【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を達成するために、先ず特許文献2のように前記機械的バランスを調整した前記羽根車の主通路の吐水作用の反動による流体反力が作用する円周方向位置に前記流体反力と釣合う遠心力を発生させる不釣合い質量を付加するという一般的な手法の適用の検討において、前記流体反力とその作用する円周方向位置は実測するか、あるいは3次元CAD(Computer Aided Design:コンピュータ支援による設計)にて羽根車と揚水流路をモデリングしてそのモデルを数値解析することにより求めることが可能であるが、異物の通過粒径がポンプ口径比の100%である一枚羽根のノンクロッグポンプまたは一つの流路を持つブレードレスポンプでは、流量が少なくて揚程の高い運転範囲である部分流量域において、流路内の水の逆流によるポンプ性能の低下を最小限に抑えようとして羽根車内部の流路形状も異物の通過粒径とほぼ同じ形状となっているため、羽根車内部の流路に前記不釣合い質量を設けると異物の通過粒径が減少することになり、該不釣合い質量を主板や側板に設ける場合は、該不釣合い質量の取付位置が前記機械的バランスを調整するためのバランスウエートと同じ位置となったときに必要な量を取付けることが出来ないという不具合が判明した。
【0016】
次に、特許文献1のように主通路の吐水作用の反動による流体反力と釣合う半径方向の内向きの反作用力を発生させるための補助的な羽根である補助羽根を羽根車の主板と側板の外側に該流体反力が作用する円周方向位置の略軸対称位置となるように設けることを考えたことで、該羽根車の水中での回転に伴って、円周方向に対して傾斜する前記補助羽根が水と衝突して水を半径方向の外向きに変向(吐出)させることによって該補助羽根が水から受ける力は、そのほとんどが本発明の
図26に模式的に示されるように該補助羽根に垂直方向に加わり、その水から受ける力Fwは円周方向成分の力Fuと半径方向成分の力である反作用力Fhに分解して考えることができ、該反作用力Fhが該流体反力Fkを相殺する効果を有し、また前記特許文献1の補助羽根は主板と側板の2ヵ所にあるので、例えば、それぞれ該流体反力の半分の力と釣合う反作用力を発生させれば良いことになるが、羽根車の主板と側板の外側にポンプの揚水機能としては作用しない、前記背面および前面補助羽根が凸設されていることで軸動力が増大されることにより、ポンプ効率を著しく低下させると共に前記主板の外側の該背面補助羽根においては、本発明の
図28に模式的に示されるように水中モータ軸2を「梃子」、ベアリングBrを「支点」とする“てこ”と見立てると、「支点」から「作用点」となる該流体反力Fkが作用する羽根車4の水流出部の中央高さ位置4kまでの距離Aに比べて「支点」から「力点」となる該背面補助羽根までの距離Bは短いため距離A>距離Bとなり、例えば、該流体反力Fkの半分の力と釣合うモーメントを得るためには該流体反力Fkの半分の力×(距離A÷距離B)倍の力が必要となることから、該背面補助羽根を大きくすることで発生する反作用力Fhを増加しなければならないためポンプ自体が大きなものとなって余分な製造コストが生じてしまうことから、前記側板の外側の該前面補助羽根においては、本発明の
図28に示されるように「支点」から「力点」となる該前面補助羽根までの距離Cは距離Aより長いため距離A<距離Cとなり、(距離A÷距離C)<1より、一見、該前面補助羽根を小さくできるように見えるが、該主板4a側にあるボス部4eより直径の大きな羽根車4の吸込口4lが側板側にあるため該前面補助羽根の半径方向の設置範囲が全周に亘って狭くなるので、水中モータ軸2導出方向の幅を大きくして反作用力Fhを稼ぐ必要があると共に、該側板の外側壁とそれに対向するポンプケーシング7側壁で構成される側板側の環状隙間G3と側板の吸込口側端面とそれに対向するポンプケーシング7端面との隙間である側板側の軸方向隙間G4を通って圧力の高い揚水流路から圧力の低い吸込口に向かって発生する循環流れRにより、該前面補助羽根への軟弱異物の絡まりや、該前面補助羽根の成す撹拌によって回転部と静止部の隙間への異物の詰りや揚水流路内の圧漏れによるポンプ揚程の低下が促進される結果となった。
【0017】
そこで本願発明者は、前記の問題点を払拭するため、該主板の不要な肉厚部分を該羽根車の水中モータ軸導出方向外側より除肉して凹部を形成し、前記主板上端面より凸出しないように前記凹部内に反力発生板を設けるという新たな構成を創出するに至り、この構成にすれば、前記距離Bは前記距離Aに必然的に近づくことになるので、該流体反力に釣合うために該反力発生板が発生させる反作用力を小さくすることができるので該反力発生板の水中モータ軸導出方向の幅も小さくできるという効果も相乗的に作用することになるが、必要な反作用力を発生させる該反力発生板を設けるために前記凹部をできる限り深くしようとすれば、必然的に該凹部の形状は羽根または羽根車内部流路の形状を写し取ることになるため、該凹部も回転中心について非軸対称な形状となり、また、前記除肉後の形状に合わせて機械的バランスを調整する場合、該凹部内には不釣合い質量の存在する軸対称位置に不釣合い質量に釣合うバランスウエートを取付ける必要があるが、該羽根車の形状および該バランスウエートのため該凹部の円周方向位置によっては、“浅い”、“深い”、“狭い”、“広い”、といった該凹部の形状の差が生じるため、該流体反力が作用する円周方向位置が必ずしも必要とする大きさの該反力発生板を設けるのに適した形状とはならないことが判明した。
【0018】
そのために本願発明者は、羽根車が一枚の羽根または一つの流路を持つため前記凹部の形状は、“浅い”と“深い”が軸対称位置に存在すること、およびバランスウエートの取付けにより“狭い”と“広い”、が軸対称位置に存在することを見出すと共に、
図26に模式的に示されるように該反力発生板が水を半径方向の外向きに変向(吐出)することで半径方向の内向きに反作用力を発生させているのならば、
図27に模式的に示されるようにその逆である該反力発生板が水を半径方向の内向きに変向することで半径方向の外向きに反作用力を発生させることも可能であるとする新しい技術思想を創出するに至ったことにより、これを実証するために、該流体反力が作用する円周方向位置の軸対称位置における該凹部内の形状が該バランスウエートの存在により“狭い”ため、該流体反力が作用する円周方向位置の軸対称位置に水を半径方向の外向きに変向させることによって、半径方向の内向きの反作用力を受ける該反力発生板を設けることができない該羽根車において、
図27に模式的に示されるように該流体反力が作用する円周方向位置に水を半径方向の内向きに変向することで、半径方向の外向きに反作用力を発生させる該反力発生板を設けて試験を行い、その際には空気中における静的または動的な機械的バランスを調整し、振動が小さくなったかどうかは、ポンプの吐出し方向とその直角の水平方向および水中モータ軸導出方向の3軸方向に加速度計を取付けて振動値を測定することで判断した結果、ポンプの大型化や前記側板側の環状隙間G3と前記側板側の軸方向隙間G4への詰りも防止できると共に、前記形状にて振動の低減も問題なく行えることが確認されたが、該凹部の非軸対称な形状が開放されたまま水中で回転することによる流体の乱れによって動力損失が発生するためポンプ効率が悪く、また、該反力発生板への軟弱異物の絡み付きも改善されなかっため、流体の乱れによる動力損失の発生と該凹部内への異物の侵入を抑制することを意図して、該凹部を覆う蓋を該羽根車に取付けると共に、該凹部内へ水を供給して該反力発生板に該反作用力を発生させるため該凹部内外を連通する連通路を該蓋に設けたことにより、ポンプ効率と該反力発生板への軟弱異物の絡み付きは改善されたが、その反面、一度は低減できていた振動が再び大きくなるという新たな問題が発生したことで、該問題の原因は蓋を設けたことで非軸対称な形状である該凹部内に侵入した水が閉じ込められることになり、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内の非軸対称な水に作用する非軸対称な遠心力が原因となって発生していると推定した。
【0019】
そこで、前記機械的バランスの調整された羽根車の凹部に水を入れて蓋およびシール材にて該凹部を封水した状態の羽根車を、バランシングマシンを用いて空気中での動的な不釣合い質量とその作用する位置を測定して、該測定値を基に凹部内の水に作用する遠心力を算出し、該凹部内に導入された水に作用する遠心力を相殺する位置にもう一つ反力発生板を取付けて再度試験を行った結果、前記流体反力のみを相殺する位置に該反力発生板を取付けた振動が再び大きくなった羽根車に比べて、実用上問題のないレベルまで振動値が低減され、また、該流体反力と該凹部内に導入された水に作用する遠心力との合力を相殺する位置に該反力発生板を一つ取付けても同様の結果が得られたことで、該バランシングマシンを使用した実機検証の測定値に基く該遠心力の算出と、前記3次元CADにて羽根車をモデリングしてそのモデルを解析することで該凹部内の水に作用する遠心力の算出結果が略同様であったことから、時間的およびコスト的な点などから鑑みれば、該3次元CADのモデル解析による検証方法が望ましい。
【0020】
しかし、一般に水ポンプは、その性能や用途などに応じて複数のモータ出力や周波数違いのものがシリーズ化されて使い分けられており、その中にはモータ出力が小さいものや電源周波数が大きいまたは極数が小さいために羽根車の回転数の速いものがあることから、負荷を定格値に抑えるために羽根車の外径が小さくなっているので、必然、該凹部の外周径も小さくなって、一箇所に大きさの適正な反力発生板を取付けることが出来ない場合もあることから、本発明者は前述の発明を基にして、該反力発生板を2分割し、一方は該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の内向きに変向させることによって半径方向の外向きの反作用力を受ける形状とし、他方を該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の外向きに変向させることによって半径方向の内向きの反作用力を受ける形状として各々を水中モータ軸に対して180°に振り分けて設けることで、該反力発生板を2分割しても同じ方向の反作用力を発生させることができるので、該凹部外周径が小さくても必要な大きさの反作用力を発生させる該反力発生板を羽根車に設けることが可能となると共に、2分割後の該反力発生板を分割前と同じ大きさで形成することで、より大きな該流体反力や該凹部内に導入された水に作用する該遠心力を相殺することが可能となることに加えて、該反力発生板を該流体反力を相殺するものと該凹部内に導入された水に作用する該遠心力を相殺するものに分割すれば、大きな1つの該反力発生板を小さな4つの該反力発生板として該凹部内に分割配置することができるため、該凹部外周とボス部外周間の狭小な羽根車を用いる水ポンプにおいても、本発明の分割反力発生板の対応が可能であることを確認した。
【0021】
また、前記流体反力は前記羽根車から吐出される流れに対するものであるから、必然、ポンプ吐出し量が変動すれば該流体反力の大きさ、および、作用する円周方向位置が変化することから、前記反力発生板は円周方向にある程度の角度範囲を有して形成されており、大小はあるが該反力発生板の存在する範囲においては半径方向の反作用力が発生しているので、ポンプ吐出し量の変動に伴って該流体反力の作用する円周方向位置が変化しても該反力発生板が存在している円周方向範囲またはその軸対称位置において該流体反力を減殺して振動を低減することが可能であるが、例えば
図18ないし
図20に示すように該反力発生板を前記蓋の下端面や凹部内の底面に取外し可能に設けるように構成しておけば、実際にポンプを設置する現場での実運転吐出し量に合わせた最適な形状および設置位置の該反力発生板に取り替えて該羽根車に装備させることで、該反力発生板による該流体反力の減殺量を大きくすることで相殺させることができるので、より振動を低減することが可能となる。
【0022】
更にまた、
図10ないし
図12に示すように前記羽根車の水中での回転に伴って前記凹部内を円周方向に移動する水が前記反力発生板に最初に衝突する部位である該反力発生板の該羽根車回転方向の上流側端部を、該反力発生板の取付面側から反取付面側に向かって該羽根車回転方向の下流側へ傾斜させれば、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水の水勢による押し流し作用により、水に含まれる軟弱異物が該反力発生板に絡まるのを抑制することができると共に、別の手段として
図13に示すように該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の内向きに変向させることによって半径方向の外向きの反作用力を受ける該反力発生板の該羽根車回転方向の上流側端部を該凹部外周壁に接続させるか、或いは更に別の手段として
図14に示すように該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の外向きに変向させることによって半径方向の内向きの反作用力を受ける該反力発生板の該羽根車回転方向の上流側端部をボス部外側壁に接続させておけば、水に含まれる軟弱異物が絡まり易い凸部および該異物が詰まりやすい隙間を該反力発生板の該羽根車回転方向の上流側端部から無くすことができるので、該反力発生板への該軟弱異物の絡みおよび異物の詰りを抑制することができると共に、該凹部内を円周方向に移動する水を効率良く該反力発生板へ誘導することができるので発生する該反作用力を大きくすることが可能となる。
【0023】
なお、前記蓋には前記反力発生板へ水を供給して反作用力を発生させるため前記凹部内外を連通させる連通路が設けられているが、前記主板と該蓋とで構成される隙間が封水されていないと該羽根車の回転に伴って該凹部内の水に作用する遠心力によって水が該凹部外へ漏れ出てしまい、その漏れ出た分を補填するため該連通路より該凹部内に水が導入されるため、ポンプ運転中は該凹部内に水が通水し続けることになり、汚水などのように異物が混入する可能性がある場合、該凹部内に異物がしだいに堆積してアンバランスを生じて振動が大きくなりポンプの破損に至る可能性があるため、該主板と該蓋との接合部にシール材を用いて封止構成とすれば、一度該凹部内が水で満たされると、それ以上水は浸入できないので、該凹部内への異物の堆積を防止することができることから振動を抑制することが可能となる。
【0024】
次に、本発明者は更なる振動の低減を目指して、段落0013に記載の「凹部深さの浅い昇圧部と凹部深さの深い低圧部の不均一な圧力分布状態で、該凹部内よりも圧力が高いポンプケーシングの揚水流路と連通する、蓋上端面の空間との圧力差によって、水中モータ軸導出方向の下向きに軸方向スラストが作用して振動が大きくなるという」課題を解決すべく、前記羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を遮蔽する遮蔽板を前記急激に深くなる部位またはその上流側近傍に設けるという新たな技術思想を創出したことで、これを検証するために
図29に示されるように位置A,位置B,位置C,位置Dのような各円周方向の該当位置に、該遮蔽板を一ヶ所設けてそれぞれの構成における振動値を測定する際に、該遮蔽板を設ける各円周方向の該当位置は、
図29と
図30に示すように該急激に深くなる形状最深部の落込側壁面4oにおける凹部外周径φDoとボス部外径φDb間の中間径φDmとの交点4mの位置Aを基準として90°毎に設置すると共に、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水が衝突する該遮蔽板の該羽根車回転方向の上流側側壁は、余計な反作用力が生じないように該凹部内を円周方向に移動する水に対して略直角に各位置毎に形成しながら、各々位置における振動値を計測した結果、位置A<位置D<位置B<位置Cの順に振動値が低減することが判明したことで、段落0013および
図22に示すように急激に深くなる部位においては流路が楔状から急拡大されているため水の流れが拡大されて減圧されることに加えて、流れが拡大凹部の落込側壁面から剥離することで該凹部に低圧が発生する相乗の低圧作用を抑制させる、位置Aから90°上流側の位置Dの範囲に遮蔽板を設置することが好ましく、
図23に示すように遮蔽板と反力発生板を併設することで、反力発生板のみを設置した場合に比べて、該遮蔽板を併設した方が振動値が小さくなり、反力発生板と遮蔽板の振動低減効果が相乗的に作用することを確認した。
【0025】
そして、前記反力発生板と前記遮蔽板を羽根車に設ける場合、空気中の前記機械的バランスを調整して水中の前記水力的バランスと両立させようとすれば、該反力発生板や該遮蔽板の軸対称位置に該反力発生板や該遮蔽板の質量に釣合うバランスウエートを設ける必要があり、その際には羽根車の軽量化や材料費の低減、鋳造時の各部の冷却速度差を小さくしてヒケや鋳巣の発生を抑制して鋳造精度を向上させる必要性からできる限りバランスウエートは少なくすることが望ましく、そのためには、該反力発生板と該遮蔽板を小さくする必要があり、小さくすることは本発明形状を外径が小さな羽根車に適用する際にも有効となることから、該反力発生板は、振動の低減に必要な反作用力を発生させなければならないが、例えば
図28の羽根車が流体反力Fkおよび反作用力Fhを受ける位置とベアリングBrとの位置関係を示す説明図を用いて説明すると、ベアリングBr「支点」から距離Aを隔てた「作用点」に作用する該流体反力Fkと、それに対抗する「力点」となる抗力Faの関係は、「支点」から「力点」までの距離が距離Aと同一の場合はFk=Faであり、距離Aより短い場合はFk<Faとなり、逆に距離Aより長い場合はFk>Faとなることから、
図7に示すようにその水中モータ軸導出方向における設置位置が該流体反力Fkの作用する羽根車の水流出部の中央高さ位置に近ければ近いほど、該流体反力Fkと該凹部内に導入された水に作用する該遠心力Fcの相殺に必要な該抗力Faに相当する反作用力Fhが小さくて済むことから、該反力発生板を小さくて軽量に構成することができるため、それと対抗させるバランスウエートも軽量化することができると共に、該凹部の各軸対称位置において、より“深い”方に該反力発生板を設置することで、支点から力点までの距離を長く確保することができるので、更に該抗力Faに相当する反作用力Fhを小さくすることができることから、可能な限り該反力発生板を小さく構成することができる。
【0026】
また、該反力発生板を翼形状に形成することで、具体的には
図8に示すように水中モータ軸に直角な水平断面における前記反力発生板の形状を、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の内向きまたは外向きに変向させる側の変向側側壁の流れ方向長さに比べて反対側の裏側側壁の方が長くなるように形成すれば、該反力発生板の該羽根車回転方向の上流側端部から下流側端部へ流れる水の経路差により変向側側壁に比べて裏側側壁の流速が速くなるので裏側側壁の圧力が低下して該反力発生板の両側壁間に圧力差が生じて流入速度と流出速度との幾何平均速度の方向に垂直な分力であるJISB0131の用語の番号8162に定義される「揚力」が発生するため、その「揚力」の分だけ、該反力発生板によって発生する反作用力を大きくすることができるので、該反力発生板を小さくすることができる。
【0027】
更に、前記反力発生板が該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の内向きまたは外向きに変向させる際、
図31に示されるように該凹部内を円周方向に移動する水の流れに対する前記反力発生板の取付角θが0°および90°(遮蔽)の時は半径方向の反作用力Fhは発生せず、前記取付角θが45°のときに最大値をとるので、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水に対して前記取付角θを略45°の傾きをもって形成すれば、該反力発生板を必要最小限の大きに形成することができる。
【0028】
また、前記遮蔽板の小型化ついては、凹部内を移動する水の周速は中心から遠くなる、即ち凹部外周に向かう程水に作用する周速度は速くなることから、
図23および
図29に示されるボス部外周から凹部外周間の半径方向の凹部全幅遮蔽板の内周側から、該全幅の30%、40%そして前記中間径φDm位置となる50%に相当する長さだけ短くしながら順次試験を行った結果、凹部全幅遮蔽板の振動低減効果に対して該30%、40%内周側を短くしてもその効果には大差はなく、該中間径φDm位置となる50%内周側を短くしても若干振動が大きくなるが実用上問題のないレベルであることが判明したことに加えて、該遮蔽板の上端面は該凹部内を円周方向に移動する水を遮蔽するため該蓋取付面である環状溝底面と同一面とした方が振動低減効果は高いが、軽量化や加工逃しのため該蓋取付面より数mm程度下側に形成しても実用上問題の無いことも確認した。
【0029】
更にまた、前記遮蔽板の内周側から全幅の30%、40%、50%に相当する長さだけ短くした検証設置範囲内に前記羽根車の水中での回転に伴って凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の内向きに変向させることによって半径方向の外向きの反作用力を受けることで前記流体反力または該凹部内に導入された水に作用する遠心力の何れか一方または相方を減殺または相殺されるように構成されている前記反力発生板を設置することで、その該反力発生板の上流側端部を前記凹部外周壁に接続させると共に、その下流側端部を該凹部外周と前記ボス部外周間の中間径φDm以下となる位置まで伸ばして形成すれば、該反力発生板に該遮蔽板の機能を付加することが可能となるので、該遮蔽板を別途設ける必要が無くなり、羽根車をより軽量化することができる。
【0030】
また、前記反力発生板または前記遮蔽板の何れか一方または相方の取付位置が、前記バランスウエートの該羽根車回転方向の上流側側壁に近い前記反力発生板場合または前記バランスウエート範囲位置内の遮蔽板場合、該バランスウエート上流側側壁を該遮蔽板の機能を具備させた該反力発生板の形状とすれば、前記反力発生板または前記遮蔽板と該バランスウエートを一体化でき該凹部内をシンプルかつコンパクトに形成することが可能となるので、異物の詰りや絡みをさらに抑制すると共に、羽根車の軽量化および製作が容易となる。
【0031】
以上このように、試行錯誤の末に辿り着いた構成に基づいた、具体的手段は以下の通りです。
【0032】
本発明の請求項1に係る発明では、水中モータの下端に装着されたポンプケーシングに内装され、水中モータ軸を中心として回転する異物の通過性を重視した一枚羽根または一つの流路を持つ水ポンプ用羽根車において、前記羽根車は水中で回転する際に、該羽根車から吐出される流れに対する流体反力を半径方向の内向きに受け、該羽根車の主板に形成された凹部の中心部分に、
該ポンプケーシング内に導下される水中モータ軸
の先端部に取付けるためのボス部を設けると共に、前記凹部を覆う蓋を備え、水中において該凹部内に水を導入する該凹部内外を連通する連通路が前記蓋に設けられていると共に、空気中においては該凹部内の水を排出するための水抜き孔が前記蓋に穿設されており、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の内向きまたは外向きのいずれか一方に変向させることによって半径方向の外向きまたは内向きのいずれか一方の反作用力を受ける反力発生板が該凹部内に設けられ、該羽根車は水中で回転する際に、前記反力発生板によって発生する前記反作用力によって前記流体反力と該凹部内に導入された水に作用する遠心力との合力が減殺または相殺されるように構成されていることを最も主要な特徴とする。
【0033】
本発明の請求項1の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項2に係る発明は、前記反力発生板が該凹部内に二つ以上設けられ、前記羽根車は水中で回転する際に、該反力発生板の内少なくとも一つによって発生する前記反作用力によって前記流体反力が減殺または相殺され、該反力発生板の他の少なくとも一つによって発生する該反作用力によって該凹部内に導入された水に作用する遠心力が減殺または相殺されるように構成されている。
【0034】
また、本発明の請求項1または2に記載の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項3に係る発明は、前記反力発生板を設けることが可能な浅い部分と深い部分が軸対称位置に存在する前記凹部内において、該凹部の深さがより深い側に該反力発生板が設けられるように構成されている。
【0035】
更に、本発明の請求項1ないし3のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項4に係る発明は、前記流体反力を受ける該羽根車の周面に開口された水流出部の中央高さ位置に対抗するように、前記反力発生板が形成されるように構成されている。
【0036】
また、本発明の請求項1ないし4のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項5に係る発明は、前記反力発生板の水平断面形状は、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の内向きまたは外向きのいずれか一方に変向させる側である変向側側壁の流れ方向長さに対して反対側の裏側側壁の方が長い翼断面形状に形成されるように構成されている。
【0037】
また、本発明の請求項1ないし5のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項6に係る発明は、前記反力発生板の該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の内向きまたは外向きのいずれか一方に変向させる側である変向側側壁全面の取付角が、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水の流れに対して45°の傾きをもって形成されるように構成されている。
【0038】
また、本発明の請求項1ないし6のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項7に係る発明は、前記反力発生板の該羽根車回転方向の上流側端部が前記反力発生板の前記凹部底面または蓋背面の取付面から反取付面に向かって該羽根車回転方向の下流側に向かって傾斜されるように構成されている。
【0039】
更に、本発明の請求項1ないし7のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項8に係る発明は、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の内向きに変向させることによって、半径方向の外向きの反作用力を受ける前記反力発生板の該羽根車回転方向の上流側端部が前記凹部外周壁に
周設するよう該凹部底面または蓋背面の取付面に接続されるか、または、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の外向きに変向させることによって、半径方向の内向きの反作用力を受ける前記反力発生板の該羽根車回転方向の上流側端部が前記ボス部外側壁に
周設するよう該凹部底面または蓋背面の取付面に接続されるように構成されている。
【0040】
更にまた、本発明の請求項1ないし7のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項9に係る発明は、前記反力発生板を、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の内向きに変向させることによって半径方向の外向きの反作用力を受ける反力発生板と、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の外向きに変向させることによって半径方向の内向きの反作用力を受ける反力発生板に2分割させた、各反力発生板を水中モータ軸に対して180°位置に設けられるように構成されている。
【0041】
次に、本発明の請求項1ないし8のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項10に係る発明は、前記反力発生板を、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の内向きに変向させることによって半径方向の外向きの反作用力を受ける反力発生板と、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の外向きに変向させることによって半径方向の内向きの反作用力を受ける反力発生板に2分割させた、各反力発生板を水中モータ軸に対して180°に振り分けて半径距離を異ならせて設けられるように構成されている。
【0042】
そして、本発明の請求項1ないし10のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項11に係る発明は、前記反力発生板が該羽根車または前記蓋或いは双方に取り外して交換可能に構成されている。
【0043】
また、本発明の請求項1ないし11のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項12に係る発明は、前記凹部は該羽根車回転方向の下流に向かって該凹部の深さが連続的に浅くなった後に、前記浅くなる勾配に比べて急激に深くなる形状を有し、該羽根車の水中での回転に伴って前記凹部内を円周方向に移動する水の勢いを抑制する遮蔽板を該凹部外周壁より水中モータ軸の中心方向に向かって凸設されると共に、その内周側端部が該凹部外周と前記ボス部外周間の中間径以下となる位置まで伸びて形成され、前記遮蔽板の該羽根車回転方向の上流側側壁は該凹部内を円周方向に移動する水の流れに対して直角に形成され、該中間径において該羽根車回転方向に対して前記浅くなる勾配から急激に深くなる形状最深部の落込側壁面における該中間径との交点位置を0°とし、該羽根車回転方向の上流側に90°以下の範囲に該遮蔽板の該上流側側壁が位置するように形成されている。
【0044】
更に、請求項1ないし4および6と10のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項13に係る発明は、前記凹部は該羽根車回転方向の下流に向かって該凹部の深さが連続的に浅くなった後に、前記浅くなる勾配に比べて急激に深くなる形状を有し、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の内向きに変向させることによって半径方向の外向きの反作用力を受けることで前記流体反力または該凹部内に導入された水に作用する遠心力のいずれか一方または両方を減殺または相殺されるように構成されている前記反力発生板の上流側端部が前記凹部外周壁に
周設するよう該凹部底面または蓋背面の取付面に接続されると共に、その下流側端部が該凹部外周と前記ボス部外周間の中間径以下とな
る位置まで伸びて形成され、該中間径において該羽根車回転方向に対して前記浅くなる勾配から急激に深くなる形状最深部の落込側壁面における該中間径との交点位置を0°とし、該羽根車回転方向の上流側に90°以下の範囲に該反力発生板の前記下流側端部が位置するように形成されている。
【0045】
更にまた、本発明の請求項1ないし
11と13のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項14に係る発明は、前記反力発生
板が、該羽根車の空気中における静的または動的な機械的バランスを調整するためのバランスウエートと一体で形成されて
おり、また、本発明の請求項12に記載の水ポンプ用羽根車であって、本発明の請求項15係る発明は、前記反力発生板または前記遮蔽板のいずれか一方或いは双方が、該羽根車の空気中における静的または動的な機械的バランスを調整するためのバランスウエートと一体で形成されている。
【0046】
また、本発明の請求項1ないし1
5のいずれか一項に記載の水ポンプ用羽根車において、本発明の請求項1
6に係る発明は、前記主板と前記蓋との接合部はシール材を用いて封止構成されている。
【発明の効果】
【0047】
請求項1の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図1ないし
図4に示すように水中モータの下端に装着されたポンプケーシングに内装され、水中モータ軸を中心として回転する異物の通過性を重視した一枚羽根または一つの流路を持つ水ポンプ用羽根車において、前記羽根車は水中で回転する際に、該羽根車から吐出される流れに対する流体反力を半径方向の内向きに受け、該羽根車の主板に形成された凹部の中心部分に、
該ポンプケーシング内に導下される水中モータ軸
の先端部に取付けるためのボス部を設けると共に、前記凹部を覆う蓋を備え、水中において該凹部内に水を導入する該凹部内外を連通する連通路が前記蓋に設けられていると共に、空気中においては該凹部内の水を排出するための水抜き孔が前記蓋に穿設されており、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の内向きまたは外向きのいずれか一方に変向させることによって半径方向の外向きまたは内向きのいずれか一方の反作用力を受ける反力発生板が該凹部内に設けられ、該羽根車は水中で回転する際に、前記反力発生板によって発生する前記反作用力によって前記流体反力と不均一な容積の該凹部内に導入された水に不均一に作用する遠心力との合力が減殺または相殺されるように構成されていることで、該羽根車外周の一箇所に開口された水流出部から吐出されるため、該吐出反動の流体反力が羽根車の求心方向に作用することに加えて、該凹部内形状が“浅い”と“深い”の夫々容積の異なる部位が軸対称位置に存在することで、羽根車の旋回に伴い該凹部内の不均一な容積内の水には夫々不均一な遠心力と該流体反力の水力的な相乗作用による、該流体反力と該遠心力の水力的アンバランスを、蓋により蓋装された羽根車の凹部内に設けられた反力発生板の水力的な反作用力によって、減殺または相殺されることで振動が抑制されると共に、前記バランスウエートの取付による空気中での前記機械的バランスと水中運転で発生する前記水力的アンバランスの両方を抑制することができ、また特許文献1のような羽根車の外側に本発明の反力発生板に相当する背面および前面補助羽根が凸設露出することがないので、該補助羽根を収容するための不要な空間部を羽根車の上下部に設ける必要がないことから、水中モータ軸方向の寸法を小さく構成することができるので、特にポンプの大型化による余計な製造コストによる製品価格上昇を生じることなく、かつ、水中での羽根車の旋回に伴う軸動力の増加もないことからポンプ効率の低下を生じることもなく、更に汚水に混入した異物等による反力発生板への詰りや絡みによるトラブルが発生し難くなるという利点を有している。
【0048】
本発明の請求項1に基づいた請求項2の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図5に示すように前記反力発生板が該凹部内に二つ以上設けられ、前記羽根車は水中で回転する際に、該反力発生板の内少なくとも一つによって発生する前記反作用力によって前記流体反力が減殺または相殺され、該反力発生板の他の少なくとも一つによって発生する該反作用力によって不均一な容積の該凹部内に導入された水に不均一に作用する遠心力が減殺または相殺されるように構成されていることで、該流体反力と該遠心力の夫々の水力的アンバランスに見合った最適な各反作用力が得られることで、振動の抑制効果が極めて大きい。
【0049】
本発明の請求項1または2に基づいた請求項3と、本発明の請求項1ないし3のいずれか一項に基づいた請求項4の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図6および
図7に示すように前記反力発生板を設けることが可能な浅い部分と深い部分が軸対称位置に存在する前記凹部内において、該凹部の深さがより深い側に該反力発生板が設けられ、また前記流体反力を受ける該羽根車の周面に開口された水流出部の中央高さ位置に対抗するように、前記反力発生板が形成されるように構成されていることで、段落0025『・・
図28の羽根車が流体反力Fkおよび反作用力Fhを受ける位置とベアリングBrとの位置関係を示す説明図を用いて説明すると、ベアリングBr「支点」から距離Aを隔てた「作用点」に作用する該流体反力Fkとそれに対抗する「力点」となる抗力Faの関係は、「支点」から「力点」までの距離が距離Aと同一の場合はFk=Faであり、距離Aより短い場合はFk<Faとなり、逆に距離Aより長い場合はFk>Faとなることから、
図7に示すようにその水中モータ軸導出方向における設置位置が該流体反力Fkの作用する羽根車の水流出部の中央高さ位置に近ければ近いほど、該流体反力Fkと該凹部内に導入された水に作用する該遠心力Fcの相殺に必要な該抗力Faに相当する反作用力Fhが小さくて済む・・』に記載の如く、「支点」から該流体反力Fkと該遠心力Fcの「作用点」までの距離と同等若しくはそれを越える距離に抗力Faに相当する反作用力Fhを作用させることで、該反作用力Fhを小さくすることができることから、該反力発生板自体を小さく軽量に構成することができるので、半径方向の凹部幅を大きく確保できない羽根車外径の小さな羽根車にも適用できるという効果を有している。
【0050】
本発明の請求項1ないし4のいずれか一項に基づいた請求項5の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図8に示すように前記反力発生板の水平断面形状は、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の内向きまたは外向きのいずれか一方に変向させる側である変向側側壁の流れ方向長さに対して反対側の裏側側壁の方が長い翼断面形状に形成されるように構成されていることで、段落0026『・・該反力発生板の該羽根車回転方向の上流側端部から下流側端部へ流れる水の経路差により変向側側壁に比べて裏側側壁の流速が速くなるので裏側側壁の圧力が低下して該反力発生板の両側壁間に圧力差が生じて流入速度と流出速度との幾何平均速度の方向に垂直な分力であるJISB0131の用語の番号8162に定義される「揚力」が発生するため、その「揚力」の分だけ、該反力発生板によって発生する反作用力を大きくすることができる・・』の記載の如く、前記段落0049の請求項3と4の発明と同様に、該反力発生板を小さく構成することができるので、半径方向の凹部幅を大きく確保できない羽根車外径の小さな羽根車にも適用できるという効果を有している。
【0051】
本発明の請求項1ないし5のいずれか一項に基づいた請求項6の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図9に示すように前記反力発生板の該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の内向きまたは外向きのいずれか一方に変向させる側である変向側側壁全面の取付角が、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水の流れに対して45°の傾きをもって形成されるように構成されていることで、段落0027『・・
図31に示されるように該凹部内を円周方向に移動する水の流れに対する前記反力発生板の取付角θが0°および90°(遮蔽)の時は半径方向の反作用力Fhは発生せず、前記取付角θが45°のときに最大値をとるので、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水に対して前記取付角θを45°の傾きをもって形成すれば、該反力発生板を必要最小限の大きに形成することができる・・』の記載の如く、前記段落0049と0050の請求項3ないし5の発明と同様に、該反力発生板を小さく構成することができるので、半径方向の凹部幅を大きく確保できない羽根車外径の小さな羽根車にも適用できるという効果を有している。
【0052】
本発明の請求項1ないし6のいずれか一項に基づいた請求項7の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図10ないし
図12に示すように前記反力発生板の該羽根車回転方向の上流側端部が前記反力発生板の前記凹部底面または蓋背面の取付面から反取付面に向かって該羽根車回転方向の下流側に向かって傾斜されるように構成されていることで、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水の水勢による押し流し作用により、水に含まれる軟弱異物が前記反力発生板に絡まるのを抑制することができるので、異物の絡み付きや閉塞に起因した故障もなく、安定的に振動の低減が維持できるという効果を奏する。
【0053】
本発明の請求項1ないし7のいずれか一項に基づいた請求項8の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図13および
図14に示すように前記羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の内向きに変向させることによって、半径方向の外向きの反作用力を受ける前記反力発生板の該羽根車回転方向の上流側端部が前記凹部外周壁に
周設するよう該凹部底面または蓋背面の取付面に接続されるか、または、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の外向きに変向させることによって、半径方向の内向きの反作用力を受ける前記反力発生板の該羽根車回転方向の上流側端部が前記ボス部外側壁に
周設するよう該凹部底面または蓋背面の取付面に接続されるように構成されていることで
、前記反力発生板への該軟弱異物の絡みおよび詰りを抑制することができると共に、該凹部内を円周方向に移動する水を効率良く円滑に該反力発生板へ誘導することができるので、無駄なく大きな反作用力を発生することができるとから、該反力発生板を小さくすることができるので、前記段落0052の請求項7発明の異物の絡み付きや閉塞に起因した故障もなく、安定的に振動の低減が維持できる効果に加えて、前記段落0049ないし0051の請求項3ないし6発明の、該反力発生板を小さく構成することができるので、半径方向の凹部幅を大きく確保できない羽根車外径の小さな羽根車にも適用できるという効果を有している。
【0054】
本発明の請求項1ないし7に基づいた請求項9の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図15および
図16に示すように、前記反力発生板を、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の内向きに変向させることによって半径方向の外向きの反作用力を受ける反力発生板と、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の外向きに変向させることによって半径方向の内向きの反作用力を受ける反力発生板に2分割させた、各反力発生板を水中モータ軸に対して180°位置に設けられるように構成されていることで、該反力発生板を軸対称に2分割しても同じ方向の反作用力を発生させることが出来るので、該凹部外周径が小さくても必要な大きさの反作用力を発生させる該反力発生板を該羽根車に設けることが可能となるので、より外径の小さな該羽根車にも該反力発生板を設置することができると共に、2分割後の該反力発生板を分割前と同じ大きさで形成することで、より大きな該流体反力や該凹部内に導入された水に作用する該遠心力を相殺することが可能となることから、前記段落0050ないし0052と0054の請求項3ないし6と8発明の、該反力発生板を小さく構成することができるので、半径方向の凹部幅を大きく確保できない羽根車外径の小さな羽根車にも適用できるという効果に加えて、大きな該流体反力や該遠心力の発生する例えばJISB0131の用語の番号1324に定義され付
図12に示されるような「スクリューインペラ渦巻ポンプ」のスクリュー形状の羽根車にも容易に対応できる利点を有している。
【0055】
本発明の請求項1ないし8のいずれか一項に基づいた請求項10の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図17に示すように前記反力発生板を、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の内向きに変向させることによって半径方向の外向きの反作用力を受ける反力発生板と、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の外向きに変向させることによって半径方向の内向きの反作用力を受ける反力発生板に2分割させた、各反力発生板を水中モータ軸に対して180°に振り分けて半径距離を異ならせて設けられるように構成されていることで、前記段落0054の請求項9発明と同様の効果を奏する。
【0056】
本発明の請求項1ないし10のいずれか一項に基づいた請求項11の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図18ないし
図20に示すように前記反力発生板が該羽根車または前記蓋或いは双方に取り外して交換可能に構成されていることで、実際にポンプを設置する現場での実運転吐出し量に合わせた最適な形状および設置位置の該反力発生板に取り替えて該羽根車に装備させることが可能となるので、該反力発生板による該流体反力の減殺量が大きくなって略相殺できるので、より振動を低減することができるという効果を有している。
【0057】
本発明の請求項1ないし11のいずれか一項に基づいた請求項12の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図21ないし
図23に示すように示されるように前記凹部は該羽根車回転方向の下流に向かって該凹部の深さが連続的に浅くなった後に、前記浅くなる勾配に比べて急激に深くなる形状を有し、該羽根車の水中での回転に伴って前記凹部内を円周方向に移動する水の勢いを抑制する遮蔽板を該凹部外周壁より水中モータ軸の中心方向に向かって凸設されると共に、その内周側端部が該凹部外周と前記ボス部外周間の中間径以下となる位置まで伸びて形成され、前記遮蔽板の該羽根車回転方向の上流側側壁は該凹部内を円周方向に移動する水の流れに対して該中間径において該羽根車回転方向に対して前記浅くなる勾配から急激に深くなる形状最深部の落込側壁面における該中間径との交点位置を0°とし、該羽根車回転方向の上流側90°以下の範囲に該遮蔽板の該上流側側壁が位置するように形成されていることで、前記段落0024『・・
図29に示されるように位置A,位置B,位置C,位置Dのような円周方向位置に、該遮蔽板を一ヶ所設けてそれぞれの構成における振動値を測定する際に、該遮蔽板を設ける円周方向位置は、
図29と
図30に示すように該急激に深くなる形状最深部の落込側壁面4oにおける凹部外周径φDoとボス部外径φDb間の中間径φDmとの交点4m位置Aを基準として90°毎に設置すると共に、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水が衝突する該遮蔽板の該羽根車回転方向の上流側側壁は、余計な反作用力が生じないように該凹部内を円周方向に移動する水に対して略直角に各位置毎に形成しながら、各々位置における振動値を計測した結果、位置A<位置D<位置B<位置Cの順に振動値が低減することが判明したことで、段落0013および
図22に示すように急激に深くなる部位においては流路が楔状から急拡大されているため水の流れが拡大されて減圧されることに加えて、流れが拡大凹部の落込側壁面から剥離することで該凹部に低圧が発生する相乗の低圧作用を抑制させる、位置Aから90°上流側の位置Dの範囲に遮蔽板を設置することが好ましく、
図23に示すように遮蔽板と反力発生板を併設することで、反力発生板のみを設置した場合に比べて、該遮蔽板を併設した方が振動値が小さくなり、反力発生板と遮蔽板の振動低減効果が相乗的に作用・・』の記載の如く、該羽根車回転方向の下流に向かって該凹部の深さが連続的に浅くなった後に、前記浅くなる勾配から急激に深くなる形状を有する、例えばブレードレスポンプ用の羽根車においても、前記軸方向スラストの発生を効率良く抑制して振動を効果的に低減できると共に、前記反力発生板の効果を相乗的に作用させることができるので、振動を極めて低減し得るという効果を有している。
【0058】
本発明の請求項1ないし4および6と10のいずれか一項に基づいた請求項13の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図24に示されるように前記凹部は該羽根車回転方向の下流に向かって該凹部の深さが連続的に浅くなった後に、前記浅くなる勾配に比べて急激に深くなる形状を有し、該羽根車の水中での回転に伴って該凹部内を円周方向に移動する水を半径方向の内向きに変向させることによって半径方向の外向きの反作用力を受けることで前記流体反力または該凹部内に導入された水に作用する遠心力のいずれか一方または両方を減殺または相殺されるように構成されている前記反力発生板の上流側端部が前記凹部外周壁に
周設するよう該凹部底面または蓋背面の取付面に接続されると共に、その下流側端部が該凹部外周と前記ボス部外周間の中間径以下となる位置まで伸びて形成され、該中間径において該羽根車回転方向に対して前記浅くなる勾配から急激に深くなる形状最深部の落込側壁面における該中間径との交点位置を0°とし、該羽根車回転方向の上流側90°以下の範囲に該反力発生板の前記下流側端部が位置するように形成されていることで、前記段落0057の請求項12発明と同様の効果を奏する。
【0059】
本発明の請求項1ないし
11と13のいずれか一項に基づいた請求項14の発明に係る水ポンプ用羽根車
の前記反力発生板および、本発明の請求項12に基づいた請求項15の発明に係る水ポンプ用羽根車の前記反力発生板または前記遮蔽板のいずれか一方或いは双方における、それぞれの水ポンプ用羽根車によれば、
該請求項14に係る前記反力発生板と、該請求項15に係る前記反力発生板または前記遮蔽板のいずれか一方或いは双方が、
図25に示されるように羽根車の空気中における静的または動的な機械的バランスを調整するためのバランスウエートと一体で形成されていることで、前記段落0030に記載の如く、該凹部内をシンプルかつコンパクトに形成することが可能となるので、異物の詰りや絡みをさらに抑制すると共に、羽根車の軽量化および製作が容易となるという効果を有している。
【0060】
本発明の請求項1ないし1
5のいずれか一項に基づいた請求項1
6の発明に係る水ポンプ用羽根車によれば、
図1に示されるように前記主板と前記蓋との接合部はシール材を用いて封止構成されていることで、一度該凹部内が水で満たされると、それ以上水は浸入できないので、該凹部内への異物堆積などの異物に起因した故障がなくなることで、極めて安定的に振動防止が維持し得るとういう効果を有している。