特許第5984315号(P5984315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984315
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】開口部のガスの流動制限
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/06 20060101AFI20160823BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   H01J49/06
   G01N27/62 E
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-513255(P2014-513255)
(86)(22)【出願日】2012年6月1日
(65)【公表番号】特表2014-517475(P2014-517475A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】GB2012051254
(87)【国際公開番号】WO2012164309
(87)【国際公開日】20121206
【審査請求日】2015年5月19日
(31)【優先権主張番号】1109383.8
(32)【優先日】2011年6月3日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/497,300
(32)【優先日】2011年6月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504142097
【氏名又は名称】マイクロマス ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ケニー, ダニエル ジェームズ
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/031179(WO,A1)
【文献】 米国特許第04740692(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0102221(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/06
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用中異なる圧力で保持され、両方のチャンバが真空チャンバを有し、前記チャンバを前記異なる圧力で保持するため真空ポンプに接合され、2つの前記チャンバが、前記チャンバのうちの1つから他の前記チャンバにイオンを伝送するため穴により相互接続される2つのチャンバと、
使用中前記穴および前記チャンバ間を通るガス流量を変化させるように、前記穴の領域を変化させる第1の装置と、
前記穴へおよび前記穴を通してイオンを発するイオン貯蔵装置であって、前記穴が相対的に広い領域であるとき、イオンが前記穴を通して発せられ、前記穴が相対的に小さい領域である、または閉鎖されているとき、イオンがイオン貯蔵装置内に蓄積され、前記穴を通して発せられないように前記穴と同期されるイオン貯蔵装置と
を備える、質量スペクトロメータ。
【請求項2】
前記穴が広い領域を有するとき、前記穴へ、および前記穴を通してイオンが伝送され、前記穴が相対的に小さい領域を有するとき、前記穴への、および前記穴を通したイオンの伝送が妨げられるように前記質量スペクトロメータが構成される、請求項1に記載の質量スペクトロメータ。
【請求項3】
前記穴の領域が広いとき前記チャンバ間の大量のガス流量を可能にし、前記穴の領域が小さいとき前記チャンバ間の少量のガス流量を可能にする、請求項1または2に記載の質量スペクトロメータ。
【請求項4】
第1の時間に前記チャンバ間のガスの流動を可能にするように前記穴の領域が設定され、第2の時間に前記チャンバ間のガスの通過を実質的に妨げるよう、前記穴が閉鎖または縮小されるように、前記穴の領域を変化させるよう前記質量スペクトロメータが構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の質量スペクトロメータ。
【請求項5】
前記穴の領域が、繰り返し拡大および縮小される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の質量スペクトロメータ。
【請求項6】
前記穴の領域が、連続したまたは周期的な方法で繰り返し拡大および縮小される、請求項5に記載の質量スペクトロメータ。
【請求項7】
イオンが前記穴を通しておよび前記他のチャンバ内へ通過するように、イオンを前記穴へ誘導または集束するよう用意される、前記チャンバのうちの1つの中にイオンガイドをさらに備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の質量スペクトロメータ。
【請求項8】
前記2つのチャンバが壁によって離隔され、前記穴が前記壁内にオリフィスを備える、請求項1〜7のいずれか一項に記載の質量スペクトロメータ。
【請求項9】
前記壁が通常均一の厚さを有するが、その一部で減少した厚さを有し、前記オリフィスが前記減少した厚さを有する前記壁の前記一部を貫通して設けられる、請求項8に記載の質量スペクトロメータ。
【請求項10】
前記穴が絞りによって提供され、前記絞り内の前記穴が直径において変動可能である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の質量スペクトロメータ。
【請求項11】
前記穴が変形可能な導管により設けられ、前記導管は前記導管を通る前記穴の領域を縮小するように圧縮可能または変形可能である、請求項1〜のいずれか一項に記載の質量スペクトロメータ。
【請求項12】
穴およびチャンバ間を通るガス流量を変化させるように、前記穴の領域を変化させるステップと、
前記穴へおよび前記穴を通してイオンを発するイオン貯蔵装置を提供するステップと、
前記穴が相対的に広い領域であるとき、前記穴を通してイオンを輸送するステップと、
前記穴が相対的に小さい領域である、または閉鎖されているとき、イオンを前記イオン貯蔵装置内に蓄積するステップと、を含む、
両方の前記チャンバが、真空チャンバを有し、前記チャンバを異なる圧力で保持するため真空ポンプに接合され、2つの前記チャンバが、前記チャンバのうちの1つから他の前記チャンバにイオンを伝送するため前記穴により相互接続される、異なる圧力で保持される質量スペクトロメータ内の2つのチャンバの間のガスの流動を制御する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量スペクトロメータ内の2つのチャンバの間のガスの流動を制御する機器および方法に関する。実施形態によると、1つまたは両方のチャンバは、真空チャンバを含んでもよい。
【0002】
本出願は、2011年6月15日出願の米国仮特許出願番号第US61/497,300号、および2011年6月3日出願の英国特許出願第1109383.8号の優先権および受益を主張する。これらの出願の全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
質量スペクトロメータは、異なる真空レベルの異なる区域またはチャンバをしばしば有する。例えば、質量スペクトロメータは、約1x10−5mbarの圧力でチャンバ内に存在し、約1x10−3mbarから約1x10−2mbarの圧力で衝突セルが続く、四重極質量フィルタ(”QMF”)を備えてもよい。これに順に、1x10−6mbar未満の圧力で作動されうる飛行時間型(”TOF”)質量分析計が続く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの異なる区域の間に、通常、穴または差動ポンピング開口部があり、これは1つのチャンバから他へのガスの流動を制限するようはたらき、イオンが質量スペクトロメータを移動する場合、これを通過しなければならない。イオンがオリフィスを通過するときイオン伝送の損失を最小化するように、これらの穴は一般的にできるだけ薄く、通常0.5mmから1.0mmで製造される。穴が厚いほど、いくばくかの量のイオンがオリフィスを通過するとき穴の内壁に当たり失われる可能性が増える。
【0005】
穴のサイズ(すなわち円形の穴の直径またはスリットの長さ)を小さくすると、それを通るガスの流量が減り、それが次に異なる区域で所望の圧力を維持するのに必要とされる真空ポンピングの量を減らす。真空チャンバ間の圧力差が大きく、よってガスの流動が多い、または小型の軽量または持ち運び可能な器具が所望される状況では、これは特に重要である。しかし、オリフィスのサイズの縮小は、それを通るイオンの集束をより困難にする。これはイオンがもはやオリフィスを通過できない状況につながりかねず、それが今度は伝送を減少させ、よって質量スペクトロメータの感度を減少させる。
【0006】
大気から質量スペクトロメータの最初の真空チャンバ内へのガスの流量を減少させるためのバルブの使用が公知である。
【0007】
質量スペクトロメータおよび質量分析の方法の向上をもたらすことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様によると、使用中異なる圧力で保持され、チャンバのうちの1つから他のチャンバにイオンを伝送するため穴により相互接続される2つのチャンバと、使用中穴を通る流量およびチャンバ間の流量を変化させるように、穴の領域を変化させる手段または第1の装置とを備える、質量スペクトロメータが提供される。
【0009】
少なくとも1つまたは両方のチャンバは、チャンバを異なる圧力で保持するため、真空ポンプに接合されることが望ましい。1つまたは両方のチャンバは、真空チャンバを含むことが望ましい。しかし、1つまたは両方のチャンバが真空チャンバ内にハウジングを有する、他の望ましさがより少ない実施形態が考えられる。例えば、本発明の実施形態による装置を、イオン移動度スペクトロメータへの入口、および/または真空チャンバ内に設置されたガス衝突セルまたは反応セルに設置してもよい。
【0010】
望ましい実施形態によると、穴は2つの真空チャンバの間に差動ポンピング開口部を備える。実施形態によると、穴は2つのチャンバの間のガス制限開口部を備える。
【0011】
質量スペクトロメータは、穴が広い領域を有するとき、穴へ、および穴を通してイオンが伝送され、穴が相対的に小さい領域を有するとき、穴への、および穴を通したイオンの伝送が妨げられるように構成されるのが望ましい。
【0012】
穴の領域が広いときチャンバ間の大量のガス流量を可能にするのが望ましく、穴の領域が小さいときチャンバ間の少量のガス流量を可能にするのが望ましい。
【0013】
第1の時間にチャンバ間のガスの流動を可能にするように望ましくは穴の領域が設定され、第2の時間にチャンバ間のガスの通過を実質的に妨げまたは減少させるよう、穴が望ましくは閉鎖または縮小されるように、穴の領域を変化させるよう構成されるのが望ましい。
【0014】
穴の領域が、繰り返し拡大および縮小または変化させられるのが望ましい。
【0015】
穴の領域が、連続したまたは周期的な方法で繰り返し拡大および縮小または変化させられるのが望ましい。
【0016】
質量スペクトロメータが、イオンが穴を通しておよび他のチャンバ内へ通過するように、望ましくはイオンを穴へ誘導または集束するよう用意される、チャンバのうちの1つの中のイオンガイドをさらに備えるのが望ましい。
【0017】
質量スペクトロメータが、穴へおよび穴を通してイオンを発する第2の装置を備えることが望ましい。第2の装置は、穴が相対的に広い領域であるとき、イオンが穴を通して発せられ、穴が相対的に広い領域である、または閉鎖されているとき、イオンが望ましくは穴を通して発せられないように穴と同期されるのが望ましい。
【0018】
第2の装置は、パルスイオン源またはイオントラップを備えるのが望ましい。
【0019】
2つのチャンバは、壁によって離隔されるのが望ましく、穴が壁内にオリフィスを備えるのが望ましい。
【0020】
壁は通常、均一の厚さを有するのが望ましいが、その一部で減少した厚さを有するのが望ましく、オリフィスが前記減少した厚さを有する壁の一部を貫通して設けられるのが望ましい。
【0021】
穴がチャンバ間の壁内にオリフィスを備えるのが望ましく、質量スペクトロメータがさらにオリフィス閉鎖部材を備えるのが望ましく、量を変化させることによりオリフィスを覆い、従って変化する量に対応することにより穴の領域を変更するように、オリフィス閉鎖部材がオリフィスに対して移動可能である。
【0022】
オリフィス閉鎖部材は、プレートにより形成されるのが望ましい。
【0023】
オリフィス閉鎖部材が少なくとも1つの開口部および非開口部分を備えるのが望ましく、穴の領域を拡大するように開口部が相対的によりオリフィスと整列される位置と、穴の領域を縮小するように開口部がよりオリフィスと整列されない異なる位置との間を移動可能であるように、オリフィス閉鎖部材が用意および適合される。
【0024】
オリフィス閉鎖部材が少なくとも1つの開口部および非開口部分を備えるのが望ましく、穴を閉鎖するように非開口部分がオリフィスを覆う位置と、ガスおよび/またはイオンが穴を通過できるように、開口部がオリフィスと少なくとも部分的に整列される異なる位置との間を移動可能であるように、オリフィス閉鎖部材が用意および適合される。
【0025】
オリフィス閉鎖部材は、位置へ回転されまたは回転可能であることが望ましい。実施形態によると、位置の間を移動するように、オリフィス閉鎖部材を連続したまたは段階的方法で軸の周辺を回転してもよい。
【0026】
他の実施形態によると、穴が絞りによって提供され、絞り内の穴が直径において変動可能である。
【0027】
他の実施形態によると、穴が変形可能な導管により設けられ、導管は導管を通る穴の領域を縮小するように圧縮可能または変形可能である。
【0028】
本発明の態様によると、穴およびチャンバ間を通るガス流量を変化させるように、穴の領域を変化させるステップを含む、2つのチャンバが、チャンバのうちの1つから他のチャンバにイオンを伝送するため穴により相互接続される、異なる圧力で保持される質量スペクトロメータ内の2つのチャンバの間のガスの流動を制御する方法が提供される。
【0029】
本発明は、前述の方法を含む質量分析方法も提供する。
【0030】
実施形態によると、質量スペクトロメータはさらに、下記を有してもよい。(a)(i)エレクトロスプレーイオン化(”ESI”)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(”APPI”)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(”APCI”)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(”MALDI”)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(”LDI”)イオン源、(vi)大気圧イオン化(”API”)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(”DIOS”)イオン源、(viii)電子衝撃(”El”)イオン源、(ix)化学イオン化(”CI”)イオン源、(x)電界イオン化(”Fl”)イオン源、(xi)電界脱離(”FD”)イオン源、(xii)誘導結合プラズマプラズマ(”ICP”)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(”FAB”)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(”LSIMS”)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(”DESI”)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射線イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源、(xviii)サーモスプレーイオン源、(xix)大気サンプリンググロー放電イオン化(”ASGDI”)イオン源、および(xx)グロー放電(”GD”)イオン源からなる群から選択されるイオン源、および/または(b)1つまたは複数の連続したまたはパルスイオン源、および/または(c)1つまたは複数のイオンガイド、および/または(d)1つまたは複数のイオン移動分離装置、および/または1つまたは複数の電界非対称イオン移動度スペクトロメータ装置、および/または(e)1つまたは複数のイオントラップ、または1つまたは複数のイオントラッピング区域、および/または(f)(i)衝突誘起解離(”CID”)断片化装置、(ii)表面誘起解離(”SID”)断片化装置、(iii)電子移動解離(”ETD”)断片化装置、(iv)電子捕捉解離(”ECD”)断片化装置、(v)電子衝突または電子衝撃解離断片化装置、
(vi)光誘起解離(”PID”)断片化装置、(vii)レーザ誘起解離断片化装置、(viii)赤外線誘起解離装置、(ix)紫外線誘起解離装置、(x)ノズルスキマーインタフェース断片化装置、(xi)インソース断片化装置、(xii)インソース衝突誘起解離断片化装置、(xiii)熱または温度源断片化装置、(xiv)電界誘起断片化装置、(xv)磁界誘起断片化装置、(xvi)酵素切断または酵素分解断片化装置、(xvii)イオン−イオン反応断片化装置、(xviii)イオン−分子反応断片化装置、(xix)イオン−原子反応断片化装置、(xx)イオン−準安定イオン反応断片化装置、(xxi)イオン−準安定分子反応断片化装置、(xxii)イオン−準安定原子反応断片化装置、(xxiii)付加イオンまたは生成物イオンを形成するためのイオン反応のイオン−イオン反応装置、(xxiv)付加イオンまたは生成物イオンを形成するためのイオン反応のイオン−分子反応装置、(xxv)付加イオンまたは生成物イオンを形成するためのイオン反応のイオン−原子反応装置、(xxvi)付加イオンまたは生成物イオンを形成するためのイオン反応のイオン−準安定イオン反応装置、(xxvii)付加イオンまたは生成物イオンを形成するためのイオン反応のイオン−準安定分子反応装置、(xxviii)付加イオンまたは生成物イオンを形成するためのイオン反応のイオン−準安定原子反応装置、および(xxix)電子イオン化解離(”EID”)断片化装置からなる群から選択される1つまたは複数の衝突セル、断片化セル、または反応セル、および/または(g)(i)四重極質量分析計、(ii)2Dまたは直線状四重極質量分析計、(iii)ポールまたは3D四重極質量分析計、(iv)ペニングトラップ質量分析計、(v)イオントラップ質量分析計、(vi)磁場型質量分析計、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(”ICR”)質量分析計、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(”FTICR”)質量分析計、(ix)静電気またはオービトラップ質量分析計、(x)フーリエ変換静電気またはオービトラップ質量分析計、(xi)フーリエ変換質量分析計、(xii)飛行時間型質量分析計、(xiii)直交加速飛行時間型質量分析計、および(xiv)線形加速飛行時間型質量分析計からなる群から選択される質量分析計、および/または(h)1つまたは複数のエネルギー分析器または静電エネルギー分析器、および/または(i)1つまたは複数のイオン検出器、および/または(j)(i)四重極質量フィルタ、(ii)2Dまたは直線状四重極イオントラップ、(iii)ポールまたは3D四重極イオントラップ、(iv)ぺニングイオントラップ、(v)イオントラップ、(vi)磁場型質量フィルタ、(vii)飛行時間型質量フィルタ、および(viii)ウイーンフィルタからなる群から選択される1つまたは複数の質量フィルタ、および/または(k)イオンパルス化装置またはイオンゲート、および/または(I)実質的に連続したイオンビームをパルスイオンビームに変換する装置。
【0031】
質量スペクトロメータはさらに、下記のいずれかを有してもよい。(i)外側の樽状の電極および同軸の内側のスピンドル状の電極を備え、動作の第1の様式でイオンがCトラップに伝送され、それからオービトラップ(RTM)質量分析計に注入され、動作の第2の様式でイオンがCトラップに伝送され、それから衝突セルまたは電子移動解離装置に伝送され、少なくともいくばくかの量のイオンが断片イオンに断片化され、断片イオンがそれからオービトラップ(RTM)質量分析計に注入される前にCトラップに伝送される、Cトラップおよびオービトラップ(RTM)質量分析計、および/または(ii)複数の電極を備え、それぞれが開口部を有し、それを通して使用中イオンが伝送され、イオンパスの長さに沿って電極の離間が増加し、イオンガイドの上流区域内の電極の開口部が第1の直径を有し、イオンガイドの下流区域内の電極の開口部が第1の直径より小さい第2の直径を有し、使用中ACまたはRF電圧の逆相が連続する電極に印加される、積層リングイオンガイド。
【0032】
質量スペクトロメータの2つ以上の真空区域を離隔する穴を生成し、穴の物理的寸法が時間と共に変化されうるのが、望ましい実施形態の目的である。これは、穴を通る時間平均ガス流量の減少を可能にする。
【0033】
望ましい実施形態の付加的な特徴は、可能な限り薄い穴を提供することである。
【0034】
本発明の望ましい実施形態で、イオントラップのようなイオン貯蔵装置が穴の上流に設けられることが望ましい。イオン貯蔵装置を、穴が開放されているまたは最大寸法のときに穴を通してイオンを輸送し、穴が閉鎖されているまたは寸法が縮小したときにイオンを蓄積、またはそうでなければ通過を防ぐよう使用してもよい。
【0035】
例示のみの目的で、種々の本発明の実施形態を、例示の目的のための他の取り合わせと共に以下の添付の図を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1A】質量スペクトロメータの従来のスキマー電極の穴の断面を示す。
図1B】質量スペクトロメータの従来の差動ポンピング開口部の穴の断面を示す。
図1C】質量スペクトロメータの従来のサンプリングオリフィスの開口部の断面を示す。
図2A】穴が薄いオリフィスプレートを有し、穴の領域が短いスロットがある回転ディスクを用いて変化し、ディスク内のスロットが穴と整列される本発明の実施形態を示す。
図2B】穴が薄いオリフィスプレートを有し、穴の領域が短いスロットがある回転ディスクを用いて変化し、ディスク内のスロットが穴と整列されない本発明の実施形態を示す。
図3A】本発明の実施形態による、使用されうる円形の穴を有する回転ディスクの例を示す。
図3B】本発明の実施形態による、使用されうる短いスロットを有する回転ディスクの例を示す。
図3C】本発明の実施形態による、使用されうる長いスロットを有する回転ディスクの例を示す。
図3D】本発明の実施形態による、使用されうる複数のスロットを有する回転ディスクの例を示す。
図4】望ましい装置が2つの真空チャンバの間に差動ポンピング開口部を形成し、イオントラップが上流の真空チャンバ内に設置され、四重極ロッドセットが下流の真空チャンバ内に設置される実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
種々の異なるタイプの従来のイオン吸込口を、図1A図1Cを参照して簡潔に記載する。図1Aは、真空ハウジング2に据え付けられた従来のスキマー電極1の断面を示す。図1Bは、真空ハウジング2に据え付けられた従来の差動ポンピング開口部3を示す。図1Cは、真空ハウジング2に据え付けられた従来のサンプリングオリフィス4を示す。これらの開口部のコンダクタンス、および従って開口部を通るガスの流量は、その半径ならびに深さ/厚さに依存する。
【0038】
本発明の望ましい実施形態を記載する。
【0039】
本発明の望ましい実施形態によれば、図2Aに示されるようにオリフィス5aを有する薄いプレート5を設けることが望ましい。1つのチャンバから他のチャンバへのガスの流動のみがオリフィス5aを経由して薄いプレート5内にもたらされるように、薄いプレート5は、真空チャンバ6に向かって据え付けることが望ましい。オリフィス5aが真空チャンバ内のハウジングへの入口に設けられる望ましさが少ない実施形態が考えられるが、オリフィス5aは差動ポンピング開口部を備えることが望ましい。例えば、オリフィス5aをイオン移動度スペクトロメータへの入口、または真空チャンバ内に設置された衝突ガスセルに設けてもよい。従って、オリフィス5aが2つの真空チャンバを離隔し、それぞれの真空チャンバが真空ポンプでポンピングされることは重要ではない。
【0040】
スピン/回転ディスク7を、薄いプレート5および真空チャンバ6を備える構体と連通して設けることが望ましい。スピン/回転ディスク7は、スロットの形態が望ましい短い開口部7aを有することが望ましい。
【0041】
図2Aは、オリフィス5aにより形成された差動ポンピング開口部を通してイオンが伝送されうるように、回転ディスク7内のスロット7aが薄いプレート5内のオリフィス5aと整列した時点の望ましい実施形態を示す。
【0042】
図2Bは、薄いプレート5内のオリフィス5aが回転ディスク7の非開口部分により閉鎖された時点の望ましい実施形態を示す。回転ディスク7内のスロット7aと薄いプレート5内のオリフィス5aが実質的に整列するときのみ、ガスが1つのチャンバから次へオリフィス5aを通過可能であることが明らかである。
【0043】
薄いプレート5内のオリフィス5aが回転ディスク7により閉鎖されるとき、薄いプレート5内のオリフィス5aを通したガスの流動は不可能である。従って、開口ディスク7を回転することにより、チャンバ間のオリフィス5aを通る平均ガス流量を減少させ、よって真空ポンプの必要を減らすことが可能である。
【0044】
開口ディスク7が図2Aおよび図2Bに示された以外の形状を取りうる、種々の実施形態が考えられる。開口ディスク7は、図3Aから図3Dに示されるような形状を取ってもよい。図3Aでは、ディスク7の開口部7aは小さい穴の形状である。図3Bでは、ディスク7の開口部7aは短いスロットの形状である。図3Cでは、ディスク7の開口部7aは長いスロットの形状である。図3Dでは、複数の開口部7aが複数のスロットの形状でディスク7内に設けられる。
【0045】
本発明の実施形態によると、回転ディスク7は平坦でなくてもよい。
【0046】
本発明の実施形態によると、回転ディスク7は、付加的におよび/または代替的に突起部を有してもよい。例えば実施形態によれば、ディスク7は、(ディスク7の開口部の代わりに)それに据え付けられた短いチューブまたは他のタイプの開口部を有してもよい。
【0047】
図4は、第1の真空チャンバ8および第2の真空チャンバ9を備える質量スペクトロメータの区域を表す本発明の実施形態を示す。直線状イオントラップ10が第1の真空チャンバ8内に設置され、四重極質量フィルタ11が第2の真空チャンバ9内に設置される。
【0048】
2つの真空チャンバ8、9間の差動ポンピング開口部は、2つの真空チャンバ8、9間でオリフィス5aを有する薄いプレート5により提供されるのが望ましい。開口部7aを有する回転ディスク7は、薄いプレート5に近接して設けられるのが望ましい。2つの真空チャンバ8、9間の効果的なガスの流動開口部の領域を変化させるように、ディスク7を回転してもよい。
【0049】
直線状イオントラップ10をイオンを蓄積するのに使用してもよく、一方でディスク7によりオリフィス5を閉鎖し、ディスク7が移動または回転されて、それからディスク7内の開口部7aと薄いプレート5内のオリフィス5aが整列すると、オリフィス5aを通してイオンを発するようオリフィス5aを用意してもよい。好都合なことに、ガスの流動は減少するのが望ましく、イオンの数、および従って器具の感度を維持するのが望ましい。
【0050】
望ましい装置がMALDIイオン源のようなパルスイオン源と共に使用されうる、さらなる実施形態が考えられる。イオンのパルス放出は、ディスク7およびオリフィス5aの開口部の回転と同期させるのが望ましい。光学エンコーダまたは類似の装置を使用して、ディスク7の位置を正確に設定してもよい。
【0051】
ディスクの連続回転の代わりに、オリフィス5aを貫通した開口部を、例えば器具が使用されない間固定の開放または閉鎖状態に一時的に設定してもよいことも考えられる。
【0052】
本発明は、回転ディスク閉鎖部材に限定されない。オリフィス5aの前面で、直線状の構成要素を垂直方向および/または水平方向に移動しうる他の実施形態が考えられる。
【0053】
代替的な実施形態で、開口部は、作動されるとき開口部の物理的寸法を変化させる絞りまたは他の機械的装置または構体を備えてもよい。代わりに、開口部は、圧縮またはそうでなければ変形されて開口部の領域を変化させるプラスチック/弾性チューブを備えてもよい。
【0054】
開口部5aの開放を下流イオントラップと同期させうることも考えられる。例えば、穴5aを、下流イオントラップを予め定められた数のイオンで満たす定義された充填時間の間、または予め定められた時間の間のみ開放してもよい。
【0055】
望ましい実施形態を、衝突/ガスセル、またはイオン移動度スペクトロメータと共に使用して、ガスの流動を制限してもよい。
【0056】
本発明を望ましい実施形態に関連して記載したが、形態および詳細の種々の変更を、添付の請求項に記載する本発明の範囲から逸脱することなくなしうることを、当業者は理解するであろう。
図1a
図1b
図1c
図2A
図2B
図3a
図3b
図3c
図3d
図4