【実施例1】
【0110】
以下に本発明に係るインクジェット記録用圧着原紙の実施例について具体的に説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例中の部及び%は、断らない限り乾燥重量部及び重量%を示す。また、各実施例及び比較例中のシリカの吸油量は、ISO 787−5に基づいて測定した吸油量を表し、各実施例及び比較例中のシリカの細孔容積は、水銀圧入法で測定した細孔容積を表す。
【0111】
<実施例1>
感圧接着剤組成物の調整:微粒子充填剤として吸油量が140ml/100gである沈降法シリカ(商品名:カープレックスFPS101/エボニックデグサジャパン社製)100重量部を水に添加して十分に分散した後、バインダーとして完全ケン化型ポリビニルアルコール(以下、「完全ケン化型PVA」と略)(商品名:ポバールV/日本酢ビ・ポバール社製)25重量部、非剥離性感圧接着剤として天然ゴムにメタクリル酸メチルを重合した天然ゴム系ラテックス(商品名:サイビノールFB943/サイデン化学社製)120重量部を混合し、硫酸マグネシウム10重量部を加えて、感圧接着剤組成物となる塗料を作成した。
インクジェット記録用圧着原紙の製造:作成した塗料を、エアーナイフコータにて米坪113g/m
2のフォーム用紙の両面に各々の面の塗工量が乾燥重量で6.0g/m
2となるように塗工し、インクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0112】
<実施例2>
実施例1において、吸油量が140ml/100gである沈降法シリカを、吸油量が180ml/100gである沈降法シリカ(商品名:ニップシールE−74P/東ソー・シリカ社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0113】
<実施例3>
実施例1において、吸油量が140ml/100gである沈降法シリカを、吸油量が250ml/100gである沈降法シリカ(商品名:ニップシールE−170/東ソー・シリカ社製)に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0114】
<実施例4>
実施例1において、吸油量が140ml/100gである沈降法シリカ100重量部を、吸油量が140ml/100gである沈降法シリカ50重量部と吸油量が180ml/100gである沈降法シリカ50重量部との混合物に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0115】
<実施例5>
実施例1において、吸油量が140ml/100gである沈降法シリカ100重量部を、吸油量が140ml/100gである沈降法シリカ50重量部と吸油量が250ml/100gである沈降シリカ50重量部との混合物に変更した以外は、実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0116】
<実施例6>
感圧接着剤組成物の調整:微粒子充填剤として吸油量が140ml/100gである沈降法シリカを75重量部と、吸油量が300〜330ml/100gで細孔容積が2.0ml/gであるゲル法シリカ(商品名:サイロジェットP−407/グレースデビソン社製)25重量部を水に添加して十分に分散した後、バインダーとして完全ケン化型PVA25重量部、非剥離性感圧接着剤として天然ゴムにメタクリル酸メチルを重合した天然ゴム系ラテックス120重量部を混合し、硫酸マグネシウム10重量部を加えて、感圧接着剤組成物となる塗料を作成した。
インクジェット記録用圧着原紙の製造:作成した塗料を、エアーナイフコータにて米坪113g/m
2のフォーム用紙の両面に各々の面の塗工量が乾燥重量で6.0g/m
2となるように塗工し、インクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0117】
<実施例7>
実施例6において、吸油量が140ml/100gである沈降法シリカの配合量を50重量部に変更し、吸油量が300〜330ml/100gで細孔容積が2.0ml/gであるゲル法シリカの配合量を50重量部に変更した以外は、実施例6と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0118】
<実施例8>
実施例6において、吸油量が140ml/100gである沈降法シリカの配合量を25重量部に変更し、吸油量が300〜330ml/100gで細孔容積が2.0ml/gであるゲル法シリカの配合量を75重量部に変更した以外は、実施例6と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0119】
<実施例9>
実施例7において、バインダーを完全ケン化型PVAから部分ケン化型ポリビニルアルコール(商品名:PVA−217:クラレ社製)25重量部に変更した以外は、実施例7と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0120】
<実施例10>
実施例7において、硫酸マグネシウムの配合量を5重量部に変更した以外は、実施例7と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0121】
<実施例11>
感圧接着剤組成物の調整:微粒子充填剤として吸油量が140ml/100gである沈降法シリカを50重量部と、吸油量が300〜330ml/100gで細孔容積が2.0ml/gであるゲル法シリカ50重量部を水に添加して十分に分散し、ブロッキング防止剤としてレーザー回折法による平均粒径が21μmである小麦粉澱粉8重量部を分散した後、バインダーとして完全ケン化型PVA25重量部、非剥離性感圧接着剤として天然ゴムにメタクリル酸メチルを重合した天然ゴム系ラテックス120重量部を混合し、硫酸マグネシウム10重量部を加えて、感圧接着剤組成物となる塗料を作成した。
インクジェット記録用圧着原紙の製造:作成した塗料を、エアーナイフコータにて米坪113g/m
2のフォーム用紙の両面に各々の面の塗工量が乾燥重量で6.0g/m
2となるように塗工し、インクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0122】
<実施例12>
実施例11において、小麦粉澱粉の配合量を15重量部に変更した以外は、実施例11と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0123】
<比較例1>
実施例6において、吸油量が140ml/100gである沈降法シリカの配合量を20重量部に変更し、吸油量が300〜330ml/100gで細孔容積が2.0ml/gであるゲル法シリカの配合量を80重量部に変更した以外は、実施例6と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0124】
<比較例2>
実施例7において、完全ケン化型PVAの配合量を10重量部に変更した以外は、実施例7と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0125】
<比較例3>
実施例7において、硫酸マグネシウムの配合量を1重量部に変更した以外は、実施例7と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0126】
<比較例4>
実施例1において、微粒子充填剤を吸油量が120ml/100gである沈降法シリカ(商品名:ニップシールE−75/東ソー・シリカ社製)100重量部に変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙の原紙を得た。
【0127】
<比較例5>
実施例1において、微粒子充填剤を吸油量が255ml/100gである沈降法シリカ(商品名:カープレックスFPS−1/エボニックデグサジャパン社製)100重量部に変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙の原紙を得た。
【0128】
<比較例6>
実施例7において、微粒子充填剤を吸油量が255ml/100gである沈降法シリカ50重量部と、吸油量が300〜330ml/100gで細孔容積が2.0ml/gであるゲル法シリカ50重量部とに変更した以外は、実施例7と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0129】
<比較例7>
実施例7において、微粒子充填剤を吸油量が140ml/100gである沈降法シリカ50重量部と、吸油量が280ml/100gで細孔容積が2.0ml/gであるゲル法シリカ(商品名:ガシルシリカHP39/PQコーポレーション社製)50重量部とに変更した以外は、実施例7と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0130】
<比較例8>
実施例7において、微粒子充填剤を吸油量が140ml/100gである沈降法シリカ50重量部と、吸油量が300ml/100gで細孔容積が1.8ml/gであるゲル法シリカ(商品名:サイロジェットP−508/グレースデビソン社製)50重量部とに変更した以外は、実施例7と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0131】
<比較例9>
実施例7において、硫酸マグネシウムの代わりにポリアミンエピクロルヒドリン樹脂(商品名:DK6850/星光PMC社製)20重量部を配合した以外は、実施例7と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0132】
<比較例10>
実施例7において、バインダーを酢酸ビニルとエチレンの共重合体エマルジョン(商品名:スミカフレックス401HQ/住化ケムテックス社製)25重量部に変更した以外は、実施例7と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0133】
<比較例11>
実施例7において、バインダーをスチレンとブタジエンの共重合体エマルジョン(商品名:L7063/旭化成社製)25重量部に変更した以外は、実施例7と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0134】
<比較例12>
実施例7において、バインダーをアクリル系樹脂(商品名:サイビノールEK65/サイデン化学社製)25重量部に変更した以外は、実施例7と同様にしてインクジェット記録用圧着原紙を得た。
【0135】
[耐ブロッキング性についての評価]
各実施例及び比較例において、巻取ったインクジェット記録用圧着原紙を巻戻す際のインクジェット記録用圧着原紙表面と裏面の貼付きの程度を、○、△、×の3段階で官能評価した。
○ 容易に剥がれ、良好である(耐ブロッキングが非常に良好)
△ わずかな貼り付きが感じられるが、実用上問題ない程度に剥がれる
× 剥がれにくく、実用に供し得ない(耐ブロッキング性に劣る)
【0136】
[物性評価用試料の調製]
各実施例及び比較例で得られたインクジェット用圧着原紙を23℃×50%RHの条件下で24時間調湿して水分含有率が7.0%となるようにした上で、感圧接着剤塗工層を設けた親展面に、インクジェットプリンタ(PX−101/セイコーエプソン株式会社製)にTruepressJet520(大日本スクリーン製造社製)用水性顔料インクを用いてフルカラーインクジェット記録を行った。、インクは、TruepressJet520用水性顔料インクを用いた。その後、10cm×10cmにカットした試験片を3枚重ねてドライシーラ(MS−9200II/大日本印刷株式会社製)にて感圧接着剤塗工層を設けた親展面同士を加圧接着した。
先にも述べたように、本発明のインクジェット記録用圧着原紙においては、水性顔料インクを用いてインクジェット印刷を行った場合であっても対向面にインクが転移しないことを目的の一つとしており、実施例においても対向面へのインク転移の評価を重視している。このため、加圧接着する際に可能な範囲で出来るだけ高い負荷をかけた上で転移の評価を行うものであるが、剥離強度が150g/25mm巾を超えるような高い加圧を加えるとインクジェット記録用圧着原紙が破れる虞がある。この点を考慮して、ドライシーラによる加圧は、接着直後の剥離強度が120〜140g/25mm巾となるようにシーラーギャップを設定して行った。こうして得られた圧着試験片の圧着面同士を剥離し、以下の要領で各種評価を行った。
【0137】
[滲みについての評価]
印刷直後の圧着面の記録画像の滲みを、○、△、×の3段階で目視にて評価した。なお、発明者等の知見によれば、印刷直後と圧着して剥離した後とで滲み状態に変化が見られることはほとんどない。
○ 滲みが無く良好である
△ やや滲みがあるが、実用上問題がないレベルである
× 滲みがありバーコードの読み取りなどの点で、実用に供し得ない
【0138】
[発色濃度についての評価]
印刷直後の圧着面の記録画像の発色濃度を、◎、○、△、×の4段階で目視にて評価した。なお、発明者等の知見によれば、印刷直後と圧着して剥離した後とで発色濃度に変化が見られることはほとんどない。
◎ 発色濃度が非常に高く良好である
○ 発色濃度が高く、実用上問題がないレベルである
△ 発色濃度が低く、実用に供し得ない
× 発色濃度が非常に低くバーコードの読み取りなどができず、実用に供し得ない
【0139】
[対向面への転移についての評価]
剥離後に、一方の圧着面に印刷された記録画像が対向面(もう一方の圧着面)に転移していないかを、◎、○、△、×の4段階で目視にて評価した。
◎ 対向面への転移がまったく見られず、良好である
○ 対向面への転移がごくわずかに見られるが、実用上問題がないレベルである
△ 対向面への転移がはっきり見られ、実用に供し得ない
× 対向面への転移が多く見られ、実用に供し得ない
【0140】
[加圧ロールの汚れについての評価]
圧着葉書用紙を、ドライシーラを用いて葉書10,000枚相当分を圧着した後、前記シーラの加圧ロールの汚れ具合を、◎、○、△、×の4段階で目視にて評価した。
◎ 加圧ロールの表面に汚れがなく、良好である
○ 加圧ロールの表面が少し曇る程度で、実用上問題がないレベルである
△ 加圧ロールの表面に印字部のインク部分が取られて汚れており、実用に供し得ない
× 加圧ロールの表面に印字部のインク部分が取られて汚れが酷く、圧着原紙に汚れが転写して実用に供し得ない
【0141】
実施例及び比較例にて得られたインクジェット記録用圧着原紙に用いられた感圧接着剤組成物塗料の配合が
図5,6に、実施例及び比較例にて得られたインクジェット記録用圧着原紙の各物性の評価結果が
図7に、それぞれ示されている。なお、
図5,6のバインダの種類において、「PVA−A」とされているのは完全ケン化型ポリビニルアルコール、「PVA−B」とされているのは部分ケン化型ポリビニルアルコールである。
【0142】
図7の結果からも明らかなように、実施例1〜12で得られたインクジェット記録用圧着原紙は、何れも、滲み、発色濃度、加圧ロールの汚れ、対向面への転移、耐ブロッキング性の全てにおいて実用上問題のないものであった。
【0143】
[(1)沈降法シリカの吸油量についての検証(非晶質シリカについての検証1)]
まず、微粒子充填剤として用いる沈降法シリカの吸油量について検証を行う。実施例1〜5にて得られたインクジェット記録用圧着原紙は、微粒子充填剤として吸油量が140〜250ml/100gである沈降法シリカのみを用いたものであり、滲み、発色濃度、加圧ロールの汚れ、対向面への転移、耐ブロッキング性のいずれにおいても実用上問題のないものであった。
【0144】
一方、比較例4にて得られた、微粒子充填剤として吸油量が120ml/100gである沈降法シリカのみを用いたインクジェット記録用圧着原紙は、滲みが生じバーコードの読み取りなどの点で問題があり、実用上合格レベルに満たないものであった。これは、用いた沈降法シリカの吸油量が140ml/100gを下回っていたため、沈降法シリカの配合量が実施例1〜5の例と同様であるにも関わらず十分なインク吸収性が得られなかったことが原因であると考えられる。
【0145】
また、比較例5にて得られた、微粒子充填剤として吸油量255ml/100gである沈降法シリカのみを用いたインクジェット記録用圧着原紙は、発色濃度に劣り、バーコードの読み取りなどの点で問題があり、実用上合格レベルに満たないものであった。これは、用いた沈降法シリカの吸油量が250ml/100gを上回っていたため、沈降法シリカの配合量が実施例1〜5の例と同様であるにも関わらずインク吸収性が高くなりすぎ、十分な発色濃度が得られなかったものと考えられる。
【0146】
さらに、比較例6にて得られた、微粒子充填剤として吸油量255ml/100gである沈降法シリカ50重量部と、吸油量300〜330ml/100gで且つ細孔容積2.0ml/gであるゲル法シリカ50重量部とを用いたインクジェット記録用圧着原紙についても、発色濃度に劣るり実用上合格レベルに満たないものであった。これは、用いた沈降法シリカの吸油量が250ml/100gを上回っていたため、沈降法シリカの配合量と用いたゲル法シリカとその配合量が同様であった実施例7の例と比べてインク吸収性が高くなりすぎ、十分な発色濃度が得られなかったものと考えられる。
【0147】
以上の結果より、微粒子充填剤として用いる沈降法シリカの吸油量は、140〜250ml/100gの範囲であることが必要だと考えられる。
【0148】
[(2)ゲル法シリカの吸油量及び細孔容積についての検証(非晶質シリカについての検証2)]
次に、微粒子充填剤として沈降法シリカと併用して用いるゲル法シリカの吸油量及び細孔容積について検証を行う。実施例7で得られたインクジェット記録用圧着原紙は、微粒子充填剤として、吸油量140ml/100gの沈降法シリカ50重量部と、吸油量300〜330ml/100gで且つ細孔容積2.0ml/gであるゲル法シリカ50重量部とを用いたものであり、滲み、加圧ロールの汚れ、対向面への転移、耐ブロッキング性のいずれにおいてもが実用上問題がなく、また、発色性に優れ発色濃度が良好なものであった。
【0149】
一方、比較例7で得られたインクジェット記録用圧着原紙は、実施例7と同様の構成でゲル法シリカのみ吸油量280ml/100g、且つ細孔容積2.0ml/100gであるゲル法シリカ50重量部に変更したものであるが、加圧ロールの表面に印字部のインクが取られて汚れが発生し、実用上合格レベルに満たないものであった。実施例7と比較例7とは、用いたゲル法シリカの吸油量のみが異なるものであるため、上述の問題はゲル法シリカの吸油量が低いことにより発生したものと考えられる。
【0150】
また、比較例8で得られたインクジェット記録用圧着原紙は、実施例7と同様の構成でゲル法シリカのみ吸油量300ml/100g、且つ細孔容積1.8ml/100gであるゲル法シリカ50重量部に変更したものであるが、圧着面を剥離した際に対向面への転移が発生して実用上合格レベルに満たないものであった。実施例7と比較例8とは、用いたゲル法シリカの吸油量と細孔容積とが異なるものであるが、吸油量はほぼ同程度の値であるため実質的な違いは細孔容積のみであると考えられ、細孔容積が2.0ml/100gを下回ったことにより、十分なインク吸収性が得られずに対向面への転移が発生したものと考えられる。
【0151】
以上の結果より、沈降法シリカと併用して用いるゲル法シリカとしては、吸油量が300〜330ml/100g、且つ細孔容積が2.0ml/g以上であるものが望ましいと考えられる。
【0152】
[(3)非晶質シリカの配合比率の検証]
次に、非晶質シリカとして、沈降法シリカとゲル法シリカとを併用する場合の配合比率について検証を行う。実施例6〜8、及び比較例1は、沈降法シリカとゲル法シリカとの適切な配合比率を検証するために両者の配合比率のみを変更して検証を行ったものである。なお、実施例6〜8、及び比較例1では、吸油量140ml/100gの沈降法シリカと、吸油量300〜330ml/100g、且つ細孔容積2.0ml/gであるゲル法シリカとを用いて配合比率の検証を行っている。
【0153】
ここで、非晶質シリカとして沈降法シリカのみを使用した実施例1〜5により得られたインクジェット記録用圧着原紙において、いずれの物性についても実用上問題ないとの結果が出ていることから、沈降法シリカ:ゲル法シリカ=100:0での配合は、実用上問題のないレベルであると判断される。従って以下の検証は、ゲル法シリカの配合上限を確認するための検証であるとも言える。
【0154】
実施例6では、沈降法シリカ:ゲル法シリカ=75:25の比率で配合したところ、滲み、発色濃度、加圧ロールの汚れ、対向面への転移、耐ブロッキング性のいずれについても実用上問題のないインクジェット記録用圧着原紙が得られた。
【0155】
実施例7では、沈降法シリカ:ゲル法シリカ=50:50の比率で配合配合したところ、滲み、加圧ロールの汚れ、対向面への転移、耐ブロッキング性については実用上問題のないことに加え、発色濃度が良好なインクジェット記録用圧着原紙が得られた。
【0156】
実施例8では、沈降法シリカ:ゲル法シリカ=25:75の比率で配合したところ、加圧ロールの汚れ、対向面への転移、耐ブロッキング性については実用上問題のないことに加え、発色濃度が良好なインクジェット記録用圧着原紙が得られたが、滲みについては実用上問題ないレベルではあるものの、実施例7,8にて得られたインクジェット記録用圧着原紙よりも少し劣る傾向であった。
【0157】
一方、比較例1では、沈降法シリカ:ゲル法シリカ=20
:80の比率で配合したところ、滲み、発色濃度、対向面への転移については問題なかったが、加圧ロールへ印字部のインクが取られて汚れが発生し、この点で実用上合格レベルに満たないインクジェット記録用圧着原紙となった。これは、沈降法シリカの配合量が少なすぎたため、沈降法シリカによるインク定着性等の効果が十分に得られなかったことによるものと考えられる。
【0158】
以上の結果より、非晶質シリカとして沈降法シリカとゲル法シリカとを併用する場合には、沈降法シリカ:ゲル法シリカ=100:0〜25:75の範囲で配合することが好ましいと考えられる。
【0159】
[(4)硫酸マグネシウム配合の有無についての検証]
次に、硫酸マグネシウム配合の有無についての検証を行う。実施例7では、微粒子充填剤100重量部に対して硫酸マグネシウムを10重量部配合したところ、滲み、加圧ロールの汚れ、対向面への転移、耐ブロッキング性については実用上問題のないことに加えて、発色濃度が良好なインクジェット記録用圧着原紙が得られた。
【0160】
これに対して、比較例9では、微粒子充填剤100重量部に対してカチオン性樹脂であるポリアミンエピクロロヒドリン樹脂を20重量部配合したところ、対向面への転移と耐ブロッキング性については問題がなかったものの、滲みがやや見られることに加え、発色濃度も低く、また、印字部から加圧ロールに付着したインクが圧着原紙に転写されるなどして実用上合格レベルに満たないものであった。このことから、水性顔料インクを用いてインクジェット印刷を行う場合には、カチオン性樹脂では硫酸マグネシウムの代わりになり得ないと考えられる。
【0161】
以上の結果より、水性顔料インクによるインクジェット印刷を行う場合には、従来より水性染料インクの定着性を向上させる目的で用いられているカチオン性樹脂では実用に供し得ない結果となるため、硫酸マグネシウムを用いることが望ましいと判明した。
【0162】
[(5)硫酸マグネシウムの配合量についての検証]
続いて、硫酸マグネシウムの配合量について検証を行う。実施例7では、微粒子充填剤100重量部に対して硫酸マグネシウムを10重量部配合したところ、滲み、加圧ロールの汚れ、対向面への転移、耐ブロッキング性のいずれについても実用上問題がなく、加えて、発色濃度が良好なインクジェット記録用圧着原紙が得られた。
【0163】
また、実施例10では、微粒子充填剤100重量部に対して硫酸マグネシウムを5重量部を配合したところ、滲み、発色濃度、加圧ロールの汚れ、対向面への転移、耐ブロッキング性のいずれについても実用上問題のないインクジェット記録用圧着原紙が得られた。
【0164】
一方、比較例3では、微粒子充填剤100重量部に対して硫酸マグネシウム1重量部を配合したところ、滲み、加圧ロールの汚れ、対向面への転移、耐ブロッキング性については問題なかったものの、発色濃度が悪化し、この点で実用上合格レベルに満たないものであった。これは、硫酸マグネシウムの配合量が少なかったために硫酸マグネシウムによる効果が十分に得られず、発色濃度に劣るものとなったと考えられる。
【0165】
なお、本発明の実施例に記載はしていないが、本発明者等の検証に依れば、微粒子充填剤100重量部に対して硫酸マグネシウムを15重量部配合した場合には、感圧接着剤組成物の粘度が上昇して、安定的に塗工することが難しくなるという問題があった
【0166】
以上の結果より、硫酸マグネシウムの配合量としては、微粒子充填剤100重量部に対して5〜15重量部の範囲であることが望ましいと考えられる。
【0167】
[(6)バインダーの種類についての検証]
次に、実施例7,9、比較例10〜12に基づいてバインダーの種類についての検証を行う。なお、実施例7,9、及び比較例10〜12では、いずれも微粒子充填剤100重量部に対して25重量部のバインダーを配合している。
【0168】
実施例7ではバインダーとして完全ケン化型ポリビニルアルコールを用い、また、実施例9ではバインダーとして部分ケン化型ポリビニルアルコールを用いたところ、いずれの実施例で得られたインクジェット記録用圧着原紙についても、滲み、加圧ロールの汚れ、対向面への転移、耐ブロッキングについて実用上問題がなく、加えて発色濃度が良好なものであった。
【0169】
これに対して、比較例10ではバインダーとして酢酸ビニルとエチレンの共重合体エマルジョンを用い、比較例11ではバインダーとしてスチレンとブタジエンの共重合体エマルジョンを用い、比較例12ではバインダーとしてアクリル系樹脂を用いたところ、これらの比較例で得られたインクジェット記録用圧着原紙は、いずれも滲み、発色濃度、耐ブロッキング性の点では問題がなかったものの、対向面への転移と、加圧ロールの汚れが著しく、これらの問題により実用上合格レベルに満たないものであった。
【0170】
以上の結果より、バインダーの配合量は同じであっても、バインダーがポリビニルアルコールである場合(実施例7,9)は、バインダーがポリビニルアルコール以外である場合(比較例10〜12)よりも、加圧ロールの汚れと対向面への転移の点で優れているため、本発明のインクジェット記録用圧着原紙においては、バインダーとしてポリビニルアルコールを用いることが望ましい。また、用いるポリビニルアルコールとしては、完全ケン化型ポリビニルアルコール、部分ケン化型ポリビニルアルコールのいずれであっても問題ない。
【0171】
[(7)ポリビニルアルコールの配合量についての検証]
続いて、ポリビニルアルコールの配合量についての検証を行う。実施例7では、微粒子充填剤100重量部に対してポリビニルアルコール25重量部を配合したところ、滲み、加圧ロールの汚れ、対向面への転移、耐ブロッキング性のいずれについても実用上問題はないことに加えて、発色濃度が良好なインクジェット記録用圧着原紙が得られた。
【0172】
一方、比較例2では、微粒子充填剤100重量部に対してポリビニルアルコール10重量部を配合したところ、滲み、発色濃度については実用上問題なかったものの、対向面への転移、加圧ロールの汚れが発生して実用上合格レベルに満たないものとなった。加えて、バインダーの配合量が少なく感圧接着剤塗工層の表面強度が十分に得られないことで接着力の上昇によるブロッキングが発生するという問題もあった。なお、本発明の実施例に記載はしていないが、本発明者等の検証に依れば、微粒子充填剤100重量部に対してポリビニルアルコールの配合量が30重量部を上回った場合には、感圧接着剤組成物中の非剥離性接着剤の配合比率が相対的に低下したために接着力が低下し、加圧接着時の接着力のコントロールが困難になった。
【0173】
以上の結果より、ポリビニルアルコールの配合量は、微粒子充填剤100重量部に対して15〜30重量部であることが望ましいと考えられる。
【0174】
[(8)小麦粉澱粉の配合量についての検証]
次に、小麦粉澱粉の配合量についての検証を行う。実施例11では、微粒子充填剤100重量部に対して小麦粉澱粉8重量部を配合したところ、滲み、加圧ロールの汚れ、対向面への転移については実用上問題がないことに加え、発色濃度及び耐ブロッキング性が特に良好なものであった。特に、耐ブロッキング性については、小麦粉澱粉を配合していない以外は同様の構成である実施例7よりも優れていたことから、小麦粉澱粉を配合したことで耐ブロッキング性が向上したものと考えられる。
【0175】
また、実施例12では、微粒子充填剤100重量部に対して小麦粉澱粉15重量部を配合したところ、滲み、加圧ロールの汚れについては実用上問題のないことに加え、対向面への転移、発色濃度、及び耐ブロッキング性が特に良好なものであった。なお、本発明の実施例には記載していないが、本発明者等の検証に依れば、微粒子充填剤100重量部に対して小麦粉澱粉の配合量が30重量部を上回ると、感圧接着剤組成物中の非剥離性接着剤の配合比率が相対的に低下したことにより接着力が低下し、加圧接着時の接着力のコントロールが困難になった。
【0176】
以上の結果より、小麦粉澱粉を配合しなくても本発明の目的とするインクジェット記録用圧着原紙が得られるものの、対向面への転移、耐ブロッキング性により優れたものとするためには感圧接着剤組成物に小麦粉澱粉を配合することが好ましく、小麦粉澱粉の配合量は、微粒子充填剤100重量部に対して30重量部以内であることが望ましいものと考えられる。
【0177】
[実施例及び比較例についてのまとめ]
以上(1)〜(8)の検証の結果より、本発明のインクジェット記録用圧着原紙において感圧接着剤組成物には、微粒子充填剤としては吸油量が140〜250ml/100gである沈降法シリカ(A)を用い、バインダーとしては微粒子充填剤100重量部あたり15〜30重量部のポリビニルアルコールを用い、更に、微粒子充填剤100重量部に対して5〜15重量部の硫酸マグネシウムを用いることで、滲み、発色濃度、加圧ロールの汚れ、対向面への転移、耐ブロッキング性のいずれについても実用上問題がないインクジェット記録用圧着原紙を得ることが可能であると考えられる。
【0178】
また、微粒子充填剤として、さらに、吸油量が300〜330ml/100gで且つ細孔容積が2.0ml/g以上であるゲル法シリカ(B)を加え、沈降法シリカ(A)と前記ゲル法シリカ(B)とを、重量比が、沈降法シリカ(A):ゲル法シリカ(B)=100:0〜25:75の範囲となるように配合することで、水性顔料インクの発色濃度がより向上する。
【0179】
更に、微粒子充填剤100重量部に対して30重量部以内の小麦粉澱粉を配合することで、対向面への転移、及び耐ブロッキング性がより良好なインクジェット記録用圧着原紙とすることが可能であると思われる。