特許第5984622号(P5984622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984622
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】水洗装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/72 20060101AFI20160823BHJP
   C02F 1/78 20060101ALI20160823BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20160823BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20160823BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20160823BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20160823BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   C02F1/72 Z
   C02F1/78
   C02F1/50 510A
   C02F1/50 520B
   C02F1/50 531J
   C02F1/50 531R
   C02F1/50 540B
   C02F1/50 550D
   C02F1/50 550H
   C02F1/50 531Z
   C02F1/50 550C
   B08B3/08 A
   B08B3/02 C
   H05K3/18 L
   H05K3/06 Q
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-233628(P2012-233628)
(22)【出願日】2012年10月23日
(65)【公開番号】特開2014-83489(P2014-83489A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】591203288
【氏名又は名称】日本アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123940
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 辰一
(72)【発明者】
【氏名】赤瀬川 勝雄
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−072695(JP,U)
【文献】 特開平08−155408(JP,A)
【文献】 特開2001−009392(JP,A)
【文献】 特開2000−157985(JP,A)
【文献】 実開平02−074327(JP,U)
【文献】 特開2003−200179(JP,A)
【文献】 実開平06−070560(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/50−1/78
B08B 3/02
B08B 3/08
H05K 3/06
H05K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物が搬送されるコンベアが貫通する搬入口および搬出口が形成された洗浄室と、
前記洗浄室内で前記コンベアの下に設けられた水槽と、
オゾンを発生させ、該オゾンを含む空気を気体供給路を介して前記水槽内に供給するオゾン供給装置と、
前記洗浄室内で前記水槽の水を汲み上げ前記コンベアの上から噴射してミストを形成するスプレーと、
前記洗浄室内の雰囲気ガスを吸引し、前記洗浄室内を外気に対して負圧にする排気装置と、
を備えた水洗装置。
【請求項2】
前記被洗浄物はプリント基板である、請求項に記載の水洗装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗装置に関し、より特定的には、洗浄室内におけるカビなどの発生を抑制することが可能な水洗装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
メッキ、エッチングなどの表面処理装置、クーリングタワー、排気処理装置(スクラバー)など、種々の装置において、槽内の一部に水を保持する水保持槽が使用される。たとえば、プリント基板の製造プロセスでは、エッチングによる配線の形成、形成された配線の保護膜の形成などの工程において、水保持槽を用いた水洗装置が使用される。水洗装置では、装置内を搬送装置によって搬送されるプリント基板に対して、噴射装置から水が噴射されることにより、プリント基板の表面が洗浄される(たとえば、特許文献1参照)。そして、洗浄に使用された水は、装置内の底部に保持される。このような水洗装置が使用されることにより、プリント基板表面に付着した不要な物質を除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−345544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記水洗装置などの水保持槽内はカビやウイルスなどが発生、増殖しやすい環境になる場合がある。たとえば、上記水洗装置内においてカビが発生、増殖した場合、カビのパーティクルがプリント基板の表面に付着する。このようなパーティクルの付着は、プリント基板の製造プロセスにおいて不良率上昇の原因となる。そのため、水洗装置などの水保持槽は、所定期間ごとに内部が清掃される必要がある。そして、頻繁な内部の清掃は、装置の稼働率を低下させ、プリント基板などの製造効率を低下させるという問題がある。
【0005】
本発明は上述のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、内部におけるカビなどの発生を抑制することが可能な水洗装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水洗装置は、被洗浄物が搬送されるコンベアが貫通する搬入口および搬出口が形成された洗浄室と、洗浄室内でコンベアの下に設けられた水槽と、オゾンを発生させオゾンを含む空気を気体供給路を介して水槽内に供給するオゾン供給装置と、洗浄室内で水槽の水を汲み上げコンベアの上から噴射してミストを形成するスプレーと、洗浄室内の雰囲気ガスを吸引し洗浄室内を外気に対して負圧にする排気装置と、を備えている。
【0011】
また、上記被洗浄物はプリント基板であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明の水保持槽によれば、内部におけるカビなどの発生を抑制することが可能な水保持槽を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】水洗装置の構造の一例を示す概略図である。
図2】オゾン供給装置の構造の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
【0015】
図1および図2を参照して、本発明の一実施の形態における水保持槽である水洗装置1について説明する。図1を参照して、水洗装置1は、被処理物であるプリント基板99の表面を水(純水)によって洗浄する装置である。この水洗装置1は、本体部としての洗浄室10と、オゾン供給装置20と、噴射部としてのスプレー装置30と、搬送部としてのコンベア40と、排気装置50とを備えている。
【0016】
洗浄室10は、水91を保持する水槽11と、水槽11上に配置され、内部を搬送されるプリント基板99に対して水が吹き付けられる領域である洗浄領域12とを含んでいる。洗浄領域12は、洗浄室10において水で満たされていない領域である。また、洗浄室10には、洗浄室10内にワーク(プリント基板99)を搬入するための搬入口13と、洗浄室10内から外部へとワーク(プリント基板99)を搬出するための搬出口14とが形成されている。
【0017】
オゾン供給装置20は、洗浄室10内にオゾンを含む空気を供給する。オゾン供給装置20は、オゾンを含む空気を生成させるオゾン発生部21と、オゾン発生部21に接続され、オゾンを含む空気を洗浄室10に流す流路である樹脂チューブ22とを含んでいる。この樹脂チューブ22が本発明の気体供給路に対応する。樹脂チューブ22の、オゾン発生部21に接続される側とは反対側の端部である気体吐出口23は、水91中に浸漬されている。すなわち、気体吐出口23は、洗浄室10の水槽11内に配置されている。樹脂チューブ22内部は水槽11から流れてくる水滴および水蒸気により高い湿度が維持されている。この湿気とオゾンとが反応することにより、空気が水槽11に供給される前に、事前にOHラジカルが生成される。
【0018】
オゾン供給装置20のオゾン発生部21は、図2に示すように、プラズマ電極26と、プラズマ電極26に接続され、プラズマ電極26に高電圧を供給する高圧電源25と、外部の空気を吸入し、当該空気をプラズマ電極26に送る空気供給部としてのエアポンプ27と、オゾン発生部21の外部とエアポンプ27とを接続する空気流路28とを含んでいる。
【0019】
スプレー装置30は、プリント基板99に水(純水)を噴射することによりプリント基板99を洗浄する。スプレー装置30は、洗浄室10の外部に配置されたウォーターポンプ32と、一方の端部において洗浄室10の水槽11に接続され、他方の端部においてウォーターポンプ32に接続された第1洗浄水流路31と、一方側においてウォーターポンプ32に接続され、他方側が洗浄室10の洗浄領域12内に位置するように洗浄室10内に侵入する第2洗浄水流路33とを含んでいる。そして、第2洗浄水流路33の、洗浄領域12内に位置する領域には、第2洗浄水流路33内の水をコンベア40上のプリント基板99に向けて噴射する複数のスプレーノズル34が設置されている。
【0020】
コンベア40は、洗浄室10の洗浄領域12を貫通するように配置されている。これにより、コンベア40上に載置された複数のプリント基板99は、前工程の装置(図示しない)から搬入口13を通って水洗装置1内に進入し、水洗装置1内を通過した後、搬出口14を通って水洗装置1の外部へと搬送される。そして、水洗処理が完了したプリント基板99は、コンベア40により後工程の装置(図示しない)へと搬送される。上記複数のスプレーノズル34は、プリント基板99の搬送方向に沿って並べて配置されている。
【0021】
排気装置50は、排気ダクト51と、排気ポンプ52とを含んでいる。排気ダクト51は、一方の端部において洗浄室10の洗浄領域12の壁面、より具体的には洗浄室10の上壁面(天井)に接続され、他方の端部において排気ガス処理装置(図示しない)に接続されている。排気ポンプ52は、排気ダクト51に設置されており、排気ダクト51を通して洗浄室10内の雰囲気ガスを排気ガス処理装置へと送る。
【0022】
次に、水洗装置1の動作について説明する。図1を参照して、たとえばエッチングが実施されたプリント基板99がコンベア40上に載置され、搬入口13を通って洗浄室10の洗浄領域12内へと搬送される。洗浄領域12内のプリント基板99は、所定の搬送方向(矢印α)に沿って所定の速度で移動する。一方、洗浄室10の底部である水槽11に貯留された水91は、ウォーターポンプ32により、第1洗浄水流路31を通して外部に取り出された後、第2洗浄水流路33へと送られる。そして、第2洗浄水流路33内の水は、洗浄水92としてスプレーノズル34から噴射され、プリント基板99が洗浄される。これにより、たとえばエッチング工程においてプリント基板99に付着した不要な物質が洗浄水92により除去される。
【0023】
ここで、洗浄室10内には、前工程においてプリント基板99に付着した有機物などが持ち込まれ、上記水洗によって水91内に混入する。そのため、洗浄室10内は、カビなどが発生、増殖しやすい環境となる。カビなどのパーティクルは、プリント基板99に付着すると、不良率の上昇などの問題を引き起こす可能性がある。
【0024】
これに対し、本実施の形態における水洗装置1は、オゾン供給装置20を備えている。オゾン供給装置20は以下のように動作する。図2を参照して、まず、エアポンプ27により、外部の空気が空気流路28を通してオゾン発生部21内に取り入れられる。取り入れられた空気は、エアポンプ27によりプラズマ電極26へと送られる(矢印β)。プラズマ電極26には、高圧電源25から高電圧が供給されている。その結果、エアポンプ27から送られた空気中におけるプラズマ電極26からの放電により、空気に含まれる酸素からオゾンが形成され、オゾンを含む空気が生成される。生成したオゾンを含む空気は、図1を参照して、樹脂チューブ22を通して洗浄室10の水槽11へと送られる。このとき、樹脂チューブ22の、オゾン発生部21に接続された側とは反対側の端部である気体吐出口23は、水91中に浸漬されている。そのため、オゾンを含む空気は、気泡93として水91内に供給されるとともに、水面まで上昇した後、洗浄領域12内に放出される。
【0025】
水槽11内に供給されたオゾンは、水91と反応することによりOHラジカルを形成する。そして、このOHラジカルの殺菌機能によって、水91中のカビなどの発生、増殖が抑制される。特に、本実施の形態における水洗装置1では、スプレー装置30によって、OHラジカルを含む水91が汲み上げられて洗浄水92としてスプレーノズル34から噴射される。そのため、OHラジカルを含む水がミスト状となって洗浄領域12内の全域に供給される。さらに、水面に到達したオゾンを含む空気の気泡は洗浄領域12内に放出されるため、洗浄領域12内の水と反応し、更なるOHラジカルを生成する。このように、本実施の形態における水洗装置1においては、オゾンを含む空気のバブリングと、スプレーノズル34によるミスト形成との組み合わせにより、効率よくOHラジカルを含む水が洗浄室10内の全域に供給される。そのため、洗浄室10内のカビの発生等が有効に抑制される。その結果、洗浄室10の清掃の頻度を低減し、プリント基板製造ラインの稼働率を向上させることができる。
【0026】
ここで、上記水洗処理に際しては、排気装置50の動作によって洗浄室10内は外部に対して負圧状態に維持される。より具体的には、排気ダクト51および排気ポンプ52によって、洗浄室10内の雰囲気ガスが排気ガス処理装置(図示しない)へと送られることにより、洗浄室10内は大気圧よりも低い圧力に維持される。そのため、洗浄室10の洗浄領域12に放出されたオゾンは、搬入口13や搬出口14から外部へと放出されることはない。また、洗浄領域12に放出されたオゾンは、排気ガス処理装置へと送られた後、排気ガス処理装置内において化学反応などを利用して他の物質に変換されたうえで、外部へと放出される。その結果、洗浄室10内において消費されなかったオゾンが外部へと放出されることが回避される。
【0027】
なお、オゾン供給装置20から水槽11に導入される空気のオゾン(プラズマ)濃度は、特に限定されるものではないが、50ppm〜5000ppmの範囲であればよく、洗浄室10の大きさや水槽11に貯水されている水の量に応じて調整すればよい。好ましくは500〜600ppmであればよい。この空気を5〜150L/分程度の流量で水槽11に導入してバブリングさせる。
【0028】
なお、上記実施の形態においては、本発明の一実施の形態として上記構造を有する水洗装置1について説明したが、本発明の水保持槽はこれに限られるものではなく、種々の構造を有する水洗装置に適用することができる。
【0029】
また、本発明の水保持槽は水洗装置に限定されるものではなく、たとえばクーリングタワー、廃棄処理装置(スクラバー)など、内部の少なくとも一部に水槽を有する装置であれば、種々の構造を有するものに適用することができる。また、所謂どぶ漬けのメッキ槽などスプレー装置30を持たない装置であっても本発明は適用可能である。このような装置に本発明を適用する場合、気体吐出口23をシャワーヘッド状にして細かい泡を多数発生させるようにすればより良い。また金型洗浄装置などの機器に適用することも可能である。
【0030】
この実施形態では、高圧放電によってオゾンを発生させる方式のオゾン供給装置20を用いたが、オゾン供給装置20のオゾン発生の方式はこれに限定されない。たとえば、紫外線や電気分解を用いる方式を採用することも可能である。また、本発明は、オゾン供給装置に代えてOHラジカル供給装置を用いる構成も含んでいる。
【0031】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示された範囲、そして特許請求の範囲と均等な意味および範囲内でのすべての変更、改良が含まれることが意図される
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の水洗装置は、カビなどの発声を抑制することが求められる水洗装置に、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0033】
1 水洗装置、10 洗浄室、11 水槽、12 洗浄領域、13 搬入口、14 搬出口、20 オゾン供給装置、21 オゾン発生部、22 樹脂チューブ、23 気体吐出口、25 高圧電源、26 プラズマ電極、27 エアポンプ、28 空気流路、30 スプレー装置、31 第1洗浄水流路、32 ウォーターポンプ、33 第2洗浄水流路、34 スプレーノズル、40 コンベア、50 排気装置、51 排気ダクト、52 排気ポンプ、91 水、92 洗浄水、93 気泡、99 プリント基板。

図1
図2