(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両のウイング扉の前側を回動させる前側電動シリンダと、前記ウイング扉の後側を回動させる後側電動シリンダと、前記前側及び後側電動シリンダのモータの回転回数をそれぞれ検出する検出手段とを用い、
前記ウイング扉の全閉停止位置を基準位置として、前記全閉停止位置から全開停止位置までの回動範囲で前記前側電動シリンダのモータと前記後側電動シリンダのモータとの間の累積回転回数の差が零となるように制御することを特徴とする車両のウイング扉開閉制御方法。
前記ウイング扉に初期歪みに起因して、前記ウイング扉の前後の一方が機械的な全閉状態に到達しても、他方が機械的な全閉状態に未達である場合、未達の側の電動シリンダを更に回転させて機械的な全閉状態に到達させ、前記前側及び後側電動シリンダの機械的な全閉状態に基づき前記全閉停止位置を規定する、請求項1記載の車両のウイング扉開閉制御方法。
前記電動シリンダが縮動して前記ウイング扉の機械的な全閉状態に到達後、前記モータを所定回転回数だけ逆転させてから全閉停止位置にて停止する、請求項1又は2記載の車両のウイング扉開閉制御方法。
前記ウイング扉の回転角度が予め定められたスローダウン区間の開始点に到達したことを、前記モータの全閉停止位置から前記スローダウン区間の開始点までの前記モータの累積回転回数により検知し、前記スローダウン区間においては前記モータの回転速度を低下させて前記ウイング扉の動きを緩慢にする、請求項1,2又は3記載のウイング扉開閉制御方法。
前記制御回路は、前記電動シリンダが縮動して前記ウイング扉の機械的な全閉状態に到達したことを検知した後に、所定回転回数だけ前記モータを逆転させた前記全閉停止位置にて停止させる、請求項5記載の車両のウイング扉開閉制御装置。
前記制御回路は、前記ウイング扉の回転角度が予め定められたスローダウン区間の開始点に到達したことを、前記モータの作動開始点から前記スローダウン区間の開始点までの前記モータの累積回転回数に対応した前記カウンタの計数値より検知し、前記スローダウン区間においては前記モータの回転速度を低下させて前記ウイング扉の動きを緩慢にする、請求項5又は6記載のウイング扉開閉制御装置。
【背景技術】
【0002】
近年、荷室を左右のウイング扉で開閉自在としたトラックが利用されるようになってきており、ウイング扉を開閉する駆動装置として油圧シリンダが一般的に用いられている。左右のウイング扉は、荷室前後にそれぞれ立設された門型枠間に渡されたセンターフレームにヒンジを介して開閉自在に取り付けられており、前側の門型枠とウイング扉の前側との間、及び後側の門型枠とウイング扉の後側との間に開閉用の油圧シリンダがそれぞれ配設されている。
【0003】
トラックの大型化に伴い、ウイング扉の軽量化が図られており、ウイング扉自体の剛性は低くなるきらいがある。このため、ウイング扉の前後の油圧シリンダの開閉速度が不揃いであるとウイング扉の開閉時にウイング扉が捻れるという問題があり、ひいてはウイング扉の破損に至るおそれがある。
【0004】
ウイング扉の開閉に油圧シリンダを用いる場合、前後の油圧シリンダに1個の油圧源を共用すると(つまりポンプを共用すると)、一方の油圧シリンダが先に伸縮し、他方の油圧シリンダが遅れて伸縮する現象が発生しやすい。また、前後の油圧シリンダをそれぞれ別の油圧源で作動させる場合、油圧源のモータの回転速度の不揃いや前後の油圧シリンダの特性のずれにより、前後の油圧シリンダの動きが不揃いとなるおそれがある。
【0005】
また、ウイング扉には製造上の初期歪みが発生することがあり、ウイング扉を閉めたときに荷室の側面煽りとの間に隙間が発生するため、これを補正する必要がある。
【0006】
一方、下記特許文献1には、電動シリンダをウイング扉の開閉駆動装置として用いることが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ウイング扉を開閉する駆動装置として電動シリンダを用いる場合、個別制御が可能であるが、油圧シリンダとは別の配慮が必要となる。
【0009】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、ウイング扉を開閉する駆動装置として電動シリンダを用いて、ウイング扉を捻れなく円滑に開閉可能で、ひいてはウイング扉の損傷を防止可能な車両のウイング扉開閉制御方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は車両のウイング扉開閉制御方法である。この車両のウイング扉開閉制御方法は、車両のウイング扉の前側を回動させる前側電動シリンダと、前記ウイング扉の後側を回動させる後側電動シリンダと、前記前側及び後側電動シリンダのモータの回転回数をそれぞれ検出する検出手段とを用い、
前記ウイング扉の全閉停止位置を基準位置として、前記全閉停止位置から全開停止位置までの回動範囲で前記前側電動シリンダのモータと前記後側電動シリンダのモータとの間の累積回転回数の差が零となるように制御することを特徴とする。
【0011】
前記第1の態様において、前記ウイング扉に初期歪みに起因して、前記ウイング扉の前後の一方が機械的な全閉状態に到達しても、他方が機械的な全閉状態に未達である場合、未達の側の電動シリンダを更に回転させて機械的な全閉状態に到達させ、前記前側及び後側電動シリンダの機械的な全閉状態に基づき前記全閉停止位置を規定するとよい。
【0012】
前記第1の態様において、前記電動シリンダが縮動して前記ウイング扉の機械的な全閉状態に到達後、前記モータを所定回転回数だけ逆転させてから全閉停止位置にて停止するとよい。
【0013】
前記第1の態様において、前記ウイング扉の回転角度が予め定められたスローダウン区間の開始点に到達したことを、前記モータの全閉停止位置から前記スローダウン区間の開始点までの前記モータの累積回転回数により検知し、前記スローダウン区間においては前記モータの回転速度を低下させて前記ウイング扉の動きを緩慢にするとよい。
【0014】
本発明の第2の態様は車両のウイング扉開閉制御装置である。この車両のウイング扉開閉制御装置は、車両のウイング扉の前側を回動させる前側電動シリンダ及び前記ウイング扉の後側を回動させる後側電動シリンダと、
前記前側及び後側電動シリンダのモータの回転をそれぞれ検出する第1及び第2の回転センサと、
前記第1及び第2の回転センサの検出出力をそれぞれ受けて前記モータの回転回数を計数する第1及び第2カウンタと、
前記第1及び第2のカウンタの計数値を記憶する記憶回路と、
前記第1及び第2のカウンタの計数値に基づき前記電動シリンダを制御する制御回路とを備え、
前記ウイング扉の全閉停止位置を基準位置として前記第1及び第2のカウンタの計数を開始し、前記全閉停止位置から全開停止位置までの回動範囲で前記前側電動シリンダのモータの累積回転回数に対応した前記第1のカウンタの計数値と、前記後側電動シリンダのモータの累積回転回数に対応した前記第2のカウンタの計数値との差が零となるように前記制御回路で制御することを特徴とする。
【0015】
前記第2の態様において、前記制御回路は、前記電動シリンダが縮動して前記ウイング扉の機械的な全閉状態に到達したことを検知した後に、所定回転回数だけ前記モータを逆転させた前記全閉停止位置にて停止させるとよい。
【0016】
前記第2の態様において、前記制御回路は、前記ウイング扉の回転角度が予め定められたスローダウン区間の開始点に到達したことを、前記モータの作動開始点から前記スローダウン区間の開始点までの前記モータの累積回転回数に対応した前記カウンタの計数値より検知し、前記スローダウン区間においては前記モータの回転速度を低下させて前記ウイング扉の動きを緩慢にするとよい。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組合せもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ウイング扉を開閉する駆動装置として電動シリンダを用いて、ウイング扉を捻れなく円滑に開閉可能で、ウイング扉の損傷を防止可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
図1乃至
図4A,4Bを用いて本発明に係る車両のウイング扉開閉制御方法及び装置の実施の形態を説明する。これらの図において、1−1,1−2は電動シリンダであり、
図2のように、可動部分としてのウイング扉(ウイング式開閉屋根)11を有する車両(いわゆるウイングボディー車)10に組み付けられている。つまり、車両10の荷室前後には門型枠12が立設され、前後の門型枠12の上辺中央間を連結するセンターフレーム13にヒンジを介してウイング扉11が開閉自在に取り付けられ、前側電動シリンダ1−1は前側門型枠12の上辺とウイング扉11の前側との間に設けられ(連結され)、後側電動シリンダ1−2は後側門型枠12の上辺とウイング扉11の後側との間に設けられている。そして、前後の電動シリンダ1−1,1−2が伸長時にはウイング扉11を開き、縮動時にはウイング扉11を閉じる構成である。なお、
図2では図示を省略したが、左右のウイング扉11の開閉のためにそれぞれ電動シリンダ1−1,1−2が設けられている。
【0022】
図2の電動シリンダ1−1,1−2の概略拡大断面図に示すように、電動シリンダ1−1,1−2は、ケーシング2内に回転自在に支持されたボールネジ3と、これに螺合してボールネジ3の回転に伴って直線移動するボールネジナット4と、ボールネジナット4に一体化された中空ロッド5と、減速機構6を介してボールネジ3を回転駆動するモータMと、ブレーキ7と、モータMの回転を検出する回転センサ8とを有している。ボールネジ3の回転量に比例してケーシング2からの中空ロッド5の突出量が変化する。
図2では、門型枠12の上辺に固定されたブラケット15にケーシング2が枢着され(回転自在に取り付けられ)、中空ロッド5の先端部がウイング扉11の内側に固定のブラケット16に枢着されている。
【0023】
前後の電動シリンダ1−1,1−2を同期させて駆動するために
図1の制御部20が設けられており、制御部20は、中央演算処理部(CPU)を含む制御回路21と、モータM駆動用のドライバー22と、モータMの回転を検出する前記回転センサ8(通常モータM側に設けられている)と、前記回転センサ8の出力信号を受けるカウンタ23と、モータMへの供給電圧及び電流を検知する検出器24と、記憶回路26とを有している。
【0024】
前記ドライバー22には、開スイッチS1又は閉スイッチS2と制御回路21とを介して車両側バッテリーBTからの電圧が与えられており、ドライバー22は制御回路21の制御によりモータMを周波数制御(FM)又はパルス幅制御(PWM)する。開スイッチS1オンのとき、ドライバー22は電動シリンダ1−1,1−2のモータMに電動シリンダ1−1,1−2が伸長する極性の電圧を供給可能で、閉スイッチS2オンのとき、ドライバー22は電動シリンダ1−1,1−2のモータMに電動シリンダ1−1,1−2が縮動する極性の電圧を供給可能である(但し逆転も可能)。記憶回路26は制御回路21の制御動作に伴うデータの記憶を行う。前記回転センサ8として、例えばモータMが1回転する毎又は一定角度回転する毎に1個のパルスを出力するものを用いれば、カウンタ23の計数値はモータMの累積回転回数に一致するか又は正比例する。なお、カウンタ23はアップダウン・カウンタであり、ウイング扉11を開く方向のモータMの回転のときはカウントアップし、ウイング扉11を閉じる方向のモータMの回転のときはカウントダウンする構成である。これにより、ウイング扉11を開く方向のモータMの回転を正方向としたとき、カウンタ23の計数値は、基準位置から正方向に何回転した位置であるかを示すことになる(つまり回転方向を考慮した累積回転回数を示し、電動シリンダの中空ロッド5の突出量を示すと考えてよい)。
【0025】
前記モータMは直流モータ(直流電動機)であり、印加電圧にモータ回転回数が比例する性質を有するものであり、以後説明の都合上、電動シリンダ1−1のモータをM−1、電動シリンダ1−2のモータをM−2という。モータM−1,M−2に対応してドライバー22−1,22−2、回転センサ8−1,8−2、カウンタ23−1,23−2及び検出器24−1,24−2がそれぞれ設けられている。
【0026】
ウイング扉11には製造上の初期歪みが発生することがあり、ウイング扉11を閉めたときに
図2の荷室の側面煽り17との間に隙間が発生するため、これを補正する必要がある。そこで、ウイング扉11に初期歪みに起因して、ウイング扉11の前後の一方が機械的な全閉状態に到達しても、他方が機械的な全閉状態に未達である場合、未達の側の電動シリンダ1−1又は1−2を更に回転させて機械的な全閉状態に到達させ、前側及び後側電動シリンダの機械的な全閉状態に基づき後述する全閉停止位置(カウンタ23の計数値をOとする基準位置)を規定する。動作原理上は、「ウイング扉11の機械的な全閉状態=全閉停止位置」としてもよいが、電動シリンダ1−1,1−2にボールねじが用いられている場合、転動ボールと転動面とが応力を受けながら接触していると、車両の振動等により、傷、変形等が発生し寿命が短くなるために、前記機械的構造上の全閉状態に達した後、モータM−1,M−2を予め定めた所定回転回数だけ逆転させた位置を全閉停止位置としている。
【0027】
図3(A),(B)はウイング扉11の開作動時のスロースタート及びスローダウン動作を示す。すなわち、スロースタート区間では、その開始点からドライバー22−1,22−2による周波数制御又はパルス幅制御によって、モータ電圧をリニアに単調増加させ、スロースタート区間の終点では全電圧(バッテリー電圧)の例えば95%がモータM−1,M−2に印加されるように設定する。ウイング扉11が全開する手前のスローダウン区間では、スローダウン区間の開始点(通常区間の終点となるタイミング)からドライバー22−1,22−2による周波数制御又はパルス幅制御によって、モータ電圧を全電圧の95%からリニアに単調減少させ、最終的に全電圧の例えば20%がモータM−1,M−2に印加されるように設定する。従って、全電圧の例えば20%がモータM−1,M−2に印加された状態でウイング扉11が緩やかに開く方向に駆動され、全開停止位置(この全開停止位置はウイング扉11の機械的構造上の全開状態の手前位置であってもよい)にて自動停止される。
【0028】
なお、ウイング扉11の所定回転角度に対応したスローダウン区間の開始点(開始位置)L
S1は、実験的に求められる固定値であり、モータM−1,M−2の全閉停止位置を基準位置としたモータM−1,M−2の累積回転回数、つまりカウンタ23−1,23−2の計数値で表すことができる。これは、モータM−1,M−2の全閉停止位置からのモータM−1,M−2の累積回転回数と電動シリンダ1−1,1−2の伸長量(換言すれば、ウイング扉11の開方向の変位量)が比例関係にあるためである。従って、ウイング扉11の変位量(電動シリンダ1−1,1−2の伸長量)が所定量に達したところをスローダウン区間の開始点(開始位置)と決めれば、それに対応したモータM−1,M−2の累積回転回数及びこれに対応したカウンタ23−1,23−2の計数値が決まることになる。
【0029】
制御回路21は、前記開動作において、モータM−1の累積回転回数に対応するカウンタ23−1の計数値と,モータM−2の累積回転回数に対応するカウンタ23−2の計数値との差が零となるようにモータM−1,M−2の電圧をドライバー22−1,22−2を介して制御する。例えば、モータM−1のカウンタ23−1の計数値を基準として、これに合致するようにモータM−2側を制御する。
【0030】
図3(C),(D)はウイング扉11の閉作動時のスロースタート及びスローダウン動作を示す。すなわち、スロースタート区間では、その開始点からドライバー22−1,22−2による周波数制御又はパルス幅制御によって、モータ電圧をリニアに単調増加させ、スロースタート区間の終点では全電圧(バッテリー電圧)の例えば70%がモータM−1,M−2に印加されるように設定する。ウイング扉11が全閉する手前のスローダウン区間では、スローダウン区間の開始点(通常区間の終点)L
S2からドライバー22−1,22−2による周波数制御又はパルス幅制御によって、モータ電圧を全電圧の例えば70%からリニアに単調減少させ、最終的に全電圧の例えば10%がモータM−1,M−2に印加されるように設定する。従って、全電圧の例えば10%がモータM−1,M−2に印加された状態でウイング扉11が緩やかに全閉し、ウイング扉11の機械的構造上の全閉状態に到達する。機械的構造上の全閉状態に到達すると、モータM−1,M−2は重負荷で動作することになって単位時間Δt当たりの回転回数Nが急低下するので、単位時間Δt当たりの回転回数Nが所定のしきい値Ns以下になったことでウイング扉11の機械的構造上の全閉状態を検知できる。なお、ウイング扉11の構造上の歪み等に起因して機械的構造上の全閉状態に達するタイミングはモータM−1,M−2で同じになるとは限らないため、単位時間Δt当たりの回転回数Nがしきい値Ns以下になったかどうかの判断はモータM−1,M−2について独立に行う。
【0031】
電動シリンダ1−1,1−2には、一般にボールねじが用いられるが、転動ボールと転動面とが応力を受けながら接触していると、車両の振動等により、傷、変形等が発生し寿命が短くなる。これを防ぐために、前記機械的構造上の全閉状態に達した後、モータM−1,M−2を予め定めた所定回転回数だけ逆転させた位置を全閉停止位置としてモータM−1,M−2を自動停止する。この全閉停止位置を基準位置とし、この位置でカウンタ23−1,23−2の計数値をリセットして零とする。車両の走行はこの全閉停止位置にて行うため、転動ボールと転動面間の応力を軽減させ、車両の振動等の影響を小さくし、寿命の低下を防ぐことができる。
【0032】
制御回路21は、前記閉動作において、モータM−1の累積回転回数に対応するカウンタ23−1の計数値と,モータM−2の累積回転回数に対応するカウンタ23−2の計数値とが一致するようにモータM−1,M−2の電圧をドライバー22を介して制御する。例えば、モータM−1のカウンタ23の計数値を基準として、これに合致するようにモータM−2側を制御する。但し、ウイング扉11の構造上の歪み等に起因して機械的構造上の全閉状態に達するタイミングがモータM−1,M−2で異なる場合があり、機械的構造上の全閉状態近傍ではモータM−1,M−2に対応する各カウンタ23間の計数値のずれは許容するものとする。
【0033】
図4A及び
図4Bは制御部20にて制御されるウイング扉11の開閉動作を説明するフローチャートであり、
図4Aは開動作を、
図4Bは閉動作を詳細に示す。ここでは、1周期中のオン期間を1msec、オフ期間をt
off とし、デューティー比f(%)={1msec/(t
off +1msec)}×100としている。
【0034】
図4Aにおいて、開スイッチがオンの場合、現在位置計測ステップ#aに移行し、現在位置計測ステップ#aでは、回転センサ8−1,8−2で検出される単位時間Δt当たりのモータM−1,M−2の回転回数をカウンタ23−1,23−2で計数(カウントアップ)することで、カウンタ23−1,23−2の計数値から現在位置L
0を制御回路21は検知できる。全閉停止位置でのカウンタ23−1,23−2の計数値を零としたとき、前記累積値はカウンタ23の計数値に比例する。
【0035】
現在位置L
0がスローダウン区間の開始点L
S1(実験的に求めた固定値であり、記憶回路26に対応するカウンタ23−1,23−2の計数値が既知量として記憶されている)よりも小さく、また、デューティー比fも95%より小さい時、通常区間でのスロースタート動作が行われる。デューティー比fが95%に達するまで、デューティー比fを1%ずつ増加させる動作(ステップ#b)が行われる。なお、デューティー比fが95%に達した後は、ステップ#bは行われない(スロースタート動作の終了)。
【0036】
ステップ#bの f=f
*+1% (但し、f
*:fの直前値)
(t
off=t
off*−αmsec) (但し、t
off*:t
offの直前値)
における「αmsec」はデューティー比fを1%増加させるために必要な時間変化量である。
【0037】
ウイング扉11がスローダウン区間の開始点L
S1に到達した(スローダウン区間の開始点L
S1を現在位置L
0が超えた)ことを制御回路21が検知すると、デューティー比fは例えば20%程度に設定されスローダウン動作が行われる。
【0038】
スローダウン移行過程の後、ウイング扉11が全開停止位置に達したかどうか、つまり「現在位置L
0≧全開停止位置L
open」かどうかをステップ#cで判断する。この判断は、全開停止位置に到達したときのカウンタ23の計数値を予め実験的に既知量として記憶回路26に記憶しておくことで、カウンタ23の現在位置における計数値と比較することで行うことができる。「現在位置L
0≧全開停止位置L
open」と判断されたら、ウイング扉11が全開停止位置に到達したものとしてモータM−1,M−2をオフし、ブレーキ7を使用して停止する。
【0039】
次に
図4Bの閉動作について説明する。閉スイッチがオンの場合、現在位置計測ステップ#aに移行し、現在位置計測ステップ#aでは、カウンタ23により、全開停止位置のカウンタ23の計数値から回転センサ8で検出される単位時間Δt当たりのモータM−1,M−2の回転回数を差し引くように計数する(カウントダウンする)ことで、カウンタ23の計数値から現在位置L
0を制御回路21は検知できる。
【0040】
現在位置L
0がスローダウン区間の開始点L
S2よりも大きく、また、デューティー比fも70%より小さい時、通常区間でのスロースタート動作が行われる。デューティー比fが70%に達するまで、デューティー比fを1%ずつ増加させる動作(ステップ#b)が行われる。なお、デューティー比fが70%に達した後は、ステップ#bは行われない(スロースタート動作の終了)。
【0041】
ウイング扉11がスローダウン区間の開始点L
S2に到達した(スローダウン区間の開始点L
S2を現在位置L
0が閉じる方向に超えた)ことを制御回路21が検知すると、デューティー比fは例えば10%程度に設定されスローダウン動作が行われる。
【0042】
スローダウン移行過程の後、ウイング扉11が機械的構造上の全閉状態に達したかどうかをステップ#dで判断する。この判断は、モータM−1,M−2の単位時間Δt当たりの回転回数Nが急低下するので、単位時間Δt当たりの回転回数Nが所定のしきい値Ns以下になったかどうかで判断する。ステップ#dで現在の単位時間Δt当たりの回転回数Nが所定のしきい値Ns以下になったと判断されたら、ウイング扉11が機械的構造上の全閉状態に達したと判断してモータM−1,M−2をオフにしてブレーキ7で停止後、さらにモータM−1,M−2を所定回数だけ逆転して停止させる(ブレーキ7使用)。この停止位置が全閉停止位置であり、カウンタ23の計数値をリセットして零とする。
【0043】
なお、
図4A及び
図4Bのフローチャートでは、モータMを周波数制御する場合を例示したが、パルス幅制御してもよい。
【0044】
また、ウイング扉11の片側の開閉動作について説明したが、もう一方のウイング扉11の開閉も同様に行うことが可能なことは自明である。
【0045】
この実施の形態によれば、次の通りの効果を得ることができる。
【0046】
(1) ウイング扉11の前後を電動シリンダ1−1,1−2で開閉駆動し、前側及び後側電動シリンダ1−1,1−2のモータM−1,M−2の回転回数をそれぞれ検出する検出手段としての回転センサ8−1,8−2を用い、ウイング扉11の全閉停止位置を基準位置として、全閉停止位置から全開停止位置までの回動範囲で前側電動シリンダ1−1のモータM−1と後側電動シリンダ1−2のモータM−2との間の累積回転回数の差(つまりモータM−1,M−2にそれぞれ対応するカウンタ23−1,23−2の計数値の差)が零となるように制御することで、油圧シリンダを用いる場合に比較してウイング扉11を捻れなく円滑に開閉可能である。
【0047】
(2) ボールねじを用いた電動シリンダ1−1,1−2において、転動ボールと転動面とが応力を受けながら接触していると、車両の振動等により、傷、変形等が発生し寿命が短くなるきらいがあるが、ウイング扉11が機械的構造上の全閉状態に達した後、モータM−1,M−2を予め定めた所定回転回数だけ逆転させた位置を全閉停止位置としてモータM−1,M−2を自動停止し、この全閉停止位置にて車両が走行するようにしている。これにより、車両走行時の振動に起因する電動シリンダ1−1,1−2の劣化を防止し、電動シリンダの長寿命化を図ることができる。
【0048】
(3) スローダウン区間の開始点L
S1,L
S2の通過を、全閉停止位置(つまり基準位置)からのモータM−1,M−2の回転回数の累積値に対応したカウンタ23の計数値より検出するので、バッテリー電圧値の変動や、ウイング扉11への積雪等の状況にかかわらず、スローダウン区間を適切値に確保できる。
【0049】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0050】
上記実施の形態では、ウイング扉11の機械構造上の全閉状態を、モータM−1,M−2の回転速度変化(単位時間当たりの回転回数の変化)で検知したが、モータ電流値を検出器24−1,24−2で検出し、モータ電流値がしきい値以上になったときを機械構造上の全閉状態に到達したと判断してもよい。また、上記実施の形態においても、モータ回転速度変化による判断とータ電流値による判断を併用してもよい。