特許第5984656号(P5984656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984656
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/60 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
   A01F12/60
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-277354(P2012-277354)
(22)【出願日】2012年12月19日
(65)【公開番号】特開2014-117270(P2014-117270A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180507
【弁理士】
【氏名又は名称】畑山 吉孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137590
【弁理士】
【氏名又は名称】音野 太陽
(72)【発明者】
【氏名】河合 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】安田 和男
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 定夫
(72)【発明者】
【氏名】木村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】古野 文雄
【審査官】 石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−112641(JP,U)
【文献】 特開平04−117218(JP,A)
【文献】 特開2011−229429(JP,A)
【文献】 特開平03−143327(JP,A)
【文献】 特開2005−176736(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 12/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀処理物を貯留するグレンタンクが、走行装置を備えた走行機体に搭載され、
前記走行機体に、前記グレンタンクの下方に位置する状態で前記走行装置から泥土が飛散するのを阻止する泥除けカバーが備えられ、
前記グレンタンクの底部近くに、そのグレンタンク内に貯留されている穀粒を横送り搬送して機外へ排出する底スクリューが配設され、
前記底スクリューの下方側における前記グレンタンクの底部に、脱穀処理物に含まれる夾雑物を排出する排出部が形成され、
前記排出部が、前記脱穀処理物の通過を阻止し且つ前記夾雑物の通過を許容する網目を有する網目部材にて構成され、
前記泥除けカバーに、前記排出部の下方において開口して前記排出部から排出される夾雑物を下方に落下排出させる開口が形成されているコンバイン。
【請求項2】
前記開口が、平面視で前記排出部と重複する状態で形成されている請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記泥除けカバーは平板状の板材で構成され、前記開口が前記板材を上下方向に貫通する貫通孔によって形成されている請求項1又は2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記排出部は、前記グレンタンクの底部において前後で複数箇所に分散配置され、前記開口は、複数箇所の前記排出部に対応する位置で前後に分散して前記泥除けカバーに設けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記開口は前後方向に長い細長形状に形成され、
前記泥除けカバーの上部面のうち、前記開口の左右両側に位置する部分が、前記開口に近づくほど低位置になる傾斜形状に形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記開口が、前記排出部と略同じ大きさである請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項7】
前記開口を閉塞する閉状態と開放する開状態とに切り換え自在な蓋体が備えられ、前記蓋体が前記泥除けカバーの上側に位置している請求項1〜6のいずれか1項に記載のコンバイン。
【請求項8】
前記蓋体が、水平軸芯周りで揺動することにより、前記泥除けカバーの上側で、前記開状態と前記閉状態とに切り換え自在に構成されている請求項7記載のコンバイン。
【請求項9】
前記蓋体が、前記泥除けカバーの上側で水平方向にスライド移動することにより、前記開状態と前記閉状態とに切り換え自在に構成されている請求項7記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀処理物を貯留するグレンタンクが走行装置を備えた走行機体に搭載されているコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは、水分の多い圃場等で作業走行するときに、走行装置が泥土を跳ね上げることがある。そこで、従来では、特許文献1に示されるように、グレンタンクの底部に、メンテナンス用の開口を覆う開閉自在な蓋体を設けるとともに、グレンタンクの底部の下方側箇所に、走行装置からの泥土の飛散を防止するカバー体を備えるようにしたものがあった。このように構成することで、カバー体によって走行装置から飛散する泥土が蓋体に付着して開閉操作が行い難くなることを回避させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−229429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンバインでは、刈取作業に伴ってグレンタンク内に脱穀処理物が貯留されるが、刈取作業に伴って、例えば、作物に付着している土や砂又はその他の塵埃等の夾雑物がグレンタンク内に混入することがある。そこで、上記従来構成では、グレンタンクの底部に開閉自在な蓋体を設ける構成として、作業を停止させた状態で蓋体を開放させることにより、グレンタンク内に貯留堆積している夾雑物を除去することができるようになっている。
【0005】
稲や麦等のように、収穫対象である穀粒が地面から高い位置に存在するような作物を収穫するときは、上記したような夾雑物の混入量は少ないが、例えば、大豆等のように、茎稈における地面に近い箇所を切断して収穫するような作物であれば、刈取部が地面に接触して土や砂等が作物と共にグレンタンク内に入り込むことがあり、夾雑物の混入量が多くなる。このようにグレンタンク内に夾雑物の混入量が多くなると、貯留された脱穀処理物を外部のトラック等に排出させるときに、スクリューコンベア等からなる排出用の搬送装置に夾雑物が詰まり、搬送装置が損傷するおそれがある。
【0006】
そこで、グレンタンク内に多量の夾雑物が混入して堆積しないように、刈取作業を実行している間に、夾雑物をグレンタンクから排出させる構成とすることが考えられる。しかし、このように構成すると、グレンタンクから排出される夾雑物が泥土の飛散防止用のカバー体の上面に堆積するおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、脱穀処理物に混入する夾雑物に起因して発生する不具合を解消することが可能となるコンバインを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコンバインの特徴構成は、
脱穀処理物を貯留するグレンタンクが、走行装置を備えた走行機体に搭載され、
前記走行機体に、前記グレンタンクの下方に位置する状態で前記走行装置から泥土が飛散するのを阻止する泥除けカバーが備えられ、
前記グレンタンクの底部近くに、そのグレンタンク内に貯留されている穀粒を横送り搬送して機外へ排出する底スクリューが配設され、
前記底スクリューの下方側における前記グレンタンクの底部に、脱穀処理物に含まれる夾雑物を排出する排出部が形成され、
前記排出部が、前記脱穀処理物の通過を阻止し且つ前記夾雑物の通過を許容する網目を有する網目部材にて構成され、
前記泥除けカバーに、前記排出部の下方において開口して前記排出部から排出される夾雑物を下方に落下排出させる開口が形成されている点にある。
【0009】
本発明によれば、グレンタンクの底部に排出部が形成されるので、刈取作業に伴ってグレンタンク内に夾雑物が混入することがあっても、排出部からグレンタンクの下方側外方に夾雑物が落下排出されることになる。
【0010】
そして、グレンタンクの下方には、走行装置から泥土が飛散するのを阻止する泥除けカバーが備えられているが、この泥除けカバーに開口が形成されており、排出部から排出される夾雑物をこの開口を通して下方に落下排出させることができる。泥除けカバーの下方には走行装置が存在するので、落下した夾雑物は走行装置により地面上に放出される。つまり、夾雑物は地面に放出されることになり、走行機体には残らない。
【0011】
その結果、収穫に伴って夾雑物が多く混入し易い作物を刈取対象とする場合であっても、グレンタンク内に夾雑物が堆積することがなく、例えば、スクリューコンベア等からなる排出用の搬送装置が損傷する不具合を回避できる。
【0012】
又、泥除けカバーを備えることにより、走行装置からグレンタンクに向けて泥土が飛散することを回避できるものでありながら、グレンタンクから排出された夾雑物は開口から排出されるので、泥除けカバーの上部面に堆積するという不具合を回避できる。
【0013】
泥除けカバーに開口が形成されるので、走行装置からグレンタンクに向けて泥土が飛散するおそれがあるが、夾雑物を排出するためのものであるから、開口は、小形のものでよく、開口からのグレンタンクに対する飛散量を少ないものに抑制することができる。
従って、脱穀処理物に混入する夾雑物に起因して発生する不具合を解消することが可能となるコンバインを提供できるに至った。
【0014】
本構成によれば、グレンタンクに貯留されている脱穀処理物は、排出部における網目を通過することができないので下方に落下排出されることはない。そして、グレンタンク内において脱穀処理物に混入している夾雑物は、排出部における網目を通過することができるので、下方に落下排出される。
従って、刈取作業を実行しているときに、グレンタンク内に脱穀処理物を残したまま夾雑物だけをグレンタンクの下方外方に排出させることができ、脱穀処理物を良好に貯留することができるものでありながら、グレンタンク内に夾雑物が堆積する不具合を的確に回避できるものとなる。
【0015】
本発明においては、前記開口が、平面視で前記排出部と重複する状態で形成されていると好適である。
【0016】
本構成によれば、泥除けカバーに形成された開口が、平面視でグレンタンクに形成された排出部と重複するので、夾雑物は、排出部を通してグレンタンクから下方に排出されたのち、そのまま、開口を通して泥除けカバーを通過して下方に落下排出される。
従って、排出部から排出される夾雑物が、泥除けカバーの上部面に落下して、そこで堆積することを回避し易いものとなる。
【0017】
本発明においては、前記泥除けカバーは平板状の板材で構成され、前記開口が前記板材を上下方向に貫通する貫通孔によって形成されていると好適である。
【0018】
本発明においては、前記排出部は、前記グレンタンクの底部において前後で複数箇所に分散配置され、前記開口は、複数箇所の前記排出部に対応する位置で前後に分散して前記泥除けカバーに設けられていると好適である。
【0019】
本構成によれば、1つの開口を小さくして、走行装置からグレンタンク側への泥土の飛散をできるだけ少なくしながら夾雑物を落下排出させることができ、しかも、複数の開口が形成されることにより、全体としての夾雑物の排出量を多くすることができ、夾雑物がグレンタンク内に残留することを回避し易いものとなる。
【0020】
本発明においては、前記開口は前後方向に長い細長形状に形成され、前記泥除けカバーの上部面のうち、前記開口の左右両側に位置する部分が、前記開口に近づくほど低位置になる傾斜形状に形成されていると好適である。
【0021】
本構成によれば、泥除けカバーの上部面に夾雑物が落下した場合、例えば、機体の振動に伴って、夾雑物は傾斜形状に形成されている上部面に沿って開口に向けて移動案内されて開口から落下排出される。
【0022】
従って、泥除けカバーの形状を工夫することで、走行装置からグレンタンク側への泥土の飛散を防止できる本来の機能を備えながら、泥除けカバーの上部面に夾雑物が落下することがあっても、夾雑物が泥除けカバーの上部面に堆積することを回避し易いものとなる。
【0023】
本発明においては、前記開口が、前記排出部と略同じ大きさであると好適である。
【0024】
本構成によれば、排出部を通してグレンタンクから下方に排出された夾雑物の略全量が、そのまま、開口を通して泥除けカバーを通過して下方に落下排出されることになる。夾雑物の略全量を落下排出させるためには、開口を排出部より大に形成してもよいが、本構成では、開口が排出部と略同じ大きさであるから、開口を必要以上に大型にせず、走行装置からグレンタンク側への泥土の飛散をできるだけ少なくしながら、夾雑物を落下排出させることができる。
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
本発明においては、
前記開口を閉塞する閉状態と開放する開状態とに切り換え自在な蓋体が備えられ、前記蓋体が前記泥除けカバーの上側に位置していると好適である。
【0029】
本構成によれば、グレンタンク内に夾雑物の混入のおそれが大となる作物を刈取作業する場合等においては、蓋体を開状態に切り換えることにより、走行装置からグレンタンク側への泥土が少し飛散するおそれはあるものの、グレンタンク内に夾雑物が堆積することを回避できる。又、夾雑物の混入のおそれが少ない作物を刈取作業する場合等においては、蓋体を閉状態に切り換えることにより、走行装置からグレンタンク側への泥土の飛散を確実に防止することができる。
【0030】
本発明においては、前記蓋体が、水平軸芯周りで揺動することにより、前記泥除けカバーの上側で、前記開状態と前記閉状態とに切り換え自在に構成されていると好適である。
【0031】
本構成によれば、蓋体を水平軸芯周りで揺動させて開状態と閉状態とに切り換える構成であるから、開状態及び閉状態のいずれにおいても、蓋体を、泥除けカバーの上部面に重なる状態で載置させることができ、この場合には、蓋体は自重により下方付勢されて安定した姿勢を維持できる。つまり、蓋体を位置保持するための特別な保持機構を設けなくても姿勢保持することが可能となる。
【0032】
本発明においては、前記蓋体が、前記泥除けカバーの上側で水平方向にスライド移動することにより、前記開状態と前記閉状態とに切り換え自在に構成されていると好適である。
【0033】
本構成によれば、蓋体を水平方向にスライド移動させて開状態と閉状態とに切り換える構成であるから、開状態と閉状態との切り換えを行うときにおける蓋体の上下方向での変位量が少なく、上下方向での収納スペースを小さくした状態で、蓋体を配備することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】コンバインの右側面図である。
図2】コンバインの左側面図である。
図3】コンバインの平面図である。
図4】運転部の側面図である。
図5】運転部の正面図である。
図6】グレンタンクの一部切欠正面図である。
図7】グレンタンクの分解斜視図である。
図8】機体フレームの斜視図である。
図9】グレンタンク下部の切欠正面図である。
図10】左側バックミラー配設部の正面図である。
図11】別実施形態のグレンタンク下部の切欠正面図である。
図12】別実施形態のグレンタンク下部の切欠正面図である。
図13】別実施形態のグレンタンク下部の切欠正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面に基づいて、本発明に係るコンバインの実施形態を、稲、麦、大豆などを収穫対象とする普通型コンバインに適用した場合について説明する。
【0036】
図1図3に示すように、本発明に係る普通型コンバインは、走行機体を構成する機体フレーム1の下部に走行装置としての左右一対のクローラ走行装置2を装備し、機体フレーム1の前部に、収穫対象の植立穀稈を刈り取って後方に向けて搬送する刈取部3が、図示しない昇降用油圧シリンダの操作により昇降揺動可能に連結されている。そして、機体フレーム1上に、刈取部3からの刈取穀稈に対して脱穀処理を施すとともに、その脱穀処理で得られた脱穀処理物に対して選別処理を施す脱穀装置4、脱穀装置4からの穀粒を貯留するグレンタンク5、及び、グレンタンク5の前方箇所に位置する運転部6等が備えられている。運転部6は、キャビン7にて覆われる構成となっている。又、図4に示すように、運転部6の下方には、エンジン8、ラジエータ9等を備えた原動部10が設けられている。
【0037】
図1図3に示すように、刈取部3は、車体の走行に伴って、植立穀稈を収穫対象の植立穀稈と収穫対象外の植立穀稈とに梳き分けるデバイダ11、収穫対象の植立穀稈を後方に向けて掻き込む回転リール12、収穫対象の植立穀稈の株元側を切断するバリカン形の切断機構13、切断後の刈取穀稈を左右方向の所定箇所に寄せ集め後方に向けて送り出すオーガ14、刈取穀稈を脱穀装置4に向けて搬送するフィーダ15等を備えて構成されている。フィーダ15は、キャビン7の左側方を通って前方へ延出されており、フィーダ15の前部には処理物を受け入れる入り口部が形成され、図2及び図10に示すように、フィーダ15の内部にはチェーン式の掻き揚げコンベア16が備えられている。すなわち、刈取部3は、刈り取った穀稈の全量を脱穀装置4に搬送するように構成されている。
【0038】
脱穀装置4は、扱室内に備えられた扱胴17により、フィーダ15により搬送される刈取穀稈を扱き処理するように構成され、脱穀処理された脱穀処理物に対してワラ屑やその他の塵埃を除去する選別処理を実行する選別部(図示せす)が備えられ、選別処理された脱穀処理物をグレンタンク5に貯留するように構成されている。
【0039】
グレンタンク5の近傍には、グレンタンク5に貯留される穀粒を機外に排出するための穀粒排出装置18が備えられている。
図1に示すように、穀粒排出装置18は、グレンタンク5の底部に備えられて貯留されている穀粒を横送り搬送する底スクリュー19と、下部中継用ケース20を介して底スクリュー19の搬送終端部から穀粒を上方に向けて搬送する縦スクリューコンベア21と、上部中継用ケース22を介して縦スクリューコンベア21の搬送終端部から穀粒を穀粒排出口23に向けて横方向に搬送する横スクリューコンベア24とを備えて構成されている。
【0040】
底スクリュー19と縦スクリューコンベア21とは、下部中継用ケース20の内部に備えられる図示しないギア式の連動機構により連動連結され、縦スクリューコンベア21と横スクリューコンベア24とは、上部中継用ケース22の内部に備えられる図示しないギア式の連動機構により連動連結されている。そして、エンジン8の動力が、図示しないベルトテンション式の排出クラッチを介して、底スクリュー19の機体前端側箇所に伝達され、その動力により、底スクリュー19、縦スクリューコンベア21、及び、横スクリューコンベア24の夫々が駆動される。
【0041】
図4及び図5に示すように、キャビン7の前面部には、床面から屋根部までの全範囲にわたって湾曲形状の曲面ガラスで構成されたフロントガラス25が設けられている。フロントガラス25の前部側の左右の支柱26,27は、フロントガラス25の横側端縁の形状に沿って、側面視でのフロントガラス25の形状と同様な湾曲形状に形成されている。
【0042】
キャビン7の右側面には、右前部側の支柱26と右後部側の支柱28との間に操縦者が乗り降りするための乗降口が形成されている。この乗降口を開閉するための乗降用ドア29が右後部側に設けたヒンジ30を介して開閉操作自在に装着されている。
【0043】
図4及び図5に示すように、乗降口から乗り降りするときに用いる手摺31が、右前部側の支柱26の上端側箇所から下端側箇所にわたって上下方向に長く延びる状態で備えられている。この手摺31は、側面視でのフロントガラス25と同様な湾曲形状に形成され、上端部と下端部とが夫々、右前部側の支柱26にブラケット32を介して取付け固定されている。
【0044】
運転部6の左右両側に夫々、バックミラー33,34が設けられている。
右側のバックミラー33は、キャビン7の右側面に取付けられた手摺31の上部側箇所に支持されている。すなわち、図4及び図5に示すように、手摺31の上部側箇所に取付け固定された枢支ボス部36に支持アーム37が縦軸芯周りで回動自在に支持されている。図示はしないが、支持アーム37は、枢支ボス部36に内装されたバネの付勢力により回動位置を変更調整自在且つ位置保持自在に構成されており、手動操作によりバックミラー33の角度調節を行えるようになっている。
【0045】
左側のバックミラー34は、脱穀装置4の前部側であって且つフィーダ15の左側方の位置において、機体フレーム1から固定状態で立設された点検用梯子38に支持されている。すなわち、図10に示すように、点検用梯子38の横幅方向外方側の縦桟部38aの上部側箇所において、上下2箇所に支持部39が設けられ、この支持部39にボルト固定される状態で枢支ボス部40が連結されている。そして、略矩形ループ状に形成された支持アーム41の両端部が上下2箇所の枢支ボス部40に、夫々縦軸芯周りで回動自在に支持されている。上下2箇所の枢支ボス部40は、同一の縦向き軸芯上に位置する状態で支持アーム41を回動自在に支持する。尚、図10に示すように、点検用梯子38には、方向指示器58も装着されている。
【0046】
支持アーム41の両端部は、枢支ボス部40を上方側から下方に向けて挿通する状態で且つ上下方向に位置保持された状態で回動自在に支持され、枢支ボス部40よりも下方側にバネ42が外装されて、このバネ42の付勢力により位置保持自在に構成されている。つまり、手動操作により、バネ42の付勢力に抗して支持アーム41を回動させて、バックミラー34を内方側に引退する格納状態(図示せず)に切り換えることができる。又、支持アーム41に対して、バックミラー34から一体的に延設された保持部43が、相対回動自在に且つ位置保持可能なように弾性的に把持する状態で支持され、手動操作によりバックミラー34の角度調節を行えるようになっている。
【0047】
このように構成することで、例えば、バックミラー34を点検用梯子38の横幅方向内方側の縦桟部38bに支持させる構成と比較して、メンテナンス作業時に、点検用梯子38を登るときに、バックミラー34が邪魔にならず、登り易いものとなり、しかも、バックミラー34の運転者の視線の反射角を大きく設定することができ、広い範囲にわたって後方を目視することができるものとなる。
【0048】
次に、グレンタンク5において、脱穀処理物に混入する、例えば細かな粒状の土や砂等の夾雑物を外部に排出するための構造について説明する。
【0049】
図7に示すように、グレンタンク5における底スクリュー19の下方側に位置する最下端部44に、機体前後方向に並ぶ状態で3個の開口45が形成されている。又、この3個の開口45の夫々に対応させて、開口45を覆う閉状態と開口を開放させる開状態とに切り換え自在なカバー部材46が各別に備えられている。
【0050】
図9に示すように、カバー部材46は、機体内方側(図9では右側)が蝶番47によって回動自在にグレンタンク5の底面5aに連結支持されている。又、カバー部材46は、機体外方側(図9では左側)に備えられた係止具48が、グレンタンク5の底面5aに装着された周知構成のデッドポイント乗り越え形式のロック機構49にて係止保持されることにより、閉状態で位置保持することができるように構成されている。
【0051】
ロック機構49による係止保持が解除されると、図9に仮想線で示すように、蝶番47による回動軸芯周りで下方に回動して開状態に切り換えることができる。例えば、刈取作業が終了した後に、カバー部材46を開状態に切り換えることにより、グレンタンク5内に残っている残留物を機外に排出することができる。
【0052】
図7及び図9に示すように、カバー部材46におけるグレンタンク5に形成された開口45に対応する箇所に、脱穀処理物(例えば、大豆等)の通過を阻止し且つ夾雑物(細かな粒状の土や砂等)の通過を許容する網目50を有する網目部材51が装着されている。このように構成することで、カバー部材46が閉状態にて位置保持されている場合であっても、グレンタンク5内に脱穀処理物に混入する状態で夾雑物が搬送されてくると、夾雑物は網目部材51の網目50を通して下方外方に排出される。
従って、この網目部材51により脱穀処理物に含まれる夾雑物を排出する排出部52が構成されている。
【0053】
刈取作業が継続して行われてグレンタンク5内に脱穀処理物が積層状態で貯留されると、刈取作業に伴って搬入される夾雑物は、そのまま積層状態の脱穀処理物の上側に堆積することになるが、脱穀処理物の排出時において底スクリュー19にて搬送作用を受ける際に、脱穀処理物に混入する夾雑物が排出部52(網目部材51)を通して下方に排出されることになる。
【0054】
又、走行機体を構成する機体フレーム1には、グレンタンク5の下方に位置する状態でクローラ走行装置2から泥土が飛散するのを阻止する泥除けカバー53が備えられている。すなわち、図8に示すように、機体フレーム1におけるグレンタンク5の下方側に対応する箇所に、平板状の板材からなる板状部1Aが形成されており、この板状部1Aにより泥除けカバー53が構成されている。
【0055】
そして、この泥除けカバー53に、排出部52から排出される夾雑物を下方に落下排出させる開口54が形成されている。図9に示すように、この開口54は、泥除けカバー53を上下方向に貫通する貫通孔にて構成され、3個の排出部52の夫々に対応させて機体前後方向に並ぶ状態で、且つ、平面視で各排出部52と重複する状態で3個形成されている。又、この開口54は、常時開放された状態で設けられている。
【0056】
泥除けカバー53に形成される開口54は、グレンタンク5に形成される排出部52よりも大きめに形成されており、排出部52から落下排出される夾雑物が確実に開口54を通して下方に排出されるように構成されている。
【0057】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、泥除けカバー53に形成される開口54は常時開放された状態で設けられるものを示したが、このような構成に代えて、開口54を閉塞する閉状態と開放する開状態とに切り換え自在な蓋体55が備えられる構成としてもよい。
【0058】
例えば、図11に示すように、前記蓋体55として、水平軸芯X周りで揺動することにより開状態と閉状態とに切り換え自在な蓋体55Aを備える構成であってもよい。この構成では、開状態と閉状態のいずれの状態であっても、蓋体55Aは、自重による揺動付勢力により姿勢を保持することができる。
【0059】
又、図12に示すように、前記蓋体55として、水平方向にスライド移動することにより開状態と閉状態とに切り換え自在な蓋体55Bを備える構成であってもよい。この構成では、蓋体55Bをスライド自在に支持するスライド保持機構56と、閉状態で一端側を保持する保持具57とを備えている。
【0060】
(2)上記実施形態では、泥除けカバー53における開口54の周囲が平坦な水平面にて構成され、開口54が排出部52よりも大きめに形成されるものを示したが、例えば、図13に示すように、泥除けカバー53の上部面53aが開口54に近づくほど低位置になる傾斜形状に形成され、且つ、開口54が、平面視で排出部52と略同じ大きさになるように形成されるものでもよい。
【0061】
又、このような構成に限らず、泥除けカバー53の上部面53aが開口54に近づくほど低位置になる傾斜形状に形成されて、開口54が排出部52よりも大きめに形成されるもの、あるいは、開口54の周囲が平坦な水平面にて構成されて、開口54が、平面視で排出部52と略同じ大きさになるように形成されるものであってもよい。
【0062】
(3)上記実施形態では、開口54が排出部52に対応させて3個形成される構成としたが、3個形成するものに限らず、開口54を2個あるいは4個以上形成する構成としてもよい。又、排出部52に対応させて開口54を複数形成するものに代えて、複数の排出部52に連なるように1つの開口54を形成するもの、排出部52を1つ形成して1つの開口54を形成するもの等であってもよい。
【0063】
(4)上記実施形態では、刈取部3が刈り取った穀稈の全量を脱穀装置4に投入する普通型コンバインに適用したものを示したが、刈取穀稈をフィードチェーン(図示せず)により挟持搬送しながら脱穀装置で穂先側を扱き処理する形式の自脱型コンバインに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、脱穀処理物を貯留するグレンタンクが走行装置を備えた走行機体に搭載されているコンバインに適用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 走行機体
2 走行装置
5 グレンタンク
50 網目
51 網目部材
52 排出部
53 泥除けカバー
54 開口
55 蓋体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13