(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明において、特に断りがない限り、有機ELモジュール1の上下左右の位置関係は、
図1の姿勢を基準に説明する。
【0024】
第1実施形態における有機ELモジュール1は、
図1,
図2,
図3のように少なくとも片面にライン状の発光領域30を有した有機EL装置2と、有機EL装置2と外部電源とを電気的に繋ぐ導電部材3と、導電部材3と有機EL装置2とを一体的に固定する枠体5とを有している。
【0025】
有機ELモジュール1の各構成部材について説明する。
有機EL装置2は、
図3のように長方形状の基板11(基材)上に有機EL素子10が積層し、さらにその上から絶縁層17が積層したものである。有機EL素子10は、透光性を有した基板11側から順に第1電極層12と、機能層15と、第2電極層16が積層されたものである。
有機EL装置2は、その面内において、駆動時に実際に発光する発光領域30と、駆動時の給電に寄与する複数の給電領域31,32を有している。具体的には、発光領域30は、
図3のように幅方向wにおいて有機EL装置2の中央に位置しており、給電領域31,32は、発光領域30の周囲であって、幅方向wに対向する基板11の2辺(長辺)近傍にそれぞれ配されている。また、発光領域30及び給電領域31,32は、長手方向l(幅方向に対して直交する方向)に延伸している。
なお、本実施形態の有機EL装置2は、
図3のように少なくとも基板11側から光を放射するいわゆる「ボトムエミッション」型の有機EL装置である。
【0026】
発光領域30は、
図3のように発光素子分離溝23と第1電極層分離溝21との間に位置する領域であり、平面視における第1電極層12と、機能層15と、第2電極層16の重畳部位である。すなわち、発光領域30は、有機ELモジュール1を駆動したときに有機EL装置2内の機能層15が発光する領域であり、ライン状の領域である。
ここでいう「ライン状」とは、線状であって、短辺たる幅に対する長辺たる長さの比率(アスペクト比)が極めて大きい形状であることを表す。
すなわち、本実施形態の発光領域30は、発光領域30の短手方向の長さ(幅)に対する長手方向の長さ(長さ)の比率(アスペクト比)が極めて大きい。
具体的には、本実施形態の発光領域30のアスペクト比は10以上となっており、15以上であることが好ましい。
また、発光領域30の長手方向の長さは、基板11の長手方向lの長さの90パーセント以上100パーセント以下であり、95パーセント以上100パーセント未満であることが好ましい。
【0027】
また、一方の給電領域である第1給電領域31(
図3の左側)は、発光素子分離溝23よりも発光領域30側からみて幅方向w外側に位置する領域であり、もう一方の給電領域である第2給電領域32(
図3の右側)は、第1電極層分離溝21よりも発光領域30側からみて幅方向w外側に位置する領域である。言い換えると、第1給電領域31と第2給電領域32は、発光領域30を挟んで、幅方向wに対向している。
すなわち、第1給電領域31に位置する第2電極層16は、
図3のように発光領域30内の第1電極層12と電気的に接続されており、当該第1電極層12に給電可能な陽極給電部として機能する。第2給電領域32に位置する第2電極層16は、発光領域30内の第2電極層16と電気的に接続され(本実施形態では、第2電極層16そのものであり)、当該第2電極層16に給電可能な陰極給電部として機能する。以下の説明においては、第1給電領域31の第2電極層16を陽極給電部35(第1連通部)とも称し、第2給電領域32の第2電極層16を陰極給電部36(第2連通部)とも称する。
給電領域31,32の幅は、ともに基板11の幅の1/3以下となっており、基板11の長辺から中央に向かって延びている。
【0028】
有機EL装置2は、
図3のように深さの異なる複数の溝によって、複数の区画に分離されて区切られている。
具体的には、有機EL装置2は、部分的に第1電極層12を除去した第1電極層分離溝21と、部分的に機能層15を除去した電極接続溝27,28と、部分的に第2電極層16と機能層15の双方を除去した発光素子分離溝23と、を有しており、これらの溝によって複数の区画に分離されている。
【0029】
第1電極層分離溝21は、基板11上に積層された第1電極層12を2つの領域に分離する溝であり、発光領域30と第2給電領域32とを分離する溝である。第1電極層分離溝21は、長手方向l全体に亘って延伸している。
また、第1電極層分離溝21内には機能層15が進入しており、機能層15は第1電極層分離溝21の底部で基板11と接触している。すなわち、発光領域30の第1電極層12と第2給電領域32の第1電極層12とを機能層15によって電気的に切り離している。
【0030】
電極接続溝27,28(接続溝)は、長手方向l全体に亘って延伸した溝であり、機能層15のみを複数の領域に分離する溝である。具体的には、電極接続溝27,28は、機能層15を3つの領域に分離している。電極接続溝27,28は、基板11の長辺に対して平行に形成されており、第1給電領域31及び,第2給電領域32内にそれぞれ形成されている。
第1給電領域31に位置する電極接続溝27内には、陽極給電部35の一部が進入しており、電極接続溝27の底部で第1電極層12と接触し、電極接続部37(接続部)を形成している。
第2給電領域32に位置する電極接続溝28内には、陰極給電部36の一部が進入しており、電極接続溝28の底部で第1電極層12と接触し、電極接続部38(接続部)を形成している。
電極接続溝27,28の溝幅は、30μm以上80μm以下であり、40μm以上70μm以下であることが好ましく、45μm以上60μm以下であることが特に好ましい。
【0031】
発光素子分離溝23は、長手方向l全体に亘って延伸した溝であり、機能層15と第2電極層16の双方を複数の領域に分離する溝である。具体的には、発光素子分離溝23は、機能層15と第2電極層16の双方に跨がって2つの領域に分離しており、発光領域30と第1給電領域31の境界部分に位置している。発光素子分離溝23内には、絶縁層17の一部が進入しており、絶縁層17は発光素子分離溝23の底部で第1電極層12と接触している。すなわち、絶縁層17によって、第1給電領域31の機能層15及び第2電極層16を発光領域30の機能層15及び第2電極層16から電気的に切り離している。
【0032】
以上のように、有機EL装置2は、第1給電領域31に電極接続溝27と発光素子分離溝23が配されており、第2給電領域32に第1電極層分離溝21と電極接続溝28が配されている。一方、発光領域30には、溝が形成されていない。
【0033】
絶縁層17に目を移すと、絶縁層17は、
図3のように幅方向wにおいて、少なくとも発光領域30に位置する有機EL素子10全面を覆っており、さらにその両側に位置する給電領域31,32の一部まで至っている。すなわち、有機EL装置2は、有機EL素子10上に絶縁層17が被覆した被覆領域24と、被覆領域24の幅方向w外側であって陽極給電部35の一部が露出した露出領域25と、被覆領域24の幅方向w外側であって陰極給電部36の一部が露出した露出領域26と、を有している。換言すると、露出領域25と露出領域26は、被覆領域24を挟んで対向する位置にある。
また、絶縁層17は、
図4のように有機EL素子10の長手方向lの両端面を覆っており、基板11と接触している。
有機EL装置2は、露出領域25の陽極給電部35及び露出領域26の陰極給電部36を介して外部と電気的に接続可能となっている。
【0034】
ここで、有機EL素子10の層構成についてさらに説明する。
基板11は、透光性及び絶縁性を有したものである。基板11の材質については特に限定されるものではなく、例えば、フレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板などから適宜選択され用いられる。特にガラス基板や透明なフィルム基板は透明性や加工性の良さの点から好適である。
【0035】
基板11の幅方向w(短手方向)の長さは、1mm〜50mmであり、1mm〜20mmであることが好ましく、1mm〜15mmであることがより好ましい。
基板11の長手方向lの長さは、10〜2000mmであり、10mm〜1000mmであることが好ましく、10mm〜500mmであることがより好ましい。
基板の厚みは、0.2〜10mmであり、0.5mm〜5mmであることが好ましく、1mm〜3mmであることがより好ましい。
【0036】
第1電極層12の素材は、透明であって、導電性を有していれば、特に限定されるものではなく、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化錫(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物などが採用される。機能層15内の発光層から発生した光を効果的に取り出せる点では、透明性が高いITOあるいはIZOが特に好ましい。本実施形態では、ITOを採用している。
【0037】
機能層15は、第1電極層12と第2電極層16との間に設けられ、少なくとも一つの発光層を有している層である。機能層15は、主に有機化合物からなる複数の層から構成されている。この機能層15は、一般な有機EL装置に用いられている低分子系色素材料や、共役系高分子材料などの公知のもので形成することができる.また、この機能層15は、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などの複数の層からなる積層多層構造であってもよい。
【0038】
第2電極層16の素材は、特に限定されるものではなく、例えば銀(Ag)やアルミニウム(Al)などが挙げられる。本実施形態の第2電極層16は、Alで形成されている。
【0039】
続いて、導電部材3について説明する。
導電部材3は、外部電源と電気的に接続することによって、有機EL装置2に通電可能な部材である。具体的には、導電部材3は、導電性を有した箔体であり、折り曲げ可能となっている。導電部材3の材質としては、導電性を有していれば特に限定されるものではなく、例えば、銅箔や銀箔、金箔、白金箔などが採用できる。なお、本実施形態の導電部材3は、銅箔を用いている。
【0040】
導電部材3の長手方向lの長さは、
図7のように有機EL装置2の基板11の長手方向lの長さよりも大きい。すなわち、導電部材3は、有機ELモジュール1を組み立てた際に有機EL装置2から長手方向lの一方又は両方に張り出す。本実施形態では、導電部材3は有機ELモジュール1を組み立てた際に一方のみ張り出す。
【0041】
導電部材3の有機EL装置2に取り付けた際の形状について説明すると、導電部材3は、
図2のように正面視した形状が「コ」の字状になっており、給電部覆部51と端面覆部52と基板覆部53を形成する。給電部覆部51は、有機EL装置2の露出領域25又は露出領域26を覆う部位であり、端面覆部52は、有機EL装置2の幅方向wの端面を覆う部位であり、基板覆部53は、基板11の下面の一部を覆う部位である。
導電部材3の基板覆部53の幅は、導電部材3の給電部覆部51の幅よりもすこし小さい。
【0042】
続いて、枠体5について説明する。
枠体5は、
図1のように有機EL装置2及び導電部材3を一体的に覆うフレーム部材であり、有機EL装置2を外部から保護する部材である。また、枠体5は、
図5のように駆動時に有機EL装置2から発生した光を取り出すための開口部60が形成されている。
枠体5の構造について具体的に説明すると、枠体5は、
図2,
図5のように素子側覆部61と、端面覆部62,63と、光取出側覆部65,66と、せき止め壁67,68とを有している。素子側覆部61と、端面覆部62,63と、光取出側覆部65,66と、せき止め壁67,68はいずれも長手方向に延伸しており、長方形状をした板状の部位である。
【0043】
素子側覆部61は、
図1のように有機EL装置2の上面(有機EL素子10側の面)を全面覆う部位である。端面覆部62,63は、素子側覆部61の幅方向wの端部と連続し有機EL装置2の端面を覆う部位である。光取出側覆部65,66は、
図5のように端面覆部62,63の天地方向の下端部(
図5の上側)と連続し有機EL装置2の下面(基板11側の面)の一部を覆う部位である。せき止め壁67,68は、光取出側覆部65,66の幅方向wの端部と連続し基板11上での導電部材3の外部への露出することを防止する部位である。
【0044】
枠体5の幅方向wに注目すると、素子側覆部61と光取出側覆部65,66は、端面覆部62,63を介して、それぞれ断面形状が「コ」の字状になるように連続している。すなわち、光取出側覆部65と光取出側覆部66は、端面覆部62,63側から互いに近接する方向に延びている。
【0045】
また、せき止め壁67,68は、光取出側覆部65,66の延伸方向先端から基板11側に向かって延びており、せき止め壁67とせき止め壁68は、所定の間隔W1を空けて配されている。言い換えると、せき止め壁67とせき止め壁68によってスリット状の開口部60を形成している。開口部60は、有機ELモジュール1を組み立てた際に有機EL装置2の発光領域30に対応する位置に設けられており、有機EL装置2の光取り出し口として機能する。
図5に示される、せき止め壁67とせき止め壁68の間隔W1(開口部60の開口幅)は、発光領域30の幅と等しいか、発光領域30の幅よりも大きい。
【0046】
そして、枠体5は、
図5のように素子側覆部61と端面覆部62,63と光取出側覆部65,66とによって囲まれた固定空間70を有している。固定空間70は内部に有機EL装置2及び導電部材3を収納可能となっている。固定空間70は、開口部60を介して外部と連通している。
【0047】
一方、枠体5の長手方向lに注目すると、枠体5は、他の枠体5に対して嵌合可能となっている。
具体的には、素子側覆部61は、
図1のように端面覆部62,63に対してずれた位置にある。すなわち、枠体5の一方の端部では、端面覆部62,63に対して素子側覆部61が張り出した連結凸部71を有しており、その反対側の端部では、端面覆部62,63に対して素子側覆部61が引っ込んだ連結凹部72を有している。そして、連結凸部71と連結凹部72は互いに嵌合可能となっている。
【0048】
枠体5の材質は、弾性及び可撓性を有した材質であれば、特に限定されるものではなく、例えば、シリコーン製の樹脂やゴムなどが採用できる。また、枠体5は一体成形によって形成されていることが好ましい。
【0049】
枠体5単体の大きさは、有機ELモジュール1に取り付けた際の枠体5の大きさに比べて、一回り小さい。具体的には、枠体5単体の縦、横、高さのいずれかの大きさは、有機ELモジュール1に取り付けた際の縦、横、高さのうち、対応する大きさの90パーセント以上100パーセント未満となっており、95パーセント以上99パーセント以下であることが好ましく、96パーセント以上98パーセント以下であることがより好ましい。
【0050】
続いて、本実施形態の有機ELモジュール1に内蔵する有機EL装置2の製造方法について説明する。
有機EL装置2は、図示しない真空蒸着装置及びCVD装置によって成膜し、図示しないパターニング装置、本実施形態では、レーザースクライブ装置を使用してパターニングを行い、製造される。
【0051】
まず、スパッタ法やCVD法によって基板11の一部又は全部に第1電極層12を成膜する(
図6(a)から
図6(b))。
このとき、形成される第1電極層12の平均厚さは、50nmから800nmであることが好ましく、100nmから400nmであることがより好ましい。
【0052】
その後、第1電極層12が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって第1電極層分離溝21を形成する(
図6(b)から
図6(c))。
このとき、第1電極層分離溝21は基板11の長辺に平行に形成されており、長手方向l全体に亘って形成されている。また、第1電極層分離溝21は、有機EL装置2が形成された際に第2給電領域32と発光領域30との境界部位(
図3参照)に形成されている。
また、この基板上には
図6(c)のように第1電極層分離溝21を除いて第1電極層12が存在している。そのため、このようにレーザースクライブ処理を用いることが可能であり、第1電極層12を成膜する際に、成膜を行わない被成膜面を隠すマスクプロセスを省略できる。
【0053】
次に、真空蒸着装置によって、この基板にホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などの機能層15を順次成膜する(
図6(c)から
図6(d))。
このとき、第1電極層分離溝21内に機能層15が積層され、第1電極層分離溝21内に機能層15が満たされるとともに、この基板全面に機能層15が積層される。
形成される機能層15の平均厚さは、50nmから250nmであることが好ましく、120nmから200nmであることがより好ましい。
【0054】
その後、機能層15が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって、本発明の特徴たる電極接続溝27,28を複数形成する。本実施形態では、2本の電極接続溝27,28を形成する(
図6(d)から
図6(e))。
このとき、電極接続溝27,28は、第1電極層分離溝21と平行に形成されており、長手方向l全体に亘って形成されている。また、電極接続溝27,28は、それぞれ基板の長辺から基板の短手方向の1/3の領域に形成されている。電極接続溝27,28によって、機能層15が3つの区画に分けられる。
この基板上には電極接続溝27,28を除いて機能層15が存在している。そのため、このようにレーザースクライブ処理を用いることが可能であり、前記機能層15を成膜する際に、成膜を行わない被成膜面を隠すマスクプロセスを省略できる。
【0055】
次に、真空蒸着装置によって、この基板に第2電極層16を成膜する(
図6(e)から
図6(f))。
このとき、電極接続溝27,28内に第2電極層16が積層され、電極接続溝27,28内に第2電極層16が満たされるとともに、この基板全面に第2電極層16が積層され電極接続部37,38(
図3参照)が形成される。すなわち、電極接続溝27,28の底部で第1電極層12と第2電極層16が接触した状態で固着し、第1電極層12と第2電極層16が電気的に接続される。
また、形成される第2電極層16の平均厚さは、100nmから300nmであることが好ましく、150nmから200nmであることがより好ましい。
【0056】
その後、第2電極層16が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって、機能層15及び第2電極層16に亘って延伸した発光素子分離溝23を形成する(
図6(f)から
図6(g))。
このとき、発光素子分離溝23は、第1電極層分離溝21と平行に形成されており、長手方向全体に亘って形成されている。発光素子分離溝23は、有機EL装置2が形成された際に第1給電領域31と発光領域30との境界部位(
図3参照)に形成されている。
また、この基板上には発光素子分離溝23を除いて第2電極層16が存在している。そのため、このようにレーザースクライブ処理を用いることが可能であり、前記第2電極層16を成膜する際に、成膜を行わない被成膜面を隠すマスクプロセスを省略できる。
【0057】
次に、この基板の一部をマスクで覆い、CVD装置によって、絶縁層17を成膜する。具体的には、有機EL装置2が形成された際に露出領域25,26に対応する位置をマスクで覆い成膜する(
図6(g)から
図6(h))。
このとき、発光素子分離溝23内に絶縁層17が積層され、発光素子分離溝23内に絶縁層17が満たされるとともに、この基板全面に絶縁層17が積層される。
また、形成される絶縁層17の平均厚さは、5μmから100μmであることが好ましく、10μmから50μmであることがより好ましい。
以上の工程によって有機EL装置2が製造される。
【0058】
続いて、本実施形態の有機ELモジュール1の組み立てる手順に沿って、各部材の位置関係について説明する。
まず、
図7のように有機EL装置2の幅方向w両側に導電部材3(3a,3b)巻き付ける。
このとき、
図7の幅方向wに注目すると、導電部材3aの給電部覆部51は、有機EL装置2の露出領域25に位置する陽極給電部35(
図3参照)と接触しており、導電部材3bの給電部覆部51は、有機EL装置2の露出領域26に位置する陰極給電部36(
図3参照)と接触している。導電部材3a,3bの端面覆部52,52は、有機EL装置2の端面と接触しており、導電部材3a,3bの基板覆部53,53は、第1給電領域31及び第2給電領域32内の基板11の一部を接触している。
導電部材3aの基板覆部53の先端と導電部材3bの基板覆部53の先端は、
図7のように所定の間隔W2が空いており、当該間隔W2は、枠体5の開口部60の開口幅W1(
図5参照)よりも大きい。
【0059】
また、長手方向lに注目すると、導電部材3a,3bの長手方向lの一方の先端は、有機EL装置2から張り出して張出部55,55を形成している。すなわち、導電部材3a,3bの一方の先端部位たる張出部55,55は、自由端となっている。反対側の端部は、有機EL装置2の端面と面一となっている。
【0060】
その後、
図8のように一体となった有機EL装置2と導電部材3a,3bに枠体5を取り付ける。
このとき、幅方向wに注目すると、枠体5の素子側覆部61は、有機EL装置2と導電部材3a,3bの上面全てを覆っている。すなわち、枠体5の素子側覆部61は、2つの導電部材3a,3bの給電部覆部51,51と有機EL装置2の絶縁層17に跨がって覆っている。枠体5の端面覆部62,63は、導電部材3a,3bの端面覆部52,52の外側を覆っている。枠体5の光取出側覆部65,66とせき止め壁67,68は、導電部材3a、3bの基板覆部53,53を巻き込んでおり、基板覆部53,53が外部に露出することを防止している。そのため、有機ELモジュール1の駆動したときに、使用者が誤って、導電部材3a、3bに触れることがない。
【0061】
長手方向lに注目すると、
図1のように導電部材3a,3bの張出部55,55上に連結凹部72が位置しており、導電部材3a,3bの反対側の端部には、連結凸部71が覆っている。
連結凹部72側の端部近傍に注目すると、導電部材3a,3bの張出部55,55は、連結凹部72内で一部が外部に露出しており、それ以外の部位は枠体5の端面覆部62,63によって覆われている。すなわち、天地方向において、導電部材3a,3bの張出部55,55は露出しており、幅方向wにおいて、導電部材3a,3bの張出部55,55は露出していない。
一方、連結凸部71側の端部近傍に注目すると、導電部材3a,3bの給電部覆部51は枠体5の連結凸部71の内側に隠されており、導電部材3a,3bの端面覆部52は枠体5の端面覆部62,63から露出している。
【0062】
続いて、
図9のように導電部材3aに外部電源の陽極を接続し、導電部材3bに外部電極の陰極を接続した場合における電流の流れについて説明する。
外部電源から供給される電流は、導電部材3aの長手方向全体に伝わり、有機EL装置2の露出領域25の陽極給電部35を介して陽極給電部35全域に伝わる。陽極給電部35に伝わった電流は、
図10のように電極接続溝27内の電極接続部37を経由して第1給電領域31内の第1電極層12の長手方向全域に至る。第1電極層12に至った電流は、第1給電領域31側から発光領域30側に第1電極層12内で拡散し、発光領域30内で機能層15を経由して第2電極層16に至る。第2電極層16に至った電流は、露出領域26で接触する導電部材3bを介して外部電源に伝わる。このようにして、機能層15に電流が流れて、機能層15が発光し、照明として機能する。
【0063】
続いて、有機ELモジュール1の接続例について説明する。
図26のように、隣接する有機ELモジュール1Aの連結凸部71と有機ELモジュール1Bの連結凹部72を嵌合させる。
このとき、有機ELモジュール1Aの素子側覆部61と有機ELモジュール1Bの素子側覆部61は同一平面を形成し面一となっている。同様に有機ELモジュール1Aの端面覆部62,63と有機ELモジュール1Bの端面覆部62,63は同一平面を形成し面一となっている。有機ELモジュール1Aの開口部60と有機ELモジュール1Bの開口部60は同一直線上に並んでいる。
また、有機ELモジュール1Aの導電部材3aと有機ELモジュール1Bの導電部材3aが接触し、電気的に接続される。有機ELモジュール1Aの導電部材3bと有機ELモジュール1Bの導電部材3bが接触し、電気的に接続される。すなわち、1つの有機ELモジュール1に給電することで複数の有機ELモジュール1を発光させることが可能である。
【0064】
本実施形態の構成によれば、第1給電領域31において電極接続溝27内で陽極給電部35と第1電極層12が固着し接続されている。また陽極給電部35は第1電極層12よりも接触抵抗が低く、内部抵抗が低いものを採用している。そのため、第1電極層12として例えばITOのような接触抵抗の大きなものを使用した場合でも、外部電源を直接接触するのは陽極給電部35であるため、直接外部電源を第1電極層12に接続させた場合に比べて、接触抵抗を低減することができる。それ故に、余分に電圧をかける必要がなく消費電力を抑えることが可能である。
【0065】
本実施形態の構成によれば、第2給電領域32において電極接続溝28内で陰極給電部36と第1電極層12が固着し接続されている。また陰極給電部36は機能層15よりも第1電極層12との剥離強度(密着力)が大きいものを採用している。そのため、第1電極層12に対する陰極給電部36の剥離強度(密着力)によって、第1電極層12に対する機能層15の剥離強度(密着力)を補助されるため、機能層15と陰極給電部36とが第1電極層12から一体的に剥離することを防止することが可能である。
同様に、第1給電領域31においても電極接続溝27内で陽極給電部35と第1電極層12が固着し接続されている。また陽極給電部35は機能層15よりも第1電極層12との剥離強度(密着力)が大きいものを採用している。そのため、機能層15と陽極給電部35とが第1電極層12から一体的に剥離することを防止することが可能である。
【0066】
本実施形態の構成によれば、有機EL装置2の露出領域25,26の長手方向全体を覆う導電部材3a,3bを有し、外部電源から当該導電部材3a,3bを介して面状に広がりをもって均等に陽極給電部35から電流が入り、面状に広がりをもったまま陰極給電部36から電流が出るため、長手方向に輝度分布無く発光させることができる。
【0067】
続いて、第2実施形態における有機ELモジュール100について説明する。なお、第1実施形態と同様のものは同じ符番を付して説明を省略する。
第2実施形態における有機ELモジュール100は、
図11,
図12のように有機EL装置102と、導電部材3a,3bと、導電部材103と、枠体105とを有している。
【0068】
有機EL装置102は、第1実施形態の有機EL装置2の層構成と同様の層構成を有しており、第1実施形態の有機EL装置2とは溝の個数及び位置が異なる。
具体的には、有機EL装置102は、
図13のようにその面内において、駆動時に実際に発光する複数の発光領域30a,30bと、駆動時の給電に寄与する複数の給電領域131,132,133を有している。具体的には、幅方向wの中央に第2給電領域132が位置しており、その幅方向w外側に発光領域30a,30bが位置しており、そのさらに外側に第1給電領域131,133が位置している。すなわち、幅方向wの一方の辺側から第1給電領域131、発光領域30a、第2給電領域132、発光領域30b、第1給電領域133の順に並んでいる。
また、発光領域30a,30b及び給電領域131,132,133は、いずれも長手方向(幅方向wに対して直交する方向)に延伸している。
【0069】
幅方向の両端に位置する第1給電領域131,133は、発光素子分離溝123a,123bよりも幅方向外側に位置する領域であり、中央に位置する第2給電領域132は、発光領域30a,30bの幅方向内側に位置する領域であって、2本の第1電極層分離溝121a,121bに囲まれた領域である。
すなわち、第1給電領域131に位置する第2電極層16は、発光領域30a内の第1電極層12と電気的に接続されており、当該第1電極層12に給電可能な陽極給電部135として機能する。同様に、第1給電領域133に位置する第2電極層16は、発光領域30b内の第1電極層12と電気的に接続されており、当該第1電極層12に給電可能な陽極給電部136として機能する。このように有機EL装置102は、幅方向両端に2つの陽極給電部135,136を有している。
【0070】
第2給電領域132に位置する第2電極層16は、給電用接続溝125を挟んで2分割されており、当該分割された第2電極層16は、それぞれ発光領域30a,30b内の第2電極層16と電気的に接続され(本実施形態では、第2電極層16そのものであり)、当該第2電極層16に給電可能な陰極給電部137,138として機能する。以下の説明においては、第2給電領域132内で分割された第2電極層16の内、発光領域30a側の部位を陰極給電部137と称し、発光領域30a側の部位を陰極給電部138とも称する。
第1給電領域131,133は、第1実施形態の給電領域31,32と同様、基板11の幅の1/3以下の領域となっており、基板11の長辺から中央に向かって延びている。
第2給電領域132は、第1給電領域131及び/又は第1給電領域133の0.8倍以上から1.5倍以下の領域となっており、基板11の中央から両外側端部に向かって延びている。
【0071】
有機EL装置102は、
図13のように、第1実施形態の有機EL装置2と同様、部分的に第1電極層12を除去した第1電極層分離溝121a,121bと、部分的に機能層15を除去した電極接続溝127,128,129と、部分的に第2電極層16と機能層15の双方を除去した発光素子分離溝123a,123bと、電極接続溝128の内部にあって部分的に機能層15と第2電極層16と絶縁層17の3層に亘って除去した給電用接続溝125と、を有している。
【0072】
第1電極層分離溝121は、第1電極層分離溝21とほぼ同様の溝であり、基板11上に積層された第1電極層12を3つの領域に分離する溝であり、発光領域30aと第2給電領域132、及び、第2給電領域132と発光領域30bを分離する溝である。
【0073】
電極接続溝127,128,129は、長手方向l全体に亘って延伸した溝であり、機能層15のみを複数の領域に分離する溝である。具体的には、機能層15を4つの領域に分離している。電極接続溝127,128,129は、それぞれ基板11の長辺に対して平行に形成されており、給電領域131,132,133内にそれぞれ形成されている。
電極接続溝127,129内には、陽極給電部135,136の一部が進入して電極接続部140,141が形成されており、電極接続溝127,129の底部で第1電極層12と接触している。
電極接続溝128内には、陰極給電部137,138の一部が進入して電極接続部142,143が形成されており、電極接続溝128の底部でそれぞれが第1電極層12と接触している。
電極接続溝128は、面状であって、直線状に広がっている。電極接続溝128の溝幅は、電極接続溝127,129に比べて大きい。
【0074】
発光素子分離溝123a,123bは、発光素子分離溝23と同様の溝であり、それぞれ発光領域30aと第1給電領域131の境界部分、発光領域30bと第1給電領域133の境界部分に位置している。
【0075】
給電用接続溝125は、電極接続溝128の内側であって、第2電極層16を陰極給電部137と陰極給電部138に分割する溝である。すなわち、溝の内側面は絶縁層17及び第2電極層16で形成されており、底部は第1電極層12で形成されている。給電用接続溝125は、長手方向l全体に亘って延伸している。
給電用接続溝125の溝幅は、電極接続溝128の溝幅よりも小さい。具体的には、給電用接続溝125の溝幅は、電極接続溝128の溝幅の1/10から2/3の幅であることが好ましく、1/5から1/3の幅であることが特に好ましい。
【0076】
有機EL装置102は、第1給電領域131に電極接続溝127と発光素子分離溝123aが配されており、第1給電領域133に電極接続溝129と発光素子分離溝123bが配されている。また、有機EL装置102は、第2給電領域132に外側から順に第1電極層分離溝121a,121b、電極接続溝128、給電用接続溝125が配されている。
【0077】
有機EL装置102は、有機EL素子10上に絶縁層17が被覆した被覆領域111,112と、被覆領域111,112の幅方向外側であって陽極給電部135,136が露出した露出領域115,116と、被覆領域124の幅方向中央であって第1電極層12が露出した露出領域113と、を有している。
【0078】
続いて、導電部材103について説明する。
導電部材103は、導電部材3と同様の構成を有しているが、有機ELモジュール100を組み立てた際に導電部材3とは異なり、有機EL装置102の露出領域113内に押しつけて使用する。
【0079】
続いて、枠体105について説明する。
枠体105は、
図12,
図14のように、枠体5と同様の構造を備えており、さらに枠体5の構造に加えて、素子側覆部61の連結凹部72に突出部173が設けられており、素子側覆部61の連結凸部71に切欠部175が設けられている。枠体105は、他の枠体105と連結した際に、突出部173が他の枠体105の切欠部175と嵌合可能となっている。
突出部173は、連結凹部72の幅方向の中央に設けられており、切欠部175は、連結凸部71の幅方向wの中央に設けられている。すなわち、突出部173と切欠部175は長手方向に対応する位置に位置している。
【0080】
続いて、本実施形態の有機ELモジュール100に内蔵する有機EL装置102の製造方法について説明する。
有機EL装置102は、有機EL装置2と同様、図示しない真空蒸着装置及びCVD装置によって成膜し、図示しないパターニング装置、本実施形態では、レーザースクライブ装置を使用してパターニングを行い、製造される。
【0081】
まず、スパッタ法やCVD法によって基板11の一部又は全部に第1電極層12を成膜する(
図15(a)〜
図15(b))。
その後、第1電極層12が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって第1電極層分離溝121a,121bを形成する(
図15(b)〜
図15(c))。
このとき、第1電極層分離溝121aは、有機EL装置102が形成された際に第2給電領域132と発光領域30aとの境界部位(
図13参照)に形成されており、第1電極層分離溝121bは、発光領域30bと第2給電領域132との境界部位(
図13参照)に形成されている。
【0082】
次に、真空蒸着装置によって、この基板にホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などの機能層15を順次成膜する(
図15(c)〜
図15(d))。
【0083】
その後、機能層15が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって、本発明の特徴たる電極接続溝127,128,129を形成する(
図15(d)〜
図15(e))。
このとき、電極接続溝127,129は、それぞれ基板の長辺から基板の短手方向の1/3の領域に形成されており、電極接続溝128は、短手方向の中央に形成されている。
電極接続溝128は面状となっており、電極接続溝128の溝幅は、上記したように電極接続溝127,129の溝幅よりも大きい。具体的には、電極接続溝128の溝幅は、電極接続溝127及び/又は電極接続溝129の溝幅の1.2倍から2倍であることが好ましく、1.5倍から1.8倍であることが特に好ましい。また、電極接続溝128の溝幅は、36μmから160μmであることが好ましく、50μmから100μmであることがより好ましい。
【0084】
次に、真空蒸着装置によって、この基板に第2電極層16を成膜する(
図15(e)〜
図15(f))。
このとき、電極接続溝127,128,129内に第2電極層16が積層され、電極接続溝127,128,129内に第2電極層16が満たされるとともに、この基板全面に第2電極層16が積層される。すなわち、電極接続溝127,128,129の底部で第1電極層12と第2電極層16が接触した状態で固着し、第1電極層12と第2電極層16が電気的に接続される。このようにして電極接続溝127,129内に電極接続部140,141が形成される。
【0085】
その後、第2電極層16が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって、機能層15及び第2電極層16に亘って延伸した発光素子分離溝123a,123bを形成する(
図15(f)〜
図15(g))。
このとき、発光素子分離溝123a,123bは、有機EL装置2が形成された際に第1給電領域131と発光領域30aとの境界部位(
図13参照)及び発光領域30bと第1給電領域133との境界部位(
図13参照)に形成されている。
【0086】
次に、この基板の一部をマスクで覆い、CVD装置によって、絶縁層17を成膜する。具体的には、有機EL装置2が形成された際に露出領域115,116に対応する位置をマスクで覆い成膜する(
図15(g)〜
図15(h))。
【0087】
その後、絶縁層17が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって、電極接続溝128の幅方向の中央に機能層15、第2電極層16並びに絶縁層17に亘って延伸した給電用接続溝125を形成する(
図15(h)〜
図15(i))。
このとき、給電用接続溝125は、基板11の長辺と平行に形成されており、長手方向全体に亘って形成されている。また、給電用接続溝125は、露出領域113を形成している。給電用接続溝125は、電極接続溝128の底部で第1電極層12と固着した第2電極層16を分割し、電極接続部142,143を形成する。
以上の工程によって有機EL装置102が製造される。
【0088】
続いて、本実施形態の有機ELモジュール100の各部材の位置関係について説明する。なお、有機EL装置102と導電部材3a,3bとの位置関係については、第1実施形態の有機ELモジュール1と同様であるため説明を省略する。
導電部材103は、
図16のように露出領域113に位置しており、有機EL装置102の給電用接続溝125内に進入している。すなわち、導電部材103は、給電用接続溝125の内側面を形成する陰極給電部137,138と接触しており、さらに露出領域113内の第1電極層12と接触している。また、導電部材103上には、枠体105の素子側覆部61が位置しており、枠体105の弾性によって、導電部材103は、給電用接続溝125内に押しつけられている。すなわち、導電部材103の大部分は、絶縁層17に食い込んでいる。
長手方向lに注目すると、
図11のように一方の端部側では、素子側覆部61の突出部173の下面(有機EL装置102側の面)に導電部材103が位置しており、その反対側では、素子側覆部61の切欠部175(有機EL装置102側の面)に導電部材103が位置している。
【0089】
続いて、
図17のように導電部材3a,3bに外部電源の陽極を接続し、導電部材103に外部電極の陰極を接続し、スイッチによって給電する導電部材3を選択可能とした場合における電流の流れについて説明する。
【0090】
有機ELモジュール100は、電流を流れる導電部材3によって発光する発光領域30が異なる。
電気回路内の接点Aと接点Bを接続し、導電部材3aと導電部材103間に電圧を印加し、電流を流した場合においては、外部電源から供給される電流は、導電部材3aの長手方向全体に伝わる。
図18のように、有機EL装置102の露出領域115から陽極給電部135に伝わり、陽極給電部135全域に伝わる。陽極給電部135全域に伝わった電流は、電極接続溝127内の電極接続部140を経由して第1給電領域131内の第1電極層12の長手方向全域に至る。第1電極層12に至った電流は、第1給電領域131側から発光領域30a側に第1電極層12内で拡散し、発光領域30a内で機能層15を経由して陰極給電部137に至る。陰極給電部137に至った電流は、電極接続部142を経由して導電部材3bに伝わり、外部電源に伝わる。このようにして、発光領域30a内の機能層15に電流が流れて、発光領域30a内の機能層15が発光し、照明として機能する。
【0091】
接点Aと接点Cを接続し、導電部材3bと導電部材103間に電圧を印加し、電流を流した場合においては、外部電源から供給される電流は、導電部材3bの長手方向全体に伝わり、有機EL装置102の露出領域116から陽極給電部136に伝わり、陽極給電部136全域に伝わる。陽極給電部136全域に伝わった電流は、
図19のように電極接続溝129内の電極接続部141を経由して第1給電領域133内の第1電極層12の長手方向全域に至る。第1電極層12に至った電流は、第1給電領域133側から発光領域30側に第1電極層12内で拡散し、発光領域30b内で機能層15を経由して陰極給電部138に至る。陰極給電部138に至った電流は、電極接続部143を経由して導電部材3bに伝わり、外部電源に伝わる。このようにして、発光領域30b内の機能層15に電流が流れて、発光領域30b内の機能層15が発光し、照明として機能する。
【0092】
以上のように第2実施形態の有機ELモジュール100は、電圧を印加する導電部材3を選択することによって、発光させる発光領域30を変更することができる。有機ELモジュール100は、例えば、発光領域30aと発光領域30bとで機能層の層構成を異なるものにすることで、異なる発光スペクトルを取り出すことができる。言い換えると、電圧を印加する導電部材3を選択することによって、異なる色の光を取り出すことも可能である。
また、導電部材103を共通の陰極の端子として使用できるため、発光領域30の変更時において導電部材103を兼用でき、コストを削減できる。
【0093】
続いて、有機ELモジュール100の接続例について説明する。
図27のように、隣接する有機ELモジュール100Aの連結凸部71と有機ELモジュール100Bの連結凹部72を嵌合させるとともに、有機ELモジュール100Aの切欠部175に有機ELモジュール100Bの突出部173を嵌合させる。
このとき、有機ELモジュール100Aの導電部材3aと有機ELモジュール100Bの導電部材3aが接触し、電気的に接続される。有機ELモジュール100Aの導電部材3bと有機ELモジュール100Bの導電部材3bが接触し、電気的に接続される。また、有機ELモジュール100Aの切欠部175と有機ELモジュール100Bの突出部173との嵌合部位において有機ELモジュール100Aの導電部材103と有機ELモジュール100Bの導電部材103が接触し、電気的に接続される。
すなわち、第1実施形態の有機ELモジュール1と同様、1つの有機ELモジュール100に給電することで複数の有機ELモジュール100を発光させることが可能である。
【0094】
上記した第2実施形態の有機ELモジュール100は導電部材103を共通の陰極の端子として使用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つの導電部材を共通の陽極の端子として使用してもよい。具体的には以下に第3実施形態として説明する。
第3実施形態における有機ELモジュール200について説明する。なお、第1,2実施形態と同様のものは同じ符番を付して説明を省略する。
【0095】
第3実施形態における有機ELモジュール200は、第2実施形態の有機ELモジュール100と同様の構造を有しており、内蔵する有機EL装置102が、第2実施形態の有機EL装置102と溝の個数及び位置が異なる。
有機EL装置202は、
図20のようにその面内において、駆動時に実際に発光する複数の発光領域30a,30bと、駆動時の給電に寄与する複数の給電領域231,232,233を有している。具体的には、幅方向の中央に第1給電領域232が位置しており、その幅方向外側に発光領域30a,30bが位置しており、そのさらに外側に第2給電領域231,233が位置している。すなわち、幅方向の一方の辺側から第2給電領域231、発光領域30a、第1給電領域232、発光領域30b、第2給電領域233の順に並んでいる。
すなわち、有機EL装置202は、第2実施形態の有機EL装置102の第1給電領域と第2給電領域との位置関係が逆転している。
また、発光領域30a,30b及び給電領域231,232,233は、いずれも長手方向(幅方向に対して直交する方向)に延伸している。
【0096】
両端に位置する第2給電領域231,233は、第1電極層分離溝121a,121bよりも発光領域30a,30b側からみて幅方向外側に位置する領域であり、中央に位置する第1給電領域232は、発光領域30a,30b側からみて幅方向内側に位置する領域であって、2本の発光素子分離溝123a,123bに囲まれた領域である。
すなわち、第2給電領域231に位置する第2電極層16は、発光領域30a内の第2電極層16と電気的に接続されており(本実施形態では発光領域30a内の第2電極層16と連続しており)、当該第2電極層16に給電可能な陰極給電部235として機能する。同様に、第2給電領域233に位置する第2電極層16は、発光領域30b内の第2電極層16と電気的に接続されており(本実施形態では発光領域30b内の第2電極層16と連続しており)、当該第2電極層16に給電可能な陰極給電部236として機能する。
【0097】
第1給電領域232に位置する第2電極層16は、発光領域30a,30b内の第1電極層12と電気的に接続されており、当該第1電極層12に給電可能な陽極給電部237として機能する。
【0098】
第2給電領域231,233は、第1実施形態の給電領域31,32と同様、基板11の幅の1/3以下の領域となっており、基板11の長辺から中央に向かって延びている。
第1給電領域232は、第2給電領域231及び/又は第2給電領域233の0.8倍以上から1.5倍以下の領域となっており、基板11の中央から両外側端部に向かって延びている。
【0099】
有機EL装置202は、
図20のように第2実施形態の有機EL装置202と同様、部分的に第1電極層12を除去した第1電極層分離溝121a,121bと、部分的に機能層15を除去した電極接続溝227,228,229と、部分的に第2電極層16と機能層15の双方を除去した発光素子分離溝123a,123bと、電極接続溝228の上方であって部分的に絶縁層17を除去した給電用接続溝240と、を有している。
第1電極層分離溝121a,121bは、第2給電領域231と発光領域30a、及び、発光領域30bと第2給電領域233を分離している。
【0100】
電極接続溝227,228,229は、長手方向l全体に亘って延伸した溝であり、機能層15を4つの領域に分離している。電極接続溝227,228,229は、それぞれ基板11の長辺に対して平行に形成されており、それぞれ給電領域231,232,233内にそれぞれ形成されている。電極接続溝227,229内には、陰極給電部235,236の一部が進入して、電極接続部220,222が形成されており、電極接続溝227,229の底部で第1電極層12と接触している。電極接続溝228内には、陽極給電部237の一部が進入して、電極接続部221が形成されており、電極接続溝228の底部でそれぞれが第1電極層12と接触している。
【0101】
発光素子分離溝123aは、それぞれ発光領域30aの機能層15及び第2電極層16と、第1給電領域232の機能層15及び第2電極層16とを切り離しており、発光素子分離溝123bは、それぞれ発光領域30bの機能層15及び第2電極層16と、第1給電領域232の機能層15及び第2電極層16とを切り離している。
【0102】
給電用接続溝240は、電極接続溝228の天地方向の投影面上にあって、絶縁層17を分割する溝である。すなわち、溝の内側面は絶縁層17で形成されており、底部は陽極給電部237で形成されている。給電用接続溝240は、長手方向l全体に亘って延伸している。
【0103】
有機EL装置202は、第1給電領域232に電極接続溝228と給電用接続溝240、及び発光素子分離溝123a,123bとが配されている。有機EL装置202は、第2給電領域231,233に第1電極層分離溝121a,121b、電極接続溝227,229が配されている。
【0104】
また、有機EL装置202は、有機EL素子10上に絶縁層17が被覆した被覆領域211,212と、被覆領域211,212の幅方向外側であって陰極給電部235,236が露出した露出領域215,216と、被覆領域211,212の間であって第1電極層12が露出した露出領域213と、を有している。
【0105】
続いて、本実施形態の有機ELモジュール200に内蔵する有機EL装置202の製造方法について説明する。
有機EL装置202は、第1実施形態の有機EL装置2と同様、図示しない真空蒸着装置及びCVD装置によって成膜し、図示しないパターニング装置、本実施形態では、レーザースクライブ装置を使用してパターニングを行い、製造される。
【0106】
まず、スパッタ法やCVD法によって基板11の一部又は全部に第1電極層12を成膜する(
図21(a)〜
図21(b))。
その後、第1電極層12が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって第1電極層分離溝121a,121bを形成する(
図21(b)〜
図21(c))。
このとき、第1電極層分離溝121aは、有機EL装置202が形成された際に発光領域30aと第2給電領域231との境界部位(
図20参照)に位置しており、第1電極層分離溝121bは、第2給電領域233と発光領域30bとの境界部位(
図20参照)に形成されている。
【0107】
次に、真空蒸着装置によって、この基板にホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などの機能層15を順次成膜する(
図21(c)〜
図21(d))。
その後、機能層15が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって、電極接続溝227,228,229を形成する(
図21(d)〜
図21(e))。
このとき、電極接続溝227,229は、それぞれ基板の長辺から基板の短手方向の1/3の領域に形成されており、電極接続溝228は、短手方向の中央に形成されている。
【0108】
次に、真空蒸着装置によって、この基板に第2電極層16を成膜する(
図21(e)〜
図21(f))。
このとき、電極接続溝227,228,229内に第2電極層16が積層され、電極接続溝227,228,229内に第2電極層16が満たされるとともに、この基板全面に第2電極層16が積層される。すなわち、電極接続溝227,228,229の底部で第1電極層12と第2電極層16が接触した状態で固着し、第1電極層12と第2電極層16が電気的に接続される。そして、電極接続溝227,228,229内にそれぞれ電極接続部220,221,222(
図20参照)が形成される。
【0109】
その後、第2電極層16が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって、機能層15及び第2電極層16に亘って延伸した発光素子分離溝123a,123bを形成する(
図21(f)〜
図21(g))。
このとき、発光素子分離溝123aは、有機EL装置2が形成された際に第1給電領域232と発光領域30aとの境界部位(
図20参照)に形成されており、発光素子分離溝123bは、発光領域30bと第1給電領域232との境界部位(
図20参照)に形成されている。
【0110】
次に、この基板の一部をマスクで覆い、CVD装置によって、絶縁層17を成膜する。具体的には、有機EL装置2が形成された際に露出領域215,216に対応する位置をマスクで覆い成膜する(
図21(g)〜
図21(h))。
【0111】
その後、絶縁層17が成膜された基板に対して、レーザースクライブ装置によって、電極接続溝228にほぼ重なるように給電用接続溝240を形成する(
図21(h)〜
図21(i))。
このとき、給電用接続溝240は、基板11の長辺と平行に形成されており、長手方向全体に亘って形成されている。また、給電用接続溝240は、露出領域213を形成している。
以上の工程によって有機EL装置202が製造される。
【0112】
続いて、導電部材3a,3bに外部電源の陰極を接続し、導電部材103に外部電極の陽極を接続し、スイッチによって給電する導電部材3を選択可能とした場合における電流の流れについて説明する。すなわち、
図17の電気回路において外部電源の正負を逆転した場合について説明する。
【0113】
有機ELモジュール200は、第2実施形態の有機ELモジュール100と同様、電流を流す導電部材3によって発光する発光領域30が異なる。
電気回路内の接点Aと接点Bを接続し、導電部材3aと導電部材103間に電圧を印加し、電流を流した場合においては、外部電源から供給される電流は、導電部材103の長手方向全体に伝わり、有機EL装置202の露出領域213から陽極給電部237に伝わる。陽極給電部237に伝わった電流は、
図22のように電極接続溝228内の電極接続部221を経由して第1電極層12に伝わる。第1電極層12に至った電流は、第1給電領域232側から発光領域30a側に第1電極層12内で拡散し、発光領域30a内で機能層15を経由して陰極給電部235に至る。陰極給電部235に至った電流は、露出領域215で導電部材3bに伝わり、外部電源に伝わる。このようにして、発光領域30a内の機能層15に電流が流れて、発光領域30a内の機能層15が発光し、照明として機能する。
【0114】
一方、導電部材3bと導電部材103間に電圧を印加し、電流を流した場合においては、外部電源から供給される電流は、導電部材103の長手方向全体に伝わり、有機EL装置202の露出領域213から陽極給電部237に伝わる。陽極給電部237に伝わった電流は、
図23のように電極接続溝228内の電極接続部221を経由して第1電極層12に伝わる。第1電極層12に至った電流は、第1給電領域232側から発光領域30b側に第1電極層12内で拡散し、発光領域30b内で機能層15を経由して陰極給電部236に至る。陰極給電部236に至った電流は、露出領域216で導電部材3bに伝わり、外部電源に伝わる。このようにして、発光領域30b内の機能層15に電流が流れて、発光領域30b内の機能層15が発光し、照明として機能する。
【0115】
以上のように第3実施形態の有機ELモジュール200は、第2実施形態の有機ELモジュール100と同様、電圧を印加する導電部材3を選択することによって、発光させる発光領域30を変更することができる。また、導電部材103を共通の陰極の端子として使用できるため、発光領域30の変更時において導電部材103を兼用でき、コストを削減できる。
【0116】
上記した実施形態では、有機ELモジュール単体について説明したが、様々な環境に合わせて配置等を自由に設計できる。
例えば、移住空間の壁面を形成する板状体に設ける場合には、
図24のように板状体の端面が光るように枠体5の開口部60を板状体の端面に合わせて設けてもよい。この場合、有機ELモジュールは板状体の面方向に発光する。
また、
図25のように複数の板状体を敷き詰める場合には、隣接する板状体間の間である目地に有機ELモジュールを設けてもよい。この場合、有機ELモジュールは板状体の部材厚方向に発光する。
【0117】
上記した実施形態では、溝をレーザースクライブによって形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、溝の形成方法は問われない。例えば、エッチングによって溝を形成してもよいし、各層の成膜時にマスクを覆うことによって溝を形成してもよい。