(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リング収容凹部は、前記径方向シール力が加わる径方向面と、前記軸方向シール力が加わる軸方向面と、を有する請求項1に記載のサーモスタットハウジングアセンブリ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この点、特許文献2には、ウォーターインレットとインレットハウジングとを、溶着(振動溶着または超音波溶着)により、接合するサーモスタットハウジングアセンブリが開示されている。同文献記載のサーモスタットハウジングアセンブリによると、ウォーターインレットとインレットハウジングとの間から全周的に冷却水が漏れにくくなる。つまり、全周的にシール性を確保することができる。また、ウォーターインレットとインレットハウジングとの組付に要する部品点数が少なくなる。
【0007】
しかしながら、ウォーターインレットとインレットハウジングとを溶着してしまうと、部品交換作業が困難になってしまう。また、溶着箇所を剥がす際に、交換対象でない部品が損傷するおそれがある。さらに、ウォーターインレットとインレットハウジングとを溶着する際には同じ材質同士とする必要があり、それによってサーモスタットハウジングアセンブリの設計自由度が制限されてしまう。
【0008】
本発明のサーモスタットハウジングアセンブリは、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、全周的にシール性を確保でき、部品点数が少なく、部品交換作業が簡単なサーモスタットハウジングアセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するため、本発明のサーモスタットハウジングアセンブリは、内側筒部を有する第一部材と、該内側筒部の径方向外側に配置される外側筒部を有する第二部材と、該第一部材および該第二部材の内部に収容されるサーモスタットと、該外側筒部に対して、該内側筒部を、軸方向に挿入して周方向に捻ることにより、該第一部材と該第二部材とを脱着可能に組み付けるスナップフィット機構部と、該内側筒部の外周面と該外側筒部の内周面との間に介装され、該第一部材と該第二部材とを組み付ける際の、該外側筒部に対する該内側筒部の軸方向挿入力により径方向シール力を発生させ、該径方向シール力により該内側筒部と該外側筒部との間の径方向隙間を封止するシールリングと、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のサーモスタットハウジングアセンブリの第一部材と第二部材とは、スナップフィット機構部により、組み付けられている。このため、第一部材と第二部材との脱着作業を簡単に行うことができる。したがって、部品交換作業が簡単である。また、脱着作業の際に、交換対象でない部品が損傷しにくい。また、本発明のサーモスタットハウジングアセンブリによると、ボルトやナットのような締結部品が不要である。このため、部品点数が少ない。
【0011】
また、仮に、単にスナップフィット機構を用いてシールリングにより内側筒部と外側筒部との間の軸方向隙間だけを封止する場合、第一部材と第二部材とを組み付ける際に、まず、外側筒部に対する内側筒部の軸方向挿入力により、シールリングは軸方向から圧縮される。すなわち、軸方向挿入力の全てが、シールリングに軸方向から加わる。続いて、この状態のまま、外側筒部に対して内側筒部が周方向に捻られる。このため、シールリングに大きな周方向剪断力が加わってしまう。したがって、シールリングの寿命が短くなる。また、シールリングの軸方向シール力が全周的にばらつきやすい。
【0012】
この点、本発明のサーモスタットハウジングアセンブリによると、第一部材と第二部材とを組み付ける際の、外側筒部に対する内側筒部の軸方向挿入力により、シールリングに径方向シール力を発生させている。つまり、軸方向挿入力の少なくとも一部を、径方向シール力に変換している。そして、当該径方向シール力により、内側筒部と外側筒部との間の径方向隙間を封止している。このため、シールリングに大きな周方向剪断力が加わりにくい。したがって、シールリングの寿命が長くなる。また、シールリングの径方向シール力が全周的にばらつきにくい。
【0013】
また、本発明のサーモスタットハウジングアセンブリによると、ウォーターインレットとインレットハウジングとを溶着する必要がない。このため、ウォーターインレットとインレットハウジングとを互いに異なる材質とすることができる(勿論、同じ材質としてもよい。)。したがって、サーモスタットハウジングアセンブリの設計自由度が高くなる。
【0014】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記第一部材の前記内側筒部は、外周面の軸方向一端に形成されるリング収容凹部を有し、前記第二部材は、前記外側筒部の軸方向一端から径方向内側に張り出す環状の内側張出部を有し、前記サーモスタットは、該内側張出部の軸方向他端側の面に当接する環状の取付フランジ部を有し、前記スナップフィット機構部は、該内側筒部の外周面および該外側筒部の内周面のうち、一方に配置される爪部と、他方に配置される軸方向凹部と該軸方向凹部に連なる周方向凹部と、を有し、該軸方向凹部に対して該爪部を相対的に軸方向に移動させ、該周方向凹部に対して該爪部を相対的に周方向に移動させ、該爪部と該周方向凹部とを係合させることにより、該第一部材と該第二部材とを組み付け、前記シールリングは、該リング収容凹部に収容され、前記軸方向挿入力により前記径方向シール力および軸方向シール力を発生させ、該径方向シール力により該内側筒部と該外側筒部との間の前記径方向隙間を封止し、該軸方向シール力により該内側筒部と該取付フランジ部との間の軸方向隙間を封止する構成とする方がよい。
【0015】
本構成によると、外側筒部に対する内側筒部の軸方向挿入力を、径方向シール力と、軸方向シール力と、に分解している。径方向シール力により、内側筒部と外側筒部との間の径方向隙間を封止している。また、軸方向シール力により、内側筒部と取付フランジ部との間の軸方向隙間を封止している。言い換えると、軸方向シール力により、サーモスタットを固定している。このように、本構成によると、軸方向挿入力を利用して、シール力を確保すると共に、サーモスタットを固定することができる。
【0016】
(3)好ましくは、上記(2)の構成において、前記リング収容凹部は、前記径方向シール力が加わる径方向面と、前記軸方向シール力が加わる軸方向面と、を有する構成とする方がよい。
【0017】
本構成によると、リング収容凹部が、径方向面と軸方向面とを、各々独立して有している。このため、径方向面の径方向位置を調整することにより、径方向シール力を調整することができる。また、軸方向面の軸方向位置を調整することにより、軸方向シール力を調整することができる。
【0018】
(4)好ましくは、上記(2)の構成において、前記リング収容凹部は、前記径方向シール力および前記軸方向シール力が加わるテーパ面を有する構成とする方がよい。本構成によると、リング収容凹部が、上記(3)の径方向面と軸方向面とを兼ねるテーパ面を有している。このため、リング収容凹部の面構成が簡単になる。また、テーパ面の傾斜角度を調整することにより、径方向シール力および軸方向シール力を、連動させながら調整することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、全周的にシール性を確保でき、部品点数が少なく、部品交換作業が簡単なサーモスタットハウジングアセンブリを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のサーモスタットハウジングアセンブリの実施の形態について説明する。
【0022】
<第一実施形態>
[サーモスタットハウジングアセンブリの構成]
まず、本実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリの構成について説明する。なお、以下に示す図において、「上側」は本発明の「軸方向他端」側に、「下側」は本発明の「軸方向一端」側に、各々対応する。
【0023】
図1(a)に、本実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリの上面図を示す。
図1(b)に、同サーモスタットハウジングアセンブリの前面図を示す。
図2に、
図1のII−II方向断面図(軸方向断面図)を示す。
図3に、
図1のIII−III方向断面図(径方向断面図)を示す。
図4に、同サーモスタットハウジングアセンブリの軸方向分解断面図を示す。
図5(a)に、同サーモスタットハウジングアセンブリのインレットハウジングの上面図を示す。
図5(b)に、同サーモスタットハウジングアセンブリのウォーターインレットの下面図を示す。
図6に、
図2の円VI内の拡大図を示す。
【0024】
これらの図に示すように、本実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリ1は、ウォーターインレット2と、インレットハウジング3と、サーモスタット4と、スナップフィット機構部5と、シールリング6と、を備えている。ウォーターインレット2は、本発明の「第一部材」の概念に含まれる。インレットハウジング3は、本発明の「第二部材」の概念に含まれる。
【0025】
(ウォーターインレット2)
ウォーターインレット2は樹脂製である。
図2に示すように、ウォーターインレット2は、下方に開口するカップ状を呈している。ウォーターインレット2は、内側筒部20と、外側張出部21と、頂部22と、ラジエータ連通部23と、を備えている。
【0026】
内側筒部20は、上下方向に延在する短軸円筒状を呈している。
図6に示すように、内側筒部20の外周面の下端(軸方向一端)には、リング収容凹部200が凹設されている。リング収容凹部200は、円環状を呈している。リング収容凹部200は、径方向面200aと、軸方向面200bと、を備えている。径方向面200aは、径方向外側を向いている。軸方向面200bは、下側を向いている。径方向面200aと軸方向面200bとは、互いに直交している。
【0027】
図2に示すように、外側張出部21は、円環状を呈している。外側張出部21は、内側筒部20の上端から径方向外側に張り出している。頂部22は、半球状を呈している。頂部22は、外側張出部21の上方に配置されている。ラジエータ連通部23は、管状を呈している。ラジエータ連通部23は、ラジエータ(図略)に連通している。
【0028】
(インレットハウジング3)
インレットハウジング3は樹脂製である。
図2に示すように、インレットハウジング3は、L字管状を呈している。インレットハウジング3は、後述するスナップフィット機構部5を介して、ウォーターインレット2の下方に脱着可能に取り付けられている。
【0029】
インレットハウジング3は、外側筒部30と、内側張出部31と、ハウジング本体32と、エンジン連通部33と、バイパス連通部34と、ヒータ連通部35と、を備えている。外側筒部30は、上下方向に延在する短軸円筒状を呈している。外側筒部30は、内側筒部20の径方向外側に配置されている。外側筒部30の上端面は、外側張出部21の下面により、上方から覆われている。
図6に示すように、内側筒部20のリング収容凹部200の径方向面200aと、外側筒部30の内周面と、の間には、径方向隙間C1が区画されている。
図2に示すように、ハウジング本体32は、円筒状を呈している。ハウジング本体32は、内側張出部31の下方に配置されている。エンジン連通部33は、円筒状を呈している。エンジン連通部33は、ハウジング本体32の後方に配置されている。エンジン連通部33は、ハウジング本体32に対して、L字状に連なっている。エンジン連通部33は、ブラケット330を備えている。ブラケット330を介して、エンジン連通部33つまりインレットハウジング3は、エンジン(図略)に固定されている。
図1(a)、
図1(b)に示すように、バイパス連通部34は、管状を呈している。バイパス連通部34は、バイパス通路(図略)に連通している。ヒータ連通部35は、管状を呈している。ヒータ連通部35は、ヒータ(図略)に連通している。
【0030】
(サーモスタット4)
図2に示すように、サーモスタット4は、取付フランジ部40と、サーモスタット本体41と、を備えている。サーモスタット4は、いわゆるボトムバイパス型のサーモスタットである。サーモスタット本体41は、ウォーターインレット2およびインレットハウジング3の内部に、収容されている。取付フランジ部40は、サーモスタット本体41の径方向外側に、円環状に配置されている。
図6に示すように、取付フランジ部40は、内側張出部31の上面(軸方向他端側の面)に当接している。内側筒部20のリング収容凹部200の軸方向面200bと、取付フランジ部40の上面と、の間には、軸方向隙間C2が区画されている。
【0031】
(スナップフィット機構部5)
図2、
図3、
図5(a)、
図5(b)に示すように、スナップフィット機構部5は、6個の爪部50と、6個の軸方向凹部51と、6個の周方向凹部52と、ストッパ部53と、を備えている。6個の爪部50は、内側筒部20の外周面に、60°ずつ離間して、形成されている。6個の爪部50は、各々、内側筒部20の外周面から、径方向外側に突出している。
図2に示すように、6個の爪部50は、リング収容凹部200の上方に配置されている。
図6に示すように、ウォーターインレット2およびインレットハウジング3の内部と外部とを連通するリーク経路Lにおいて、6個の爪部50は、リング収容凹部200の下流側(外部側)に配置されている。
【0032】
図5(a)に示すように、6個の軸方向凹部51は、外側筒部30の内周面に、60°ずつ離間して、形成されている。6個の軸方向凹部51は、各々、外側筒部30の内周面に凹設されている。6個の軸方向凹部51の上端は、各々、外側筒部30の上端面に開口している。
【0033】
図3に示すように、6個の周方向凹部52は、外側筒部30の側周壁に、60°ずつ離間して、形成されている。6個の周方向凹部52は、各々、外側筒部30の側周壁を径方向に貫通している。6個の周方向凹部52は、各々、軸方向凹部51(
図3に一点鎖線で示す)の下端に、L字状に連なっている。6個の周方向凹部52には、各々、爪部50が係止されている。
【0034】
図3、
図5(a)に示すように、ストッパ部53は、6個の軸方向凹部51のうち、最前端の軸方向凹部51の下端付近に形成されている。ストッパ部53は、軸方向凹部51の内周面から、径方向内側に突出している。
図1(a)に示すように、ストッパ部53は、径方向に弾性変形可能である。
【0035】
(シールリング6)
図2に示すように、シールリング6は、ゴムや熱可塑性エラストマー等からなる弾性体製であって、円環状を呈している。シールリング6は、内側筒部20のリング収容凹部200に収容されている。
図6に示すように、シールリング6は、リーク経路Lを遮断している。すなわち、後述する組付時の軸方向挿入力Fにより、自然状態(
図6に一点鎖線で示す)に対して、シールリング6は、径方向に圧縮されている。また、シールリング6は、軸方向に伸張している。シールリング6の弾性変形により、シールリング6は、径方向面200aおよび外側筒部30の内周面に、径方向シール力F1で弾接している。また、シールリング6は、軸方向面200bおよび取付フランジ部40の上面に、軸方向シール力F2で弾接している。このように、シールリング6は、径方向シール力F1により径方向隙間C1を、軸方向シール力F2により軸方向隙間C2を、各々封止している。また、シールリング6は、軸方向シール力F2により、取付フランジ部40つまりサーモスタット4を、固定している。
【0036】
[サーモスタットハウジングアセンブリの組付方法]
次に、本実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリ1の組付方法について説明する。
図7に、本実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリの組付時における径方向断面図を示す。なお、
図7は、
図3に対応している。
図8に、
図7の円VIII内の拡大図を示す。
【0037】
本実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリ1の組付方法は、サーモスタット配置工程と、軸方向移動工程と、周方向移動工程と、を有している。サーモスタット配置工程においては、
図4に示すように、まず、インレットハウジング3の内部に、上方からサーモスタット4を挿入する。そして、取付フランジ部40を内側張出部31の上面に載置する。次に、インレットハウジング3の内部に、上方からシールリング6を挿入する。そして、シールリング6を取付フランジ部40の上面に載置する。
【0038】
軸方向移動工程においては、まず、インレットハウジング3の上方に、ウォーターインレット2を配置する。この際、
図5(a)に示す6個の軸方向凹部51と、
図5(b)に示す6個の爪部50とを、上下方向に対向させる。次に、
図4に示すように、ウォーターインレット2の内側筒部20を、インレットハウジング3の外側筒部30の径方向内側に、上方から挿入する。この際、
図5(b)に示す6個の爪部50は、
図5(a)に示す6個の軸方向凹部51を、上方から下方に向かって移動する。また、
図6に示すように、この際に加わる軸方向挿入力Fにより、シールリング6は、径方向から圧縮され、軸方向に伸張する。
【0039】
周方向移動工程においては、
図7に示すように、ウォーターインレット2の内側筒部20を、インレットハウジング3の外側筒部30に対して、周方向(
図7における時計回り方向)に捻る。このため、6個の爪部50は、各々、周方向凹部52を、周方向に移動する。ここで、
図7に示すように、最前端の軸方向凹部51の下端付近には、ストッパ部53が配置されている。
図8に示すように、最前端の爪部50は、ストッパ部53を径方向外側に押しのけながら、周方向に移動する。
【0040】
組付後の状態においては、
図3に示すように、最前端の爪部50は、ストッパ部53を周方向に乗り越えている。また、ストッパ部53は、自身の有する弾性復元力により、径方向内側に復動している。このため、爪部50が、緩む方向(
図3における反時計回り方向)に移動するおそれが小さい。このように、ストッパ部53により、インレットハウジング3に対して、ウォーターインレット2が、周方向に移動するのを、抑制することができる。
【0041】
また、
図2に示すように、爪部50は、周方向凹部52に収容されている。このため、インレットハウジング3に対して、ウォーターインレット2が、軸方向に移動するのを、抑制することができる。また、爪部50の上縁は、シールリング6の弾性復元力により、周方向凹部52の上縁に押し付けられている。このため、インレットハウジング3に対して、ウォーターインレット2が、軸方向にがたつくのを、抑制することができる。
【0042】
このようにして、本実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリ1は組み付けられる。なお、インレットハウジング3に対して、ウォーターインレット2を取り外す際は、ストッパ部53を径方向外側に持ち上げた状態でウォーターインレット2を周方向(
図3における反時計回り方向)に捻り、ウォーターインレット2を上方に引き抜けばよい。すなわち、爪部50を、周方向凹部52→軸方向凹部51の経路で移動させればよい。
【0043】
[作用効果]
次に、本実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリ1の作用効果について説明する。本実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリ1のウォーターインレット2とインレットハウジング3とは、スナップフィット機構部5により、組み付けられている。このため、ウォーターインレット2とインレットハウジング3との脱着作業を簡単に行うことができる。したがって、部品交換作業が簡単である。また、脱着作業の際に、交換対象でない部品が損傷しにくい。また、本実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリ1によると、ボルトやナットのような締結部品が不要である。このため、部品点数が少ない。
【0044】
また、仮に、シールリング6により内側筒部20と外側筒部30との間の軸方向隙間C2だけを封止する場合、ウォーターインレット2とインレットハウジング3とを組み付ける際に、まず、外側筒部30に対する内側筒部20の軸方向挿入力Fにより、シールリング6は軸方向から圧縮される。すなわち、軸方向挿入力Fの全てが、シールリング6に軸方向から加わる。続いて、この状態のまま、外側筒部30に対して内側筒部20が周方向に捻られる。このため、シールリング6に大きな周方向剪断力が加わってしまう。したがって、シールリング6の寿命が短くなる。また、シールリング6の軸方向シール力F2が全周的にばらつきやすい。
【0045】
この点、本実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリ1によると、ウォーターインレット2とインレットハウジング3とを組み付ける際の、外側筒部30に対する内側筒部20の軸方向挿入力Fにより、シールリング6に径方向シール力F1、軸方向シール力F2を発生させている。つまり、軸方向挿入力Fの一部を、径方向シール力F1に変換している。そして、当該径方向シール力F1により、内側筒部20と外側筒部30との間の径方向隙間C1を封止している。このため、シールリング6に大きな周方向剪断力が加わりにくい。したがって、シールリング6の寿命が長くなる。また、シールリング6の径方向シール力F1が全周的にばらつきにくい。
【0046】
また、本実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリ1によると、軸方向シール力F2により、内側筒部20と取付フランジ部40との間の軸方向隙間C2を封止している。言い換えると、軸方向シール力F2により、サーモスタット4を固定している。このように、本実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリ1によると、軸方向挿入力Fを利用して、シール力を確保すると共に、サーモスタット4を固定することができる。
【0047】
また、本実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリ1によると、リング収容凹部200は、径方向シール力F1が加わる径方向面200aと、軸方向シール力F2が加わる軸方向面200bと、を有している。径方向面200aと軸方向面200bとは、各々独立している。このため、径方向面200aの径方向位置を調整することにより、径方向シール力F1を調整することができる。例えば、径方向面200aの径方向位置を外側に移動させることにより、径方向シール力F1を大きくすることができる。反対に、径方向面200aの径方向位置を内側に移動させることにより、径方向シール力F1を小さくすることができる。同様に、軸方向面200bの軸方向位置を調整することにより、軸方向シール力F2を調整することができる。例えば、軸方向面200bの軸方向位置を下側に移動させることにより、軸方向シール力F2を大きくすることができる。反対に、軸方向面200bの軸方向位置を上側に移動させることにより、軸方向シール力F2を小さくすることができる。
【0048】
<第二実施形態>
本実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリと、第一実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリとの相違点は、リング収容凹部が、第一実施形態の径方向面と軸方向面とを兼ねるテーパ面を有している点である。ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0049】
図9に、本実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリの軸方向断面図を示す。なお、
図2と対応する部位については、同じ符号で示す。
図10に、
図9の円X内の拡大図を示す。なお、
図6と対応する部位については、同じ符号で示す。
【0050】
図9、
図10に示すように、リング収容凹部200は、上方から下方に向かって尖る、テーパ面200cを備えている。ウォーターインレット2とインレットハウジング3とを組み付ける際、リング収容凹部200において、シールリング6は弾性変形する。この際、外側筒部30に対する内側筒部20の軸方向挿入力Fは、テーパ面200cにより、径方向分力と、軸方向分力と、に分解される。このため、シールリング6に、径方向シール力F1、軸方向シール力F2が発生する。
【0051】
本実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリ1と、第一実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリとは、構成が共通する部分に関しては、同様の作用効果を有する。また、本実施形態のサーモスタットハウジングアセンブリ1によると、リング収容凹部200が、テーパ面200cを備えている。テーパ面200cの傾斜角度を調整することにより、径方向シール力F1および軸方向シール力F2を調整することができる。例えば、
図10に示すように、軸方向に対するテーパ面200cの傾斜角度θを小さくすると、径方向シール力F1を大きくすることができる。また、軸方向シール力F2を小さくすることができる。反対に、軸方向に対するテーパ面200cの傾斜角度θを大きくすると、径方向シール力F1を小さくすることができる。また、軸方向シール力F2を大きくすることができる。
【0052】
<その他>
以上、本発明のサーモスタットハウジングアセンブリの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0053】
例えば、スナップフィット機構部5における、爪部50と、軸方向凹部51および周方向凹部52と、の位置関係は、特に限定しない。爪部50を外側筒部30の内周面に、軸方向凹部51および周方向凹部52を内側筒部20の外周面に、各々配置してもよい。また、爪部50、軸方向凹部51、周方向凹部52、ストッパ部53の位置、配置数は特に限定しない。
【0054】
また、テーパ面200cは平面状でなくてもよい。例えば、テーパ面200cは、径方向外側に膨らむ曲面状、径方向内側に凹む曲面状であってもよい。また、テーパ面200cは、緩斜面と急斜面とが連なる形状であってもよい。
【0055】
ウォーターインレット2、インレットハウジング3の材質は特に限定しない。例えば、PA(ポリアミド)6、PA66、PA610、PA612、PA11、PA12およびPA46等の脂肪族ポリアミド樹脂、PA6T、PA6I、PA9TおよびPAMXD6等の主鎖に芳香族環を有するポリアミド樹脂、PA6/PA66等の共重合ポリアミド樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂等を用いることができる。
【0056】
また、上記実施形態においては、本発明の「第一部材」としてウォーターインレット2を、「第二部材」としてインレットハウジング3を、それぞれ配置した。しかしながら、「第一部材」としてインレットハウジング3を、「第二部材」としてウォーターインレット2を、それぞれ配置してもよい。すなわち、インレットハウジング3に、内側筒部20、外側張出部21を配置してもよい。また、ウォーターインレット2に、外側筒部30、内側張出部31を配置してもよい。
【0057】
また、上記実施形態においては、本発明の「軸方向他端」側を上側に、「軸方向一端」側を下側に、それぞれ対応させた。しかしながら、「軸方向他端」側を下側に、「軸方向一端」側を上側に、それぞれ対応させてもよい。また、「軸方向他端」側と「軸方向一端」側とを水平方向(前後方向、左右方向)に対応させてもよい。