特許第5984510号(P5984510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5984510自動車用ウエザーストリップとその取付構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984510
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】自動車用ウエザーストリップとその取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/06 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
   B60R13/06
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-121471(P2012-121471)
(22)【出願日】2012年5月29日
(65)【公開番号】特開2013-244915(P2013-244915A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年5月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100096459
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 剛
(72)【発明者】
【氏名】薄井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 広導
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−188850(JP,A)
【文献】 実開昭64−048349(JP,U)
【文献】 特開2000−071763(JP,A)
【文献】 特開平06−305371(JP,A)
【文献】 特開2009−078664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/06
B60J 10/00−10/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の脚部同士を両者にまたがる連接部で接続することで断面略U字状に形成されて、車体パネルに起立形成されたフランジ部に嵌合保持されるウエルト部と、このウエルト部の連接部の外側に一体成形されたメインシール部と、を備え、
上記ウエルト部のうち少なくとも室外側となる一方の脚部を車体パネルに圧接させることでその車体パネルに対するウエルト部のシール機能を具備させた自動車用ウエザーストリップの取付構造であって、
上記一方の脚部の先端に当該一方の脚部よりも幅広の着座ビード部を形成するとともに、
上記着座ビード部の先端面全体が車体パネルとほぼ平行な平坦面となっていて、
上記着座ビード部の平坦な先端面に室内側シールリップと室外側シールリップとを互いに離間させて並べて突出形成し、
これらの室内側シールリップと室外側シールリップとが共に斜め室内側を指向するように当該室内側シールリップと室外側シールリップとを傾斜させてあり、
上記一方の脚部を車体パネルに圧接させた状態では、上記室内側シールリップの室外側の面に対して室外側シールリップの室内側の面が圧接し、双方のシールリップ同士が互いに圧接した状態でそれぞれのシールリップが車体パネルに圧接するようになっていることを特徴とする自動車用ウエザーストリップの取付構造
【請求項2】
上記室外側シールリップの突出長さが室内側シールリップのそれよりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ウエザーストリップの取付構造。
【請求項3】
上記室外側シールリップを含む着座ビード部の室外側の面が室外側に向かって凸となる湾曲形状となっていることを特徴とする請求項2に記載の自動車用ウエザーストリップの取付構造。
【請求項4】
上記一方の脚部を含むウエルト部がソリッドのゴム系材料で形成されている一方、
上記室内側シールリップと室外側シールリップとがウエルト部よりも軟質のゴム系材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の自動車用ウエザーストリップの取付構造。
【請求項5】
一対の脚部同士を両者にまたがる連接部で接続することで断面略U字状に形成されて、車体パネルに起立形成されたフランジ部に嵌合保持されるウエルト部と、このウエルト部の連接部の外側に一体成形されたメインシール部と、を備え、
上記ウエルト部のうち少なくとも室外側となる一方の脚部を車体パネルに圧接させることでその車体パネルに対するウエルト部のシール機能を具備させた自動車用ウエザーストリップの取付構造であって、
上記一方の脚部の先端に当該一方の脚部よりも幅広の着座ビード部を形成するとともに、
上記着座ビード部の先端面のうち室内側寄りの部分が車体パネルとほぼ平行な平坦面となっているのに対して、着座ビード部の先端面のうち室外側寄りの部分が上記室内側寄りの部分に対し所定角度をなして室外側に向かって下り勾配の傾斜面となっていて、
上記着座ビード部の先端面のうち室内側寄りの平坦面に室内側シールリップを、室外側寄りの傾斜面に室外側シールリップをそれぞれ互いに離間させて並べて突出形成し、
これらの室内側シールリップと室外側シールリップとが共に斜め室内側を指向するように当該室内側シールリップと室外側シールリップとを傾斜させてあり、
上記一方の脚部を車体パネルに圧接させた状態では、上記室内側シールリップの室外側の面に対して室外側シールリップの室内側の面が圧接し、双方のシールリップ同士が互いに圧接した状態でそれぞれのシールリップが車体パネルに圧接するようになっていることを特徴とする自動車用ウエザーストリップの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側のラゲッジルームの開口部となるトランクリッド開口部またはバックドア(テールゲート)開口部に装着されて、開閉体であるトランクリッドまたはバックドア等と弾接して車室内外をシールする自動車用ウエザーストリップ取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のトランクリッド開口部またはバックドア開口部における自動車用ウエザーストリップの取付構造として、車体側のフランジ部に嵌合保持される断面略U字状のウエルト部の室外側の脚部にシール片を突設して、そのシール片をもって、フランジ部が形成された車体パネルに対してシールを行うようにしたものが例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
また、トランクリッド開口部あるいはバックドア開口部における自動車用ウエザーストリップの取付構造ではないが、サイドウインドガラス用の類似の自動車用ウエザーストリップの取付構造として、車体のフランジ部に嵌合保持される断面略U字状のウエルト部の室外側の脚部にシール片を延長形成して、そのシール片を折り重なるように屈曲させることで車体パネルに対してシールを行うようにしたものが特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−78664号公報
【特許文献2】特開平5−278531号公報
【特許文献3】特開2010−188850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の取付構造では、ウエルト部の室外側の脚部に突設したシール片を斜め室外側に延ばして、そのシール片をフランジ部に圧接または弾接させることでシールを行うものであるため、ウエルト部をフランジ部へ取り付ける際に、シール片の先端の一部が室内側に反転するいわゆる捲れ込みが発生することがあり、それによってシール線の途切れによるシール性の低下や外観品質が低下するという問題がある。
【0006】
また、トランクリッド開口部またはバックドア開口部における自動車用ウエザーストリップの取付構造として、特許文献2に記載の構造を適用することも可能ではある。
しかしながら、特許文献2に記載の取付構造では、ウエルト部の室外側の脚部に突設したシール片を折り重なるように屈曲させることで車体パネルに弾接させるものであるため、例えば車体パネル側のパネル接合部(ジョッグル接合部)やペイントシール塗布部等の段差部に対する追従性が悪く、当該段差部でのシール性が不十分となりやすい。これは、上記のようにシール片を折り重なるように屈曲させることにより、シール機能上重要なシール片の先端とウエルト部の室外側の脚部の先端とが当接しなくなり、ウエルト部の押し込み力をシール片の先端に十分に伝達することができないことに基づいている。
そして、シール片の先端とウエルト部の室外側の脚部の先端とを当接させることだけに着目すれば、シール片の先端を厚肉にしたり、あるいは室外側の脚部の先端に肉盛りすることが有効であるが、この場合には上記のような段差部以外の一般部においてシール片が強圧縮状態となりすぎて、その反力の増大によりウエルト部をフランジ部の所定の位置に保持することが困難となる。
【0007】
ここで、特許文献1に類似した技術として、特許文献3に記載のものが本出願人により提案されているが、当該特許文献3に記載の技術は上記特許文献1に記載の技術の延長線上にあるものと理解され、なおも特許文献1に記載のものと同様の課題を残している。
【0008】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、ウエルト部の室外側の脚部にシール片を突設して、このシール片を車体パネルに圧接または弾接させることでシール機能を発揮する構造を前提としつつも、シール片の捲れ込みによるシール性の低下や外観品質の低下を防ぎ、特に車体パネル側の段差部におけるシール片の追従性を高めて当該部位でのシール性の向上を図ることができる構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、一対の脚部同士を両者にまたがる連接部で接続することで断面略U字状に形成されて、車体パネルに起立形成されたフランジ部に嵌合保持されるウエルト部と、このウエルト部の連接部の外側に一体成形されたメインシール部と、を備え、上記ウエルト部のうち少なくとも室外側となる一方の脚部を車体パネルに圧接させることでその車体パネルに対するウエルト部のシール機能を具備させた自動車用ウエザーストリップの取付構造である。
【0010】
その上で、上記一方の脚部の先端に当該一方の脚部よりも幅広の着座ビード部を形成するとともに、上記着座ビード部の先端面全体が車体パネルとほぼ平行な平坦面となっていて、上記着座ビード部の平坦な先端面に室内側シールリップと室外側シールリップとを互いに離間させて並べて突出形成し、これらの室内側シールリップと室外側シールリップとが共に斜め室内側を指向するように当該室内側シールリップと室外側シールリップとを傾斜させてあり、上記一方の脚部を車体パネルに圧接させた状態では、上記室内側シールリップの室外側の面に対して室外側シールリップの室内側の面が圧接し、双方のシールリップ同士が互いに圧接した状態でそれぞれのシールリップが車体パネルに圧接するようになっていることを特徴としている。これは、先に述べた従来の自動車用ウエザーストリップとは発想を変えて、それぞれのシールリップを積極的に室内側に捲れ込ませるとの発想に基づいている。
【0013】
また、上記のように双方のシールリップ同士を互いに圧接した状態とする上では、請求項に記載のように、上記室外側シールリップの突出長さが室内側シールリップのそれよりも大きく設定されていることが望ましい。さらに、双方のシールリップ同士の離間距離を確保しつつ、それぞれのシールリップを積極的に室内側に捲れ込ませるような形態で車体パネルに圧接させる上では、請求項に記載のように、上記室外側シールリップを含む着座ビード部の室外側の面が室外側に向かって凸となる湾曲形状となっていることが更に望ましい。
【0014】
加えて、上記室内側シールリップと室外側シールリップの車体パネル側の段差部に対する追従性をより向上させる上では、請求項に記載のように、上記一方の脚部を含むウエルト部がソリッドのゴム系材料で形成されている一方、上記室内側シールリップと室外側シールリップとがウエルト部よりも軟質のゴム系材料で形成されていることが望ましい。
【0015】
さらにまた、室外側シールリップをより積極的に室内側に捲れ込むような形態で撓み変形させる上では、請求項に記載のように、上記着座ビード部の先端面のうち室内側寄りの部分が車体パネルとほぼ平行な平坦面となっているのに対して、着座ビード部の先端面のうち室外側寄りの部分が上記室内側寄りの部分に対し所定角度をなして室外側に向かって下り勾配の傾斜面となっていて、上記着座ビード部の先端面のうち室内側寄りの平坦面に室内側シールリップを、室外側寄りの傾斜面室外側シールリップをそれぞれ互いに離間させて並べて突出形成してあることが望ましい。
【0016】
したがって、少なくとも請求項1に記載の発明では、室内側シールリップと室外側シールリップは共に斜め室内側を指向するように予め傾斜させてあるため、相手側フランジ部への取付時に、当該フランジ部に対するウエルト部の押し込み力を受けて、これら双方のシールリップは積極的に室内側に捲れ込むような形態で車体パネルに着座することとなる。そして、それぞれのシールリップは独立した自由度のもとで撓み変形して車体パネルに圧接または弾接して、いわゆる二重のシールのかたちでシール機能を発揮することになる。そのため、車体パネル側のジョッグル接合部やペイントシール塗布部のような局部的な段差部、例えば一般部よりも一段低くなるような段差部においても忠実に追従できるようになり、必要十分なシール性が確保される。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、室内側シールリップと室外側シールリップが積極的に室内側へ捲れ込むかたちで車体パネルに圧接または弾接して、いわゆる二重のシールのかたちでシール機能を発揮することになるため、従来のような局部的なシール片の捲れ込みによるシール性の低下や外観品質の低下を防ぐことができることはもちろんのこと、車体パネル側のジョッグル接合部やペイントシール塗布部のような局部的な段差部においても忠実に追従できるようになり、シール性が向上する。
【0018】
また、室内側シールリップの室外側の面に対して室外側シールリップの室内側の面が圧接し、双方のシールリップ同士が互いに圧接した状態でそれぞれのシールリップが車体パネルに圧接するようになっているため、特に室外側シールリップの撓み代を増やすことなく、一般部よりも一段低くなるような段差部においても室外側シールリップを忠実に追従させてシール反力を確保することができ、これによってもまたシール性が向上する。
【0019】
さらに、一方の脚部の先端に当該一方の脚部よりも幅広の着座ビード部を形成し、この着座ビード部の先端面に上記室内側シールリップと室外側シールリップとを互いに離間させて突出形成してあるため、それぞれのシールリップが独立して自由に撓み変形することができ、相手側フランジ部に対する組付性が良好なものとなるほか、相手側フランジ部に対する押し込み力確実に双方のシールリップに伝えることができて、上記のような一般部よりも一段低くなるような段差部においても室外側シールリップを忠実に追従させることができる。
【0020】
請求項に記載の発明によれば、室外側シールリップの突出長さを室内側シールリップのそれよりも大きく設定してあるため、双方のシールリップが車体パネルに圧接した状態では、それら双方のシールリップ同士も互いに圧接した状態とすることができ、これによってもまた一般部よりも一段低くなるような段差部においても室外側シールリップを忠実に追従させることができる。
【0021】
請求項に記載の発明によれば、室外側シールリップを含む着座ビード部の室外側の面が室外側に向かって凸となる湾曲形状としてあるため、双方のシールリップをより確実に室内側へ捲れ込ませるかたちで車体パネルに圧接させることができ、双方のシールリップの撓み状態にばらつきが発生することがなく、シール性が安定化する。
【0022】
請求項に記載の発明によれば、一方の脚部を含むウエルト部をソリッドのゴム系材料で形成している一方、室内側シールリップと室外側シールリップとをウエルト部よりも軟質のゴム系材料で形成してあるため、双方のシールリップの着座安定性とともに撓み状態が一段と安定化し、シール性が一段と向上する利点がある。
【0023】
請求項に記載の発明によれば、着座ビード部の先端面のうち室外側寄りの部分が室外側に向かって下り勾配の傾斜面となっていて、この傾斜面から室外側シールリップを突出形成してあるため、室外側シールリップをより確実に室内側へ捲れ込ませるかたちで車体パネルに圧接させることができ、双方のシールリップの着座安定性とともに撓み状態が一段と安定化し、これによってもまたシール性が一段と向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】自動車のバックドア開口部の周縁に装着される自動車用ウエザーストリップの概略説明図。
図2】本発明を実施するための具体的な実施の形態を示す図で、図1の自動車用ウエザーストリップの単体での自由状態を示す断面図。
図3図1のQ部に相当する要部の斜視図。
図4図2の自動車用ウエザーストリップが一般部に嵌合保持した状態を示す断面図で、図3のA−A線に沿う断面図。
図5図2の自動車用ウエザーストリップが段差部に嵌合保持した状態を示す断面図で、図3のB−B線に沿う断面図。
図6図2の自動車用ウエザーストリップの変形例を示す要部の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜6は本発明に係る自動車用ウエザーストリップおよびその取付構造の具体的な実施の形態を示す図であり、図1は自動車の例えばバックドアの開口部の周縁に閉ループ状に装着される長尺な自動車用ウエザーストリップの概略図を示し、図2図1の自動車用ウエザーストリップの自由状態での断面図を、図3図1,2の自動車用ウエザーストリップが取り付けられる車体パネル側の要部の構造として、図1のQ部に相当する部位の拡大斜視図を示している。また、図4,5は図2の自動車用ウエザーストリップが相手側フランジ部に嵌合保持された状態の断面図をそれぞれ示し、図4図3の一般部のA−A線に沿う断面図を示し、図5図3の段差部のB−B線に沿う断面図を示している。なお、図1における符号4aは閉ループ状のウエザーストリップの接続部を示している。
【0026】
図1に示す車体側のバックドア開口部1の周囲には、図2および図3に示すように車体パネル2側からフランジ部3が起立または直立形成されていて、このフランジ部3に自動車用ウエザーストリップ(以下、単にウエザーストリップと称する。)4が装着される。なお、図2,3では、フランジ部3の右側が室外側、同左側が室内側となっている。
【0027】
ウエザーストリップ4は、取付基部として機能する断面略U字状のウエルト部5と、そのウエルト部5と一体に形成されたメインシール部としての中空シールリップ6とを備えていて、その中空シールリップ6に対してバックドア等の開閉体7が弾接することで車室の内外がシールされることになる。
【0028】
より具体的には、ウエルト部5は室内外の一対の脚部8,9同士をその両者にまたがる連接部10をもって接続することで断面略U字状に形成されていて、内部には金属製あるいは樹脂製の相似形の所定の芯材19を長手方向に沿って埋設してある。ウエルト部5における各脚部8,9の内側面にはそれぞれに一対の保持リップ11または12を突出形成してあり、ウエルト部5をフランジ部3に差し込むことでそれらの保持リップ11,12が撓みつつフランジ部3を両面から挟持し、これをもって断面略U字状のウエルト部5がフランジ部3に嵌合保持されることになる。
【0029】
なお、室内側の脚部8の外側面の根元部には断面略くの字状のカバーリップ13を突出形成してある。このカバーリップ13は、例えば室内側に装着されるフィニッシャー等の図示外のトリム部品の端末部を隠蔽または連続性を持たせる際に使用される。
【0030】
ウエルト部5における室外側の脚部9の先端には、この室外側の脚部9の他の部位よりも幅広の着座ビード部14が一体に形成されていて、この着座ビード部14の先端面14aは、フランジ部3への正規取付状態において車体パネル2側のフランジ部3以外のパネル面とほぼ平行な平坦面となっている。そして、この着座ビード部14の先端面14aの室内外方向の両端から室内側シールリップ15と、室外側シールリップ16とが並べて突出形成されている。
【0031】
より詳しくは、ウエザーストリップ4の自由状態を示す図2において、上記室内側シールリップ15および室外側シールリップ16は、離間距離t1を隔てて互いに離間しているとともに、両者は共に斜め室内側を指向するように傾斜している。
【0032】
また、上記ウエルト部5の連接部10および脚部8,9と着座ビード部14が例えばソリッドゴムにて形成されるのに対して、上記室内側シールリップ15および室外側シールリップ16は、中空シールリップ6やカバーリップ13、さらには保持リップ12の先端部12aとともにソリッドゴムよりも軟質のスポンジゴムで形成される。
【0033】
さらに、上記着座ビード部14のうち、上記室外側シールリップ16を含む室外側の面14bが室外側に向かって膨出していて、実質的に室外側に向かって凸となる湾曲形状となっているとともに、この室外側シールリップ16の突出長さは、図2から明らかなように、室内側シールリップ15のそれよりも大きくなっていて、上記室内側シールリップ15および室外側シールリップ16の突出長さは、これらの離間距離t1よりも大きく設定されている。
【0034】
そして、図4,5に示すように、上記室外側の脚部9を車体パネル2側のパネル面に圧接させた状態、すなわちウエルト部5をフランジ部3へ嵌合保持させた状態では、上記室内側シールリップ15の室外側の面に対して室外側シールリップ16の室内側の面が圧接し、双方のシールリップ15,16同士が互いに圧接した状態でそれぞれのシールリップ15,16の室外側の面が車体パネル2側のパネル面に圧接するように設定されている。
【0035】
ここで、図3はウエザーストリップ4が取り付けられる車体パネル2側の要部の構造として、図1のQ部に相当する部位であって且つ車体パネル2を構成することになるパネル要素2a,2b同士の接合部であるジョッグル接合部の拡大斜視図を示している。このようなジョッグル接合部では、一方のパネル要素2aの端部に、相手側となるパネル要素2bの板厚に相当するジョッグルフランジ部17が一段低くなるように段差をもって形成され、このジョッグルフランジ部17上に重ね合わせるように他方のパネル要素2bを受容することで双方のパネル要素2a,2b同士が接合される。この場合、ジョッグルフランジ部17以外の一般部では車体パネル2である双方のパネル要素2a,2b同士が面一状態となるものの、ジョッグルフランジ部17のうち相手側のパネル要素2bが重合しない部位では一般部よりも一段低い段差部18の発生が不可避となる。
【0036】
したがって、上記ジョッグル接合部での段差部18の存在を容認した上で、上記ウエザーストリップ4を相手側のフランジ部3に取り付ける際には、図4,5に示すように、ウエルト部5を相手側となるフランジ部3に押し込んで嵌合保持させると、室内側シールリップ15および室外側シールリップ16の先端部が車体パネル2側のパネル面と当接して、両シールリップ15,16はそれらの指向方向である室内側に向かって相互に独立して自由に撓み変形するため、双方のシールリップ15,16共に積極的に室内側へと捲れ込むかたちになる。この場合、室外側の脚部9よりも幅広の着座ビード部14に双方のシールリップ15,16を並設してあるとともに、それら双方のシールリップ15,16同士の間に図2の離間距離t1を確保してあることで、それぞれのシールリップ15,16の自由な撓み変形が助長される。
そして、やがては上記室内側シールリップ15の室外側の面に対して室外側シールリップ16の室内側の面が圧接して、双方のシールリップ15,16同士が互いに圧接した状態で、それぞれのシールリップ15,16の室外側の面が車体パネル2側のパネル面に着座するようにしていわゆる二重シールのかたちで圧接または弾接することになる。そのため、従来のようなシール線の途切れが発生する余地はなく、シール性が向上するとともに、従来のような外観品質の低下をもたらすこともない。
【0037】
より具体的には、車体パネル2の一般部、すなわち図3のA−A線断面に相当する図4では、フランジ部3に対するウエルト部5の押し込み力が幅広の着座ビード部14を介して双方のシールリップ15,16に及ぶため、双方のシールリップ15,16同士は互いに重なり合うように撓み変形して、車体パネル2に圧接または弾接するかたちとなる。この場合において、室内側シールリップ15の撓み反力は室外側シールリップ16にも及ぶため、室内側シールリップ15の先端が車体パネル2に圧接または弾接することはもちろんのこと、室外側シールリップ16の室外側の面が室内側シールリップ15よりも高い撓み反力で車体パネル2に圧接または弾接することになる。そして、双方のシールリップ15,16による二重シールの形態をもって車室の内外が確実にシールされることになる。特に、室外側シールリップ16の撓み反力をより高くすることができるため、室外側からの水の侵入を確実に防止することができる。
【0038】
その一方、車体パネル2のうち上記ジョッグル接合部での段差部18、すなわち図3のB−B線断面に相当する図5では、段差部18が図4の車体パネル2の一般部よりも一段低くなっているため、双方のシールリップ15,16の撓み代は図4のものより小さくなるものの、図4と同様に室内側シールリップ15の室外側の面に室外側シールリップ16の室内側の面が圧接した状態で、双方のシールリップ15,16が共に車体パネル2に圧接または弾接するかたちとなることに変わりはない。この場合において、図4と同様に室内側シールリップ15の撓み反力は室外側シールリップ16にも及ぶため、室内側シールリップ15の先端が段差部18に忠実に倣うかたちで当該段差部18に圧接または弾接することはもちろんのこと、室外側シールリップ16の室外側の面が段差部18に忠実に倣うかたちで当該段差部18に圧接または弾接することになる。そして、上記段差部18においても双方のシールリップ15,16による二重シールの形態をもって車室の内外が確実にシールされることになる。
【0039】
ここで、図4図5とを比較した場合、図5では段差部18の深さ分だけ双方のシールリップ15,16の撓み代が少ないのに対して、図4では上記段差部18がない分だけ図5よりも相対的に双方のシールリップ15,16の撓み代が大きくなり、図4では図5よりも双方のシールリップ15,16が車体パネル2に対して強圧接するかたちとなる。そして、図3のB−B線断面に相当する図5では、段差部18の深さ分だけ双方のシールリップ15,16の撓み代が少ないものの、段差部18の両隣の図3のA−A線断面に相当する図4の一般部では、図5に比べ双方のシールリップ15,16の撓み代が大きく強圧接するかたちとなっているため、これらの一般部での強圧接に伴う双方シールリップ15,16の撓み反力が段差部18にも波及して、当該段差部18においても双方のシールリップ15,16がより確実且つ忠実に段差部18に倣うかたちで当該段差部18に圧接または弾接することになる。
【0040】
したがって、車体パネル2の一般部であるか段差部18であるかにかかわらず、双方のシールリップ15,16に適度な撓み反力またはシール反力が得られて、それらの一般部および段差部18に忠実に倣うかたちで双方のシールリップ15,16が圧接または弾接することになるので、二重シールの形態をもって車室の内外が確実にシールされることになる。そのため、従来のようなシール線の途切れが発生する余地はなく、シール性が向上するとともに、外観品質の低下をもたらすこともない。
【0041】
図6は、先に述べた自動車用ウエザーストリップおよびその取付構造の変形例の要部拡大図で、図3と共通する部分には同一符号を付してある。
【0042】
図6に示す変形例では、先に述べた室内側シールリップ15および室外側シールリップ16を備える室外側の脚部9における着座ビード部14の先端面14aのうちその室外側寄りの略半分の部分が室外側に向かって下り勾配の傾斜面となっていて、この傾斜面から室外側シールリップ16を突出形成したものである。
【0043】
この図6に示す変形例では、室外側シールリップ16がその根元部を含めて室内側へ傾斜するため、その室外側シールリップ16をより積極的に室内側に捲れ込ませるように撓み変形させる上で有利となり、特に室外側シールリップ16の撓み変形の挙動が一段と安定したものとなる。
【符号の説明】
【0044】
2…車体パネル
3…フランジ部
4…自動車用ウエザーストリップ
5…ウエルト部
6…中空シールリップ(メインシール部)
8…室内側の脚部
9…室外側の脚部
10…連接部
14…着座ビード部
14a…先端面
14b…室外側の面
15…室内側シールリップ
16…室外側シールリップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6