(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
竿本体に外装される筒状のリールシート本体と、リール脚の端部を保持するためのフード部が形成され、リールシート本体に竿軸方向にスライド移動可能に外装された筒状の可動フード体とを備えた釣竿用リールシートであって、
可動フード体のリール脚挿入側の開口縁部のうちフード部とは反対側の部分がリール装着状態において対峙するリールシート本体の外周面の箇所に凹状逃げ部が形成され、
該凹状逃げ部は、可動フード体のリール脚挿入側の開口縁部のうちフード部の周方向中央部とは180度対向した背面側頂部と対峙する箇所を中心として、可動フード体のリール脚挿入側の開口縁部に沿って周方向両側に延びていると共に、前記背面側頂部と対峙する箇所から周方向に離れる程に徐々に浅くなっていることを特徴とする釣竿用リールシート。
【背景技術】
【0002】
釣竿にリールを固定するための釣竿用リールシートとしては、下記特許文献1のように、竿本体に外装される筒状のリールシート本体を備えたものがある。該リールシート本体には、リール脚の一方の端部が差し込まれる固定フード部が一体的に形成され、リール脚の他方の端部を保持するための筒状の可動フード体が外装される。該可動フード体はリールシート本体に対して竿軸方向にスライド移動可能であり、そのリール脚挿入側の開口縁部である一端開口縁部には、リール脚の他方の端部を保持すべくフード部が形成され、該フード部とリールシート本体の外周面との間にリール脚の他方の端部が差し込まれて保持される。即ち、リールシート本体の固定フード部に可動フード体を接近させることでリール脚が固定フード部と可動フード体で狭持され、これによりリールが釣竿に固定される。
【0003】
このように可動フード体のフード部がリール脚の端部を保持すると、フード部にはリール脚の端部から径方向外側への反力を受けることになる。可動フード体はリールシート本体に対してスライド移動できるように構成されているために、構造上、リールシート本体と可動フード体との間には僅かなクリアランスが存在している。従って、可動フード体のフード部がリール脚の端部を押さえて保持すると逆にフード部には径方向外側への反力が作用することになる。この反力によって可動フード体は若干傾いた状態となり、リール脚挿入側の開口縁部である一端開口縁部においては、フード部側がリールシート本体の外周面から径方向外側に離れ、フード部とは反対側がリールシート本体の外周面に接近する状態になる。その結果、可動フード体の一端開口縁部のうちフード部とは反対側の部分がリールシート本体の外周面に擦れて、リールシート本体の外周面に傷が付くおそれがあった。この傷は、可動フード体を固定フード部側に接近させてリール脚を固定したときに可動フード体の一端開口縁部が対峙する位置に発生することになる。そのため、リール装着状態では目立ちにくいものの、リールを外した状態では可動フード体を固定フード部から遠ざけるので目立ちやすくなる。また、この傷は、リールシート本体の外周面に塗膜や蒸着膜等からなる装飾層を形成している場合に目立ちやすくなる。
【0004】
このような可動フード体によるリールシート本体の外周面の傷付きを防止するために、本出願人は既に下記特許文献1において、可動フード体のリール脚挿入側の開口縁部のうち、フード部とは反対側の部分がリール装着状態において対峙するリールシート本体の外周面の箇所に凹入部を形成して可動フード体との干渉を回避するという構成を提案している。このようにリールシート本体の外周面に凹入部を形成することにより、可動フード体の一端開口縁部によるリールシート本体の外周面の傷付きを一定程度抑制することができた。しかしながら、凹入部が深さ一定のものであるため、凹入部が目立ちやすく外観デザイン上の問題があった。深さを全体的に浅くすると凹入部が比較的目立ちにくくなるものの凹入部の周方向中央部において傷が入りやすくなり、逆に深さを全体的に深くすると凹入部が目立ちやすくなり、良好な外観デザインと傷付き防止の両立が求められた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、可動フード体によるリールシート本体の外周面の傷付きを防止すると共に外観デザインを良好なものにすることができる釣竿用リールシート及び釣竿を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係る釣竿用リールシートは、竿本体に外装される筒状のリールシート本体と、リール脚の端部を保持するためのフード部が形成され、リールシート本体に竿軸方向にスライド移動可能に外装された筒状の可動フード体とを備えた釣竿用リールシートであって、可動フード体のリール脚挿入側の開口縁部のうちフード部とは反対側の部分がリール装着状態において対峙するリールシート本体の外周面の箇所に凹状逃げ部が形成され、該凹状逃げ部は、可動フード体のリール脚挿入側の開口縁部のうちフード部の周方向中央部とは180度対向した背面側頂部と対峙する箇所を中心として、可動フード体のリール脚挿入側の開口縁部に沿って周方向両側に延びていると共に、前記背面側頂部と対峙する箇所から周方向に離れる程に徐々に浅くなっていることを特徴とする。
【0008】
該構成の釣竿用リールシートにあっては、可動フード体のリール脚挿入側の開口縁部のうちフード部とは反対側の部分がリール装着状態において対峙するリールシート本体の外周面の箇所に凹状逃げ部が形成されているので、可動フード体のリール脚挿入側の開口縁部のうちフード部とは反対側の部分とリールシート本体の外周面との干渉が回避される。また、凹状逃げ部は、可動フード体の背面側頂部と対峙する箇所を中心として、可動フード体のリール脚挿入側の開口縁部に沿って周方向両側に延びているので、最も傷付きやすい箇所である可動フード体の背面側頂部と対峙する箇所のみならず、その箇所を中心として周方向両側に所定範囲に亘って傷付きを防止することができる。特に、凹状逃げ部が可動フード体のリール脚挿入側の開口縁部に沿って延びているので、可動フード体のリール脚挿入側の開口縁部とリールシート本体の外周面との干渉を長い区間に亘って確実に防止することができる。更に、その背面側頂部と対峙する箇所から周方向に離れる程に凹状逃げ部の深さが徐々に浅くなっているので、周方向の所定範囲に亘る傷付きを防止しつつも凹状逃げ部の深さを必要最小限に留めることができてリールシート本体の良好なデザインも確保することができる。
【0009】
特に、凹状逃げ部はその周方向両端部においてそれぞれ断面視緩やかな曲面で周辺部とつながっていることが好ましい。上述したように凹状逃げ部は周方向両端部に向かって徐々に浅くなっているのであるが、その周方向両端部において緩やかな曲面で周辺部とつながっていることにより、周方向両端部がシャープエッジになっている場合に比して、凹状逃げ部の周方向両端部における境界が外観上目立ちにくくなり、良好なデザインが得られる。
【0010】
更に、凹状逃げ部はその周縁部全周において断面視緩やかな曲面で周辺部とつながっていることが好ましい。凹状逃げ部の周方向両端部における境界のみならず周縁部全周における境界も外観上目立ちにくくなるので、あたかもリールシート本体の外周面に凹状逃げ部が存在していないかのようにも見えることになり、より一層良好なデザインが得られる。
【0011】
また、凹状逃げ部は、前記背面側頂部と対峙する箇所を中心として周方向両側にそれぞれ90度以上延びていることが好ましい。即ち、フード部とは反対側の180度の範囲の部分とリールシート本体の外周面との干渉が確実に回避されることになる。
【0012】
また、本発明に係る釣竿は上記釣竿用リールシートを備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、リールシート本体の外周面の所定箇所に可動フード体の開口縁部に沿って周方向に延びる凹状逃げ部が形成されているので、リール装着時における可動フード体の開口縁部とリールシート本体の外周面との干渉が回避されてリールシート本体の外周面の傷付きが確実に防止される。また、凹状逃げ部の深さが周方向両端部に向けて徐々に浅くなっているので、可動フード体の背面側頂部が対峙する箇所における傷付きが確実に防止されると共に、リールシート本体のデザインも良好なものにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る釣竿用リールシートについて
図1乃至
図9を参酌しつつ説明する。釣竿用リールシート(以下、単に「リールシート10」という。)は、釣竿にリールを固定するためのものであって、図示しない釣竿の竿本体(ブランク)に装着されて使用される。該リールシート10は、いわゆるパイプシートと称される全体として筒状のものであって竿本体に外装されて所定位置に固定される。このリールシート10は主としてスピニングリールを取り付けるためのものであり、使用状態ではリールが釣竿の下側に位置する。
図1では、リール脚が載置される脚載置面28を使用状態に即して下向きとして図示している。尚、分解斜視図である
図5については
図1とは上下を逆にして示している。尚、周方向のうち脚載置面28が存在している側を正面側とし、それと反対側を背面側とし、竿軸方向を矢印15で示している。
【0016】
リールシート10は、竿本体に外装される筒状のリールシート本体29と、該リールシート本体29に外装されて竿軸方向に移動可能な可動フードユニット13とを備えている。以下、順に説明する。
【0017】
リールシート本体29は、合成樹脂製の成形品である。リールシート本体29は全体として筒状であってその内周面を竿本体が挿通する。リールシート本体29にはリール脚の両端部のうち一端部を保持するための固定フード部12が一体的に形成されている。該固定フード部12は、正面側に厚肉且つドーム状に膨出して形成されており、脚載置面28の竿軸方向一端部に位置していて竿軸方向他端側に開口し、その開口部からリール脚の一端部が竿軸方向一端側に向けて挿入される。
【0018】
また、
図4のようにリールシート本体29の竿軸方向他端側所定領域には雄ネジ部34が形成されている。該雄ネジ部34を部分的に切り欠くようにして竿軸方向に直線状に延びるスライド溝25が形成されている。該スライド溝25はリールシート本体29の竿軸方向他端縁まで達している。また、スライド溝25は周方向に90度毎に合計四箇所形成されているが、この数や配置は任意である。
【0019】
また、リールシート本体29の背面側には、脚載置面28と対向した位置に、外周面が径方向外側に緩やかな山状に盛り上がった厚肉部30が形成されていてホールド性を向上させている。そして、リールシート本体29の背面側は、その厚肉部30から竿軸方向他端側に向けて徐々に緩やかな曲線を描きつつ薄肉即ち小径となっていき、僅かな外周面のストレート部60を介して凹状逃げ部61が形成されているが、該凹状逃げ部61については後述する。尚、
図1においてクロスハッチングを施している領域が、外部に表出している凹状逃げ部61であり、
図4にも同様に凹状逃げ部61の領域にはクロスハッチングを施している。
【0020】
かかるリールシート本体29の竿軸方向他端側に可動フードユニット13が外装される。該可動フードユニット13は、
図5のように筒状フード16と連結体17とからなる可動フード体と、該可動フード体を竿軸方向に移動させるための操作ナット14とを備えている。
【0021】
操作ナット14は、その内周面48に雌ネジ部49を有していて、リールシート本体29の雄ネジ部34に螺合している。可動フード体は操作ナット14の竿軸方向一端側に位置していて操作ナット14に相対回転可能に係止されていると共に、リールシート本体29のスライド溝25に竿軸方向にスライド可能に係合している。従って、操作ナット14を回転させると可動フード体は回転することなく操作ナット14と共に竿軸方向に移動する。操作ナット14を一方に回転させて可動フード体を固定フード部12に接近させると、リール脚の両端部は固定フード部12と可動フード体によって竿軸方向に狭持されると共に脚載置面28に押し付けられて固定される。逆に、操作ナット14を他方に回転させて可動フード体を固定フード部12から離すと、リール脚の固定状態が解除されてリールを釣竿から取り外すことができる。
【0022】
詳細には、操作ナット14の竿軸方向の一端部内周面には図示しない周溝が形成されており、該周溝に可動フード体の竿軸方向の他端部が内側から係止している。尚、操作ナット14の外周面51には回転操作の操作性を向上すべく縦溝52が形成されている。該縦溝52は竿軸方向の他端側の端面53から竿軸方向に延びており、複数本、本実施形態では周方向に等間隔で合計七本形成されているがその数は任意であって、またこれを省略してもよい。
【0023】
可動フード体は二つの部材から構成されている。具体的には、可動フード体は、
図5のように操作ナット14から遠い側に位置する筒状フード16と、操作ナット14に近い側に位置する連結体17とから構成されている。
【0024】
筒状フード16は、
図8及び
図9にも示しているように、リール脚の他端部を保持すべく周方向の一部が径方向外側に膨出した膨出部56を備えている。膨出部56は筒状フード16の竿軸方向一端側に形成されていて固定フード部12と対向している。即ち、筒状フード16の膨出部56も固定フード部12と同様に正面側に形成されている。膨出部56の径方向外側への膨出形状により、リールシート本体29の脚載置面28との間にリール脚の他端部が挿入可能な脚挿入空間が形成される。
【0025】
図8のように、筒状フード16のうち背面側の少なくとも半周分(180度分)は、横断面視あるいは竿軸方向矢視において、竿本体の中心線C(リールシート本体29の内周面の中心線)を中心とした円弧である。その一方、筒状フード16の正面側は膨出部56を形成すべく背面側よりも径方向外側に膨出している。尚、
図8において符号91は、筒状フード16において背面側の半周分である180度の領域を示しており、符号90は、同じく背面側の200度の領域を示している。即ち、正面側から背面側へと上下方向に延びる中心線Tを中心として周方向両側に100度ずつ合計200度の領域を符号90で示している。また、
図8及び
図9において符号58は、筒状フード16のリール脚挿入側の開口縁部である一端部54において、膨出部56の周方向中央部56aとは180度対向した背面側頂部である。
【0026】
また、
図9に示しているように、筒状フード16の背面側は竿軸方向(軸線方向)に沿ってストレート形状即ち竿本体の中心線Cからの距離(半径)が一定である。一方、筒状フード16の正面側の膨出部56においては竿軸方向一端側から他端側にかけて中心線Cからの距離が徐々に小さくなっている。しかも、膨出部56は竿軸方向一端側から他端側にかけて径方向外側凸に湾曲しつつ縮径していく。尚、筒状フード16の竿軸方向の一端部54は、膨出部56のある正面側が膨出部56とは反対側である背面側に対して竿軸方向他端側に位置するように、竿軸方向に対して斜めに傾斜している。即ち、筒状フード16の竿軸方向の一端部54は、正面側よりも背面側の方が固定フード部12に近づくように竿軸方向前方に傾斜して延びた形状となっており、筒状フード16の一端部54において背面側頂部58が最も竿軸方向前方に位置している。一方、筒状フード16の竿軸方向の他端部55は、竿軸方向に対して直交した垂直面となっている。従って、筒状フード16の背面側における竿軸方向の長さL2は、正面側における竿軸方向の長さL1よりも長い。尚、筒状フード16の背面側であって竿軸方向の他端部55の近傍位置には、貫通した係止孔57が形成されている。
【0027】
かかる筒状フード16は金属製であって例えばステンレス製やアルミニウム製であり、その厚さは例えば0.3mm〜1.5mmであり、特に0.4mm〜1mmが好ましく、何れにしても薄肉である。ステンレス製のものは薄肉化に適しており、アルミニウム製のものは軽量化に適している。リールシート10の背面側におけるリールシート本体29の外周面と筒状フード16の外周面との間の段差を少なくして握り心地を良好なものとするためには筒状フード16を極力薄肉とすることが好ましく、その点ではステンレス製とすることが好ましい。ステンレス製では厚さ0.4mm〜0.6mmとすることが強度確保の面からも特に好ましい。
【0028】
連結体17は、筒状フード16と操作ナット14とを連結すると共に、操作ナット14に相対回転可能に係止され且つリールシート本体29と径方向に凹凸係合して竿軸方向に移動可能に構成される。連結体17は、合成樹脂からなる成形品であって、
図6のように、ベースリング部18と、該ベースリング部18の一端部37から竿軸方向に突出するパッド部19とを有している。
【0029】
図7にも示しているようにベースリング部18は全体として環状であって、その内周面36には竿軸方向に延びるキー部20,21,22,23が径方向内側に向けて突設されている。該キー部20,21,22,23はリールシート本体29のスライド溝25に係合し、スライド溝25に対して竿軸方向に相対移動可能である。該キー部20,21,22,23の竿軸方向の他端部はベースリング部18の他端部40から竿軸方向に所定長さ突出しており、その先端部外面には径方向外側に向けて係止凸部39が突設されている。また、キー部20,21,22,23はリールシート本体29のスライド溝25に対応して90度間隔で合計四箇所形成されているが、その全ての竿軸方向の他端部に係止凸部39が形成されている。キー部20,21,22,23がベースリング部18の他端部40を支点として径方向内側に撓むことで操作ナット14の内側に入り込むことができ、これらの係止凸部39が操作ナット14の周溝に径方向内側から係合し、これにより連結体17が操作ナット14に相対回転可能に係止される。即ち、キー部20,21,22,23は、リールシート本体29のスライド溝25に係入する真直部38と、操作ナット14の周溝に係入する係止凸部39とを備えている。尚、真直部38の内面41は周面とされておりそれが好ましい形状であるが、平坦面であってもよく、スライド溝25に係入して相対移動可能であればよい。また、ベースリング部18の外径は操作ナット14の外径と略等しく、従って、操作ナット14の外周面51からベースリング部18の外周面へと緩やかに連続している。
【0030】
また、四つのキー部20,21,22,23のうち左右に位置する二つのキー部21,23はベースリング部18の一端部37から竿軸方向に突出していない一方、背面側に位置するキー部22と正面側に位置するキー部20はベースリング部18の一端部37から竿軸方向に突出している。背面側に位置するキー部22の竿軸方向の一端部外面には、凹部42の前側に、径方向外側に突出した係止凸部43が形成されている。該係止凸部43は筒状フード16の係止孔57に内側から係合し、これにより筒状フード16と連結体17とが一体となって移動できると共に連結体17を介して筒状フード16と操作ナット14とが連結される。
【0031】
一方、正面側に位置するキー部20もベースリング部18の一端部37から竿軸方向に突出しているが、その突出部分は上述したパッド部19と一体化されている。即ち、パッド部19は正面側に位置しており、
図6のように竿軸方向の一端側に向けて径方向外側に緩やかに傾斜しつつ延びている。該パッド部19は、筒状フード16の膨出部56に対応した形状となっていて、筒状フード16の膨出部56の内側に挿入されて筒状フード16を竿軸方向に貫通し、その先端部が筒状フード16の一端部54から僅かに露出した状態となる。従って、可動フード体の一端開口縁部(リール脚挿入側の開口縁部)の全周のうち、その大部分が筒状フード16の竿軸方向の一端部54により構成され、その残部が連結体17のパット部19の先端部により構成される。
【0032】
パッド部19の外面には筒状フード16の膨出部56が略面一となるように係入する凹部47が形成されている。符号45,46はそれぞれ凹部47の先端側と基端側の段差部であり、該凹部47に筒状フード16の膨出部56が係合すると共に筒状フード16の係止孔57に背面側の係止凸部43が係合することにより、連結体17に筒状フード16が確実に取り付けられる。また、先端側の段差部45によってパッド部19の先端部外面にはフランジ44が形成されており、該フランジ44が筒状フード16から露出することになる。筒状フード16の一端部54のうち膨出部56に対応した部分をフランジ44がカバーする。パッド部19の内面35にリール脚の他端部外面が当接するので、その内面形状はリール脚の他端部外面に対応して横断面視円弧状に形成されている。このように本実施形態においてリール脚の他端部を保持するための可動フード体のフード部は、筒状フード16の膨出部56とその内側に位置する連結体17のパッド部19とから構成されている。尚、筒状フード16と連結体17を合体させた状態では、
図1のように連結体17のベースリング部18の外周面から筒状フード16の外周面にかけて段差がほとんどない連続した状態となる。
【0033】
次に、リールシート本体29の外周面と筒状フード16との干渉回避構造について説明する。上述したように、リールシート本体29の外周面には凹状逃げ部61が形成されている。該凹状逃げ部61の詳細を
図2乃至
図4に示している。
図2は
図1の要部拡大断面図であって、リール未装着状態において筒状フード16が最も竿軸方向一端側即ち固定フード部12に接近したときに、筒状フード16の一端部54の背面側とリールシート本体29の外周面との関係を示した拡大断面図であり、
図3は
図2と同じ箇所のリール装着状態における拡大断面図である。
図2及び
図3に示すように凹状逃げ部61は筒状フード16の一端部54の背面側の部分が対峙するリールシート本体29の外周面の箇所に形成されている。
図2及び
図3において凹状逃げ部61を形成しない場合におけるリールシート本体29の外周面のストレート形状を二点鎖線で示しており、凹状逃げ部61の形成領域を符号Aで示している。
【0034】
該凹状逃げ部61は、
図2のように筒状フード16が最も固定フード部12に接近した状態においてその筒状フード16の一端部54を竿軸方向に跨ぐようにして形成されている。従って、凹状逃げ部61は、最も固定フード部12に接近した状態の筒状フード16の一端部54よりも竿軸方向一端側に所定量はみ出すようにして形成されている。
図1においてもクロスハッチングを施した凹状逃げ部61が、筒状フード16から竿軸方向一端側に所定量はみ出している。また、リール装着状態においては筒状フード16は
図2の状態から
図3のように竿軸方向他端側に所定量移動(後退)した状態となるが、その状態においても筒状フード16の一端部54は凹状逃げ部61の形成領域Aの範囲内に位置している。リール脚の一端から他端までの長さはリールの大きさによって異なるが何れのリールを装着した状態でも凹状逃げ部61の形成領域Aの範囲内に筒状フード16の一端部54が位置するように、凹状逃げ部61の竿軸方向の長さが設定される。
【0035】
リール未装着状態では
図2のように筒状フード16の内周面とリールシート本体29の外周面との間には所定のクリアランスが存在しており、筒状フード16とリールシート本体29は互いに略平行な状態を維持している。一方、リール装着状態になると
図3に示すように筒状フード16は若干傾いた状態となり、一端部54においては、その正面側がリールシート本体29の外周面から径方向外側に離れ、背面側がリールシート本体29の外周面に接近する状態になる。しかしながら、リールシート本体29の外周面には凹状逃げ部61が形成されているので筒状フード16の一端部54の背面側、特には背面側頂部58とリールシート本体29の外周面との干渉が回避される。
【0036】
このような凹状逃げ部61の竿軸方向の長さは上述したとおりであるが、一方、その周方向の長さについては以下のとおりである。即ち、
図4に示しているように、凹状逃げ部61は、筒状フード16の背面側頂部58と対峙する箇所を中心として周方向両側にそれぞれ90度以上、具体的にはそれぞれ100度のところまで形成されている。即ち、凹状逃げ部61は、筒状フード16の背面側頂部58と対峙する箇所を中心として全体として200度の角度範囲で形成されており、凹状逃げ部61は、
図8において符号90で示した筒状フード16の角度領域に対応して形成されている。
【0037】
また、凹状逃げ部61は筒状フード16の背面側頂部58と対峙する箇所を中心として周方向両側対称に筒状フード16の一端部54に沿って延びている。上述したように筒状フード16の一端部54は背面側頂部58が最も前方即ち竿軸方向一端側に延びて位置していてそこから正面側に向けて後方即ち竿軸方向他端側に傾斜した形状であるため、凹状逃げ部61の竿軸方向一端部61aも筒状フード16の一端部54の傾斜に合わせて傾斜している。尚、凹状逃げ部61の竿軸方向他端部61bは竿軸方向に対して直交している。
【0038】
凹状逃げ部61の深さは、
図2及び
図3のように竿軸方向に沿って一定ではなく竿軸方向中央部付近において最も深くなっていてそこから竿軸方向一端側と他端側に向けて徐々に浅くなっていき、凹状逃げ部61の竿軸方向両端部においてはそれぞれ断面視緩やかな曲面となっており、その緩やかな曲面を介してその外側の周辺部と段差のない状態で滑らかにつながっている。また、凹状逃げ部61の深さは周方向にも一定ではなく、筒状フード16の背面側頂部58と対峙する箇所(
図2及び
図3で示す箇所)が最も深く、そこから周方向両側に離れる程に徐々に浅くなっている。そして、凹状逃げ部61は、その周方向両端部61cにおいてもそれぞれ断面視緩やかな曲面で周辺部とつながっている。即ち、凹状逃げ部61はその周縁部全周において断面視緩やかな曲面で周辺部とつながっている。従って、
図4において凹状逃げ部61とその周辺部との間の境界を説明の都合上実線にて示しているが、実際には、図示のような実線は外観上現れない。凹状逃げ部61の深さは、最も深いところで1mm以下が好ましく特に0.5mm程度がより好ましく、周縁部近傍においては例えば0.05mm程度が好ましい。
【0039】
以上のように構成されたリールシートにあっては、リールシート本体29の外周面の背面側に凹状逃げ部61が形成されているので、筒状フード16の一端部54の背面側、特には背面側頂部58とリールシート本体29の外周面との干渉が回避され、リールシート本体29の外周面の傷付きを防止することができる。本実施形態のように筒状フード16が金属製で薄肉である場合には特にその一端部54の内周面側のエッジがシャープになりやすくリールシート本体29の外周面に傷が付きやすいのであるが、リールシート本体29の外周面に凹状逃げ部61を形成することにより干渉を回避できて傷付きを防止することができる。また、凹状逃げ部61が筒状フード16の一端部54の傾斜した形状に沿うようにして周方向に延びているので、周方向の長い区間において筒状フード16の一端部54とリールシート本体29の外周面との干渉が回避される。特に、背面側の180度の領域を全てカバーするように凹状逃げ部61が合計200度の角度領域に形成されているので、背面側で発生しやすい干渉を確実に回避することができる。
【0040】
更に、筒状フード16の背面側頂部58と対峙する箇所から周方向に離れる程に凹状逃げ部61の深さが徐々に浅くなっているので、背面側の所定範囲に亘る傷付きを防止しつつも凹状逃げ部61の深さを必要最小限に留めることができてリールシート本体29の良好なデザインも確保することができる。特に、凹状逃げ部61はその周縁部全周において緩やかな曲面で周辺部とつながっているので、周縁部がシャープエッジになっている場合に比して、凹状逃げ部61と周辺部との間の境界が外観上目立ちにくくなり、あたかもリールシート本体29の外周面に凹状逃げ部61が存在していないかのようにも見えることから、良好なデザインと傷付き防止効果を高い次元で両立させることができる。
【0041】
一方、可動フード体を筒状フード16と連結体17から構成したことにより、筒状フード16を容易に薄肉化することができる。また、金属製の筒状フード16の膨出部56の内側には合成樹脂製のパッド部19を配置しているので、リール脚の他端部を合成樹脂からなるパッド部19で安定的にしっかりと保持することができると共に、その外側の金属製の筒状フード16によって十分な強度も確保することができる。また、リール脚が直接金属製の筒状フード16の膨出部56に当たることがないので、リール脚の傷付きも防止することができる。更に、操作ナット14の周溝に係止する係止凸部39を連結体17に設けているので、筒状フード16に係止凸部39を形成する必要がなく、筒状フード16を薄肉化できる。このようにパッド部19と係止凸部39とをベースリング部18を介して一体的に形成して連結体17という一つの部材として構成しているので、筒状フード16が比較的シンプルな形状で済み、後加工も最小限で済むことから筒状フード16を容易に高強度且つ薄肉化することができる。その一方、連結体17については合成樹脂から成形によって形成することで複雑な形状であっても容易に製造することができる。また、ベースリング部18を設けることで、パッド部19が存在する正面側の一箇所のみならず他の箇所にもキー部20,21,22,23を容易に設けることができ、確実且つスムーズに可動フード体を竿軸方向に移動させることができる。更に、キー部20,21,22,23の先端に係止凸部39と係止凸部43を形成するようにしているので、連結体17の成形も容易である。
【0042】
尚、本実施形態では、ベースリング部18とパッド部19とを一体的に形成したが、これらを別体構成としてもよい。また、係止凸部39をキー部20,21,22,23と共に合計四箇所形成したが、キー部20,21,22,23とは別の位置に係止凸部39を形成してもよく、係止凸部39を全周に亘って形成して環状としてもよい。係止凸部39を環状に形成する場合には周方向の所定箇所にスリットを形成して操作ナット14への取り付け時に径方向に変形しやすいようにすることが好ましい。このように連結体17の構成は種々設計変更可能である。
【0043】
また、筒状フード16についても種々の設計変更が可能であって、上記実施形態では金属製としたが、繊維強化樹脂製としてもよい。その場合、カーボン繊維に代表される強化繊維に樹脂を含浸させたシート状のプリプレグをマンドレルに巻回して加熱焼成することにより、筒状フード16を製造することができる。但し、カーボン繊維以外の強化繊維を使用してもよい。
【0044】
また、上記実施形態ではリールシート本体29に固定フード部12を一体的に形成したが、固定フード部12をリールシート本体29とは別体に形成してもよい。
【0045】
尚、スピニングリールを取り付けるためのリールシート10について説明したが、両軸リールを取り付けるためのリールシート10にも適用可能である。