〜120μm程度)になるように研磨した後、
図9に示すように、n型バッファ層(あるいは、n型フィールドストップ層)50およびp型コレクタ層51をイオン注入ならびに熱処理によって形成し、コレクタ電極22を形成するとウエハ段階の縦型IGBTが完成する。ここで、IGBTの形態によっては、n型バッファ層(あるいは、n型フィールドストップ層)50の形成を必要としない場合もある。また、シリコン基板として、n
−/n
++/p
++基板を用い、n型バッファ層50およびp型コレクタ層51をイオン注入ならびに熱処理によって形成しない方法とすることもできる。さらに、n
+型エミッタ領域16を2回に分けて形成することによりn
+型エミッタ領域の表面濃度を高くすると、良好なオーミック接触が得られるので、好ましい。
【0036】
上述の説明のようにp型チャネル領域12、p
+型ボディ領域17、n
+型エミッタ領域16の相互配置並びに寸法とすることによって、
図14の矢印で示すように、正孔電流経路上に存在していたn
+型エミッタ領域を小さくすることが可能となり、n
+型エミッタ領域/p型チャネル領域/n型シリコン基板層からなるNPNトランジスタを極めて動作しにくいものとし、結果として、n
+型エミッタ領域/p型チャネル領域/n型シリコン基板層/p型コレクタ層からなるIGBTの寄生サイリスタの動作を困難なものとし、ターンオフ耐量を上昇せしめることが可能となるのである。
【実施例2】
【0037】
本発明の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置にかかる実施例2について、
図15を参照して説明する。実施例2では電力用縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置として、耐圧600VのIGBTの構造を示す。
IGBT作成の工程フローは前述の実施例1と同様であり、p
+型ボディ領域27、n
+型エミッタ領域26および金属/半導体層のコンタクト領域41の形状、配置、寸法のみ実施例1から変更されている。主たる変更点は、n
+型エミッタ領域26とトレンチのなす角度が90度ではなく45度の角度をなしているという点、ならびに、金属/半導体層のコンタクト領域41のトレンチ長手方向の長さ(5.5μm)がn
+型エミッタ領域26のトレンチ長手方向の長さ(5.0μm)より長くなっているという点である。
【0038】
n
+型エミッタ領域26とトレンチのなす角度を90度より小さくすることにより、正孔電流経路上に存在していたn
+型エミッタ領域26を実施例1よりもさらに小さくすることが可能となる。加えて、金属/半導体層のコンタクト領域41のトレンチ長手方向の長さがn
+型エミッタ領域26のトレンチ長手方向の長さより長くすることによって、正孔電流経路をn
+型エミッタ領域26から遠ざけることが可能となる。従って、実施例1のIGBTよりさらに高いターンオフ耐量を得られる。
【0039】
ただし、p型チャネル領域、n
+型エミッタ領域、p
+型ボディ領域はイオン注入後の熱処理による不純物拡散により基板面方向にも拡がるので、これらの領域に関する前述の寸法関係はマスク開口時の寸法による場合のものである。
図15では熱拡散により拡がるp型チャネル領域、p
+型ボディ領域をそれぞれ、符号22a、27aで示した。
【実施例3】
【0040】
本発明の縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置にかかる実施例3について、
図16を参照して説明する。実施例3では電力用縦型トレンチ型絶縁ゲートMOS半導体装置として、耐圧600VのIGBTの構造を示す。
IGBTを作成する製造工程フローは前述の実施例1と同様であり、p
+型ボディ領域37、n
+型エミッタ領域36および金属/半導体層のコンタクト領域42の形状、配置、寸法のみ実施例1から変更されている。主たる変更点は、n
+型エミッタ領域36とトレンチのなす角度が90度ではなく45度の角度をなしているという点、ならびに、金属/半導体層のコンタクト領域42がn
+型エミッタ領域36のトレンチ長手方向のすべての長さにわたって接触していないという点である。金属/半導体層のコンタクト領域42がn
+型エミッタ領域36のトレンチ長手方向のすべてにわたって接触していないことによって、n
+型エミッタ領域36と金属/半導体層のコンタクト領域42の間にある高濃度p
+型ボディ領域37を正孔電流が流れることが可能となり、IGBTのターンオフ耐量を上昇せしめることが可能となる。
【0041】
ただし、p型チャネル領域、n
+型エミッタ領域、p
+型ボディ領域はイオン注入後の熱処理による不純物拡散により基板面方向にも拡がるので、これらの領域に関する前述の寸法関係はマスク開口時の寸法による場合のものである。
図16では熱拡散により拡がるp型チャネル領域、p
+型ボディ領域をそれぞれ、符号32a、37aで示した。
以上に説明したのは本発明の実施例の一部に過ぎないものであり、本発明の趣旨を逸脱することなく、この他にも種々の実施例が考えられることは言うまでもない。
【実施例4】
【0042】
以下、本発明にかかる実施例4について、
図1乃至
図5および
図19−1、
図20−1、
図21、
図22を参照して説明する。なお、本実施例4では縦型トレンチゲートMOSパワー半導体デバイスとして、耐圧1200VのIGBTの製造工程を示す。
まず、表面にベース領域となるn
−領域11を有する面方位100で、比抵抗が実施例1の約30Ωcmからこの実施例4では約60Ωcmに変えたn
−型のシリコン基板を用意する。その他の工程については、
図1〜
図5までの製造工程は実施例1とほぼ同様とする。続く、
図19−1に関する製造工程について、この実施例4では、p
+ボディ領域37−1の寸法とn
+型エミッタ領域36−1について、実施例1に係わる
図6と異なる。すなわち、p
+ボディ領域37−1のトレンチ長手方向のボロンイオン注入幅を約4.6μm、トレンチ短手方向の幅を2μmとした。
【0043】
次に
図20−1(a)、(b)に示すようにホトリソグラフィの工程により、開口寸法が実施例1(図示せず)と異なるレジストマスク23−1を用いて、実施例1と同様に砒素(As)のイオン注入および熱処理をすることでn
+型エミッタ領域36−1を形成する。このイオン注入は、例えば100〜200keV程度、ドーズ量1×10
15cm
−2〜5×10
15cm
−2程度で行われる。n
+型エミッタ領域36−1の具体的な平面寸法を
図23−1に示すように、5.0μmとした。
図23−1では熱拡散により拡がるp型チャネル領域とp
+型ボディ領域をそれぞれ、符号32−1a、37−1aで示した。次に
図21(a)、(b)に示すようにBPSG等の層間絶縁膜18を基板全面に被着し、ホトリソグラフィの工程により基板表面のn
+型エミッタ領域36−1及びp
+型ボディ領域37−1を露出するように、層間絶縁膜18をエッチングすることで開口(コンタクト領域)43を設ける。従って、トレンチ13内のゲート電極15を被覆するように層間絶縁層18が形成される。このとき、開口(コンタクト領域)43のトレンチの長手方向の幅(9.6μm)が、n
+型エミッタ領域36−1のトレンチ/トレンチ間におけるトレンチ長手方向(5.0μm)よりも長くなるようにする。本実施例4ではn
+型エミッタ電極19との接触のための開口(コンタクト領域)43の具体的な寸法は、
図23−1に示すように、トレンチ長手方向の開口長さが9.6μm、トレンチ短手方向の開口長さが2μmとなるようにした。そして、
図21(a)に示すように、アルミ等の金属材料をスパッタリングすることで、基板の全面に被着し、ホトリソグラフィの工程によりパターニングして、セル領域部分の全面に電極となる金属電極層19を形成する。更にその上のチップ全面に図示しないパッシベーション膜を被着することが好ましい。シリコン基板11の他方の主面から所定の厚さ(130〜150μm程度)までシリコン基板を研磨した後に、
図22に示すように、n型バッファ層(あるいは、n型フィールドストップ層)50およびp型コレクタ層51をイオン注入ならびに熱処理によって形成した後にコレクタ電極22を形成することで、ウエハ段階の縦型IGBTが完成する。ここで、IGBTの形態によっては、n型バッファ層(あるいは、n型フィールドストップ層)50の形成はなされないものもあるし、基板として、n
−/n
++/p
++基板を用い、n型バッファ層50およびp型コレクタ層51をイオン注入ならびに熱処理によって形成しないものもある。ただし、前述のような製造方法の場合には、ゲート電極15とn
+型エミッタ領域36−1とが離れることが考えられるため、n
+型エミッタ領域の熱処理時間は比較的長くする必要がある。このような場合にはn
+型エミッタ領域の濃度が低下し、金属電極とn
+型エミッタ領域のオーミック接触が困難な場合がある。このような場合は、エミッタ層を2回に分けて形成することでn
+型エミッタ領域の表面濃度が高くオーミック接触の容易なものとすることができる。すなわち、p型チャネル領域32−1を形成後に第1のn
+型のエミッタ領域36−1を形成した後、p
+型ボディ領域37−1を形成し、さらに、第2のn
+型エミッタ領域36−1となる部分にホトリソグラフィの工程によりレジストマスクの開口を形成し、例えば砒素をイオン注入および熱処理することにより形成する。これにより、n
+型エミッタ領域と金属電極のオーミック接触が容易な構造となる。
【0044】
上述のようにp型チャネル領域32−1、n
+型エミッタ領域36−1、エミッタ金属/半導体のコンタクト領域43を形成することによって、
図23−2における矢印で示すように、トレンチ13側壁から流れ込む正孔電流の多くは、電位の低いエミッタ
電極へ流れ込むようになり、p型チャネル領域32−1の電位の上昇を抑制することが可能となる。従って、n
+型エミッタ領域36−1/p型チャネル領域32−1/n型シリコン基板層11からなるNPNトランジスタを動作しにくいものとし、結果として、n
+型エミッタ領域36−1/p型チャネル領域32−1/n型シリコン基板層11/p型コレクタ層51からなるIGBTの寄生サイリスタの動作を困難なものとする。このため、ターンオフ耐量を上昇せしめることが可能となる。
【0045】
図18に、前記
図12に示す従来のIGBTのターンオフ波形図(a)および実施例4にかかるIGBTのターンオフ波形図(b)をそれぞれ示す。
図12の従来のIGBTでは、
図18(a)に示すように、電流密度375A/cm
2でターンオフ破壊しているのに対して、本実施例4にかかるIGBTでは、
図18(b)に示すように電流密度2000A/cm
2を非破壊でターンオフ可能となっており、5倍以上のターンオフ耐量が得られることが分かった。該ターンオフ耐量の向上は、前述のように、トレンチ側壁から流れ込む正孔電流の経路から、n
+型エミッタ領域を遠ざけ、n
+型エミッタ領域36−1/p型チャネル領域32−1/n型シリコン基板層11/p型コレクタ層51からなるIGBTの寄生サイリスタの動作を困難なものとした結果と考えられる。
【実施例5】
【0046】
本発明にかかる実施例5について、
図24を参照して説明する。IGBTを作成する製造工程フローは実施例4と同様であり、p
+型ボディ領域37−2の形状は前記実施例4から変更されている。すなわち、p
+型ボディ領域37−2がエミッタ金属電極とのコンタクト領域44を取り囲むように、かつ、トレンチ13長手方向にn
+型エミッタ領域(5.0μm)36−2より長い距離(幅)(10μm)で形成されているという点である。このようなp
+型ボディ領域37−2を形成することでトレンチ側壁から流れ込む正孔電流の多くはp
+型ボディ領域37−2を通りコンタクト領域44へ流れ込むことになり、p型チャネル領域32−2の電位の上昇を抑制し、前記実施例4のIGBTより高いターンオフ耐量を得られることが可能となる他、コンタクト領域44がn型シリコン基板層11に到達することを確実に防ぐことが可能となる。なお、
図24では熱拡散により拡がるp型チャネル領域とp
+型ボディ領域をそれぞれ、符号32−2a、37−2aで示した。
【実施例6】
【0047】
本発明にかかる実施例6について、
図25を参照して説明する。IGBTを作成する製造工程フローは前記実施例4と同様であり、p
+型ボディ領域37−3が前記実施例4から変更されている。すなわち、p
+型ボディ領域37−3をトレンチ13側壁にかかるように形成することで、トレンチ側壁から流れ込む正孔電流の多くはp
+型ボディ領域37−3を通りコンタクト領域45へ流れ込むことになり、p型チャネル領域の電位の上昇を抑制することが可能となる。従って、前記実施例4のIGBTより高いターンオフ耐量を得られる。なお、
図25では、p型チャネル領域を32−3、n
+型エミッタ領域を36−3でそれぞれ示し、熱拡散により拡がるp型チャネル領域とp
+型ボディ領域をそれぞれ、符号32−3a、37−3aで示した。
p型チャネル領域32−3と32−3aの形状が判るようにp+型ボディ領域37−3の左下部分を削除して示した。
【実施例7】
【0048】
本発明にかかる実施例7について、
図26を参照して説明する。IGBTを作成する製造工程フローは前記実施例4と同様であり、主たる変更点は、n
+型エミッタ領域36−4とトレンチ13のなす角度が90度ではなく45度の角度をなしているという点である。コンタクト領域46がn
+型エミッタ領域36−4のトレンチ長手方向部分とすべてにわたって接触していないことによって、n
+型エミッタ領域36−4とコンタクト領域46の間にある高濃度p
+型ボディ領域37−4により多くの正孔電流が流れることが可能となり、IGBTのターンオフ耐量を上昇せしめることが可能となる。なお、
図26ではp型チャネル領域を32−4で示し、熱拡散により拡がるp型チャネル領域とp
+型ボディ領域をそれぞれ、符号32−4a、37−4aで示した。
【実施例8】
【0049】
本発明にかかる実施例8について、
図27を参照して説明する。IGBTを作成する製造工程フローは前記実施例4と同様であり、前記実施例6、7を組み合わせた構造であるが、主たる変更点として、p
+型ボディ領域37−5とn
+型エミッタ領域36−5が重ね合わせられるように形成されている点である。このような構成とすることで、フォトエッチング工程でやむを得ず発生するマスク合わせずれが発生した場合においても確実に高濃度p
+型ボディ領域37−5がn
+型エミッタ領域36−5に接するように形成されるようになり、マスク合わせずれが発生する場合においても、安定的に高いターンオフ耐量が得られる。なお、
図27ではp型チャネル領域を32−5で示し、熱拡散により拡がるp型チャネル領域とp
+型ボディ領域をそれぞれ、符号32−5a、37−5aで示した。
【実施例9】
【0050】
以下、本発明の実施例9について、
図1乃至
図5、
図19−2、
図20−2、
図28、
図29、
図30−1、
図30−2を参照して説明する。なお、本実施例9は縦型トレンチゲートMOSパワー半導体デバイスとして、耐圧1200VのIGBTの製造工程を示す。まず、実施例4と同様に表面にベース領域となるn
−領域11を有する面方位100で、比抵抗を約60Ωcmのn
−型のシリコン基板を用意する(
図1)。
図1〜
図5および
図19−2、
図20−2までの製造工程は実施例4と同様である。
【0051】
本実施例9では、
図28(a)、(b)に示すようにBPSG等の層間絶縁膜18を基板全面に被着し、ホトリソグラフィの工程により基板表面のn
+型エミッタ領域36−6及びp
+型ボディ領域37−6を露出するようにその層間絶縁膜18をエッチングすることでエミッタ金属電極との接触のためのコンタクト領域47を設ける。このコンタクト領域47の寸法は、
図30−1に示すように、トレンチ長手方向では9.0μm、トレンチ短手方向では2μmである。なお、
図30−1ではp型チャネル領域を32−6で示し、熱拡散により拡がるp型チャネル領域とp
+型ボディ領域をそれぞれ、符号32−6a、37−6aで示した。コンタクト領域47のトレンチ長手方向の幅が、n
+型エミッタ領域36−6のトレンチ/トレンチ間におけるトレンチ長手方向よりも短くなるようする。具体的な寸法としては、コンタクト領域のトレンチ長手方向の開口長さが4.5μm、トレンチ短手方向の開口長さが2μmとなるようにした。そして、アルミ等の金属材料をスパッタリングすることで、シリコン基板の全面に被着し、ホトリソグラフィの工程によりパターニングして、セル領域部分の全面に電極となる金属電極層19を形成する。更に好ましくはチップ全面にパッシベーション膜を被着する。
図29に示すように、実施例4と同様にしてシリコン基板の他方の主面を研磨し、n型バッファ層(あるいはフィールドストップ層)50およびp型コレクタ層51をイオン注入ならびに熱処理によって形成した後にコレクタ電極22を形成することで、ウエハ段階の縦型IGBTが完成する。
【0052】
このようにp型チャネル領域32−6、p
+型ボディ領域37−6、n
+型エミッタ領域36−6を形成することによって、
図30−2における矢印に示すように、トレンチ13側壁から流れ込む正孔電流の多くは、電位の低い(エミッタ電位に近い)高濃度p
+型ボディ領域37−6へ流れ込むようになり、p型チャネル領域32−6の電位の上昇を抑制することが可能となる。従って、n
+型エミッタ領域36−6/p型チャネル領域32−6/n型シリコン基板層11からなるNPNトランジスタを動作しにくいものとし、結果として、n
+型エミッタ領域36−6/p型チャネル領域32−6/n型シリコン基板層11/p型コレクタ層51からなるIGBTの寄生サイリスタの動作を困難なものとする。このため、ターンオフ耐量を上昇せしめることが可能となる。
【0053】
実施例9のIGBTでもターンオフ試験を行ったが、
図18(b)のターンオフ試験結果と同様に電流密度2000A/cm
2を非破壊でターンオフ可能となっており、従来例に対して5倍以上のターンオフ耐量が得られる。該ターンオフ耐量の向上は、前述のように、トレンチ側壁から流れ込む正孔電流の経路から、n
+型エミッタ領域を遠ざけ、n
+型エミッタ領域36−6/p型チャネル領域32−6/n型シリコン基板層11/p型コレクタ層51からなるIGBTの寄生サイリスタの動作を困難なものとした結果と考えられる。
【実施例10】
【0054】
以下、本発明の実施例10について、特にコンタクト領域については
図31を参照して説明する。IGBTを作成する製造工程フローは前記実施例9と同様であり、p
+型ボディ領域37−7が実施例9から変更されているだけなので省略する。主な変更点はトレンチ長手方向にn
+型エミッタ領域36−7より突き出されて長く形成されているp
+型ボディ領域37−7がトレンチ13側壁にかかるように形成されているという点である。p
+型ボディ領域37−7をトレンチ13側壁にかかるように形成することで、実施例9で説明したIGBTより、トレンチ13側壁から流れ込む正孔電流の多くはp
+型ボディ領域37−7へ流れ込むことになり、p型チャネル領域32−7の電位上昇を抑制することが可能となる。従って、実施例9のIGBTより高いターンオフ耐量を得られる。なお、
図31ではp型チャネル領域を32−7で示し、熱拡散により拡がるp型チャネル領域とp
+型ボディ領域をそれぞれ、符号32−7a、37−7aで示した。
p型チャネル領域32−7と32−7aの形状が判るようにp+型ボディ領域37−7の左下部分を削除して示した。
【実施例11】
【0055】
以下、本発明の実施例11について、特にコンタクト領域については
図32を参照して説明する。IGBTを作成する製造工程フローは実施例9と同様であるので省略する。主たる変更点は、n
+型エミッタ領域36−8とトレンチ13のなす角度が90度ではなく45度の角度をなしているという点である。n
+型エミッタ領域36−8の形状を変更することによって、正孔電流経路上のn
+型エミッタ領域を少なくすることが可能となり、n
+型エミッタ領域36−8/p型チャネル領域32−8/n型シリコン基板層11からなるNPNトランジスタを動作しにくいものとし、結果として、n
+型エミッタ領域36−8/p型チャネル領域32−8/n型シリコン基板層11/p型コレクタ層51からなるIGBTの寄生サイリスタの動作を困難なものとしており、IGBTのターンオフ耐量を上昇せしめることが可能となる。なお、
図32ではp
+型ボディ領域を37−8で示し、熱拡散により拡がるp型チャネル領域とp
+型ボディ領域をそれぞれ、符号32−8a、37−8aで示した。
【実施例12】
【0056】
以下、本発明の実施例12について、特にコンタクト領域については
図33を参照して説明する。IGBT作成の工程フローは実施例9と同様であるので省略する。実施例12は前記実施例10と前記実施例11とを組み合わせた構造であるが、主たる変更点として、p
+型ボディ領域37−9とn
+型エミッタ領域36−9が重ね合わせられるように形成されている点である。このような構成とすることで、フォトエッチング工程でやむを得ず発生するマスク合わせずれが発生した場合においても確実に高濃度p
+型ボディ領域がn
+型エミッタ領域に接するように形成されるようになり、マスク合わせずれが発生する場合においても、安定的に高いターンオフ耐量が得られるメリットがある。なお、
図33ではp型チャネル領域を32−9で示し、熱拡散により拡がるp型チャネル領域とp
+型ボディ領域をそれぞれ、符号32−9a、37−9aで示した。
【0057】
以上の実施例12までに説明したように本発明は、直線状に形成されたトレンチとそこに形成される絶縁膜、並びに、トレンチに絶縁膜を介して埋め込まれる制御電極を有し、トレンチの長手方向に第一導電型領域と第二導電型領域が交互に現れる縦型/トレンチ型IGBTにおいて、n
+型エミッタ領域36−9、p
+型ボディ領域37−9およびエミッタ電極19とのコンタクト領域の形状を最適なものとし、工程数を増やすことなく、極めて簡便な方法で、ターンオフ耐量を向上せしめることを可能としている。
【0058】
以上に説明した本発明は実施例の一部にすぎないものであり、本発明の趣旨を逸脱することなく、このほかにも種々の変形した実施の形態が考えられることは勿論のことである。
【実施例13】
【0059】
以下、本発明の実施例13について説明する。なお、本実施例13はハイブリッド自動車用、縦型トレンチゲートMOSパワー半導体デバイスとして、耐圧1200VのIGBTの製造工程を示した。この製造工程は実施例4の
図1〜
図9に記載の製造工程と各領域パターンおよび寸法以外は基本的に同じであるので、製造工程の同じところは省略し、異なるところを中心に説明する。
図1〜
図5までの製造工程は実施例1とほぼ同様とする。続く、実施例4の
図19−1〜
図21を、
図42〜
図44に変更する以外は実施例4と同様の製造工程とする。実施例13にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図を
図35に示す。
図34は対比するために示す実施例11にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図である。
【0060】
まず、表面にベース領域となるn
−領域11を有する面方位100で、比抵抗が実施例1の約30Ωcmからこの実施例13では約50Ωcmに変えたn
−型のシリコン基板を用意する。その他の工程については、
図1〜
図5までの製造工程は実施例1とほぼ同様とする。ただし、実施例13ではストライプ状トレンチの幅は0.8μm、隣接トレンチ間隔を
5μm以下の4μmとし、トレンチ内表面に形成するゲート酸化膜の厚さを140nm〜170nmとした。また、トレンチ間の半導体基板表面に形成されるチャネル領域のトレンチ長手方向の繰り返しピッチ(Z
Unit)を100μmとし、チャネル領域の長手方向の長さを40μmとした。この場合、繰り返しピッチ(Z
Unit)に対するチャネル領域12−1の比率(R
channel)は40%である。
【0061】
続く、
図6〜
図8に関する製造工程については
図42〜
図44に変更する。この実施例13では、p
+ボディ領域17−1の寸法とn
+型エミッタ領域16−1について、実施例1または実施例4に係わる
図6、
図7または
図19−1、
図19−2と異なる。すなわち、
図35、
図42(a)、(b)に示すように、p
+ボディ領域17−1のトレンチ長手方向のボロンイオン注入幅を100μm×0.4+5μm=45μmに変更した(
図35)。
【0062】
次に、
図43(a)、(b)に示すようにホトリソグラフィの工程により、開口寸法が実施例4と異なるレジストマスク23−2を用いて、実施例1と同様に砒素(As)のイオン注入および熱処理をすることでn
+型エミッタ領域16−1を形成する。n
+型エミッタ領域16−1の具体的な平面寸法を
図35に示すように40μmとした。繰り返しピッチ(Z
unit)に対するエミッタ領域の比率(R
Emitter)は40%である。
【0063】
次に
図44(a)、(b)に示すようにBPSG等の層間絶縁膜18を基板全面に被着し、ホトリソグラフィの工程により基板表面のn
+型エミッタ領域16−1及びp
+型ボディ領域17−1を露出するように、層間絶縁膜18をエッチングすることで開口(コンタクト領域)48を設ける。従って、トレンチ13内のゲート電極15を被覆するように層間絶縁層18が形成される。このとき、開口(コンタクト領域)48のトレンチの長手方向の幅(44μm)が、n
+型エミッタ領域16−1のトレンチ/トレンチ間におけるトレンチ長手方向(40μm)よりも長くなるようにする。本実施例13ではn
+型エミッタ電極19との接触のための開口(コンタクト領域)48の具体的な寸法は、
図35に示すように、トレンチ長手方向の開口長さが44μm、トレンチ短手方向の長さを1.2μmとなるようにした。その後の製造工程は、実施例1、実施例4と同様にしてウエハ段階の縦型IGBTが完成する。
【0064】
実施例13のR
Emitter=40%の場合のセル形状は
図35に示されるような寸法となる。以下、トレンチ長手方向の長さ(幅)を示す。エミッタ領域40μm、p型チャネル層40μm、コンタクト領域44μm、p+ボディ領域45μm、p型チャネル層の繰り返しピッチは100μmである。ちなみに、比較のため、前記実施例11にかかる
図34におけるトレンチ長手方向の長さ(幅)はそれぞれエミッタ領域5.0μm、p型チャネル層6.0μm、コンタクト領域4.6μm、p+ボディ領域9.0μm、p型チャネル層32−8の繰り返しピッチは29μmである。
【0065】
一方、上述のように形成した
図35に示す実施例13のパターン構成のIGBTにおいて、ゲート酸化膜厚が140nm〜170nm(図では150nm)の場合であって、R
Emitterを20%〜60%の範囲で変化させた場合のI−V出力特性と、前記
図34に示す実施例11のパターン構成のIGBTの同様なI−V出力特性とを
図36、
図37に示す。
【0066】
図36より明らかなように、実施例11のIGBTでは、制限電流密度が700A/cm
2程度であり、400A/cm
2のオン電圧は3.6V程度であるのに対して、実施例13のIGBTでは、R
Emitterを30%以上にすれば、電流密度1100A/cm
2で電流が制限されるようになり、オン電圧も400A/cm
2において、3V以下に小さくすることが可能であることが示されている。しかしながら、実施例13においてもR
Emitterを20%とした場合には制限電流密度が600A/cm
2と低く、オン電圧3.6V程度であり高い。
【0067】
すなわち、制限電流密度を高く、かつ、オン電圧を低くするためには、制限電流密度を、使用する電流密度の少なくとも3倍以上に確保しなければならないということ、さらに、そのためにはデバイスの単位面積当たりの総エミッタ長(
n+型エミッタ領域の平面寸法の単位面積当たりの幅)を規定値以上に確保する必要があるといえる。
このデバイスのR
Emitterを30%,40%とした時の単位面積当たりの総エミッタ長(
n+型エミッタ領域の平面寸法の単位面積当たりの幅)を計算すると、各々、7.5m/cm
2 ,10m/cm
2 となる。すなわち、単位面積当たりの総エミッタ長(
n+型エミッタ領域の平面寸法の単位面積当たりの幅)を7.5m/cm
2 とする、望ましくは、単位面積当たりの総エミッタ長(
n+型エミッタ領域の平面寸法の単位面積当たりの幅)を10m/cm
2 とすることで高い電流密度(400A/cm
2)で低いオン電圧を達成可能である。
【0068】
さらに、ゲート酸化膜厚を190〜230nmに厚く変更した場合の、前記
図35に示す実施例13のパターン構成のIGBTについて、そのR
Emitterを20%〜60%の範囲で変化させた場合のI−V出力特性と、前記
図34に示す実施例11のパターン構成のIGBTの同様なI−V出力特性とを
図38、
図39に示す。
図38、
図39より明らかなように、ゲート酸化膜厚が200nmの場合においても、ゲート酸化膜厚が150nmの場合と同様の傾向が表れており、制限電流密度を、使用する電流密度の少なくとも3倍以上に確保しなければならないということ、さらに、そのためには単位面積当たりの総エミッタ長(
n+型エミッタ領域の平面寸法の単位面積当たりの幅)を規定値以上に確保する必要があることが分かる。
【0069】
すなわち、R
Emitterを30%以上とすることが望ましい。従って、単位面積当たりの総エミッタ長(
n+型エミッタ領域の平面寸法の単位面積当たりの幅)を7.5m/cm
2 とする、望ましくは、単位面積当たりの総エミッタ長(
n+型エミッタ領域の平面寸法の単位面積当たりの幅)を10m/cm
2 とすることで高い電流密度(400A/cm
2)で低いオン電圧を達成可能である。
図40に、ゲート酸化膜厚を140〜170nm程度にした場合(
図40では150nmの場合)の実施例13において、電流密度が400A/cm
2 の時のオン電圧と単位セル長さとの関係図を、トレンチ長手方向
の繰り返しピッチ(Z
Unit)とトレンチ長手方向
の繰り返しピッチに対するエミッタ
領域の比率R
Emitterをパラメータとした場合について示す。また、
図41には、ゲート酸化膜厚を190〜230nm程度にした場合(
図41では200nmの場合)の実施例において、電流密度が400A/cm
2 の時のオン電圧と単位セル長さとの関係図を、トレンチ長手方向
の繰り返しピッチ(Z
Unit)とトレンチ長手方向
の繰り返しピッチに対するエミッタ
領域の比率R
Emitterをパラメータとした場合について示す。
【0070】
以上説明した、実施例13によれば、いずれの図からも、次のような傾向が見られる。エミッタ
領域の比率(R
Emitter)
が20%〜30%で大きなオン電圧の低下が見られる。エミッタ
領域の比率(R
Emitter)
が40%以上ではオン電圧はほとんど同一である。トレンチ長手方向
の繰り返しピッチ(Z
Unit)が長いほどオン電圧が低下するが、飽和傾向を示しており、必要以上に長くしてもオン電圧低減の効果は限定的である。すなわち、エミッタ
領域の比率(R
Emitter)は30%以上、望ましくは、40%以上とすると低オン電圧と高電流密度を両立可能である。加えて、トレンチ長手方向の繰り返しピッチ(Z
Unit)は50μm以上、望ましくは100μm以上とすると低オン電圧と高電流密度を両立可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】本発明の実施例1にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図(その1)、
【
図2】本発明の実施例1にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図(その2)、
【
図3】本発明の実施例1にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図(その3)、
【
図4】本発明の実施例1にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図(その4)、
【
図5】本発明の実施例1にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図(その5)、
【
図6】本発明の実施例1にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図(その6)、
【
図7】本発明の実施例1にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図(その7)、
【
図8】本発明の実施例1にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図(その8)、
【
図9】本発明の実施例1にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図(その9)、
【
図10】従来の縦型トレンチ型絶縁ゲートIGBTの斜視図、
【
図11-1】
図10に示す縦型トレンチ型絶縁ゲートIGBTのA−A線における断面図、
【
図11-2】
図10に示す縦型トレンチ型絶縁ゲートIGBTのB−B線における断面図、
【
図11-3】
図10に示す縦型トレンチ型絶縁ゲートIGBTのC−C線における断面図、
【
図12】従来の縦型トレンチ型絶縁ゲートIGBTの上面図、
【
図13】本発明の実施例1にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図、
【
図14】本発明の実施例1にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図、
【
図15】本発明の実施例2にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図、
【
図16】本発明の実施例3にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図、
【
図18】本発明と従来とにかかる縦型トレンチゲート構造IGBTのターンオフ波形図、
【
図19-1】本発明の実施例4にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図、
【
図19-2】本発明の実施例9にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図、
【
図20-1】本発明の実施例4にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図、
【
図20-2】本発明の実施例9にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図、
【
図21】本発明の実施例4にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図、
【
図22】本発明の実施例4にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図、
【
図23-1】本発明の実施例4にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図、
【
図23-2】本発明の実施例4にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図、
【
図24】本発明の実施例5にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図、
【
図25】本発明の実施例6にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図、
【
図26】本発明の実施例7にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図、
【
図27】本発明の実施例8にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図、
【
図28】本発明の実施例9にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図、
【
図29】本発明の実施例9にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図、
【
図30-1】本発明の実施例9にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図、
【
図30-2】本発明の実施例9にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図、
【
図31】本発明の実施例10にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図、
【
図32】本発明の実施例11にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図、
【
図33】本発明の実施例12にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図である。
【
図34】本発明の実施例11にかかる縦型IGBTのセル部拡大平面図である。
【
図35】実施例13で、R
Emittar=40%の場合の単位セルの平面図である。
【
図36】実施例13と従来例とのIGBTの出力特性比較図である。
【
図37】実施例13と従来例とのIGBTの出力特性比較図である。
【
図38】ゲート酸化膜を厚くした場合と従来例とのIGBTの出力特性比較図である。
【
図39】ゲート酸化膜を厚くした場合と従来例とのIGBTの出力特性比較図である。
【
図40】電流密度400A/cm
2での、ハーフユニットセル長さとオン電圧との関係図である。
【
図41】電流密度400A/cm
2での、ハーフユニットセル長さとオン電圧との関係図である。
【
図42】本発明の実施例13にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図、
【
図43】本発明の実施例13にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図、
【
図44】本発明の実施例13にかかる縦型IGBTの製造工程を示す半導体基板の要部断面図である。
【符号の説明】
【0072】
11 第一導電型半導体基板(n型シリコン基板)
12、12−1、22、32、32−1乃至32−9 第二導電型(p型)チャネル領域
13 トレンチ
14 ゲート酸化膜(シリコン酸化膜)
15 ゲート電極(導電性ポリシリコン電極)
16、16−1、26、36、36−1乃至36−9 第一導電型(n
+型)エミッタ領域
17、17−1、27、37、37−1乃至37−9 第二導電(p
+型)ボディ領域
18 層間絶縁膜(BPSG)
19 エミッタ電極(エミッタ金属電極)
22 コレクタ電極
23、23−1、23−2 レジストマスク
30 酸化膜
40、41、42、43、44、45、46、47、48 エミッタ金属/半導体層のコンタクト領域、
50 n
+型バッファ(フィールドストップ)層
51 p
+型コレクタ層。