特許第5984602号(P5984602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984602
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】洗車ブラシ用洗浄片
(51)【国際特許分類】
   B60S 3/06 20060101AFI20160823BHJP
   A46D 1/00 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   B60S3/06
   A46D1/00 101
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-207834(P2012-207834)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2014-61779(P2014-61779A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】林 大蔵
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−302021(JP,A)
【文献】 特開2009−285340(JP,A)
【文献】 特開2008−018243(JP,A)
【文献】 特開2006−112526(JP,A)
【文献】 特開2009−184536(JP,A)
【文献】 特開2004−180780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/06
A46D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗車ブラシを構成する洗浄片において、セル数(JIS K 6767:1999準拠)が30〜150個/25mm、25%圧縮応力(JIS K 6767:1999準拠)が0.070〜0.360MPaであるポリオレフィンフォームからなり、
前記ポリオレフィンフォームは、表面が切断面で構成されて該表面にセルが露出しており、かつ前記洗浄片の先端側のセル径が根元側のセル径より大きくされ、前記先端側が前記根元側よりも柔軟となっていることを特徴とする洗車ブラシ用洗浄片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィンフォームを用いた洗車ブラシ用洗浄片に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の外面を洗浄するために、洗車機がガソリンスタンド等に設置されている。従来、洗車機には図6に示すように、駆動モータ(図示せず)等で回転する洗車ブラシ70を備えている。前記洗車ブラシ70は、前記駆動モータ等に連結されて回転可能とされる回転軸71を備え、前記回転軸71の外周に多数の洗浄片81を有するものが広く用いられている。
前記洗車機は、前記洗車ブラシ70を回転させ、自動車の外面を前記洗浄片81で擦ることにより自動車の外面の洗浄を行う。
【0003】
前記洗浄片81にはPE(ポリエチレン)樹脂のシート片や布が多用されているが、PE樹脂では洗浄片81が自動車と接触する際の衝突音が気になったり、自動車の外面に引っかき傷ができる虞があった。一方、布は吸水するため、冬季に凍結する虞や連続使用による劣化等の問題があった。
また、洗浄片をポリオレフィンフォームで構成した場合、ポリオレフィンフォームにはクッション性があるため、洗浄片による車体の引っかき傷を防止でき、またポリオレフィンフォームに吸水性が殆ど無いため凍結等の問題を緩和できるが、洗浄性、耐久性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−302021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであって、洗浄性、耐久性に優れ、自動車外面を傷つけることなく洗車を行うことができる洗車ブラシ用洗浄片の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、洗車ブラシを構成する洗浄片において、セル数(JIS K 6767:1999準拠)が30〜150個/25mm、25%圧縮応力(JIS K 6767:1999準拠)が0.070〜0.360MPaであるポリオレフィンフォームからなり、前記ポリオレフィンフォームは、表面が切断面で構成されて該表面にセルが露出しており、かつ前記洗浄片の先端側のセル径が根元側のセル径より大きくされ、前記先端側が前記根元側よりも柔軟となっていることを特徴とする洗車ブラシ用洗浄片に係る。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、洗車ブラシを構成する洗浄片は、セル数(JIS K 6767:1999準拠)が30〜150個/25mmのポリオレフィンフォームからなるため、洗車ブラシに使用した場合に洗浄性及び耐久性が良好になる。また、洗浄片を構成するポリオレフィンフォームを、25%圧縮応力が0.070〜0.360MPaのものとすることにより、洗浄片の耐久性を良好にできると共に、自動車外面に対する傷付きを生じ難くすることができる。
さらに、洗浄片を構成するポリオレフィンフォームを、洗浄片の先端側のセル径が根元側のセル径より大きいものとして前記先端側を前記根元側よりも柔軟とすることにより、自動車外面に対する傷付きをより生じ難くすると同時に洗浄性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態における洗浄片を取り付けた洗車ブラシの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態における洗浄片の斜視図である。
図3】洗車ブラシの回転時における洗浄片の拡開状態を示す平面図である。
図4】洗浄片の製造工程の一例を示す図である。
図5】洗浄片の製造工程の他例を示す図である。
図6】洗車ブラシの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示す洗車ブラシ10は、洗車機に使用されているものであり、駆動モータ等の駆動装置(図示せず)により回転する回転軸11の外周に、本発明の洗車ブラシ用洗浄片21が複数取り付けられている。図示の例では、前記回転軸11において上下位置を異ならせた複数位置にそれぞれ複数の洗浄片21が取り付けられている。符号211は最上位置の第1段目の洗浄片、212は第1段目の下に位置する第2段目の洗浄片、213は第2段目の下に位置する第3段目の洗浄片、214は第3段目の下に位置する第4段目の洗浄片である。なお、符号12は傘部である。
【0011】
前記洗浄片21はポリオレフィンフォームからなり、所定長の帯状片形状とされ、一端側が前記回転軸11の外周に固定されている。前記回転軸11に対する洗浄片21の固定側が洗浄片の根元側21a、反対側が洗浄片の先端側21bである。前記洗浄片21は、1片毎に分離したものを用いても、あるいは図2に示すように複数の洗浄片21が根元側21aで連結した洗浄片連結体20を用いてもよい。前記洗浄片連結体20は、個々の洗浄片21を前記回転軸11と略平行方向となるようにして前記回転軸11の外周に巻き付けられ、前記根元側21aで回転軸に固定される。前記洗浄片連結体20を用いる場合、複数の洗浄片21を回転軸11に固定する作業が容易になる。前記洗浄片21のサイズは適宜決定されるが、例として、幅Wが3〜50mm程度、長さLが300〜600mm程度、厚みTが1〜5mm程度を挙げる。
【0012】
前記洗車ブラシ10の洗浄片21は、洗車時における前記回転軸11の回転による遠心力で図3のように拡開し、自動車の外面に主に洗浄片21の先端側21bで接触して自動車外面の汚れを擦り取る。
【0013】
前記洗浄片21を構成するポリオレフィンフォームのセル数(JIS K 6767:1999準拠)は、30〜150個/25mmが好ましい。セル数が30個/25mm未満の場合、前記ポリオレフィンフォームのセル径が大きくなりすぎるため、洗浄片21の良好な耐久性が得られなくなる。一方、セル数が150個/25mmを上回ると、ポリオレフィンフォームのセル径が小さくなりすぎるため、洗浄に十分な濡れ性が得られず、また、表面の凹凸が小さくなって摩擦抵抗が減少するので自動車外面を擦る力が十分でなく、良好な洗浄性が得られなくなる。また、車体に対する洗浄性をより良好にするため、前記洗浄片21を構成するポリオレフィンフォームの表面は、切断面で構成されてセルが表面に露出しているのが好ましい。
【0014】
前記洗浄片21を構成するポリオレフィンフォームの25%圧縮応力(JIS K 6767:1999準拠)は、0.070〜0.360MPaの範囲が好ましい。前記25%圧縮応力が0.070MPa未満の場合、自動車外面の洗浄時に、前記洗浄片21が自動車外面を擦る力が十分でなく、良好な洗浄性を得られない。また、前記25%圧縮応力が0.360MPaより大きい場合、前記洗浄片21の剛性が高くなると同時に重量が増加するため、洗車ブラシ10の回転によって自動車外面に前記洗浄片21が接触する際の衝突音が大きくなったり、自動車外面に傷をつけたりする虞がある。
【0015】
また前記ポリオレフィンフォームは、前記洗浄片21における先端側21bのセル径を、根元側21aのセル径より大きくして、前記先端側21bを前記根元側21aよりも柔軟にするのが好ましい。このように構成すれば、洗車時、自動車の外面に洗浄片21の柔軟な先端側21bが主に接触することになるため、自動車の外面に傷が一層付き難くなると共に良好な洗浄性が得られ、その上、前記回転軸11に固定される根元側21aの強度が高くなるため、遠心力による洗浄片21の破損分離を防ぐことができる。
【0016】
前記ポリオレフィンフォームは、ポリオレフィン系樹脂に発泡剤と架橋剤及び適宜の助剤を配合して混練りした発泡樹脂組成物から、公知の一段発泡法あるいは二段発泡法により形成される。
一段発泡法は、前記発泡樹脂組成物を成形金型に充填し、加圧、加熱して発泡剤の分解及び架橋反応を進行させ、次に成形金型を開放することにより膨張させてポリオレフィンフォームを形成する方法である。
二段発泡法は、前記発泡樹脂組成物を一次金型に充填し、加圧下加熱して一次発泡させ、得られた中間発泡体を常圧で加熱して二次発泡させることにより、ポリレオフィンフォームを得る方法である。
【0017】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン等の他、エチレンを主成分とする各種共重合体を挙げる。特に低密度ポリエチレン(LDPE)、またはエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)の使用が好ましい。なお、前記ポリオレフィン系樹脂は、一種類に限られず、複数種類を使用することもできる。
【0018】
発泡剤としては、加熱により分解してガスを発生するものが用いられ、特に制限されるものではない。例えばアゾジカルボンアミド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジアゾアミノベンゼン、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゼン−1,3−スルホニルヒドラジド、ジフェニルオキシド−4,4’−ジスルフォニルヒドラジド、4,4’−オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド、パラトルエンスルフォニルヒドラジド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジニトロソ−N,N’−ジメチルフタルアミド、テレフタルアジド、p−t−ブチルベンズアジド、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム等の一種又は二種以上が用いられる。特にアゾジカルボンアミド、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドが好適である。発泡剤の添加量としては、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、2〜30質量部とされる。2質量部未満の場合は、剛性が高くなると同時に重量が増加するため、洗車ブラシ10の回転によって自動車外面に前記洗浄片21が接触する際の衝突音が大きくなったり、自動車外面に傷をつけたりする虞がある。一方、30質量部を超えると、強度が不足して破損しやすくなる。
【0019】
架橋剤としては、従来、ポリオレフィンフォームの製造に使用されている公知のものを使用することができる。例えば、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス−ターシャリーブチルパーオキシヘキサン、1,3−ビス−ターシャリーパーオキシ−イソプロピルベンゼンなどの有機過酸化物等を挙げることができる。前記架橋剤の配合量は、架橋剤の種類によっても異なるが、前記ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.2〜2.0質量部とされる。架橋剤が0.2質量部より少ないと架橋が充分に行われず、発泡がし難いだけでなく、発泡できたとしても歪みやすく、耐久性の低いものとなる。一方、架橋剤が2.0質量部よりも多いと、架橋度が増すことから樹脂の強度が高くなり、成形時に伸び難くなり、発泡させづらくなる。また、発泡したとしても、内部に大きなホールが形成されやすい。
【0020】
適宜添加される助剤としては、発泡助剤等がある。発泡助剤には、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、低級又は高級脂肪酸あるいはそれらの金属塩、尿素及びその誘導体等が挙げられる。さらに、顔料等の添加剤が添加される場合もある。
【0021】
また、前記ポリオレフィンフォームのセル数(JIS K 6767:1999準拠)を30〜150個/25mmとするには、発泡助剤の添加量を調整すればよい。また、25%圧縮応力(JIS K 6767:1999準拠)を0.070〜0.360MPaとするには、ポリオレフィンフォームの材料である各々の樹脂に応じて発泡剤の添加量を前述の範囲内において調整することで、見掛け密度を調整すればよい。
【0022】
本発明の洗浄片の製造方法について図4を用いて説明する。
まず、一段発泡法あるいは二段発泡法によって、図4の(4−A)に示すように、ポリオレフィンフォームのブロック50を形成する。前記ポリオレフィンフォームのブロック50のサイズ例として、2000×1000×100mmを挙げる。なお、一段発泡法あるいは二段発泡法によって得られたポリオレフィンフォームのブロックは、公知の如く、外面側よりも内部中央側でセル径が大きくなっている。
次に、前記ポリオレフィンフォームのブロック50を、前記洗浄片21の厚みTと同じ厚み、例えば3〜9mmにスライス加工(切断加工)して、図4の(4−B)に示すような上下面においてセルが表面に露出したポリオレフィンフォームの大シート51を形成する。なお、この時点では端部周囲のセルにはスキン層が付着した状態となっている。
【0023】
次に、前記ポリオレフィンフォームの大シート51を、図4の(4−C)のように、前記洗浄片21の長さLと等しい寸法、例えば490mmで分割(図示の例では2分割)すると同時に端部周囲のスキン層を除去するように打ち抜きをして、全面においてセルが露出したポリオレフィンフォームの小シート53を形成する。
前記ポリオレフィンフォームの小シート53に対し、図4の(4−D)に示すように、前記洗浄片21の幅Wと等しい間隔、例えば20〜100mmで前記小シート53の短辺53aと平行なスリット54を櫛状に打ち抜き形成して、複数の洗浄片56が一端側で連結された洗浄片連結体55を形成する。前記櫛状のスリット54は、前記小シート53において、前記大シート51の内部中央側と対応する(すなわち前記ポリオレフィンフォームのブロックの内部中央側と対応する)一側の長辺53cから、前記大シート51の外側と対応する(すなわち前記ポリオレフィンフォームのブロックの外側と対応する)反対側の長辺53bの手前まで形成して、前記一側の長辺53c側、すなわち前記ポリオレフィンフォームのブロックの内部中央側と対応する側をスリットによって分断(分離)し、他側の長辺53b側、すなわち前記ポリオレフィンフォームのブロックの外側と対応する側については連結した状態とし、前記スリット54間に洗浄片56を形成する。
なお、大シート51を小シート53に打ち抜き形成した後、小シート53を櫛状に打ち抜き形成したが、大シート51から直接櫛状に打ち抜き形成して洗浄片連結体55を形成してもよい。
【0024】
次に、図4の(4−E)のように、前記洗浄片連結体55を、前記洗浄片53が連結されている長辺53b側を洗浄片の根元側となるように環状にして、前記洗車ブラシの回転軸11の外周に固定する。これにより、前記回転軸11の外周に複数の洗浄片56を根元側で固定することができる。前記回転軸11の外周に固定された前記洗浄片56は、先端側(スリットで分離した長辺53c側)のセル径が、根元側(連結されている長辺53b側)のセル径よりも大きくなっている。
【0025】
前記洗浄片の他の製造方法について図5を用いて説明する。
まず、一段発泡法あるいは二段発泡法によって、図5の(5−A)に示すように、ポリオレフィンフォームのブロック60を形成する。なお、一段発泡法あるいは二段発泡法によって得られたポリオレフィンフォームのブロックは、公知の如く、外面側よりも内部中央側でセル径が大きくなっている。
次に、前記ポリオレフィンフォームのブロック60を、前記洗浄片21の厚みTと同じ厚みでスライス加工(切断加工)して、図5の(5−B)に示すような上下面においてセルが表面に露出したポリオレフィンフォームの大シート61を形成する。なお、この時点では端部周囲のセルにはスキン層が付着した状態となっている。
【0026】
次に、前記ポリオレフィンフォームの大シート61に対して、図5の(5−C)のように、前記洗浄片21の幅Wと等しい間隔で前記大シート61の一辺63a(図示の例では短辺)と平行なスリット64を、前記一辺63aと直交する両側の辺63b、63cから内部中央付近まで、いわゆるムカデ状に打ち抜き形成し、前記スリット64間で構成される複数の洗浄片66が一端側(前記大シート61の内部中央側、すなわち前記ポリオレフィンフォームのブロックの内部中央側に相当する側)で連結された洗浄片連結体65を形成する。洗浄片連結体65は、大シート61よりも小さいサイズに打ち抜かれることで、端部周囲のスキン層は除去され、洗浄片連結体65の全面においてセルが露出する。
【0027】
次に、前記洗浄片連結体65を、前記複数の洗浄片66が連結されている中央側67で図5の(5−D)のように折り曲げて折り曲げ体68を形成し、次に、前記折り曲げによって前記中央側67に形成された折り曲げ辺63d側が洗浄片66の根元側となるようにして環状にし(図示せず)、前記洗車ブラシの回転軸11の外周に固定する。これにより、前記回転軸11の外周に複数の洗浄片66を固定することができる。前記回転軸11の外周に固定された前記洗浄片66は、先端側(スリットで分離した側)のセル径が、根元側(連結されている側)のセル径よりも小さくなっている。このようにすれば、洗浄片を構成するポリオレフィンフォームが比較的柔軟な樹脂(例えばEVAなど)で車体との摩擦による磨耗量が大きい、すなわち耐久性が低い場合に、洗浄片先端部の耐摩耗性を向上させて、洗車ブラシの耐久性を向上できる。
【0028】
なお、図5の(5−C)に示す前記スリット64を打ち抜き形成した洗浄片連結体65に対し、前記洗浄片66が連結されている中央側67で、前記スリット64と直交する方向に切断して図5の(5−E)に示すように2分割することにより、2つの洗浄片小連結体69を形成し、その後に図4の(4−E)に示したのと同様に環状にして、前記洗車ブラシの回転軸11の外周に根元側で固定してもよい。
【0029】
また、前記洗浄片は、先端側のセル径を根元側のセル径よりも大きくしたものと、逆に先端側のセル径を根元側のセル径よりも小さくなるようにしたものとを組み合わせて、前記回転軸11の外周に固定してもよい。例えば、図1に示した洗車ブラシ10において、最上位置の第1段目の洗浄片211については、先端側21bのセル径を根元側21aのセル径よりも大きくしたものとし、その下の第2段目の洗浄片212については、逆に先端側21bのセル径が根元側21aのセル径よりも小さくなるようにしたものとし、以下先端側21bのセル径を根元側21aのセル径よりも大きくした洗浄片で構成した段と、逆に先端側21bのセル径が根元側21aのセル径よりも小さくなるようにした洗浄片で構成した段を交互に設けるようにしてもよい。このようにすれば、先端側21bのセル径を根元側21aのセル径よりも大きくした洗浄片の段において洗浄片が摩耗等で破損しても、逆に先端側21bのセル径が根元側21aのセル径よりも小さくなるようにした洗浄片の段は破損し難いため、洗車ブラシの耐久性を高めることができる。
【実施例】
【0030】
以下この発明の洗浄片における洗浄性と耐久性を確認するため、以下の原料を表1〜表3に示す配合にして混練りして得た発泡樹脂組成物を一段発泡法により、2000×1000×100mmのポリオレフィンフォームのブロックを発泡形成し、そのブロックの表面から厚み5mmで複数枚のシートに切除し、さらにブロック中央付近で各試験体形状に裁断して実施例及び比較例のポリオレフィンフォームを作成した。なお、表1〜表3の各原料に対する数値の単位は質量部である。
【0031】
ポリオレフィン系樹脂:LDPE、製品名;サンテックLD F2225.4、旭化成社製、密度924kg/m
ポリオレフィン系樹脂:EVA、製品名;ウルトラセン 540F、東ソー社製、酢酸ビニル含有量10%
発泡剤:ADCA(アゾジカルボンアミド)、製品名;ビニホール AC♯3、永和化成社製
発泡助剤:尿素、製品名;セルペースト101、永和化成社製
架橋剤:DCP(ジクミルパーオキサイド)、化薬アクゾ社製
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
実施例及び比較例のポリオレフィンフォームに対し、セル数(JIS K 6767:1999準拠)、25%圧縮応力(JIS K 6767:1999準拠)、見掛け密度(JIS K 6767:1999準拠)、洗浄性及び耐久性を測定した。測定結果を表1〜表3に示す。なお、洗浄性の測定は、アクリル塗料が塗布された鉄板に水性および油性の汚れを均一に付着させ、実施例あるいは比較例の試験片(50×50×厚み5mm)を、前記鉄板に100g/cmの圧力で押しつけた状態にして一定速度(5cm/s)で移動させ、そのときに鉄板に残った汚れの有無を目視で確認した。汚れが無い場合は○、汚れがある場合は×として表1に示した。また、耐久性の測定は、汚れが付着した前記の鉄板に実施例あるいは比較例の試験片(50×50×厚み5mm)を100g/cmの圧力で押しつけた状態で、距離150mmを10万回往復させ、その後に試験片の厚みを測定した。10万回往復後における試験片の厚みは元厚の半分以下(50%以下)に減少していないことが望ましい。
【0036】
表1の実施例1〜4と比較例1及び比較例2は、ポリオレフィン系樹脂にLDPE(低密度ポリエチレン樹脂)を用い、25%圧縮応力を0.2MPaにし、セル数のみを変化させた例である。なお、セル数の変化は発泡助剤(尿素)の配合量を変化させることにより行った。
実施例1〜実施例4は、セル数を30〜150個/25mmの範囲で変化させた例であり、洗浄性は水性及び油性の何れについても○(汚れが無い)であり、かつ、耐久性については残り厚みの%が86〜60%で半分以上であった。
一方、比較例1は、セル数が本発明の範囲より多い180個/25mmであり、洗浄性が水性及び油性の何れについても×(汚れがある)であった。
比較例2は、セル数が本発明の範囲よりも少ない10個/25mmであり、耐久性における残り厚み%が46%であり、元厚の半分以下に摩耗していた。
【0037】
表2の実施例5〜実施例8及び比較例3は、ポリオレフィン系樹脂にLDPE(低密度ポリエチレン樹脂)を用い、セル数を100個/25mmにし、25%圧縮応力のみを変化させた例である。なお、25%圧縮応力の変化は、発泡剤の配合量を変化させることにより行った。
実施例5〜実施例8は、25%圧縮応力が0.35〜0.099Mpaであり、洗浄性は水性及び油性の何れについても○(汚れが無い)であり、かつ、耐久性については残り厚みの%が92〜84%で半分以上であった。
一方、比較例3は、25%圧縮応力が本発明の範囲よりも小さい0.065Mpaであり、洗浄性が水性及び油性の何れについても×(汚れがある)であった。
【0038】
表3の実施例9及び実施例10と比較例4〜比較例6は、ポリオレフィン系樹脂にEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)を用い、セル数を100個/25mmにし、25%圧縮応力のみを変化させた例である。なお、25%圧縮応力の変化は、発泡剤の配合量を変化させることにより行った。
実施例9及び実施例10は、25%圧縮応力が0.08〜0.075Mpaであり、洗浄性は水性及び油性の何れについても○(汚れが無い)であり、かつ、耐久性については残り厚みの%が82〜80%で半分以上であった。
一方、比較例4〜比較例6は、25%圧縮応力が本発明の範囲よりも小さい0.055〜0.033Mpaであり、洗浄性が水性及び油性の何れについても×(汚れがある)であった。
【0039】
前記実施例2について、成形金型の型面側と対応する先端側と、金型の内部中央側と対応する根元側のセル数をJIS K 6767:1999にしたがって測定したところ、先端側のセル数が70であり、根元側のセル数が100であり、先端側のセル径の方が大きく根元側のセル径が小さかった。また、セル径の大きい先端側とセル径の小さい根元側について触感で柔軟性を確認した結果、先端側が根元側よりも柔軟であった。
【符号の説明】
【0040】
10 洗車ブラシ
11 回転軸
21、56、66 洗浄片
21a 根元側
21b 先端側
図1
図2
図3
図4
図5
図6