特許第5984319号(P5984319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5984319
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】ロータリージョイント
(51)【国際特許分類】
   F16L 27/08 20060101AFI20160823BHJP
   F16J 15/22 20060101ALI20160823BHJP
   F16J 15/16 20060101ALI20160823BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   F16L27/08 Z
   F16J15/22
   F16J15/16 B
   F16C17/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-101755(P2015-101755)
(22)【出願日】2015年5月19日
【審査請求日】2015年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165273
【氏名又は名称】月島機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】渡會 知則
(72)【発明者】
【氏名】小野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】長野 一徳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 澄人
(72)【発明者】
【氏名】小島 久史
【審査官】 吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】 実開平07−025388(JP,U)
【文献】 特開平04−331889(JP,A)
【文献】 特開2005−249010(JP,A)
【文献】 特開2002−022076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 27/00−27/12
F16C 35/00−43/08
F16C 17/02
F16J 15/16−15/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が回転体の回転軸と同軸に取り付けられて軸線回りに回転させられる円筒状のローターと、
このローターの外周に配設されるケーシングとを備え、
これらローターとケーシングとの間には、上記ローターと上記ケーシングとの間をシールする複数組のシール材と、上記ローターを上記ケーシングに回転自在に支持する上記シール材の組数と同数の軸受け部材とが、上記ローターの一端部から他端部側に向けて上記シール材、上記軸受け部材の順で交互に介装され
上記ローターの内部には、上記一端部に開口する複数の流路が形成されるとともに、
上記ケーシングと上記ローターとの間には、上記流路にそれぞれ連通する複数の連通室が仕切り壁を介して上記軸線方向に隣接するように形成されており、
これらの仕切り壁と上記ローターとの間には、上記軸受け部材として滑り軸受けが介装されていることを特徴とするロータリージョイント。
【請求項2】
上記シール材としてグランドパッキンが介装されていることを特徴とする請求項1に記載のロータリージョイント。
【請求項3】
上記ローターの内部には、該ローターの上記軸線方向の一端部に開口して熱媒体が流通する流路が形成されるとともに、上記ケーシングと上記ローターとの間には上記流路に連通する連通室が形成されており、
上記軸受け部材のうち最も他端部側の軸受け部材は、上記流路および連通室から上記軸線方向の他端部側と該軸線に対する径方向の外周側とのうち少なくとも一方の側に離れた位置に配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロータリージョイント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスチームチューブドライヤーや加熱ロールなどの回転体に高温の蒸気等の熱媒体を供給したり排出したりするのに用いられるロータリージョイントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなロータリージョイントとして、例えば特許文献1には、一端側が開放されたケーシングと、このケーシング内に一対の軸受けによって回転自在に支持されて一端部が回転体に同軸に取り付けられる管状のローターと、一対の軸受けの間に間隔を設けるように装着されるスペーサと、ローターの内側を貫通するようにケーシングに設けられた内管と、ケーシング内とローターの内部を封止する特殊カーボン製のシールリングと、ローターの周囲を隙間なく覆うように他端側の軸受けとシールリングとの間に設けたシール部材とを備えたものが提案されている。この特許文献1に記載されたロータリージョイントでは、内管を通して熱媒体を回転体内部に供給するとともに、この回転体において加熱に使用された熱媒体は内管とローターとの間を通して排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−120694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この特許文献1に記載されたロータリージョイントにおいては、回転体に取り付けられたローターの一端部から他端部側に向けて、一対の軸受けとスペーサとが配設された後に上記シール部材がローターの周囲を覆うように設けられており、このシール部材よりも他端部側では、ローターの他端面に嵌合したシートリングに上記シールリングが軸線方向に押圧されて押し付けられているだけである。
【0005】
しかしながら、例えばスチームチューブドライヤーや加熱ロールにおけるロータリージョイントでは、通常はローターの軸線が横方向に向けられて使用されるため、このようにシール部材の他端側でシールリングが軸線方向にローターに押し付けられているだけであると、特に他端側の軸受けからシールリングまでのローターの長さが長い場合には、ローターの重さによってシール部材の下側部分が大きく摩耗する偏摩耗が生じ易い。そして、このような偏摩耗が顕著になると、シール部材がシールすべき対象物(特許文献1に記載のロータリージョイントでは、一対の軸受けに供給するグリース)の漏れを生じることになる。
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたもので、上述のスチームチューブドライヤーや加熱ロールのロータリージョイントのようにローターの軸線が横方向に向けられる場合でも、シール材の偏摩耗による漏れの発生を防ぐことが可能なロータリージョイントを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、一端部が回転体の回転軸と同軸に取り付けられて軸線回りに回転させられる円筒状のローターと、このローターの外周に配設されるケーシングとを備え、これらローターとケーシングとの間には、上記ローターと上記ケーシングとの間をシールする複数組のシール材と、上記ローターを上記ケーシングに回転自在に支持する上記シール材の組数と同数の軸受け部材とが、上記ローターの一端部から他端部側に向けて上記シール材、上記軸受け部材の順で交互に介装され、上記ローターの内部には、上記一端部に開口する複数の流路が形成されるとともに、上記ケーシングと上記ローターとの間には、上記流路にそれぞれ連通する複数の連通室が仕切り壁を介して上記軸線方向に隣接するように形成されており、これらの仕切り壁と上記ローターとの間には、上記軸受け部材として滑り軸受けが介装されていることを特徴とする。
【0008】
このように構成されたロータリージョイントにおいては、ローターとケーシングとの間に、これらローターとケーシングとの間をシールする複数組のシール材と、ローターをケーシングに回転自在に支持するシール材組数と同数の複数の軸受け部材とが、ローターの一端部から他端部側に向けてシール材、軸受け部材の順で交互に介装されているので、回転体に取り付けられて支持されるローターの一端部の次に他端部側に介装されたシール材においては、その次に他端部側に位置する軸受け部材と上記一端部とによってローターの軸線方向両側が支持されることになる。
【0009】
さらに、このローターの一端部の次のシール材よりも他端部側に介装されるシール材では、その軸線方向の両側においてローターが2つの軸受け部材によって支持されるので、軸線が横方向に向けられるロータリージョイントであっても、ローターの重さによってシール材の下側部分に偏摩耗が生じるのを避けることができる。従って、このような偏摩耗が大きくなってシール材がシールすべき対象物の漏れが発生するのを防ぐことができ、長期に亙って安定的な回転体による加熱や乾燥等の処理を図ることができる。
【0010】
さらに、本発明では、特許文献1に記載されたロータリージョイントのように、回転体への熱媒体の供給と排出を1つのロータリージョイントで行う場合のために、ローターの内部に、上記一端部に開口する供給用と排出用の複数の流路を形成するとともに、上記ケーシングと上記ローターとの間には、上記流路にそれぞれ連通するやはり供給用と排出用の複数の連通室を仕切り壁を介して上記軸線方向に隣接するように形成しており、これらの仕切り壁と上記ローターとの間に、上記軸受け部材として滑り軸受けを介装することにより、上述のようにシール材の軸線方向両側でローターを支持しながらも、隣接した複数の連通室間での熱媒体の漏れを抑制することができる。
【0011】
また、上述のようにローターを軸線方向の両側で支持してシール材に偏摩耗が生じるのを避けることができるため、上記シール材として、比較的安価で調整や交換が容易なグランドパッキンをローターとケーシングとの間に介装することができる。このため、そのようなロータリージョイントによれば、メンテナンス性の向上とコストの削減を図ることができる。
【0012】
さらに、上記ローターの内部に、該ローターの上記軸線方向の一端部に開口して熱媒体が流通する流路が形成されるとともに、上記ケーシングと上記ローターとの間には上記流路に連通する連通室が形成されている場合には、上記軸受け部材のうち最も他端部側の軸受け部材を、上記流路および連通室から上記軸線方向の他端部側と該軸線に対する径方向の外周側とのうち少なくとも一方の側に離れた位置に配設することにより、流路や連通室から伝達される熱を最も他端側の軸受け部材に伝わるまでに放散することができる。従って、この最も他端部側の軸受け部材として一般的な転がり軸受けを用いた場合でも、構造の複雑化を招くことなく焼き付きを防いで、ローターを安定的に軸線回りに回転自在に支持することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、ローターの軸線が横方向に向けられるロータリージョイントにおいても、シール材の偏摩耗によるシール対象物の漏れを防いで、長期に亙って安定した処理を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示す実施形態のローターの軸線に沿った断面図である。
図3図1に示す実施形態の変形例のローターの軸線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1および図2は、本発明の一実施形態を示すものである。本実施形態のロータリージョイントは、その主要な部材が鋼材等の金属材料により形成されており、このうちローター1は、後述する取付部とフランジ部を除いて一定の外径の軸線Oを中心とした円筒状をなしている。また、ローター1の軸線O方向の一端部1A(図1において左下側部分、図2においては左側部分)には、やはり軸線Oを中心とするローター1よりも一段小さな外径の円筒状の内管2が挿入されていて、軸線Oを含む平面に沿って径方向に延びる支持板3により支持されており、ローター1と内管2との間の空間と内管2内の空間は、このローター1の一端に開口している。
【0016】
また、ローター1の一端部1Aの外周には円環板状の取付部4が設けられており、この取付部4を介して一端部1Aが図示されないスチームチューブドライヤーのドライヤー本体や加熱ロールのロール本体のような回転体の回転軸線と同軸に取り付けられることにより、ローター1は回転体と連結されて軸線O回りに一体に回転させられる。そして、ローター1の内管2内の空間は、この回転体の熱媒体排出側に接続されて熱媒体の排出流路5とされる一方、ローター1と内管2との間の空間は、回転体の熱媒体供給側に接続されて熱媒体の供給流路6とされる。
【0017】
なお、ローター1の一端部1Aにおいて、軸線O方向における該一端部1Aとは反対のローター1の他端部1B側(図1において右上側、図2においては右側)では、供給流路6は第1の隔壁7Aによって封止されるとともに排出流路5はこの第1の隔壁7Aに開口しており、排出流路5と供給流路6とは気密に隔絶されている。また、ローター1内の上記第1の隔壁7Aから他端部1B側に間隔をあけた位置には第2の隔壁7Bが設けられていて、ローター1内のこれら第1、第2の隔壁7A、7Bの間の部分は上記排出流路5に連通する熱媒体の排出室8とされる。
【0018】
一方、第2の隔壁7Bよりも他端部1B側の部分は、排出室8および排出流路5とは隔絶された放熱室9とされている。この放熱室9は、ローター1の他端面に円形の開口部9Aを有して外部に開口し、すなわち大気に開放されている。なお、ローター1には、供給流路6と排出室8の位置に、軸線Oに垂直に延びる貫通孔が周方向に間隔をあけて複数形成されていて、それぞれ熱媒体の供給口6Aおよび排出口8Aとされている。
【0019】
また、本実施形態では、ローター1の他端部1B側に、軸線Oに対する径方向の外周側に張り出すフランジ部10が設けられている。このフランジ部10は、その中央部に放熱室9の開口部9Aと同径の開口部10Aを有するローター1よりも外径の大きな円環板状に形成され、これらの開口部9A、10Aを一致させるようにして、軸線Oに垂直に該軸線Oを中心としてローター1の他端に配設されている。
【0020】
このようなローター1の外周には、上述のように軸線O回りに回転させられるローター1に対して非回転に固定されるケーシング11が配設され、ローター1はこのケーシング11内に回転自在に支持される。このケーシング11は、ローター1の外径よりも大きな内径を有する軸線Oを中心とした円筒状をなしていて、その軸線O方向における一端と他端には、ローター1が挿入可能な内径の軸線Oを中心とした貫通孔12A、13Aを有する軸線Oに垂直な第1、第2の仕切り壁12、13が設けられるとともに、これら第1、第2の仕切り壁12、13の間には、貫通孔12A、13Aよりも僅かに大きな貫通孔14Aを有する第3の仕切り壁14が設けられている。また、ケーシング11の他端部外周には外周側に張り出すケーシングフランジ部11Aが設けられている。
【0021】
このうち、第1、第3の仕切り壁12、14の間の軸線O方向一端側の空間は、ローター1の供給口6Aを介して供給流路6に連通する供給連通室15とされ、この供給連通室15の位置におけるケーシング11の外周には、供給連通室15に連通してロータリージョイントへの熱媒体の供給経路に接続される供給管15Aが設けられている。また、第2、第3の仕切り壁13、14の間の軸線O方向他端側の空間は、ローター1の排出口8Aを介して排出室8および排出流路5に連通する排出連通室16とされ、この排出連通室16の位置におけるケーシング11の外周には、排出連通室16に連通してロータリージョイントからの熱媒体の排出経路に接続される排出管16Aが設けられている。
【0022】
なお、これら供給管15Aと排出管16Aはそれぞれ、その中心線が供給口6Aと排出口8Aの中心線と軸線O方向において同じ位置に配設されるとともに、その内径は供給口6Aと排出口8Aの内径よりも大きくされている。また、供給管15Aの内径は排出管16Aの内径よりも大きくされるとともに、供給管15Aと排出管16Aとは、ケーシング11の周方向には互いに反対側に位置するように設けられている。
【0023】
また、ケーシング11の第1、第2の仕切り壁12、13には、その貫通孔12A、13Aとローター1の外周面との間に、それぞれ本実施形態における複数組(2組)のシール材である第1、第2のシール材17A、17Bが介装されている。これらのシール材17A、17Bは、本実施形態ではグランドパッキンであって、特に断面が角形で膨張黒鉛とカーボンファイバーの編組紐よりなる、いわゆる編組グランドパッキンである。
【0024】
ここで、本実施形態では、上記第1、第2の仕切り壁12、13のそれぞれ軸線O方向外側において貫通孔12A、13Aが一段拡径するようにしてシール取付部12B、13Bが設けられており、これらのシール取付部12B、13Bの内周面とローター1の外周面との間に形成される空間(スタッフィングボックス)に、複数の上述のような編組グランドパッキンが軸線O方向に詰め込まれて各1組ずつの第1、第2のシール材17A、17Bが構成された上で、断面L字の環状をなすパッキン押さえ18によって締め付けられることにより熱媒体がシールされる。
【0025】
さらに、本実施形態では、上記第3の仕切り壁14の貫通孔14Aとローター1の外周面との間には、本実施形態におけるシール材17の組数と同数(2つ)の複数の軸受け部材の1つとして、第1の軸受け部材19が介装されている。この第1の軸受け部材19は、本実施形態では滑り軸受け(ブッシュ)であって、特に断面L字の環状をなす鋳鉄等の母材に潤滑剤(潤滑油)を含浸させた含油軸受けであり、貫通孔14Aの内周面とローター1の外周面との間に嵌め入れられて第3の仕切り壁14にボルト止め等によって取り付けられ、回転するローター1が内周面に摺接することにより支持される。
【0026】
一方、ケーシング11の他端には、ローター1の外周側に間隔をあけて筒状に延びる延出部20が設けられている。この延出部20は、軸線Oを中心とした外形が円筒状をなす胴部20Aと、この胴部20Aの上記軸線O方向の両端から外周側に張り出す円環板状の延出フランジ部20B、20Cとを備え、軸線O方向の一端側の延出フランジ部20Bがケーシングフランジ部11Aに固定されてケーシング11の他端に取り付けられる。ケーシング11の第2の仕切り壁13側のシール取付部13B、第2のシール材17Bおよびパッキン押さえ18は胴部20Aの内側に配設されるとともに、延出部20の他端側の延出フランジ部20Cはローター1のフランジ部10と軸線O方向に間隔をあけて対向している。
【0027】
そして、この延出フランジ部20Cとローター1のフランジ部10との間には、本実施形態における複数の軸受け部材の他の1つとして、第2の軸受け部材21が介装されている。この第2の軸受け部材21は、本実施形態では旋回ベアリング(転がり軸受け)であって、すなわちフランジ部10と延出フランジ部20Cとのうち一方に取り付けられる内輪および他方に取り付けられる外輪と、これら内外輪の間に転動可能に介装されるボールのような転動体とを備えた例えばボールベアリングであり、転動体が転がる内外輪の間にはグリース等の潤滑剤が封入される。
【0028】
このような第2の軸受け部材21は、外周側に張り出したフランジ部10と延出フランジ部20Cの外周部に上記内外輪が取り付けられて、図2に示すように軸線Oに対する径方向においてケーシング11の供給、排出連通室15、16よりも外周側に、また軸線O方向においては、上記第2のシール材17Bよりもローター1の他端部1B側に、軸線Oを中心とする環状に配設されている。
【0029】
従って、本実施形態では、ローター1とケーシング11との間をシールする複数組(2組)の第1、第2のシール材17A、17Bと、ローター1をケーシング11に回転自在に支持する第1、第2のシール材17A、17Bの組数と同数(2つ)の第1、第2の軸受け部材19、21とが、回転体に取り付けられるローター1の一端部1Aから他端部1B側に向けて、第1のシール材17A、第1の軸受け部材19、第2のシール材17B、第2の軸受け部材21の順で交互に介装されることになる。
【0030】
また、このうち軸線O方向の他端側に位置する第2の軸受け部材21は、熱媒体の流路であるローター1の排出流路5、供給流路6、および排出室8と、これらに連通する連通室であるケーシング11の供給連通室15および排出連通室16から、上記放熱室9と延出部20が設けられることによって軸線O方向の他端部1B側に離れた位置に配設されるとともに、フランジ部10と延出フランジ部20Cが設けられることによって軸線Oに対する径方向の外周側にも離れた位置に配設される。
【0031】
さらに、延出部20には、軸線Oに対する径方向の外周側に突出するフィン22と、軸線Oに対する径方向に該延出部20を貫通する開口部23とが設けられている。本実施形態では、延出部20の胴部20Aの外周に複数(4つ)のフィン22が周方向に等間隔に設けられるとともに、これらのフィン22の間に、やはり複数(フィン22と同数の4つ)の開口部23が周方向に等間隔に設けられている。
【0032】
フィン22は、延出部20の胴部20A外周から軸線Oを含む平面に沿って径方向に一定の突出量で延びるとともに、軸線O方向には延出フランジ部20B、20C間に亙って延びる平板状に形成されている。また、開口部23は、延出フランジ部20B、20Cとフィン22との間に小さな間隔をあけて、延出部20の胴部20Aを略全体的に切り欠くように径方向に貫通しており、従って個々の開口部23は外周側から見て長方形状に形成される。
【0033】
このような本実施形態のロータリージョイントにおいて、供給管15Aからケーシング11の供給連通室15に供給された高温の蒸気等の熱媒体は、上述のように軸線O回りに回転させられるローター1の供給口6Aから供給流路6を通り、例えばスチームチューブドライヤーの回転するドライヤー本体のような回転体の熱媒体供給側の加熱管に供給されて被処理物の加熱、乾燥に用いられる。また、こうして被処理物の加熱、乾燥に用いられた熱媒体は、回転体の熱媒体排出側からローター1の排出流路5に排出され、排出室8から排出口8Aを通り排出連通室16および排出管16Aを介して排出される。
【0034】
そして、上記構成のロータリージョイントによれば、ローター1とケーシング11の第1、第2の仕切り壁12、13の貫通孔12A、13Aとの間をシールする第1、第2のシール材17A、17Bと、ローター1をケーシング11に回転自在に支持する第1、第2の軸受け部材19、21とが、ローター1の一端部1Aから他端部1B側に向けて交互に介装されているので、第1のシール材17Aの軸線O方向両側においてローター1は回転体と第1の軸受け部材19によって支持されるとともに、第2のシール材17Bの軸線O方向両側においてはローター1が第1、第2の軸受け部材19、21によって支持されることになる。
【0035】
このため、スチームチューブドライヤーや加熱ロールのロータリージョイントのようにローター1の軸線Oが横方向に向けられる場合に、回転体に取り付けられる上記取付部4と第1の軸受け部材19との軸線O方向の間隔や、第1、第2のシール材17A、17Bの軸線O方向の間隔が大きくても、ローター1の重さによって第1、第2のシール材17A、17Bの下側部分に上側部分よりも大きな偏摩耗が生じるのを避けることができる。従って、このような偏摩耗がローター1の回転に伴い大きくなって第1、第2のシール材17A、17Bがシールすべき対象物(本実施形態では、供給連通室15および排出連通室16に供給、排出された熱媒体)に漏れが生じるのを防ぐことができるので、回転体による加熱や乾燥等の処理を長期に亙って安定的に行うことができる。
【0036】
また、本実施形態では、1つのローター1に熱媒体の排出流路5および排出室8と供給流路6とが形成されるとともに、ケーシング11には排出流路5および排出室8に連通する排出連通室16と供給流路6に連通する供給連通室15とが形成されていて、回転体への熱媒体の供給と排出とを同時に行うようにしている。そして、軸線O方向に隣接したケーシング11の供給連通室15と排出連通室16とを仕切る第3の仕切り壁14の貫通孔14Aとローター1との間には、本実施形態における第1の軸受け部材19として、滑り軸受けが介装されている。
【0037】
このため、本実施形態によれば、この第1の軸受け部材19によって、上述のように第1、第2のシール材17A、17Bの偏摩耗を防ぎつつ、隣接した供給連通室15と排出連通室16との間の熱媒体の漏れも抑えることができる。特に、本実施形態における第1の軸受け部材19は含油軸受けであるので、含浸された潤滑剤(潤滑油)の油膜によって熱媒体の漏れ防止効果も高い。
【0038】
なお、グランドパッキンよりなる第1、第2のシール材17A、17Bのような弾性のない滑り軸受け(ブッシュ)よりなる第1の軸受け部材19によってローター1を回転自在に支持するには、この第1の軸受け部材19とローター1の外周面の間に僅かなクリアランスが必要となるが、この第1の軸受け部材19が介装される第3の仕切り壁14によって仕切られた供給連通室15と排出連通室16に流通するのは、スチームチューブドライヤー等ではともに高温の蒸気であるので、このクリアランスから僅かな熱媒体の漏れがあっても問題にはならない。
【0039】
さらに、本実施形態では、上述のように第1、第2のシール材17A、17Bに偏摩耗が生じるのを避けることができるため、これら第1、第2のシール材17A、17Bとして、例えば特許文献1に記載されたような特殊カーボン製のシールリングを用いることなく、比較的安価で調整や交換が容易なグランドパッキンを用いることが可能となる。このため、そのようなロータリージョイントによれば、メンテナンス性の向上とコストの削減を図ることができる。
【0040】
なお、本実施形態では、グランドパッキンである第1、第2のシール材17A、17Bとして、上述のように編組グランドパッキンを用いているが、例えば図3に示す上記実施形態の変形例のように、1つまたは複数のダイモールドグランドパッキンをそれぞれ1組の第1、第2のシール材24A、24Bとして用いてもよい。ここで、この図3に示す変形例において、これら第1、第2のシール材24A、24B以外の上記実施形態と共通する部分には同一の符号を配してある。
【0041】
また、本実施形態のロータリージョイントでは、高温の熱媒体が流通する流路であるローター1の供給流路6、排出流路5、および排出室8と、これらに連通して同じく高温の熱媒体が流通する連通室であるケーシング11の供給連通室15および排出連通室16に対して、ローター1を回転可能に支持する複数の軸受け部材19、21のうち最も他端部側の第2の軸受け部材21が、軸線O方向のローター1における他端部1B側と軸線Oに対する径方向の外周側とのうち少なくとも一方(本実施形態では双方)の側に離れた位置に配設されている。
【0042】
従って、供給流路6、排出流路5、および排出室8と供給連通室15および排出連通室16からの熱が第2の軸受け部材21に伝達する前に放散するため、第2の軸受け部材21として本実施形態のような一般的な旋回ベアリング(転がり軸受け)をそのまま用いても、潤滑剤が失われることなどによって焼き付きを生じるようなことがなく、ローター1を安定して軸線O回りに回転自在に支持することができるので、第2の軸受け部材21の構造が複雑化することがない。
【0043】
さらに、こうして離れた供給流路6、排出流路5、および排出室8と第2の軸受け部材21との間と、供給連通室15および排出連通室16と第2の軸受け部材21との間とのうち少なくとも一方(本実施形態では、やはり双方)には、熱媒体の熱を放散可能な放熱部として放熱室9、フランジ部10、延出部20のフィン22および開口部23が設けられている。従って、上述のように第2の軸受け部材21が流路や連通室から離れているのに加えて、上記放熱部によって第2の軸受け部材21に伝達する熱を効率的に放散することができるので、この第2の軸受け部材21が高温に晒されるのを一層確実に避けることができる。
【0044】
すなわち、本実施形態ではまず、上記放熱部として第1に、ローター1の他端部1B側に、熱媒体の流路である供給流路6、排出流路5、および排出室8と隔絶されてローター1の他端において外部に開口部9Aを介して開口する放熱室9が設けられている。このような放熱室9によれば、ローター1の供給流路6、排出流路5、および排出室8から伝達される熱を放熱室9の外周から放散するとともに放熱室9内からも開口部9Aを介して外部に放散して、第2の軸受け部材21が高温に晒されるのを防ぐことができる。
【0045】
また、本実施形態では、上記放熱部として第2に、ローター1の他端部1B側に軸線Oに対する径方向の外周側に張り出すフランジ部10を設けており、このフランジ部10の外周部に第2の軸受け部材21が取り付けられている。このため、ローター1の他端部1Bから熱が伝達されてもフランジ部10の外周側に至るうちに放散される上、フランジ部10はローター1の回転に伴い一体に回転するので、風を切るようにして高い放熱効果を得ることができる。
【0046】
さらに、本実施形態では、軸線O方向においてローター1の他端部1Bと同じ側のケーシング11の他端部に、このローター1の他端部1Bの外周に間隔をあけて筒状に延びる延出部20が設けられており、ローター1の供給流路6、排出流路5、および排出室8と連通して高温の熱媒体が供給、排出されるケーシング11の供給連通室15および排出連通室16から伝達される熱も、この延出部20を伝わるうちに放散される。そして、本実施形態では、この延出部20に、第3、第4の上記放熱部としてフィン22と開口部23が設けられているので、効率的な熱の放散を促すことができる。
【0047】
すなわち、延出部20にフィン22を設けることによって延出部20の表面積を大きくすることができるので、放熱効果の向上を図ることが可能となる。また、延出部20に開口部23を設けた場合には、この開口部23の内周縁から延出部20を伝わる熱を放散できるとともに、延出部20内のローター1の他端部1Bが開口部23から露出するので、ローター1の流路からこの他端部1Bに伝わる熱も延出部20内に籠もらせずに開口部23を通して放散することができる。
【0048】
なお、このようなフィンや開口部は、ローター1の他端部1Bやフランジ部10の外周部に設けてもよい。放熱室9が設けられたローター1の他端部1Bに開口部を設ければ、放熱室9内に放散した熱を開口部9A以外の上記開口部から延出部20との間に排出することができ、さらにフランジ部10にも開口部を設ければ、こうして排出された熱を延出部20の開口部23以外の上記開口部から外部に排出することができる。また、回転するローター1の他端部1B外周やフランジ部10にフィンを設ければ、一層効率的な熱の放散を促すことが可能である。
【0049】
また、本実施形態では、第2の軸受け部材21が、熱媒体の流路であるローター1の供給流路6、排出流路5、および排出室8と連通室であるケーシング11の供給連通室15および排出連通室16から、軸線O方向の他端部1B側と軸線Oに対する径方向の外周側との双方に離れた位置に配設されているが、軸線O方向にだけ離れていて径方向には同じ位置にあってもよく、逆に軸線O方向には同じ位置にあって径方向外周側だけに離れていてもよい。ただし、これらの場合には、ローター1や延出部20が軸線O方向に長くなったり、第2の軸受け部材21として径の大きなものが必要となったりするので、本実施形態のように流路や連通室から軸線O方向と径方向の双方に離れた位置に軸受け部材21が配設されるのが望ましい。
【0050】
さらに、上述のような熱媒体の流路および連通室と第2の軸受け部材21との間の距離は、熱が伝達するローター1の他端部1Bの軸線O方向の長さと他端部1B外周からフランジ部10に沿った第2の軸受け部材21までの径方向の長さとの和、あるいは延出部20の軸線O方向の長さと延出フランジ部20Cに沿った軸受け部材21までの径方向の長さとの和として、200mm以上であるのが望ましく、400mm以上であるのがより望ましい。これよりも距離が短いと、熱媒体の温度や放熱部の放熱効果によっては第2の軸受け部材21に達するまでに十分な熱の放散を図ることができなくなるおそれがある。
【0051】
一方、本実施形態では、熱媒体の流路と軸受け部材21との間に第1、第2の放熱部として放熱室9とフランジ部10が設けられるとともに、連通室と軸受け部材21との間の延出部20には第3、第4の放熱部としてフィン22と開口部23が設けられているが、放熱部はいずれか一方の間にだけ設けられていてもよい。例えば、延出部20はローター1の外周に配設されて外気に晒されているので、フィン22や開口部23を設けなかったり、あるいは必要に応じて開口部23をカバーで覆ったりしてもよい。
【0052】
さらに、このような放熱部が設けられるローター1の他端部1Bやケーシング11の延出部20に対し、ファンなどにより空気を吹きかけて空冷したり、場合によっては水冷したりして、強制的に冷却を行ってもよい。また、本実施形態では、ローター1に熱媒体の供給流路5と排出流路6とが、またケーシング11には熱媒体の排出連通室15と供給連通室16とが設けられていて、1つのロータリージョイントで回転体への熱媒体の供給と排出を行うようにしているが、これらの流路および連通室のいずれか一方だけを設けて、熱媒体の供給または排出のみを行うようにしてもよい。
【0053】
また、本実施形態ではローター1の内管2内の空間が、回転体の熱媒体排出側に接続されて熱媒体の排出流路5とされる一方、ローター1と内管2との間の空間は、回転体の熱媒体供給側に接続されて熱媒体の供給流路6とされているが、これとは逆に内管2内の空間を熱媒体の供給流路6とするとともに、ローター1と内管2との間の空間を熱媒体の排出流路5として、これらに連通する連通室も供給、排出を逆の構成としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 ローター
1A ローター1の一端部
1B ローター1の他端部
2 内管
4 取付部
5 排出流路
6 供給流路
6A 供給口
8 排出室
8A 排出口
9 放熱室
9A 放熱室9の開口部
10 フランジ部
10A フランジ部10の開口部
11 ケーシング
12〜14 第1〜第3の仕切り壁
12A〜14A 第1〜第3の仕切り壁12〜14の貫通孔
15 供給連通室
15A 供給管
16 排出連通室
16A 排出管
17A、24A 第1のシール材
17B、24B 第2のシール材
18 パッキン押さえ
19 第1の軸受け部材
20 延出部
20C 延出フランジ部
21 第2の軸受け部材
22 フィン
23 延出部20の開口部
O ローター1の軸線
【要約】
【課題】ローターの軸線が横方向に向けられる場合でも、シール材の偏摩耗による漏れの発生を防ぐ。
【解決手段】一端部1Aが回転体の回転軸と同軸に取り付けられて軸線O回りに回転させられる円筒状のローター1と、このローター1の外周に配設されるケーシング11とを備え、これらローター1とケーシング11との間には、ローター1とケーシング11との間をシールする複数組のシール材17A、17Bと、ローター1をケーシング11に回転自在に支持するシール材17A、17Bの組数と同数の軸受け部材19、21とが、ローター1の一端部1Aから他端部1B側に向けて第1のシール材17A、第1の軸受け部材19、第2のシール材17B、第2の軸受け部材21の順で交互に介装されている。
【選択図】図2
図1
図2
図3