(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンバインにおいて、例えば、刈取部の内部で刈取穀稈の搬送詰まりが発生した場合、あるいは、機体内部の伝動機構の修理や点検等のメンテナンス作業を行う場合において、刈取部を走行機体から分離させて作業を行うことがある。このとき、油圧シリンダとフレーム体との連結を解除する必要があるが、上記従来構成では、保持部材による抜け止めを解除して連結用部材を抜き取ることになる。
【0005】
しかし、上記従来構成では、フレーム体に固定されたブラケットと油圧シリンダの先端の取付部とにわたって横向きに連結用部材が貫通する構成であるから、油圧シリンダとフレーム体との連結を解除する場合、連結用部材に刈取部の荷重が掛かっている状態では連結用部材を抜き取ることができないので、刈取部の荷重を一旦、別の箇所において支持させておく必要がある。油圧シリンダとフレーム体との連結を解除する場合だけでなく、油圧シリンダとフレーム体とを連結させる場合においても同様に、刈取部の荷重を一旦、別の箇所において支持させておく必要がある。
【0006】
その結果、上記従来構成では、刈取部の荷重を、油圧シリンダとフレーム体との連結箇所とは異なる別の箇所に、一旦、支持させるための特別な位置保持機構が必要となり、刈取部の支持構造が複雑になる不利がある。
【0007】
又、油圧シリンダとフレーム体とを連結させる場合、ブラケットに形成される貫通孔と取付部に形成される貫通孔との位置合わせをする必要があり、油圧シリンダとフレーム体との間での相対位置の調節作業が煩わしいものとなる不利もあった。
【0008】
本発明の目的は、支持構造を複雑にさせることなく、油圧シリンダの分離作業や接続作業を容易に行うことが可能となるコンバインにおける油圧シリンダ連結構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るコンバインの油圧シリンダ連結構造の特徴構成は、
走行機体と刈取部のフレーム体とに両端部が枢支連結された油圧シリンダと、
前記フレーム体に設けられ、前記油圧シリンダのシリンダロッドが枢支連結される連結用ブラケットと、
前記連結用ブラケットに形成された係合凹部と、
前記シリンダロッドに機体横幅方向向きの状態で貫通支持されるとともに、前記係合凹部に係合して前記刈取部を支持する連結用部材と、
前記連結用部材に一体的に設けられるとともに、前記連結用部材が前記係合凹部に係合している状態で前記連結用ブラケットに連結固定される連結部
、が備えられ
、
前記連結部と前記連結用ブラケットとは、横側面が夫々機体前後方向に沿う状態で設けられ、且つ、機体側面視で、前記連結用部材の周方向において、複数個所で連結解除自在に連結されている点にある。
【0010】
本発明によれば、油圧シリンダを刈取部のフレーム体に接続するときは、シリンダロッドに連結用部材を貫通支持させた状態で、その連結用部材を、連結用ブラケットに形成された係合凹部に係合させる。そのように連結用部材を係合凹部に係合させている状態で、連結用部材に一体的に設けられた連結部を連結用ブラケットに連結固定する。そして、油圧シリンダを刈取部のフレーム体から分離するときには、連結部と連結用ブラケットとの連結を解除すると、その後は、連結用部材と係合凹部との係合を解除することにより容易に分離することができる。
【0011】
このように連結用部材を係合凹部に係合させている状態で、連結部と連結用ブラケットとを連結させたり、連結を解除するだけでよく、油圧シリンダの分離作業や接続作業を容易に行うことができる。つまり、連結用部材を係合凹部に係合させることにより、油圧シリンダと連結用ブラケットとの位置合わせが容易に行われることになる。
【0012】
連結用部材が係合凹部に係合している状態では、油圧シリンダにより刈取部の荷重を受止め支持することができるので、刈取部の荷重を一旦、別の箇所において支持させておく必要がない。つまり、刈取部の荷重を一旦、別の箇所に支持させるための特別な支持構造が不要であり、支持構造が複雑になる不利がない。
【0013】
尚、連結部を連結用ブラケットに連結固定している状態では、連結用部材が係合凹部から離脱する方向に相対移動することを阻止するので、連結用部材と連結用ブラケットとが離間することを防止できる。
【0014】
従って、本発明によれば、支持構造を複雑にさせることなく、油圧シリンダの分離作業や接続作業を容易に行うことが可能となるコンバインにおける油圧シリンダ連結構造を提供できるに至った。
また、本構成によれば、機体前後方向に沿う横側面を有する連結用ブラケットにて、機体横幅方向向きの連結用部材を安定的に支持することができ、又、機体前後方向に沿う連結部と連結用ブラケットとを簡単な連結構造で連結固定することができる。
また、本構成によれば、連結用部材を挟んで連結用部材の径方向の両側に位置する複数箇所において、連結部と連結用ブラケットとを安定的に且つ強固に連結固定することができる。
【0015】
本発明においては、前記連結部が、前記連結用ブラケットの横側面の形状に沿った形状に形成されていると好適である。
【0016】
本構成によれば、連結部の形状が連結用ブラケットの横側面の形状に沿った形状となっているので、連結部を、連結用ブラケットに対して、ガタツキなく安定的に連結固定することができる。
【0021】
本発明においては、前記連結部は、前記連結用ブラケットに、走行機体の運転部に対して機体横幅方向反対側から連結固定されると好適である。
【0022】
運転部は刈取穀稈からの塵埃等が降りかからないように、遮蔽される状態となっているが、運転部に対して機体横幅方向反対側は開放された状態となっている。
【0023】
そこで、本構成によれば、連結部は、連結用ブラケットに対して、走行機体の運転部に対して機体横幅方向反対側から連結固定される構成とすることで、開放された状態の機体横幅方向反対側箇所から連結部の連結用ブラケットに対する連結を行うことができ、連結作業が行い易いものになる。
【0024】
本発明においては、前記油圧シリンダが伸長して前記刈取部が上昇位置にある上昇操作状態において前記刈取部の下降を防止する下降防止部材が備えられ、
前記下降防止部材が、遊端側箇所を前記油圧シリンダのシリンダ本体に係合して前記刈取部の下降を防止する作用位置と、前記遊端側箇所の前記シリンダ本体との係合を解除して前記刈取部の下降を許容する非作用位置とにわたり回動可能に前記連結用部材に支持されていると好適である。
【0025】
本構成によれば、油圧シリンダにより刈取部を昇降させるときは、下降防止部材を非作用位置に切り換えておくことで、油圧シリンダの伸縮作動が可能となる。そして、メンテナンス作業時など刈取部を上昇位置にて位置保持させるときは、油圧シリンダが伸長させた状態で下降防止部材を作用位置に切り換える。そうすると、遊端側箇所が油圧シリンダのシリンダ本体に係合して刈取部の下降を防止することができる。
【0026】
又、連結用部材を利用することで、簡単な構成で、下降防止部材を作用位置と非作用位置とにわたり回動可能に支持することができる。
【0027】
本発明においては、前記下降防止部材は、前記遊端側箇所が前記フレーム体に取り外し可能に連結されることにより、前記非作用位置において位置保持されると好適である。
【0028】
本構成によれば、下降防止部材は、非作用位置において、遊端側箇所がフレーム体に連結されることにより位置保持される。つまり、下降防止部材は、回動支点部では連結用部材に支持され、遊端側箇所がフレーム体に支持されるので、両側端部夫々にて安定的に支持される。
【0029】
本発明においては、前記下降防止部材は、複数箇所にて前記連結部及び前記連結用ブラケットと共締め連結されることにより、前記非作用位置において位置保持されると好適である。
【0030】
本構成によれば、下降防止部材は、非作用位置において、複数箇所にて連結部及び連結用ブラケットと共締め連結されることにより位置保持される。下降防止部材の遊端側箇所は、連結固定させる必要はない。
【0031】
このように連結部と連結用ブラケットとの連結構造を利用して、下降防止部材を非作用位置にて位置保持させることができる。
【0032】
本発明においては、前記連結用ブラケットが、横方向に間隔をあけて左右一対の縦壁部を備え、且つ、前記各縦壁部の夫々に前記係合凹部が形成され、
前記シリンダロッドにおける前記連結用部材が貫通する箇所が、前記一対の縦壁部の間に位置する状態で設けられ、
前記連結用部材が前記一対の縦壁部夫々の前記係合凹部に係合すると好適である。
【0033】
本構成によれば、シリンダロッドにおける連結用部材が貫通する箇所が連結用ブラケットの一対の縦壁部の間に位置し、シリンダロッドを貫通する連結用部材が一対の縦壁部夫々の係合凹部に係合する。
【0034】
左右一対の係合凹部を介して連結用部材にて荷重が受止められ、左右一対の係合凹部の中間部において油圧シリンダにて荷重が受止め支持されるので、左右バランスのよい状態で油圧シリンダにより刈取部の荷重を受止め支持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面に基づいて本発明に係るコンバインの油圧シリンダ連結構造について説明する。
【0037】
〔コンバインの全体構成〕
図1〜
図3に示すように、左右一対のクローラ走行装置1によって走行する走行機体2の前端に昇降用の油圧シリンダ3の作動により昇降自在に刈取部4を備えると共に、走行機体2の前部に運転者が搭乗する運転部5を備え、走行機体2に対して刈取部4から刈取穀稈が供給される脱穀装置6と、この脱穀装置6で脱穀及び選別された穀粒を貯留する穀粒タンク7とを備えて自脱型のコンバインが構成されている。
【0038】
このコンバインは、収穫作業時に刈取部4と脱穀装置6とを駆動した状態で走行機体2を前進させることにより、刈取部4で穀稈の刈り取りを行い、刈り取った穀稈を脱穀装置6に搬送して脱穀処理を行い、この脱穀装置6の脱穀処理により得られた穀粒を穀粒タンク7に貯留する処理が行われる。
【0039】
そして、走行機体2に備えたエンジン8の駆動力を、無段変速装置(図示せず)を介して左右のクローラ走行装置1に伝える走行伝動系を備えている。また、変速後の駆動力を刈取部4に伝える刈取伝動系と、エンジン8からの駆動力を脱穀装置6に伝える伝動系とを備えている。
【0040】
刈取部4は、植立穀稈の分草を行う複数の分草具10と、植立穀稈を引き起こす複数の引起装置11と、植立穀稈の株元を切断するバリカン型の刈取装置12と、この刈取装置12で株元が切断された穀稈を搬送して脱穀装置6のフィードチェーンFCに供給する搬送装置13とを備えている。
【0041】
脱穀装置6の後部位置には、刈取穀稈の搬送終端位置から排出される排ワラを細断して地面に放出する排ワラカッター14が備えられている。そして、この排ワラカッター14の下方に位置する状態で、燃料タンク15が備えられている。
図1及び
図3に示すように、燃料タンク15には、燃料を供給するときに、タンク内部に貯留されている空気を外部に排出させるためのエアー抜きパイプ16が上方に向けて延出される状態で備えられている。又、
図1及び
図4に示すように、エアー抜きパイプ16は、開放される外端部が下向きになる状態で逆U字状に湾曲させて、3箇所を保持具17により脱穀装置6の右側外面6Aに位置固定して支持されている。
【0042】
その結果、エアー抜きパイプ16の位置がずれ難いものとなる。従って、エアー抜きパイプ16の湾曲形状が維持され、湾曲部分が自重等の負荷により損傷し易くなる事態を防止できる。
【0043】
運転部5には、運転者が着座する運転座席18の前方位置に操縦塔19が配置されている。操縦塔19には、アラーム音を発生させるブザー20が備えられており、このブザー20により発生する音声を運転者に認識させ易くするようにしている。
【0044】
すなわち、
図5及び
図6に示すように、操縦塔19は、全面にフロントプレート21を備え、このフロントプレート21の左右の両側を後方に折り曲げると共に、この折り曲げ部に連なる位置にフランジ部21Aを形成しており、このフランジ部21Aに対して着脱自在にリヤプレート22を備えている。リヤプレート22は、フロントプレート21のフランジ部21Aに連結する取付け部22Aが左右に形成され、この左右の取付け部22Aをフランジ部21Aに重ね合わせ、複数のビス23で連結されている。この構成から操縦塔19にはアラーム音を発生させるブザー20とを収容する内部空間が形成される。尚、図示はしないが、この内部空間には、各部の制御を実行する制御装置も収納される。
【0045】
右側のフランジ部21Aにビス23によりブラケット24を支持し、このブラケット24に対してブザー20が支持されている。この構成から内部空間においてリヤプレート22より少し前方位置にブザー20が配置される。また、リヤプレート22には、ブザー20の音声発生面20Aと対応する位置にブザー20と同じサイズの開口22Bが形成されている。
【0046】
これにより、ブザー20の音声発生面20Aからのアラーム音をリヤプレート22の開口22Bを介して運転座席18の方向に直接的に送り出される。このように、ブザー20の音声発生面20Aが外部に露出し、且つ、ブザー20が作動音が大きい脱穀装置6から遠い位置に位置するので、運転者はブザー音(音声)を認識し易いものとなる。尚、ブザー20は、穀稈の搬送系に詰まりが発生した場合や、エンジン8がオーバーヒートした場合等の異常時に作動する。
【0047】
〔穀粒排出装置〕
次に、穀粒排出装置25について説明する。
穀粒タンク7に貯留された穀粒を機外に排出する穀粒排出装置25が備えられている。
図2及び
図3に示すように、穀粒排出装置25は、穀粒タンク7内の底部に備えられて穀粒を機体後方に搬送して後部の穀粒取出口からタンク外に搬出する底部搬送スクリュ26、底部搬送スクリュ26が搬出した穀粒を揚送して上部の排出口27から排出する揚送コンベヤ28、及び、排出口27から排出された穀粒を機体の右外方に流下案内する排出シュート29等を備えている。
【0048】
底部搬送スクリュ26は、穀粒タンク7の前後向きに配備され、そのスクリュ軸26Aの前端部には、エンジン8から穀粒排出装置25への伝動を断続するベルトテンション式の排出クラッチ30が備えられている。
【0049】
揚送コンベヤ28は、円筒状のコンベヤケース31の内部に回転可能に揚送スクリュ32を備えてスクリュ搬送式に構成されている。揚送スクリュ32の下端部が、ベベルギア(図示せず)を介して、底部搬送スクリュ26のスクリュ軸26Aの後端部に一体回転する状態で連結されている。揚送コンベヤ28は上部の排出口から水平方向に穀粒を放出するように構成されている。
【0050】
排出シュート29は、穀粒案内方向上手側の端部を横向きの支軸33を介して上下揺動可能に支持され、
図3の実線で示す格納姿勢と、
図3に仮想線で示す作用姿勢とに姿勢切り換え可能に構成されている。排出シュート29は、作用姿勢では、排出口27から排出された穀粒を機体の右外側下方に位置させたトラックの荷台などの所定の穀粒排出箇所に流下案内する。
【0051】
〔排出クラッチ操作構造〕
次に、排出クラッチ30の操作構造について説明する。
図7に示すように、排出クラッチ30は、その伝動ベルト34をテンション輪体35を支持するテンションアーム36の揺動操作によって緊張状態と弛緩状態とに切り換えることにより、エンジン8からの動力を穀粒排出装置25に伝達する伝動状態と、その伝動を遮断する遮断状態とに切り換わるように構成している。そして、テンションアーム36は、運転部5において運転座席18の左後方箇所に配備した(
図2参照)排出クラッチレバー37に連動連係されている。
【0052】
図7〜
図9に示すように、排出クラッチレバー37は、カバー体38の内部において、基端部が横向き軸芯Qを中心に揺動自在に支持されている。そして、排出クラッチレバー37は、カバー体38に形成された案内用切欠39を通して外方に延設されている。そのカバー体38の外方側に位置する上方側部分が運転座席18から遠ざかる方向に、L字状に屈曲形成されている。このように屈曲形成することで、握り部37aが運転座席18から離間して、運転座席18が邪魔にならない状態で前後方向に排出クラッチレバー37を揺動操作することができる。
【0053】
走行機体2にて立設された縦フレーム41の前面に前後向きの支持部材42が固定され、この支持部材42に対して、排出クラッチレバー37が横向きのレバー軸43の軸芯Q周りで回動自在に支持されている。そして、支持部材42にはレバー軸43と平行姿勢となるアーム軸44を中心に揺動自在に天秤型アーム45が支持され、この天秤型アーム45の一方の端部と、排出クラッチレバー37に形成したアーム部37Aとが連係ロッド46により連係されている。また、天秤型アーム45の他方の端部とテンションアーム36とが連係ロッド47を介して連動連係されている。
【0054】
この構成により、排出クラッチレバー37が切り位置「切」にある場合には、
図7に示す如く、テンションアーム36の復帰付勢力が排出クラッチレバー37に作用することにより、この排出クラッチレバー37は切り位置「切」に保持される。排出クラッチレバー37を入り位置「入」に操作した場合には、排出クラッチレバー37の揺動に伴い連係ロッド47が引き操作され、テンションアーム36が入り位置に操作される。
【0055】
排出クラッチレバー37が切り位置「切」にある状態では、連係ロッド46は、レバー軸43の揺動軸芯Qの上方に位置し、テンションアーム36の復帰付勢力は
図7において時計回りに作用する。このとき、支持部材42に固定された固定ピン48に排出クラッチレバー37が接当することにより、それ以上の時計回りの回動を阻止する。
【0056】
また、排出クラッチレバー37が、入り位置「入」に操作された場合には、連係ロッド46がレバー軸43の揺動軸芯Qの下方まで変位する。すなわち、排出クラッチレバー37はデッドポイントを乗り越える。これにより、テンションアーム36の復帰付勢力は、
図7において反時計回りに作用することになり、排出クラッチレバー37は切り位置「切」に保持される。このとき、排出クラッチレバー37は、カバー体38の案内用切欠39の端縁に接当するのではなく、カバー体38の内部に備えられた規制板49にて接当規制する構成となっている。
【0057】
規制板49は、支持部材42の前端部に固定されており、前方へ延設されるとともに、前端部が機体左右方向内方側へ屈曲されて、平面視でL字形に屈曲した形状となっている。又、この規制板49にはカバー体38の前壁部38Aがボルト固定されており、規制板49がカバー体38を支持する部材を兼用している。尚、カバー体38の左右側壁部38Bは、支持部材42の下面に固定された連結部材50にボルト固定されて支持されている。
【0058】
このように構成することで、カバー体38には無理な力が掛かることがなく、又、このカバー体38を薄肉の板材を用いた簡素な構成のものにしてコスト低減を図っている。
【0059】
〔排気構造〕
次に、エンジン8の排気を外部に排出するための排気構造について説明する。
図10に示すように、エンジン8の排気を機体外部に排出させる排気装置51が、脱穀装置6と穀粒タンク7との間を通って、エンジン8から機体後上方に向けて機体後部まで延びる状態で設けられている。
【0060】
この排気装置51は、第一排気管52と、第二排気管53と、第三排気管54とを備えている。第一排気管52及び第二排気管53の断面形状は、いずれも円形であり、第三排気管54の断面形状は六角形である。
【0061】
排気装置51は、側面視において機体後上がりに傾斜している。そして、第一排気管52の傾斜角度と第二排気管53の傾斜角度とが異なっている。第一排気管52は、脱穀装置6の上端部まで延びており、この第一排気管52は、支持部56及び支持部57を介して、脱穀装置6の右側面に支持され、断面形状が略半円形のパンチングメタルからなる第一カバー55で、穀粒タンク7側(右側)の外周面のみ覆われている。第一排気管52の排気上流側端部の内周面とマフラー59のテールパイプ59aの外周面との間には隙間Sが形成されている。
【0062】
第二排気管53は、支持部60及び支持部61を介して、脱穀装置6の右側面に支持され、断面形状が略半円形のパンチングメタルからなる第二カバー58で、穀粒タンク7側(右側)の外周面のみ覆われている。そして、第二排気管53の径は、第一排気管52の径よりも大きく、第二排気管53の排気上流側端部と、第一排気管52の外周面とが、排気流通方向において重複しており、それらの間には、隙間Sが形成されている。
【0063】
第三排気管54は、第二排気管53の排気下流側端部に取り付けられている。この第三排気管54の径は、第二排気管53の径よりも大きく、第二排気管53の外周面と第三排気管54の内周面との間には隙間Sが形成されている。
【0064】
このような排気構成によれば、各排気管52〜54同士が接続される箇所において隙間Sが形成されることで、その隙間Sから、脱穀装置6の上端部付近にある比較的低温の外気を取り込むことができる。その結果、機体外方に排出される排気の温度を十分に低減させることができる。
【0065】
そして、第三排気管54は、中心軸が水平となるように取り付けられ、排気下流側端部には、風向板62が取り付けられている。風向板62は、排気装置51から排出される排気の風向を設定するものであり、
図1〜
図3に示すように、排気装置51から排出される排気が、機体左側斜め上方に向かうように排出方向が設定されている。
【0066】
風向板62は、第三排気管54の外周面との間に隙間が無いように第三排気管54の外周面に溶接固定されている。又、第三排気管54の第二排気管53に対する取付け状態を変更させることにより、風向板62による排気排出方向を変更させることができるようになっている。すなわち、
図11及び
図12に示すように、第二排気管53の排気下流側端縁に対して等角度(120度)間隔に3つのステー53aが溶接固定されている。そして、第三排気管54を3つのステー53aにボルト固定することができるとともに、60度ずつ取付け角度を変更させて固定することが可能であり、風向板62による排出方向を変更調整することができるように構成されている。
【0067】
〔油圧シリンダ連結構造〕
次に、油圧シリンダ3の連結構造について説明する。
刈取部4は、フレーム体の一例としての前後向き筒状フレーム63(以下、筒状フレームと略称する)により、走行機体2に対して横軸芯周りで昇降揺動自在に支持されている。筒状フレーム63は、機体前後方向に沿い且つ機体前部側ほど下方に位置するように傾斜状態で備えられる。
【0068】
図13及び
図14に示すように、筒状フレーム63の長手方向の途中部の下側に連結用ブラケット64が固定されている。この連結用ブラケット64は、
図16に示すように、左右一対の縦壁部64Aと、それらの一対の縦壁部64A同士を連結する連結部64Bとを有し、断面U字形に形成されている。連結部64Bを筒状フレーム63の下側の外面に当て付けた状態でボルト締結により取り付け固定されている。又、連結用ブラケット64における左右一対の縦壁部64Aの端縁に係合凹部65が夫々形成されている。
【0069】
図15及び
図16に示すように、油圧シリンダ3のシリンダロッド3Aの先端部付近に横向きに貫通する貫通孔66が形成されており、この貫通孔66を挿通する状態で連結用部材67が備えられている。この連結用部材67は、断面が円形の丸棒状の部材にて構成されている。そして、この連結用部材67の一端部には、帯板状の連結用板部68(連結部の一例)が一体的に設けられ、連結用部材67の他端部には、抜け止め具73が装着可能な貫通孔69が径方向に貫通する状態で形成されている。
【0070】
油圧シリンダ3が伸長すると、筒状フレーム63が横軸芯P周りで昇降揺動することにより、刈取部4が昇降移動することになる。そして、刈取部4が上昇位置にある上昇操作状態において刈取部4の下降を防止する下降防止部材70が備えられている。
【0071】
この下降防止部材70は、遊端側箇所を油圧シリンダ3のシリンダ本体3Bに係合して刈取部4の下降を防止する作用位置(
図14参照)と、遊端側箇所のシリンダ本体3Bとの係合を解除して刈取部4の下降を許容する非作用位置(
図13参照)とにわたり回動可能に連結用部材67に支持されている。
【0072】
図15及び
図16に示すように、下降防止部材70は、左右一対の縦板部70Aと、それら一対の縦板部70A同士を連結する横板部70Bとを備えている。作用位置に切り換わると、一対の縦板部70Aでシリンダロッド3Aを挟むように重なる状態となり、一対の縦板部70Aの遊端側の端縁71(遊端側箇所)がシリンダ本体3Bの端部に係合して受止め支持され、油圧シリンダ3が縮退することを阻止する。そのことにより、刈取部4が下降することを防止する。
【0073】
図15に示すように、下降防止部材70における左右一対の縦板部70Aの回動支点部側箇所、及び、それらの間に位置するシリンダロッド3Aの夫々にわたって連結用部材67を挿通させ、その連結用部材67の両側端部を連結用ブラケット64の左右一対の係合凹部65に係合させてある。下降防止部材70の左右一対の縦板部70Aは、左右一対の係合凹部65よりも外方側に位置する状態で、連結用部材67と連結用ブラケット64とが係合している。
【0074】
連結用部材67が係合凹部65に係合し、且つ、連結用板部68を連結用ブラケット64における一方の縦壁部64Aの側面に当て付けた状態で、連結用板部68と一方の縦壁部64Aとをボルト72の締結にて固定する。又、連結用板部68と連結用ブラケット64との間に、下降防止部材70における左右一対の縦板部70Aのうちの一方の縦板部70Aを共締め状態で締め付け固定する。
【0075】
連結用板部68は、機体側面視で、連結用部材67を挟んで連結用部材67の径方向の両側に位置する2箇所にて連結用ブラケット64とボルト72の締結により連結固定されている。連結用部材67の連結用板部68が設けられる側とは反対側は、下降防止部材70における左右一対の縦板部70Aのうちの他方の縦板部70Aを挿通した状態で、抜け止め具73が装着されて抜け外れが阻止されている。
【0076】
連結用板部68は平坦な板状体にて構成され、又、下降防止部材70の縦板部70A、及び、連結用ブラケット64の縦壁部64Aも同様に平坦な板状体にて構成されており、連結用板部68が、連結用ブラケット64の縦壁部64Aにおける横側面の形状に沿った形状に形成されている。又、連結用板部68及び連結用ブラケット64の縦壁部64Aにおける横側面が夫々機体前後方向に沿う状態で、機体横方向に重なり合う状態で設けられている。
【0077】
連結用板部68は、連結用ブラケット64に対して、機体横幅方向の左側、すなわち、走行機体2の運転部5に対して反対側から連結固定される構成となっている。運転部5に対して反対側は、刈取部4の搬送装置13が存在しており、メンテナンス作業等のために開放された状態となっている。従って、連結用板部68と連結用ブラケット64との連結作業が機体外方側から行い易いものとなっている。下降防止部材70は、非作用位置においては、2個のボルト72により連結用ブラケット64に連結固定されることにより、その非作用位置において位置保持される。
【0078】
下降防止部材70は、非作用位置から作用位置に切り換えるときは、2個のボルト72の締め付けを解除すると、下降防止部材70が連結用部材67の軸芯周りで回動自在な状態となるので、下降防止部材70を作用状態に切り換えることができる。
【0079】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
【0080】
(1)前記下降防止部材70の遊端側箇所を筒状フレーム63に対して取り外し可能に連結する構成としてもよい。そのことにより、下降防止部材70を安定した状態で非作用位置にて位置保持することができる。この場合は、左右一対の縦板部70Aを、夫々、シリンダロッド3Aと、連結用ブラケット64の左右一対の縦壁部64Aとの間に位置させ、連結用ブラケット64に対するボルト72による固定を行わない構成とすることも可能である。
【0081】
(2)前記連結用板部68を前記連結用ブラケット64に対して3個以上のボルト72で締結固定してもよく、1個のボルト72で締結固定してもよい。
【0082】
(3)前記連結用部材67としては、例えば断面形状が半円形の棒状部材等、油圧シリンダ3と連結用ブラケット64との相対揺動を許容する状態で連動連係することが可能なものであればよく、断面が円形の丸棒状の部材以外のものであってもよい。
【0083】
(4)前記油圧シリンダ3の近傍に下降防止部材70を備えることなく、他の異なる箇所に設ける構成としてもよい。この場合、前記連結用板部68を前記連結用ブラケット64の縦壁部64Aに直接に連結固定する構成としてもよい。
【0084】
(5)上記実施形態では、自脱型のコンバインに適用したものを示したが、本発明は刈取穀稈の全量を脱穀装置に投入する普通型コンバインに適用してもよい。