特許第5984333号(P5984333)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984333
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】ロータリー式圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/356 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
   F04C18/356 E
   F04C18/356 J
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-7353(P2011-7353)
(22)【出願日】2011年1月17日
(65)【公開番号】特開2012-149545(P2012-149545A)
(43)【公開日】2012年8月9日
【審査請求日】2013年11月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】舘石 太一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 創
(72)【発明者】
【氏名】三浦 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】江崎 郁男
(72)【発明者】
【氏名】小川 真
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−251479(JP,A)
【文献】 特開2011−052685(JP,A)
【文献】 特開2002−195180(JP,A)
【文献】 特開昭61−008489(JP,A)
【文献】 特開2003−262193(JP,A)
【文献】 実開平03−097591(JP,U)
【文献】 特開2008−038787(JP,A)
【文献】 特許第2840396(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/356
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻を形成するケース内に、
内部に冷媒が供給されるシリンダと、
前記シリンダの上下に設けられた軸受に回転自在に支持され、前記シリンダ内を貫通するシャフトと、
前記シャフトをその中心軸周りに回転駆動させるモータと、
前記シャフトの中心軸に対し直交する方向に偏心して設けられ、前記シリンダ内で前記シリンダの中心に対して偏心して回転駆動されるピストンロータと、
前記シャフトにおいて前記中心軸から偏心した偏心軸部の下側に形成され、下側の前記軸受の上面に接触する接触シュー部と、を備え、
前記接触シュー部は、前記シャフトにおいて前記中心軸から偏心していない部分の外径よりも大きな外径を有し、当該シャフトの前記中心軸と同軸状に形成された円板状であり、かつ、前記シャフトと同じ材料で形成されており、
下側の前記軸受の上面に、前記接触シュー部を収容する凹部が形成されていることを特徴とするロータリー式圧縮機。
【請求項2】
前記凹部は、前記接触シュー部の厚さよりも小さな深さを有することを特徴とする請求項1に記載のロータリー式圧縮機。
【請求項3】
外殻を形成するケース内に、
内部に冷媒が供給されるシリンダと、
前記シリンダの上下に設けられた軸受に回転自在に支持され、前記シリンダ内を貫通するシャフトと、
前記シャフトをその中心軸周りに回転駆動させるモータと、
前記シャフトの中心軸に対し直交する方向に偏心して設けられ、前記シリンダ内で前記シリンダの中心に対して偏心して回転駆動されるピストンロータと、
前記シャフトにおいて前記中心軸から偏心した偏心軸部の下側に形成され、下側の前記軸受の上面に接触する接触シュー部と、を備え、
前記接触シュー部は、前記ピストンロータの内周面よりも大きな外径を有し、前記シャフトの前記中心軸と同軸状に形成された円板状であり、
前記ピストンロータに、前記接触シュー部との干渉を防ぐ逃げ凹部が形成されていることを特徴とするロータリー式圧縮機。
【請求項4】
前記接触シュー部は、前記シャフトと別体とされていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のロータリー式圧縮機。
【請求項5】
前記接触シュー部は、前記シャフトよりも柔軟な材料で形成されていることを特徴とする請求項4に記載のロータリー式圧縮機。
【請求項6】
前記シャフトは、前記接触シュー部の下面と下側の前記軸受の上面との間に潤滑油を供給する供給路を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のロータリー式圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍装置に用いられるロータリー式圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍装置に用いられるロータリー式圧縮機は、図8に示すように、密閉された容器1内に、円筒状の内壁面を有したシリンダ2と、シリンダ2の中心に対して偏心して設けられたピストンロータ3と、を備えている。ピストンロータ3は、シリンダ2の中心軸に沿って設けられたシャフト4に設けられている。シャフト4は、シリンダ2に固定された軸受5A、5Bを介してその軸線周りに回転自在に設けられている。シャフト4には、シャフト4を回転させるためのモータ6を構成するロータ6Aが設けられている。ロータ6Aの外周側には、容器1の内周面に固定されたステータ6Bが配置され、ステータ6Bに通電されることによって、シャフト4が回転駆動され、ピストンロータ3がシリンダ2内で旋回する。
そして、シリンダ2とピストンロータ3との間に形成された圧縮室に冷媒を吸い込み、ピストンロータ3の回転により圧縮室容積が減少して冷媒を圧縮して吐出する。
【0003】
このようなロータリー式圧縮機の作動時において、ゴトゴトといった騒音が生じることがあった。これは、ロータ6Aの上と下で発生する圧力脈動により、ピストンロータ3およびシャフト4が、シャフト4を支持する軸受5A、5Bのクリアランスの範囲内で振動する。その結果、ピストンロータ3が、シャフト4の軸線方向に振動して軸受5A、5B(特に下側の軸受5B)と干渉し、騒音が生じるのである。
【0004】
これに対し、シャフト4の軸線方向における軸受5A、5Bとピストンロータ3のクリアランスを小さくすることで、騒音を抑えようとする提案がなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭64−15792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のクリアランスを小さくするには、加工コストが上昇してしまうという問題がある。
【0007】
これに対し、モータ6を構成するロータ6Aの磁力中心C1と、ステータ6Bの磁力中心C2とを、シャフト4の軸線方向にオフセットさせる構成が考えられる。このような構成では、ステータ6Bで発生する磁界によってロータ6Aおよびシャフト4を下方に引き付けることで、ピストンロータ3を下側の軸受5Bに押し付け、これによって騒音の発生を抑制する。
しかし、このような構成では、ピストンロータ3と下側の軸受5Bとの摩擦が大きくなるので、シャフト4の回転駆動力のロスが増大し、冷媒の圧縮効率の低下を招く。
【0008】
また、ロータ6Aの磁力中心C1と、ステータ6Bの磁力中心C2とを、上記とは逆方向にオフセットさせ、ステータ6Bで発生する磁界によってロータ6Aおよびシャフト4を上方に浮き上がらせることで、ピストンロータ3が下側の軸受5Bに接触するのを低減し、これによって騒音の発生を抑制することも考えられる。
しかし、このような構成では、磁界を弱める制御がされる領域においては、モータ6で発生する磁界が弱くなり、ロータ6Aおよびシャフト4を上方に浮き上がらせる力が弱まり、シャフト4が下降して下側の軸受5Bに接触してしまい、騒音が発生する。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、騒音の発生を有効に抑制することのできるロータリー式圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的のもとになされた本発明のロータリー式圧縮機は、外殻を形成するケース内に、内部に冷媒が供給されるシリンダと、シリンダの上下に設けられた軸受に回転自在に支持され、シリンダ内を貫通するシャフトと、シャフトをその中心軸周りに回転駆動させるモータと、シャフトの中心軸に対し直交する方向に偏心して設けられ、シリンダ内でシリンダの中心に対して偏心して回転駆動されるピストンロータと、シャフトにおいて中心軸から偏心した偏心軸部の下側に形成され、下側の軸受の上面に接触する接触シュー部と、を備え、接触シュー部は、シャフトにおいて中心軸から偏心していない部分の外径よりも大きな外径を有し、当該シャフトの中心軸と同軸状に形成された円板状に形成された円板状であり、かつ、シャフトと同じ材料で形成されており、下側の軸受の上面に、接触シュー部を収容する凹部が形成されていることを特徴とする。
このように、接触シュー部が、下側の軸受の上面に接触してシャフトおよびピストンロータの荷重を受けることで、接触シュー部と下側の軸受の上面との間には、冷媒に含まれる潤滑油が供給されて介在することになる。この潤滑油によりダンピング効果が得られる。このとき、接触シュー部は、シャフトの外径よりも大きな外径を有し、シャフトと同軸状に形成された円板状とすることで、潤滑油の保持性が高まり、接触シュー部と下側の軸受の上面との接触面積も大きく確保できる。
【0010】
本発明においては、下側の軸受の上面に、接触シュー部を収容する凹部を形成する。
その凹部が、接触シュー部の厚さよりも小さな深さを有していると良い。
また、本発明は、外殻を形成するケース内に、内部に冷媒が供給されるシリンダと、前記シリンダの上下に設けられた軸受に回転自在に支持され、前記シリンダ内を貫通するシャフトと、前記シャフトをその中心軸周りに回転駆動させるモータと、前記シャフトの中心軸に対し直交する方向に偏心して設けられ、前記シリンダ内で前記シリンダの中心に対して偏心して回転駆動されるピストンロータと、前記シャフトにおいて前記中心軸から偏心した偏心軸部の下側に形成され、下側の前記軸受の上面に接触する接触シュー部と、を備え、接触シュー部は、ピストンロータの内周面よりも大きな外径を有し、シャフトの中心軸と同軸状に形成された円板状であり、ピストンロータに、接触シュー部との干渉を防ぐ逃げ凹部形成されていることを特徴とする。
【0011】
さらに、接触シュー部は、シャフトと別体としても良い。その場合、接触シュー部は、シャフトよりも柔軟な材料で形成することもできる。
【0012】
また、シャフトは、接触シュー部の下面と下側の軸受の上面との間に潤滑油を供給する供給路を有するようにしても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接触シュー部が、下側の軸受の上面に接触してシャフトおよびピストンロータの荷重を受けることで、接触シュー部と下側の軸受の上面との間には、冷媒に含まれる潤滑油が供給されて介在することになる。この潤滑油によりダンピング効果が得られる。これにより、騒音の発生を有効に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態におけるロータリー式圧縮機の構成を示す断面図である。
図2】圧縮機のシリンダおよびピストンロータを示す図であり、圧縮機の軸線に直交した面における断面図である。
図3】第一の実施形態におけるシャフトの荷重支持部分の構成を示す断面図である。
図4】(a)は本実施形態におけるシャフトの斜視図、(b)は接触シュー部を備えない場合のシャフトの斜視図である。
図5】第二の実施形態におけるシャフトの荷重支持部分の構成を示す断面図である。
図6】シャフトと接触シュー部とを別体とした場合の例を示す断面図である。
図7】シャフトに潤滑油供給路を備えた場合の例を示す断面図である。
図8】従来のロータリー式圧縮機の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
[第一の実施形態]
図1は、本実施の形態におけるロータリー式の圧縮機10の構成を示す図である。
この図1に示すように、圧縮機10は、図1において上下方向に中心軸を有した円筒状の密閉型のケース11内に、ディスク状のシリンダ20A、20Bが上下2段に設けられた、いわゆる2気筒タイプである。シリンダ20A、20Bの中央部には、それぞれ、上下方向に軸線を有した円筒状のシリンダ内壁面20Sが形成されている。
【0016】
シリンダ20A、20Bの内方には、シリンダ内壁面20Sの内径よりも小さな外径を有した円筒状のピストンロータ21A、21Bが配置されている。ピストンロータ21A、21Bのそれぞれは、ケース11の中心軸に沿ったシャフト23の偏心軸部40A、40Bに挿入固定されている。これにより、シリンダ20A、20Bのシリンダ内壁面20Sとピストンロータ21A、21Bの外周面との間には、それぞれ三日月状の断面を有した空間Rが形成されている。
ここで、上段側のピストンロータ21Aと、下段側のピストンロータ21Bとは、その位相が互いに異なるように設けられている。
また、上下のシリンダ20A、20Bの間には、ディスク状の仕切板24が設けられている。仕切板24により、上段側のシリンダ20A内の空間Rと、下段側のシリンダ20Bの空間Rとが互いに連通せずに圧縮室R1と圧縮室R2とに仕切られている。
【0017】
図2に示すように、上下のシリンダ20A、20Bには、圧縮室R1、R2を、それぞれ2つに区切るブレード25が設けられている。ブレード25は、シリンダ20A、20Bのそれぞれにおいて、シリンダ20A、20Bの径方向に延在して形成された挿入溝26に、ピストンロータ21A、21Bに対して接近・離間する方向に進退自在に保持されている。そして、ブレード25は、その後端部25aが、コイルバネ28によって押圧されており、先端部25bがピストンロータ21A、21Bに常に押し付けられている。
【0018】
図1に示したように、シャフト23は、上下のシリンダ20A、20Bに図示しないボルトによって固定された上下の軸受29A、29Bにより、その軸線周りに回動自在に支持されている。
そして、シャフト23には、ピストンロータ21A、21Bの内側に、シャフト23の中心軸から直交する方向にオフセットした偏心軸部40A、40Bが形成されている。偏心軸部40A、40Bは、ピストンロータ21A、21Bの内径よりもわずかに小さな外径を有している。これにより、シャフト23が回転すると、偏心軸部40A、40Bがシャフト23の中心軸周りに旋回し、上下のピストンロータ21A、21Bがシリンダ20A、20B内で、偏心転動する。このとき、ブレード25は、コイルバネ28により押圧されているため、先端部25bがピストンロータ21A、21Bの動きに追従して進退し、ピストンロータ21A、21Bに常に押し付けられる。
【0019】
シャフト23は、軸受29Aから上方に突出して延びており、その突出部には、シャフト23を回転させるためのモータ36のモータ回転子37が一体に設けられている。モータ回転子37の外周部に対向して、モータ固定子38が、ケース11の内周面に固定して設けられている。
【0020】
ケース11の側方には、シリンダ20A、20Bの外周面に対向する位置に、開口部12A、12Bが形成されている。シリンダ20A、20Bには、開口部12A、12Bに対向した位置に、シリンダ内壁面20Sの所定位置まで連通する吸入ポート30A、30Bが形成されている。
【0021】
ケース11の外部に、圧縮機10に供給するに先立ち冷媒を気液分離するためのアキュムレータ14が、ステー15を介してケース11に固定されている。
アキュムレータ14には、アキュムレータ14内の冷媒を圧縮機10に吸入させるための吸入管16A、16Bが設けられている。吸入管16A、16Bの先端部は、開口部12A、12Bを通して、吸入ポート30A、30Bに接続されている。
【0022】
このような圧縮機10においては、アキュムレータ14の吸入口14aからアキュムレータ14内に冷媒を取り込み、アキュムレータ14内で冷媒を気液分離して、その気相を吸入管16A、16Bから、パイプ17A、17B、シリンダ20A、20Bの吸入ポート30A、30Bを介し、シリンダ20A,20Bの内部空間である圧縮室R1、R2に供給する。
そして、ピストンロータ21A、21Bの偏心転動により、圧縮室R1、R2の容積が徐々に減少して冷媒が圧縮される。シリンダ20A、20Bの所定の位置には、冷媒を吐出する吐出穴(図示無し)が形成されており、この吐出穴にはリード弁(図示無し)が備えられている。これにより、圧縮された冷媒の圧力が高まると、リード弁を押し開き、冷媒をシリンダ20A、20Bの外部に吐出する。吐出された冷媒は、ケース11の上部に設けられた吐出口42から外部の図示しない配管に排出される。
【0023】
さて、上記のような圧縮機10においては、シャフト23において、下側の偏心軸部40Bの下方に、シャフト23の外径よりも大きく、かつ偏心軸部40Bの外径よりも小さな径を有し、かつシャフト23の中心軸に同軸状に形成された接触シュー部50Aが形成されている。
【0024】
一方、下側の軸受29Bの上面には、シャフト23が貫通している孔51の周囲に、接触シュー部50Aを収容する円形の凹部52が形成されている。この凹部52の深さdは、接触シュー部50Aの厚さtよりも小さく形成されている。
【0025】
上記したような構成によれば、シャフト23およびピストンロータ21A、21Bは、接触シュー部50Aの下面50aと、凹部52の底面52aとが面接触することで、その荷重が支持されている。このとき、この凹部52の深さdは、接触シュー部50Aの厚さtよりも小さいので、シャフト23の偏心軸部40Bやピストンロータ21Bが下側の軸受29Bに非接触となる。
接触シュー部50Aの下面50aと、凹部52の底面52aとの間には、冷媒中に混在させられた潤滑油が介在し、この潤滑油が、下側の軸受29Bとシャフト23(の接触シュー部50A)との上下方向(スラスト方向)の相対変位に対してダンピング効果を発揮する。
ここで、図4(a)に示すように、接触シュー部50Aの下面50aは、円形となる。これに対し、接触シュー部50Aを備えない場合には、偏心軸部40Bの下面40bは三日月状となる。図4(a)に示したように、下側の軸受29Bとの間で潤滑油が介在する部分が円形である接触シュー部50Aの下面50aの方が、図4(b)に示したように三日月状である場合よりも接触面積も多く、また全周で均一に接触するので、潤滑油を確実に保持できる。また、下側の軸受29Bの接触面積も大きくなる。
【0026】
これにより、ピストンロータ21Bが、シャフト23の軸線方向に振動して下側の軸受29Bと衝突したときにも、潤滑油がダンピング効果を発揮するので、騒音の発生を抑えることができる。
さらに、凹部52により外周側が囲われているため潤滑油が逃げにくく、潤滑性能の維持を安定して行うことができる。
【0027】
なお、上記したような構成においては、さらに、モータ36のモータ回転子37の磁力中心C1と、モータ固定子38の磁力中心C2とを、シャフト23の中心軸に沿った方向にオフセットさせることで、磁力によりシャフト23を上方に引き上げるようにして、軸受29Bとピストンロータ21Bとの摩擦を低減するようにしてもよい。
【0028】
また、上記実施形態においては、接触シュー部50Aは、その外周面50sが、ピストンロータ21Bの内径面21sよりも内周側に位置する径に形成されているが、これに限るものではなく、外周面50sがピストンロータ21Bの内径面21sよりも外周側に位置するような径で接触シュー部50Aを形成することもできる。その場合、凹部52もその内径を接触シュー部50Aに対応したものとする。
【0029】
[第二の実施形態]
次に、本発明にかかるロータリー式圧縮機の第二の実施形態を示す。以下に示す第二の実施形態においては、上記第一の実施形態との差異は一部の構成のみであり、それ以外の圧縮機10の全体的な構成は上記第一の実施形態と同様である。したがって、以下においては、上記第一の実施形態と異なる構成を中心に説明を行い、上記第一の実施形態と共通する構成については同符号を付してその説明を省略する。
図5を示すように、本実施形態における圧縮機10においては、シャフト23において、下側の偏心軸部40Bの下方に、シャフト23の外径よりも大きな外径を有し、シャフト23の中心軸に同軸状に形成された接触シュー部50Bが形成されている。
この接触シュー部50Bの下面50bは、下側の軸受29Bの上面29bと面接触している。
【0030】
ここで、接触シュー部50Bは、その外周面50sが、ピストンロータ21Bの内径面21sよりも外周側に位置する径に形成することもできる。その場合、ピストンロータ21Bには、接触シュー部50Bとの干渉を防ぐための逃げ凹部55が形成される。
【0031】
上記したような構成によれば、シャフト23およびピストンロータ21A、21Bは、接触シュー部50Bの下面50bと、下側の軸受29Bの上面29bとが面接触することで、その荷重が支持されている。このとき、接触シュー部50Bにより、シャフト23の偏心軸部40Bが下側の軸受29Bに非接触となる。
接触シュー部50Bの下面50bと、下側の軸受29Bの上面29bとの間には、冷媒中に混在させられた潤滑油が介在し、この潤滑油が、下側の軸受29Bとシャフト23(の接触シュー部50)との上下方向(スラスト方向)の相対変位に対してダンピング効果を発揮する。
また、ピストンロータ21Bの内径で制限される以上の面積を大きくとれることにより、ダンピング効果を大きく得ることができる。
【0032】
これにより、ピストンロータ21Bが、シャフト23の軸線方向に振動して下側の軸受29Bと衝突したときにも、潤滑油がダンピング効果を発揮するので、騒音の発生を抑えることができる。
【0033】
[さらに他の実施形態]
上記第一の実施形態、第二の実施形態で示した接触シュー部50A、50Bは、シャフト23に一体に同材料で形成するようにしたが、これに限るものではない。
図6(a)、(b)に示すように、接触シュー部50A、50Bを、シャフト23とは別体とし、これをシャフト23に嵌合させる構成とすることもできる。
このような構成によれば、接触シュー部50A、50Bと下側の軸受29Bとの接触面だけでなく、接触シュー部50A、50Bと下側の偏心軸部40Bとの間においても潤滑油が介在することになるため、潤滑油の介在によるダンピング効果が増大する。
【0034】
この場合、接触シュー部50A、50Bは、例えば、ゴム系材料、板バネ、金属、すべり軸受、樹脂、玉軸受等により形成することもできる。
これにより、接触シュー部50A、50B自体によってもダンピング効果を発揮することができる。
【0035】
また、図7(a)、(b)に示すように、シャフト23に、接触シュー部50A、50Bと下側の軸受29Bとの接触面に潤滑油を供給するための潤滑油供給路60を形成するようにしても良い。
これにより、接触シュー部50A、50Bと下側の軸受29Bとの接触面に潤滑油を確実に介在させることができ、安定してダンピング効果を発揮することができる。
【0036】
なお、上記実施の形態では、圧縮機10の構成について説明したが、本願発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、各部の構成は適宜変更などを加えることが可能である。
また、上記では、二組のシリンダ20A、20Bとピストンロータ21A、21Bとを備える2気筒の圧縮機10を例に挙げたが、1気筒、または3気筒以上の圧縮機にも本発明は適用できる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
10…圧縮機、11…ケース、20A、20B…シリンダ、21A、21B…ピストンロータ、21s…内径面、23…シャフト、29A、29B…軸受、29b…上面、36…モータ、40A、40B…偏心軸部、50A、50B…接触シュー部、50a、50b…下面、52…凹部、52a…底面、55…逃げ凹部、60…潤滑油供給路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8