(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0019】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る空調制御システムの一実施の形態を示した全体構成図である。
図1には、空調制御対象とするテナントビル1が示されている。テナントビル1の1階はビル管理会社が使用し、それより上層階の各フロア(以下、「テナント階」とも称する)2は各テナントによって使用される。もちろん、使用するフロアの割当ては、この例に限定されるものではない。本実施の形態を適用するテナントビル1は、空調、照明等のビル設備のオンオフ制御をビル管理会社側のみが可能とし、テナント側はできないようになっている。つまり、温度設定用の操作パネルなどは、テナント階に設置されていない、但し、後述するように、PC7を用いた温度設定は、テナントサービスの一環としてテナント側に許容されているものとする。
【0020】
ビル管理会社が使用するフロアには、テナントビル1における空調、照明等のビル設備を集中的に監視、制御管理する1又は複数のコンピュータにより実現されるビル設備監視システム3と、設定温度の変更等各テナントにおける設定変更に関する情報等をPC7から収集、管理するテナントサーバ10とが配置される。ビル設備監視システム3とテナントサーバ10とは、LAN(Local Area Network)等のネットワーク4で接続されている。
【0021】
各フロア2には、テナントの居住空間(以下、「エリア」とも称する)を空調するために1又は複数のVAV(可変風量装置)5と、これらのVAV5を制御するためのコントローラ6が配設されている。1つのフロア2には、1又は複数のエリアが設けられ、1つのエリアには、1又は複数のVAV5が対応付けして配置される。また、1つのテナントは、契約により1又は複数のフロア2の1又は複数のエリアを居住空間として使用する。ビル設備監視システム3は、各フロア2に配設されたコントローラ6を接続し、テナントビル1における空調制御を行う。具体的には、ビル設備監視システム3は、制御しようとするVAV5を接続したコントローラ6に対して指示を出し、コントローラ6は、当該VAV5に対して指示された温度(絶対温度)で動作するよう制御する。また、VAV5に対応させて温度センサ(図示せず)が設置されている。温度センサにより測定された室温データは、温度センサ又はVAV5の識別情報と共にコントローラ6を介してビル設備監視システム3に収集される。ビル設備監視システム3は、各VAV5の空調範囲における室温をリアルタイムに把握できる。
【0022】
なお、ビル設備監視システム3は、照明等他のビル設備の監視も行うが、本実施の形態の説明に用いないので他のビル設備に関しては図から省略している。また、本実施の形態では、空調機器としてVAV5を使用した例を示したが、これは一例であって、CAV(定風量装置)など他の空調機器、又はこれらを組み合わせて使用してもよい。
【0023】
各テナントの居住空間には、テナント所有の1又は複数のPC7が設けられている。PC7は、インターネット等のネットワーク8を介してテナントサーバ10と接続される。セキュリティの関係上、外部とのネットワーク8との接続部分にはファイヤウォールを設けているが、本実施の形態では便宜的に図から省略している。なお、本実施の形態では、外部のネットワーク8を介してPC7とテナントサーバ10とを接続するよう構成したが、テナントビル1の内部に構築したネットワーク(図示せず)を介して接続してもよい。
【0024】
本実施の形態における空調制御システムは、空調制御単位毎に設定した基準温度に対する相対温度での設定温度変更指示に応じて空調制御を空調制御単位で行う。本実施の形態でいう空調制御単位というのは、テナントビル1のエリア単位若しくはフロア単位、又はテナント単位である。基本的には、テナント等の領域毎に空調制御を行うが、空調機器単位でも空調制御を行うことは可能である。
【0025】
図2は、本実施の形態におけるテナントサーバ10のハードウェア構成図である。本実施の形態においてテナントサーバ10を形成するサーバコンピュータは、従前から存在する汎用的なハードウェア構成で実現できる。すなわち、コンピュータは、
図2に示したようにCPU21、ROM22、RAM23、ハードディスクドライブ(HDD)24を接続したHDDコントローラ25、入力手段として設けられたマウス26とキーボード27、及び表示装置として設けられたディスプレイ28をそれぞれ接続する入出力コントローラ29、通信手段として設けられたネットワークコントローラ30を内部バス31に接続して構成される。
【0026】
なお、ビル設備監視システム3もコンピュータで構築されることから、そのハードウェア構成は、
図2と同じように図示することができる。
【0027】
図3は、本実施の形態におけるテナントサーバ10のブロック構成図である。本実施の形態におけるテナントサーバ10は、情報取得部11、基準温度決定部12、基準温度設定指示部13、制御部14、変更指示情報記憶部15、テナント情報記憶部16及び基準温度情報記憶部17を有している。
【0028】
情報取得部11は、取得手段として設けられ、設定温度変更指示を少なくとも取得し、その取得した設定温度変更指示に基づき生成した変更指示情報を変更指示情報記憶部15に蓄積する。基準温度決定部12は、基準温度決定手段として設けられ、変更指示情報記憶部15に記憶された現運用期間における実績情報を解析することによって現運用期間以降の運用期間における当該空調制御単位の基準温度を決定する。基準温度設定指示部13は、基準温度決定部12により決定された基準温度を新たな設定温度として空調制御するようにビル設備監視システム3に指示する。制御部14は、テナントサーバ10における各構成要素11〜13の全体制御を行う。
【0029】
図4は、本実施の形態におけるテナント情報記憶部16に予め設定されるテナント情報のデータ構成の一例を示した図である。テナント情報には、テナントビル1に入居している、あるいは入居していたテナントに関する情報が登録されている。テナント情報には、「テナント」、「入居日」、「退居日」、「エリア」、「変更」及び「VAV」が含まれている。「テナント」には、会社名等テナントを識別する情報が設定される。「入居日」には当該テナントがテナントビル1に入居した日が、「退居日」には退居した場合にはその退居した日が、それぞれ設定される。「エリア」には、当該テナントが入居しているエリアを識別するエリア情報が設定される。エリア情報によって、借りている部屋の番号とその部屋のあるフロアが判別できる。本実施の形態では、「エリア」と「部屋」とは同義で用いているが、部屋という閉空間でないオープンエリアも同等に管理している。テナントが複数のエリアを借りている場合には、
図4に例示したように各エリアに対応させて「変更」及び「VAV」をそれぞれ設定する。「変更」には、当該エリアの設定温度の変更の可否が設定される。「VAV」には、VAV5の機器番号等当該エリアに配設されているVAV5を識別する情報が設定される。
【0030】
図4に示した例によると、テナント(会社A)は、2010年1月1日に入居してからまだ退居していないこと、3階にあるR1〜R3の3部屋を借りていること、このうち部屋R1は、V301,V302のVAV5により空調されていること、温度変更が可能であること、が把握できる。テナント、又はテナントとエリアとの関係等、テナント情報の設定内容の変更が必要になった場合、ビル管理者は、その変更に応じてテナント情報の設定内容を速やかに変更する。
【0031】
図5は、本実施の形態における基準温度情報記憶部17に設定される基準温度情報のデータ構成の一例を示した図である。基準温度情報には、空調制御単位となる「領域」毎に「運用期間」及び当該運用期間における「基準温度」が設定される。
図5に示した例では、空調制御単位となる「領域」にテナントを設定している例が示されているが、これに限らず、テナントビル1のエリア単位若しくはフロア単位などの領域、あるいはVAV(空調機器)5を設定してもよい。また、「運用期間」には、設定された温度を当該基準温度として運用する期間の始期及び終期が設定される。
図5に示した例では、運用期間を1月から開始する3月毎としているが、この期間の始期や長さは、これに限定する必要はない。
【0032】
テナントサーバ10における各構成要素11〜14は、テナントサーバ10を形成するコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPU21で動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、各記憶部15〜17は、テナントサーバ10に搭載されたHDD24にて実現される。あるいは、RAM23又は外部にある記憶手段をネットワーク経由で利用してもよい。
【0033】
また、本実施の形態で用いるプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROMやDVD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。通信手段や記録媒体から提供されたプログラムはコンピュータにインストールされ、コンピュータのCPUがプログラムを順次実行することで各種処理が実現される。
【0034】
次に、本実施の形態における動作について説明する。本実施の形態では、特に断らない限り空調制御をテナント毎に行う場合を例にして説明する。
【0035】
本実施の形態におけるビル設備監視システム3は、前述したように温度設定用の操作パネルを設けておらず、各テナントが有しているPC7からのみ設定温度の変更を可能にしている。従って、室温が暑い、寒いなどと感じたことにより設定温度を変更したいテナントの居住者は、PC7から所定の操作を行うことで所定の温度変更用画面を表示させる。より具体的に言うと、テナントサーバ10のHTML形式で記述された所定の温度変更用画面の格納先(URL)をアクセスして、PC7に搭載されたブラウザに温度変更用画面を表示させる。なお、「居住者」というのは、空調制御単位となる領域を借りているテナントに所属する社員等である。
【0036】
居住者は、表示された温度変更用画面から、基準温度に対する相対温度(偏差)として上げたい温度若しくは下げたい温度の幅を入力する操作を行う。続いて、居住者が温度設定ボタンの選択等所定の操作指示をすると、PC7は、入力された相対温度、入力操作された日時及び居住者が所属するテナントを含む設定温度変更指示をネットワーク8を介してテナントサーバ10に送信する。
【0037】
情報取得部11は、いずれかのPC7から設定温度変更指示を取得すると、その取得した設定温度変更指示から実績情報として変更指示情報を生成して変更指示情報記憶部15に登録する。
【0038】
図6は、本実施の形態における変更指示情報記憶部15に蓄積された変更指示情報のデータ構成の一例を示した図である。変更指示情報には、居住者がPC7を操作して設定温度の変更を指示した日時を示す「操作日時」、居住者が居住する場所(テナント)を特定する「領域」、及び変更指示内容として相対温度が設定される「変更操作」が含まれている。このうち、「領域」は、空調制御単位となる領域なので、本実施の形態の場合、テナントの識別情報が設定される。情報取得部11は、いずれかのPC7から設定温度変更指示が送信されてくる度に、その設定温度変更指示に基づき変更指示情報を生成して変更指示情報記憶部15に逐次登録する。
【0039】
設定温度変更指示を送信するPC7がどの領域に対応しているかは、居住者に温度変更用画面から指定させるようにしてもよい。あるいは、PC7と領域との対応関係が設定された対応関係情報の記憶手段をテナントサーバ10に事前に設けておいてもよい。そして、PC7は、領域の代わりに自己のPC7の識別情報を含む設定温度変更指示をテナントサーバ10へ送信し、テナントサーバ10における情報取得部11は、対応関係情報の記憶手段を参照することによりPC7の識別情報を領域の属性情報に変換して変更指示情報を生成する。
【0040】
続いて、本実施の形態における基準温度設定処理について
図7に示したフローチャートを用いて説明する。この基準温度設定処理は、現時点を含む運用期間である現運用期間(例えば、
図5に示した基準温度情報の設定例に従うと、本日が2012年8月30日であれば、現運用期間は2012年07月〜2012年9月)が終了した時点で実行が開始される。ただ、厳密には、新たに設定した基準温度での空調制御が開始される前までに基準温度設定処理が終了していればよい。
【0041】
現運用期間が終了したことを検知すると、制御部14は、基準温度決定部12を起動する。基準温度決定部12は、起動されると、変更指示情報記憶部15から現運用期間における当該領域(
図6に示した例では“会社A”)の変更指示情報を抽出することで取得する(ステップ101)。抽出した各変更指示情報の変更操作には、“+2℃”、“−1℃”などの相対温度が含まれているので、変更操作の種類毎、つまり相対温度毎に操作回数を集計する。この集計した結果を表示形式で示した図を
図8に示す。なお、
図8において変更操作における「基準温度(27℃)」というのは、現在の設定温度を現運用期間における当該領域の基準温度である27℃に戻すための変更操作であり、温度変更用画面から指定可能な変更操作である。
【0042】
図8に示した集計結果の例によると、“−2℃”という変更操作が25回と最多であることがわかる。従って、基準温度決定部12は、この最多となる変更操作を特定し(ステップ103)、この特定した変更操作に相当する相対温度に基づき来年の同一運用期間における当該領域の基準温度を決定する(ステップ104)。具体的には、現運用期間である2012年7月〜同年9月における会社Aの基準温度“27℃”からの現運用期間における会社Aの設定温度の偏差を“−2℃”と特定したので、この特定した偏差“−2℃”を、基準温度“27℃”に加算することによって、来年の同一運用期間(2013年7月〜同年9月)における会社Aの基準温度を“25℃”と決定する。
【0043】
以上のようにして、来年の同一運用期間における会社Aの基準温度を決定すると、基準温度設定指示部13は、ビル設備監視システム3に対して、来年の同一運用期間における会社Aに対しては、決定した基準温度“25℃”を設定温度として空調制御を行うよう通知する(ステップ105)。より具体的には、基準温度設定指示部13は、テナント情報記憶部16を参照することによって当該テナント“会社A”に対応するVAV5(VAV301〜V306)を特定し、その特定したVAV5に対して設定温度(基準温度)で動作させるよう通知する。
【0044】
ビル設備監視システム3は、この通知を受けて、該当するVAV5が設定温度“25℃”で動作するよう制御することになるが、実際の設定温度(基準温度)の変更は来年の同一運用期間なので、基準温度設定指示部13は、設定温度の変更時点になるまで通知を待機するようにしてもよい。あるいは、通知する内容に変更時期を示す情報を付加してビル設備監視システム3に通知するようにしてもよい。この場合、ビル設備監視システム3は、変更時期になるまで通知された指示内容を保持することになる。
【0045】
本実施の形態では、空調制御単位としてテナントを例にして説明したが、VAV5単位でも設定温度の変更を行うことができる。本実施の形態では、以上説明したように、居住者により温度変更操作という実績を蓄積し、その操作実績を解析することによって新たに設定すべき基準温度を自動的に決定し、また、ビル設備監視システム3に設定温度の変更指示を自動的に行うようにしたので、空調制御単位となる領域の数が多大であっても、ビル管理者等に対する基準温度の設定変更に伴う処理負荷が増えることはない。
【0046】
本実施の形態では、設定されている基準温度における空調の運用に対し、暑い、又は寒いと感じる機会が多ければ多いほど、PC7から送られてくる設定温度変更指示の数が多くなると考えられる。そこで、操作回数の多い設定温度に基準温度を変更すれば、送られてくる設定温度変更指示の数が減少することになるので、より適切な空調が実現可能になると考えられる。換言すると、居住者が温度変更用画面を通じて設定温度の変更指示をする回数を減少させることになるので、居住者にとっても便宜である。
【0047】
前述した例のように、2012年7月〜9月の現運用期間における基準温度“−27℃”が高かったため、現運用期間においては、結果として“−2℃”を入力操作した居住者が多かった。つまり、7月〜9月という運用期間の時節においては、“−27℃”という温度設定では高いと感じる人が多かったので、来年の同一運用期間(2013年7月〜9月)における基準温度を“−25℃”とすることによって、当該テナント“会社A”に所属する居住者に対しては、来年はより快適な環境を提供できることになると考えられる。
【0048】
このように、本実施の形態では、現運用期間(2012年7月〜9月)以降の運用期間として、来年の同一運用期間(2013年7月〜9月)である場合を例にして説明した。ただ、現運用期間以降の運用期間として、1年先と限定する必要はない。例えば、今夏が暑かったため、これに続く秋も暑くなるだろうと予想できるかもしれない。この場合、現運用期間(2012年7月〜9月)以降の運用期間を、継続する次の運用期間(2012年10月〜12月)としてもよい。このように、現運用期間以降の運用期間のうち基準温度を決定する運用期間というのは、1年先に限定する必要はなく、例えばビル管理者等が適宜決めてもよい。
【0049】
これらの変形例は、後述する実施の形態においても同様である。
【0050】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、ある領域(上記例ではテナント“会社A”)における居住者による設定温度変更操作の回数が最多となる変更操作(相対温度)を基準温度との偏差として、来年同一運用期間における基準温度を計算により求めた。本実施の形態では、設定温度変更操作を行った居住者の属性をも考慮して偏差を特定するようにしたことを特徴とする。
【0051】
図9は、本実施の形態におけるテナントサーバ10のブロック構成図である。本実施の形態において、上記実施の形態1と同じ構成要素には同じ符号を付け、説明を省略する。本実施の形態におけるテナントサーバ10は、実施の形態1の構成に、重み情報記憶部18を加えた構成を有する。重み情報記憶部18は、テナントサーバ10に搭載されたHDD24にて実現される。あるいは、RAM23又は外部にある記憶手段をネットワーク経由で利用してもよい。なお、本実施の形態における空調制御システムの全体構成は、実施の形態1と同じでよい。
【0052】
図10は、本実施の形態における重み情報記憶部に記憶された重み情報のデータ構成の一例を示した図である。重み情報は、居住者属性に重みを対応付けて構成される。本実施の形態において居住者の属性情報として設定する居住者属性は、各居住者の職務を示す情報であり、役職を有する「役職者」と、役職の有無にかかわらず省エネの担当者を任されている「省エネ担当者」と、それ以外の居住者を性別によって分類した「一般社員(男性)」及び「一般社員(女性)」と、であり、居住者はいずれかに分類される。もちろん、この分類は、一例であってこの分類に限定する必要はない。また、各居住者属性に割り振った重みの各値は一例であってこれに限定する必要はない。ただ、
図10に例示したように女性に優しい環境を提供するために女性に対する重みは男性以上とし、職務上、役職者に対する重みは一般社員以上とし、また省エネ担当者に対する重みは職務上、役職者以上として最高の重みを割り振るのが望ましい。
【0053】
次に、本実施の形態における動作について説明する。
【0054】
まず、PC7から送信されてくる設定温度変更指示に応じて変更指示情報を生成して変更指示情報記憶部15に登録する処理の内容自体は、実施の形態1と同じでよい。ただ、PC7が送信する設定温度変更指示には、入力された相対温度、入力操作された日時及び居住者の領域に加えて、入力操作し居住者の属性を特定しうる情報を含める必要がある。これは、居住者に温度変更用画面から自分の居住者属性を指定させるようにしてもよい。具体的には、設定可能な居住者属性のリストを温度変更用画面に表示させ、そのリストの中から該当する居住者属性を選択させればよい。あるいは、社員ID等居住者を識別する個人識別情報と居住者属性との対応関係が設定された対応関係情報の記憶手段をテナントサーバ10に事前に設けておいてもよい。そして、PC7は、居住者属性の代わりに操作者の個人識別情報を含む設定温度変更指示をテナントサーバ10へ送信し、テナントサーバ10における情報取得部11は、対応関係情報の記憶手段を参照することにより操作者の個人識別情報を居住者属性に変換して変更指示情報を生成する。このようにして生成された変更指示情報の例を
図11に示す。
【0055】
続いて、本実施の形態における基準温度設定処理について
図12に示したフローチャートを用いて説明する。
図12において、実施の形態1で説明に用いた
図7に示したのと同じ処理には同じステップ番号を付ける。この基準温度設定処理の全体の流れは、実施の形態1と同様でよいので、説明を適宜省略する。
【0056】
基準温度決定部12は、変更指示情報記憶部15から現運用期間における当該領域(
図6に示した例では“会社A”)の変更指示情報を抽出することで取得すると(ステップ101)、変更操作の種類毎居住者属性毎に操作回数を集計する(ステップ201)。このとき、集計した結果を表示形式で示した図を
図13に示す。
【0057】
ここで、実施の形態1における基準温度決定部12は、最多となる変更操作を特定するようにしたが、本実施の形態では、
図10に示した重み情報を参照し、各居住者属性における操作回数と当該重みとを積算し、その積算値の総和を求めることで操作回数を算出する。具体的には、例えば、
図13に示した例によると、“+2℃”の変更操作の場合、重みが2の一般社員(女性)が12回、重みが3の省エネ担当者が6回なので、重み付け操作回数は、12×2+6×3=42回と算出される。
【0058】
基準温度決定部12は、以上のようにして重み付け操作回数を変更操作毎に算出する(ステップ202)。この結果、
図13に示した集計結果の例によると、“+2℃”という変更操作における重み付け操作回数が42と最多であることがわかる。このように、基準温度決定部12は、現運用期間における会社Aの基準温度“27℃”からの設定温度の偏差を“+2℃”と特定したので、この特定した偏差“+2℃”を、基準温度“27℃”に加算することによって、来年の同一運用期間における会社Aの基準温度を“29℃”と決定する(ステップ104)。
【0059】
図13には、参考までに単純に操作回数を集計した場合の値を示しているが、この値からも明らかなように、基準温度の操作回数が20と最多である。従って、実施の形態1であれば、基準温度“27℃”がそのまま次の運用期間における基準温度となる、これに対し、本実施の形態を適用すると、次の運用期間における基準温度は、“29℃”と変更されることになる。
【0060】
基準温度が決定されると、基準温度設定指示部13は、ビル設備監視システム3に対して、来年の同一運用期間における会社Aに対しては、決定した基準温度“29℃”を設定温度として空調制御を行うよう通知する(ステップ105)。
【0061】
本実施の形態によれば、現運用期間以降の運用期間における基準温度を決定する際、役職者、省エネ担当者に対する重みを重く設定する、つまり重要度を高く設定した重み情報を参照するようにしたので、管理的、省エネ的見地からの温度設定変更操作を重要視することができる。
【0062】
実施の形態3.
上記各実施の形態においては、設定温度変更指示の内容、つまりテナント居住者により入力された相対温度による温度設定という実績に基づいて現運用期間以降の運用期間における基準温度を決定した。本実施の形態では、テナントビル1内の各領域に対する設定温度及び当該領域の室温という実績に基づいて現運用期間以降の運用期間における基準温度を決定するようにしたことを特徴としている。
【0063】
図14は、本実施の形態におけるテナントサーバ10のブロック構成図である。本実施の形態において、上記実施の形態1と同じ構成要素には同じ符号を付け、説明を省略する。本実施の形態におけるテナントサーバ10は、実施の形態1の構成に、温度実績情報記憶部19を加えた構成を有する。温度実績情報記憶部19は、テナントサーバ10に搭載されたHDD24にて実現される。あるいは、RAM23又は外部にある記憶手段をネットワーク経由で利用してもよい。温度実績情報記憶部19の具体的なデータ構成については追って説明する。なお、本実施の形態における空調制御システムの全体構成は、実施の形態1と同じでよい。
【0064】
次に、本実施の形態における動作について説明する。
【0065】
まず、基準温度設定処理が実行される前までの動作は、実施の形態1と同じでよい。すなわち、居住者による設定温度変更指示に応じて変更指示情報を生成して変更指示情報記憶部15に登録する。
【0066】
続いて、本実施の形態における基準温度設定処理について
図15に示したフローチャートを用いて説明する。
図15において、実施の形態1で説明に用いた
図7に示したのと同じ処理には同じステップ番号を付ける。この基準温度設定処理の全体の流れは、実施の形態1と同様でよいので、説明を適宜省略する。
【0067】
基準温度決定部12は、制御部14により起動されると、変更指示情報記憶部15から現運用期間における当該領域(
図6に示した例では“会社A”)の変更指示情報を抽出することで取得し(ステップ101)、また、ビル設備監視システム3から当該領域の室温データを取得する(ステップ301)。そして、温度実績情報を生成する(ステップ302)。この温度実績情報記憶部19に記憶される温度実績情報のデータ構成例を
図16に示す。
【0068】
温度実績情報として、領域毎に、ある一日、例えば2012年7月1日における1時間毎の設定温度、室温、室温に対する設定温度の偏差、及びこれらの平均値が設定される。設定温度は、各時間内における1分毎に確認した当該領域の設定温度の平均値である。設定温度は、基準温度に、居住者による設定温度変更操作により指定され、当該時間において設定されている相対温度を加算して求められる。室温は、当該領域に設置の温度センサにより1分毎に計測された室温の平均値である。室温は、ビル設備監視システム3から取得した各時点(この例では1分毎)のデータを用いて算出される。
【0069】
基準温度決定部12は、各日の各時間帯における設定温度及び室温の平均値を算出すると、各時間帯における室温に対する設定温度の偏差を算出する。そして、各時間帯の偏差の平均値を算出することによって当該日の平均偏差(
図16に示した例では“+1.2”℃)を算出する。なお、室温は後段の処理で用いるので、各日の室温の平均値(
図16に示した例では“24.8”℃)を算出しておく。設定温度の平均値は用いないが、
図16のようについでに算出してもよい。
【0070】
以上のようにして、現運用期間における、ある一日の平均偏差及び平均室温を算出する。以上の算出処理を現運用期間に含まれる全ての日において行うことで温度実績情報を生成する。
【0071】
なお、本実施の形態では、一日として6時から23時までの間の設定温度及び室温を1時間毎に平均を求めるようにした。換言すると、空調制御の開始時刻を6時、終了時刻を23時としたが、この例に限定する必要はない。また、平均を求める時間幅も必ずしも1時間とする必要はない。
【0072】
また、上記説明では、基準温度設定処理が開始してから現運用期間全日の温度実績情報を生成するようにしたが、一日の運用時間(
図16に示した例では23時)が終了することで、当該日における温度実績情報は生成可能である。つまり、現運用期間内における各日の温度実績情報は、当該日の運用時間が終了してから後述するステップ303における処理が開始されるまでに生成されていればよい。
【0073】
各日における温度実績情報を生成すると、続いて、基準温度決定部12は、各日における平均偏差を平均偏差テーブルに設定する。この平均偏差テーブルに対するデータ設定例を
図17に示す。なお、平均偏差テーブルは、基準温度決定部12の内部、すなわちRAM23上に生成してもよいし、HDD24上に生成してもよい。
【0074】
平均偏差テーブルには、現運用期間内における各日の平均偏差が設定されることになるが、基準温度決定部12は、これらの平均偏差の平均値を算出することで運用期間における平均偏差(期間平均偏差、
図17に示した例では“+0.8”℃)を算出する(ステップ303)。
【0075】
同様に、基準温度決定部12は、各日における平均室温を平均室温テーブルに設定する。この平均室温テーブルに対するデータ設定例を
図18に示す。なお、平均室温テーブルは、基準温度決定部12の内部、すなわちRAM23上に生成してもよいし、HDD24上に生成してもよい。
【0076】
平均室温テーブルには、現運用期間内における各日の平均室温が設定されることになるが、基準温度決定部12は、これらの平均室温の平均値を算出することで運用期間における平均室温(期間平均室温、
図18に示した例では“25.2”℃)を算出する(ステップ304)。
【0077】
そして、基準温度決定部12は、ステップ303により特定した偏差(期間平均偏差)を、ステップ304により特定した室温(期間平均室温)に加算することによって、来年の同一運用期間における当該領域の基準温度を決定する(ステップ104)。
【0078】
図18に示した例のように室温が25.2 ℃、
図17に示した例のように偏差が+0.8℃であったとすると、来年の同一運用期間における当該領域の基準温度は、25.2+0.8=26.0℃と決定される。
【0079】
基準温度が決定されると、基準温度設定指示部13は、ビル設備監視システム3に対して、来年の同一運用期間における会社Aに対しては、決定した基準温度“26.0℃”を設定温度として空調制御を行うよう通知する(ステップ105)。
【0080】
本実施の形態によれば、現運用期間以降の運用期間における基準温度を決定する際、実際の設定温度と室温との関係に基づいて現運用期間以降の運用期間における基準温度を自動的に設定することができる。
【0081】
なお、上記各実施の形態においては、空調の温度設定用の操作パネルのないビルを例にして説明したが、操作パネルが設置され、その操作パネルからでも設定温度の変更が可能な場合、テナントサーバ10は、その設定温度の変更伴う設定温度変更指示を、操作パネルが接続されたコントローラ6、ビル設備監視システム3及びネットワーク4を介して取得すればよい。