(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カム駆動されるタペットを介して動作するプランジャを用いて燃料を噴射する燃料噴射ポンプで前記タペットの動作を前記プランジャに伝達する燃料噴射補助装置において、
前記プランジャに連結された加速弁体と、
前記加速弁体を移動可能に収容する加速弁収容部と、
前記タペットに連結された油圧弁体と、
前記油圧弁体を移動可能に収容する油圧弁収容部と、
連通路とを備え、
前記加速弁体は、前記加速弁収容部内に前記加速弁体が移動することによって容積が変動する加速弁油圧室を形成し、
前記油圧弁体は、前記油圧弁収容部内に前記油圧弁体が移動することによって容積が変動する油圧弁油圧室を形成し、
前記加速弁油圧室及び前記油圧弁油圧室は、内部に作動油を含み、前記連通路を通じて互いに連通し、
前記燃料噴射補助装置は、
前記油圧弁油圧室に前記作動油を供給する油圧弁油圧室油供給路と、
前記油圧弁油圧室油供給路に設けられて前記油圧弁油圧室に供給される前記作動油の圧力を調節する圧力調整弁と、
前記加速弁油圧室から前記作動油を排出する加速弁油圧室油排出路と
をさらに備え、
前記加速弁体は、移動することによって前記加速弁油圧室を前記加速弁油圧室油排出路に連通又は連通遮断する燃料噴射補助装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
まず、この発明の実施の形態1に係る燃料噴射補助装置100を備える燃料噴射装置101及びその周辺の構成を説明する。なお、以下の実施の形態では、燃料噴射装置101は、ジャーク式とする。
【0015】
図1を参照すると、内燃機関であるディーゼル機関(ディーゼルエンジン)1を搭載する機械には、燃料を貯蔵するための燃料タンク3、燃料を高圧にして燃料噴射弁2からディーゼル機関1のシリンダ1a内に噴射させる燃料噴射装置101、燃料タンク3内の燃料を昇圧して燃料噴射装置101に送るフィードポンプ4、及びフィードポンプ4から燃料噴射装置101に送られる燃料を濾過する燃料フィルタ5が、設けられている。また、燃料噴射装置101には、適切な時期に燃料をシリンダ1a内に噴射するように燃料噴射装置101の駆動を制御するタイマ6と、ディーゼル機関1の回転数、負荷に応じて燃料噴射量を調節するガバナ7が組み付けられている。さらに、燃料噴射装置101には、各シリンダ1aの燃料噴射弁2に対応して燃料噴射ポンプ10(
図2参照)が複数設けられている。
【0016】
図2を参照すると、燃料噴射ポンプ10の断面側面図が示されている。
燃料噴射ポンプ10は、ポンプハウジング11を有し、ポンプハウジング11の内部には、第二嵌入孔14を介して互いに連通するプランジャ室13及びカム室15が形成されている。さらに、ポンプハウジング11には、プランジャ室13を外部に連通する第一嵌入孔12が形成され、第一嵌入孔12は、第一開口部12aでポンプハウジング11の外部に開口している。そして、第一嵌入孔12、プランジャ室13、第二嵌入孔14及びカム室15は、一列に並んで配置されている。
【0017】
第一嵌入孔12では、その途中で断面が大きくなったフューエルチャンバ16が形成されている。さらに、フューエルチャンバ16は、燃料供給路16aを介してポンプハウジング11の外部に連通している。燃料供給路16aは、フィードポンプ4によって圧送された燃料が供給されるように構成されている。
また、第一嵌入孔12には、フューエルチャンバ16からプランジャ室13にわたって、筒状のポンプシリンダ17が嵌入され、ポンプハウジング11に対して固定されている。これにより、フューエルチャンバ16は、ポンプハウジング11の内表面とポンプシリンダ17の筒状の外周面との間に形成される空間によって構成される。さらに、ポンプシリンダ17は、その筒状の内部と外部のフューエルチャンバ16とを連通する燃料流入路18を壁部に有している。
【0018】
また、フューエルチャンバ16よりもプランジャ室13側において、第一嵌入孔12と、ポンプシリンダ17の筒状の外周面との間には、筒状のコントロールスリーブ19が、嵌入され、ポンプシリンダ17よりも第二嵌入孔14側に突出している。コントロールスリーブ19は、ポンプシリンダ17に対してその周方向に摺動することができる。さらに、コントロールスリーブ19の外周面を取り囲むようにピニオンギヤ20bが嵌合しており、そして、ピニオンギヤ20bには紙面上で奥行き方向に延びるラック20aがギヤ係合している。ラック20a及びピニオンギヤ20bは、コントロールラック20を構成し、コントロールラック20は、ラック20aを紙面上で奥行き方向に移動させることによって、ピニオンギヤ20bと共にコントロールスリーブ19を回転させる機構である。
【0019】
また、第一嵌入孔12において、ポンプシリンダ17の第一開口部12a側には、筒状のバルブガイド21が挿入されている。さらに、バルブガイド21を貫通するバルブ穴21aには、デリバリバルブ22が挿入されている。デリバリバルブ22は、円錐台状のシート部22aと、シート部22aに一体に形成され且つ周囲に複数のフィンを有する軸部22cと、シート部22a及び軸部22cの間に一体に形成された円盤状のピストン部22bとを有している。そして、デリバリバルブ22は、軸部22c及びピストン部22bが第一開口部12a側からバルブ穴21aに挿入されており、シート部22aは、その円錐面をバルブ穴21aの縁に当接させることでデリバリバルブ22の挿入を停止させるストッパとして作用する。
【0020】
また、第一嵌入孔12において、ポンプハウジング11とバルブガイド21との間には、筒状のバルブホルダ23が嵌入され、ポンプハウジング11から突出している。バルブホルダ23は、ねじ係合等によってポンプハウジング11及びバルブガイド21と連結されている。さらに、バルブホルダ23は、内部でデリバリバルブ22が往復動作することができるバルブ室23aをバルブガイド21に隣接して有し、そして、バルブ室23aを外部に連通し且つバルブ室23aよりも断面が小さくなった燃料噴射孔23bをバルブガイド21と反対側の先端に有している。
【0021】
また、バルブ室23aの内部には、デリバリバルブ22のシート部22aに当接してデリバリバルブ22をバルブガイド21に向かって付勢するデリバリバルブスプリング24が設けられている。
【0022】
また、ポンプシリンダ17及びコントロールスリーブ19の筒の内部には、カム室15側から棒状のプランジャ25が挿入されコントロールスリーブ19に嵌合している。プランジャ25は、フューエルチャンバ16側がポンプシリンダ17の内周面に整合する外周面を有しており、ポンプシリンダ17との間で気密状態を維持しつつその内部で摺動することができる。そして、プランジャ25は、ポンプハウジング11及びバルブガイド21の内部において、バルブガイド21に当接したデリバリバルブ22との間に、閉鎖された空間である燃料加圧室26を形成する。さらに、プランジャ25の外周面には、燃料加圧室26をプランジャ25の側部に連通する溝状のリード25aが形成されている。
【0023】
プランジャ25は、嵌合しているコントロールスリーブ19と一体にその軸を中心に回転することができる。そして、ラック20aをスライドさせてピニオンギヤ20bと共にコントロールスリーブ19及びプランジャ25を回転させることによって、プランジャ25は軸方向の長さを変えることができ、それによって、燃料加圧室26の容積が変わり燃料噴射量を変更することができる。
【0024】
また、プランジャ25は、コントロールスリーブ19から外側の第二嵌入孔14側に突出しており、その突出した端部には、略円錐台状のロワースプリングシート28が連結されている。
また、コントロールスリーブ19の周囲には、円環状のアッパースプリングシート27が固定されており、アッパースプリングシート27とロワースプリングシート28との間には、プランジャ25の周囲を取り囲むプランジャスプリング29が設けられている。プランジャスプリング29は、ロワースプリングシート28及びプランジャ25を第二嵌入孔14に向かって付勢する。
【0025】
また、カム室15には、紙面上で奥行き方向に延びるカムシャフト30が設けられている。カムシャフト30は、ポンプハウジング11の外部の図示しない駆動ギヤと連結されて一体に回転することができ、駆動ギヤには、ディーゼル機関1(
図1参照)のクランク軸の回転が伝達される。よって、カムシャフト30は、ディーゼル機関1のクランク軸の回転に対応して回転する。
【0026】
また、ポンプハウジング11の第二嵌入孔14には、ポンプ取付台41が嵌入され、ポンプハウジング11に対して固定されている。さらに、ポンプ取付台41を貫通するローラ式のタペット40が設けられている。タペット40は、その先端にタペットローラ40aを有し、タペットローラ40aをカムシャフト30のカム30aのカム面30a1に当接させている。なお、カム30aは、基礎円の一部が突出した形状の断面を有しており、円筒部30aaと、円筒部30aaよりもその径方向に山型状に突出しているカム山部30abとによって構成されている。
また、プランジャ室13において、ポンプ取付台41とロワースプリングシート28との間には、燃料噴射補助装置100が設けられている。燃料噴射補助装置100は、ロワースプリングシート28及びタペット40と連結されている。
【0027】
よって、燃料噴射ポンプ10は、燃料噴射補助装置100を除いて従来技術の燃料噴射ポンプと同様の構成を有しており、つまり、従来技術の燃料噴射ポンプに対して、ポンプ取付台41とロワースプリングシート28との間に燃料噴射補助装置100を新たに設けるように改造した構成となっている。例えば、燃料噴射補助装置100は、既設の燃料噴射ポンプを一部改造して取り付けることができる。
【0028】
図3を参照すると、燃料噴射補助装置100の詳細な構成が示されている。
ポンプ取付台41は、内部に空間41aを形成する有底円筒状の形状を有しており、タペット40においてタペットローラ40aを支持するタペット軸40bを貫通させて支持するタペット支持孔41cと、タペット支持孔41cに対向する位置に形成された油圧シリンダ嵌合孔41bとを有している。
【0029】
そして、燃料噴射補助装置100は、ポンプ取付台41における油圧シリンダ嵌合孔41bが形成された面に設けられる略円筒状の油圧シリンダ111を有している。ここで、油圧シリンダ111は、油圧弁収容部を構成している。
【0030】
油圧シリンダ111は、その一部を油圧シリンダ嵌合孔41b内に嵌合させて、ポンプ取付台41に固定されている。油圧シリンダ111には、ポンプ取付台41側からその反対側に向かって貫通孔が形成されており、この貫通孔は、その断面積を途中で変化させていて、互いに内径が異なる3つの油圧シリンダ孔部111a、111b及び111cを直列に連結した構成を有している。第一油圧シリンダ孔部111aは、ポンプ取付台41側で開口し、第三油圧シリンダ孔部111cは、ポンプ取付台41と反対側で開口している。第二油圧シリンダ孔部111bは、第一油圧シリンダ孔部111aと第三油圧シリンダ孔部111cとの間に形成され、これらの油圧シリンダ孔部111a及び111cよりも内径が小さくなっている。
【0031】
さらに、油圧シリンダ111には、第一油圧シリンダ孔部111aを油圧シリンダ111の外部に連通する第一潤滑油路111dと、第三油圧シリンダ孔部111cを外部に連通する第二潤滑油路111eとが形成されている。
【0032】
また、燃料噴射補助装置100は、油圧シリンダ111における第三油圧シリンダ孔部111cが形成された面に設けられる略円筒状の加速弁収容部である加速シリンダ112を有している。加速シリンダ112は、その一部を第三油圧シリンダ孔部111c内に嵌合させて、油圧シリンダ111に固定されている。
【0033】
加速シリンダ112には、油圧シリンダ111側からその反対側に向かって貫通孔が形成されており、この貫通孔は、その断面積を途中で変化させていて、互いに内径が異なる3つの加速シリンダ孔部112a、112b及び112cを直列に連結した構成を有している。第一加速シリンダ孔部112aは、油圧シリンダ111側で開口し、第三加速シリンダ孔部112cは、油圧シリンダ111と反対側で開口している。第二加速シリンダ孔部112bは、第一加速シリンダ孔部112aと第三加速シリンダ孔部112cとの間に形成され、これら加速シリンダ孔部112a及び112cよりも内径が小さくなっている。そして、加速シリンダ112における第一加速シリンダ孔部112aの周壁を構成する部位が、第三油圧シリンダ孔部111cに嵌合している。また、第一加速シリンダ孔部112aは、第一油圧シリンダ孔部111aよりも内径が小さくなっている。
【0034】
さらに、加速シリンダ112には、第一加速シリンダ孔部112aを第二潤滑油路111eに連通する加速シリンダ油排出路112d及び背圧絞り路112eが形成されている。背圧絞り路112eは、加速シリンダ油排出路112dよりも第二加速シリンダ孔部112b側に配置されており、第一加速シリンダ孔部112aの周囲に複数形成され、第二加速シリンダ孔部112bの近傍で第一加速シリンダ孔部112aに開口している。また、加速シリンダ112には、第三加速シリンダ孔部112cを加速シリンダ112の外部に連通する燃料排出路112fが形成されている。
ここで、加速シリンダ油排出路112d及び第二潤滑油路111eは、加速弁油圧室油排出路を構成している。
【0035】
また、加速シリンダ112における第三加速シリンダ孔部112cが形成された面には、ロワースプリングシート28が配置され、ロワースプリングシート28は、加速シリンダ112の第三加速シリンダ孔部112cに嵌合できるように構成されている。
【0036】
また、ポンプ取付台41のタペット支持孔41cを通るタペット軸40bの先端には、雌ねじ穴40b1が形成されており、この雌ねじ穴40b1には、距離調節部材である噴射時期調整ボルト115の雄ねじ115aがねじ係合している。噴射時期調整ボルト115は、その軸を中心に回転することによって、タペット軸40bからの突出長を変更することができる。なお、噴射時期調整ボルト115の雄ねじ115aには、ロックナット116がねじ係合しており、ロックナット116をタペット軸40bに対して締め付けることによって、噴射時期調整ボルト115をタペット軸40bに対して回転方向に固定することができる。
【0037】
また、互いに径が異なる2つの円柱状のピストンを直列に連結した構成を有する油圧弁体である油圧ピストン113が、油圧シリンダ111内に挿入されている。油圧ピストン113において外径が大きい方の油圧ピストンスカート部113aは、タペット軸40b側に凹部を有すると共に第一油圧シリンダ孔部111aに整合する外周面を有している。油圧ピストンスカート部113aは、第一油圧シリンダ孔部111a内に挿入され、第一油圧シリンダ孔部111aとの間の気密を保つ。さらに、油圧ピストンスカート部113aの凹部には、噴射時期調整ボルト115がその軸を中心に回転可能に連結されている。
【0038】
油圧ピストン113において外径が小さい方の油圧ピストン突起部113bは、油圧ピストンスカート部113aから噴射時期調整ボルト115と反対側に突出するように形成され、第二油圧シリンダ孔部111bに整合する外周面を有している。油圧ピストン突起部113bは、第二油圧シリンダ孔部111bに貫通するように挿入され、第二油圧シリンダ孔部111bとの間の気密を保つ。さらに、油圧ピストン突起部113bは、第三油圧シリンダ孔部111c内(第一加速シリンダ孔部112a内)に先端を突出させている。
そして、油圧ピストン113は、第一油圧シリンダ孔部111aと、油圧ピストンスカート部113a及び油圧ピストン突起部113bとによって囲まれる油圧弁油圧室である油圧ピストン油圧室121を形成している。
【0039】
また、油圧ピストン113の油圧ピストン突起部113bには、油圧ピストン突起部113bの内部を通って外周面で開口する連通路である油圧通路113cが形成されている。油圧通路113cは、油圧ピストン突起部113bと油圧ピストンスカート部113aとの連結部近傍で開口する第一開口113c1と、この連結部から離れた油圧ピストン突起部113bの先端側の位置で開口する第二開口113c2とで開口している。
なお、カム30aが回転することによってタペット40と共に油圧ピストン113が往復運動するが、この往復運動の際に、第二開口113c2は、第三油圧シリンダ孔部111c内に位置するように構成されている。さらに、油圧ピストン突起部113bは、第二開口113c2よりも先端側で外径が小さくなっている。
【0040】
また、互いに径が異なる2つの円柱状のピストンを直列に連結した構成を有する加速弁体である加速ピストン114が、加速シリンダ112内に挿入されている。加速ピストン114において外径が大きい方の加速ピストンスカート部114aは、油圧ピストン113側の端部に凹部114cを有すると共に、第一加速シリンダ孔部112aに整合する外周面を有している。加速ピストンスカート部114aは、第一加速シリンダ孔部112a内に挿入され、第一加速シリンダ孔部112aとの間の気密を保つ。
【0041】
加速ピストン114において外径が小さい方の加速ピストン突起部114bは、加速ピストンスカート部114aから油圧ピストン113と反対側に突出するように形成され、第二加速シリンダ孔部112bに整合する外周面を有している。加速ピストン突起部114bは、第二加速シリンダ孔部112bを貫通するように挿入され、第二加速シリンダ孔部112bとの間の気密を保ち、そして、第三加速シリンダ孔部112c内に先端を突出させている。さらに、加速ピストン突起部114bは、ボルト等の連結部材117によって、その先端がロワースプリングシート28と連結されて一体となっている。
そして、加速ピストン114は、第一加速シリンダ孔部112aと、加速ピストンスカート部114a及び加速ピストン突起部114bとによって囲まれる背圧室122を形成している。
【0042】
また、加速ピストンスカート部114aは、第一加速シリンダ孔部112a内で摺動することによって、油圧ピストン113の油圧ピストン突起部113bにおける第二開口113c2よりも先端側の部位と、凹部114c内とを当接させることができる。当接時、加速ピストンスカート部114aは、油圧ピストン突起部113bの第二開口113c2に対して隙間をあけて対向するように延在している。
そして、加速ピストンスカート部114aは、凹部114c側において、第一加速シリンダ孔部112a及び油圧ピストン突起部113bとの間に隙間又は空間を形成し、この隙間又は空間は加速弁油圧室である加速ピストン油圧室123を構成する。
【0043】
また、油圧シリンダ111の第一潤滑油路111dは、逆止弁132及び絞り弁133を順次介して、潤滑油圧送配管131に連通している。逆止弁132は、第一潤滑油路111dから潤滑油圧送配管131に向かう方向への潤滑油の流通を阻止し、反対方向への潤滑油の流通を許容する。ここで、第一潤滑油路111d及び潤滑油圧送配管131は、油圧弁油圧室油供給路を構成し、絞り弁133は、第一潤滑油路111dへ流通する潤滑油の流量を調節することによって、第一潤滑油路111dへ供給する潤滑油の圧力を調節する圧力調整弁を構成している。
また、油圧シリンダ111の第二潤滑油路111eは、図示しない潤滑油戻り配管に連通している。
【0044】
また、
図4を参照すると、燃料噴射ポンプ10に燃料を供給するための燃料供給回路140、及び、燃料噴射補助装置100に潤滑油を供給するための油供給回路130が模式的に示されている。
燃料供給回路140では、ディーゼル機関1の駆動力によって駆動されるフィードポンプ(燃料圧送ポンプ)4は、燃料タンク3内の燃料を、その途中に圧力制御弁142が設けられた燃料圧送配管141を介して、燃料噴射ポンプ10に圧送するように構成されている。圧力制御弁142は、燃料噴射ポンプ10に送る燃料の圧力を所定の圧力となるように調節し、調節の際に生じる余分な燃料を燃料タンク3に戻す。
【0045】
油供給回路130では、ディーゼル機関1の駆動力によって駆動される潤滑油ポンプであるオイルポンプ1cが、ディーゼル機関1のオイルパン1b内の潤滑油を逆止弁134を介して吸い上げ、さらに、圧力制御弁135と潤滑油圧送配管131とを順次介して各燃料噴射補助装置100に圧送するように構成されている。潤滑油圧送配管131の途中には、絞り弁133及び逆止弁132が設けられている。なお、潤滑油圧送配管131は、オイルポンプ1cから圧力制御弁135を介してディーゼル機関1に潤滑油を供給する経路の途中で分岐する配管である。また、燃料噴射補助装置100を流通した潤滑油は、その途中に逆止弁137及び蓄圧器138が順次設けられた潤滑油戻り配管136を介して、オイルポンプ1cの吸入側となるオイルポンプ1c及び逆止弁134との間に戻されるように構成されている。なお、潤滑油戻り配管136の潤滑油は、ディーゼル機関1に供給するようにしてもよい。ここで、潤滑油戻り配管136は、加速弁油圧室油排出路を構成し、逆止弁137は、排出路逆止弁を構成している。
【0046】
逆止弁134は、オイルポンプ1c及び潤滑油戻り配管136からオイルパン1bへの潤滑油の逆流を防ぎ、圧力制御弁135は、ディーゼル機関1に送る潤滑油の圧力を調節する。また、絞り弁133は、燃料噴射補助装置100に供給する潤滑油の流路断面を調節することによって供給する潤滑油の圧力を調節し、逆止弁132は、燃料噴射補助装置100から潤滑油圧送配管131への潤滑油の逆流を防ぐ。そして、逆止弁137は、潤滑油圧送配管131内の潤滑油の燃料噴射補助装置100への逆流を防ぐ。また、蓄圧器138は、潤滑油戻り配管136における油圧の急激な変動を抑え、それにより潤滑油の流れを整流する。
【0047】
次に、この発明の実施の形態1に係る燃料噴射装置101及びその周辺の動作を説明する。
図1及び
図4をあわせて参照すると、ディーゼル機関1の稼動時、フィードポンプ4は、燃料タンク3内の燃料を、燃料フィルタ5及び圧力制御弁142を順次介して、燃料噴射装置101の燃料噴射ポンプ10に供給する。また、オイルポンプ1cは、オイルパン1b内の潤滑油をディーゼル機関1及び燃料噴射ポンプ10の燃料噴射補助装置100に供給する。そして、燃料噴射ポンプ10では、供給された燃料が高圧に昇圧され、昇圧後の燃料がディーゼル機関1のシリンダ1aに取り付けられた燃料噴射弁2を介して、シリンダ1a内に噴射される。
【0048】
図2を参照すると、燃料噴射ポンプ10では、燃料供給路16aからフューエルチャンバ16内に燃料が圧送される。さらに、フューエルチャンバ16内の燃料は、燃料流入路18を通って燃料加圧室26に送られる。
また、ディーゼル機関1(
図1参照)によってカムシャフト30が回転駆動され、それにより、プランジャスプリング29によってカム30aのカム面30a1に押し付けられているタペットローラ40aが、カム面30a1上を転動する。タペットローラ40aがカム面30a1上にならって転動することによって、タペットローラ40a及びタペット軸40bが、カム30aの断面形状(カムプロフィール)にあわせてタペット軸40bの軸方向に往復動作即ちピストン動作する。
【0049】
タペット軸40bがピストン動作することによって、タペット軸40bと燃料噴射補助装置100を介して間接的に連結されているプランジャ25は、プランジャスプリング29の付勢力に抗して、その軸方向にピストン動作する。
プランジャ25は、カム30aに最も近づく下死点では、燃料加圧室26を燃料流入路18に連通させ、そして、バルブ室23aに最も近づく上死点に向かって移動するに伴い、燃料流入路18を閉鎖し燃料加圧室26の容積を減少させて内部の燃料を圧縮する。
【0050】
デリバリバルブ22のピストン部22bをバルブ室23aに向かって押圧する燃料加圧室26内の燃料の圧力が、デリバリバルブスプリング24の付勢力を超えると、デリバリバルブ22がバルブ室23a内に向かって移動し、燃料加圧室26をバルブ室23aに連通する、つまり開弁する。このとき、加圧された燃料は、バルブ室23a内に放出され、そして、内径が小さくなった燃料噴射孔23bを通過する際に高圧に加圧されて図示しない燃料配管に圧送される。デリバリバルブ22の開弁後もプランジャ25は上死点に向かって上昇するが、リード25aが燃料流入路18に連通すると、燃料加圧室26内の燃料がリード25aを通ってフューエルチャンバ16内に瞬時に戻る、つまりスピルする。このとき、バルブ室23a内の圧力が低下するため、デリバリバルブ22は、デリバリバルブスプリング24によって移動させられ、バルブ室23a及び燃料加圧室26の連通を遮断する、つまり閉弁する。これによって、燃料加圧室26の開弁からリード25aが燃料流入路18に連通するまでのプランジャ25の圧送ストローク量に相当する所定量の燃料が1行程あたりに噴射される。
【0051】
さらに、
図2〜
図15を参照して、燃料噴射補助装置100の動作の詳細を説明する。
1)絞り弁133を制御して高圧の潤滑油が油圧ピストン油圧室121に供給される場合(以下、高圧モードと呼ぶ)
図5を参照すると、タペットローラ40aがカム30aの円筒部30aa上にありカム山部30ab上にかかる直前の燃料噴射補助装置100の状態Aが示されている。なお、図中で第一潤滑油路111d及び第二潤滑油路111eに記載された矢印は、潤滑油の流通方向を示す。
【0052】
このとき、タペット軸40bに連結された油圧ピストン113は、カム30aに最も近づく下死点にあり、油圧ピストン油圧室121の容積が最大となっている。そして、油圧ピストン油圧室121内には、逆止弁132を介して潤滑油が圧送される。また、加速ピストン114は、プランジャスプリング29の付勢力を受けるロワースプリングシート28(
図3参照)によって押圧され、油圧ピストン113に当接し、加速ピストン油圧室123の容積は最小になっている。
また、油圧通路113cは、油圧ピストン油圧室121及び加速ピストン油圧室123に連通している。さらに、加速ピストン114の加速ピストンスカート部114aは、加速シリンダ112に設けた加速シリンダ油排出路112dを閉鎖している。
【0053】
次に、カム30aが回転し、タペットローラ40aがカム山部30abを乗り越え始める状態Bの燃料噴射補助装置100が、
図6に示されている。
このとき、油圧ピストン113は、カム30aと反対方向のプランジャ25(
図2参照)に向かう方向に移動し始め、それにより、加速ピストン114をプランジャ25と共に押し上げる。同時に、油圧ピストン113によって油圧ピストン油圧室121内の潤滑油が圧縮されて逆止弁132が作動し、油圧ピストン油圧室121内の油圧は、潤滑油圧送配管131(
図3参照)から供給されていた潤滑油の油圧からさらに上昇し高圧になる。この高圧になった油圧は、油圧ピストン油圧室121よりも流路断面が小さい油圧通路113cと容積が小さくなっている加速ピストン油圧室123とを介して、加速ピストン114に弾性的に作用するため、加速ピストン114は、油圧ピストン113から離れる方向にその上昇速度を加速度的に増加させて押し上げられる。そして、プランジャ25が加速ピストン114と共に加速度的に動作して燃料加圧室26(
図2参照)内の燃料を圧縮し、これにより燃料噴射ポンプ10の燃料噴射孔23b(
図2参照)から燃料が高圧で噴射される。また、このとき、加速ピストン114の加速ピストンスカート部114aは、加速シリンダ112の加速シリンダ油排出路112dを閉鎖したままである。
【0054】
なお、加速ピストン114を押し上げる速さは、油圧ピストン113の油圧ピストン突起部113bにおけるスライド方向に垂直な面への投影面積(断面積)と加速ピストン114の加速ピストンスカート部114aにおけるスライド方向に垂直な面への投影面積(断面積)との面積比、つまり、第一油圧シリンダ孔部111aの断面積と第一加速シリンダ孔部112aの断面積との面積比で決まる。本実施の形態1では、第一油圧シリンダ孔部111aの断面積の方が第一加速シリンダ孔部112aの断面積より大きく形成されているため、油圧ピストン113の速さに対して加速ピストン114の速さが大きくなる。
【0055】
また、内部に潤滑油を含み且つ背圧絞り路112eによって出口が絞られている背圧室122は、加速ピストン114が押し上げられることによって容積を減少させて内部の潤滑油を圧縮し、加速ピストン114に対してカム30a側に向かって押圧する背圧を発生させる。
【0056】
さらに、
図11を参照すると、油圧ピストン113の速度、加速ピストン114の速度及び背圧と、カム30aの回転角度との関係が示されている。なお、カム30aからプランジャ25(
図3参照)に向かう方向の速度を正とし、その反対方向の速度を負としている。
図6をあわせて参照すると、状態Aから状態Bに遷移する過程では、加速ピストン114は上昇した油圧によって急瞬に加速され、背圧はかなり遅れて立ち上がる。この背圧の遅れは加速ピストン114の速度上昇抵抗を軽減するので、油圧ピストン113より加速ピストン114が非常に速く立ち上がれる要因となる。すなわち、油圧の上昇によって生まれた油圧エネルギーは、加速ピストン114及びプランジャ25の上昇に十分有効に活用されている。
【0057】
また、
図12を参照すると、油圧ピストン113の位置、加速ピストン114の位置及び背圧と、カム30aの回転角度との関係が示されている。なお、下死点にあるときの油圧ピストン113の位置を0とし、下死点にある油圧ピストン113に当接しているときの加速ピストン位置を0とし、これらの位置から、カム30aからプランジャ25(
図3参照)に向かう方向へ進んだ位置を正とする。
図6をあわせて参照すると、状態Aから状態Bに遷移する過程では、
図11に示すように加速ピストン114の速度の立ち上がりが早いため、加速ピストン114の位置は、油圧ピストン113より早くにピストン位置が高くなる。そして、立ち上がり時の加速ピストン114と油圧ピストン113とのピストン位置の差は、両ピストン間の上記断面積比に対して比例関係に近い関係を有している。
【0058】
また、背圧は、加速ピストン114が背圧室122の頂部表面122a(背圧室122のプランジャ25側の部位で
図7参照)付近まで押し上げられる位置(
図7の状態Cの位置)つまり最大値となる位置に到達するより早く最大値に達する。そして、内部の潤滑油が背圧絞り路112eから排出されるため、背圧は減少する。この背圧と加速ピストン114との間における最大値となるまでの時間の差は、
図13の実線で示される高圧モード荷重線に示すタペットローラ40aに作用する荷重線の傾斜を緩やかにする要因となる。なお、
図13の荷重線は、タペットローラ40aに作用する荷重及び背圧とカム30aの回転角度との関係を示し、タペットローラ40aに作用する荷重は、プランジャスプリング29の付勢力及び各油圧室の圧力が作用するタペットローラ40aがカム30aを押圧する圧力のことである。
【0059】
さらに、
図14の実線で示される高圧モード線を参照すると、高圧モードにおける燃料噴射ポンプ10(
図2参照)の燃料の噴射圧力と、カム30aの回転角度に対応するディーゼル機関1(
図1参照)のクランク角との関係が示されている。
図11に示すように油圧ピストン113より加速ピストン114が非常に速く立ち上がることから、燃料噴射ポンプ10の噴射圧力は、急瞬に立ち上がっている。この急瞬な立ち上がりによって噴射圧力は高圧化され、同じ噴射量の噴射に対して、高圧化された分だけ噴射時間を短縮することも可能となる。なお、
図14は、ディーゼル機関1が所定の回転数である場合、つまりカム30aの回転数が所定の回転数の場合における、高圧モード及び後述する低圧モードにおける燃料噴射圧力とカム30aの回転角度との関係を示している。
【0060】
図7を参照すると、
図6の状態Bからカム30aが回転し、タペットローラ40aがカム山部30abに乗りカム山部30abの頂部に至るまでの燃料噴射補助装置100の状態Cが示されている。
タペットローラ40aがカム山部30abに乗りカム山部30abの頂部に至るまでの間、加速ピストン114は背圧室122の頂部表面122aに押し付けられるように動作し、背圧室122の油圧が最大値に達する。同時に、プランジャ25(
図2参照)が燃料加圧室26(
図2参照)内の燃料を圧縮するように加速ピストン114と共に動作する。
【0061】
また、カム30aの回転に伴って加速ピストン114の加速ピストンスカート部114aが加速シリンダ112の加速シリンダ油排出路112dを開放する位置に達し、加速シリンダ油排出路112dから潤滑油が排出されるようになる。なお、この加速シリンダ油排出路112dが開放される動作をピストンバルブ開弁と呼ぶこととする。
【0062】
また、背圧室122内の上昇する油圧によって加速ピストン114の動作には制動がかかるため、加速ピストン114は、加速ピストンスカート部114aが背圧室122の頂部表面122aに接触する直前に達した後直ぐに、背圧室122内の油圧によって反発されて(つまりオイルクッション効果を受けて)、油圧ピストン113に向かって少し下降した最大カムリフト相当位置に戻る。なお、最大カムリフト相当位置は、加速ピストン114の高さとして定常的に得ることのできる最大高さでの位置であり、加速ピストン114の全ストローク位置と呼ぶこととする。
【0063】
なお、背圧室122の油圧の大きさは、加速シリンダ112の背圧絞り路112eの内径を変更することによって調節できる。
【0064】
また、ピストンバルブ開弁状態にする加速ピストン114の位置は、加速シリンダ油排出路112dの開放前に、燃料噴射ポンプ10(
図2参照)による1回あたりの燃料噴射が既に終了しているタイミングとなるような位置に設定される(本実施の形態1では、状態Bの直後としている)。このように加速ピストン114におけるピストンバルブ開弁位置に対応して燃料噴射タイミングを設定する事によって、油圧ピストン油圧室121及び加速ピストン油圧室123内で高圧に昇圧された油圧は、燃料噴射動作に確実に使用される。なお、加速ピストン114の位置設定は、噴射時期調整ボルト115によって調節することができる。
【0065】
また、
図11を
図7とあわせて参照すると、加速ピストン114は、加速ピストンスカート部114aが背圧室122の頂部表面122a付近に位置する状態Cでは、加速シリンダ112の壁面からの反力とプランジャ25(
図2参照)の燃料噴射圧生成に伴う反力を受けるため、その上昇速度は、勾配を緩める(加速度を低下させる)ようにカーブする。さらに、加速ピストン114は、全ストローク位置に達すると、加速しなくなる。そして、その直前に背圧室122の背圧は最大圧(ピーク圧)に達する。加速ピストン114の加速度が低下し上昇速度がカーブする時、加速ピストン114は、潤滑油を介して背圧室122の頂部表面122aから受ける弾性的な反力で衝撃が緩衝される。これは、オイルクッション効果となり加速シリンダ112の壁面との激突による損傷の発生を防ぎ、各部材の耐久性を確保する。
【0066】
また、
図12を
図7とあわせて参照すると、加速ピストン114は、背圧室122の背圧が立ち上がってピーク値に達するよりも少し遅れて加速ピストンスカート部114aが背圧室122の頂部表面122a付近に達する。
加速ピストンスカート部114aが背圧室122の頂部表面122a付近に達する近傍では、ピストンバルブが開弁状態となり、頂部表面122a付近に達する時点では、背圧は既に急激に低下し始めている。加速ピストン114の位置はオイルクッション効果を受け少し下降し、直ぐに全ストローク位置に落ち着く。
【0067】
また、
図13を
図2及び
図7とあわせて参照すると、プランジャ25が所定の圧送ストロークを行って所定量の燃料を噴射すると、プランジャ25のリード25aを通って加圧中の燃料がスピルし始める。
このため、タペットローラ40aに作用する荷重は一瞬立ち下り、その後、加速ピストン114は最大カムリフト位置に達するまでプランジャ25を押し上げるため、タペットローラ40aに作用する荷重が再度立ち上がる。最大荷重に立ち上がる近傍でピストンバルブが開弁状態となる。
【0068】
さらに、
図14を参照すると、プランジャ25(
図2参照)によって加圧された燃料は、燃料噴射孔23b(
図2参照)で絞られて高圧を発生し、ピストンバルブ開弁前に所定の噴射量に達し急激に立ち下る。
【0069】
次に、
図8を参照すると、
図7の状態Cからカム30aが回転し、タペットローラ40aがカム山部30abの頂部に至った燃料噴射補助装置100の状態Dが示されている。
カム30aが回転し、状態Cから状態Dに遷移するタペットローラ40aがカム山部30abの頂部に達する過程において、油圧通路113cを通って油圧ピストン油圧室121から加速ピストン油圧室123に圧送された潤滑油は全て、開放された加速シリンダ油排出路112dを通って燃料噴射ポンプ10(
図2参照)の外部、つまりディーゼル機関1のオイルパン1b(
図4参照)に排出される。
【0070】
このとき、油圧ピストン油圧室121及び加速ピストン油圧室123の潤滑油が抜けて油圧が低下し始めると同時に、油圧ピストン113及び加速ピストン114に作用する荷重も急激に低下する。そして、この荷重の低下よりも先に加速ピストン114の上昇速度はゼロになり、油圧ピストン113の動作が加速ピストン114を動作させる作動機能は空回りする。なお、この加速ピストン114の上昇速度がゼロになる時点では、プランジャ25(
図2参照)による燃料噴射は既に終了している。ここで、上述のような油圧ピストン113の動作による加速ピストン114の作動機能が機能しない状態の油圧ピストン113の動作を、ロストモーションと呼ぶこととする。
【0071】
このロストモーション中に、油圧ピストン113の油圧ピストン突起部113bの先端は、既に静止している加速ピストン114の加速ピストンスカート部114aに接触し、油圧ピストン113と加速ピストン114とは一体となる。その後、油圧ピストン113及び加速ピストン114は一体となって、カム山部30abの形状に沿った動作をする。
【0072】
また、
図11を
図8とあわせて参照すると、状態Cから状態Dに遷移する過程で、加速ピストン114では、燃料噴射ポンプ10のプランジャスプリング29(
図2参照)の付勢力とピストンバルブ開弁による作用とによって、背圧が急激に低下し、この背圧の急激な低下から少し遅れて加速ピストン114の速度がゼロになる。
【0073】
その後、カム30aの回転に伴って、加速ピストン114の速度はゼロを維持しつつ油圧ピストン113の速度は低下する。加速ピストン114は、点C1の時点で油圧ピストン113との間の負圧によって負方向の速度を発生した後、加速ピストン114の速度線に油圧ピストン113の速度線が交わる状態Dの点で油圧ピストン113と当接して速度を一致させ、油圧ピストン113と共に動作する。
すなわち、油圧ピストン113はカム山部30abに沿った速度で動作し、加速ピストン114はプランジャ25のプランジャスプリング29の付勢力の作用による速度で動作し、互いの速度が平衡速度に達した点で当接する。その後、油圧ピストン113と加速ピストン114とは、以下で詳細を説明する状態Eから状態Fを経て状態Aに至るまで、速度ゼロを維持する。
【0074】
また、
図12を
図8とあわせて参照すると、加速ピストン114は、
図11に示すように速度がゼロとなって維持するため、全ストローク位置で静止し、その後、油圧ピストン113に向かう下降方向の速度の作用によって若干下げた位置で油圧ピストン113と当接して一体化し、その後、以下で詳細を説明する状態Eから状態Fを経て状態Aに至るまで、カム山部30ab及び円筒部30aaの形状に沿った動作をする。
【0075】
また、
図13を
図8とあわせて参照すると、油圧ピストン113のロストモーション中、加速ピストン油圧室123の潤滑油が多量に抜けて油圧が低下すると同時に、タペットローラ40aに作用する荷重も急激に低下する。その後、加速ピストン114を全ストローク位置に維持することによって発生する支持荷重がタペットローラ40aに作用する。タペットローラ40aに作用する荷重は、カム山部30abが最大カムリフト域(状態Dの近傍)に達するとピークに達し、その後、油圧ピストン113と加速ピストン114とが当接する位置(状態D)まで下降し、さらに、その後、以下で詳細を説明する状態Eから状態Fを経て状態Aに至るまで一定となる。
油圧ピストン113と加速ピストン114とが当接する位置(状態D)に達した時点で両ピストンに作用する荷重は一致する。この荷重の一致点では両ピストンに接触に伴う大きな荷重差は生じない。従って、油圧ピストン113及び加速ピストン114が一体化することに伴う大きな衝撃は起こらず両ピストンに損傷は生じないため耐久性が確保される。
【0076】
また、
図14を
図2及び
図8とあわせて参照すると、状態Dでは、既に燃料の噴射は終了しており、デリバリバルブ22によって閉鎖されるバルブ室23aに存在する残留圧力によって、噴射圧力に残留圧力が存在している。
【0077】
次に、
図9を参照すると、
図8の状態Dからカム30aが回転し、タペットローラ40aがカム山部30abの頂部から円筒部30aaに至る途中の燃料噴射補助装置100の状態Eが示されている。
カム30aが回転し、タペットローラ40aがカム山部30abの頂部から円筒部30aaに向かう過程では、一体となった油圧ピストン113と加速ピストン114とが、カム山部30abの形状に沿って下降するように動作する。
【0078】
この時、容積が大きくなる油圧ピストン油圧室121内には、潤滑油が逆止弁132を介して圧送される。これにより、油圧ピストン油圧室121内には、油圧ピストン113の下降に伴う負圧の発生による負荷抵抗が生じない。
また、潤滑油の圧送圧によって、油圧ピストン113に受圧力が発生する。
よって、燃料噴射補助装置100は、可動部品である油圧ピストン113及び加速ピストン114に起因する慣性質量の増加分に対して、上述のように軽減された負荷抵抗と受圧力の作用とによって、プランジャスプリング29(
図2参照)の付勢力の作用を妨げない。従って、燃料噴射補助装置100は、カム30a上でのタペットローラ40aの動作に対するプランジャ25の動作遅れを低減している。
さらに、油圧ピストン113の受圧力は、タペットローラ40aがカム面30a1から離脱しないように押し付ける作用も有している。このため、タペットローラ40aがカム面30a1から離脱しないように押し付けるためのばねを別途設ける必要はない。
【0079】
次に、
図10を参照すると、
図9の状態Eからカム30aが回転し、タペットローラ40aが円筒部30aaにある燃料噴射補助装置100の状態Fが示されている。
タペットローラ40aがカム30aの円筒部30aa上にある間、油圧ピストン油圧室121は逆止弁132を通って圧送された潤滑油で十分に充填される。そして、この充填状態は、
図5の状態Aまで継続する。そして、カム30aが回転し、タペットローラ40aが円筒部30aaからカム山部30abに差し掛かると状態Aの動作に入り、以降、同じ行程動作を繰り返す。
【0080】
2)絞り弁133を制御して低圧の潤滑油が油圧ピストン油圧室121に供給される場合(以下、低圧モードと呼ぶ)
図3を参照すると、低圧モード時は、燃料噴射補助装置100を備える燃料噴射ポンプ10(
図2参照)は、タペット軸40bがロワースプリングシート28に直接連結される従来の燃料噴射ポンプと同様の動作を行う。つまり、油圧ピストン113及び加速ピストン114の摺動部には潤滑のために潤滑油が供給されるが、油圧ピストン113と加速ピストン114との間には互いに異なる動作をさせるような油圧が作用せず、両ピストンは一体となって動作する。このとき、潤滑油圧送配管131から供給される潤滑油の油圧は、油圧ピストン113及び加速ピストン114に上述の一体となった動作をさせるような低い油圧に調節される。一方、高圧モードでは、油圧ピストン113と加速ピストン114とを互いに異なる動作をさせるような高い油圧に調節される。
【0081】
このため、
図11を
図3とあわせて参照すると、低圧モードでの加速ピストン114は、状態A〜状態Fにわたって、油圧ピストン113と共に、油圧ピストン速度線に沿った速度で動作をする。なお、加速ピストン114の背圧は、ほとんど発生しない。なお、油圧ピストン113の速度は、低圧モード及び高圧モードで同じである。
また、
図12を
図3とあわせて参照すると、低圧モードでの加速ピストン114は、状態A〜状態Fにわたって、油圧ピストン113と共に、油圧ピストン変位線に沿って位置を変える。なお、油圧ピストン113の位置は、低圧モード及び高圧モードで同じである。
【0082】
図13を
図3とあわせて参照すると、タペットローラ40aに作用する荷重は、状態A〜状態Fにわたって、油圧による作用がなくプランジャスプリング29の付勢力のみが作用した低圧モード荷重線に沿って推移している。
また、タペットローラ40aに作用する荷重は、状態A以降において、低圧モードよりも、油圧による荷重を受ける高圧モードの方が早く立ち上がる。さらに、高圧モードでの立ち上がり時の荷重は低圧モードの立ち上がり時の荷重より、立ち上がりの傾斜が緩やかになり、これにより、高圧モードでは穏やかな傾斜分だけタペットローラ40aとカム30aとの面圧荷重が軽減される。そして、面圧荷重が軽減されることによってタペットローラ40a及びカム30aの磨耗が低減されるため、潤滑油の劣化が低減して使用可能時間が向上し、タペットローラ40a及びカム30aの磨耗の耐久寿命時間が向上する。
また、
図14を参照すると、低圧モードでは、高圧モードより燃料の噴射圧力が低く噴射開始時期も遅くなりさらに噴射期間が長くなる。
【0083】
上述の高圧モードと低圧モードとを比較すると、高圧モードでは、ディーゼル機関1(
図1参照)の回転数が同じ、つまりカム30aの回転数が低圧モードと同じ場合、低圧モードと比較して、燃料の噴射圧力が高く、そして、燃料の噴射時期が早く、噴射時間も短くなっている。このため、燃料の噴射圧力が絶対的に低くなるディーゼル機関1の低回転時及び低負荷時に高圧モードを採用することによって、燃料の噴射圧力を確保することができる。一方、ディーゼル機関1の高回転時及び高負荷時は、ディーゼル機関1での燃焼を進角させる高圧モードではなく低圧モードを採用することによって、安定した燃焼を確保することができる。また、ディーゼル機関1の中回転時及び中負荷時は、高圧モードと低圧モードとから最適な方を選択することができる。
【0084】
また、燃料噴射補助装置100における高圧モードと低圧モードとの切替は、上述したように、
図3及び
図4に示す絞り弁133を調節して油圧ピストン油圧室121に圧送する潤滑油の圧力を調整することによって、ディーゼル機関1(
図1参照)の回転数及び負荷に応じて実施される。高圧モードへの切替は、絞り弁133を開く方向に動作させ、油圧が所定の圧力になるよう調整し、低圧モードへの切替は、絞り弁133を閉じる方向に動作させ、所定の圧力になるよう調整する。なお、必要に応じて、高圧モードと低圧モードの中間帯を活用してもよい。例えば、燃料噴射補助装置100における高圧モードと低圧モードとの切替は、低負荷時及び低回転時として約30%負荷及びその相当回転数以下で高圧モードとし、約30%以上の負荷及びその相当回転数以上の高回転領域で低圧モードとすることができる。
【0085】
また、ディーゼル機関1(
図1参照)の低回転時での高圧モードにおける特性が、
図15に示されており、この図では、油圧ピストン油圧室121(
図3参照)に圧送する潤滑油の圧力を一定とした高圧モードでディーゼル機関1の回転数を変化させた場合の燃料の噴射圧力と、カム30a(
図3参照)の回転角度に対応するディーゼル機関1のクランク角との関係が示されている。
そして、
図15では、ディーゼル機関1の回転数を極低回転(数十rpm程度)、中低回転(100rpm程度)、及び高低回転(150rpm程度)の3つに変化させている。このとき、回転数を変えても、噴射時期は変わらず、回転数を増加させると、噴射圧力と噴射期間とが増加する。なお、油圧ピストン油圧室121(
図3参照)に圧送する潤滑油の圧力を低い一定の値とした低圧モードでディーゼル機関1の回転数を変える場合は、燃料噴射補助装置100を備えない従来の燃料噴射ポンプと同様の状態になる。
【0086】
また、燃料噴射補助装置100において、高圧モードでは、上述のように油圧ピストン113の動作にロストモーションが発生するが、このときに油圧ピストン113の動作により発生するエネルギーは潤滑油に損失エネルギーとして吸収され、潤滑油が圧力をもつ脈流を形成する。
【0087】
本実施形態における
図4に示す構成では、この潤滑油が含む損失エネルギーを回生することができる。ロストモーション中において各燃料噴射補助装置100から戻って集合する潤滑油戻り配管136の出口では、潤滑油の流れが圧力を持った脈流となっている。そして、脈流を伴う潤滑油は、逆止弁137と脈流を整流する蓄圧器138と通過する際に整流された後、オイルポンプ1cの吸込口の下流側のオイルパン1bとの間に戻され、さらに、逆止弁134によってオイルパン1bへの戻ることが阻止される。これにより、潤滑油に含まれる圧力エネルギーが動力として回生されてオイルポンプ1cの動力を低減させる。
【0088】
また、蓄圧器138の出口から流出する潤滑油をディーゼル機関1の潤滑のための圧送油にそのまま使用すれば、圧送のためのポンプの廃止又はポンプの動力を低減することもできる。例えば、ディーゼル機関1の潤滑のための圧送油は、吸排気弁の弁棒注油、クランク軸ギヤ列への強制潤滑、回転式燃料フィルタの回転動力付与、その他潤滑を必要とする箇所の強制潤滑などに用いられる油がある。
【0089】
このように、この発明の実施の形態1に係る燃料噴射補助装置100は、カム駆動されるタペット40を介して動作するプランジャ25を用いて燃料を噴射する燃料噴射ポンプ10でタペットローラ40aの動作をプランジャ25に伝達するものである。燃料噴射補助装置100は、プランジャ25に連結された加速ピストン114と、加速ピストン114を移動可能に収容する加速シリンダ112と、タペットローラ40aに連結された油圧ピストン113と、油圧ピストン113を移動可能に収容する油圧シリンダ111と、油圧通路113cとを備える。加速ピストン114は、加速シリンダ112内に加速ピストン114が移動することによって容積が変動する加速ピストン油圧室123を形成し、油圧ピストン113は、油圧シリンダ111内に油圧ピストン113が移動することによって容積が変動する油圧ピストン油圧室121を形成し、加速ピストン油圧室123及び油圧ピストン油圧室121は、内部に潤滑油を含み、油圧通路113cを通じて互いに連通する。
【0090】
このとき、タペットローラ40aがカム30aのカム山部30ab上にのってカムリフトされると、油圧ピストン113が油圧ピストン油圧室121の潤滑油を圧縮するように動作して、加速ピストン114には、油圧通路113cを通って伝達する上昇した油圧が弾性的に作用する。これにより、加速ピストン114は、速度を加速度的に増加させるようにして瞬時に移動し、そして、プランジャ25が、加速ピストン114と共に移動して燃料噴射ポンプ10内の燃料を高圧に圧縮して吐出させる。また、加速ピストン114が瞬時に速度を加速度的に増加させることで燃料噴射ポンプ10が燃料を昇圧する時間も短縮されるため、所要量の燃料を噴射するための時間が短くなる。
【0091】
さらに、油圧ピストン油圧室121内における潤滑油の初期の圧力(圧縮前の圧力)を高くすれば、油圧ピストン113の動作時の加速ピストン114の移動速度の増加量(加速度)を大きくすることができるため、燃料噴射ポンプ10から噴射される燃料の圧力をより高圧にすることが可能になる。また、油圧ピストン113に対する潤滑油圧力の作用面積を加速ピストン114に対する潤滑油圧力の作用面積よりも大きくする程、加速ピストン114の加速度及び移動速度をより大きくすることができ、さらに、両作用面積の比率を調節することによって、燃料噴射ポンプ10から噴射される燃料の圧力を調節することができる。
【0092】
よって、燃料噴射補助装置100は、カム30aの回転数が低くなるディーゼル機関1の回転数が低い場合でも、上述の潤滑油の油圧の作用によって、タペットローラ40aとプランジャ25とを直接連結する場合よりも燃料噴射ポンプ10から高圧の燃料を噴射させることを可能にする。また、燃料の使用量が少ないディーゼル機関1の低負荷時でも、燃料噴射補助装置100は、燃料噴射ポンプ10から高圧の燃料を噴射させることを可能にする。
【0093】
そして、ディーゼル機関1の低回転時及び低負荷時に燃料噴射ポンプ10から高圧の燃料を噴射させることによって、ディーゼル機関1における燃焼状態が向上し、排気ガスにおける黒煙及びPM排出量の低減が可能になる。さらに、排気ガスがクリーンになることによって、排気ガスの後処理装置の小型化及び耐久性向上、並びに後処理装置の製造コスト低減が可能になる。
【0094】
また、燃料噴射補助装置100は、油圧ピストン油圧室121に潤滑油を供給する潤滑油圧送配管131と、潤滑油圧送配管131に設けられて油圧ピストン油圧室121に供給される潤滑油の圧力を調節する絞り弁133と、加速ピストン油圧室123から潤滑油を排出する潤滑油戻り配管136とをさらに備える。そして、加速ピストン114は、移動することによって加速ピストン油圧室123を潤滑油戻り配管136に連通又は連通遮断する。
【0095】
これによって、絞り弁133を使用して油圧ピストン油圧室121に供給する潤滑油の油圧を調節することができる。特に、ディーゼル機関1の高回転時は、カム30aの回転数が高くなってプランジャ25の動作も高速になることによって、燃料噴射ポンプ10から噴射される燃料の圧力が上昇する。このような場合、絞り弁133によって油圧ピストン油圧室121内の油圧を低下させることで、燃料の圧力の過度な上昇を防ぐことが可能になる。また、加速ピストン114は、プランジャ25を上死点に向かって押し上げる際には加速ピストン油圧室123及び潤滑油戻り配管136の連通を遮断し、その後連通させるようにすることによって、必要な油圧の作用を潤滑油戻り配管136に逃がすことなく確実に受けた後、不要になった油圧を逃がすことができる。
【0096】
また、燃料噴射補助装置100は、油圧ピストン油圧室121から潤滑油圧送配管131に向かう潤滑油の流れを阻止する逆止弁132を備える。これによって、油圧ピストン113が油圧ピストン油圧室121の潤滑油を圧縮する際、潤滑油圧送配管131に油圧が逃げることを防ぎ、潤滑油を安定して圧縮することができる。
また、燃料噴射補助装置100において、加速ピストン114は、加速シリンダ112内で加速ピストン114を挟んで加速ピストン油圧室123と反対側に背圧室122を形成し、背圧室122は、潤滑油戻り配管136に連通する。これによって、背圧室122は、動作する加速ピストン114のクッションとして作用し、加速ピストン114が加速シリンダ112と衝突して損傷することを防ぐことが可能になる。
【0097】
また、燃料噴射補助装置100において、加速ピストン油圧室123及び油圧ピストン油圧室121は対向して設けられ、油圧ピストン113は、加速ピストン油圧室123内に突出し、加速ピストン114に当接可能に設けられている。これによって、タペットローラ40aがカムリフトされていない時、油圧ピストン113による油圧が作用していない加速ピストン114は、油圧ピストン113に当接しその位置を安定して保持することができる。また、タペットローラ40aがカムリフトされる際、加速ピストン114は、当接している油圧ピストン113による押圧と油圧とによって動作するため、より速度を増大させた動作を行うことができる。なお、加速ピストン114が、油圧ピストン油圧室121内に突出し、油圧ピストン113に当接可能となるように設けられてもよい。
【0098】
さらに、燃料噴射補助装置100において、加速ピストン114に当接可能に設けられた油圧ピストン113は、油圧ピストン113とタペットローラ40aとの距離を変更可能な噴射時期調整ボルト115を介して連結されている。これによって、油圧ピストン113及び加速ピストン114、さらには、プランジャ25のタペットローラ40aに対する位置を調節し、プランジャ25による燃料噴射時期を調節することができる。
【0099】
また、燃料噴射補助装置100において、作動油として、燃料噴射ポンプ10を使用するディーゼル機関1の潤滑油が用いられる。これによって、燃料噴射補助装置100への作動油の圧送ポンプを新たに設ける必要がないため、燃料噴射ポンプ10への燃料噴射補助装置100の取付に関する構造が簡易になり、燃料噴射ポンプ10における燃料噴射の高圧化が容易になる。
また、燃料噴射補助装置100において、潤滑油戻り配管136は、ディーゼル機関1のオイルポンプ1cの吸入側に連通し、潤滑油戻り配管136は、オイルポンプ1cから加速ピストン油圧室123に向かう潤滑油の流れを阻止する逆止弁137と、逆止弁137及びオイルポンプ1cの間に設けられた蓄圧器138とを有している。これによって、燃料噴射補助装置100から排出された潤滑油の脈流が逆止弁137及び蓄圧器138によって整流されるため、この潤滑油に含まれる残圧等によるエネルギーがオイルポンプ1cの駆動に利用され、省エネを図ることもできる。
【0100】
また、燃料噴射補助装置100は、アセンブリとして既存の燃料噴射ポンプに取り付けられる。これによって、既存の燃料ポンプに対して、タペットとプランジャとの間に燃料噴射補助装置100を組み付けるだけの簡単な改造で、燃料噴射圧の高圧化を図ることが可能になる。さらに、燃料噴射圧の高圧化のコストも低減することができ、特に設備投資費用対効果の大きい機関での効果が大きくなる。
【0101】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る燃料噴射補助装置200は、実施の形態1の燃料噴射補助装置100において、油圧ピストン油圧室121を第二潤滑油路111eに連通する油圧室油圧逃がし油路211を形成し、油圧室油圧逃がし油路211にこの油路を開放又は閉鎖する油圧制御弁221を設けたものである。
なお、以下の実施の形態において、前出した図における参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
【0102】
図16を参照すると、燃料噴射補助装置200では、油圧シリンダ111の内部を通る油圧室油圧逃がし油路211が形成されており、油圧室油圧逃がし油路211は、第一油圧シリンダ孔部111aの加速ピストン油圧室123側で開口すると共に第三油圧シリンダ孔部111cで開口する。
また、油圧シリンダ111の第三油圧シリンダ孔部111cの孔壁面と加速シリンダ112との間には、第二潤滑油路111eよりもプランジャ25側に、加速シリンダ112の外周面を取り囲むように環状の隙間212が形成されている。環状隙間212は、背圧絞り路112e、油圧室油圧逃がし油路211及び第二潤滑油路111eに連通する。よって、油圧ピストン油圧室121内の潤滑油は、油圧室油圧逃がし油路211、環状隙間212及び第二潤滑油路111eを通って、燃料噴射補助装置200の外部に流出することができる。ここで、油圧室油圧逃がし油路211、環状隙間212及び第二潤滑油路111eは、油圧逃がし路を構成している。
【0103】
また、油圧室油圧逃がし油路211は、その途中で屈曲しており、この屈曲部には、油圧室油圧逃がし油路211よりも内径が大きくなった円筒状の弁室222が形成されている。
弁室222内では、油圧室油圧逃がし油路211における油圧ピストン油圧室121から弁室222に向かう部位が、開口部(弁口)223aで開口し、弁口223aの周縁は弁座223を構成している。
【0104】
さらに、弁室222から油圧シリンダ111の外部に向かって延びる弁孔224が形成され、弁孔224には、弁体225が油圧シリンダ111の外部から孔軸方向にスライド自在に挿入されている。
弁体225は、先端がテーパー状に先細になった略円柱状の形状を有し、テーパー状の先端を弁室222内に挿入している。弁体225は、スライドすることによって、弁室222の内側から油圧室油圧逃がし油路211内に先端を挿入するようにして弁座223に当接し、弁口223aを閉鎖することができる。
【0105】
また、弁体225は、油圧シリンダ111の外部に設けられたアクチュエータ226に連結されており、アクチュエータ226の制御によって弁孔224内をスライド移動させられる。
ここで、弁室222、弁座223、弁口223a、弁孔224、弁体225及びアクチュエータ226は、油圧制御弁221を構成している。
【0106】
また、
図17を参照すると、油圧制御弁221は、各燃料噴射ポンプ10に設けられた燃料噴射補助装置200に設けられている。油圧制御弁221を通過した潤滑油は、燃料噴射補助装置200から流出すると、潤滑油戻り配管136に流入する。
【0107】
図16に戻り、燃料噴射補助装置200が、タペットローラ40aがカム30aの円筒部30aa上にありカム山部30ab上にかかる直前の
図5の状態Aと同じ状態から、タペットローラ40aがカム山部30abを乗り越え始める
図5の状態Bと同じ状態に遷移する際、油圧ピストン113によって油圧ピストン油圧室121内の潤滑油が圧縮されて逆止弁132が作動する。これにより、油圧ピストン油圧室121内の油圧が上昇し、上昇した油圧は、油圧通路113c及び加速ピストン油圧室123を介して加速ピストン114に作用する。
【0108】
このとき、アクチュエータ226が弁体225をスライドさせて弁口223aを開放している場合、油圧ピストン油圧室121内の潤滑油が、油圧室油圧逃がし油路211、環状隙間212及び第二潤滑油路111eを通って燃料噴射補助装置200の外部に流出し、油圧ピストン油圧室121内の油圧が逃げる。このため、油圧ピストン113の上昇に伴って加速ピストン114に作用する油圧の大きさ及び上昇率が、弁口223aの閉鎖時よりも低下する。よって、加速ピストン114及びプランジャ25の上昇方向の加速度が低くなるため、弁口223aの閉鎖時よりも燃料ポンプ10(
図2参照)からの燃料の噴射時期が遅くなる。
【0109】
さらに、弁座223から弁体225が離れる距離を大きくするほど、弁室222及び油圧室油圧逃がし油路211を通って流出する潤滑油量が増大し、油圧ピストン油圧室121内の油圧の大きさ及び上昇率が低くなるため、燃料の噴射時期が遅くなる。また、弁体225が先端まで全て弁孔224内に収まるまで移動すると、油圧室油圧逃がし油路211の流路断面積が最大になる。このとき、油圧ピストン油圧室121内の潤滑油の油圧は、加速ピストン114に対して上昇させる程まで作用せず、燃料ポンプ10(
図2参照)は、燃料噴射補助装置200を備えない場合と同様の燃料噴射時期で動作を行う。
【0110】
よって、燃料噴射補助装置200は、実施の形態1の燃料噴射補助装置100の状態に相当する弁口223aを閉鎖した状態では燃料の噴射時期が早くなり過ぎる場合などに対して、弁口223aを開放することによって、燃料の噴射時期を遅らせることができる。さらに、弁座223と弁体225との距離を調節して、油圧室油圧逃がし油路211における流路断面積を調節することによって、燃料の噴射時期を所望の時期に自在に制御することが可能になる。
【0111】
また、この発明の実施の形態2に係る燃料噴射補助装置200のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
さらに、実施の形態2における燃料噴射補助装置200では、上記の効果に加え、実施の形態1の燃料噴射補助装置100と同様な効果も得られる。
また、実施の形態2の燃料噴射補助装置200において、アクチュエータ226を用いて弁体225を弁孔224内でスライドさせていたが、これに限定されるものでなく、弁体225を手動でスライドさせるようにしてもよい。このとき、弁体225の外周面に雄ねじを形成し、弁孔224の内周面に雌ねじを形成し、弁体225を弁孔224にねじ嵌合させてもよい。これにより、手動で弁体225をねじ回転させれば、弁体225を弁孔224の孔軸方向の両方向に自在にスライドさせることができる。
【0112】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る燃料噴射補助装置300では、実施の形態1の燃料噴射補助装置100において、油圧ピストン油圧室121を油圧シリンダ111の外部に連通する作動油排出路321を油圧シリンダ111に形成し、作動油排出路321の出口の開放及び閉鎖をスプール型の制御弁323で制御するようにしている。さらに、実施の形態1の燃料噴射補助装置100において、加速シリンダ112の第二加速シリンダ孔部112bの近傍で背圧室122を第二潤滑油路111eに連通する共に背圧室122からの入口を絞る背圧絞り路112eを設けていたが、燃料噴射補助装置300では、その代わりに、プランジャ25が下死点の状態にあるときに第二加速シリンダ孔部112bよりも加速ピストン114の加速ピストンスカート部114a側に近い位置で背圧室122に開口し且つ絞りのない第一背圧逃がし路312eを設けている。
【0113】
図18を参照すると、燃料噴射補助装置300では、油圧シリンダ111において、油圧シリンダ111の第二油圧シリンダ孔部111bの近傍で第一油圧シリンダ孔部111aに開口すると共に油圧ピストン油圧室121を油圧シリンダ111の外部に連通する第一作動油排出路321が形成されている。さらに、油圧シリンダ111の内部には、第一作動油排出路321の出口が内周面で開口する有底円筒状の制御弁用弁孔323aが形成されている。ここで、第一作動油排出路321は、油圧弁油圧室油排出路を構成している。そして、弁孔323aは、スプール型の制御弁323の弁室を形成する。
【0114】
制御弁323は、油圧シリンダ111と一体に設けられており、弁孔323a内に円筒軸方向に摺動可能に設けられた略円柱状のスプール弁体323bと、スプール弁体323bを摺動させる電動式アクチュエータ323cとを有している。アクチュエータ323cは、弁孔323aの開口端に配置され、伸縮自在なロッドを有しており、そのロッドを介してスプール弁体323bの端部と連結されている。アクチュエータ323cは、通電されるとそのロッドを弁孔323a内に向かって伸長させ、通電停止されるとそのロッドを伸縮自在なフリーな状態とする。
【0115】
スプール弁体323bは、弁孔323aの内周面に整合する円筒状の外周面323b1を有しているが、外周面323b1の中央付近に、周方向に沿って形成された環状の周溝323b2を有している。これにより、弁孔323aの内周面と周溝323b2の表面との間には、略円筒状の弁室323dが形成される。また、スプール弁体323bにおけるアクチュエータ323cと反対側の端部には、円筒軸方向に窪んだ凹部323b3が形成されている。そして、凹部323b3内には、弁戻りバネ323eが設けられており、弁戻りバネ323eは、弁孔323aの底部及び凹部323b3の底部に当接し、スプール弁体323bに対して、アクチュエータ323cに向かって押圧する弾性力を付与している。
【0116】
また、弁孔323aの内周面では、アクチュエータ323c側の位置で第一作動油排出路321が開口し、第一作動油排出路321の開口よりも弁戻りバネ323e側にこの開口から間隔をあけた位置に、第二作動油排出路322が開口している。そして、第二作動油排出路322は、油圧シリンダ111内を通り、弁孔323aを油圧シリンダ111の外部に連通する。ここで、第二作動油排出路322は、油圧弁油圧室油排出路を構成している。
【0117】
よって、アクチュエータ323cが非通電の時、スプール弁体323bは、弁戻りバネ323eの弾性力によってアクチュエータ323cに向かって摺動させられ、スプール弁体323bの周溝323b2が形成する弁室323dは、第一作動油排出路321を第二作動油排出路322に連通する。一方、アクチュエータ323cが通電されると、スプール弁体323bは、アクチュエータ323cによって弁戻りバネ323eに向かってこれを押し縮めるようにして摺動させられ、第一作動油排出路321を外周面323b1で閉鎖する。これにより、弁室323dを介した第一作動油排出路321及び第二作動油排出路322の連通が遮断される。
【0118】
さらに、アクチュエータ323cの通電時、スプール弁体323bを摺動させて、弁室323d(周溝323b2)と第一作動油排出路321及び第二作動油排出路322との間の連通流路断面積を調節することによって、第一作動油排出路321から第二作動油排出路322に流れる潤滑油の流量を調節することができる。
【0119】
また、加速シリンダ112は、加速ピストン114と共に背圧室122を形成する略円筒状の第一加速シリンダ部材312aと、第一加速シリンダ部材312a及びロワースプリングシート28の間で挟まれてロワースプリングシート28を支持する略円板状の第二加速シリンダ部材312bとによって、構成されている。
第一加速シリンダ部材312aは、実施の形態1の加速シリンダ112と同様に、第一加速シリンダ孔部112aと、第二加速シリンダ孔部112bの一部とを形成している。そして、第一加速シリンダ部材312aにおける第一加速シリンダ孔部112aの周壁を構成する部位が、油圧シリンダ111の第三油圧シリンダ孔部111cの内側に嵌合している。
【0120】
第二加速シリンダ部材312bは、第一加速シリンダ部材312aのロワースプリングシート28側の端部に嵌合し、第一加速シリンダ部材312aと共に第二加速シリンダ孔部112bを形成している。また、第二加速シリンダ部材312bは、第一加速シリンダ部材312aと反対側に形成された第三加速シリンダ孔部112cでロワースプリングシート28と嵌合している。そして、第二加速シリンダ部材312bは、ロワースプリングシート28及び第一加速シリンダ部材312aとの間に燃料排出路112fを形成せずに、これらと密着している。
【0121】
また、第二加速シリンダ孔部112bの内周面における第一加速シリンダ部材312aと第二加速シリンダ部材312bとの境界部分には、環状のシール材315が埋め込まれている。シール材315は、加速ピストン突起部114bと第一加速シリンダ部材312a及び第二加速シリンダ部材312bとの間、並びに、第一加速シリンダ部材312aと第二加速シリンダ部材312bとの間を気密に封止する。
また、第一加速シリンダ部材312aの第一加速シリンダ孔部112aには、実施の形態1の場合と同様にして、加速シリンダ油排出路112dが、第一加速シリンダ孔部112aから放射状に複数形成されている。複数の加速シリンダ油排出路112dは、第一加速シリンダ部材312aの外周に形成された周溝を介して互いに連通すると共に、周溝を介して第二潤滑油路111eに連通する。
【0122】
さらに、第一加速シリンダ部材312aの第一加速シリンダ孔部112aには、第二加速シリンダ孔部112bがある背圧室122の頂部表面122aと加速シリンダ油排出路112dとの間に、絞りのない第一背圧逃がし路312eが、第一加速シリンダ孔部112aから放射状に延びるように複数形成されている。複数の第一背圧逃がし路312eは、第一加速シリンダ部材312aの外周に形成された周溝312e1を介して互いに連通し、さらに、油圧シリンダ111に形成された第二背圧逃がし路311eを介して、油圧シリンダ111の外部に連通する。なお、複数の第一背圧逃がし路312eは、
図18に示すようにプランジャ25、加速ピストン114及び油圧ピストン113が下死点にある状態で、背圧室122の頂部表面122aよりも加速ピストンスカート部114a側に近い位置で第一加速シリンダ孔部112a、つまり背圧室122に開口している。さらに、第二背圧逃がし路311eは、外気に連通しており、背圧室122は、第二背圧逃がし路311e及び第一背圧逃がし路312eを介して外部空気が導入されるように構成されている。ここで、第一背圧逃がし路312e及び第二背圧逃がし路311eは、背圧室連通路を構成している。
また、燃料噴射補助装置300では、絞り弁133が設けられておらず、油圧シリンダ111の第一潤滑油路111dは、逆止弁132を介して潤滑油圧送配管131に連通する。
【0123】
上述の構成を備える燃料噴射補助装置300において、
図19に示す油圧ピストン113及び加速ピストン114がカム30a側に最も近い位置となる下死点にある状態Aでは、制御弁323は、アクチュエータ323cを通電停止させており、それにより、第一作動油排出路321を第二作動油排出路322に連通している。そして、油圧ピストン油圧室121内には、逆止弁132を介して潤滑油が圧送される。さらに、加速ピストン114の加速ピストンスカート部114aは、加速シリンダ112の加速シリンダ油排出路112dを閉鎖し、第一背圧逃がし路312eは、容積が最大となっている背圧室122に連通している。
【0124】
次に、カム30aが回転し、
図20に示すタペットローラ40aがカム山部30ab上に乗り始める状態Bの燃料噴射補助装置300では、アクチュエータ323cが通電されて、制御弁323のスプール弁体323bが、第一作動油排出路321及び第二作動油排出路322の連通を遮断する。これにより、逆止弁132を介して圧送される潤滑油によって油圧ピストン油圧室121内の油圧が上昇し、上昇した油圧は、油圧ピストン113内の油圧通路113c及び加速ピストン油圧室123を通じて加速ピストン114の加速ピストンスカート部114aを下方から上方に向かって押圧する。押圧された加速ピストン114は、背圧室122の容積を減少させつつ、油圧ピストン113から離れる方向にプランジャ25(
図18参照)と共に加速度的に上昇する。
【0125】
加速ピストン114が上昇する際、背圧室122が第一背圧逃がし路312eと連通している間は、背圧室122内部の流体が上昇に合わせて十分に排出されるため、加速ピストン114は、背圧室122の内圧による影響をほとんど受けることなく上昇する。このため、加速ピストン114の上昇動作初期の加速度が素早く立ち上がると共に大きくなる。そして、上昇する加速ピストン114の加速ピストンスカート部114aが第一背圧逃がし路312eの開口を塞ぐと、背圧室122は、外部に連通せずに密閉されるため、加速ピストンスカート部114aに押圧されることでその内圧を上昇させ、加速ピストン114に対してクッションのように作用する。そして、背圧室122の上昇する内圧は、上昇する加速ピストン114に対して抵抗となって上昇動作と反対方向の加速度を与えるため、加速ピストン114の上昇速度を次第に低下させて停止させる。このときの燃料噴射補助装置300は、背圧室122の容積が最小となっている
図21に示す状態Cとなる。この状態Cでは、加速ピストン油圧室123が既に加速シリンダ油排出路112dに連通しており、加速ピストン油圧室123内に供給される潤滑油が外部に排出される状態となっている。これにより、プランジャ25(
図18参照)及び加速ピストン114の自重等の重力の作用、プランジャスプリング29(
図18参照)の付勢力、並びに背圧室122の内圧の作用などによる下方への押圧力と、加速ピストン油圧室123内に圧送される潤滑油の作用による上方への押圧力とが釣り合い、加速ピストン114は速度0の状態を維持する。その後は、実施の形態1の燃料噴射補助装置100について状態D、E及びFで説明したように、加速ピストン114は、上昇する油圧ピストン113と一体となって動作する。
【0126】
上述したように、燃料噴射補助装置300では、タペットローラ40aがカム山部30ab上に乗り始める加速ピストン114の上昇開始時には、上昇方向の加速度が即座に立ち上がって加速ピストン114が即座に上昇動作を開始する。そして、加速ピストン114の加速ピストンスカート部114aが上死点つまり背圧室122の頂部表面122aに近づくと、動作方向と反対方向に作用する背圧室122の内圧がクッションのように作用しつつ容積を減少させて加速ピストン114の速度を0に収束させ、加速ピストン114と頂部表面122aとの急激な衝突が防がれる。
【0127】
さらに、加速ピストン114の上昇開始時、背圧室122の内圧は、加速ピストン114にほとんど作用せず、油圧ピストン113及びタペット40を駆動するカム30aの動作に与える影響もほとんどない。このため、カム30aの駆動機構における負荷が低減され、燃費の向上につながる。また、背圧室122に内圧が発生する期間も加速ピストン114の上昇行程の一部であるため、これによってもカム30aの駆動機構への負荷が低減される。
【0128】
さらに、燃料噴射補助装置300では、制御弁323が第一作動油排出路321及び第二作動油排出路322の連通を遮断するタイミングを調節することによって、加速ピストン114の上昇開始時期を調節することができる。また、制御弁323が第一作動油排出路321及び第二作動油排出路322の連通流路断面積を徐々に小さくするようにして互いの排出路の連通の遮断を制御することによって、油圧ピストン油圧室121内の油圧の上昇速度を制御することができ、それによって、加速ピストン114の上昇開始時期及び上昇動作を調節することができる。
また、燃料噴射補助装置300における状態Cの後、制御弁323を開放して第一作動油排出路321を第二作動油排出路322に連通させると、油圧ピストン油圧室121内の油圧の低下が促進されるため、加速ピストン114に作用する上下の押圧力が釣り合うようにする調節を制御することができる。つまり、制御弁323は、加速ピストン114の動作の制御にも用いることができる。
【0129】
また、この発明の実施の形態3に係る燃料噴射補助装置300のその他の構成及び動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
さらに、実施の形態3における燃料噴射補助装置300では、上記の効果に加え、実施の形態1の燃料噴射補助装置100と同様な効果も得られる。
【0130】
また、実施の形態3の燃料噴射補助装置300において、第一背圧逃がし路312eは、プランジャ25、加速ピストン114及び油圧ピストン113が下死点にある状態で、背圧室122の頂部表面122aよりも加速ピストンスカート部114a側に近い位置で背圧室122に開口していたが、これに限定されるものでない。第一背圧逃がし路312eが背圧室122に開口する位置は、背圧室122に内圧を発生させるタイミングに応じて変更することができる。
また、実施の形態3の燃料噴射補助装置300において、制御弁323は、スプール弁式に限定されるものでなく、開閉弁又は流量調整弁のいかなる弁が用いられてもよい。
【0131】
また、実施の形態1〜3の燃料噴射補助装置100〜300は、既存の燃料噴射ポンプに組み付けて改造する構成であったが、これに限定されるものでなく、燃料噴射ポンプの製造時に一体に備えつけられるものであってもよい。つまり、燃料噴射補助装置100〜300は、燃料噴射ポンプの後付けの部品ではなく、製造時の燃料噴射ポンプの構成部品としてもよい。
また、実施の形態1〜3の燃料噴射ポンプ10は、タペットをローラ式としていたが、これに限定されるものでなくシム式であってもよい。
また、実施の形態1〜3の燃料噴射補助装置100〜300では、油圧通路113cは油圧ピストン113に設けられていたが、これに限定されるものでなく、油圧シリンダ111を貫通する通路として設けられてもよい。
また、本発明による燃料噴射補助装置は、実施の形態1〜3の燃料噴射補助装置100〜300に含まれる構成を組み合わせて構成されてもよい。