特許第5984295号(P5984295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5984295-放射線遮蔽シート 図000005
  • 特許5984295-放射線遮蔽シート 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984295
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】放射線遮蔽シート
(51)【国際特許分類】
   G21F 1/08 20060101AFI20160823BHJP
   G21F 3/00 20060101ALI20160823BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20160823BHJP
   A01N 25/28 20060101ALI20160823BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20160823BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20160823BHJP
   A01N 37/40 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   G21F1/08
   G21F3/00 F
   A01P17/00
   A01N25/28
   A01N25/10
   A01N25/00 101
   A01N37/40
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-201058(P2012-201058)
(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公開番号】特開2014-55861(P2014-55861A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000204192
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 丈門
(72)【発明者】
【氏名】山本 伸
(72)【発明者】
【氏名】豊田 宏
【審査官】 青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−010703(JP,A)
【文献】 特開昭60−071996(JP,A)
【文献】 特開平05−306202(JP,A)
【文献】 特開2010−222311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 1/08
G21F 3/00
A01N 25/28
A01N 29/00
A01P 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維性基布と、前記基布の少なくとも1面上に形成された放射線遮蔽層とを有する可撓性シートであって、前記放射線遮蔽層の少なくとも50質量%以上が硫酸バリウムで形成され、且つ前記硫酸バリウムに対して、0.05〜3質量%のカプサイシン含有マイクロカプセル粒子、及び0.1〜3質量%のシランカップリング剤とを含み、前記可撓性シートにおける硫酸バリウム含有量が500g/m以上で、前記可撓性シートが幅繋され、前記可撓性シートの端部同士による突合せ部を有し、さらに前記突合せ部を被覆し、かつ前記可撓性シート同士をブリッジ形成するシーミング帯が溶着積層されていることを特徴とする放射線遮蔽シート。
【請求項2】
前記カプサイシン含有マイクロカプセル粒子が、カプリリックアシドバニリルアミド、ノナノイルバニリルアミド、デシリックアシドバニリルアミド、ノルジヒドロカプサイシンI、ジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシンI、ノルジヒドロカプサイシンII、ホモジヒドリカプサイシンII、カプサイシン、ホモカプサイシンI、ホモカプサイシンIIから選ばれた1種以上のカプサイシン化合物を、尿素系樹脂またはメラミン樹脂を壁材として被覆内包した粒子である請求項1に記載の放射線遮蔽シート。
【請求項3】
前記放射線遮蔽層を被覆する1以上の保護層が設けられ、前記保護層が無機物質粒子を含有し、その含有量が前記保護層に対して20質量%以下である請求項1または2に記載の放射線遮蔽シート。
【請求項4】
前記シランカップリング剤が、ビニルシラン、アクリロキシシラン及びメタクリロキシシランから選ばれた1種以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線遮蔽シート。
【請求項5】
前記放射線遮蔽層が、更に、前記硫酸バリウムに対して、1分子当たり2個以上のアクリロイル基を有する化合物による重合体を0.5〜5質量%含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線遮蔽シート。
【請求項6】
前記放射線遮蔽層への物理的刺激により、前記硫酸バリウムが前記カプサイシン含有マイクロカプセル粒子に圧接して剪断することでカプセルを破壊し、それによってカプサイシン化合物を効果的に放出する請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線遮蔽シート。
【請求項7】
前記繊維性基布が、カプサイシン含有マイクロカプセル粒子を含有する接着層を有し、当該接着層が、前記カプサイシン含有マイクロカプセル粒子を前記接着層に対して3質量%以下で含み、前記繊維性基布に含浸、または含浸かつ被覆している請求項1〜のいずれか1項に記載の放射線遮蔽シート。
【請求項8】
前記シーミング帯が、熱可塑性樹脂被覆布帛で形成され、前記熱可塑性樹脂被覆布帛を構成する熱可塑性樹脂が、カプサイシン含有マイクロカプセル粒子を含み、その含有量が前記熱可塑性樹脂に対して3質量%以下である請求項に記載の放射線遮蔽シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テント倉庫、土中埋設シート、野積シート、コンテナバッグ等に好適な産業資材シートに関する。更に詳しく述べるならば、本発明の放射線遮蔽シートは放射線遮蔽性を有しながら、加工性、耐久性に富み使い勝手が良く、さらに鳥獣忌避性を有し、放射線汚染物を長期間貯留する際に、鳥獣類やねずみの噛り付きなどでシートが損傷することを抑止し、それによって放射線や放射線汚染物が周囲へ拡散漏洩する心配のない放射線遮蔽シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子炉や核融合施設などに事故が発生し、最悪の事態として放射線汚染が拡散すると、建造物、土壌、草木等を中心に大規模な除染作業が必要となる。特に建造物の屋根、雨樋、側溝等には放射性セシウムを含む落葉、苔、泥等が付着しているため、手作業、たわしやブラシによる削り取り、または水による洗浄での除染作業が必要となる。土壌では土面の表層近くに放射性物質が付着していることが多く、土壌の除染作業では、放射性物質を含む表層の土を、放射性物質を含まない土で被覆する、あるいは表土を削り取る作業が必要となり、大量の除染物質を生じる。これら以外の放射線汚染物として、汚染水、果樹作物、穀物、建造物瓦礫の焼却残渣なども大量に回収される。回収後の放射線汚染物は長期的に保管する必要性があり、例えば放射線遮蔽性のテント倉庫内での汚染物保管、放射線遮蔽性の野積シートで汚染物を覆い包んでの保管、土中に埋めた汚染物を更に放射線遮蔽シートで覆い包んで埋めての保管、汚染物を放射線遮蔽性コンテナバッグに詰めての保管などの保管形態が挙げられる。これらの汚染物は一度保管隔離されると、危険管理区域として長期間、人の立ち入りが無くなることが多く、その間に鳥獣類やねずみの噛り付きなどが繰り返されることでこれらの隔離シートに多数の穴開き被害を発生する可能性が高くなる。ともなると、穴開き部から放射線や放射線汚染物が漏れ出し、それが知らず知らずのうちに周囲に拡散したり、さらには地下水脈などに漏れ出すなどの事態も十分に想定される。
【0003】
これらの放射線汚染物による公衆への被曝を抑える放射線遮蔽材としては従来、放射線遮蔽能に優れた鉛を含有したものが使われている。鉛は環境対策による規制物質にも選定されており、その取り扱いは制限されて一般生活環境での使用は好ましくない。現在、鉛に替わる放射線遮蔽材料に関する検討が多くなされている。鉛に替わる材料としてタングステンも検討されているが、コストと加工面で課題が残り、使われる事は少ない。また、安価で環境に対する影響も鉛に比べて少ない硫酸バリウムが知られている。硫酸バリウムを用いた放射線遮蔽材は例えば特許文献1に記載されている。特許文献1によると、硫酸バリウムを熱可塑性樹脂に添加し、面積が大きなシート状に加工して取り扱う事を目的として、硫酸バリウムを75質量%以上含んだ樹脂のショアA硬さを95以下、密度を2.5g/cm以上、引張破断伸びを20%以上とすることを特徴としている。上記特許文献1では、シート強度が不充分で、テント倉庫、土中埋設シート、野積シート、コンテナバッグなどのようなハードユースの使用に耐えられない。また鳥獣類やねずみの噛り付きを防止する効果を持ち合わせていない。特許文献2には、合成樹脂フィルムに防鼠剤内包マイクロカプセルを含有させ、このフィルムを合成樹脂フラットヤーンクロスの両面に積層した防鼠性シートが開示されているが、このシートはフィルム製造時の防鼠剤の揮発が激しく、人体への刺激が深刻で製造や取り扱いも困難である。またこのシートは放射線遮蔽性能を有していない。そこで、充分な耐久性を持ち、容易に加工可能で、汚染物質の保管場所で生息する鳥獣類やねずみなどの噛り付きを防ぐ鳥獣忌避性能を有する放射線遮蔽材が望まれており鋭意検討の結果、本発明の完成に至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−212304号公報
【特許文献2】特開平10−044339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる技術的背景を鑑みて、高度な放射線遮蔽性を有しながら、加工性、耐久性に富み使い勝手が良く、鳥獣類やねずみの忌避性を有し、鳥獣類やねずみの噛り付きなどでシートが損傷することなく、それによって放射線や放射線汚染物が拡散漏洩する心配のない放射線遮蔽シートの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の放射線遮蔽シートは、繊維性基布と、前記基布の少なくとも1面上に形成された放射線遮蔽層とを有する可撓性シートであって、前記放射線遮蔽層が、(1)少なくとも50質量%以上の硫酸バリウムで形成されており、且つ(2)前記硫酸バリウムに対して0.05〜3質量%のカプサイシン含有マイクロカプセル粒子及び、(3)前記硫酸バリウムに対して、0.1〜3質量%のシランカップリング剤とを含み、(4)前記可撓性シートにおける硫酸バリウム含有量が500g/m以上である、ことを特徴とするものである。本発明の放射線遮蔽シートにおいて、前記カプサイシン含有マイクロカプセル粒子は、カプリリックアシドバニリルアミド、ノナノイルバニリルアミド、デシリックアシドバニリルアミド、ノルジヒドロカプサイシンI、ジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシンI、ノルジヒドロカプサイシンII、ホモジヒドリカプサイシンII、カプサイシン、ホモカプサイシンI、ホモカプサイシンIIから選ばれた1種以上のカプサイシン化合物が、尿素系樹脂またはメラミン樹脂を壁材として被覆内包された粒子であり、更に前記シランカップリング剤が、不飽和二重結合を持つ、ビニルシラン、アクリロキシシラン及びメタクリロキシシランから選ばれた1種以上であることが好ましい。本発明の放射線遮蔽シートは、前記放射線遮蔽層を被覆する1以上の保護層が設けられ、前記保護層が無機物質粒子を含有し、その含有量が前記保護層に対して20質量%以下であることが好ましい。本発明の放射線遮蔽シートにおいて、前記シランカップリング剤が、ビニルシラン、アクリロキシシラン及びメタクリロキシシランから選ばれた1種以上であることが好ましい。本発明の放射線遮蔽シートは、前記放射線遮蔽層が、更に、前記硫酸バリウムに対して、1分子当たり2個以上のアクリロイル基を有する化合物による重合体を0.5〜5質量%含有することが好ましい。本発明の放射線遮蔽シートは、前記放射線遮蔽層への物理的刺激により、前記硫酸バリウムが前記カプサイシン含有マイクロカプセル粒子に圧接して剪断することでカプセルを破壊し、それによってカプサイシン化合物を効果的に放出することが好ましい。本発明の放射線遮蔽シートは、前記繊維性基布が、カプサイシン含有マイクロカプセル粒子を含有する接着層を有し、当該接着層が、前記カプサイシン含有マイクロカプセル粒子を前記接着層に対して3質量%以下で含み、前記繊維性基布に含浸、または含浸かつ被覆していることが好ましい。本発明の放射線遮蔽シートは、前記可撓性シートが幅繋され、前記可撓性シートの端部同士による突合せ部を有し、さらに前記突合せ部を被覆し、かつ前記可撓性シート同士をブリッジ形成するシーミング帯が溶着積層されていることが好ましい。本発明の放射線遮蔽シートは、前記シーミング帯が、熱可塑性樹脂被覆布帛で形成され、前記熱可塑性樹脂被覆布帛を構成する熱可塑性樹脂が、カプサイシン含有マイクロカプセル粒子を含み、その含有量が前記熱可塑性樹脂に対して3質量%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、放射線遮蔽性を有しながら、加工性、耐久性に富み使い勝手が良く、鳥獣類やねずみの忌避性を有し、鳥獣類やねずみの噛り付きなどでシートが損傷することなく、それによって放射線や放射線汚染物が拡散漏洩する心配のない放射線遮蔽シートを得ることができるので、テント倉庫、土中埋設シート、野積シート、コンテナバッグなどとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】突合せ法による放射線遮蔽シートの縫製
図2】重ね合わせ法による放射線遮蔽シートの縫製
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の放射線遮蔽シートは、繊維性基布と樹脂層から構成される。本発明に用いられる繊維性基布としては、天然繊維、無機繊維、及び合成繊維などから選ばれた少なくとも1種からなる布帛を包含する。これらの基布中の繊維は、短繊維紡績糸、長繊維糸条、スプリットヤーン、テープヤーンなどのいずれの形状のものでも良い。また基布組織は織物、編み物、いずれであっても良く、使用目的に応じて、平織り、綾織、丸編、緯編、及び経編などの編織物を選ぶことができ、またその目付は50〜1000g/m程度とすることが好ましい。
【0010】
本発明の放射線遮蔽シートにおいて、放射線遮蔽層に用いられる熱可塑性樹脂としては格別の制限はなく、塩化ビニル樹脂(可塑剤、安定剤等を配合した軟質塩化ビニル樹脂)、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、アクリル系共重合体樹脂、及びウレタン系共重合体樹脂など単独で用いても良く、もしくは2種以上を併用しても良い。前記放射線遮蔽層は前記樹脂から選ばれた少なくとも1種の樹脂を含有し、放射線遮蔽層の基材への複合化方法は、例えば軟質ポリ塩化ビニル樹脂ペーストゾルを用いたコーティング加工等によって製造することができる。放射線遮蔽層には硫酸バリウム、カプサイシン含有マイクロカプセル粒子、シランカップリング剤が必須である。放射線遮蔽層には、難燃剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、充填剤、顔料、抗菌剤、防かび剤等の各種添加剤を含んでいても良い。
【0011】
本発明の放射線遮蔽シートにおいて、放射線遮蔽層には、バインダーの熱可塑性樹脂に対して50質量%以上の硫酸バリウムを含むことが必須であり、更に好ましくは80質量%以上の硫酸バリウムを含むことである。硫酸バリウムの含有量が50質量%未満の場合、放射線遮蔽性能が劣るものとなり、性能の低い遮蔽層を厚く塗工しても高い放射線遮蔽性を発現できず、実使用に耐える強度を持つ製品とはなり得ない。硫酸バリウムとしては格別の制限はなく、市販品を用いることができる。市販品の硫酸バリウムは固体粉末状であり、その粒子径に格別な制限はないが、バインダー樹脂との分散性及び放射線遮蔽層の強度の観点からは、一次粒子径は0.01〜15μmであることが好ましく、0.1〜3μmであることがより好ましい。一次粒子径が0.01μmを下回ると、2次凝集が起こりやすくその成形性を低下させる恐れがある。また、1次粒子径が15μmを超えると、放射線遮蔽層の機械的な強度が低下する。本発明の放射線遮蔽シートにおける硫酸バリウムの含有量は500g/m以上が必須である。原子量の大きな金属は放射線の遮蔽性能が高く、遮蔽性能を高めるためにはより高濃度に遮蔽材を含有させることが必要となり、硫酸バリウムの場合500g/m以上が好ましく、更に好ましくは800g/m以上である。硫酸バリウムの含有量が500g/m未満では、放射線の遮蔽効果が激減し、強度の強いガンマー線等の遮蔽効果が発現しなくなる。
【0012】
本発明の放射線遮蔽シートにおいて、放射線遮蔽層には、カプサイシン含有マイクロカプセル粒子が硫酸バリウムに対して0.05〜3質量%以上含むことが必須である。ねずみ、からすなどが放射線遮蔽層を突付いて傷付けたり、齧ったりするなどの物理的刺激を加えた際は、硫酸バリウムがカプサイシン含有マイクロカプセル粒子に圧接して剪断することでカプセルを破壊し、それによって辛味刺激物であるカプサイシン化合物を効果的に放出してねずみ、からすなどの鳥獣類に対する忌避効果を得ることができる。カプサイシン含有マイクロカプセル粒子の含有量が0.05質量%未満だと、得られるシートの忌避効果が不十分であり、また3質量%を越えるとブリードなどによりカプサイシン含有マイクロカプセル粒子がシート表面に滲み出てくることや加工上の問題が発生する。
【0013】
本発明の放射線遮蔽シートにおいて、放射線遮蔽層には、シランカップリング剤が硫酸バリウムに対して0.1〜3質量%含むことが必須である。シランカップリング剤の含有量が0.1質量%未満では、硫酸バリウムとバインダー樹脂との接着が弱く実使用に耐える強度が得られない。また3質量%を超えると放射線遮蔽層の伸びが抑制され取り回しの際の負担が多く使い勝手が悪く、コスト的にも不利となる。シランカップリング剤としては格別な制限は無く市販のシランカップリング剤を用いることができる。シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アクリロキシシラン及びメタクリロキシシラン等から選ばれた1種以上であることが放射線遮蔽層の強度アップの観点からより好ましい。
【0014】
本発明の放射線遮蔽シートにおいて、放射線遮蔽層には、1分子当たり2個以上のアクリロイル基を有する化合物による重合体が硫酸バリウムに対して0.5〜5質量%含んでいてもよい。これによって放射線遮蔽層の樹脂強度を向上させることができる。1分子当たり2個以上のアクリロイル基を有する化合物としては、トリプロピレングリコールジアリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及び高分子鎖に複数のアクリロイル基を修飾させたポリマータイプを用いることができる。
【0015】
本発明の放射線遮蔽シートにおいて、前記繊維性基布は、熱可塑性樹脂により含浸、または含浸かつ被覆された接着層を有することが望ましい。前記接着層に用いられる熱可塑性樹脂に格別な制限は無いが、繊維性基布と放射線遮蔽層の接着を強くする目的から放射線遮蔽層に用いられるバインダー樹脂との相性によって選ぶことができる。接着層に用いられる熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂(可塑剤、安定剤等を配合した軟質塩化ビニル樹脂)、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、アクリル系共重合体樹脂、及びウレタン系共重合体樹脂など単独で用いても良く、もしくは2種以上を併用しても良い。接着層にはカプサイシン含有マイクロカプセル粒子を含有することが好ましく、前記接着層に対して前記カプサイシン含有マイクロカプセル粒子を3質量%以下で含み、基布に含浸、または含浸かつ被覆されていることが好ましい。3質量%を越えるとブリードなどによりカプサイシン含有マイクロカプセル粒子が接着層表面に滲み出てくることや加工上の問題が発生する。また、接着を強くするためには接着層の樹脂強度が高いことが望ましいので、接着層に無機物質粒子を含有する場合には接着層に対して5質量%以下が好ましい。無機物質粒子が5質量%を超えると接着層の樹脂強度が低下して、繊維性基布と放射線遮蔽層間の接着力が弱くなり、実使用に耐えられないものとなる。前記接着層は繊維性基布に含浸または含浸かつ被覆していることが好ましく、接着層樹脂組成物を水に強制分散させたディスパージョン樹脂、接着層樹脂組成物を溶剤に溶かしたワニス樹脂、軟質塩化ビニル樹脂ペーストゾル等を、ディッピング加工及びコーティング加工で基布に含浸、または含浸かつ被覆する事ができる。含浸量は用いる繊維性基布に応じて目的とする接着性能が得られる量を適宜設定できる。特に放射線遮蔽層を片面のみに有する放射線遮蔽シートを土中埋設シート、野積シート、コンテナバッグ等に用いる場合、カプサイシン含有マイクロカプセル粒子を含有する接着層で含浸、または含浸かつ被覆された繊維性基布面が露出した側を、外側面として使用することができる。この用法だと放射線遮蔽層の摩耗劣化を長期的に防止することができる。
【0016】
本発明の放射線遮蔽シートにおいて、放射線遮蔽層は多量の硫酸バリウムを含んでおり、樹脂強度の低下は免れないため前記放射線遮蔽層を被覆する保護層として熱可塑性樹脂層を最外層に設けることが好ましい。また、基布を隔てて放射線遮蔽層と反対側に熱可塑性樹脂層を設けて最外層としても好い。大面積で使用する場合にはシートを幅繋ぎすることがある。その場合にも上記熱可塑性樹脂層を最外層に設けることで、熱融着等の縫製方法で容易に大面積のシートを作製することができる。保護層を構成する熱可塑性樹脂層に格別な制限は無いが、基布、接着層、及び放射線遮蔽層との相性によって選ぶことができ、塩化ビニル樹脂(可塑剤、安定剤等を配合した軟質塩化ビニル樹脂)、塩化ビニル系共重合体樹脂、オレフィン系共重合体樹脂、アクリル系共重合体樹脂、及びウレタン系共重合体樹脂など単独で用いても良く、もしくは2種以上を併用しても良い。保護層としての耐久性や縫製時の縫製部強度保持を目的として、前記熱可塑性樹脂層中の無機物資粒子の含有量は熱可塑性樹脂層に対して20質量%以下が好ましい。無機物質粒子の含有量が20質量%を超えると樹脂強度の低下が大きく、保護層としての耐久性や縫製時の縫製部強度保持が乏しくなる。また必要に応じて保護層にはカプサイシン含有マイクロカプセル粒子を0.1〜3質量%程度含んでいてもよい。
【0017】
本発明の放射線遮蔽シートは大面積で使用する場合の使い勝手の良さも求められており、熱融着による縫製性も重要な要求性能となる。本発明の放射線遮蔽シートにおいて、放射線遮蔽層は硫酸バリウムを多量に含むため、熱融着時には前記放射線遮蔽層に負荷がかかることを避けるのが好ましい。よって縫製時には、基布を隔てて放射線遮蔽層と反対側に設けられた最外層の熱可塑性樹脂層を使った突合せの縫製方法が好ましい。突合せの縫製時には、熱可塑性樹脂被覆布帛で形成され、前記熱可塑性樹脂被覆布帛を構成する熱可塑性樹脂がカプサイシン含有マイクロカプセル粒子を含み、前記熱可塑性樹脂に対して3質量%以下のカプサイシン含有マイクロカプセル粒子を含有するシーミング帯であることが好ましい。更に前記熱可塑性樹脂に対して10質量%以下の無機物質粒子を含有することもできる。前記無機物質粒子が10質量%を超えると、縫製条件が狭くなり、且つ縫製部強度の低下が大きく、実用途での耐久性に乏しいものとなる。
【実施例】
【0018】
本発明を下記の実施例及び比較例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例の範囲に限定されるものでない。下記に示す試験方法に基づいて本発明の放射線遮蔽シートの性能評価を行った。
[放射線遮蔽性能評価]
JIS Z 4501「X線防護用品の鉛当量試験方法」に準拠して測定した。なお、鉛当量は鉛シートの1mm当たりに換算した数値で評価した。
[マウスによる齧り試験(目視による損傷評価)]
供試動物(マウス、Mus musculus albino(ICR系)、10週齢)を個別飼育ケージに入れ、3cm幅×30cmの試験片と共に8日間放置後、試験片の齧られた跡を観察し、1回目の評価を行った。評価方法は表1に記載の評価基準による。通常飼育によるインターバル3日を設け、同一供試動物による2回目の試験(8日間放置)を行い、再度通常飼育によるインターバル3日を設け、同一供試動物による3回目の試験(8日間放置)を行った。マウスによる齧り試験の傾向は、ハツカネズミ、クマネズミ、ドブネズミなどにも有効である。
【表1】
[シートの引張強さ測定]
齧り試験で使用した試験片の引張強さをJIS L 1096に準じて測定し、齧り試験に供する前の引張強さに対する保持率を算出した。これを齧り試験で齧られた跡のダメージ評価とし、強度保持率90%以上を「咬害抑止効果良好:○」、75〜90%未満を「咬害抑止効果不満足:△」、75%未満を「咬害抑止効果が認められない:×」と判定した。
【0019】
[参考例1]
繊維性基布として、
ポリエステルスパン糸高密度平織布:
295.3dtex(20番手)/2×295.3dtex/2(20番手)
56×50(本/インチ)
を使用した。基布質量は250g/mであった。また、軟質ポリ塩化ビニル樹脂を用いて、下記組成の放射線遮蔽層形成ペーストゾルを調整した。
(放射線遮蔽層ペーストゾル配合)
ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(ジオクチルフタレート、可塑剤) 65質量部
エポキシ化大豆油 2質量部
Ba−Zn系安定剤 1質量部
硫酸バリウム 1200質量部
カプサイシン含有マイクロカプセル粒子 1.2質量部
ビニルシラン(シランカップリング剤) 6質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 12質量部
(アクリロイル基を有する化合物による重合体)
カプサイシン含有マイクロカプセル粒子は日本化薬(株)の商品名:R−731(粒子径15〜25μm、有効成分NVA(N−ノナノイルバニルアミド)、有効成分量32質量%)を用いた。配合中の硫酸バリウムは87質量%であり、硫酸バリウムに対してカプサイシン含有マイクロカプセル粒子は0.09質量%並びにシランカップリング剤は0.5質量%である。放射線遮蔽層ペーストゾル配合を上記基布の片面に間隙0.6mmのクリアランスコートを施し、180℃で2分間熱処理することで放射線遮蔽層を形成した。塗工時にトルエンを用いて適宜粘度を調整した。形成された放射線遮蔽シートの総質量は2400g/mであった。そのシート中の放射線遮蔽層の質量は2150g/mであり、硫酸バリウム含有量は1870g/m、78質量%であった。評価結果を表2に示す。
【0020】
[参考例2]
実施例1と同様に得られた放射線遮蔽シートの放射線遮蔽層の無い面に、下記組成の0.15mm厚みの熱可塑性樹脂フィルムをラミネーターにて熱貼着させた。
(最外層熱可塑性樹脂層配合)
ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(ジオクチルフタレート、可塑剤) 50質量部
エポキシ化大豆油 2質量部
Ba−Zn系安定剤 1質量部
紫外線吸収剤 0.3質量部
得られた放射線遮蔽シートの総質量は2600g/mであった。そのシート中の放射線遮蔽層の質量は2150g/mであり、硫酸バリウム含有量は1870g/m、72質量%であった。評価結果を表2に示す。
【0021】
[参考例3]
実施例2と同様に放射線遮蔽シートを作製した。更に放射線遮蔽層上にも最外層熱可塑性樹脂層配合からなる最外層熱可塑性樹脂フィルムを0.12mm厚みで積層した。形成された放射線遮蔽シートの総質量は3000g/mであった。そのシート中の放射線遮蔽層の質量は2150g/mであり、硫酸バリウム含有量は1870g/m、63質量%であった。評価結果を表2に示す。
【0022】
[シーミング帯の作製]
ポリエステルフィラメント糸高密度平織布:
1111dtex×1111dtex
20×22(本/インチ)
に下記組成の0.15mm厚の熱可塑性樹脂フィルムをラミネーターにて両面それぞれ熱貼着させた。
(シーミング帯用フィルム配合)
ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(ジオクチルフタレート、可塑剤) 55質量部
硫酸バリウム 10質量部
エポキシ化大豆油 2質量部
Ba−Zn系安定剤 1質量部
紫外線吸収剤 0.3質量部
【0023】
[実施例4]
参考例3で作製した放射線遮蔽シートを縫製時に、最外層熱可塑性樹脂面に40mm幅シーミング帯を用いて20mmラップにて突合せ法(図1参照)により高周波融着機にて熱融着した。高周波融着条件は以下条件で行った。
[高周波溶着条件]
溶着電流:0.7A
溶着時間:6秒
冷却時間:4秒
【0024】
[参考例5]
参考例3で作製した放射線遮蔽シートを縫製時に、ラップ幅40mmで重ね合わせ法(図1参照)により高周波融着機にて熱融着した。高周波融着条件は以下条件で行った。
[高周波溶着条件]
溶着電流:0.7A
溶着時間:6秒
冷却時間:4秒
【0025】
[比較例1]
参考例3と同様に放射線遮蔽シートを作製した。但し、放射線遮蔽層ペーストゾル配合中のカプサイシン含有マイクロカプセルを除いた下記配合とした。
(放射線遮蔽層ペーストゾル配合)
ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
DOP(ジオクチルフタレート、可塑剤) 65質量部
エポキシ化大豆油 2質量部
Ba−Zn系安定剤 1質量部
硫酸バリウム 1200質量部
ビニルシラン(シランカップリング剤) 6質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 12質量部
(アクリロイル基を有する化合物による重合体)
配合中の硫酸バリウムは87質量%であり、硫酸バリウムに対してシランカップリング剤は0.8質量%になる。形成された放射線遮蔽シートの総質量は3000g/mであった。そのシート中の放射線遮蔽層の質量は2150g/mであり、硫酸バリウム含有量は1870g/m、63質量%であった。評価結果を表2に示す。
【表2】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上説明した本実施形態の放射線遮蔽シートであれば、鉛、タングステン等の高比重の放射線遮蔽材と比べて、低比重で取り扱いの容易な硫酸バリウムを多量添加した配合で放射線遮蔽性能を付与することが可能となる。実施例3に示すように、被膜強度の弱い放射線遮蔽層の上面に熱可塑性樹脂フィルムを積層、保護することにより最外層に耐屈曲性、耐摩耗性を付与することが可能となる。また、高強度ターポリンをシーミングテープに用いて最外層熱可塑性樹脂フィルムと突合せウェルダー縫製することで、高い縫製部強度を保持したまま大面積のシート作製が可能となる。放射線汚染地域では除染作業により生じた瓦礫、削り取った表土以外にも汚泥、汚染水、草木樹木、果樹作物、穀物などの放射線汚染物が大量に回収されている。これらを長期的に保管する際は公衆への被爆を抑制すると共に、鳥獣類、ねずみなどの噛り付きでシートが損傷し、放射線や放射線汚染物の周囲への拡散を抑止することが必要とされる。その際に、放射線遮蔽層に含有する辛味刺激物のカプサイシン化合物の忌避効果を効果的に利用してねずみ、からすなどの鳥獣類によるシート損傷を抑止することが可能となる。また、大面積に縫製された放射線遮蔽シートであれば大容量の汚染物質を被覆することが出来、汚染物質から発せられる放射線をシート内で極力遮蔽することが可能となる。
【符号の説明】
【0027】
1:放射線遮蔽シート
2:シーミング帯
図1
図2