特許第5984575号(P5984575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984575
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】切換弁
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/024 20060101AFI20160823BHJP
   F15B 11/00 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   F15B11/024 A
   F15B11/00 D
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-180235(P2012-180235)
(22)【出願日】2012年8月15日
(65)【公開番号】特開2014-37862(P2014-37862A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076163
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋 宣之
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 剛
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅之
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−112619(JP,A)
【文献】 実開平02−101179(JP,U)
【文献】 特開昭55−051104(JP,A)
【文献】 特開平04−351384(JP,A)
【文献】 実開平04−031302(JP,U)
【文献】 特開平10−252704(JP,A)
【文献】 実開平02−077301(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00−11/22;21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブボディにスプールを摺動自在に組み込み、
上記バルブボディには、
シリンダのピストン側室に連通する一方のシリンダポートと、
上記シリンダのロッド側室に連通する他方のシリンダポートと、
一対の開口を備え、一方の開口を上記一方のシリンダポートに隣接させ、他方の開口を上記他方のシリンダポートに隣接させたブリッジ通路と、
上記スプールの切換位置に応じて、上記ロッド側室に連通した上記他方のシリンダポートを、上記一方のシリンダポートに連通させる再生通路と
上記他方のシリンダポートに隣接するタンク通路とを備えた切換弁であって、
上記再生通路は、上記スプールに形成するとともに、上記再生通路内には、上記他方のシリンダポートから上記ブリッジ通路の上記他方の開口への流れのみを許容する一方向流れバルブを設け、上記スプールの切換位置に応じて、上記再生通路の第1連通口が上記他方のシリンダポートに隣接するブリッジ通路の上記他方の開口に連通し、上記再生通路の第2連通口が上記他方のシリンダポートに連通する構成にし、
上記スプールの外周には、上記スプールを上記第1連通口と上記ブリッジ通路の上記他方の開口とを連通させる再生方向にスプールが移動する時に、上記他方のシリンダポートと上記タンクとの連通を制御するチョーク溝が形成され、
上記スプールには、上記再生方向にスプールが移動する時の移動方向前方端から、上記一方向流れバルブを組み込む組み込み穴を形成し、この組み込み穴に上記一方向流れバルブが組み込まれており、
上記スプールの切換位置に応じて、上記シリンダのロッド側室からの戻り流体を、上記他方のシリンダポート、上記再生通路、上記第2連通口、上記第1連通口及び上記一方のシリンダポートを介して、上記シリンダのピストン側室に再生させる構成にした切換弁。
【請求項2】
上記スプールを切り換えたとき、上記第2連通口が上記他方のシリンダポートに連通するタイミングは、上記第1連通口が上記ブリッジ通路の他方の開口に連通するタイミングよりも早くした請求項1に記載の切換弁。
【請求項3】
上記バルブボディには、ポンプからの圧力流体を導入するポンプポートを形成するとともに、上記第1連通口は、上記スプールのいずれの方向へのストロークにかかわらず、上記ポンプポートに連通しない間隔を保った請求項1又は2に記載の切換弁。
【請求項4】
上記第1連通口を可変連通口とし、上記可変連通口と上記ブリッジ通路の上記他方の開口とを連通させる方向にスプールが移動する過程で、上記可変連通口の開度が徐々に大きくなる構成にした請求項1〜3のいずれか1に記載の切換弁。
【請求項5】
上記可変連通口は、上記第1連通口と上記ブリッジ通路の上記他方の開口とを連通させる方向にスプールが移動する時の移動方向前方から後方に向かって、深さを徐々に深くしたテーパ部を形成した請求項4に記載の切換弁。
【請求項6】
上記可変連通口は、上記第1連通口と上記ブリッジ通路の上記他方の開口とを連通させる方向にスプールが移動する時の移動方向前方から後方に向かって、整列させた複数の連通孔からなる請求項4に記載の切換弁。
【請求項7】
上記スプールに形成した組み込み穴に組み込んだ一方向流れバルブは、上記組み込み穴に形成したシート部を開閉する構成にするとともに、当該一方向流れバルブがシート部を閉じている状態で、上記第2連通口側の圧力を受ける面の受圧面積を、第1連通口側の圧力を受ける面の受圧面積よりも大きくし、上記第2連通口側の圧力作用で上記シート部を開いて、上記他方のシリンダポート側から流入した流体を、上記ブリッジ通路に導く構成にした請求項1〜6のいずれか1に記載の切換弁。
【請求項8】
上記一方向流れバルブは、上記シート部から上記第1連通口側に向かって突出する突部を設けた請求項1〜7のいずれか1に記載の切換弁。
【請求項9】
上記一方向流れバルブは、上記組み付け穴に対する軸方向の嵌合長さを、その嵌合部分の直径よりも長くした請求項1〜8のいずれか1に記載の切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリンダのロッド側室から流出した戻り流体をピストン側室に再生する再生機構を備えた切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
図7に示した従来の切換弁は、バルブボディBにスプールSを摺動自在に組み込むとともに、上記バルブボディBには、シリンダCのピストン側室1に接続したシリンダポート2と、ロッド側室3に接続したシリンダポート4とを形成している。
さらに、バルブボディBには、図示していないポンプに連通したポンプポート5を形成するとともに、このポンプポート5に導かれた圧力流体は、図示しない通路を通り、ロードチェック弁6を介してブリッジ通路7に導かれるようにしている。
【0003】
上記ブリッジ通路7は、その一方の開口7aをシリンダポート2に隣接させ、他方の開口7bをシリンダポート4に隣接させている。
そして、上記スプールSが、図示の中立位置にあるとき、上記ブリッジ通路7と両シリンダポート2,4との連通が遮断された状態に保たれる。
そして、スプールSが、上記中立位置から図面右方向に切り換わると、スプールSに形成した第1環状溝8を介してブリッジ通路7の一方の開口7aがシリンダポート2と連通するとともに、第2環状溝9及びチョーク溝10を介して、シリンダポート4とタンク通路11とが連通する。
【0004】
したがって、シリンダCのピストン側室1には上記ポンプからの圧力流体が供給されるとともに、ロッド側室3からの戻り流体は、タンク通路11に導かれ、シリンダCは伸長する。
また、上記のようにスプールSが中立位置から図面右方向に切り換わると、シリンダポート4がチョーク溝10を介してタンク通路11に連通するので、チョーク溝10による圧力損失が発生し、その分、シリンダポート4の圧力が上昇する。
【0005】
また、上記スプールSには、その軸中心に沿って連通孔12を形成するとともに、上記シリンダポート4側における連通孔12の先端部分には第1キリ穴13を形成している。この第1キリ穴13は、スプールSが上記中立位置にあるとき、ブリッジ通路7の他方の開口7bに開口するとともに、スプールSが上記中立位置から右方向に移動したとき、上記第1キリ穴13はシリンダポート4に開口する構成にしている。
【0006】
上記のようにした連通孔12であって、上記第1キリ穴13とは反対側の端部には、チェック弁14を組み込んでいる。このチェック弁14は、それが開弁したとき、第1環状溝8と隣接して設けた第2キリ穴15と上記連通孔12とを連通させる。つまり、上記チェック弁14は、第1キリ穴13から連通孔12を通って第2キリ穴15への流れのみを許容するものである。
【0007】
そして、スプールSが図示の中立位置にあるとき、第2キリ穴15は、シリンダポート2とブリッジ通路7の一方の開口7aとの間にあって、閉じた状態を保つ。この状態からスプールSが図面右方向に切り換えられると、上記第2キリ穴15が、ブリッジ通路7の一方の開口7aを介して第1環状溝8に連通する。
なお、図中符号16はリセッシング加工部で、スプールSが右方向に切り換えられたとき、上記第2キリ穴15がこのリセッシング加工部16を介してブリッジ通路7の一方の開口7aに連通することができるようにしている。
【0008】
上記のようにした切換弁は、スプールSを図示の中立位置から図面右方向に切り換えると、上記したようにポンプポート5からの圧力流体が、図示しない通路を通り、ロードチェック弁6を押し開いてブリッジ通路7に導かれるとともに、第1環状溝8を介して、シリンダポート2からシリンダCのピストン側室1に供給される。なお、このときには、第2キリ穴15がブリッジ通路7側に開口している。
そして、シリンダCのロッド側室3の戻り流体は、上記チョーク溝10を介してタンク通路11に導かれるとともに、第1キリ穴13がシリンダポート4に開口する。
【0009】
上記のようにシリンダポート4がチョーク溝10を介してタンク通路11に連通すれば、このチョーク溝10を通る流体の圧力損失で、シリンダポート4の圧力が上昇する。このシリンダポート4の高圧流体は、第1キリ穴13及び連通孔12を経由するとともに、チェック弁14を押し開いて、第2キリ穴15からブリッジ通路7に供給される。
したがって、シリンダCのロッド側室3からの戻り流体が、シリンダCのピストン側室1に再生されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−304202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のようにした従来の切換弁では、シリンダCのロッド側室3からの戻り流体が、スプールSに形成された連通孔12を経由して再生されることになる。しかし、スプールSの断面積などの制約条件から、上記連通孔12の直径を大きくできない。また、スプールSには第1,2環状溝8,9を形成したり、第1キリ穴13を形成したりするので、連通孔12の直径を大きくすると、その部分の断面積が小さくなり、強度不足を生じる。
そのために、連通孔12の直径を大きくできないので、連通孔12を通る流体に対する圧力損失も大きくなり、その分、ロッド側室3の圧力も上昇する。ロッド側室3の圧力が上昇すれば、当然のことであるがピストン側室1の圧力も上昇するので、その分、ポンプの吐出圧も高くしなければならないので、エネルギーの消費量が多くなるという問題があった。
【0012】
この発明の目的は、再生通路における圧力損失を少なくして、省エネルギーを達成できる切換弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、バルブボディにスプールを摺動自在に組み込むとともに、このバルブボディには、シリンダのピストン側室に連通する一方のシリンダポートと、上記シリンダのロッド側室に連通する他方のシリンダポートと、一対の開口を備えるとともに、一方の開口を上記一方のシリンダポートに隣接させ、他方の開口を上記他方のシリンダポートに隣接させたブリッジ通路と、上記スプールの切換位置に応じて、上記ロッド側室に連通した上記他方のシリンダポートを、上記一方のシリンダポートに連通させる再生通路と、上記他方のシリンダポートに隣接するタンク通路とを備えた切換弁に関する。
【0014】
そして、第1の発明は、上記再生通路が、上記スプール内に形成されるとともに、上記再生通路内には、上記他方のシリンダポートから上記ブリッジ通路の上記他方の開口への流れのみを許容する一方向流れバルブを設け、上記スプールの切換位置に応じて、上記再生通路の第1連通口が上記他方のシリンダポートに隣接するブリッジ通路の上記他方の開口に連通し、上記再生通路の第2連通口が上記他方のシリンダポートに連通する構成にしている。また、上記スプールの外周には、上記スプールを上記第1連通口と上記ブリッジ通路の上記他方の開口とを連通させる再生方向にスプールが移動する時に、上記他方のシリンダポートと上記タンクとの連通を制御するチョーク溝が形成されている。
【0015】
さらに、上記スプールには、上記再生方向にスプールが移動する時の移動方向前方端から、上記一方向流れバルブを組み込む組み込み穴を形成し、この組み込み穴に上記一方向流れバルブが組み込まれている。加えて、上記スプールの切換位置に応じて、シリンダのロッド側室からの戻り流体を、上記他方のシリンダポート、上記再生通路、上記第2連通口、上記第1連通口及び上記一方のシリンダポートを介して、シリンダのピストン側室に再生させる構成にしている。
【0016】
の発明は、上記スプールを切り換えたとき、上記第2連通口が上記他方のシリンダポートに連通するタイミングは、上記第1連通口が上記ブリッジ通路の他方の開口に連通するタイミングよりも早くしている。
【0017】
の発明は、上記バルブボディに、ポンプからの圧力流体を導入するポンプポートを形成するとともに、上記第1連通口は、上記スプールのいずれの方向へのストロークにかかわらず、上記ポンプポートに連通しない間隔を保っている。
【0018】
の発明は、上記第1連通口を可変連通口とし、上記可変連通口と上記ブリッジ通路の上記他方の開口とを連通させる方向にスプールが移動する過程で、上記可変連通口の開度が徐々に大きくなる構成にしている。
【0019】
の発明は、上記可変連通口に、上記第1連通口と上記ブリッジ通路の上記他方の開口とを連通させる方向にスプールが移動する時の移動方向前方から後方に向かって、深さを徐々に深くしたテーパ部を形成している。
【0020】
の発明は、上記可変連通口が、上記第1連通口と上記ブリッジ通路の上記他方の開口とを連通させる方向にスプールが移動する時の移動方向前方から後方に向かって、整列させた複数の連通孔から構成されている。
【0021】
第7の発明は、上記スプールに形成した組み込み穴に組み込んだ一方向流れバルブが、上記組み込み穴に形成したシート部を開閉する構成にするとともに、上記一方向流れバルブがシート部を閉じている状態で、上記第2連通口側の圧力を受ける面の受圧面積を、第1連通口側の圧力を受ける面の受圧面積よりも大きくし、上記第2連通口側の圧力作用で上記シート部を開いて、上記他方のシリンダポート側から流入した流体を、上記ブリッジ通路に導く構成にしている。
【0022】
第8の発明は、上記一方向流れバルブが、上記シート部から上記第1連通口側に向かって突出する突部を設けている。
【0023】
第9の発明は、上記組み付け穴に対する上記一方向流れバルブの軸方向の嵌合長さを、その嵌合部分の直径よりも長くしている。
【発明の効果】
【0025】
第1の発明によれば、再生通路を介して、他方のシリンダポートとこの他方のシリンダポートに隣接するブリッジ通路の他方の開口とが連通されるので、シリンダのロッド側室からの戻り流体は、上記ブリッジ通路を経由して一方のシリンダポートに導かれてシリンダのピストン側室に再生されることになる。
そして、上記ブリッジ通路の断面積は、従来のようにスプールに形成した連通孔よりも十分に大きくできるので、上記戻り流体を再生させるための流路抵抗を小さくすることができる。
したがって、再生時のロッド側室の圧力を相対的に低くして、ポンプの負荷を小さくでき、その分、エネルギー消費も少なくてすむ。
【0026】
また、再生通路内に一方向流れバルブを設けたので、例えばピストン側室の圧力を高く保ち、ロッド側室の圧力を低く保つ掘削時に、ロッド側室の圧力を低く保てる。もし、掘削作業時に圧力流体が逆方向に流れると、ポンプの吐出圧がロッド側室に作用してしまうので、掘削作業の効率が悪くなってしまう。しかし、上記のように一方向流れバルブを設けて、ロッド側室の圧力を低く保てるので、掘削作業の効率を悪くすることはなくなる。
【0027】
さらに、再生時にスプールが移動する時の移動方向前方端から、上記一方向流れバルブを組み込む組み込み穴を形成したので、この組み込み穴は、その軸方向長さを短くでき、その分、穴加工が容易になる。
【0028】
第2の発明によれば、スプールを切り換えたとき、再生通路の第2連通口が他方のシリンダポートに連通するタイミングを、再生通路の第1連通口が上記ブリッジ通路の他方の開口に連通するタイミングよりも早くしたので、ロッド側室からの戻り流体を再生する再生開始時には、上記第1連通口がブリッジ通路に開口する前に、上記戻り流体の圧力が一方向流れバルブに作用する。したがって、再生通路の第1連通口がブリッジ通路に連通すると同時に、一方向流れバルブが開くことになり、一方向流れバルブの応答性がよくなる。
【0029】
第3の発明によれば、再生通路の第1連通口は、ポンプポートには連通しないので、ポンプポートからの圧力流体が再生通路に逆流するのを確実に防止できる。もし、ポンプポートからの圧力流体が再生通路に逆流してしまうと、この再生通路は直接ブリッジ通路に接続されるので、当該切換弁によるシリンダの制御特性が悪くなるが、そのような制御特性が悪くなるという問題は生じない。
【0030】
第4〜6の発明によれば、上記再生通路の第1連通口を可変連通口としたので、スプールの移動過程で、再生通路とブリッジ通路との連通開度が徐々に大きくなる。したがって、ブリッジ通路の圧力が急激に上昇したりせず、シリンダに対するショックを緩和させることができる。
【0031】
の発明によれば、一方向流れバルブを上記組み込み穴の開口端から挿入して、一方向流れの制御機能を発揮させることができる。
【0032】
の発明によれば、一方向流れバルブに突部を形成したので、一方向流れバルブが全開状態にあっても、再生時の流体に対して流路抵抗を維持して、シリンダのロッド側室の圧力を適切に保つことができる。
【0033】
の発明によれば、一方向流れバルブを安定させた状態で組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】スプールを中立位置に保った状態の断面図である。
図2】スプールを左側位置に切り換えた状態の断面図である。
図3】スプールを右側位置に切り換えた状態の断面図である。
図4】一方向流れバルブの一実施形態を示す部分拡大断面図である。
図5】一方向流れバルブの他の実施形態を示す部分拡大断面図である。
図6】一方向流れバルブの他の実施形態を示す部分拡大断面図である。
図7】従来の切換弁を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1図4に示した実施形態は、そのバルブボディの構成が従来と同じであり、スプールも従来と共通部分があるので、バルブボディ及びスプールにおいて従来と同じ構成要素については、従来と同一の符号を用いて説明する。
【0036】
図1図4に示した切換弁は、バルブボディBにスプールSを摺動自在に組み込むとともに、上記バルブボディBには、シリンダCのピストン側室1に接続したシリンダポート2と、ロッド側室3に接続したシリンダポート4とを形成している。
さらに、バルブボディBには、図示していないポンプに連通したポンプポート5を形成するとともに、このポンプポート5に導かれた圧力流体は、図示しない通路を通り、ロードチェック弁6を介してブリッジ通路7に導かれるようにしている。
【0037】
上記ブリッジ通路7は、その一方の開口7aをシリンダポート2に隣接させ、他方の開口7bをシリンダポート4に隣接させている。
そして、上記スプールSが、図示の中立位置にあるとき、上記ブリッジ通路7と両シリンダポート2,4との連通が遮断された状態に保たれる。
そして、スプールSが、上記中立位置から図面右方向(図3参照)に切り換わると、スプールSに形成した第1環状溝8を介してブリッジ通路7の一方の開口7aがシリンダポート2と連通するとともに、第2環状溝9及びチョーク溝10を介して、シリンダポート4とタンク通路11とが連通する。
【0038】
したがって、シリンダCのピストン側室1には上記ポンプからの圧力流体が供給されるとともに、ロッド側室3からの戻り流体は、第2環状溝9及びチョーク溝10を介してタンク通路11に導かれ、シリンダCは伸長する。
そして、チョーク溝10を介してシリンダポート4がタンク通路11に連通するので、チョーク溝10による圧力損失が発生し、その分、シリンダポート4の圧力が上昇する。このようにチョーク溝10を設けて、シリンダポート4側の圧力を上昇させているのは、後で説明する再生流れを、シリンダCのシリンダポート2に導くためである。
なお、図中符号17,17はスプールSの端部を臨ませたパイロット室、18,18はパイロット室17,17に設けたセンタリングスプリングである。
【0039】
また、上記スプールSには、スプールSが図面右方向である再生方向に移動するときに、当該スプールSの移動方向前端となる方向から一方向流れバルブvを組み込む組み込み穴19を形成するとともに、この組み込み穴19は、その開口部をプラグ20でふさいでいる。
上記のように当該スプールSの移動方向前端となる方向から組み込み穴19を形成したので、例えば、その反対側から組み込み穴を形成する場合に比べて、組み込み穴の軸方向長さを短くできる。
上記のようにした組み込み穴19には、図4から明らかなように、シート部21を形成するとともに、上記プラグ20とシート部21との間に一方向流れバルブvを組み込んでいる。
【0040】
上記のようにした組み込み穴19には、上記シート部21を挟んで、このシート部21よりもポンプポート5側に第1連通口22aを形成し、反対側に第2連通口22bを形成している。
上記第1連通口22aは、スプールSが図1に示す中立位置にあるとき、ポンプポート5とシリンダポート4との間にあって、それがふさがれている状態を保つ。一方、連通口22bは、スプールSが図1に示す中立位置にあるとき、ブリッジ通路7の他方の開口7bに連通している。
なお、上記第1連通口22aは、スプールSが図2に示すように左側位置に切り換わったときにも、ポンプポート5に連通しない位置関係を保っている。
【0041】
そして、スプールSが図3に示すように右側位置に切り換わったときには、第1連通口22aがブリッジ通路7の他方の開口7bに連通し、第2連通口22bがシリンダポート4に連通する。
ただし、上記のようにスプールSを右側位置に切り換えたとき、第2連通口22bがシリンダポート4に連通するタイミングの方が、第1連通口22aがブリッジ通路7の他方の開口7bに連通するタイミングよりも早くなるようにしている。
【0042】
そして、上記組み込み穴19には、スペーサ23を設けるとともに、このスペーサ23と一方向流れバルブvとの間にスプリング24を介在させている。したがって、一方向流れバルブvは、そのノーマル状態で、ポペット部25がシート部21を閉じる構成にしている。
このようにした一方向流れバルブvは、上記ポペット部25と、このポペット部25よりも外側における嵌合部26と、上記ポペット部25の先端に設けた突部27とからなる。
【0043】
そして、上記嵌合部26は、組み込み穴19に対して摺動自在となる外径を備えるとともに、その外径は、組み込み穴19に対する嵌合部26の嵌合長さよりも十分に大きくして、当該一方向流れバルブvが安定して作動できるようにしている。
さらに、上記ポペット部25の外径を、嵌合部26の外径よりも小さくして、それらポペット部25と嵌合部26との境界部分に段差部28を形成している。
【0044】
また、上記突部27は、当該一方向流れバルブvがシート部21を閉じているとき、このシート部21よりも第1連通口22aに向かって突出するとともに、この突部27及びポペット部25の中心を貫通する貫通孔29を形成している。
したがって、第1連通口22aから流入した圧力流体は、この貫通孔29からスプリング24を設けた背圧室30に流入するとともに、この背圧室30に導かれた圧力は、一方向流れバルブvに対してシート部21を閉じる方向に作用する。
そして、一方向流れバルブvがシート部21を閉じているとき、段差部28の受圧面積に対して、背圧室30の受圧面積を大きくしている。
【0045】
なお、上記第1連通口22aと第2連通口22bとを結ぶ通路が、この発明の再生通路を構成する。
また、図中符号31は、バルブボディBに形成した信号通路で、上記再生通路とは反対側に設けている。
【0046】
つぎに、この実施形態の作用を説明する。
スプールSを図1に示す中立位置から図2に示すように左側位置に切り換えると、一方の開口7aがふさがれて、ブリッジ通路7の他方の開口7bが、第2環状溝9を介してシリンダポート4に連通するとともに、シリンダポート2が第1環状溝8を介してタンク通路11に連通する。
したがって、ポンプポート5からロードチェック弁6を押し開いてブリッジ通路7に導かれた圧力流体は、シリンダポート4を経由してシリンダCのロッド側室3に導かれる。
また、シリンダCのピストン側室1からの戻り流体は、シリンダポート2からタンク通路11に導かれ、シリンダCは収縮する。
【0047】
スプールSを、図3に示すように上記とは反対側である右側位置に切り換えると、ブリッジ通路7の一方の開口7aが、第1環状溝8を介してシリンダポート2に連通するので、上記のようにブリッジ通路7に導かれたポンプポート5からの圧力流体は、シリンダポート2を経由してシリンダCのピストン側室1に導かれる。
また、このときにロッド側室3からの戻り流体の一部は、チョーク溝10を介してタンク通路11に流れるので、シリンダポート4側の圧力が相対的に高くなる。
【0048】
そして、上記のようにスプールSが右側位置に切り換わる過程で、第2連通口22bがシリンダポート4に連通するとともに、その連通するタイミングよりもわずかに遅れて第1連通口22aがブリッジ通路7の他方の開口7bに連通する。
第2連通口22bがシリンダポート4に連通すると、相対的に高くなったシリンダポート4側の圧力が、一方向流れバルブvの段差部28に作用する。そして、わずかにタイミングが遅れて第1連通口22aがブリッジ通路7の他方の開口7bに連通する。
【0049】
したがって、上記背圧室30内はブリッジ通路7の他方の開口7bから導かれたポンプ圧が作用し、上記段差部28にはシリンダポート4の相対的に高い圧力が作用するので、一方向流れバルブvはスプリング24に抗してシート部21を開く。
シート部21が開かれれば、シリンダポート4に導かれた戻り流体は、第2連通口22b及び第1連通口22aを通ってブリッジ通路7に導かれる。
【0050】
なお、上記のようにポペット部25の先端に突部27を形成しているので、この突部27と組み付け穴19との間で絞り効果が発揮されるので、シリンダポート4側の圧力が低くなりすぎて、一方向流れバルブvがシート部21を閉じてしまうことはない。
【0051】
上記のようにしてブリッジ通路7に導かれた圧力流体は、ポンプポート5からの圧力流体と合流してシリンダCのピストン側室1に供給される。すなわち、シリンダCのロッド側室3の戻り流体が、ピストン側室1に再生されることになる。
そして、上記戻り流体が、ブリッジ通路7を経由して再生されるので、従来のように直径が小さい連通孔12を経由する場合と異なり、その圧力損失が小さくなる。
したがって、図示していないポンプの負荷も小さくなり、その分、省エネルギーとなる。
【0052】
また、一方向流れバルブvを設けたので、例えばピストン側室1の圧力を高く保ち、ロッド側室3の圧力を低く保つ掘削作業時に、ロッド側室3の圧力を低く保てる。もし、掘削作業時に、ポンプ側の圧力が、一方向流れバルブvを開いて、ロッド側室3に流れてしまうと、ポンプの吐出圧がロッド側室3に作用してしまうので、掘削作業の効率が悪くなってしまう。しかし、上記のように一方向流れバルブvを設けて、ロッド側室3の圧力を低く保てるので、掘削作業の効率を悪くすることはなくなる。
【0053】
しかも、第1連通口22aは、ポンプポート5には連通しないので、ポンプポート5からの圧力流体が再生通路に逆流するのを確実に防止できる。もし、ポンプポート5からの圧力流体が再生通路に逆流してしまうと、当該切換弁によるシリンダCの制御ができなくなるが、そのような制御不能という問題も一切生じない。
【0054】
なお、上記実施形態における第1連通口22aは、その開口部を円孔にしているが、例えば、図5に示すように、上記第1連通口22aと上記ブリッジ通路7の上記他方の開口7bとを連通させる方向にスプールSが移動する時の移動方向前方から後方に向かって、深さを徐々に深くしたテーパ部32を形成して、その開度を可変にした可変連通口としてもよい。
また、上記テーパ部32に代えて、図6に示すように、上記第1連通口22aと上記ブリッジ通路7の上記他方の開口7bとを連通させる方向にスプールSが移動する時の移動方向前方から後方に向かって、整列させた複数の連通孔33によって可変連通口を構成してもよい。
【0055】
上記のように第1連通口22aを可変連通口にすることによって、スプールSの移動過程で、ブリッジ通路7との連通開度が徐々に大きくなるので、ブリッジ通路7の圧力が急激に上昇したりせず、シリンダCに対するショックを緩和させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
シリンダのロッド側室の戻り流体を再生させる機能を備えた建設機械に最適である。
【符号の説明】
【0057】
B バルブボディ
S スプール
C シリンダ
1 ピストン側室
2、4 シリンダポート
5 ポンプポート
7 ブリッジ通路
v 一方向流れバルブ
21 シート部
32 テーパ部
33 連通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7