(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記音速−熱量関係指標として、予め熱量の判明し組成の異なる複数の標準ガス各々の標準状態における音速に基づいて作成された音速−熱量関係指標を記憶する記憶手段と、
前記音速導出手段により求められた音速と、前記温度計測手段により計測された温度と、前記熱量導出用圧力とから、標準状態における標準音速を導出する標準音速導出手段とを備え、
前記瞬時熱量導出手段が、前記音速−熱量関係指標と前記標準音速とから前記瞬時熱量を導出する請求項1に記載のガスメーター。
単位時間あたりに前記流路を通過する前記測定対象ガスの体積である単位時間通過体積を求める単位時間通過体積導出手段と、前記単位時間通過体積と、前記温度計測手段により計測された温度と、前記熱量導出用圧力とから、標準状態に換算した場合の前記単位時間あたりの通過体積である単位時間通過標準体積を求める単位時間通過標準体積導出手段を備え、
前記瞬時熱量と前記単位時間通過標準体積とから前記単位時間あたりに前記流路を通過する前記測定対象ガスの熱量である単位時間通過熱量を導出する単位時間通過熱量導出手段を備える請求項1又は2に記載のガスメーター。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の熱量計測装置は、熱量の計測にあたり絶対圧を計測する圧力センサが必須となるなど、一般の各住戸に設置する装置としては大掛かりである。このため、仮に特許文献1に記載の構造を備えたガスの熱量を計測できるガスメーターを各住戸などに設置するとすれば、各ガスメーターに圧力センサが必要となりコストの増加を招く上、ガスメーターが大型化するという問題がある。
【0007】
すなわち、特許文献1に開示の構造では、適切にガスの総熱量を計測するために、圧力センサを備える必要があり、仮に当該構造をガスメーターに採用した場合、該ガスメーターは高価になってしまう上に、大型化してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、個別に圧力センサを備えることなく精度よくガスの熱量を計測可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るガスメーターの特徴構成は、測定対象ガスが流れる流路と、
前記測定対象ガスの音速を求める音速導出手段と、
前記測定対象ガスの温度を計測する温度計測手段と、圧力を求める圧力導出手段と、前記測定対象ガスの瞬時熱量を導出する瞬時熱量導出手段と、
前記流路が設置された地域の大気圧情報を外部から取得し保持する大気圧情報保持手段とを備え、
前記圧力導出手段が、前記大気圧情報から前記測定対象ガスの圧力として熱量導出用圧力を求め、
前記瞬時熱量導出手段が、前記測定対象ガスの音速と熱量との関係として求まる音速−熱量関係指標と、前記音速導出手段により求められた音速と、前記温度計測手段により計測された温度と、前記熱量導出用圧力に基づいて瞬時熱量を導出する点にある。
【0010】
一般的に、大気圧はある程度の範囲(地域)においてほぼ一定である。このため、ガスメーターが設置された地域の大気圧情報は、当該ガスメーターにおける測定対象ガスの圧力(当該ガスメーター周囲の大気圧)と等価であるとみなすことができる。
【0011】
上記特徴構成によれば、外部から当該ガスメーターが設置された地域の大気圧情報を取得し、当該大気圧情報に基づいて熱量導出用圧力を求め、当該熱量導出用圧力を熱量の導出に使用する。すなわち、ガスメーターは、圧力センサにより測定対象ガスの圧力を直接計測することなく、瞬時熱量を導出することができる。このとき、測定対象ガスの温度と圧力に基づくため、瞬時熱量を正確に導出できる。よって、上記特徴構成によれば、個別に圧力センサを備えることなく、精度よくガスの熱量を計測可能なガスメーターを実現できる。
【0012】
なお、本発明における『音速』とは、気体(ガス)中での音波の伝播速度を意味する。
【0013】
ここで、前記音速−熱量関係指標として、予め熱量の判明し組成の異なる複数の標準ガス各々の標準状態における音速に基づいて作成された音速−熱量関係指標を記憶する記憶手段と、
前記音速導出手段により求められた音速と、前記温度計測手段により計測された温度と、前記熱量導出用圧力とから、標準状態における標準音速を導出する標準音速導出手段とを備え、
前記瞬時熱量導出手段が、前記音速―熱量関係指標と前記標準音速とから前記瞬時熱量を導出すると好適である。
【0014】
上記特徴構成によれば、瞬時熱量の導出にあたり、記憶手段は標準状態における音速−熱量関係指標を記憶するだけでよいため、必要な記憶容量を抑えられることに加え、当該音速−熱量関係指標を用いて、標準音速を熱量に換算するだけで瞬時熱量が求まるため、ガスメーターの制御回路に要求される処理能力を抑えることができ、コスト面で優れたガスメーターを実現することができる。
【0015】
さらに、単位時間あたりに前記流路を通過する前記測定対象ガスの体積である単位時間通過体積を求める単位時間通過体積導出手段と、前記単位時間通過体積と、前記温度計測手段により計測された温度と、前記熱量導出用圧力とから、標準状態に換算した場合の前記単位時間あたりの通過体積である単位時間通過標準体積を求める単位時間通過標準体積導出手段を備え、
前記瞬時熱量と前記単位時間通過標準体積とから前記単位時間あたりに前記流路を通過する前記測定対象ガスの熱量である単位時間通過熱量を導出する単位時間通過熱量導出手段を備えると好適である。
【0016】
上記特徴構成によれば、単位時間通過体積導出手段により導出された単位時間通過体積を標準状態に換算した単位時間通過標準体積と、瞬時熱量とから単位時間通過熱量が導出されるため、より正確に単位時間ごとの熱量を導出することができる。すなわち、より精度よくガスの熱量を計測可能なガスメーターを実現できる。
【0017】
ここで、前記流路が設置される位置における標高情報を保持する標高情報保持手段を備え、
前記圧力導出手段が、前記大気圧情報と前記標高情報とから、前記測定対象ガスの前記熱量導出用圧力を求めるように構成されると好適である。
【0018】
上記特徴構成によれば、標高情報保持手段を備えるのでガスメーターが設置された位置における標高の影響で、当該ガスメーターにおける測定対象ガスの圧力が、当該ガスメーターが設置された地域の大気圧情報と異なる場合であっても、大気圧情報と標高情報とから発熱量導出用圧力を求め、より精度よくガスの熱量を計測可能なガスメーターを実現できる。
【0019】
また、一対の超音波送受信器と、一方の超音波送受信機から他方の超音波送受信器へ前記測定対象ガスの流れ内を超音波が伝播する伝播時間を前記単位時間ごとに双方向で捉える超音波センサと、前記超音波センサにより得られる前記一対の伝播時間から、前記測定対象ガスの流速を求める流速導出手段と、を備え、前記音速導出手段が、前記超音波センサにより得られる前記一対の伝播時間から、前記測定対象ガスの音速を求め、前記流量導出手段が、前記流速導出手段により求められる流速と前記流路の断面積および前記単位時間から、当該単位時間に前記流路を流れる前記測定対象ガスの流量を導出するように構成されると好適である。
【0020】
上記特徴構成によれば、超音波センサによって流速と音速との双方を求め、当該流速と音速とに基づいて測定対象ガスの単位時間通過体積と瞬時熱量との双方を求めることができる。よって、例えば流量導出手段として公知の流量測定計を別途備える場合に比べて、ガスメーターの大型化を抑制することができる。すなわち、よりコスト面で優れたガスメーターを実現することができる
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.ガスメーターの概要
本発明の実施形態を、以下、図面に基づいて説明する。
図1は、本願のガスメーター1の構成を模式的に描いたものである。このガスメーター1は、各住戸などに設置され、各住戸で使用されるガス2が流れる流路3を備えている。ここで、ガス2は、基礎物理量検出手段4の測定対象となるガスを意味し、ガス供給元(例えば都市ガス製造業者)から各住戸などに供給される。また、流路3はいわゆる低圧導管であり、その内部を流れるガス2の圧力は0.1MPa未満で、その太さはおおむね直径5cm〜30cmである。
【0023】
ここで、流路3を流れるガス2の圧力Pは、平地などにおいては大気圧付近であるが、ガスメーター1が設置された標高によって、若干の違いが生じる。このような圧力の差異は、流路3を流れるガス2の熱量の導出において影響を及ぼすため、本実施形態におけるガスメーター1は、流路3を流れるガス2の圧力Pを求める圧力導出手段31を備えている。なお、圧力導出手段31は、流路3を流れるガスの圧力Pを直接計測するような圧力センサではなく、その他の情報から圧力を計算により導出するように構成されている。本実施形態においては、
図1、
図2に示されるように、圧力導出手段31は、後述する大気圧情報保持手段32及び標高情報保持手段33が保持する情報から、ガス2の圧力Pを導出するように構成されている。
【0024】
ガスメーター1は、流路3を流れるガス2の流量及び熱量を測定するために必要なガス2に関する物理量を検出するための基礎物理量検出手段4を備えている。さらに、基礎物理量検出手段4で検出された物理量に基づき、単位時間あたりに流路3を通過するガス2の体積である単位時間通過体積ΔVを導出する単位時間通過体積導出手段13と、単位時間あたりに流路3を通過するガス2の熱量である単位時間通過熱量ΔQを導出する単位時間通過熱量導出手段23とを備えている。ここで、『単位時間』とは、ガス2の流量及び熱量の計測間隔を意味しており、予め定められた値である。単位時間としては、例えば、1〜5秒の間で設定すると良い。本実施形態においては、2秒と設定している。以下では、単位時間をΔtと表す。また、ガスメーター1は、複数の単位時間Δtに渡って、単位時間通過体積導出手段13により導出されるガス2の単位時間通過体積ΔVを積算する流量積算手段14と、複数の単位時間Δtに渡って、単位時間通過熱量導出手段23により導出されるガス2の単位時間通過熱量ΔQを積算する熱量積算手段24とを備えている。これらの手段及び後述する各種手段は、マイクロプロセッサ及び半導体メモリを含むマイクロコンピュータ5を主要な機器として構築される。
【0025】
加えて、検針や保守点検などの作業の際に、作業者が目視にてガスメーター1の状態を確認できるように、ガスメーター1は少なくとも単位時間通過熱量導出手段23により導出される単位時間通過熱量ΔQを外部出力可能な外部出力手段6を備えている。外部出力手段6としては、例えば、ガスメーター1に備えられた液晶表示などを用いることができる他、遠隔に備えられたディスプレイなどを用いても構わない。本実施形態においては、外部出力手段6は、単位時間通過熱量導出手段23により導出される単位時間通過熱量ΔQ、熱量積算手段24により積算される熱量の積算値ΣΔQ、単位時間通過体積導出手段13により導出される単位時間通過体積ΔV、及び流量積算手段14により積算される単位時間通過体積の積算値である流量積算値ΣΔVを表示可能に構成されている。
【0026】
2.ガスメーターの詳細構成
2−1.基礎物理量検出手段
図2は、本願のガスメーター1の詳細構成を示す。本実施形態においては、ガスメーター1は、基礎物理量検出手段4として、超音波センサ41と、ガス2の温度Tを計測する温度センサ42と、を備えている。超音波センサ41は、一対の超音波送受信器51(
図3)を備え、一方の超音波送受信器51から他方の超音波送受信器51へガス2の流れ内を超音波が伝播する伝播時間を単位時間Δtごとに双方向で捉えるように構成されている。
【0027】
ここで、本実施形態における「温度センサ42」は、本発明における「温度計測手段」に相当する。
【0028】
超音波センサ41は、一対の伝播時間t1、t2が得られるように構成されている。超音波センサ41の詳細構成について、
図3、
図4に基づいて説明する。超音波センサ41は、一対の超音波送受信器51を、流路3の流れに沿って上流と下流との二箇所に配置した構成で備えている。ここで、一対の超音波送受信器51は、流路3の軸Z方向で異なった位置に配設されるため、両者間を渡る超音波はガス2の流速vの影響を受け、上流側から下流側に伝播される超音波の伝播時間は加速され、逆の場合は減速される。
【0029】
本実施形態における超音波センサ41においては、一方の超音波送受信器51から他方の超音波送受信器51へ超音波が前記製品ガスの流れ内を伝播する伝播時間を双方向で捕らえることができる。(ここでは、上流側にあるものから下流側にあるものへの超音波の伝播時間(順方向伝播時間)をt1と、逆方向で伝播する超音波の伝播時間(逆方向伝播時間)をt2とする。)
【0030】
2−2.単位時間通過体積ΔVの導出
単位時間通過体積ΔVを導出するために、ガスメーター1は、超音波センサ41により得られる一対の伝播時間t1、t2から、ガス2の流速vを求める流速導出手段11を備えている。前述の単位時間通過体積導出手段13は、流速導出手段11により求められる流速vと流路3の断面積Sおよび単位時間Δtから単位時間通過体積ΔVを求めるように構成されている。
【0031】
より具体的には、ガスメーター1は、流速導出手段11により求められる流速vと流路3の断面積Sとの積である瞬時流量vS(超音波センサ41による計測タイミングにおける流量の瞬時値)を求める瞬時流量導出手段12を備えている。単位時間通過体積導出手段13は、単位時間通過体積ΔVとして、瞬時流量導出手段12により求められた瞬時流量vSと単位時間Δtとの積であるvSΔtを求めるように構成されている。
【0032】
ここで、流速導出手段11が、一対の伝播時間t1、t2からガス2の流速vを導出する過程は次のようになる。
図4に示すように、前述の超音波センサ41に備えられる一対の超音波送受信器51は、位置関係が固定されているため、相互に超音波送受信器51間を伝播する伝播時間t1、t2は、
図4中に示す式1、式2で表される。ここで、Lは
図4に示す伝播経路の距離であり、Zは管状の流路3の軸方向であり、Cはガス2の流速を、vはガス2中での音速を示している。
【0033】
式1、式2は、2元連立方程式であるため、式3、式4に示すように、音速C及び流速vを、一対の伝播時間t1、t2から求めることができる。即ち、前述の流速導出手段11は、式3の処理を行うことにより、一対の伝播時間t1、t2から流速vを求める。
【0034】
2−3.圧力の導出
単位時間通過熱量導出手段23による単位時間通過熱量ΔQの導出にあたっては、上述のように、ガス2の圧力情報が必要となる。以下では、ガス2の圧力を求める圧力導出手段31について、
図1及び
図2に基づいて詳細に説明を行う。
【0035】
2−3−1.圧力の導出のための構成
圧力導出手段31でガス2の圧力を導出するため、ガスメーター1は、少なくとも、ガスメーター1が設置された地域の大気圧情報を保持する大気圧情報保持手段32を備えている。ここで、ガスメーター1が設置された地域とは、当該地域内の各地点における大気圧が同一であるとみなせる程度の領域を意味する。大気圧情報としては、例えば、国内であれば気象庁が提供している国際地点番号ごとの気圧データ(海面更正気圧)を用いることができる。
【0036】
また、大気圧情報保持手段32は、外部から取得した大気圧情報(上記した「ガスメーター1が設置された地域の大気圧情報」であり、本実施例では大気圧情報が後述する海面更正気圧P
0の状態で得られる)を保持するように構成されている。本実施形態においては、
図1に示すように、ガスメーター1は、外部のサーバー61と通信を行うための通信手段34を備えている。通信手段34は、有線、無線を問わず、少なくともサーバー61からガスメーター1へと一方向に通信可能なネットワークを構成できるものであれば良い。このような構成によりガスメーター1は、外部のサーバー61から送信された大気圧情報を受信し、大気圧情報保持手段32に保持することができる。
【0037】
さらに、本実施形態においては、ガスメーター1は、ガスメーター1が設置される位置における標高情報を保持する標高情報保持手段33を備えている。ここで、ガスメーター1が設置される位置における標高情報は、基本的に設置後に変動することはないため、ガスメーター1の設置時にあらかじめ入力できるように構成されていると好適である。具体的には、ガスメーター1の設置時に、作業者が標高情報取得手段8を用いて、標高情報を取得し、標高情報保持手段33にその情報を入力すると好適である。ここで、標高情報取得手段8としては、例えば、GPSを用いることができる。
【0038】
2−3−2.圧力の導出方法
ガスメーター1の流路3におけるガス2の圧力Pは以下のようにして導出する。ガスメーター1が設置された標高hの位置における大気圧Phは、平均海水面での気圧(海面更正気圧)をP
0、気温を288Kと仮定すれば、国際民間航空機関(ICAO)が定めたICAO標準大気では、次式
Ph=P
0×{(288−0.0065・h)/288}
5.25
で求められる。よって、圧力導出手段31は、上式を用いて大気圧情報保持手段32に保持された大気圧情報(P
0)と、標高情報保持手段33に保持された標高情報(h)とから、ガス2の圧力(Ph)を求めるように構成されている。
【0039】
ここで、圧力導出手段31により求められるガス2の圧力(Ph)が、本発明における「熱量導出用圧力」に相当する。なお、ガスメーター1内を流れるガス2の圧力は、通常、大気圧に対して数十hPa程度の幅をもって供給されるので、その分を適宜補正しても構わない。
【0040】
3.単位時間通過熱量ΔQの導出
ガスメーター1は、単位時間通過熱量ΔQを導出するために、超音波センサ41により得られる一対の伝播時間t1、t2から、ガス2中での音速Cを求める音速導出手段21、及び流路3を通過するガス2の温度Tを計測する温度センサ42を備えている。さらに、ガスメーター1は、ガス2の標準状態における音速C
0と熱量との関係として求まる音速−熱量関係指標f(C
0)、及び音速導出手段21により求められた音速Cに基づいてガス2の瞬時熱量Qを導出する瞬時熱量導出手段22を備えている。
【0041】
より詳しくは、音速導出手段21により求められた音速Cは、標準音速導出手段21xにより温度センサ42により取得されたガス2の温度T及び、圧力導出手段31により求められるガス2の圧力(Ph)を用いて標準状態における音速C
0に換算され、瞬時熱量導出手段22は、音速C
0に基づいて音速−熱量関係指標f(C
0)から瞬時熱量Qを導出する。
【0042】
さらに、単位時間通過熱量導出手段23が、瞬時熱量導出手段22により導出された瞬時熱量Qと、単位時間通過体積導出手段13により導出された単位時間通過体積ΔVとに基づいて、単位時間通過熱量ΔQを求めるように構成されている。
【0043】
より詳しくは、単位時間通過体積導出手段13により導出された単位時間通過体積ΔVは、単位時間通過標準体積導出手段13xにより温度センサ42により取得されたガス2の温度Tと、圧力導出手段31により求められるガス2の圧力(Ph)を用いて標準状態における単位時間通過体積ΔV0に換算され、単位時間通過熱量導出手段23は、単位時間通過体積ΔV0と瞬時熱量Qとから単位時間通過熱量ΔQを導出する。
【0044】
以下では、本実施形態における単位時間通過熱量導出手段23による単位時間通過熱量ΔQの導出について、より詳しく説明する。まず、単位時間通過熱量ΔQの導出について説明する前に、瞬時熱量Qの導出について説明する。
【0045】
ガスメーター1は、複数の予め熱量が判明し組成の異なるガス各々の標準状態における音速と熱量との関係として求まる音速−熱量関係指標f(C
0)を記憶する記憶手段25を備えている。ここで、「複数の予め熱量が判明し組成の異なるガス」としては、流路3を通過するガス2となり得るものを選択すると良い。本実施形態においては、熱量が40〜46MJ/Nm
3のガスを選択している。これらのガスの標準状態における音速C
0は以下の通りである。
【表1】
【0046】
図5に、縦軸に標準状態における熱量を、横軸に標準状態(0℃、1気圧)における音速をとったグラフに、表1の値をプロットしたときの各点と、記憶手段25が記憶する音速−熱量関係指標f(C
0)の一例を示す。同図において、実線で示されている相関線が、関係指標f(C
0)に相当する。本実施形態においては、
図5に示す相関線は、1次相関式で表されている。ここでは、この1次相関式を、表1の値から最小二乗法によって求めている。
【0047】
また、ガスメーター1が備える標準音速導出手段21xは、音速導出手段21が求めた音速Cを、数1を用いて標準状態(0℃、1気圧)での音速C
0に換算する。
【数1】
【0048】
ここで、Rは気体定数、Tは絶対温度[K]、Mは気体の分子量、γは比熱比である。ある瞬間におけるガス2は、R、M、γは一定の値をとるので、ある瞬間においては、ガス2の音速CはT
1/2に比例すると考えられる。以上より、標準音速導出手段21xは、数1よりある瞬間における音速Cとそのときの温度Tから、標準状態(0℃)での音速C
0を導出することができる。
【0049】
以上の構成により、
図2に示すように、瞬時熱量導出手段22が、記憶手段25が記憶する音速−熱量関係指標f(C
0)と標準音速導出手段21xが導出した音速C
0から、瞬時熱量Qを求めている。
【0050】
次に、単位時間通過熱量ΔQの導出について説明する。単位時間通過熱量ΔQの導出にあたり、単位時間通過標準体積導出手段13xが、単位時間通過体積導出手段13により導出された単位時間通過体積ΔVを、数2(理想気体の状態方程式)を用いて標準状態(0℃、1気圧)における単位時間通過体積ΔV
0に換算する。
【数2】
【0051】
ここで、流路3内の圧力Pには、上述したように圧力導出手段31により求められるガス2の圧力(Ph)が相当し、Vが単位時間通過体積ΔVに相当する。なお、Tは絶対温度である。また、nはガス2のモル数、Rは気体定数を表す。よって、温度センサ42が計測したガス2の温度Tを用いることで、単位時間通過標準体積導出手段13xは、標準状態における単位時間通過体積ΔV
0を導出することができる。
【0052】
単位時間通過熱量導出手段23は、単位時間通過標準体積導出手段13xが求めた標準状態における単位時間通過体積ΔV
0に、瞬時熱量導出手段22が導出した瞬時熱量Qを乗じることにより、単位時間通過熱量ΔQを導出する。
【0053】
4.その他の構成
図2に示すように、ガスメーター1は、単位時間通過体積導出手段13により求めた単位時間通過体積ΔVの積算値である流量積算値ΣΔVを保持する流量積算手段14と、単位時間通過熱量導出手段23により求めた単位時間通過熱量ΔQの積算値である熱量積算値ΣΔQを保持する熱量積算手段24とを備えている。流量積算手段14及び熱量積算手段24は、長期間にわたり、単位時間通過体積ΔVの積算値及び単位時間通過熱量ΔQの積算値を保持できるように構成されている。ここでの期間は、例えば10年間に設定される。
【0054】
以上のような構成により、本願発明に係るガスメーター1は、ガス料金の課金のために用いられるガスメーターとして用いることができる。
【0055】
〔その他の実施形態〕
(1)上記実施形態においては、ガスメーター1が、標高情報保持手段33を備える場合の例を説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、圧力導出手段31が、大気圧情報保持手段32のみに基づいて、ガス2の圧力を求めるように構成されても構わない。このように構成されたガスメーター1は、例えば、外部から取得する大気圧情報(大気圧)の値が、そのままガス2の圧力として用いることができる場所(例えば、海面更正気圧に更正されておらず、標高も含めた意味での大気圧情報となっている場合)においてのみ使用すると良い。
【0056】
(2)上記実施形態においては、大気圧情報保持手段32が、外部から海面更正気圧を取得するように構成されている場合の例を説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、大気圧情報保持手段32が、ガスメーター1が設置された地域における特定の標高での大気圧値を取得するように構成されても構わない。この場合でも、ICAO標準大気を用いて、ガスメーター1が設置された位置での圧力に換算可能である。
【0057】
(3)上記実施形態においては、大気圧情報保持手段32が、外部のサーバーから大気圧情報を取得する場合の例を説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、ガスメーター1が外部のサーバーと直接通信し難い場所に設置されている場合には、周囲のガスメーター1から、近距離無線通信技術を用いてP2P通信により大気圧情報を取得するように構成されていても構わない。
【0058】
(4)上記実施形態においては、超音波センサ41が一対の伝播時間t1、t2を得るように構成され、音速導出手段21が伝播時間逆数差分法を用いて音速Cを導出するように構成されている場合の例を説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。例えば、超音波センサ41が超音波送受信器51間での一対の周波数を得るように構成され、音速導出手段21がシングアラウンド法を用いて音速Cを導出するように構成されても構わない。
【0059】
(5)上記実施形態においては、記憶手段25が、予め熱量の判明し組成の異なる複数の標準ガス各々の標準状態における音速に基づいて作成された音速−熱量関係指標を記憶する構成の場合の例を説明した。しかし、本発明の実施形態にはこれに限定されない。すなわち、瞬時熱量導出手段22は、音速−熱量関係指標と、音速導出手段21により導出された音速Cと、温度センサ42により取得されたガス2の温度Tと、圧力導出手段31により求められるガス2の圧力(Ph)とから、瞬時熱量Qを導出できれば良く、その導出方法は上記実施形態に記載したものに限定されない。
【0060】
具体的には、例えば、あらかじめ用意された複数の圧力・温度の条件下における標準ガス各々の音速−熱量関係指標(または関係式)のうち、温度センサ42により取得されたガス2の温度Tと、圧力導出手段31により求められるガス2の圧力(Ph)とに一致する音速−熱量関係指標(または関係式)を用い、音速Cから瞬時熱量Qを導出しても構わない。
【0061】
この場合、記憶手段25が、複数の圧力・温度の条件下における標準ガス各々の音速−熱量関係指標を記憶しても構わない。もしくは、記憶手段25を備えず、複数の音速−熱量関係指標関係式から直接、ガス2の温度T、圧力(Ph)、音速Cに基づいて瞬時熱量Qを導出するように構成しても構わない。