(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フォトンが前記光検出部に入射した場合、前記光検出部からの出力の強度ピーク値を与える時刻から、この強度ピーク値の37%に前記光検出部からの出力がなる時刻までの期間で規定される回復時間が、10ns以下であることを特徴とする請求項1に記載のフォトダイオードアレイ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態に係るフォトダイオードアレイについて説明する。なお、同一要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0019】
図1は、フォトダイオードアレイの斜視図、
図2は、フォトダイオードアレイのII−II矢印縦断面図である。
【0020】
このフォトダイオードアレイは、Siからなる半導体基板の表面側に受光領域を備えている。受光領域は、複数の光検出部(光検出チャンネル)10を含んでおり、これらの光検出部10はマトリックス状に二次元配置されている。なお、
図1では、9行9列の光検出部10が配置されており、これらは受光領域を構成しているが、光検出部10の数は、更に多くても、少なくてもよく、また、一次元配置される構成とすることも可能である。
【0021】
基板表面には、格子状にパターニングされた信号読出用の配線パターン(上面電極)3Cが配置されている。なお、
図1では、内部構造が分かるように、
図2に示す絶縁層17の記載が省略されている。格子状の配線パターン3Cの開口内は光検出領域を規定している。光検出領域内には、光検出部10が配置されており、光検出部10の出力は配線パターン3Cに接続されている。
【0022】
基板裏面上には、下面電極20が設けられている。したがって、上面電極である配線パターン3Cと、下面電極20との間に光検出部10の駆動電圧を印加すれば、その光検出出力を配線パターン3Cから取り出すことができる。
【0023】
pn接合においては、これを構成するp型の半導体領域がアノードを構成し、n型の半導体領域がカソードを構成する。p型の半導体領域の電位が、n型の半導体領域の電位よりも高くなるようにフォトダイオードに駆動電圧を印加した場合、これは順方向バイアス電圧であり、これとは逆の駆動電圧をフォトダイオードに印加した場合、これは逆方向バイアス電圧である。
【0024】
駆動電圧は、光検出部10における内部のpn接合によって構成されるフォトダイオードに印加される逆方向バイアス電圧である。この駆動電圧を、フォトダイオードのブレークダウン電圧以上に設定した場合には、フォトダイオードにおいて、アバランシェ降伏が生じ、フォトダイオードがガイガーモードで動作することになる。すなわち、各フォトダイオードは、アバランシェフォトダイオード(APD)である。なお、フォトダイオードに順方向バイアス電圧を印加した場合においても、フォトダイオードは、光検出機能を有する。
【0025】
基板表面には、フォトダイオードの一端に電気的に接続された抵抗部(クエンチング抵抗)4が、配置されている。抵抗部4の一方端は、この直下に位置する別材料のコンタクト電極を介して、フォトダイオードの一端に電気的に接続されるコンタクト電極4Aを構成しており、他方端は、信号読出用の配線パターン3Cに接触し、これに電気的に接続されるコンタクト電極4Cを構成している。すなわち、各光検出部10における抵抗部4は、フォトダイオードに接続されるコンタクト電極4A、コンタクト電極4Aに連続して曲線的に延びた抵抗層4B、及び、抵抗層4Bの終端部に連続するコンタクト電極4Cを備えている。なお、コンタクト電極4A、抵抗層4B、及び、コンタクト電極4Cは、同一の抵抗材料の抵抗層からなり、これらは連続している。
【0026】
このように、抵抗部4は、フォトダイオードとの電気的な接続点から、曲線的に延びて、信号読出用の配線パターン3Cに接続されている。抵抗部4の抵抗値は、その長さに比例するため、抵抗部4が曲線的に延びることにより、その抵抗値を増加させることができる。また、抵抗部4が存在することにより、その下に存在する半導体領域の表面準位を安定させ、出力を安定させることができる。
【0027】
図1に示す例では、配線パターン3Cは、個々の光検出部10を囲む形状を含んでいるが、配線パターン3Cの形状はこれに限られるものではなく、例えば、2個以上の光検出部10を囲む形状としたり、一列以上の光検出部10を囲む形状とするとすることができる(
図14参照)。なお、
図14においては、複数列の光検出部を1つのグループとして、これらの間に配線パターン3Cの配線が延びている。
【0028】
また、
図14に示すように、個々の光検出部において、半導体領域14のエッジを覆うように抵抗層4Bを配置することで、半導体領域14の表面準位をより安定させることができる。詳説すれば、半導体領域14を厚み方向からみた輪郭上に、抵抗層4Bが配置されている。
【0029】
光検出部10に含まれるフォトダイオードの一端は、原則的には全ての位置において同電位の配線パターン3Cに接続され、他方端は、基板電位を与える下面電極20に接続されている。すなわち、全ての光検出部10におけるフォトダイオードは並列接続されている。
【0030】
なお、下面電極20に代えて、基板表面側から半導体領域12に到達する孔を空け、孔の内面を絶縁膜で被覆した後に、半導体領域12に接触する貫通電極を形成することも可能である。しかしながら、光検出部10の開口率を向上させるためには、貫通電極よりも下面電極20の方が好ましい。
【0031】
図1に示す例では、個々のコンタクト電極4Aは、配線パターン3Cによって囲まれた個々の光検出領域の中央部に位置している。そして、抵抗部4の二次元パターンはコンタクト電極4Aの周囲を回転するように延びた形状を含んでいる。コンタクト電極4Aを各光検出領域の中央部に配置し、コンタクト電極4Aの周囲を回転させるように、抵抗層4Bを配置することで、抵抗層4Bの長さを長く設定することができる。
【0032】
図2に示すように、個々の光検出部10は、第1導電型(n型)の第1半導体領域(層)12と、第1半導体領域12とpn接合を構成する第2導電型(p型)の第2半導体領域(半導体層13及び高不純物濃度領域14)を備えている。
【0033】
この第2半導体領域における高不純物濃度領域(半導体領域)14には、第1コンタクト電極3Aが接触している。高不純物濃度領域14は、不純物を半導体層13内に拡散することによって形成される拡散領域(半導体領域)であり、半導体層13よりも高い不純物濃度を有している。本例(タイプ1)では、n型の第1半導体領域12上に、p型の半導体層13が形成され、半導体層13の表面側に、p型の高濃度不純物領域14が形成されている。したがって、フォトダイオードを構成するpn接合は、第1半導体領域12と半導体層13との間に形成されている。
【0034】
なお、半導体基板の層構造としては、上記とは導電型を反転させた構造を採用することもできる。すなわち、(タイプ2)の構造は、p型の第1半導体領域12上に、n型の半導体層13を形成し、半導体層13の表面側に、n型の高濃度不純物領域14が形成して形成される。
【0035】
また、pn接合界面を、表面層側において形成することもできる。この場合、(タイプ3)の構造は、n型の第1半導体領域12上に、n型の半導体層13が形成され、半導体層13の表面側に、p型の高濃度不純物領域14が形成される構造となる。なお、この構造の場合には、pn接合は、半導体層13と半導体領域14との界面において形成される。
【0036】
もちろん、かかる構造においても、導電型を反転させることができる。すなわち、(タイプ4)の構造は、p型の第1半導体領域12上に、p型の半導体層13が形成され、半導体層13の表面側に、n型の高濃度不純物領域14が形成される構造となる。
【0037】
なお、半導体基板の構造として、
図13に示す構造も採用することができる。
【0038】
図13は、基板の構造を変更したフォトダイオードアレイの縦断面図である。
【0039】
この構造は、上述のタイプ1〜タイプ4の構造において、半導体領域14の直下に半導体領域15を配置した点が異なり、その他の点は、同一である。半導体領域15は、半導体領域14と同一の導電型、又は、異なる導電型を有している。同一の導電型を有するものを(タイプ1S)〜(タイプ4S)とし、異なる導電型を有するものを(タイプ1D)〜(タイプ4D)とする。なお、半導体領域15における不純物濃度は、半導体領域14の不純物濃度よりも小さい。また、p型の不純物としては、B(ボロン)を採用することができ、n型の不純物としてはP(リン)又はAs(ヒ素)を採用することができる。
【0040】
なお、上述の半導体構造における各層の導電型、不純物濃度及び厚みの好適な範囲は以下の通りである。
(タイプ1)
半導体領域12(導電型/不純物濃度/厚み)(n型/5×10
11〜1×10
20cm
−3/30〜700μm)
半導体領域13(導電型/不純物濃度/厚み)(p型/1×10
14〜1×10
17cm
−3/2〜50μm)
半導体領域14(導電型/不純物濃度/厚み)(p型/1×10
18〜1×10
20cm
−3/10〜1000nm)
(タイプ2)
半導体領域12(導電型/不純物濃度/厚み)(p型/5×10
11〜1×10
20cm
−3/30〜700μm)
半導体領域13(導電型/不純物濃度/厚み)(n型/1×10
14〜1×10
17cm
−3/2〜50μm)
半導体領域14(導電型/不純物濃度/厚み)(n型/1×10
18〜1×10
20cm
−3/10〜1000nm)
(タイプ3)
半導体領域12(導電型/不純物濃度/厚み)(n型/5×10
11〜1×10
20cm
−3/30〜700μm)
半導体領域13(導電型/不純物濃度/厚み)(n型/1×10
14〜1×10
17cm
−3/2〜50μm)
半導体領域14(導電型/不純物濃度/厚み)(p型/1×10
18〜1×10
20cm
−3/10〜1000nm)
(タイプ4)
半導体領域12(導電型/不純物濃度/厚み)(p型/5×10
11〜1×10
20cm
−3/30〜700μm)
半導体領域13(導電型/不純物濃度/厚み)(p型/1×10
14〜1×10
17cm
−3/2〜50μm)
半導体領域14(導電型/不純物濃度/厚み)(n型/1×10
18〜1×10
20cm
−3/10〜1000nm)
(タイプ1S)
半導体領域12、13、14のパラメータは、タイプ1と同一。
半導体領域15(導電型/不純物濃度/厚み)(p型/1×10
14〜1×10
17cm
−3/2〜50μm)
(タイプ2S)
半導体領域12、13、14のパラメータは、タイプ2と同一。
半導体領域15(導電型/不純物濃度/厚み)(n型/1×10
14〜1×10
17cm
−3/2〜50μm)
(タイプ3S)
半導体領域12、13、14のパラメータは、タイプ3と同一。
半導体領域15(導電型/不純物濃度/厚み)(p型/1×10
14〜1×10
17cm
−3/2〜50μm)
(タイプ4S)
半導体領域12、13、14のパラメータは、タイプ4と同一。
半導体領域15(導電型/不純物濃度/厚み)(n型/1×10
14〜1×10
17cm
−3/2〜50μm)
(タイプ1D)
半導体領域12、13、14のパラメータは、タイプ1と同一。
半導体領域15(導電型/不純物濃度/厚み)(n型/1×10
14〜1×10
17cm
−3/2〜50μm)
(タイプ2D)
半導体領域12、13、14のパラメータは、タイプ2と同一。
半導体領域15(導電型/不純物濃度/厚み)(p型/1×10
14〜1×10
17cm
−3/2〜50μm)
(タイプ3D)
半導体領域12、13、14のパラメータは、タイプ3と同一。
半導体領域15(導電型/不純物濃度/厚み)(n型/1×10
14〜1×10
17cm
−3/2〜50μm)
(タイプ4D)
半導体領域12、13、14のパラメータは、タイプ4と同一。
半導体領域15(導電型/不純物濃度/厚み)(p型/1×10
14〜1×10
17cm
−3/2〜50μm)
【0041】
なお、上述の例では、最下部の半導体領域12は、厚みの大きな半導体基板を構成するものであるが、光検出部10は、この下に更に半導体基板を備えていてもよく、この場合は、半導体領域12は、かかる付加的な半導体基板よりも薄い厚みを有することとなる。
【0042】
また、半導体領域13は、半導体領域12上にエピタキシャル成長法において形成することができるが、基板に対する不純物拡散又はイオン注入によって形成することとしてもよい。半導体領域14,15は、半導体領域13に対する不純物拡散又はイオン注入によって形成することができる。
【0043】
次に、
図1、
図2、
図13に示したコンタクト電極3A及び抵抗部4について、説明する。
【0044】
各光検出部10は、半導体基板の表面に形成された絶縁層16を備えている。半導体領域13及び半導体領域14の表面は、絶縁層16によって被覆されている。絶縁層16はコンタクトホールを有しており、コンタクトホール内にはコンタクト電極3Aが形成されている。本例におけるコンタクト電極3Aは、配線パターン3Cと同一材料からなり、同一工程によって、絶縁層16上に形成されるものである。コンタクト電極3A及び配線パターン3Cは、金属からなり、具体的には、アルミニウム(Al)である。コンタクト電極3A及び配線パターン3Cの材料として、他の低抵抗金属材料(Au、Ag、Cu)を用いることができ、2層以上の構造や合金を採用することもできる。合金としては、例えば、Al、Ag、Au、Ge、Ni、Cr及びTiなどの金属元素のうちの幾つかを含む化合物を用いることができる。
【0045】
下部の絶縁層16及び第1コンタクト電極3A上には、上部の絶縁層17が形成されている。絶縁層16,17は、SiO
2やシリコン窒化物(SiNx)などの耐熱性の高い無機絶縁体からなる。絶縁層17は、第1コンタクト電極3Aと同軸配置されるコンタクトホールを有しており、このコンタクトホール内に、第2コンタクト電極4Aが形成されている。したがって、第1コンタクト電極3Aと第2コンタクト電極4Aとは、同軸配置されている。
【0046】
第2コンタクト電極4Aは、第1コンタクト電極3Aとは異なる材料を含んでいる。また、第2コンタクト電極4Aは、抵抗部4の一部であり、第1コンタクト電極3Aよりも高い抵抗率を有する。第2コンタクト電極4Aは、第1コンタクト電極3Aに重なる位置に配置されており、第1コンタクト電極3Aに接触している。第2コンタクト電極4Aは、抵抗層4Bが連続している。
【0047】
第2コンタクト電極4Aを第1コンタクト電極3Aに重なる位置に同軸配置することにより、抵抗層4Bと第1コンタクト電極3Aとの接続に要するスペースを最小化することができる。もちろん、必然的に、第1コンタクト電極3Aと第2コンタクト電極4Aとは同一平面上ではなく、高さ方向の位置が異なることとなり、第2コンタクト電極4Aから抵抗層4Bが連続して延びることとなる。これにより、光検出部10内における配線を省略することができ、光検出部の開口率を、著しく増加させることが可能となる。
【0048】
なお、抵抗層4Bの終端にはコンタクト電極4Cが位置している。コンタクト電極4Cも抵抗部4の一部である。コンタクト電極4Cの直下には、絶縁層16上に形成された配線パターン3Cが位置しており、コンタクト電極4Cは配線パターン3Cに接触し、接続されている。
【0049】
フォトンの入射によりpn接合において発生したキャリアは、第1コンタクト電極3A及び第2コンタクト電極4Aを介して、抵抗層4Bに流れ、抵抗層4Bにコンタクト電極4Cを介して接続された配線パターン3Cを介して、外部に取り出される。
【0050】
コンタクト電極4A、4C及び抵抗層4Bは、同一の抵抗材料からなるが、これらは異なる材料からなることとしてもよい。半導体単独、又は、半導体及び金属を適当な比率で含有する合金又は化合物を抵抗材料として用いることができる。例えば、抵抗体としては、SiCrの他、NiCr、TaNi、FeCrなどが挙げられる。
【0051】
もちろん、コンタクト電極4A、4C及び抵抗層4Bは、SiCrからなることが好ましい。SiCrは、光透過率が高いため、光検出部10内において、抵抗層が存在していても、入射したフォトンが抵抗層4Bを透過するため、実効的な開口率を増加させることができる。なお、SiCrは、抵抗値のウエハ面内ばらつきが小さく、1mm程度であれば、容易に細くすることが可能である。また、シート抵を高くすることができる。ポリシリコンのシート抵抗は1〜30(kΩ/sq.)であるが、SiCrは1〜50(kΩ/sq.)である。すなわち、SiCrを用いれば、小さいサイズで高抵抗値を実現することができる。
【0052】
抵抗層4Bの厚みは、3nm以上50nm以下であることが好ましい。下限値以上の場合、抵抗層の均一性を確保することができ、上限値以下の場合には、十分にフォトンを透過させることができる。
【0053】
図3は、抵抗層を構成するSiCrへの入射光の波長(nm)と透過率(%)の関係を示すグラフである。このSiCr層の厚みは、20nmである。
【0054】
SiCrは、波長400nm以上の光に対して、80%以上の透過率を有する。波長400nm未満の光は遮断する傾向がある。同グラフによれば、波長400nm以上500nm未満の光に対して、小さなスペクトルピークが示されている。これは500nm以上の光をフィルターにより遮断した場合においても、波長400nm以上500nm未満の光は、選択的に透過させることができることを意味している。このようなフィルターを組み合わせなければ、波長400nm以上、少なくとも波長1200nmまでの光を、80%以上の透過率で透過させることができる。
【0055】
上述のフォトダイオードアレイを製造した。
【0056】
製造条件は、以下の通りである。
(1)構造(
図1、2の構造における数値例)
・半導体領域12:
【0057】
導電型:n型(不純物:Sb(アンチモン))
【0058】
不純物濃度:5.0×10
11cm
−3
【0060】
導電型:p型(不純物:B(ボロン))
【0061】
不純物濃度:1.0×10
14cm
−3
【0063】
導電型:p型(不純物:B(ボロン))
【0064】
不純物濃度:1.0×10
18cm
−3
【0065】
厚み:1000nm
・絶縁層16:SiO
2(厚み:1000nm)
・絶縁層17:SiO
2(厚み:2000nm)
・コンタクト電極3A:(アルミニウム(Al))
【0066】
コンタクトホール径:2.0μm
・配線パターン3C:(アルミニウム(Al))
【0068】
配線パターン3Cの幅W0:1.0〜3.0μm
【0069】
1つの光検出部10の配線パターン3Cで囲まれた領域(光検出領域)の面積S:100〜2500μm
2
【0070】
隣接する光検出部10の中心間の間隔X:50μm〜10μm
・抵抗部4:SiCr
(コンタクト電極4A)
【0071】
コンタクトホール径:1.0μm
(抵抗層4B)
【0073】
抵抗層4Bの幅W1:1.0〜3.0μm
【0074】
抵抗層4Bの長さL1:10〜50μm
【0075】
抵抗部4の抵抗値:200〜500kΩ
(コンタクト電極4C)
【0076】
コンタクトホール径:1.0μm
(2)製法条件
・半導体領域12:CZ法((001)Si半導体基板)
・半導体領域13:Siエピタキシャル成長法(原材料:気相の四塩化珪素(SiCl
4)、三塩化シラン(トリクロルシラン、SiHCl
3)、成長温度1200℃)
・半導体領域14:不純物の熱拡散法(不純物原材料:ジボラン(B
2H
6)、拡散温度1200℃)
・絶縁層16:(Si熱酸化法:酸化温度(1000℃))
・絶縁層17:(プラズマCVD法:原材料ガス(テトラエトキシシラン(TEOS)及び酸素ガス):成長温度(200℃))
・コンタクト電極3A及び配線パターン3C:蒸着法(原料:アルミニウム)
・抵抗部4:スパッタ法(ターゲット材料:SiCr)
【0077】
図4は、製造した光検出部10(隣接中心間の間隔X=50μm)の写真を示す図である。
【0078】
本例における構造のパラメータは、以下の通りである。なお、抵抗層4Bの長さは、その幅方向の中心線の長さである。
・配線パターン3Cの幅W0=2.0μm
・光検出領域の面積S=2025μm
2
・抵抗層4Bの幅W1=3.0μm
・抵抗層4Bの長さ(合計の長さ)L1=200μm
・抵抗部4の抵抗値=160kΩ
【0079】
抵抗層4Bの形状は、全体としては、格子状の配線パターン3Cの内側面に沿って、環状に形成されている。この構造では、抵抗層4Bは、第2コンタクト電極4Aの位置から、信号出力用のコンタクト電極4Cに至るまでの経路を2つ有している。すなわち、抵抗層4Bは、相対的な長さの短い抵抗層4B1と、相対的な長さの長い抵抗層4B2を有している。抵抗層4Bの抵抗値は、これらの長さの異なる抵抗層4B1と抵抗層4B2の合成抵抗で与えられる。
【0080】
格子状の配線パターン3Cの交点において、コンタクト電極4Cが配置されている。したがって、光検出領域の対角線上の4か所において、コンタクト電極4Cが位置しており、これらの対角線の交点が、光検出領域(光検出部)の中心(重心)Gとなる。隣接する光検出部10の中心G間の距離Xは50μmである。
【0081】
抵抗層4B1,4B2は、全体としては概ね矩形の環状を呈しているが、その角部における形状は、滑らかに屈曲している。抵抗層4B1,4B2の角部の外縁の曲率中心Oは、中心Gを通る上記の対角線上に位置しており、曲率半径Rは5.0μm、外縁の円弧の両端から曲率中心Oに向けて延びる2つの弦の成す角度θは、8°である。なお、曲率半径Rは、電界集中を避けるために、2〜10μmに設定され、角度θは、3〜14°に設定される。
【0082】
第2コンタクト電極4Aから取り出されたキャリアは、抵抗層4Bを介して、コンタクト電極4Cに至り、配線パターン3Cを介して、外部に取り出される。
【0083】
図5は、製造した光検出部10(隣接中心間の間隔X=25μm)の写真を示す図である。
【0084】
本例における構造のパラメータは、以下の通りである。
・配線パターン3Cの幅W0=1.5μm
・光検出領域の面積S=420μm
2
・抵抗層4Bの幅W1=3.0μm
・抵抗層4Bの長さL1=70μm
・抵抗部4の抵抗値=250kΩ
【0085】
抵抗層4Bの形状は、全体としては、格子状の配線パターン3Cの内側面に沿って、リングの一部が欠けた形状に形成されている。この構造では、抵抗層4Bは、第2コンタクト電極4Aの位置から、信号出力用のコンタクト電極4Cに至るまでの経路を1つ有している。
【0086】
格子状の配線パターン3Cの交点において、コンタクト電極4Cが配置されている。したがって、光検出領域の対角線上の4か所において、コンタクト電極4Cが位置しており、これらの対角線の交点が、光検出領域(光検出部)の中心(重心)Gとなる。横方向に隣接する光検出部10の中心G間の距離Xは25μmである。
【0087】
抵抗層4Bは、リング形状の一部を構成する3つの角部を有しているが、それぞれの角部における形状は、滑らかに屈曲している。抵抗層4Bの角部の外縁の曲率中心Oは、中心Gを通る上記の対角線上に位置しており、曲率半径Rは5.0μm、外縁の円弧の両端から曲率中心Oに向けて延びる2つの弦の成す角度θは、8°である。なお、曲率半径Rは、電界集中を避けるためには、2〜10μmに設定され、角度θは、6〜37°に設定される。
【0088】
第2コンタクト電極4Aから取り出されたキャリアは、抵抗層4Bを介して、コンタクト電極4Cに至り、配線パターン3Cを介して、外部に取り出される。
【0089】
図6は、製造した光検出部10(隣接中心間の間隔X=20μm)の写真を示す図である。
【0090】
本例における構造のパラメータは、以下の通りである。
・配線パターン3Cの幅W0=1.5μm
・光検出領域の面積S=240μm
2
・抵抗層4Bの幅W1=2.0μm
・抵抗層4Bの長さL1=55μm
・抵抗部4の抵抗値=300kΩ
【0091】
光検出部の基本的な構造は、
図5に示したものと同一であるので、重複する説明は省略する。隣接する光検出部10の中心G間の距離Xは20μmであり、相違点としては、
図6に示すものの場合、抵抗層4Bの幅W1に対して、コンタクト電極4Aが、光検出領域の内側へ向けて突出する割合が、
図5のものよりも大きくなっている。なお、いずれの形態の光検出部においても、コンタクト電極4A、4Cの中心は凹んでいる。コンタクト電極4Cに隣接する配線パターン3Cと、コンタクト電極4Aの中心位置との間の距離は、この配線パターン3Cから抵抗層4Bの内側のエッジラインまでの距離よりも大きい。
【0092】
抵抗層4Bは、リング形状の一部を構成する3つの角部を有しているが、それぞれの角部における形状は、滑らかに屈曲している。抵抗層4Bの角部の外縁の曲率中心Oは、中心Gを通る上記の対角線上に位置しており、曲率半径Rは3.0μm、外縁の円弧の両端から曲率中心Oに向けて延びる2つの弦の成す角度θは、13°である。なお、曲率半径Rは、電界集中を避けるためには、2〜5μmに設定され、角度θは、8〜23°に設定される。
【0093】
第2コンタクト電極4Aから取り出されたキャリアは、抵抗層4Bを介して、コンタクト電極4Cに至り、配線パターン3Cを介して、外部に取り出される。
【0094】
図7は、製造した光検出部(隣接中心間の間隔X=15μm:タイプA)の写真を示す図である。タイプAの光検出部では、コンタクト電極4Aは、光検出領域の中心に配置され、抵抗層4Bは、中心から右回転しながら延びる正方向回転領域4Baと、正方向回転領域4Baに連続して左回転しながら延びる逆方向回転領域4Bbとを備えている。なお、ここでは、右回転を正方向回転とする。もちろん、左方向回転を正方向回転とする構造のものを製造することも可能である。
【0095】
本例における構造のパラメータは、以下の通りである。
・配線パターン3Cの幅W0=1.2μm
・光検出領域の面積S=132μm
2
・抵抗層4Bの幅W1=1.0μm
・抵抗層4Bの長さL1=78μm
・抵抗部4の抵抗値=600kΩ
【0096】
格子状の配線パターン3Cの交点において、コンタクト電極4Cが配置され、光検出領域の対角線上の4か所において、コンタクト電極4Cが位置しており、これらの対角線の交点が、光検出領域(光検出部)の中心(重心)Gとなる。隣接する光検出部10の中心G間の距離Xは15μmである。
【0097】
上述のように、抵抗層4Bは、正方向回転領域4Baと逆方向回転領域4Bbとを備えている。この構造では、抵抗層4Bは、第2コンタクト電極4Aの位置から、信号出力用のコンタクト電極4Cに至るまでの経路を1つ有しているが、回転方向の異なる各領域4Ba,4Bbによって形成される中心Gにおける磁場の方向は逆となる。すなわち、検出された電子が進行することで形成される磁場の影響は、中心位置において相殺される構造を有しており、自己形成磁場による検出出力への影響が低減されている。
【0098】
正方向回転領域4Baは、緩やかに屈曲する3つの角部を有しているが、それぞれの角部の外縁の曲率中心Oa1,Oa2,Oa3は、中心Gを通る上記の対角線上に位置しており、それぞれの曲率半径Raは2.0μm、それぞれの外縁の円弧の両端からそれぞれの曲率中心Oa1,Oa2,Oa3に向けて延びる2つの弦の成す角度θaは、19°である。なお、正方向回転領域4Baに関して、角部の曲率半径Raは、電界集中を避けるためには、2〜5μmに設定され、角度θaは、19〜58°に設定される。
【0099】
逆方向回転領域4Bbも、緩やかに屈曲する3つの角部を有しており、それぞれの角部は向きを除いて同一の形状を有している。1つの角度について説明すると、角部の外縁の曲率中心Obは、中心Gを通る上記の対角線上に位置しており、その曲率半径Rbは2.0μm、外縁の円弧の両端からそれぞれの曲率中心Obに向けて延びる2つの弦の成す角度θbは、8°である。なお、逆方向回転領域4Bbに関して、角部の曲率半径Rbは、電界集中を避けるためには、2〜5μmに設定され、角度θbは、8〜23°に設定される。
【0100】
なお、正方向回転領域4Baは逆方向回転領域4Bbよりも内側に位置するという理由により、角度θaは、角度θbよりも大きく設定されている。
【0101】
内側に位置する正方向回転領域4Baの外縁と、外側に位置する逆方向回転領域4Bbの内縁は、対向しているが、これらの離隔距離の最小値D1は、0.6μmである。離隔距離の最小値D1は、0.6〜2.0μmに設定される。
【0102】
第2コンタクト電極4Aから取り出されたキャリアは、抵抗層4Bを介して、コンタクト電極4Cに至り、配線パターン3Cを介して、外部に取り出される。
【0103】
図8は、製造した光検出部(隣接中心間の間隔X=15μm:タイプB)の写真を示す図である。
【0104】
タイプBの光検出部では、コンタクト電極4Aは、光検出領域の中心に配置され、抵抗層4Bは、中心から一方向に回転しながら延びる回転領域を備えている。もちろん、いずれの実施形態においても、回転方向が逆方向の構造のものを製造することも可能である。
【0105】
本例における構造のパラメータは、以下の通りである。
・配線パターン3Cの幅W0=1.2μm
・光検出領域の面積S=132μm
2
・抵抗層4Bの幅W1=1.0μm
・抵抗層4Bの長さL1=55μm
・抵抗部4の抵抗値=420kΩ
【0106】
格子状の配線パターン3Cの交点において、コンタクト電極4Cが配置され、光検出領域の対角線上の4か所において、コンタクト電極4Cが位置しており、これらの対角線の交点が、光検出領域(光検出部)の中心(重心)Gとなる。隣接する光検出部10の中心G間の距離Xは15μmである。
【0107】
抵抗層4Bは、緩やかに屈曲する3つの角部を有しているが、それぞれの角部の外縁の曲率中心Oは、中心Gを通る上記の対角線上に位置しており、それぞれの曲率半径Rは2.0μm、それぞれの外縁の円弧の両端からそれぞれの曲率中心Oに向けて延びる2つの弦の成す角度θは、8°である。なお、角部の曲率半径Rは、電界集中を避けるためには、2〜5μmに設定され、角度θは、8〜23°に設定される。
【0108】
第2コンタクト電極4Aから取り出されたキャリアは、抵抗層4Bを介して、コンタクト電極4Cに至り、配線パターン3Cを介して、外部に取り出される。
【0109】
図9は、製造した光検出部(隣接中心間の間隔X=10μm)の写真を示す図である。この光検出部10の基本的な構造は、
図8に示したものと同一であるので、同一の構造については、記載を省略する。
【0110】
本例における構造のパラメータは、以下の通りである。
・配線パターン3Cの幅W0=1.2μm
・光検出領域の面積S=42μm
2
・抵抗層4Bの幅W1=1.0μm
・抵抗層4Bの長さL1=29μm
・抵抗部4の抵抗値=700kΩ
【0111】
この構造においても、第2コンタクト電極4Aから取り出されたキャリアは、抵抗層4Bを介して、コンタクト電極4Cに至り、配線パターン3Cを介して、外部に取り出される。
【0112】
なお、本例では、抵抗層4Bの幅W1が、配線パターン3Cの幅W0よりも小さくなっており、抵抗部4は微細化されているにも拘らず、十分な抵抗値を得ることができる構成となっている。
【0113】
次に、フォトダイオードの特性について説明する。
【0114】
図10は、上述のフォトダイオードにおける入射光の波長(nm)とフォトンの検出効率(%)の関係を示すグラフである。同グラフでは、
図4の構造(50μm間隔)、
図7の構造(15μm間隔)、
図9の構造(10μm間隔)のデータが示されている。なお、1つのフォトダイオードアレイに含まれる光検出部の数は、それぞれ、400個、4489個、1000個である。フォトダイオードへの逆方向バイアス電圧は、74Vであり、ガイガーモードで動作をさせた。なお、ブレークダウン電圧は71Vである。
【0115】
フォトン検出効率(PDE)(%)は、光検出領域が大きいほど、抵抗層による影の領域が少なくなり、高い検出効率が得られている。しかしながら、光検出領域の隣接間隔が、50μmの場合の光検出領域の面積に対して、10μmの場合の光検出領域の面積は約25分の1であるが、検出効率は、その30%以上を維持している。15μmの場合も同様に、比較的高い検出効率を維持している。
【0116】
これらのスペクトルピークの位置は、波長400nmから500nmの範囲に存在している。この波長範囲(400nm以上500nm以下)内において、50μm間隔のフォトダイオードの場合、検出効率が44%以上であり、15μm間隔のフォトダイオードの場合、検出効率が36%以上であり、10μm間隔のフォトダイオードの場合、検出効率が17%以上である。
【0117】
なお、比較例1として、隣接中心間の間隔X=50μmとして、
図4における抵抗層の内側位置に第1コンタクト電極を設け、第1コンタクト電極から抵抗層4Bとほぼ同一形状で若干小さな環状配線パターン(アルミニウム)を形成した。なお、この環状配線パターン(張り出し電極)は、半導体領域14の輪郭上に位置し、光検出領域内の準位を安定させる機能を有する。そして、この環状配線パターンに連続するこれと同一幅の抵抗体(ポリシリコン:160kΩ)を
図4に示すものと同様に形成した場合、検出効率(%)は、波長400nmから500nmの範囲において、最小で44%、最大で52%であった。なお、比較例1の構造において、第1コンタクト電極の位置と、抵抗体の環状配線パターンとの接続位置とはずれている。
【0118】
また、比較例2として、比較例1における間隔X=15μmとして、
図8における抵抗層の内側位置に第1コンタクト電極を設け、第1コンタクト電極から抵抗層4Bとほぼ同一形状で若干小さな環状配線パターン(アルミニウム)を形成した。なお、この環状配線パターン(張り出し電極)は、半導体領域14の輪郭上に位置し、光検出領域内の準位を安定させる機能を有する。そして、この環状配線パターンに連続するこれと同一幅の抵抗体(ポリシリコン:500kΩ)を
図8に示すものと同様に形成した場合、検出効率(%)は、波長400nmから500nmの範囲において、最小で36%、最大で42%であった。なお、比較例2の構造において、第1コンタクト電極の位置と、抵抗体の環状配線パターンとの接続位置とはずれている。
【0119】
なお、第1コンタクト電極の位置と、抵抗体の環状配線パターンとの接続位置とはずれているため、間隔X=10μm以下とすることは、製造プロセス上困難である。
【0120】
比較例1,2の構造においては、環状配線パターン及び光透過率の低い抵抗部の全てが、実効的な開口率を低下させる遮光要素として機能し、光検出感度が低下している。一方、実施形態に係るフォトダイオードアレイは、抵抗層4Bが、環状配線パターンと同一の表面準位安定化機能を達成しつつも、高い光透過率を有し、また、ポリシリコンのような付加的な抵抗体を用いていないので、著しく光検出感度を向上させることができる。
【0121】
次に、回復時間(電圧回復時間)の影響について、検査を行った。
【0122】
図11は、上述のフォトダイオードからの出力(ガイガーモード)と時間の関係を示すグラフである。オシロスコープの出力映像を示しており、縦軸は、フォトダイオードの出力強度(ゲイン)を示しており、縦軸の1つの間隔は50mVを示し、横軸の1つの間隔は、5(ns)を示している。同グラフでは、ピーク強度電圧の異なる複数のデータが示されているが、これはフォトダイオードに入射するフォトン数の違いによるものであり、フォトン数が多いほど、出力強度も大きくなる。同グラフでは、73(V)のバイアス電圧が印加されている。なお、ΔV=フォトダイオードへのバイアス電圧−フォトダイオードのブレークダウン電圧は、ΔV=1(V)以上4(V)以下の範囲内である。
【0123】
フォトダイオードの出力信号の回復時間(τ)は、フォトンが光検出部10に入射した場合、光検出部10からの出力の強度ピーク値を与える時刻から、この強度ピーク値の37%に光検出部10からの出力がなる時刻までの期間で規定される。
【0124】
光検出部の間隔X=50μm(
図4)の場合(
図11(A))、フォトダイオードへのバイアス電圧が73Vの場合、回復時間(τ)は、13nsである。
【0125】
光検出部の間隔X=20μm(
図6)の場合(
図11(B))、フォトダイオードへのバイアス電圧が73Vの場合、回復時間(τ)は、5.0nsである。
【0126】
光検出部の間隔X=15μm(タイプA:
図7)の場合(
図11(C))、フォトダイオードへのバイアス電圧が73Vの場合、回復時間(τ)は、4.3nsである。
【0127】
光検出部の間隔X=10μmの場合(
図11(D))、フォトダイオードへのバイアス電圧が73Vの場合、回復時間(τ)は、2.3ns以下とすることができる。
【0128】
なお、上述の比較例1の場合、回復時間(τ)は、13nsであり、比較例2の場合の回復時間(τ)は、5.0nsであった。
【0129】
詳説すれば、比較例1の構造の場合(光検出部10の離間間隔X=50μm)、開口率は60%であり、接合容量Cj=80fF、ゲイン=7.5×10
5、回復時間13ns、画素数密度(400個/mm
2)、フォトンの検出効率は最大で52%である。
【0130】
また、比較例2の構造の場合(光検出部10の離間間隔X=15μm)、開口率は55%であり、接合容量Cj=11fF、ゲイン=2.0×10
5、回復時間4.3ns、画素数密度(4489個/mm
2)、フォトンの検出効率は最大で42%である。
【0131】
なお、X=15μmの場合、
図7及び
図8の実施形態の構造においては、開口率は60%とすることができ、接合容量Cj=11fF、ゲイン=2.0×10
5、回復時間4.3ns、画素数密度(4489個/mm
2)である。
【0132】
このように、実施形態の構造では、比較例1と同じ開口率を達成しつつ、接合容量Cjを低減し、回復時間を短くすることができる。また、単位面積当たりに含まれる画素数が多いため、ダイナミックレンジを向上させることができる。
【0133】
以上のように、隣接する第2コンタクト電極間の間隔(光検出領域の中心間の間隔)Xが、20μm以下の場合、回復時間(τ)が著しく短くなる。光検出部の間隔X=15μm以下であれば、回復時間(τ)を10ns以下とすることができる。間隔Xを、10μm以下とすれば、回復時間(τ)は、更に短くなる。これは、従来、達成できなかった顕著な改善である。
【0134】
上述のように、実施形態に係るフォトダイオードアレイでは、金属薄膜抵抗の高い透過率を利用し、比較例1,2において用いた張り出し電極の代わりに、線状にパターニングされた金属薄膜抵抗により、張り出し構造を形成し、デッドスペースを低減している。所望の抵抗値を得るために、
図5〜
図9に示す構造の場合、抵抗層4Bによって、半導体領域14の輪郭(エッジ)の一部(右隅の位置)を被覆することができないが、この部分は、抵抗層4Bの幅程度であり、表面準位安定化に対する特性低下の影響は小さい。また、
図4に示す構造では、半導体領域14の輪郭(エッジ)の全てを被覆している。
【0135】
図12は、
図1及び
図2に示したフォトダイオードアレイの製造方法について説明するための図である。
【0136】
まず、
図12(A)に示すように、半導体領域(半導体基板)12上に、エピタキシャル成長法又は不純物拡散法或いはイオン注入法により、半導体領域13を形成する。なお、半導体領域12は、CZ法又はFZ法により形成された(100)Si半導体基板であるが、他の面方位を有する半導体基板を用いることもできる。Siエピタキシャル成長法を用いる場合には、例えば、原材料として、気相の四塩化珪素(SiCl
4)と三塩化シラン(トリクロルシラン、SiHCl
3)を用い、成長温度1200℃において、基板表面上にこれらのガスを流す。不純物拡散法の場合には、半導体領域13の導電型に対応する不純物をガス又は固体で半導体領域12内に拡散させる。イオン注入法の場合は、半導体領域13の導電型に対応する不純物を半導体領域12内にイオン注入する。
【0137】
次に、半導体領域13の表面側の領域に、半導体領域14を形成する。これには不純物の拡散法又はイオン注入法を用いることができる。例えば、拡散法において、不純物原材料として、ジボラン(B
2H
6)を用いる場合には、拡散温度を1200℃に設定することができる。半導体領域14の形成においては、まず、フォトリソグラフィ技術により、半導体領域13上に開口を有するレジストパターンを形成し、続いて、このレジストパターンをマスクとして、不純物の添加を行う。なお、不純物の添加は、格子状の配線パターン3Cを形成した後、これをマスクとして、絶縁層16を介して、イオン注入法により行ってもよい。
【0138】
次に、半導体基板上に絶縁層16を形成する。絶縁層16は、Si熱酸化法を用いて形成することができる。酸化温度は例えば1000℃である。これにより、半導体領域13及び14の表面が酸化され、SiO
2からなる絶縁層16が形成される。絶縁層16の形成にはCVD法を用いることもできる。
【0139】
次に、絶縁層16における半導体領域14上の位置に、コンタクトホールを形成する。コンタクトホールの形成においては、まず、フォトリソグラフィ技術により、絶縁層16上に開口を有するレジストパターンを形成し、続いて、このレジストパターンをマスクとして、絶縁層16をエッチングする。エッチング法としては、ドライエッチング法の他、HF水溶液を含むエッチング液によるウエットエッチングを用いることもできる。
【0140】
次に、絶縁層16上に、蒸着法により、第1コンタクト電極3A及び配線パターン3Cを形成する。これらの形成においては、まず、フォトリソグラフィ技術により、絶縁層16上に所定のレジストパターンを形成し、続いて、このレジストパターンをマスクとして、電極材料を絶縁層16上に蒸着する。ここでは、蒸着法に代えて、スパッタ法を用いることもできる。
【0141】
次に、
図12(B)に示すように、絶縁層16上に絶縁層17を形成する。絶縁層17は、スパッタ法やプラズマCVD法を用いて形成することができる。プラズCVD法を用いる場合、原材料ガスとして、テトラエトキシシラン(TEOS)及び酸素ガスを用い、成長温度を200℃程度に設定して絶縁層17の成長を行う。絶縁層17の厚みは、その表面が平坦化される厚みに設定されることが好ましく、絶縁層16の表面から配線パターン3Cの上面までの高さよりも大きいことが好ましい。
【0142】
次に、
図12(C)に示すように、絶縁層17上に、抵抗部4を形成する。この形成においては、まず、フォトリソグラフィ技術により、絶縁層17上に所定のレジストパターンを形成し、続いて、このレジストパターンをマスクとして、抵抗材料を絶縁層17上にスパッタ法又は蒸着法を用いて堆積する。抵抗体が、SiCrからなる場合、スパッタ法を用い、ターゲット材料としては、例えば、SiとCrの組成比が70%/30%のSiCrを用いることができ、厚みは3〜50nmに設定することができる。
【0143】
なお、
図13に示す構造の光検出部を製造する場合、半導体領域14の形成前に、半導体領域15を不純物拡散法又はイオン注入法を用いて、半導体領域13の表面側に形成しておけばよい。不純物拡散法の場合には、半導体領域15の導電型に対応する不純物をガス又は固体で半導体領域13内に拡散させる。イオン注入法の場合は、半導体領域15の導電型に対応する不純物を半導体領域13内にイオン注入する。
【0144】
なお、上述の実施形態の場合、抵抗層4Bの平面形状は、環状又はリングの一部の形状或いは、スパイラル形状であったが、これは方形波、三角波又は正弦波のように蛇行形状であってもよい。
【0145】
また、実施形態に係るフォトダイオードアレイの効果について、更に説明する。
【0146】
ガイガーモードにおいてフォトダイオードアレイを動作させる場合、フォトン(光子)が1つの光検出部10に入射した場合の回復時間(電圧回復時間)τは、光検出部10における光検出領域の面積及びpn接合から広がる空乏層幅によって規定される接合容量(画素容量)Cjと、抵抗部4の抵抗値(クエンチング抵抗値Rq)の積(RC定数=Cj×Rq)に依存する。
【0147】
画素サイズ(光検出部の面積)を小さくすると、接合容量Cjは小さくなるので、同一の回復時間τ、すなわち、同一のRC定数を得るためには、クエンチング抵抗値Rqを大きくする必要がある。クエンチング抵抗値Rqは、抵抗率、厚さ、幅及び長さを調整して決定することができる。抵抗率、幅、厚さはプロセス条件により制限されるため、抵抗値Rqは、長さを変えることで、調整することが合理的である。同一の回復時間τを得るには、画素サイズが大きいほど、抵抗層4Bを短く設定し、画素サイズが小さいほど、抵抗層4Bを長く設定する。
【0148】
RC定数が小さすぎる場合には、アバランシェ増倍発生後のクエンチングが不十分となり、ラッチング電流と呼ばれる現象が生じ、正常な動作を示さない。一方、RC定数が大きすぎる場合には、回復時間(電圧回復時間)が長くなる。したがって、RC定数の値は、デバイスに応じた最適な値(2〜20ns)に設定される。
【0149】
なお、ゲインは接合容量Cjと印加電圧に依存しており、実施形態の構造は、接合容量Cjを小さくすることで、ゲインを低減している。フォトダイオードアレイのノイズ成分として、ダークパルスの他にアフターパルス、オプティカルクロストークによる擬似出力信号も含まれている。アフターパルスはアバランシェ増倍により発生した電子・ホールの一部が不純物準位等にトラップされ、ある時間間隔をおいて、後に放出されることで、再度アバランシェ増倍が起こり発生するパルスのことである。オプティカルクロストークはアバランシェ増倍中に低確率で発生したフォトンが隣接ピクセルに進入、吸収されることで発生した電子・ホール対が、アバランシェ増倍を起こし発生するパルスによるものである。いずれも1フォトンに対する出力が1パルスでなく複数パルスとなってしまうノイズ成分である。
【0150】
実施形態の構造のように、接合容量Cj、すなわち、ゲインが小さければアバランシェ増倍により発生する電子・ホール対の総数が少なくなるため、アフターパルス、オプティカルクロストークによるパルスが発生する確率が少なくなり、ノイズ低減の効果が得られる。
【0151】
接合容量Cjが大きく、ゲインが大きい素子であるほど、発生したキャリアを掃き出す時間が長いため、電圧回復時間は長く、ゲインが小さいほど、回復時間は短くなる。実施形態のように、画素ピッチを小さくすると、電圧回復時間が短くなり、フォトンのカウントレートを向上させることができる。