(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984445
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】燃焼器
(51)【国際特許分類】
F23R 3/10 20060101AFI20160823BHJP
F23R 3/16 20060101ALI20160823BHJP
F23R 3/28 20060101ALI20160823BHJP
F02C 7/22 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
F23R3/10
F23R3/16
F23R3/28 D
F02C7/22 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-67891(P2012-67891)
(22)【出願日】2012年3月23日
(65)【公開番号】特開2013-200060(P2013-200060A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2015年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 圭司郎
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 智志
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 厚志
(72)【発明者】
【氏名】赤松 真児
(72)【発明者】
【氏名】安部 直樹
(72)【発明者】
【氏名】江川 拓
【審査官】
米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−346361(JP,A)
【文献】
特開2003−148733(JP,A)
【文献】
特開平8−135970(JP,A)
【文献】
特表2010−532860(JP,A)
【文献】
特開平4−126921(JP,A)
【文献】
特開2001−289441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/10
F02C 7/22
F23R 3/16
F23R 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器外筒と、
前記燃焼器外筒内部に設けられる筒状の燃焼器内筒と、
前記燃焼器外筒の内周面と前記燃焼器内筒の外周面との間に形成された空気流路と、
前記燃焼器の中心軸位置に配置されたパイロットノズルと、
前記燃焼器内筒内部に設けられ、前記燃焼器の中心軸に対して略平行に延びるとともに、前記パイロットノズルの周囲に等中心角度間隔で設けられた、予混合燃焼用の燃料を噴射する複数のメインノズルと、を備え、
前記空気流路を流れる空気が、前記燃焼器内筒の端部で流動方向が略反転されて前記複数のメインノズルに導入される燃焼器であって、
前記パイロットノズルと前記メインノズルとの間の空間で、前記燃焼器の径方向に延びるとともに、前記中心軸方向に延在する仕切板が設けられ、
前記仕切板は、前記パイロットノズルと前記メインノズルの一方から前記径方向に延びるとともに、
前記パイロットノズルと前記メインノズルの他方と前記仕切板との間で前記径方向に空間が形成されていることを特徴とする燃焼器。
【請求項2】
前記仕切板は、前記メインノズルから前記径方向に延びるとともに、前記中心軸方向に延在していることを特徴とする請求項1に記載の燃焼器。
【請求項3】
前記仕切板は、径方向外周側から径方向内周側に向かって漸次幅が狭くなるように形成されているとともに、
前記仕切板の前記空気流路の下流側の端部は、下流側から上流側に向かって、漸次幅が広くなるように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の燃焼器。
【請求項4】
前記仕切板は、前記パイロットノズル側から隣り合う前記メインノズル同士の間に向かって延びていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン等の燃焼器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、火力発電所等で用いられている産業用ガスタービンにおいては、高出力化・高効率化と共に低NOx(窒素酸化物)化を図ることが要請されている。これに応じて、ガスタービンを構成する燃焼器においては、次のような低NOx型のものが採用されている。
【0003】
図7に示すように、従来の燃焼器101は、燃焼器外筒2と、燃焼器外筒2内部に設けられる筒状の燃焼器内筒3とを有しており、燃焼器外筒2の内周面と燃焼器内筒3の外周面との間に空気流路10が形成されている。そして、燃焼器内筒3内部には、燃焼器101の中心軸Oに対して略平行に延びるとともに、中心軸Oの周囲に等中心角度間隔で設けられた、予混合燃焼用の燃料を噴射する複数のメインノズル8と、中心軸O位置に配置されたパイロットノズル5が設けられている(例えば、特許文献1も参照)。
【0004】
燃焼器101内の空気流Fは、図示しない車室から空気流路10へと流入し、ターニングベーン12で180°ターンする。その後、メインノズル8から噴出される燃料と混合され、更にメインスワラ13で旋回をかけられ抜けていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−289441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の燃焼器101においては、メインノズル8の存在により、空気流Fは180°ターンした後に、メインノズル8を避けるように流れる。この結果、
図8に示すように、空気から見たメインノズル8背後(空気流F下流側)の流れは、渦Eを形成し、不安定な流れを形成する。このような不安定な流れは、空気流Fに対し、メインノズル8が略直交して存在していることに起因している。
【0007】
この渦Eは、左右の渦が交互に、かつ周期的に現れる大きな変動(カルマン渦)となる場合がある。この不安定な流れは下流の燃焼領域まで運ばれ、燃料と空気の混合比率に関し時間的に変動を生じさせてしまう。
その結果、燃焼領域において燃焼不安定を誘発したり、また、燃料濃度変動により生じる火炎のホットスポット形成によるNOx生成が問題となる。
【0008】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、180°ターン部を有する空気流路が設けられ、ターン部において反転された空気が、複数のメインノズルに導入される燃焼器において、メインノズル下流の空気流の乱れを抑制して燃焼振動を抑制し、NOxの増加を抑制することができる燃焼器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提供している。
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明の燃焼器は、燃焼器外筒と、前記燃焼器外筒内部に設けられる筒状の燃焼器内筒と、前記燃焼器外筒の内周面と前記燃焼器内筒の外周面との間に形成された空気流路と、
前記燃焼器の中心軸位置に配置されたパイロットノズルと、前記燃焼器内筒内部に設けられ、前記燃焼器の中心軸に対して略平行に延びるとともに、前記
パイロットノズルの周囲に等中心角度間隔で設けられた、予混合燃焼用の燃料を噴射する複数のメインノズルと、を備え、前記空気流路を流れる空気が、前記燃焼器内筒の端部で流動方向が略反転されて前記複数のメインノズルに導入される燃焼器であって、前記
パイロットノズルと前記メインノズルとの間の空間で、前記燃焼器の径方向に延びるとともに、前記中心軸方向に延在する仕切板が設けられ
、前記仕切板は、前記パイロットノズルと前記メインノズルの一方から前記径方向に延びるとともに、前記パイロットノズルと前記メインノズルの他方と前記仕切板との間で前記径方向に空間が形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、仕切板によって、メインノズルの背後における空気の渦変動が抑制されるため、下流の燃焼領域での空気の流れの変動を低減することができ、燃焼振動を抑制することができ、燃焼振動に起因するNOxの増加を抑制することができる。
【0011】
上記燃焼器において、前記仕切板は、前記メインノズルから前記径方向に延びるとともに、前記中心軸方向に延在していることが好ましい。
【0012】
上記燃焼器において、前記仕切板は、径方向外周側から径方向内周側に向かって漸次幅が狭くなるように形成されているとともに、前記仕切板の前記空気流路の下流側の端部は、下流側から上流側に向かって、漸次幅が広くなるように形成されていることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、仕切板の両側に生じる小さな渦が抑制される。即ち、この小さな渦を仕切板を形成する物質で埋める形となり、空気の乱れをより低減することができる。
【0014】
上記燃焼器において
、前記仕切板は、前記パイロットノズル側から隣り合う前記メインノズル同士の間に向かって延びている構成としてもよい。
【0015】
上記構成によれば、メインノズルの背後の空気流の変動が、両側に設けられた仕切板によって囲われるため、大きな変動として発達しにくくなり、空気流の変動成分を低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、仕切板によって、メインノズルの背後における空気の渦変動が抑制されるため、下流の燃焼領域での空気の流れの変動を低減することができ、燃焼振動を抑制することができ、燃焼振動に起因するNOxの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る燃焼器の概略構成図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る燃焼器のスタビライザの詳細図であって、本実施形態に係る燃焼器の効果を説明する図である。
【
図4】本発明の第二実施形態に係る燃焼器の概略構成図である。
【
図5】
図4のB−B断面図であって、本発明の第二実施形態に係る燃焼器の効果を説明する図である。
【
図6】本発明の第三実施形態に係る燃焼器のスタビライザの詳細図であって、本実施形態に係る燃焼器の効果を説明する図である。
【
図8】
図7のC−C断面図であって、従来の燃焼器の空気流を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、燃焼器1は、燃焼器外筒2とこれに同心状に囲まれた燃焼器内筒3とを有しており、燃焼器内筒3の中心軸O位置には、パイロットコーン4に連通したパイロットノズル5が配置されている。燃焼器内筒3中心軸方向他方側(
図1の左側)外周には、予混合器としての後述する各々のメインバーナ6間の位置より延びて燃焼器外筒2の背面壁2aへと達する内筒サポート7が設けられており、これにより燃焼器内筒3を燃焼器外筒2に固定している。
【0019】
パイロットノズル5の周囲には、メインバーナ6に連通したメインノズル8が配設されており、また燃焼器内筒3は中心軸方向一方側(
図1の右側)で図示しない尾筒に連絡している。また、燃焼器内筒3とこれを囲んだ燃焼器外筒2との間には、矢印Fで示すように空気が供給される空気流路10が形成されており、その入口にはパンチングメタル等より成る整流板11が設けられている。燃焼器内筒3の中心軸方向他方側の端部付近には、断面が例えばC形状で全体がリング状のターニングベーン12が配置されており、これにより空気流Fがスムーズに流れるようにしている。
【0020】
メインバーナ6内において、メインノズル8の周囲にはメインスワラ13が設けられている。このメインスワラ13の空気流上流側において、メインノズル8外周面の平板ノズル14から燃料(メイン燃料)が噴出される。そして、この燃料はメインスワラ13の働きにより、メインバーナ6において空気流路10からの空気と混合し、予混合気を形成する。
【0021】
その他、パイロットノズル5の先端の噴出孔からは、燃料(パイロット燃料)が噴出される。そして、この燃料はパイロットノズル5の周囲に設けられたパイロットコーン4等により拡散火炎を形成し、保炎性を高めている。以上のようにして、パイロットノズル5は拡散炎として火炎を安定させ、メインノズル8は予混合炎として低NOx化を図っている。
【0022】
図2に示すように、各々のメインノズル8には、スタビライザ16(仕切板)が設けられている。スタビライザ16は、空気の流れ方向上流側から見て、メインノズル8の背後(中心軸O側)に設けられた矩形形状の仕切板である。具体的には、スタビライザ16は燃焼器1の中心軸Oとメインノズル8との間の空間において、メインノズル8から燃焼器1の径方向に延びるとともに、燃焼器1の中心軸方向に延在するように形成されている。
スタビライザ16は、燃焼器外筒2の背面壁2aより、中心軸方向一方側(
図1の右側、ノズル先端側)に向かって、メインノズル8の所定位置まで延在している。
【0023】
図1及び
図3を参照して燃焼器1内の空気の主な流れを述べると、図示しない車室から整流板11を経て空気流路10へと流入した空気がターニングベーン12で180°ターンする。ここで、空気流Fはスタビライザ16によって整流される。即ち、180°ターンした後に、メインノズル8を避けるようにして流れた後、メインノズル8に巻き込まれるようにして流れる空気流Fにおいて、スタビライザ16の一面側での流れと他面側における流れとの間に偏りがなくなり、渦変動が抑制される。
【0024】
上記実施形態によれば、スタビライザ16によって、メインノズル8の背後における空気の渦変動が抑制されるため、下流のメインスワラ13や、メインバーナ6での空気の流れの変動を低減することができ、燃焼振動を抑制することができ、燃焼振動に起因するNOxの増加を抑制することができる。
【0025】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態に係る燃焼器1Bついて、図面に基づいて説明するが、上述の第一実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第一実施形態と異なる構成について説明する。
【0026】
図4及び
図5に示すように、本実施形態のスタビライザ16Bは、燃焼器1Bの径方向外周側から径方向内周側に向かって漸次幅が狭くなるように形成されている。即ち、スタビライザ16Bの中心軸Oに直交する断面形状は、径方向内周側に突出する頂点を有する三角形状とされている。
【0027】
また、スタビライザ16Bの空気流路10の下流側(中心軸方向一方側、
図4の右側)の端部は、下流側(中心軸方向一方側)から上流側(中心軸方向他方側)に向かって、漸次幅が広くなるように形成されている。即ち、スタビライザ16Bは、上流側から下流側に向かって尻窄みとなる、下流側が尖った形状を有している。
【0028】
上記実施形態によれば、第一実施形態に係るスタビライザ16の両側に生じる小さな渦(
図3に符号Esで示す)が抑制される。即ち、この小さな渦をスタビライザ16Bを形成する例えば金属で埋める形となり、空気の乱れをより低減することができる。
【0029】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態に係る燃焼器1Cついて、図面に基づいて説明する。
図6に示すように、本実施形態のスタビライザ16Cは、パイロットノズル5側から隣り合うメインノズル8同士の間に向かって延びている。即ち、スタビライザ16Cは、径方向内周側の端部(基端側)がパイロットノズル5に固定されており、径方向外周側の端部がメインノズル8とメインノズル8との間に向かうように方向付けられている。
【0030】
第一実施形態、及び第二実施形態のスタビライザと同様に、スタビライザ16Cの中心軸方向他方側は、燃焼器外筒2の背面壁2aに達しており、中心軸方向一方側(ノズル先端側)は、メインノズル8の所定位置まで延在している。
【0031】
上記実施形態によれば、メインノズル8の背後の空気流Fの変動が、両側に設けられたスタビライザ16Cによって囲われるため、大きな変動として発達しにくくなり、空気流Fの変動成分を低減することができる。その結果、下流の燃焼領域での空気の流れの変動を低減することができ、燃焼振動の低下させることができる。さらに、NOxの増加も抑制することができる。
【0032】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記各実施形態においては、燃焼器1の中心軸O位置にパイロットノズル5を配置する構成としたが、パイロットノズル5が設けられていない燃焼器にも本発明は適用可能である。
【0033】
また、スタビライザ16の中心軸方向の長さに関しては、上記各実施形態に示したように、燃焼器外筒2の背面壁2aよりメインノズル8の所定位置まで延在している必要はなく、適宜変更することが可能である。例えば、燃焼器外筒2の背面壁2aに接続されている必要はない。
【0034】
また、スタビライザ16の径方向の長さに関しても、適宜変更が可能である。即ち、第一実施形態においては、スタビライザ16は、メインノズル8からパイロットノズル5まで延びているが、例えばメインノズル8とパイロットノズル5の中間の位置まで延びる径方向長さとしてもよい。
また、スタビライザ16の個数も適宜変更可能であり、例えば第一実施形態のように全てのメインノズル8に対してスタビライザ16を設ける必要はなく、解析結果などに応じて適宜調整することが可能である。
【0035】
また、第一実施形態の燃焼器1に第三実施形態のスタビライザ16Cを組み合わせることによって、空気流Fをさらに細かく制御する構成としてもよい。
また、第三実施形態のスタビライザ16Cの形状を、第二実施形態のスタビライザ16Bのような断面三角形状のスタビライザとしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 燃焼器
2 燃焼器外筒
3 燃焼器内筒
5 パイロットノズル
8 メインノズル
10 空気流路
16 スタビライザ(仕切板)
O 中心軸