(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
予め熱量が判明し組成の異なる複数の標準ガス各々の標準状態における音速に基づいて作成された前記音速−熱量関係指標を記憶する記憶手段を備えた請求項1記載のガスメーター。
【背景技術】
【0002】
現在、各住戸に対するガス料金は、一定期間に各住戸で使用されたガス量(積算流量)に基づくものとされている。このようなシステムが採用されている理由は、国内においては、各住戸などに供給されるガスは、一定の熱量を備えるようにガスの供給側で厳密に調整されているため、使用されたガス量が分かれば使用されたガスの総熱量も明らかとなり、適切に課金を行うことができるためである。このような事情に基づき、現在普及している上述のガスメーターは、使用されるガス量のみを計測するように構成されている。
【0003】
ところで、近年では、化石燃料に替わるエネルギー源として、バイオガスの活用が進められており、将来的には、各地に設立されたバイオガスプラントから各住戸などにガスの供給が行われることが予想される。一般的に、ガスの熱量の調整には多額のコストが必要となるため、従来行われてきたガスの熱量調整精度に対して、かなり弛めの熱量調整精度を採用し、各住戸に供給されるガスの熱量が、各地域で或は各日時で、変動する可能性がある。
【0004】
すなわち、将来的には、熱量の異なるガスが各住戸などに供給される可能性がある。この場合、ガス量のみを計測する現在のガスメーターでは、使用されたガスの総熱量を正しく把握することができず、適切に課金を行うことができない。一方で、高圧ガスの熱量を計測する装置としては特許文献1に記載のものが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の熱量測定装置は、ガスの製造設備に備えることを考慮しており、一般の各住戸に設置するには大掛かりであり、熱量を計測できる課金用途のガスメーターとしてどのような構成のものが適しているかは、明らかでない。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱量を計測できるように構成された課金用途のガスメーターとして、コスト面で優れるとともに小型化に適したガスメーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るガスメーターの特徴構成は、測定対象ガスが流れる流路と、
一対の超音波送受信器と、
一方の超音波送受信機から他方の超音波送受信器へ前記測定対象ガスの流れ内を超音波が伝播する伝播時間を単位時間ごとに双方向で捉える超音波センサと、
前記測定対象ガスの温度を計測する温度センサとを備え、
前記超音波センサにより得られる前記一対の伝播時間から、前記測定対象ガスの音速を求める音速導出手段と、前記測定対象ガスの流速を求める流速導出手段とを備え、
前記測定対象ガスの標準状態における音速と熱量との関係として求まる音速−熱量関係
指標、
前記温度センサにて取得された温度及び前記音速導出手段により求められた音速に基づいて前記測定対象ガスの瞬時熱量を導出する瞬時熱量導出手段を備え、
前記流速導出手段により求められる流速と前記流路の断面積および前記単位時間から、当該単位時間あたりに前記流路を通過する前記測定対象ガスの単位時間通過体積を導出する単位時間通過体積導出手段と、
前記瞬時熱量と前記単位時間通過体積と
前記温度センサにて取得された温度とに基づいて、前記単位時間あたりに前記流路を通過する前記測定対象ガスの単位時間通過熱量を導出する単位時間通過熱量導出手段を備え、
少なくとも、前記単位時間通過熱量を外部出力する外部出力手段を備えた点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、超音波センサにより得られる前記一対の伝播時間から測定対象ガスの音速と流速とを求めることができ、この音速と流速とに基づいて測定対象ガスの熱量を求めることができる。よって、超音波センサと温度センサのみによって流路を流れる測定対象ガスの瞬時熱量の測定を行うことができる。すなわち、熱量を計測できるように構成された課金用途のガスメーターとして、コスト面で優れるとともに小型化に適したガスメーターを提供することができる。
【0010】
ここで、本発明における『音速』とは、ガス中での音波の伝播速度を意味する。
【0011】
また、予め熱量が判明し組成の異なる複数の標準ガス各々の標準状態における音速に基づいて作成された前記音速−熱量関係指標を記憶する記憶手段を備えた構成とすると好適である。ここで、本願における標準状態とは、後述するように0℃、1気圧での状態を言う。
【0012】
上記特徴構成によれば、記憶手段に必要な容量を小さくできるとともに、音速−熱量関係指標を基づく瞬時熱量の導出を素早く行うことができる。すなわち、熱量を計測できるように構成された課金用途のガスメーターとして、コスト面で優れるとともに小型化に適したガスメーターを提供することができる。
【0013】
ここで、複数の前記単位時間に渡って、前記単位時間通過熱量を積算した熱量積算値を求める熱量積算手段を備え、
前記熱量積算値が、前記外部出力手段により外部出力される構成とすると好適である。このような特徴構成によれば、ガスメーターの検針時に有用である。
【0014】
また、前記単位時間通過体積が前記外部出力手段により外部出力される構成とすると好適である。このような特徴構成によれば、ガスメーターの点検時にガスメーター内の状況を把握することができる。
【0015】
また、複数の前記単位時間に渡って、前記単位時間通過体積を積算した流量積算値を求める流量積算手段を備え、
前記流量積算値が、前記外部出力手段により外部出力される構成とすると好適である。このような特徴構成によれば、ガスメーターの検針時に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.ガスメーターの概要
本発明の実施形態を、以下、図面に基づいて説明する。
図1は、本願のガスメーター1の構成を模式的に描いたものである。このガスメーター1は、各住戸などに設置され、各住戸で使用されるガス2が流れる流路3を備えている。ここで、ガス2は、基礎物理量検出手段4の測定対象となるガスを意味し、ガス供給元(例えば都市ガス製造業者)から各住戸などに供給される。また、流路3はいわゆる低圧導管であり、その内部を流れるガス2の圧力は0.1MPa未満で、その太さはおおむね直径5cm〜30cmである。
【0018】
また、ガスメーター1は、流路3を流れるガス2の流量及び熱量を測定するために必要なガス2に関する物理量を検出するための基礎物理量検出手段4を備えている。さらに、基礎物理量検出手段4で検出された物理量に基づき、単位時間あたりに流路3を通過するガス2の体積である単位時間通過体積ΔVを導出する単位時間通過体積導出手段13と、単位時間あたりに流路3を通過するガス2の熱量である単位時間通過熱量ΔQを導出する単位時間通過熱量導出手段23とを備えている。ここで、『単位時間』とは、ガス2の流量及び熱量の計測間隔を意味しており、予め定められた値である。単位時間としては、例えば、1〜5秒の間で設定すると良い。本実施形態においては、2秒と設定している。以下では、単位時間をΔtと表す。また、ガスメーター1は、複数の単位時間Δtに渡って、単位時間通過体積導出手段13により導出されるガス2の単位時間通過体積ΔVを積算する流量積算手段14と、複数の単位時間Δtに渡って、単位時間通過熱量導出手段23により導出されるガス2の単位時間通過熱量ΔQを積算する熱量積算手段24とを備えている。これらの手段及び後述する各種手段は、マイクロプロセッサ及び半導体メモリを含むマイクロコンピュータ5を主要な機器として構築される。
【0019】
加えて、検針や保守点検などの作業の際に、作業者が目視にてガスメーター1の状態を確認できるように、ガスメーター1は外部に数値などを出力可能な外部出力手段6を備えている。本実施形態においては、外部出力手段6は、単位時間通過熱量導出手段23により導出される単位時間通過熱量ΔQ、熱量積算手段24により積算される熱量の積算値ΣΔQ、単位時間通過体積導出手段13により導出される単位時間通過体積ΔV、及び流量積算手段14により積算される単位時間通過体積の積算値である流量積算値ΣΔVを表示可能に構成されている。
【0020】
2.ガスメーターの詳細構成
2−1.基礎物理量検出手段
図2は、本願のガスメーター1の詳細構成を示す。本実施形態においては、ガスメーター1は、基礎物理量検出手段4として、超音波センサ41と、ガス2の温度Tを計測する温度センサ42と、を備えている。超音波センサ41は、一対の超音波送受信器51(
図3)を備え、一方の超音波送受信器51から他方の超音波送受信器51へガス2の流れ内を超音波が伝播する伝播時間を単位時間Δtごとに双方向で捉えるように構成されている。
【0021】
超音波センサ41は、一対の伝播時間t1、t2が得られるように構成されている。超音波センサ41の詳細構成について、
図3、
図4に基づいて説明する。超音波センサ41は、一対の超音波送受信器51を、流路3の流れに沿って上流と下流との二箇所に配置した構成で備えている。ここで、一対の超音波送受信器51は、流路3の軸Z方向で異なった位置に配設されるため、両者間を渡る超音波はガス2の流速vの影響を受け、上流側から下流側に伝播される超音波の伝播時間は加速され、逆の場合は減速される。
【0022】
本実施形態における超音波センサ41においては、一方の超音波送受信器51から他方の超音波送受信器51へ超音波が前記製品ガスの流れ内を伝播する伝播時間を双方向で捕らえることができる。(ここでは、上流側にあるものから下流側にあるものへの超音波の伝播時間(順方向伝播時間)をt1と、逆方向で伝播する超音波の伝播時間(逆方向伝播時間)をt2とする。)
【0023】
2−2.単位時間通過体積ΔVの導出
単位時間通過体積ΔVを導出するために、ガスメーター1は、超音波センサ41により得られる一対の伝播時間t1、t2から、ガス2の流速vを求める流速導出手段11を備えている。前述の単位時間通過体積導出手段13は、流速導出手段11により求められる流速vと流路3の断面積Sおよび単位時間Δtから単位時間通過体積ΔVを求めるように構成されている。
【0024】
より具体的には、ガスメーター1は、流速導出手段11により求められる流速vと流路3の断面積Sとの積である瞬時流量vS(超音波センサ41による計測タイミングにおける流量の瞬時値)を求める瞬時流量導出手段12を備えている。単位時間通過体積導出手段13は、単位時間通過体積ΔVとして、瞬時流量導出手段12により求められた瞬時流量vSと単位時間Δtとの積であるvSΔtを求めるように構成されている。
【0025】
ここで、流速導出手段11が、一対の伝播時間t1、t2からガス2の流速vを導出する過程は次のようになる。
図4に示すように、前述の超音波センサ41に備えられる一対の超音波送受信器51は、位置関係が固定されているため、相互に超音波送受信器51間を伝播する伝播時間t1、t2は、
図4中に示す式1、式2で表される。ここで、Lは
図4に示す伝播経路の距離であり、Zは管状の流路3の軸方向であり、Cはガス2の流速を、vはガス2中での音速を示している。
【0026】
式1、式2は、2元連立方程式であるため、式3、式4に示すように、音速C及び流速vを、一対の伝播時間t1、t2から求めることができる。即ち、前述の流速導出手段11は、式3の処理を行うことにより、一対の伝播時間t1、t2から流速vを求める。
【0027】
2−3.単位時間通過熱量ΔQの導出
ガスメーター1は、単位時間通過熱量ΔQを導出するために、超音波センサ41により得られる一対の伝播時間t1、t2から、ガス2中での音速Cを求める音速導出手段21、及び流路3を通過するガス2の温度Tを計測する温度センサ42を備えている。さらに、ガスメーター1は、ガス2の標準状態における音速C
0と熱量との関係として求まる音速−熱量関係指標f(C
0)、及び音速導出手段21により求められた音速Cに基づいてガス2の瞬時熱量Qを導出する瞬時熱量導出手段22を備えている。
より詳しくは、音速導出手段21により求められた音速Cは、標準音速導出手段21xにより温度センサ42により取得されたガス2の温度Tを用いて標準状態における音速C
0に換算され、瞬時熱量導出手段22は、音速C
0に基づいて音速−熱量関係指標f(C
0)から瞬時熱量Qを導出する。
【0028】
さらに、単位時間通過熱量導出手段23が、瞬時熱量導出手段22により導出された瞬時熱量Qと、単位時間通過体積導出手段13により導出された単位時間通過体積ΔVとに基づいて、単位時間通過熱量ΔQを求めるように構成されている。
より詳しくは、単位時間通過体積導出手段13により導出された単位時間通過体積ΔVは、単位時間通過標準体積導出手段13xにより温度センサ42により取得されたガス2の温度Tを用いて標準状態における単位時間通過体積ΔV
0に換算され、単位時間通過熱量導出手段23は、単位時間通過体積ΔV
0と瞬時熱量Qとから単位時間通過熱量ΔQを導出する。
【0029】
以下では、本実施形態における単位時間通過熱量導出手段23による単位時間通過熱量ΔQの導出について、より詳しく説明する。まず、単位時間通過熱量ΔQの導出について説明する前に、瞬時熱量Qの導出について説明する。
【0030】
ガスメーター1は、複数の予め熱量が判明し組成の異なるガス各々の標準状態における音速と熱量との関係として求まる音速−熱量関係指標f(C
0)を記憶する記憶手段25を備えている。ここで、「複数の予め熱量が判明し組成の異なるガス」としては、流路3を通過するガス2となり得るものを選択すると良い。本実施形態においては、熱量が40〜46MJ/Nm
3のガスを選択している。これらのガスの標準状態における音速C
0は以下の通りである。
【表1】
【0031】
図5に、縦軸に標準状態における熱量を、横軸に標準状態(0℃、1気圧)における音速をとったグラフに、表1の値をプロットしたときの各点と、記憶手段25が記憶する音速−熱量関係指標f(C
0)の一例を示す。同図において、実線で示されている相関線が、関係指標f(C
0)に相当する。本実施形態においては、
図5に示す相関線は、1次相関式で表されている。ここでは、この1次相関式を、表1の値から最小二乗法によって求めている。
【0032】
また、ガスメーター1が備える標準音速導出手段21xは、音速導出手段21が求めた音速Cを、数1を用いて標準状態(0℃、1気圧)での音速C
0に換算する。
【数1】
【0033】
ここで、Rは気体定数、Tは絶対温度[K]、Mは気体の分子量、γは比熱比である。ある瞬間におけるガス2は、R、M、γは一定の値をとるので、ある瞬間においては、ガス2の音速CはT
1/2に比例すると考えられる。以上より、標準音速導出手段21xは、数1よりある瞬間における音速Cとそのときの温度Tから、標準状態(0℃)での音速C
0を導出することができる。
【0034】
以上の構成により、
図2に示すように、瞬時熱量導出手段22が、記憶手段25が記憶する音速−熱量関係指標f(C
0)と標準音速導出手段21xが導出した音速C
0から、瞬時熱量Qを求めている。
【0035】
次に、単位時間通過熱量ΔQの導出について説明する。単位時間通過熱量ΔQの導出にあたり、単位時間通過標準体積導出手段13xが、単位時間通過体積導出手段13により導出された単位時間通過体積ΔVを、数2(理想気体の状態方程式)を用いて標準状態(0℃、1気圧)における単位時間通過体積ΔV
0に換算する。
【数2】
【0036】
ここで、流路3内の圧力Pは通常1気圧とみなせ、Vが単位時間通過体積ΔVに相当し、Tは絶対温度である。また、nはガス2のモル数、Rは気体定数を表す。よって、温度センサ42が計測したガス2の温度Tを用いることで、単位時間通過標準体積導出手段13xは、標準状態における単位時間通過体積ΔV
0を導出することができる。
【0037】
単位時間通過熱量導出手段23は、単位時間通過標準体積導出手段13xが求めた標準状態における単位時間通過体積ΔV
0に、瞬時熱量導出手段22が導出した瞬時熱量Qを乗じることにより、単位時間通過熱量ΔQを導出する。
【0038】
以上の構成により、本願発明に係るガスメーター1は、流路3内を通過するガス2の熱量を計測することができる。
【0039】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態においては、単位時間通過体積導出手段13が、流路3の流れに沿って上流と下流との二箇所に超音波送受信器51を配置した構成の超音波センサ41により流速vを求めるように構成されている場合の例を説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、超音波センサ41の配置構成としては、一対の超音波送受信器51を流路を斜めに横断するように配置した構成などその他公知の配置構成も使用できる。