(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984386
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】食品組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/17 20160101AFI20160823BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20160823BHJP
【FI】
A23L33/17
A23L33/105
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2011-289906(P2011-289906)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-138632(P2013-138632A)
(43)【公開日】2013年7月18日
【審査請求日】2014年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【弁理士】
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100151596
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛
【審査官】
星 浩臣
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−523407(JP,A)
【文献】
特表2009−529874(JP,A)
【文献】
特開2007−306898(JP,A)
【文献】
特開2009−023984(JP,A)
【文献】
特開2007−319008(JP,A)
【文献】
特開2008−043270(JP,A)
【文献】
特開2004−238365(JP,A)
【文献】
特表2009−538923(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0216251(US,A1)
【文献】
国際公開第2011/046423(WO,A1)
【文献】
特開2009−261370(JP,A)
【文献】
特開2008−148588(JP,A)
【文献】
Vi-You Blueberry Yogurt Drink. [online]. Meiji, Japan, 2004. [retrieved on 2015-10-06]. Retrieved from Mintel GNPD:<URL: http://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/314851/from_search/Jqp4XquYEU/>.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/00−33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA/FROSTI/WPIDS/CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲンペプチドとアロニア・メラノカルパの果汁とをコラーゲンペプチド:アロニア・メラノカルパの果汁=1:1〜20:1の質量比で含有し、
コラーゲンペプチドの含有量が食品組成物全体に対して2質量%〜10質量%であり、
アロニア・メラノカルパの果汁の含有量が食品組成物全体に対して0.1質量%〜10質量%である、食品組成物。
【請求項2】
コラーゲンペプチドの重量平均分子量が1000〜5000であることを特徴とする、請求項1に記載の食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品組成物に関し、さらに詳しくは、コラーゲンペプチドとアロニアの抽出物とを含有する食品組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンには美肌効果があることが知られており、これを配合した食品が市販されている。しかしながら、コラーゲンには特有の不快な臭味が存するため、そのままでは利用されにくく、他の成分との組合せによるマスキング効果を謳ったり(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照)、あるいはマスキング処理を行ったものが知られているが(例えば、特許文献4を参照)その効果は十分であるとはいえなかった。さらに、生体内吸収性を高めるために、コラーゲンを加水分解したコラーゲンペプチドがよく利用されるが、臭味や呈味がさらにひどくなる傾向があるという課題を有していた。
【0003】
一方、バラ科アロニア属のアロニアの抽出物を含有する食品組成物も知られているが(例えば、特許文献5、特許文献6を参照)、アロニアの抽出物には渋味が存するために、アロニアの抽出物を配合した食品を美味しく食することができないという課題が存した。また、未脱渋の渋味成分を含有するアロニアをペースト状に加工し、該ペーストに魚介類のすり身のような可食性タンパク質を添加する、渋味成分含有果実食品の脱渋方法も知られているが(例えば、特許文献7を参照)、十分な渋味改善効果は得られていない。又、アロニアを含有する食品組成物においては、アロニアに含有されるアントシアニンの安定性が悪いという課題も有していた。
【0004】
さらにコラーゲンの臭味とアロニアの抽出物の渋味を同時に解消することができる、食品組成物はこれまで全く知られていなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2011−211962号公報
【特許文献2】特開2011−177036号公報
【特許文献3】特開2011−152097号公報
【特許文献4】特開2011−125329号公報
【特許文献5】特開2005−527234号公報
【特許文献6】特開2011−41544号公報
【特許文献7】特開2009−65899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コラーゲンペプチドの臭味とアロニアの抽出物の渋味を同時に解消し、アロニアに含有されるアントシアニンの安定性を高めることができる、食品組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような状況に鑑みて、本発明者らは鋭意研究した結果、食品組成物においてコラーゲンペプチドとアロニアの抽出物を含有させることにより、コラーゲンペプチドの臭味及びアロニアの抽出物の渋味を同時に消失させ、アロニア・メラノカルパに含有されるアントシアニンの安定性を高めることを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明の食品組成物は、以下に示すとおりである。
(1)コラーゲンペプチドとアロニアの抽出物とを含有する食品組成物。
(2)コラーゲンペプチドを食品組成物全体に対して0.5質量%〜50質量%含有することを特徴とする、(1)に記載の食品組成物。
(3)アロニアの抽出物を食品組成物全体に対して0.02質量%〜25質量%含有することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の食品組成物。
(4)コラーゲンペプチドの重量平均分子量が1000〜5000であることを特徴とする、(1)〜(3)の何れかに記載の食品組成物。
(5)美肌用であることを特徴とする、(1)〜(4)の何れかに記載の食品組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コラーゲンペプチドの臭味とアロニアの抽出物の渋味を同時に解消することができる、食品組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)本発明のコラーゲンペプチド
本発明の食品組成物は、必須成分としてコラーゲンペプチドを含有することを特徴とする。本発明に言う、コラーゲンとは、動物の生体を構成する、繊維状の硬質蛋白の総称及び、これを加水分解して得られる可溶性蛋白を含んで意味するものであり、基源となる動物は水棲動物、陸上動物を問わない。具体的な基源となる動物を例示すれば、魚類などの水棲動物、牛、豚、羊、鳥などの陸上動物などが好ましく例示できる。これらの動物の骨格蛋白を水性担体で抽出し、あるいはプロテアーゼなどで加水分解した後、可溶性部分を抽出したものなどが好ましく例示できる。特に好ましいものは、豚、鳥、魚類を基源として、それを加水分解して、可溶性にしたものである。又、好ましいその重量平均分子量は1000〜5000である。これは重量平均分子量が大きすぎると、コラーゲンペプチドの臭味が悪化する場合が存するためである。この様な平均分子量のコラーゲンペプチドを得るためには、例えば限外濾過などにより、分子量分布を調整することが好ましい。この様なコラーゲンペプチドには既に食品用のもので市販品が存するため、それを購入して使用することもできる。好ましい市販品としてはユニテック株式会社より市販されている、魚由来のコラーゲンの加水分解物である、「コラーゲンパウダーFGH」(重量平均分子量3800)が例示できる。本発明の食品組成物においては、かかるコラーゲンは唯一種を含有することもできるし、二種以上を組み合わせて含有させることもできる。本発明の食品組成物における、好ましいコラーゲンペプチドの含有量は、総量で、食品組成物全量に対して0.5質量%〜50質量%であり、より好ましくは2質量%〜10質量%である。これは少なすぎると後記アロニアの抽出物の渋味を抑えられず、又、アロニアに含有されるアントシアニンの安定性も悪化する場合が存し、多すぎると、コラーゲンペプチド自身の臭味が悪化する場合が存するためである。
【0010】
(2)本発明のアロニアの抽出物
本発明の食品組成物は、必須成分としてバラ科アロニア属のアロニアの抽出物を含有することを特徴とする。さらに具体的にはアロニア・アルブティフォリア、アロニア・メラノカルパ、アロニア・プルニフォリアの1種又は2種以上から選択されることが好ましい
。ここでいう抽出物とは、具体的には植物抽出物自体、植物抽出物を分画
及び/又は精製した分画、
並びに精製物の溶媒除去物の総称を意味する。アロニアの抽出物の作製に用いる植物部位としては、果実部が好適に例示できる。抽出に際して、植物体乃至はその乾燥物は予め、粉砕或いは細切して抽出効率を向上させるように加工することが好ましいが、該抽出物としては、果実部をそのまま圧搾することによって得られる果汁を用いることが特に好ましい。本発明の食品組成物における、好ましいアロニアの抽出物の含有量は、総量で、食品組成物全量に対して0.02質量%〜25質量%であり、より好ましくは0.1質量%〜10質量
%である。これは少なすぎると前記コラーゲンペプチドの臭味を抑えられない場合が存し、多すぎると、アロニアの抽出物自身の渋味が悪化し、アロニアに含有されるアントシアニンの安定性も悪化する場合が存するためである。
【0011】
(3)本発明の食品組成物
本発明の食品組成物としては、例えば、菓子やパン、麺などの一般食品、ドリンク製剤、カプセル剤や錠剤の形態をとる、健康増進の目的を有する食品群(例えば、特定保健用食品等)、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤や、錠剤の形態をとる、食品組成物が例示できる。それぞれの食品組成物においては、許容される任意成分を含有することができる。この様な任意成分としては、塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、酢等の調味成分、着色成分、フレーバー等の矯臭成分、増粘剤、乳化・分散剤、保存料、安定剤、各種ビタミン類等が好適に例示でき、健康増進の目的を有する食品であれば、結晶セルロース、乳糖等の賦形剤、アラビアガムやヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤、クロスカルメロースナトリウム、デンプン等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、矯味、矯臭剤、着色剤、各種ビタミン類等が好ましく例示できる。これらを常法に従って処理することにより、本発明の食品組成物を製造することができる。
【0012】
以下に実施例を示して本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明は、これらの実施例にのみ限定を受けないことはいうまでもない。
【実施例】
【0013】
以下の表1に示す処方に従って、実施例である本発明の食品組成物及び比較例を作製した。さらに、食品組成物の臭味及び渋味について、評価を行った結果も示す。この結果より、本発明の食品組成物は優れた臭味、渋味を抑制する効果を有することが判る。
【0014】
【表1】