【実施例】
【0028】
図1に示すように、横編機1は、複数の供給源となる糸コーン2a,2b,2cから供給される編糸3a,3b,3cを切替えることができる編糸切替装置4を備える。編糸切替装置4には、スプライサ5が含まれる。スプライサ5は、複数のフィンガー5a,5b,5cにそれぞれ編糸3a,3b,3cを繋いでおけば、出力する編糸をいずれかのフィンガー5a,5b,5cの編糸3a,3b,3cに糸継ぎして切替えることができる。特許文献1のように編糸3a,3b,3cを切替えるガーメントの編成中での制御は、特許文献1などと同様に、編成用データに含まれる情報に従って行うことができるけれども、本発明では、ガーメントの編成中でなくても制御可能にしておく。図では、編糸3bから編糸3aに切替えた後で、編糸3aを使用して編成を継続している状態を示す。なお、編糸3aは、次に編糸3cに切替える予定とする。編糸切替装置4から出力される編糸3aは、測長装置6、調整装置7および張力ばね8を経て、給糸口9に供給される。
【0029】
編糸切替装置4
のスプライサ5による継目
は、編地製品14a,14b,14cのガーメント内には入らないことが好ましい。編糸切替装置4で編糸3a,3b,3cの切替えを行うと、切替え部分が給糸口9を経て編針12に供給されるまでに、編成が進行する。編地製品14a,14b,14cの編成開始時には、最終的に抜き糸を抜いて編地製品14a,14b,14cとなる部分から分離する捨て編みなどの部分が設けられる場合がある。このような部分の編成に、編糸3a,3b,3cの切替え部分を使用すれば、切替え前の編糸3a,3b,3cが混ざることなく、切替え後の編糸3a,3b,3cで編地製品14a,14b,14cを編成することができる。
【0030】
給糸口9は、キャリッジ10に連動して、針床11に沿って移動する。針床11には多数の編針12が並設され、編針12が歯口13に進退して、給糸口9から編糸3aを引込み、編地製品14aを編成する。編糸3aに切替える前に使用していた編糸3bでは、編地製品14bが編成されている。また、編糸3aから編糸3cに切替えれば、編糸3cを使用して編地製品14cを自動編成することができる。なお、横編機1には、給糸口9の他にも複数の給糸口を備えられるけれども、図示を省略する。
【0031】
たとえば、セータの身頃と左右の袖とを、それぞれ編糸を周回させて筒状に編成する編地製品では、針床11の編針12を編幅内で3つの領域に分けて、各領域の編針12で編目が係止される筒状編地に別の給糸口9を使用し、合計3つの給糸口9を使用する必要がある。複数色の編糸の切替えを給糸口9の切替で行う場合、3の複数倍の数だけ給糸口を使用する。3つの給糸口9にそれぞれ編糸切替装置4を備えておけば、給糸口9を切替える編成用データを用意しなくても、ガーメント間での編糸切替えを伴う自動編成を、横編機1を停止させることなく、継続して行うことができる。
【0032】
また、給糸口9に編糸3a,3b,3cを供給する経路には、測長装置6および調整装置7が設けられている。いずれか一方を設けることもできる。測長装置6を設ければ、後述するような糸長管理を行うこともできる。調整装置7を設ければ、切替えられる編糸3a,3b,3cのそれぞれについて、糸送りまたは戻しで張力を調整しながら、連続編成する編地製品14a,14b,14cのガーメント間での均質性を高めることができる。
【0033】
横編機1には、コントローラ20も備えられる。コントローラ20は、メモリ21、制御装置22、および入力装置23を含む。メモリ21には、1または複数の給糸口を使用してガーメント単位で編地製品14a,14b,14cを編成するための編成用データを、少なくとも1種類分記憶可能にしておく。さらに、編糸切替装置4で切替えるべき供給源としての糸コーン2a,2b,2c、および糸コーン2a,2b,2cからの編糸3a,3b,3cで編地製品14a,14b,14cを編成する際に使用する編成用データの種類の組合せとして品種の情報を記憶する。さらに、品種に対し、編成すべきガーメントの数としてのロット数も情報としてメモリ21に記憶可能にしておく。制御装置22は、メモリ21に記憶されている品種の情報に従って、ロット数だけの編地製品14a,14b,14cのガーメントを編成する前に、編糸3a,3b,3cを切替える情報に従って、編糸切替装置4でスプライサ5のフィンガー5a,5b,5cを切替える制御を行う。入力装置23には、USBメモリなどの記憶媒体を介して、デザイン装置などで作成された編成用データや、編成スケジュールに関する情報を入力し、メモリ21に記憶させる。入力装置23を、通信ネットワークなどに接続し、編成用データや編成スケジュールに関する情報などを随時入力して、メモリ21の記憶を変更可能にしてもよい。
【0034】
このような変更可能にする制御は、制御装置22で編成用データに従って横編機1で自動編成を行うためのプログラムと並行して実行可能にすればよい。編糸切替装置4での糸コーン2a,2b,2cの切替え後に、測長装置6で監視しながら、制御装置22が編糸切替装置4から編針12までの距離に相当する糸長の編糸3a,3b,3cを供給する処理を行ってから次の品種のガーメントの編成を開始することもできる。また、糸コーン2a,2b,2cの切替え後に、制御装置22が調整装置7を制御し、編糸切替装置4から編針12までの距離に相当する糸長の編糸3a,3b,3cを送出してから次の品種のガーメントの編成を開始することもできる。制御装置22が糸コーン2a,2b,2cの切替え後にこのような制御を行うことによって、切替部分が、切替え後に編成するガーメントに混入しないようにすることができる。
【0035】
図2は、
図1の横編機1を使用して、糸コーン2a,2b,2cの切替えを伴う編成スケジュールを予め設定しておき、同一種類、または異なる種類の編糸3a,3b,3cの切替えを伴う編地製品14a,14b,14cの連続的な自動編成による生産方法の概要を示す。
【0036】
手順の開始後、ステップa1では、編成用データを準備する。メモリ21に使用する編成用データが記憶されていなければ、新たに記憶させる。編成用データには、編糸切替装置4から編糸3a,3b,3cの供給を受ける給糸口9の使用を指定するデータを含める。メモリ21に記憶させる編成用データは、生産実績があるものを使用したり、試編みなどを充分に行って、安定した生産に使用可能であることを確認しておく。ステップa2で、編成スケジュールを設定する。編成スケジュールでは、編地製品14a,14b,14cの編成に使用する編成用データの指定と、編糸切替装置4のフィンガー5a,5b,5cの指定とを組合せる品種毎に、ロット数Na,Nb,Ncのガーメントをそれぞれ生産する旨を設定し、メモリ21に記憶させる。ステップa3では、糸コーン2a,2b,2cの準備を行う。糸コーン2a,2b,2cは、横編機1に備えられる糸立台に設置し、編糸3a,3b,3cを引出して編糸切替装置4のフィンガー5a,5b,5cにそれぞれ繋いでおく。
【0037】
ステップa4では、メモリ21から編成スケジュールを読出し、次に編成すべき品種の編地製品14a,14b,14cに使用する編成用データの指定、および編糸3a,3b,3cや編成すべきロット数などの情報を取得する。ステップa5では編糸3a,3b,3cの切替えが必要か否かを判断する。切替えが必要であれば、ステップa6で編糸切替装置4を制御し、編糸3a,3b,3cの切替えを行う。
【0038】
ステップa5で切替えが不要と判断されるとき、またはステップa6の終了後、ステップa7では編成スケジュールで指定される編成用データを読出し、ステップa8で1ガーメント分の編地製品14a,14b,14cの編成を行う。ステップa9では、編成中の編地製品14a,14b,14cの品種について設定されているロット数Na,Nb,Nc分のガーメント編成が終了しているか否かを判断する。終了していないときは、ステップa8に戻り、終了していればステップa10で、編成スケジュールが終了か否かを判断する。終了していないと判断するときは、ステップa4に戻って編成スケジュールで後続する品種に関する情報を読出し、終了と判断すれば、手順を終了する。
【0039】
図3は、
図2の手順に、測長装置6を利用する糸長の管理を加えた手順を示す。ステップb1の初期設定は、
図2のステップa1からステップa3までを行う。ステップb2は、糸コーン2a,2b,2cの重量を計測し、編糸3a,3b,3cの初期長さに換算して入力する。ステップb3では、
図1のステップa4からステップa8までを、スケジュール編成として実行し、1ガーメント分の編地製品14a,14b,14cを編成する。ステップb4では、1ガーメント分の編成に要した編糸3a,3b,3cの測長装置6による測長結果に基づいて、ガーメント糸長を算出する。ステップb5では、編成スケジュールに従って編成する場合に、編成中の品種のロット数に対して残っている残余ロット数と、初期長さから編成済の糸長を差引き、ガーメント糸長で除算した編成可能なガーメント数とを比較する。編成可能なガーメント数が残余ガーメント数よりも少なければ、残余ガーメント数を編成可能なロット数に修正する。ステップb7およびステップb8は、基本的に、
図2のステップa9およびステップa10とそれぞれ同等である。
【0040】
このように、切替えられる編糸3a,3b,3cのそれぞれについて、測長装置6で供給する編糸3a,3b,3cの糸長を測定しながら、度目調整などで編地の編成で消費される糸長を調整することができる。さらに、糸コーン2a,2b,2c使用開始時の重量から換算する初期長さを求めておけば、使用糸長から残量を推定したり、編成可能なガーメント数を予測したりする管理を行うことができる。
【0041】
このような糸長の管理は、同一種類の編糸を切替えながら、自動編成で生産可能なガーメント数を増大させる場合などにも、好適に適用することができる。同一種類の編糸を供給する複数の糸コーンに分けて横編機1に装着して、それぞれ編糸切替装置4のフィンガー5a,5b,5cに繋いでおく。編成スケジュールでは、同一の編成用データに対して糸コーンを順次組合せて異なる品種とし、それぞれロット数を設定する。編成スケジュールでは異なる品種に設定して、実質的に同一となる編地製品を、複数のフィンガー5a,5b,5cの切替えで供給可能な糸長を増大させて、自動編成を継続させることができる。同一種類の編糸を複数の供給源を切替えて供給しながら編成する生産方法は、同一形状の編地製品を集中生産する場合ばかりではなく、多品種を小ロットずつ生産する場合にも、適用することができる。
【0042】
また、いったん編成スケジュールを設定しても、ロット数Na,Nb,Ncなどの情報は、実際にその情報を使用する編成が終了するまで入力装置23を介する入力で修正可能にしておいてもよい。あるいは、いったん仮のロット数を設定しておいて、生産直前までに必要なロット数を入力するようにしてもよい。さらに、少なくとも1つの編成用データをメモリ21に記憶している状態で待機し、必要に応じて編糸3a,3b,3cの切替えと使用する編成用データの選択とを行って、必要な編地製品を必要なだけ直ちに自動編成するようにしておくこともできる。