【実施例】
【0032】
[測定項目と測定方法]
発明者らは、後記する各実施例及び比較例の球状活性炭に関し、平均粒径(μm)、BET比表面積(m
2/g)、細孔容積(mL/g)、平均細孔直径(nm)、充填密度(g/mL)、及び表面酸化物量(meq/g)の物性を測定した。同時に、毒性物質(毒性原因物質)としてクレアチニン、アルギニンの吸着性能を評価し、有用物質としてトリプシンの吸着性能を評価した。併せて、活性炭の一般的な吸着性能を評価するためヨウ素吸着力(mg/g)も測定した。
【0033】
平均粒径(μm)は、株式会社島津製作所製のレーザー光散乱式粒度分布測定装置(SALD3000S)を使用して測定し、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%における粒径とした。
【0034】
BET比表面積(m
2/g)は、77Kにおける窒素吸着等温線を日本ベル株式会社製、BELSORP miniにより測定し、BET法により求めた。
【0035】
細孔容積(mL/g)は次の2とおりの方法とした。
N
2細孔容積V
miは、Gurvitschの法則を適用し、日本ベル株式会社製BELSORPminiを使用し、相対圧0.990における液体窒素換算した窒素吸着量から求めた。同方法は細孔直径0.6〜100nmの範囲を対象とした。
水銀細孔容積V
meは、株式会社島津製作所製のオートポア9500を使用し、接触角130°、表面張力484ダイン/cm(484mN/m)に設定し、細孔直径7.5〜15000nmの水銀圧入法による細孔容積を求めた。
【0036】
平均細孔直径Dp(nm)は、細孔の形状を円筒形と仮定し、下記の(i)式により求めた。式中、V
miは前出のN
2細孔容積であり、SaはBET比表面積である。
【0037】
【数1】
【0038】
充填密度(g/mL)は、JIS K 1474(2007)に準拠し測定した。
【0039】
表面酸化物量(meq/g)は、Boehmの方法を適用し、0.05N水酸化ナトリウム水溶液中において球状活性炭を振とうした後に濾過し、その濾液を0.05N塩酸で中和滴定した際の水酸化ナトリウム量とした。
【0040】
ヨウ素吸着力(mg/g)は、JIS K 1474(2007)に準拠し測定した。
【0041】
毒性物質としてクレアチニン、アルギニン、有用物質としてトリプシンを被吸着物質の例として用い、各試作例の球状活性炭による吸着性能を評価した。はじめに、各被吸着物質をpH7.4のリン酸緩衝液に溶解し、被吸着物質の濃度を0.1g/Lとする標準溶液を作成した。
クレアチニンの標準溶液50mLに実施例、比較例の球状活性炭をそれぞれ2.5g添加し、37℃の温度で3時間接触振とうした。
アルギニンの標準溶液50mLに実施例、比較例の球状活性炭をそれぞれ0.5g添加し、37℃の温度で3時間接触振とうした。
トリプシンの標準溶液50mLに実施例、比較例の球状活性炭をそれぞれ0.125g添加し、21℃の温度で3時間接触振とうした。
【0042】
その後濾過して得た濾液について、全有機体炭素計(株式会社島津製作所製、TOC5000A)を用い、各濾液中のTOC濃度(mg/L)を測定し、各濾液中の被吸着物質の質量を算出した。各被吸着物質の吸着率(%)は(ii)式より求めた。
【0043】
【数2】
【0044】
[実施例及び比較例の球状活性炭の製造]
〈実施例1〉
単位重量当たりα−セルロースが90重量%の溶解パルプLNDP(日本製紙ケミカル株式会社製)2kgと水酸化ナトリウム溶液(濃度18.5%)を55℃で15分浸漬し、その後、圧搾を行い余剰の水酸化ナトリウム分を除去してセルロース濃度33.5重量%のアルカリセルロース(AC)を作製した。アルカリセルロースを40℃にて7時間老成し、同アルカリセルロース5kgと純度97%以上の二硫化炭素436mLを70分間反応させて、40℃にて粘度0.055Pa・s(55cP)のセルロースザンテートを得た。
【0045】
反応終了後、セルロースザンテートに希薄な水酸化ナトリウム溶液を約13L添加し、100分間攪拌してビスコースを得た。さらに脱泡、熟成、濾過の工程を経てセルロース濃度9.0%のビスコースを調製した。前記調製のビスコースを蒸留水によりビスコース濃度80%まで希釈し、内径約0.9mm(18ゲージ)のノズルから、緩やかに攪拌された40℃の大過剰の希硫酸浴(凝固浴)へ滴下してセルロースを再生し、セルロース(いわゆる再生セルロース)の球状物を得た。このとき、セルロースの球状物を30分間、希硫酸浴に浸漬した。セルロースの球状物を大過剰の水にて水洗し希硫酸を除去後、40℃の希水酸化ナトリウム水溶液に1時間以上浸漬した。再度大過剰の水にて水洗し球状物中の水酸化ナトリウム分を除去した後、105℃で乾燥して球状セルロースを得た。
【0046】
前記調製により得た球状セルロース250gに対し、リン酸アンモニウム水溶液(濃度5%)を500mL加え、12時間静置した。その後、水分をきり、乾燥機により120℃、3時間乾燥した。リン酸アンモニウム処理を経た球状セルロースの全量を円筒状レトルト電気炉に入れて窒素を封入した後、600℃まで100℃/時間で昇温し、その温度で1時間保持して炭化した。その後、炭化物を900℃に加熱し、水蒸気を添加して1時間その温度に保持して賦活化した(賦活温度900℃、賦活時間1時間)。賦活した活性炭を希塩酸で洗浄した後、窒素を封入し、円筒状レトルト電気炉にて600℃で1時間加熱処理して、実施例1の球状活性炭を得た(収率は19.6%であった)。
【0047】
〈実施例2〉
実施例1における賦活温度を750℃とし、賦活時間を2時間とした以外は実施例1に準じ、実施例2の球状活性炭を得た(収率は30.1%であった)。
【0048】
〈実施例3〉
実施例1における賦活温度を750℃とし、賦活時間を8時間とした以外は実施例1に準じ、実施例3の球状活性炭を得た(収率は22.6%であった)。
【0049】
〈実施例4〉
実施例4における球状セルロースの調製に際し、セルロース濃度9.0%のビスコースを蒸留水によりビスコース濃度50%まで希釈し、内径約0.9mm(18ゲージ)のノズルから、緩やかに攪拌された40℃の大過剰の希硫酸浴(凝固浴)へ滴下してセルロースを再生し、セルロース(再生セルロース)の球状物を得た。
【0050】
前記調製により得た球状セルロース250gに対し、リン酸アンモニウム水溶液(濃度5%)を500mL加え、12時間静置した。その後、水分をきり、乾燥機により120℃、3時間乾燥した。リン酸アンモニウム処理を経た球状セルロースの全量を円筒状レトルト電気炉に入れて窒素を封入した後、600℃まで100℃/時間で昇温し、その温度で1時間保持して炭化した。その後、炭化物を900℃に加熱し、水蒸気を添加して45分間その温度に保持して賦活化した(賦活温度900℃、賦活時間0.75時間)。賦活した活性炭を希塩酸で洗浄した後、窒素を封入し、円筒状レトルト電気炉にて600℃で1時間加熱処理して、実施例4の球状活性炭を得た(収率は14.4%であった)。
【0051】
〈実施例5〉
実施例5における球状セルロースの調製に際し、セルロース濃度9.0%のビスコースを蒸留水によりビスコース濃度50%まで希釈し、内径約0.7mm(19ゲージ)のノズルから、緩やかに攪拌された40℃の大過剰の希硫酸浴(凝固浴)へ滴下してセルロースを再生し、セルロース(再生セルロース)の球状物を得た。
【0052】
以降のリン酸アンモニウム処理、加熱、水蒸気賦活、希塩酸洗浄、加熱の処理は、全て実施例4に準じ、実施例5の球状活性炭を得た(収率は15.1%であった)。
【0053】
〈実施例6〉
実施例6は球状セルロースとして、(大東化成工業株式会社製,CELLULOSEBEADS D−200)を使用した。この球状セルロース250gに対し、リン酸アンモニウム水溶液(濃度5%)を500mL加え、12時間静置した。その後、水分をきり、乾燥機により120℃、3時間乾燥した。リン酸アンモニウム処理を経た球状セルロースの全量を円筒状レトルト電気炉に入れて窒素を封入した後、600℃まで100℃/時間で昇温し、その温度で1時間保持して炭化した。その後、炭化物を900℃に加熱し、水蒸気を添加して30分間その温度に保持して賦活化した(賦活温度900℃、賦活時間0.5時間)。賦活した活性炭を希塩酸で洗浄した後、窒素を封入し、円筒状レトルト電気炉にて750℃で15分間加熱処理して、実施例6の球状活性炭を得た(収率は27.1%であった)。
【0054】
〈比較例1〉
実施例1において調製した球状セルロース250gを円筒状レトルト電気炉に収容し、窒素を封入後、600℃まで100℃/時間の割合で昇温し、600℃で1時間保持して炭化した。その後、炭化物を900℃に加熱し、水蒸気を添加して1時間、900℃に保持して賦活した(賦活温度900℃、賦活時間1時間)。賦活した活性炭を希塩酸で洗浄した後、窒素を封入し、円筒状レトルト電気炉により600℃で1時間加熱処理して、比較例1の球状活性炭を得た(収率は11.6%であった)。
【0055】
〈比較例2〉
反応釜に球状フェノール樹脂(リグナイト株式会社製,AH−1131)を250g投入し、窒素を封入して酸素濃度を3%以下に調整した後、600℃まで100℃/時間で昇温し、その温度で1時間保持して炭化した。炭化物を900℃に加熱し、水蒸気を添加して1時間その温度に保持し賦活化した。賦活した活性炭を希塩酸で洗浄した後、窒素を封入し、円筒状レトルト電気炉にて600℃で1時間加熱処理して、比較例2の球状活性炭を得た(収率は45.6%であった)。
【0056】
〈比較例3〉
比較例2における賦活時間を3時間とした以外は比較例2に準じ、比較例3の球状活性炭を得た(収率は29.3%であった)。
【0057】
各実施例並びに比較例の球状活性炭について、球状活性炭の反応条件とともに各物性値を表1ないし表3に記した。表の上から順に、炭化条件(℃×hr)、賦活条件(℃×hr)、昇温条件(℃/hr)、収率(%)、平均細孔直径(nm)、BET比表面積(m
2/g)、平均粒径(μm)、充填密度(g/mL)、水銀細孔容積及びN
2細孔容積(ともにmL/g)、表面酸化物量(meq/g)、ヨウ素吸着力(mg/g)、クレアチニン、アルギニン及びトリプシンの吸着率(%)である。表中、「<0.1」は測定限界値以下を示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
[結果と考察]
各実施例の球状活性炭は、既存の球状フェノール樹脂由来の球状活性炭(比較例2)と比較して概ね同等の物性値を示した。そこで、球状のセルロースは球状フェノール樹脂の代替となる原料として有用であることを証明することができた。また、各実施例の球状活性炭は、クレアチニンやアルギニン等の毒性物質の吸着率を高める一方、トリプシンのように有用な物質の吸着を抑制した選択吸着性を発揮した。特に、実施例1ないし3はトリプシンをほとんど吸着せず、また、実施例4ないし6はトリプシンの吸着を非常に抑制している。吸着測定の結果より、各実施例の球状活性炭は、極めて選択吸着性能に優れている。
【0062】
さらに、実施例の球状活性炭の充填密度から、実施の形態いかんにより非常にコンパクトな剤形の医薬用吸着剤の可能性を示唆している。従って、毒性物質を効率よく吸収する医薬用吸着剤として望ましいということができる。