【文献】
電車でGO!64,電撃NINTENDO64 第4巻 第10号,メディアワークス,1999年10月 1日,第54-57頁
【文献】
ゲームで気分転換 電車でGO!2 高速編3000番台,日経Click 第7巻 第7号,日本,日経BP社,2000年 5月 8日,第220頁
【文献】
電車でGO!64,電撃NINTENDO64 第4巻 第9号,メディアワークス,1999年 9月 1日,第70-73頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
訓練者の視点の位置が、訓練者の視線が向けられる対象物から所定の距離以上離れた状態で、所定の時間が経過した場合、対象物を変化させる請求項1〜9の何れか一項に記載の鉄道シミュレータ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本明細書で開示する鉄道シミュレータの好ましい一実施形態を、図を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0017】
図1は、本明細書に開示する鉄道シミュレータの一実施形態を示す機能ブロック図である。
図2は、本明細書に開示する鉄道シミュレータの表示部を示す図である。
図3は、本明細書に開示する鉄道シミュレータを訓練者が操作している様子を示す図である。
【0018】
本実施形態の鉄道シミュレータ10は、鉄道車両を運転する運転士を養成するために、訓練者が鉄道車両の模擬運転を行って、車両の運転技術を学習させるものである。
【0019】
鉄道シミュレータ10は、運転シナリオに基づいて、鉄道車両の操縦席から見える模擬視界映像及び車両の速度等の模擬運転状況を表示し、マスターコントローラ等の操作入力装置を訓練者に操作させて模擬運転を行わせる。
【0020】
また、鉄道シミュレータ10は、模擬運転中に訓練者が行う所定の確認事項に対して、確認動作の評価を行って、評価結果を記録する。訓練者は、記録された評価結果に基づいて、自分が行った模擬運転を再生して確認することができる。また、訓練者は、自分が行った模擬運転を再生すると共に、再度、同じ模擬運転を訓練することもできる。
【0021】
この確認動作には、例えば、訓練者が行う指差動作、喚呼等の訓練者が発言する音声、又は、訓練者が対象物に対して向ける視点の位置等の動作が含まれる。
【0022】
これらの確認動作は、所定の対象物又は事象に対して行われ得る。所定の対象物又は事象には、例えば、信号機、時刻表に記載されている駅を発車する時刻、戸締めの表示ランプ、保安計器、走行する軌道上のもの等が含まれる。
【0023】
鉄道シミュレータ10は、
図1に示す各機能ブロックを有する。次に、鉄道シミュレータ10の各機能ブロックを、
図1を参照しながら、以下に説明する。
【0024】
シナリオ再生部17は、シナリオ記録部20に記録された運転シナリオに基づいた模擬視界映像を再生して、表示部40に表示する。シナリオ再生部17は、操作入力部41から操作情報を入力して、再生速度を変更する。
【0025】
シナリオ記録部20は、訓練に使用される運転シナリオを記録する。運転シナリオには、シナリオ再生部17によって再生される模擬視界映像が含まれる。模擬視界映像には、訓練者が確認動作を行う対象物等の情報が関連づけられている。
【0026】
表示部40は、シナリオ再生部17が再生する模擬視界映像を表示する。
図2に示す例では、表示部40は、軌道40b及び3現示信号機40cを含む模擬視界映像を表示するディスプレイ40aを有する。
【0027】
また、表示部40は、シナリオ再生部17が出力する鉄道車両の走行速度等の模擬運転状況を表示する。
図2に示す例では、表示部40は、鉄道車両の走行速度を表示する速度計50aを有する。速度計50aは、ディスプレイ40aの下に位置する計器盤50に配置される。
【0028】
模擬運転状況には、例えば、速度又は戸締めランプの点灯状態等の車両運転情報、マスターコントローラ等の訓練者の運転操作情報が含まれ得る。
【0029】
操作入力部41は、模擬運転における鉄道車両の走行速度を制御するマスターコントーラ52等を有する。
図2に示す例では、マスターコントーラ52は、計器盤50の下に位置する操作盤51に配置される。訓練者Pは、座席54に着座して、ディスプレイ40aに映される模擬視界映像を見ながら、マスターコントーラ52等を操作する。
【0030】
視点検知部30は、訓練者Pの視点の位置Eを検知する。視点検知部30は、訓練者Pが視認できない波長の電磁波を訓練者Pに対して照射し、反射された電磁波を受信して、訓練者Pの両目の位置及び各目の視線の向きを検出する。そして、視点検知部30は、あらかじめ入力されている訓練者Pに対する補正情報、ディスプレイ40a、計器盤50及び操作盤51等の寸法情報等に基づいて、訓練者Pの視点の位置Eを検知する。視点検知部30は、訓練者Pの視点の位置Eを、評価部12へ出力する。検知した視点検知部30は、例えば、公知の技術を用いて構成することができる。
【0031】
音声認識部31は、訓練者が発言する喚呼等の音声を入力する音声入力部31aと、音声入力部31aが入力した音声を認識して文字列に変換する文字列化部31bとを有する。音声認識部31は、認識した文字列を評価部12へ出力する。音声認識部31は、例えば、公知の音声認識技術を用いて構成することができる。
図2に示す例では、音声入力部31aとしてのマイクロフォンがディスプレイ40aの上に配置されており、訓練者Pが発言する喚呼等の音声Fを入力する。また、音声認識部31は、訓練者が発言する音声Fの音量を定量化して出力する。なお、文字列化部31bの機能は、後述する評価部12が有していても良い。
【0032】
ステレオ画像撮像部32は、訓練者Pのステレオ画像を撮像して距離画像を生成し、生成した距離画像を評価部12に出力する。ここで、距離画像とは、ステレオ画像の各画素について、ステレオ画像撮像部32と撮像された対象物との間の距離を情報として有する画像を意味する。
図2及び
図3に示す例では、ステレオ画像撮像部32は、ディスプレイ40aの上に配置されており、訓練者Pを撮像する。ステレオ画像撮像部32は、例えば、公知の撮像技術を用いて構成することができる。なお、距離画像は、他のセンサを用いて検出しても良い。
【0033】
初期化部11は、ある訓練者が始めて鉄道シミュレータ10を操作する時に、上述した視点検知部30、音声認識部31及びステレオ画像撮像部32を訓練者に対応させて初期化し、得られた初期化値を訓練者の識別情報であるIDと関連づけて、初期化値記録部21に記録する。訓練者のIDは、ID入力部42から初期化部11に入力される。
【0034】
視点検知部30の初期化作業は、例えば、ディスプレイ40a上に複数の画像を表示して、訓練者に各画像を順番に視認してもらうことにより行われる。これにより、訓練者の目の形状等の個人特有の情報を補正値として得ることができる。
【0035】
音声認識部31の初期化作業は、例えば、訓練者に所定の例文を発言させて、その発声を入力して、訓練者の声等の個人特有の情報を補正値として得ることができる。この初期化作業により、例えば、音声入力部31aは、音声の入力レベルが補正され、また文字列化部32aは、音声を認識するパラメータが補正される。
【0036】
ステレオ画像撮像部32の初期化作業は、例えば、訓練者に指差し動作を行ってもらって、その動作のステレオ画像を撮像し、訓練者の手及び腕等の個人特有の情報を補正値として得ることができる。
【0037】
そして、同じ訓練者が鉄道シミュレータ10を再び操作する場合には、入力した訓練者のIDに基づいて、初期化値記録部21に記録されている視点検知部30、音声認識部31及びステレオ画像撮像部32の初期化値を読み出して、視点検知部30、音声認識部31及びステレオ画像撮像部32を初期化する。
【0038】
従って、一度初期化が行われた訓練者に対しては、再び初期化する作業を省略することができる。
【0039】
評価部12は、シナリオ記録部20に記録された運転シナリオに基づいて、検知した指差動作、又は音声認識部31が入力した音声を認識して文字列に変換した文字列、又は視点検知部30が検知した視点の位置を、所定の評価基準に基づいて評価する。評価部12には、シナリオ再生部17がシナリオ記録部20から読み出して出力する運転シナリオが入力され、運転シナリオと関連づけて評価が行われる。
【0040】
詳しくは後述するが、運転シナリオには、訓練者が確認動作を行う対象物等の情報が含まれている。評価部12は、各対象物等に対して、検知した指差動作の有無及びそのタイミング、並びに音声認識部31が認識した音声を変換した文字列及び音声の音量及びそのタイミング、並びに視点検知部30が検知した視点の位置及びそのタイミングを、所定の評価基準に基づいて評価する。
【0041】
評価部12は、ステレオ画像撮像部32が生成した距離画像を入力し、入力した距離画像に基づいて、訓練者Pと訓練者ではない背景の部分とを分離する。訓練者Pが指差動作を行う場合、指差動作が行われる空間には、手及び腕以外のものが存在しないので、評価部12は、その空間において所定の長さ及び幅を有する領域が存在すると、その領域を訓練者Pの手及び腕として検出する。そして、評価部12は、検出した訓練者Pの手及び腕の画像領域に基づいて、指差動作の有無及びそのタイミングを判断する。また、評価部12は、上述した初期化作業によって、訓練者Pの手及び腕の画像領域を検出する際のパラメータが補正される。この補正されたパラメータも、訓練者の識別情報であるIDと関連づけて、初期化値記録部21に記録される。
【0042】
本実施形態では、評価部12は、検出した訓練者Pの手及び腕の画像領域に基づいて、所定の時間の間に検出した手及び腕の移動量を検出する。そして、評価部12は、検出した手及び腕の移動量に基づいて、指差動作の有無を判断する。なお評価部12は、上述した動作とは異なる処理を行って、指差動作の判断をしても良い。
【0043】
また、評価部12が、音声認識部31が認識した音声を評価する際には、音声認識部31が音声を認識して文字列化した文字列を、文字列記録部22が記録する参照文字列に基づいて評価する。
【0044】
文字列記録部22は、訓練者が確認動作を行う対象物等に関連付けられた参照文字列を記録する。評価部12は、音声認識部31が認識した音声を評価する際には、各対象物等に対して、文字列記録部22に記録された参照文字列に基づいて評価する。
【0045】
評価基準変更部14は、鉄道車両の模擬運転状況に応じて、評価部12が使用する評価基準を変更する。本実施形態では、模擬運転状況は鉄道車両の速度であり、評価基準変更部14は、鉄道車両の走行速度に応じて、評価基準を変更する。評価基準変更部14には、シナリオ再生部17から鉄道の走行速度等の模擬運転状況が入力される。
【0046】
具体的には、上述した評価基準は、評価部12が評価を開始する鉄道車両の位置と、指差動作、又は喚呼等の音声、又は視線が向けられる対象物との間の距離である開始距離である。評価基準変更部14は、鉄道車両の走行速度に応じて、開始距離を変更し、評価部12は、鉄道車両の位置が、対象物に対して開始距離以下に近づいた後に、評価を開始する。この評価基準としての開始距離は、鉄道車両の走行速度が速い時には長くして、走行速度が遅い時には短くすることができる。鉄道シミュレータ10は、鉄道車両の走行速度に応じて開始距離を変更することにより、訓練者が確認動作を適切なタイミングで行えるのかどうかを評価する。例えば、訓練者が確認動作を行っていても、適切なタイミングで行われていない場合には、その確認動作は評価されない。
【0047】
また、評価基準は、指差動作の有無を判断する移動量であっても良い。この指差動作の有無を判断する移動量は、評価部12が用いる所定の閾値として用いられる。評価部12は、検出した手及び腕の移動量が、所定の閾値よりも大きい場合に、指差動作が行われたと判断する。この評価基準としての指差動作の有無を判断する移動量は、鉄道車両の模擬運転状況である走行速度が速い時には大きくして、走行速度が遅い時には小さくすることができる。
【0048】
また、評価基準は、音声認識部31が入力した音声を認識して変換した文字列と、文字列記録部22に記録された参照文字列との一致度であっても良い。評価部12は、音声認識部31が入力した音声を認識して変換した文字列と参照文字列とが、所定の一致度以上であれば、訓練者が正しい喚呼を発言したと判断する。この評価基準としての一致度は、鉄道車両の模擬運転状況である走行速度が速い時には低くして、走行速度が遅い時には高くすることができる。
【0049】
更に、評価基準は、ディスプレイ40a上における視点の位置と、視線が向けられる対象物との間の距離であっても良い。評価部12は、ディスプレイ40a上における視点の位置と、視線が向けられる対象物との間の距離が、所定の閾値以下であれば、訓練者が対象物に対して正しく視線を向けたと判断する。この評価基準としての距離は、鉄道車両の模擬運転状況である走行速度が速い時には長くして、走行速度が遅い時には小さくすることができる。この評価基準としての距離は、ディスプレイ上の対象物の移動速度が速い時には長くして、移動速度が遅い時には短くすることが好ましい。
【0050】
記録処理部13は、評価部12が検知した指差動作、及び音声認識部31が入力した音声を認識して文字列化した文字列、及び視点検知部30が検知した視点の位置等を、評価基準に基づいて評価した結果を、シナリオ再生部17が再生している運転シナリオと関連づけて、訓練結果記録部23に記録する。
【0051】
訓練結果記録部23は、記録処理部13によって、シナリオ再生部17が再生している運転シナリオと関連づけられており評価部12が評価した結果を、訓練者のIDと共に記録する。
【0052】
再生箇所検出部15は、各訓練者に対して、訓練者のID及び訓練結果記録部23に記録された評価した結果に基づいて、運転シナリオの再生すべき再生箇所を検出する。具体的には、再生箇所検出部15は、評価部12が検知した指差動作、又は音声認識部31が入力した音声を認識して文字列化した文字列、又は視点検知部30が検知した視点の位置等について、訓練者が正しい動作を行ったと評価されなかった対象物等の部分の運転シナリオを検出する。
【0053】
また、再生箇所検出部15は、検出した運転シナリオの再生すべき再生箇所を、シナリオ再生部17に出力する。シナリオ再生部17は、再生箇所検出部15により検出された運転シナリオの再生すべき再生箇所が入力された場合には、再生すべき運転シナリオの部分を表示部40に出力する。
【0054】
視点再生部16は、訓練者の視点の位置が、ディスプレイ40a内に含まれている場合には、訓練者の視点の位置をディスプレイ40a上に模擬視界映像と共に表示しても良い。また、評価部12が訓練者の指差す方向を検知する場合には、視点再生部16は、訓練者の指差すディスプレイ40a上の位置を、模擬視界映像と共にディスプレイ40a上に表示しても良い。
【0055】
更に、視点再生部16は、再生箇所検出部15により検出された運転シナリオの再生すべき再生箇所が入力された場合には、再生箇所検出部15から入力される訓練者の視点の位置を、表示部40に出力しても良い。
【0056】
上述した鉄道シミュレータ10の各機能ブロックの内、
図1の鎖線で囲まれた機能の部分は、シミュレータ本体10aとして表され得る。シミュレータ本体10aは、
図4に示すように、演算部60と、記憶部61と、表示部62と、入力部63と、出力部64と、通信部65とを有する。
【0057】
演算部60は、記憶部61に記憶された所定のプログラムを実行することにより、上述した鉄道シミュレータ10の鎖線で囲まれた各機能を実現する。
【0058】
シミュレータ本体10aは、例えば、一台又は複数台のサーバ又はパーソナルコンピュータ若しくはステートマシン等のコンピュータを用いて形成され得る。シミュレータ本体10aが複数のコンピュータ等を用いて形成される場合には、互いに同期する手段を有することが好ましい。
【0059】
また、シミュレータ本体10aの全ての機能又は一部の機能を、電子回路等のハードウェアを用いて形成しても良い。
【0060】
次に、上述した鉄道シミュレータ10の動作例を、図面を参照して、以下に説明する。
【0061】
まず、シナリオ再生部17は、シナリオ記録部20に記録された運転シナリオに基づいた模擬視界映像を再生して、表示部40に表示させる。シナリオ再生部17は、訓練者の操作に応じて、操作入力部41から操作情報を入力し、再生速度を変更する。
【0062】
シナリオ記録部20に記録されている運転シナリオは、
図5に示すように、訓練者が確認動作を行う対象物等の情報を含むデータ構造W1を有する。データ構造W1は、運転シナリオの模擬視界映像と関連づけられている。
【0063】
データ構造W1には、距離と、その距離に配置される対象物IDと、対象物と、対象物の状態とが関連付けられて記録される。ここで、距離の単位は、kmである。
【0064】
具体的には、データ構造W1では、距離5kmにおいて、対象物ID:T1の3現示信号機が配置されており、この信号機の状態は青である。また、距離10kmにおいて、対象物ID:T2の3現示信号機が配置されており、この信号機の状態は赤である。また、距離15kmにおいて、対象物ID:T3の喚呼標識が配置されている。また、距離20kmにおいて、対象物ID:T4の踏切が配置されており、この踏切の状態は遮断である。更に、距離20kmにおいて、対象物ID:T5の自動車が配置されており、この自動車の状態は踏切内である。
【0065】
評価部12は、シナリオ再生部17が出力するデータ構造W1を入力して、鉄道車両の位置と、対象物等との間の距離に基づいて、視線の位置、音声である喚呼及び指差動作の評価を行う。
【0066】
評価基準変更部14は、模擬運転状況である鉄道車両の走行速度に応じて、各対象物等に対して、評価部12が使用する評価基準を変更する。評価基準変更部14が評価基準を変更するタイミングは、対象物と鉄道車両との位置との間の距離が所定の距離となった時点とすることができる。ここで、評価基準を変更するタイミングは、鉄道車両が対象物に対して開始距離よりも遠い位置になるように設定されることが好ましい。
【0067】
ここで、鉄道車両が、距離5kmの位置に配置された対象物ID:T1に近づいた時の走行速度を時速80kmであるとする。
【0068】
距離5kmの位置に配置された対象物ID:T1の3現示信号機に対しては、車両の走行速度時速80kmに応じて、評価基準である開始距離が0.6kmに変更される。そこで、評価部12は、鉄道車両の位置が、対象物ID:T1の3現示信号機に対して開始距離以下に近づいた後に、具体的には4.4kmになってから評価を開始する。
【0069】
評価部12は、鉄道車両の位置が開始距離である距離4.4kmになった時点で最初の評価を行う。評価部12には、視点検知部30から訓練者のディスプレイ40aにおける視点の位置(x1,y1)が入力される。また、評価部12には、シナリオ再生部17からディスプレイ40aにおける対象物ID:T1の3現示信号機の位置(tx1,ty1)が入力される。ここで、視点の位置(x1,y1)と3現示信号機の位置(tx1,ty1)とは、同じ座標系上の位置である。次に、評価部12は、視点の位置(x1,y1)と3現示信号機の位置(tx1,ty1)との間の距離が、所定の閾値以下であるかを判断する。ここでは、求められた距離が、所定の閾値よりも大きかったので、訓練者が対象物に対して正しく視線を向けたとは判断されない。
【0070】
記録処理部13は、評価部12の評価結果を訓練結果記録部23に記録する。
図6に、訓練結果記録部23に記録される運転シナリオと関連づけられており評価部12が評価した結果のデータ構造W2を示す。距離4.4kmでは、訓練者が対象物に対して正しく視線を向けたとは判断されないので、評価結果のフラグとして、視点の位置には、フラグLが記録される。
【0071】
次に、評価部12は、音声認識部31が音声を認識して文字列化した文字列と、文字列記録部22に記録された参照文字列との一致度を判断する。評価部12は、文字列記録部22に記録された訓練者が確認動作を行う対象物等に関連付けられた参照文字列を含むデータ構造W3を読み出す。データ構造W3は、距離と、その距離に配置される対象物IDと、この対象物IDに対する喚呼IDと、この喚呼IDに対する参照文字列とが関連付けて記録される。ここで、距離の単位は、kmである。
【0072】
評価部12は、音声認識部31が認識した文字列と、対象物ID:T1と関連付けられた喚呼IDの参照文字列「だいいちへいそくしんこう」との一致度が、所定の一致度以上であるかを判断する。ここでは、訓練者が喚呼を発言していないので、入力された文字列がないため、訓練者が正しい喚呼を発言したとは判断されない。また、訓練者が喚呼を発言していないので、喚呼の音量も記録されない。
【0073】
記録処理部13は、評価部12の評価結果を訓練結果記録部23に記録する。
【0074】
次に、評価部12は、検出した手及び腕の移動量が、所定の閾値よりも大きいかを判断する。ここでは、訓練者が指差動作を行っていないので、指差動作が行われたとは判断されない。
【0075】
評価部12は、鉄道車両の位置が開始距離以下になった後、対象物の位置を通過するまで、所定の距離毎に上述した評価を繰り返す。本実施形態、評価部12は、距離が0.1km変化する毎に評価を行う。なお、本実施形態では、説明のため距離の変化量を0.1kmとしたが、距離の変化量は0.1kmには限られない。例えば、距離の変化量を0.1kmよりも小さくして、精度の良い評価を行っても良い。
【0076】
図6に示す例では、鉄道車両の位置が距離4.6kmになった時点の評価において、視点の位置(x3,y3)と3現示信号機の位置(tx3,ty3)との間の距離が、所定の閾値以下となったので、訓練者が対象物に対して正しく視線を向けたと判断される。また、音声認識部31が認識した文字列と、対象物ID:T1と関連付けられた喚呼IDの参照文字列「だいいちへいそくしんこう」との一致度が、所定の一致度以上となったので、訓練者が正しい喚呼を発言したと判断される。また、訓練者の喚呼の音量が記録される。更に、評価部12が検出した手及び腕の移動量が、所定の閾値よりも大きいので、訓練者が指差動作を行ったと判断される。なお、評価部12は、訓練者の喚呼の音量に対して評価を行っても良い。
【0077】
記録処理部13は、評価部12の評価結果を訓練結果記録部23に記録する。データ構造W2には、距離4.6kmにおいて、喚呼が認識された文字列「だいいちへいそくしんこう」が記録され、喚呼の音量40が記録され、また、評価結果のフラグとして、視点の位置及び喚呼及び指差に対してフラグHが記録される。
【0078】
訓練者は、距離4.6kmにおいて確認動作を行った後には、更なる確認動作をしなかったので、その評価結果が、データ構造W2に記録される。
【0079】
上述した説明では、訓練者が対象物に対して視線を向ける動作、喚呼及び指差動作を同じタイミングで行っていたので、評価部12は、各確認動作の評価を距離4.6kmにおいて処理していた。例えば、訓練者が各確認動作を別々のタイミングに行っている場合には、即ち鉄道車両が対象物等に対して異なる位置で訓練者が各確認動作を行う場合には、評価部12は、各確認動作を別々のタイミングで評価する。
【0080】
そして、訓練者が各確認動作を実行しているものの全ての確認動作が所定の時間内に行われていない場合には、即ち鉄道車両が対象物等に対して所定の距離の範囲で訓練者が各確認動作を行わない場合には、評価部12は、訓練者が各確認動作を正しく行わなかったと判断するようにしても良い。
【0081】
次に、評価基準変更部14は、模擬運転状況である鉄道車両の走行速度に応じて、距離10.0kmに配置された次の対象物ID:T2に対して、評価部12が使用する評価基準を変更する。
【0082】
ここで、鉄道車両が、距離10.0kmの位置に配置された対象物ID:T2に近づいた時の走行速度を時速45kmであるとする。
【0083】
距離10.0kmの位置に配置された対象物ID:T2の3現示信号機に対しては、車両速度45kmに応じて、評価基準である開始距離が0.4kmに変更される。そこで、評価部12は、鉄道車両の位置が、対象物ID:T2の3現示信号機に対して開始距離以下に近づいた後に、具体的には9.6kmになってから評価を開始する。
【0084】
評価部12は、鉄道車両の位置が開始距離以下になった後、対象物の位置を通過するまで、所定の距離毎に、上述した評価を繰り返す。具体的には、評価部12は、距離が0.1km変化する毎に評価を行う。
【0085】
図6に示す例では、鉄道車両の位置が距離10.0kmになった時点の評価において、評価部12が検出した手及び腕の移動量が、所定の閾値よりも大きいので、訓練者が指差動作を行ったと判断される。また、ディスプレイ40aにおける視点の位置(x5,y5)と3現示信号機の位置(tx5,ty5)との間の距離が、所定の閾値以下となったので、訓練者が対象物に対して正しく視線を向けたと判断される。しかし、音声認識部31が認識した文字列と、対象物ID:T2と関連付けられた喚呼IDの参照文字列「だいにへいそくしんこう」との一致度が、所定の一致度よりも低いので、訓練者が正しい喚呼を発言したとは判断されない。ここで、音声認識部31が訓練者が発言する音声を認識した場合には、音声認識部31が認識した文字列及び喚呼の音量が記録されるが、
図6に示す例では、訓練者は発言していていないので、共に記録されていない。
【0086】
記録処理部13は、評価部12の評価結果を訓練結果記録部23に記録する。データ構造W2には、距離10.0kmにおいて、評価結果のフラグとして、指差及び視点の位置に対してフラグHが記録され、喚呼に対してはフラグLが記録される。喚呼は認識されていないので、文字列及び喚呼の音量は記録されない。
【0087】
鉄道シミュレータ10は、更に、運転シナリオに基づいて模擬運転をシミュレートし続けて、データ構造W1に記録される対象物ID:T3〜T5に対しても、訓練者の確認動作の評価を続ける。
【0088】
上述した鉄道シミュレータ10の動作例において、評価基準変更部14は、鉄道車両の走行速度と共に、鉄道車両の位置と対象物である信号機との間の距離に基づいて、確認動作の評価基準を変更しても良い。本明細書では、模擬運転状況には鉄道車両の位置と対象物である信号機との間の距離も含まれる。
【0089】
ディスプレイ40a上に表示される信号機の移動速度は、鉄道車両の位置と対象物である信号機との間の距離が離れている時には遅く、鉄道車両の位置と対象物である信号機との間の距離が近い時には速くなる。これは、シナリオ再生部17が、鉄道車両の位置と対象物である信号機との間の距離に基づいて、信号機の模擬視界映像を描写することによる。訓練者が信号機に対する確認動作を行う際の余裕度は、ディスプレイ40a上に表示される信号機の移動速度に応じて異なることが考えられる。そこで、ディスプレイ40a上に表示される信号機の移動速度に基づいて、信号機に対する確認動作の評価基準を変更することにより、訓練者が確認動作を行う際の余裕度に応じて、確認動作の評価基準を変更するものである。
【0090】
次に、鉄道シミュレータ10の再生箇所検出部15の動作例を、図を参照して、以下に説明する。
【0091】
上述した鉄道シミュレータ10の模擬運転が行われた結果、訓練結果記録部23には、
図6に示すデータ構造W2が記録される。
【0092】
再生箇所検出部15は、各訓練者に対して、訓練者のID及び訓練結果記録部23に記録された評価した結果に基づいて、運転シナリオの再生すべき再生箇所を検出する。再生箇所検出部15は、評価部12が検知した指差動作、又は音声認識部31が音声を認識して文字列化した文字列、又は視点検知部30が検知した視点の位置について、訓練者が正しい動作を行ったと評価されなかった対象物等の部分の運転シナリオを検出する。
【0093】
再生箇所検出部15は、
図8のステップS10〜S16の間で、各対象物IDに対して、評価結果のフラグを調べて、フラグHの有無を判断する。
【0094】
具体的には、まず、対象物ID:T1について、ステップS12及びS14の処理が行われる。
【0095】
ステップS12において、再生箇所検出部15は、視点の位置、喚呼及び指差の評価結果のフラグを調べて、フラグHの有無を調べる。
図6に示すデータ構造W2では、視点の位置、喚呼及び指差それぞれについて、距離4.6kmでフラグHが記録されている。
【0096】
次に、ステップS14において、視線の位置、喚呼、指差の内の何れかの評価結果にフラグHが無ければ、この対象物IDを再生すべき再生箇所であると判断する。ステップS12で調べた結果、視線の位置、喚呼及び指差それぞれの評価結果にフラグHが含まれているので、再生箇所検出部15は、訓練者が正しい動作を行ったと評価されなかった対象物の部分はないと評価する。
【0097】
従って、再生箇所検出部15は、対象物ID:T1に対しては、運転シナリオの再生すべき再生箇所は検出しない。
【0098】
次に、対象物ID:T2に対して、ステップS12及びS14の処理が行われる。
【0099】
まず、ステップS12において、再生箇所検出部15は、視点の位置、喚呼及び指差の評価結果のフラグを調べて、フラグHの有無を調べる。視点の位置及び指差それぞれの評価結果に対しては、距離10.0kmでフラグHが記録されている。しかし、喚呼の評価結果に対しては、フラグHは記録されていない。
【0100】
次に、ステップS14において、視線の位置、喚呼及び指差の内の何れかの評価結果にフラグHが無ければ、この対象物IDを再生すべき再生箇所であると判断する。ステップS12で調べた結果、喚呼についての評価結果にはフラグHがないので、再生箇所検出部15は、この対象物ID:T2を再生すべき再生箇所であると判断する。
【0101】
従って、再生箇所検出部15は、検出した運転シナリオの再生すべき再生箇所である対象物ID:T2を、シナリオ再生部17及び視点再生部16に出力する。
【0102】
同様にして、残りの対象物IDについても評価を続ける。
【0103】
再生箇所検出部15から、運転シナリオの再生すべき再生箇所である対象物ID:T2を入力したシナリオ再生部17は、対象物ID:T2と関連付けられている模擬視界映像を表示部40に出力する。視点再生部16は、訓練結果記録部23に記録されているデータ構造W2を、再生箇所検出部15を介して入力して、記録されている視点の位置及び認識された音声の文字列を、表示部40に出力する。表示部40は、入力した視点の位置及び認識された音声の文字列を、模擬視界映像と共にディスプレイ40aに表示する。
【0104】
訓練者は、自分の行った訓練の映像がディスプレイ40a上に再生されるのを見て、確認動作の誤りを把握することができる。また、訓練者は、再生される運転シナリオの部分を使用して、模擬運転を再度行って、確認動作を正しく行えるように訓練しても良い。
【0105】
次に、鉄道シミュレータ10の他の動作例を、以下に説明する。
【0106】
鉄道シミュレータ10は、訓練者の視点の位置が、視線が向けられる対象物から所定の距離以上離れた状態で、所定の時間が経過した場合、対象物を変化させることもできる。
【0107】
更に、この鉄道シミュレータ10の動作例を、
図9を参照して、以下に説明する。
【0108】
まず、ステップS30において、評価部12は、訓練者のID及び訓練結果記録部23に記録された評価した結果であるデータ構造W2に基づいて、訓練者のディスプレイ40a上の視点の位置が、視線が向けられる信号機から所定の距離以上離れている時間を計測する。
【0109】
次に、ステップS32において、評価部12は、計測した時間が所定の時間を経過した場合、シナリオ再生部17に対して信号機の現示を変化させる。シナリオ再生部17は、信号機の現示を、青から赤又は黄に変化させる。
【0110】
データ構造のW2では、対象物ID:T2の信号機の確認動作において、訓練者は、距離4.6kmにおいて確認動作をした後には、対象物の位置を通過するまで、更なる確認動作を行っていない。そのため、視点の位置は、視線が向けられる信号機から所定の距離以上離れた状態が続いている。
【0111】
本実施形態によれば、このような場合に、信号機の現示を変化させて、訓練者に対して常に信号機に注意を払うことを身につける訓練を行うことができる。
【0112】
通常、自動車の運転を行う場合には、運転者は、常に信号機に注意を払って運転するものである。一方、軌道上を走行する鉄道車両を運転する運転士の場合には、視線を信号機に向ける確認動作は、指差及び喚呼の時には同時に信号機に対して視線を向けるものの、指差及び喚呼を行った後には、視線を向けることをおろそかにする場合がある。そこで、鉄道シミュレータ10は、上述した構成により、訓練者に対して常に信号機に注意を払う訓練をさせて、確認動作を確実に学習させることができる。
【0113】
上述した本実施形態の鉄道シミュレータ10によれば、鉄道の模擬運転を訓練する訓練者が行う確認動作の評価基準を、鉄道車両の模擬運転状況に応じて変更するので、訓練者が確認動作を行う際の余裕度に応じて、訓練者が行う確認動作を評価できる。
【0114】
本発明では、上述した実施形態の鉄道シミュレータ及びシミュレートする方法は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。
【0115】
例えば、上述した実施形態では、訓練者が行う指差動作及び視点の位置、並びに訓練者が発言する音声が、検知又は認識されて評価されていたが、これらの内の少なくとも何れか1つの確認動作を評価するものであれば良い。また、訓練者が行う指差動作及び視点の位置、並びに訓練者が発言する音声の他の確認動作を評価するようにしても良い。
【0116】
また、訓練者が模擬運転を行っている様子をビデオカメラで撮像して、訓練結果記録部に記録しても良い。そして、再生箇所検出部が、運転シナリオの再生すべき再生箇所を検出した際には、運転シナリオの再生と共に、撮像したビデオカメラの映像を再生して表示するようにしても良い。