特許第5984654号(P5984654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984654
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】運搬装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/38 20150101AFI20160823BHJP
   E04H 6/42 20060101ALI20160823BHJP
   B60L 11/18 20060101ALN20160823BHJP
【FI】
   H04B1/38
   E04H6/42 Z
   !B60L11/18 C
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-273590(P2012-273590)
(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公開番号】特開2014-120865(P2014-120865A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 博美
(72)【発明者】
【氏名】村上 和則
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 公基
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−126835(JP,A)
【文献】 特開2010−174461(JP,A)
【文献】 特開2009−088750(JP,A)
【文献】 特表2009−529811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/38
E04H 6/42
B60L 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬対象物が各々に搭載される複数の被搭載部材と、
該被搭載部材を前記運搬対象物とともに移動させる移動機構と、
前記被搭載部材に各々設けられ、互いにマルチホップ方式の無線通信を行う複数の子機と、
移動体である前記被搭載部材に対して地上に固定配置され、前記子機とマルチホップ方式の無線通信を行う親機と、を具備し、
前記親機は、複数の前記子機との通信経路を含む親機ネットワーク情報を親機不揮発性記憶部に記憶して無線通信を行うことを特徴とする運搬装置。
【請求項2】
前記親機は、電源が遮断して再投入されると、前記親機不揮発性記憶部に記憶された親機ネットワーク情報を用いるか、あるいは新たに親機ネットワーク情報を構築するかを操作指示に基づいて選択することを特徴とする請求項1記載の運搬装置。
【請求項3】
前記親機は、自らが管理するネットワークに前記子機が参加したタイミングで前記親機不揮発性記憶部に記憶された親機ネットワーク情報を更新することを特徴とする請求項1または2記載の運搬装置。
【請求項4】
前記子機は、前記親機との通信経路を含む子機ネットワーク情報を子機不揮発性記憶部に記憶し、電源が遮断して再投入されると、前記子機不揮発性記憶部に記憶された子機ネットワーク情報を用いるか、あるいは子機ネットワーク情報を再構築するかを操作指示に基づいて選択することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の運搬装置。
【請求項5】
前記子機は、前記親機からの受信が一定期間途絶えると、前記親機までの通信経路を探索することにより前記子機ネットワーク情報を再構築することを特徴とする請求項4記載の運搬装置。
【請求項6】
前記子機は、前記親機が管理するネットワークに参加したタイミングで前記子機不揮発性記憶部に記憶された子機ネットワーク情報を更新することを特徴とする請求項4または5記載の運搬装置。
【請求項7】
前記運搬対象物である車両を前記被搭載部材であるパレットに搭載して収容する機械式駐車場であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の運搬装置。
【請求項8】
前記パレットには車両のバッテリに充電用電力を給電する充電装置が備えられ、前記子機と前記親機とは、前記充電装置の制御に関する情報を無線通信することを特徴とする請求項7記載の運搬装置。
【請求項9】
前記子機と前記親機とはZigbee(登録商標)に準拠した無線方式で無線通信を行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の運搬装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の運搬対象物を運搬する運搬装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の対象物を運搬する運搬装置の1つとして、車両(運搬対象物)を移動させて収容する機械式駐車場がある。この機械式駐車場は、周知のように、パレット上に載置された車両を所定の移動機構によって移動させることによって複数の車両を収容する機械装置である。例えば下記特許文献1、2には、このような機械式駐車場において、電気自動車用に上記パレットに充電機能を付加したもの(充電機能付き駐車装置)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−111804号公報
【特許文献1】特開2011−111805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1、2の技術では、電気自動車と共に移動する個々のパレットに充電装置が設けられるが、このような移動する充電装置を機械式駐車場を全体として制御する制御装置(地上に固定配置された地上制御装置)で制御する場合、無線通信によって充電装置を地上制御装置から制御することが考えられる。また、この場合の無線方式として、例えばアドホック方式かつマルチホップ方式の無線方式として周知のZigbee(登録商標)を採用することが考えられる。すなわち、Zigbeeに準拠したコーディネータ(無線親機)を地上制御装置に設け、またZigbeeに準拠したルータやエンドデバイス(無線子機)を各充電装置(各パレット)に設けることが考えられる。
【0005】
しかしながら、上記Zigbee(登録商標)を採用し、かつ、個別の電源から地上制御装置と充電装置とに給電する機械式駐車場では、充電装置(子機)への給電は正常に行われるものの、地上制御装置(親機)への給電が何らかの原因で遮断された場合に、地上制御装置(親機)への給電が復旧した後に、親機と子機との間で正常な通信が行えない。
【0006】
すなわち、給電の遮断によって親機内のネットワーク情報(子機や当該子機までの通信経路等を示す情報)が消失することにより親機はネットワークの再構築を試みるが、この結果親機に構築されるネットワーク(つまりネットワーク情報)は、子機が継続して保持しているネットワーク情報とは異なったものになり、これが原因で親機と子機とが正常な通信を行えないという問題もある。
【0007】
また、親機は、給電が再開された後に各子機との再接続によるネットワーク情報の再構築を行う必要があり、これが原因で給電が再開された後に各子機と速やかに通信を行うことができないという問題もある。このような親機への給電遮断に起因する問題点が存在するために、Zigbeeのような既存のアドホック方式かつマルチホップ方式の無線方式をそのまま機械式駐車場のような搬送装置に適用することはできない。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、運搬装置において親機への給電が遮断されても親機と子機との間での正常な通信を維持することを目的とする。
また、本発明は、運搬装置において親機への給電が遮断されてもネットワーク情報の再構築を行う必要がないことを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、運搬対象物が各々に搭載される複数の被搭載部材と、該被搭載部材を運搬対象物とともに移動させる移動機構と、被搭載部材に各々設けられ、互いにマルチホップ方式の無線通信を行う複数の子機と、移動体である被搭載部材に対して地上に固定配置され、子機とマルチホップ方式の無線通信を行う親機と、を具備し、親機は、複数の子機との通信経路を含む親機ネットワーク情報を親機不揮発性記憶部に記憶して無線通信を行う、という手段を採用する。
【0010】
第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、親機は、電源が遮断して再投入されると、親機不揮発性記憶部に記憶された親機ネットワーク情報を用いるか、あるいは新たに親機ネットワーク情報を構築するかを操作指示に基づいて選択する、という手段を採用する。
【0011】
第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、親機は、自らが管理するネットワークに子機が参加したタイミングで親機不揮発性記憶部に記憶された親機ネットワーク情報を更新する、という手段を採用する。
【0012】
第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれかの解決手段において、子機は、親機との通信経路を含む子機ネットワーク情報を子機不揮発性記憶部に記憶し、電源が遮断して再投入されると、子機不揮発性記憶部に記憶された子機ネットワーク情報を用いるか、あるいは子機ネットワーク情報を再構築するかを操作指示に基づいて選択する、という手段を採用する。
【0013】
第5の解決手段として、上記第4の解決手段において、子機は、親機からの受信が一定期間途絶えると、親機までの通信経路を探索することにより子機ネットワーク情報を再構築する、という手段を採用する。
【0014】
第6の解決手段として、上記第4または第5の解決手段において、子機は、親機が管理するネットワークに参加したタイミングで子機不揮発性記憶部に記憶された子機ネットワーク情報を更新する、という手段を採用する。
【0015】
第7の解決手段として、上記第1〜第6のいずれかの解決手段において、運搬対象物である車両を被搭載部材であるパレットに搭載して収容する機械式駐車場である、という手段を採用する。
【0016】
第8の解決手段として、上記第7の解決手段において、パレットには車両のバッテリに充電用電力を給電する充電装置が備えられ、子機と親機とは、充電装置の制御に関する情報を無線通信する、という手段を採用する。
【0017】
第9の解決手段として、上記第1〜第8のいずれかの解決手段において、子機と親機とはZigbee(登録商標)に準拠した無線方式で無線通信を行う、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、親機は、親機不揮発性記憶部に記憶された親機ネットワーク情報を用いてして複数の子機と無線通信を行うので、親機への給電が遮断されても親機は給電が遮断される前の親機ネットワーク情報を保持しているので、給電が遮断される前と同様な子機との通信を継続することができる。また、このように給電が遮断される前の親機ネットワーク情報を親機が保持しているので、親機は、各子機との再接続によるネットワーク情報の再構築を行う必要がなく、よって給電が再開された後に速やかに各子機と通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る機械式駐車場の全体構成を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態における地上管理装置M(親機)及び充電装置K(子機)の機能構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態におけるネットワーク構成の一例を示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態における地上管理装置M(親機)の動作を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態における充電装置K(子機)の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る機械式駐車場(搬送装置)は、一般に「タワーパーキング」と称し、運搬対象物である車両を所定の移動機構によって垂直方向に移動させつつタワー型の建屋内に多数収容する設備である。なお、上記車両は、電気自動車やハイブリッド自動車等、外部電源から車両バッテリに充電する機能を備えたものである。
【0021】
この機械式駐車場は、図1に示すように、車両が各々搭載される複数のパレットP1〜P12と、当該パレットP1〜P12に各々設けられた充電装置K1〜K12と、当該充電装置K1〜K12の動作を管理・制御する地上管理装置Mとを備えている。なお、上記各パレットP1〜P12は、所定の移動機構によって垂直方向に循環移動する。
【0022】
上記建屋は、下部に車両が出入りする入出庫口を備えたタワー型の構造物である。上記移動機構は、パレットP1〜P12が所定間隔で取り付けられると共に垂直方向に巡回することで各パレットP1〜P12をチェーン及び当該チェーンを巡回駆動するモータ、当該モータを駆動する駆動回路、当該駆動回路に本機械式駐車場の管理者の操作指示を入力するための操作盤等から構成されている。
【0023】
パレットP1〜P12は、略矩形状に成形された鋼製の板状部材であり、車両を搭載可能な大きさと強度とを備えている。本実施形態では、図1に示すように、一例として合計12枚のパレットP1〜P12を備える機械式駐車場について説明するが、機械式駐車場におけるパレットの枚数は、規模に応じて様々であり、よって12枚に限定されるものではない。
【0024】
充電装置K1〜K12は、上記パレットP1〜P12に各々設けられており、車両のバッテリに充電用電力を供給(給電)する装置である。この充電装置K1〜K12は、図2(a)に示されているように、ワンチップマイコンk1、通信部k2、操作部k3及び給電部k4を備えている。なお、この図2(a)では、合計12個の充電装置K1〜K12を総称して充電装置Kとしている。
【0025】
詳細については後述するが、本機械式駐車場は、複数の充電装置K1〜K12と単一の地上管理装置Mとからなるアドホック方式かつマルチホップ方式の無線ネットワーク(駐車場ネットワーク)を構成している。充電装置K1〜K12は、上記駐車場ネットワークにおける子機であり、また地上管理装置Mは、上記駐車場ネットワークにおける親機である。
【0026】
この駐車場ネットワークは、例えばアドホック方式かつマルチホップ方式の通信方式の1つとして知られているZigbee(登録商標)に準拠したものである。すなわち、上記親機(地上管理装置M)は、上記Zigbeeにおけるコーディネータであり、また上記各子機(各充電装置K1〜K12)は、Zigbeeにおけるルータあるいはエンドデバイスである。
【0027】
上記ワンチップマイコンk1は、給電制御プログラム等の各種情報を記憶する不揮発性メモリk5を内部に備えており、給電制御プログラム、通信部k2から入力される指示情報及び操作部k3から入力される操作情報に基づいて給電部k4を制御する。上記不揮発性メモリk5は、給電部k4を制御するための給電制御プログラムに加えて、通信部k2を制御するためのネットワーク情報(子機ネットワーク情報)を少なくとも記憶する子機不揮発性記憶部である。
【0028】
この子機ネットワーク情報は、自らが参加しているネットワークの種別情報(ZigbeeにおけるPAN識別子)、通信周波数(Zigbeeにおけるチャンネル)、親機(地上管理装置M)の属性情報(Zigbeeにおける親機(地上管理装置M)のショートアドレスや識別ID等)、自らが親機(地上管理装置M)と通信する際の通信経路情報(子機通信経路情報)を少なくとも含む。
【0029】
この子機通信経路情報は、自らと親機(地上管理装置M)との無線通信において経由する子機、つまり自らと親機(地上管理装置M)をの無線通信においてZigbeeにおけるルータとして機能する子機の属性情報(Zigbeeにおける当該子機のショートアドレスや識別ID等)及び接続順序を示す情報である。
【0030】
上記通信部k2は、上記ワンチップマイコンk1による制御の下で、Zigbeeに準拠した無線通信を他の子機及び親機との間で行う。上記Zigbeeは、マルチホップ方式かつアドホック方式の無線方式として知られるものである。上記操作部k3は、本機械式駐車場の管理者の操作指示を受け付ける操作ボタンであり、操作指示に対応する信号をワンチップマイコンk1に出力する。上記給電部k4は、上記ワンチップマイコンk1による制御の下で、車両のバッテリに充電用電力を供給する。
【0031】
地上管理装置Mは、各充電装置K1〜K12の充電動作を管理する一種のコンピュータである。この地上管理装置Mは、図2(b)に示されているように、CPUm1、不揮発性メモリm2、揮発性メモリm3、操作部m4、通信部m5及び表示部m6が所定のバスラインで相互接続されたものである。
【0032】
CPUm1は、不揮発性メモリm2に記憶された管理プログラム、操作部m4から入力される操作情報、通信部m5から入力される各充電装置K1〜K12の状態情報に基づいて通信部m5及び表示部m6を制御する。上記不揮発性メモリm2は、上記管理プログラムに加えて、通信部m5を制御するためのネットワーク情報(親機ネットワーク情報)を少なくとも記憶する親機不揮発性記憶部である。
【0033】
この親機ネットワーク情報は、親機が管理している上記駐車場ネットワークの種別(ZigbeeにおけるPAN識別子)、通信周波数(Zigbeeにおけるチャンネル)、駐車場ネットワークに参加している各子機の属性情報(Zigbeeにおける各子機のショートアドレスや識別ID等)、各子機と通信する際の通信経路情報(親機通信経路情報)を少なくとも含む。
【0034】
この親機通信経路情報は、自らと各子機(充電装置K1〜K12)との無線通信において経由する子機、つまり自らと各子機(充電装置K1〜K12)との無線通信においてZigbeeにおけるルータとして機能する子機の属性情報(Zigbeeにおける当該子機のショートアドレスや識別ID等)及び接続順序を示す情報である。
【0035】
上記揮発性メモリm3は、CPUm1が管理プログラムを実行する上で行う各種の演算結果を一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)である。上記操作部m4は、本機械式駐車場の管理者の操作指示を受け付ける操作ボタンであり、操作指示に対応する信号をCPUm1に出力する。上記通信部m5は、上記CPUm1による制御の下で、上述したZigbeeに準拠した無線通信を各子機との間で行う。上記表示部m6は、CPUm1が管理プログラムを実行することによって生成した管理画像を表示する。この管理画像は、例えば各子機(各充電装置K1〜K12)の充電動作状態や各子機との通信状態を示す画面である。
【0036】
ここで、本機械式駐車場では、上記各充電装置K1〜K12が作動するために必要とする電力及び給電部k4が車両に供給する充電用電力は、移動体である各パレットP1〜P12用に用意された移動体用電源から専ら供給される。これに対して、地上に固定配置された地上管理装置Mには、上記移動体用電源とは別系統の電源(地上装置用電源)から電力が供給される。
【0037】
次に、本機械式駐車場における駐車場ネットワークについて説明する。
本機械式駐車場では、入出庫口でパレット上に搭載された車両を移動機構によって順次上方に移動させることにより、入出庫口から順次進入する車両を各々のパレットP1〜P12上に順次収容するので、移動体である各子機(充電装置K1〜K12)の地上設備である親機(地上管理装置M)に対する通信環境は、相互の距離が経時的に変動すること等に起因して変化する。
【0038】
本機械式駐車場では、単一の親機(地上管理装置M)と複数の子機(充電装置K1〜K12)とがZigbeeに準拠したマルチホップ方式の無線ネットワーク(駐車場ネットワーク)を構成しており、上述した通信環境の変化に応じて子機(充電装置K1〜K12)の親機(地上管理装置M)までの通信経路(つまりネットワーク構成)は動的に変化する。
【0039】
図3は、駐車場ネットワークのネットワーク構成の一例を示している。この例では4つの子機(充電装置K1〜K4)が親機(地上管理装置M)と直接通信を行い、他の子機(充電装置K5〜K12)のうち3つの子機(充電装置K5,K6,K12)は、上記4つの子機(充電装置K1〜K4)の中の3つの子機(充電装置K1,K3,K4)を経由して親機(地上管理装置M)と間接的に通信を行い、さらに残りの子機(充電装置K7〜K11)は上記3つの子機(充電装置K5,K6,K12)を介して親機(地上管理装置M)と間接的に通信を行う。
【0040】
このような駐車場ネットワークでは、例えば上記移動機構が作動することによって各パレットP1〜P12の地上に対する位置関係が変化する(つまり通信環境が変化する)ので、各子機(充電装置K1〜K12)の親機(地上管理装置M)までの通信経路、つまりどの子機を経由して親機(地上管理装置M)を無線通信を行うのかが変化する。なお、上記各パレットP1〜P12の位置変化は、通信環境が変化する一因であり、これ以外にも電気的な雑音等が原因で通信環境は変化し得る。
【0041】
例えば1つの子機(充電装置K2)が親機(地上管理装置M)と直接通信ができない事態に至ると、当該子機(充電装置K2)は、新たな通信経路を探索することにより親機(地上管理装置M)との無線通信を継続しようとし、この結果として他の子機(充電装置K1,K3〜K12)の何れかを経由して親機(地上管理装置M)と無線通信を行うことになる。
【0042】
次に、このように構成された本機械式駐車場の特徴的動作つまり駐車場ネットワークの動作について、図4及び図5のフローチャートを参照して詳しく説明する。
【0043】
最初に、図4のフローチャートを参照して、親機(地上管理装置M)の動作について説明する。親機(地上管理装置M)のCPUm1は、管理者によって電源が投入されると、ネットワーク情報を新たに構築する「新規設定モード」が管理者から指示されたか、あるいは不揮発性メモリm2に予め記憶されているネットワーク情報を使用する「リカバリーモード」が管理者から指示されたかを判断する(ステップS1)。
【0044】
すなわち、管理者は親機(地上管理装置M)に設けられた電源ボタン(図示略)を操作して親機(地上管理装置M)に電源を投入すると、引き続いて操作部m4を用いることにより「新規設定モード」あるいは「リカバリーモード」の選択操作を行う。この選択操作によって、「リカバリーモード」が選択されたことを示す操作指示信号が操作部m4から入力されると、CPUm1は、上記ステップS1に続いて親機ネットワーク情報のリカバリー処理を行う(ステップS2)。つまり、CPUm1は、不揮発性メモリm2に記憶されている親機ネットワーク情報を揮発性メモリm3のワークエリアにコピーし、各子機(充電装置K1〜K12)との無線通信における参照データとする。
【0045】
この一方、「新規設定モード」が選択されたことを示す操作指示信号が操作部m4から入力されると、CPUm1は、上記ステップS1に続いてネットワーク形成処理を行う(ステップS3)。つまり、CPUm1は、通信部m5を制御することにより各子機(充電装置K1〜K12)までの通信経路の探索処理を行い、この結果として新たな親機ネットワーク情報を揮発性メモリm3のワークエリアに構築し、各子機(充電装置K1〜K12)との無線通信における参照データとする。
【0046】
ここで、上記ネットワーク形成処理は、上述したように親機(地上管理装置M)と各子機(充電装置K1〜K12)との通信の結果として実現されるが、何らかの原因によって親機(地上管理装置M)から各子機(充電装置K1〜K12)に通信要求(子機を指定しないブロードキャスト通信としての通信要求)を送信しても応答が返信されて来ない場合があり得る。
【0047】
CPUm1は、上記ネットワーク形成処理の一環として各子機(充電装置K1〜K12)に通信要求を送信した際に、各子機(充電装置K1〜K12)から正常に応答があったか否かを判断する(ステップS4)。そして、このステップS4の判断が「No」の場合、つまり各子機(充電装置K1〜K12)から正常な応答がない場合は、起動時に予め設定した「リトライカウンタ」のカウント値が所定の上限値内か否かを判断する(ステップS5)。そして、CPUm1は、ステップS5の判断が「Yes」の場合は、上記リトライカウンタをカウントアップし(ステップS6)、この上でネットワーク形成処理を行う再度行う(ステップS3)。
【0048】
一方、CPUm1は、ステップS5の判断が「No」の場合、つまりリトライカウンタのカウント値が上限値にを超えている場合には、当該上限値に相当する回数の通信要求にもかかわらず各子機(充電装置K1〜K12)が正常な応答を返信して来なかったことになるので、異常処理を行う(ステップS7)。CPUm1は、この異常処理として、例えば表示部m6に各子機(充電装置K1〜K12)との通信異常の表示を行わせる。
【0049】
また、CPUm1は、上記ステップS4の判断が「Yes」の場合、新たな親機ネットワーク情報を正常に構築することができたことを示し、各子機(充電装置K1〜K12)に対する充電制御の基礎的な環境整備が完了したことになるので、以後の定常通信に必要な各種パラメータの初期設定処理を行う(ステップS9)。すなわち、CPUm1は、定常通信で使用するリトライカウンタの初期設定や当該リトライカウンタに関する上限値等の初期設定を行う。
【0050】
CPUm1は、このような初期設定が完了すると、通信部m5が駐車場ネットワークへの参加要求を何れかの子機(例えば充電装置K1)から受信したか否かを判断する(ステップS10)。そして、CPUm1は、このステップS10の判断が「Yes」になると、参加要求を送信してきた子機(充電装置K1)に対して自らの状態の通知を促す状態要求を通信部m5に送信させ(ステップS11)、さらに当該状態要求に対して正常な応答を通信部m5が受信したか否かを判断する(ステップS12)。
【0051】
ここで、親機(地上管理装置M)が子機(充電装置K1)に送信する上記状態要求は、子機(充電装置K1)の動作状態、つまり給電部k4による車両への給電状況の提供を要求する信号である。このような状態要求に対する応答は、給電部k4による車両への給電状況を示す信号である。すなわち、子機(充電装置K1)から親機(地上管理装置M)に返信される応答信号には、給電部k4による車両への給電状況を示す情報(充電情報)、例えば給電電流や給電電圧が含まれる。親機(地上管理装置M)は、子機(充電装置K1)との無線通信によって上記充電情報を取得し、この充電情報に基づいて制御情報を生成して子機(充電装置K1)に無線送信することにより、子機(充電装置K1)の車両に対する充電動作を制御する。
【0052】
さて、CPUm1は、上記ステップS12の判断が「Yes」になると、不揮発性メモリm2及び揮発性メモリm3のワークエリアに記憶された親機ネットワーク情報を更新する(ステップS13)。この親機ネットワーク情報の更新は、上記状態要求に対して正常に応答した子機(充電装置K1)の識別IDをネットワーク情報として新たに取り込むものである。すなわち、ステップS3におけるネットワーク形成処理では、各子機(充電装置K1〜K12)のショートアドレスが取得されるものの識別IDは取得されないので、ステップS13の親機ネットワーク情報の更新処理によって子機(充電装置K1)の識別IDが親機ネットワーク情報の一項目として新たに登録される。
【0053】
なお、ステップS12の判断が「No」の場合、つまり親機(地上管理装置M)からの状態要求に対して子機(充電装置K1)が正常な応答を親機(地上管理装置M)に返信して来なかった場合、CPUm1は、上記ステップS9で初期設定されたリトライカウンタのカウント値が同じくステップS9で設定された上限値内か否かを判断する(ステップS14)。そして、CPUm1は、ステップS14の判断が「Yes」の場合は、上記リトライカウンタをカウントアップし(ステップS15)、この上で通信部m5に状態要求を再送信させる(ステップS11)。
【0054】
一方、CPUm1は、ステップS14の判断が「No」の場合、つまりリトライカウンタのカウント値が上限値にを超えている場合には、当該上限値に相当する回数の通信要求にもかかわらず子機(充電装置K1)が状態要求に対する正常な応答を返信して来なかったことになるので、異常処理を行う(ステップS16)。この異常処理は、例えば表示部m6に子機(充電装置K1)との通信異常を表示させるものである。
【0055】
このように上記ステップS9〜S16の処理が完了すると、または上記ステップS10の判断が「No」の場合、つまり通信部m5が何れの子機(充電装置K1〜K12)からも参加要求を受信しなかった場合には、CPUm1は、引き続き上記ステップS10の判断を繰り返すことにより、子機(充電装置K1〜K12)から参加要求を受信する度にステップS9〜S16の処理を実行する。
【0056】
すなわち、CPUm1は、このようにしてステップS10〜S16の処理を繰り返すことにより、親機(地上管理装置M)に参加要求を送信してきた子機の識別IDが親機ネットワーク情報の一項目として順次登録する。
【0057】
続いて、図5のフローチャートを参照して、各子機(充電装置K1〜K12)の動作について説明する。なお、何れの子機も同様の動作を行うが、以下の説明では子機(充電装置K1)の動作を一例として説明する。
【0058】
子機(充電装置K1)のワンチップマイコンk5は、管理者によって子機(充電装置K1)の電源が投入されると、上述した新規設定モードが管理者から指示されたか、あるいは同じく上述した「リカバリーモード」が管理者から指示されたかを判断する(ステップD1)。すなわち、管理者は子機(充電装置K1)に設けられた電源ボタン(図示略)を操作して子機(充電装置K1)に電源を投入すると、引き続いて操作部k3を用いることにより新規設定モードあるいはリカバリーモードの選択操作を行う。
【0059】
ワンチップマイコンk5は、この選択操作によってリカバリーモードが選択されたことを示す操作指示信号が操作部k3から入力されると、上記ステップD1に続いて子機ネットワーク情報のリカバリー処理を行う(ステップD2)。すなわち、ワンチップマイコンk5は、不揮発性メモリk5に記憶されている子機ネットワーク情報を内部揮発性メモリのワークエリアにコピーし、親機(地上管理装置M)との無線通信における参照データとする。
【0060】
この一方、新規設定モードが選択されたことを示す操作指示信号が操作部k3から入力されると、ワンチップマイコンk5は、上記ステップD1に続いてネットワーク形成処理を行う(ステップD3)。つまり、ワンチップマイコンk5は、通信部k2を制御することにより親機(地上管理装置M)までの通信経路の探索処理を行い、この結果として新たな子機ネットワーク情報を内部揮発性メモリのワークエリアに構築し、親機(地上管理装置M)との無線通信における参照データとする。
【0061】
ここで、このようなネットワーク形成処理は、子機(充電装置K1)と親機(地上管理装置M)との通信の結果として実現されるが、何らかの原因によって子機(充電装置K1)から親機(地上管理装置M)に通信要求(親機及び子機を指定しないブロードキャスト通信としての通信要求)を送信しても応答を受信できない場合があり得る。
【0062】
ワンチップマイコンk5は、上記ネットワーク形成処理(ステップD3)の一環として親機(地上管理装置M)に通信要求を送信した際に、親機(地上管理装置M)から正常に応答があったか否かを判断する(ステップD4)。そして、ワンチップマイコンk5は、このステップD4の判断が「No」の場合、つまり親機(地上管理装置M)から正常な応答がない場合は、親機(地上管理装置M)に通信要求を再送信してネットワーク形成処理(ステップD3)を繰り返す。
【0063】
一方、上記ステップD4の判断が「Yes」になると、つまり親機(地上管理装置M)から正常な応答があり、この結果として新たな子機ネットワーク情報を正常に構築することができた場合には、各子機(充電装置K1〜K12)に対する充電制御の基礎的な環境整備が完了したことになるので、以後の定常通信に必要な各種パラメータの初期設定処理を行う(ステップD5)。すなわち、ワンチップマイコンk5は、ステップD5として、定常通信で使用する受信タイムアップタイマの初期設定や当該受信タイムアップタイマに関するタイムアップ時間等の初期設定を行う。
【0064】
ワンチップマイコンk5は、このような初期設定が完了すると、通信部k2が親機(地上管理装置M)から状態要求を受信したか否かを判断する(ステップD6)。そして、ワンチップマイコンk5は、このステップD6の判断が「Yes」になると、上記状態要求に対する応答処理を通信部k2に送信させる(ステップD7)。一方、ワンチップマイコンk5は、上記ステップD6の判断が「No」の場合には、受信タイムアップタイマを起動させて計時を開始する(ステップD8)。
【0065】
そして、ワンチップマイコンk5は、上記受信タイムアップタイマがタイムアップしたか否かを判断し(ステップD9)、この判断が「No」の場合は上記ステップD6の処理を繰り返し、一方、この判断が「Yes」の場合には、親機(地上管理装置M)に対する再接続処理(通信経路の再探索処理)を通信部k2に行わせる(ステップD10)。
【0066】
すなわち、子機(充電装置K1)は、親機(地上管理装置M)から状態要求を受信しない場合、つまり親機(地上管理装置M)からの受信が一定期間途絶えると、受信タイムアップタイマがタイムアップするまで待機し、受信タイムアップタイマがタイムアップすると、これ以上待機するこを止めて、親機(地上管理装置M)に対して通信経路の再探索を行う。したがって、親機(地上管理装置M)からの受信が一定期間途絶えた場合に無制限に待機しないので、効率の良い通信が実現することができる。
【0067】
さらに、ワンチップマイコンk5は、上記再接続処理(ステップD10)に対する親機(地上管理装置M)からの応答を通信部k2が受信したか否かを判断する(ステップD11)。そして、ワンチップマイコンk5は、このステップD11の判断が「No」の場合、つまり親機(地上管理装置M)から正常な応答がない場合は、親機(地上管理装置M)への再接続処理を繰り返す。
【0068】
一方、ワンチップマイコンk5は、ステップD11の判断が「Yes」の場合には、揮発性メモリのワークエリアに記憶された子機ネットワーク情報を更新する(ステップD12)。この子機ネットワーク情報の更新は、上記状態要求に対して正常に応答した親機(地上管理装置M)及び当該親機(地上管理装置M)までの通信経路においてルータとして機能する子機の識別IDを子機ネットワーク情報として新たに取り込むものである。そして、ワンチップマイコンk5は、上記ステップD12の処理が完了すると、ステップD6の処理を繰り返すことにより、親機(地上管理装置M)から状態要求を受信する度に子機ネットワーク情報を更新する。
【0069】
このような本機械式駐車場(駐車場ネットワーク)によれば、親機(地上管理装置M)が子機(充電装置K1)に送信する上記状態要求に対して子機(充電装置K1)から応答がある度に、不揮発性メモリm2内の親機ネットワーク情報が更新されるので、親機(地上管理装置M)への電源供給が遮断されても親機(地上管理装置M)は電源供給が遮断される前の親機ネットワーク情報を保持しているので、給電が遮断される前と同様に各子機(充電装置K1〜K12)との通信を継続することができる。
【0070】
また、親機(地上管理装置M)は、電源遮断が発生する前の親機ネットワーク情報を保持しているので、各子機(充電装置K1〜K12)との再接続によるネットワーク情報の再構築を行う必要がなく、よって電源供給が再開された後に速やかに各子機(充電装置K1〜K12)と通信を行って各子機(充電装置K1〜K12)の制御を継続することができる。
【0071】
また、各子機(充電装置K1〜K12)においても子機ネットワーク情報が不揮発性メモリk5に保持されるので、各子機(充電装置K1〜K12)に電源遮断が発生したも、当該電源遮断前の状態で親機(地上管理装置M)との無線通信を継続することができる。
【0072】
また、親機(地上管理装置M)及び各子機(充電装置K1〜K12)共に、管理者からの操作指示に基づいてリカバリーモードと新規設定モードとが適宜選択されるので、管理者が親機ネットワーク情報及び子機ネットワーク情報の運用を管理することができる。
【0073】
さらに、親機(地上管理装置M)は、状態要求に対して子機(充電装置K1)から応答があるタイミング、つまり自らが管理する駐車場ネットワークに各子機(充電装置K1〜K12)が参加したタイミングで不揮発性メモリm2内の親機ネットワーク情報を更新するので、常に最新の親機ネットワーク情報が保持される。また、各子機(充電装置K1〜K12)は、再接続処理を経て親機(地上管理装置M)から正常に応答を受信したタイミング、つまり親機(地上管理装置M)が管理する駐車場ネットワークに参加したタイミングで不揮発性メモリk5内の子機ネットワーク情報を更新するので、常に最新の子機ネットワーク情報が保持される。
【0074】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、本願発明を機械式駐車場に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、機械式駐車場以外の様々な搬送装置に適用可能である。また、上記実施形態では、一般に「タワーパーキング」と称する機械式駐車場について説明したが、機械式駐車場には、タワーパーキングの他にエレベータ方式のパーキング(エレベータパーキング)等、種々の移動方式のパーキングが存在する。本発明は、これら各種の移動方式のパーキングにも適用可能である。
(2)上記実施形態では、アドホック方式かつマルチホップ方式の通信方式の1つであるZigbeeを本願発明に適用する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0075】
P1〜P12…パレット、K1〜K12…充電装置(子機)、k1…ワンチップマイコン、k2…通信部、k3…操作部、k4…給電部、k5…不揮発性記憶部、M…地上管理装置(親機)、m1…CPU、m2…不揮発性メモリ、m3…揮発性メモリ、m4…操作部、m5…通信部、m6…表示部
図1
図2
図3
図4
図5