【文献】
Cookpad, サービスステーキ肉もやんわり,2009年1月6日,[検索日:2016年3月18日],URL,http://cookpad.com/recipe/708752
【文献】
Cookpad,柔らかジューシー鶏胸肉,2011年4月4日,[検索日:2016年3月18日],URL,http://cookpad.com/recipe/1401873
【文献】
日本獣医畜産大学畜産食品工学科肉学教室,肉の常識,第55回<肉を柔らかくする砂糖>,2001年 ,[検索日:2016年3月18日],URL,http://www.agr.okayama-u.ac.jp/amqs/josiki/55-9712.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記特許文献1〜2に記載の調味料は、調味料自体が風味を有するものであるため、畜肉や魚肉の本来の風味を損なうおそれがあり、汎用性に劣るという問題があった。また、特許文献1〜2に記載の調味料では、軟化効果、並びに、食感、風味、ジューシー感及び外観の向上効果に未だ改善の余地があった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、畜肉や魚肉の本来の風味を損なうことなく畜肉や魚肉の硬化を防ぐことができ、且つ、畜肉や魚肉の食感、風味、ジューシー感及び外観を良好とすることができる畜肉又は魚肉の軟化剤、並びに該畜肉又は魚肉の軟化剤を用いた畜肉又は魚肉の軟化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の砂糖を含有し、水に溶解した場合のpHが特定の範囲である剤を用いることにより、畜肉又は魚肉の保水性向上及び硬化抑制が可能となり、食感、風味、ジューシー感及び外観が良好な畜肉又は魚肉が得られることを新規に見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の特徴を有する畜肉又は魚肉の軟化剤、軟化液、及び軟化方法を提供するものである。
(1)カラメルを含有する砂糖を含有し、水に溶解した場合にpH8〜11とな
り、前記カラメルを含有する砂糖が、中双糖又は三温糖であって、さらに、アルカリ金属塩を含有することを特徴とする畜肉又は魚肉の軟化剤。
(2)(1
)の畜肉又は魚肉の軟化剤を含む軟化液。
(3)(1
)の畜肉又は魚肉の軟化剤を、畜肉又は魚肉に接触させる軟化方法。
(4)前記畜肉が牛肉、鶏肉又は豚肉である(
3)の軟化方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の畜肉又は魚肉の軟化剤、軟化液、及び畜肉又は魚肉の軟化方法によれば、畜肉又は魚肉の本来の風味を損なうことなく畜肉又は魚肉の硬化を防ぐことができ、且つ、畜肉又は魚肉の食感、風味、ジューシー感及び外観を良好とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の畜肉又は魚肉の軟化剤(以下、単に「軟化剤」ということがある。)は、畜肉又は魚肉に適用することにより、該畜肉又は魚肉が硬化する処理(例えば加熱処理等)を行った場合であっても、該畜肉又は魚肉の硬化が抑制される剤である。
【0009】
本発明において畜肉としては、通常食用に用いられる畜肉であれば特に限定されるものではなく、牛肉、鶏肉、豚肉、馬肉、羊肉、山羊肉等のいずれであってもよい。なかでも、入手が容易であり、かつ嗜好性が高いことから、牛肉、鶏肉、豚肉又は羊肉であることが好ましい。
本発明において魚肉としては、通常食用に用いられる魚肉であれば特に限定されるものではなく、タラ、サケ等の白身魚、マグロ、カツオ等の赤身魚等の食肉のいずれであってもよい。
【0010】
本発明の軟化剤を用いることにより、加熱による畜肉又は魚肉の過度の硬化を防ぐことができるため、本発明の畜肉又は魚肉の軟化剤を用いる畜肉又は魚肉は、加熱処理に供される畜肉又は魚肉であることが好ましい。
【0011】
本発明の軟化剤は、カラメルを含有する砂糖を含有し、水に溶解した場合にpH8〜11となるものである。
砂糖はサトウキビやテンサイなど原料とする、ショ糖を主成分とする甘味料である。砂糖の中でも、食品工業では蜜を含まない分蜜糖がその溶解性の良さのために広く使われている。
また、この分蜜糖も、カラメル成分を含まず白色の糖と、カラメル分を含んでいる黄褐色の糖とに分けられる。このカラメル分を含んでいる糖は、こくみなどを有しているため和食の隠し味や専門喫茶店でのコーヒーの甘味付けに用いられている。
本発明においては、このいわゆる砂糖について広く検討したところ、種々の糖で畜肉又は魚肉への軟化効果が確認できた。なかでも、カラメル成分を含有する黄褐色の砂糖(以下、カラメルを含有する砂糖)に、より効果的な軟化活性が確認できた。
また、このカラメルを含有する砂糖は、精糖工程中で起きる化学反応によって、黄褐色に変色する場合と、一旦白く精糖したものに、更にカラメル分を添加したり、表面に噴霧したりするなどで着色される場合とがあるが、その工程で特に限定されるものではなく、製造工程中の加熱や化学反応によりカラメルが形成されたものであってもよく、製造中にカラメルを添加したものであってもよい。このカラメルを含有する砂糖としては、結晶の大きさが大きなものとして中双糖があり、粒度が小さいものとして三温糖がある。
また、カラメルを含まずに製造された市販の砂糖に、カラメル色素を添加して用いてもよい。用いるカラメル色素は、食品用着色料として通常使用されるものであれば特に限定されず、カラメルI〜IVのいずれであってもよい。
【0012】
本発明の軟化剤に含有させるカラメルを含有する砂糖としては、製造工程中の加熱によりカラメルが形成される砂糖又は製造中にカラメルを添加した砂糖が好ましく、中双糖でも三温糖でもかまわない。
カラメルを含有する砂糖は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
本発明の軟化剤は、水に溶解した際のpHが8〜11となるものであって、pH9〜10であることが好ましい。水に溶解した際のpHをアルカリとすることにより、畜肉又は魚肉の保水力が高まる結果、該畜肉又は魚肉が軟化され、食感、風味、ジューシー感及び外観が優れたものとなる。
【0014】
軟化剤の水溶解時のpHを上記範囲とする方法は特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩、又はアルカリ金属塩以外のpH調整剤を、軟化剤に含有させる方法が挙げられる。
本発明においてアルカリ金属塩としては、pHを上記範囲とできるものであれば特に限定されるものではなく、ナトリウム又はカリウムの炭酸塩、水酸化物、酸化物、重炭酸塩、炭酸水素塩、が挙げられる。より具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の、食品に用いうるものが挙げられる。
なかでも、pH調整能に優れ、安価であることから、炭酸ナトリウムが特に好ましい。
【0015】
アルカリ金属塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルカリ金属塩の配合量は、水に溶解させた際にpHを8〜11とできる量であれば特に限定されるものではないが、ショ糖100質量部に対して5〜50質量部であることが好ましく、10〜40質量部であることがより好ましく、10〜30質量部であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明の軟化剤は、カラメルを含有する砂糖、又は、カラメルを含有する砂糖及びアルカリ金属塩に加えて、他の副原料を含んでいてもよい。他の副原料として具体的には例えば、食塩、ショ糖以外の糖類、香辛料、発酵調味料等の調味料;酒精;澱粉類;植物性タンパク質;酵母エキス;増粘剤、膨張剤、品質改良剤、酸化防止剤、保存料、乳化剤等の添加剤等が挙げられる。
【0017】
本発明の軟化剤の形状は特に限定されるものではなく、粉末状、錠剤等任意の形状とすることができる。
【0018】
本発明の軟化剤は、液体に溶解又は分散して、軟化剤を含む軟化液として用いることもできる。軟化剤を溶解又は分散する液体としては特に限定されるものではないが、水や、酒等の食用アルコールが挙げられる。
軟化液中の軟化剤の濃度は、本発明の効果が得られるものであれば特に限定されるものではないが、畜肉又は魚肉に砂糖由来の甘みが付与されない程度とすることが好ましく、軟化液中のカラメルを含有する砂糖の濃度が0.5〜20質量%であることがより好ましく、1〜10質量%とすることがさらに好ましい。
また、軟化液のpHは8〜11であることが好ましく、9〜10であることが好ましく、液が該pH範囲内となるように、軟化剤中のアルカリ金属塩の配合割合、pH調整剤の使用有無、液中の軟化剤の量を適宜決定することが好ましい。
【0019】
本発明の畜肉軟化方法は、上記軟化剤を、畜肉又は魚肉の表面に接触させられる方法であれば特に限定されるものではない。
例えば本発明の軟化剤を畜肉又は魚肉の表面に付着させる、本発明の軟化液に畜肉又は魚肉を浸漬する等の方法により行うことができる。なかでも、本発明の軟化剤を畜肉又は魚肉の内部に浸透させることでき、本発明の効果に優れることから、軟化剤を含む軟化液に畜肉又は魚肉を浸漬する方法が好ましい。
【0020】
軟化液の使用量は特に限定されるものではないが、畜肉又は魚肉の表面全体に軟化液が接触する量以上であることが好ましい。
畜肉又は魚肉を軟化液に浸漬する時間、及び浸漬する際の温度は、特に限定されるものではないが、4〜30℃、0.5〜48時間であることが好ましい。また、畜肉又は魚肉に軟化剤をより好適に浸透させ、且つ畜肉又は魚肉の劣化を防ぐため、畜肉又は魚肉を軟化液に浸漬させた状態で、常温(16〜26℃程度)で1〜6時間静置した後、そのまま冷凍又は冷蔵保存中も液に浸漬しておくことも好ましい。
【0021】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0022】
[実験例1]
表1に示す各成分を表中に示す濃度で水に溶解し、調味液を作製した。ポリ袋中に牛肉と、該肉の30質量%量の調味液を入れ、空気が入らないように密閉して常温(25℃)で3時間の放置後、冷凍庫(−18℃以下)で24時間静置した。その後、常温に1時間放置して解凍し、オーブンで220℃12分間の焼成を行った。
得られた焼成肉の柔らかさ及び焼成肉としての好ましさについて100点満点で評価した結果を表1に示す。また、用いた表1に示す成分を水に溶解した際の軟化液のpHを表1に併記する。
【0024】
上記の結果から、塩の中では炭酸ナトリウムが、糖類の中では中双糖が最も好ましいことが確認できた。
【0025】
[実施例1]
表2に示す各成分を混合し、軟化剤溶液Aを作製した。軟化剤溶液AのpHは9.8であった。
ポリ袋中に約1cmの厚さにスライスした牛肉片50gと、製造した軟化剤溶液Aの5倍希釈液15gを入れ、空気が入らないように密閉して常温(25℃)で3時間又は6時間放置の後、冷凍庫(−18℃以下)で24時間静置した。その後、常温で1時間放置して解凍し、オーブンを用いて220℃12分間の焼成を行った。得られた焼成肉について、テクスチャーアナライザー(商品名「The TA,XT plus Texture Analyzer」、Stable Micro System社製)を用い、先端のブレードが3mmの距離を押し込む際に必要な力量(g)を10回測定し、その平均値を算出した。結果を表3に示す。
比較として、軟化剤溶液Aの中双糖を等量の他の糖(上白糖、ブドウ糖、マルトース、白双糖、ソルビトール、トレハロース)にそれぞれ代えた比較軟化剤溶液B〜G;中双糖を水に代えた比較軟化剤溶液H;又は、下記比較軟化剤溶液Iを用いて同様の検討を行った。さらに、軟化剤溶液に代えて水に浸漬した検討も行った。結果を併せて表3に示す。表中、「−」は検討を行っていないことを示す。
比較軟化剤溶液I:ブドウ果汁、食塩、デキストリン、酵母エキス、pH調整剤及び有機酸調味料を含む市販品。
【0026】
また、軟化剤溶液A又は比較軟化剤溶液Iを用いて、3時間浸漬を行った場合の、焼成後の牛肉の官能評価を行った結果を表4に示す。
【0030】
上記の結果から、本発明に係る軟化剤溶液Aを用いた場合、中双糖を含有しない比較軟化剤溶液B〜Iや水のみの場合に比べて、焼成後に最も柔らかく、食感、風味、ジューシー感及び外観に優れることが確認できた。
【0031】
[実施例2]
牛肉を豚肉又は鶏肉に代え、浸漬時間を3時間とした以外は実施例1と同様にして、軟化剤溶液A、比較軟化剤溶液I又は水を用いてテクスチャーアナライザーによる測定を行った。結果を表5に示す。表5中の牛肉のデータは表3と同じである。
【0033】
[実施例3]
約2cmの厚さにスライスした牛肉片50gを用い、浸漬時間を6時間とした以外は実施例1と同様にして、テクスチャーアナライザーによる測定を行った。軟化剤溶液としては、前記同様の軟化剤溶液A、比較軟化剤溶液H、若しくは水、又は、以下に示す比較軟化剤溶液Jを用いた。結果を表6に示す。
比較軟化剤溶液J:軟化剤溶液Aにおいて、炭酸ナトリウムに代えて水を有する軟化剤溶液。
【0035】
上記の結果から、中双糖及び炭酸ナトリウムの双方を含むことにより、本発明の効果が得られることが確認できた。
【0036】
[実施例4]
約2cmの厚さの牛肉片50gを用い、浸漬時間を6時間とした以外は実施例1と同様にして、テクスチャーアナライザーによる測定を行った。軟化剤溶液としては、前記同様の軟化剤溶液A、比較軟化剤溶液B,H,J若しくは水、又は、以下の軟化剤溶液K若しくはLを用いた。結果を表7に示す。
軟化剤溶液K:軟化剤溶液Aにおいて、異なる商品の中双糖を有する軟化剤溶液。
軟化剤溶液L:軟化剤溶液Aにおいて、中双糖に代えてカラメル含有三温糖を有する軟化剤溶液。
【0038】
上記の結果から、カラメルを含む砂糖を用いた場合に、本発明の効果が得られることが確認できた。
【0039】
[実施例5]
牛肉片に代えて表8中に示す魚肉を用い、浸漬時間を3時間、用いる軟化剤溶液を表8に示すものとした以外は実施例4と同様にして、テクスチャーアナライザーによる測定を行った。結果を表8に示す。
【0041】
上記の結果から、本発明に係る軟化剤溶液Aは、魚肉に対しても軟化効果を有することが確認できた。