(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態につき、
図1〜
図9を参照しつつ説明する。本実施形態は、打撃工具の一例として電動式のハンマドリル100を用いて説明する。
図1及び
図2に示すように、電動式のハンマドリル100は、ハンマビット119を装着し、装着されたハンマビット119を長軸方向に直線動作及び長軸方向回りに回転させて、被加工材に対して穴明けやハツリ等の加工作業を行う打撃工具である。このハンマビット119が、本発明における「工具ビット」に対応する。
【0027】
図1及び
図2に示すように、ハンマドリル100は、ハンマドリル100の外郭を形成する外側ハウジング101を備えている。この外側ハウジング101が、本発明における「ハウジング」に対応する。外側ハウジング101の先端領域には、ハンマビット119が筒状のツールホルダ159(
図2参照)を介して着脱自在に取付けられる。ハンマビット119は、ツールホルダ159のビット挿入孔内に挿入され、その長軸方向への相対的な往復動が可能に、かつその周方向への相対的な回動が規制された状態で保持される。
【0028】
外側ハウジング101の先端領域の反対側端部には、作業者が握るハンドグリップ109が形成されている。ハンドグリップ109は、ハンマビット119の長軸方向と交差する
図1の上下方向に延在する握り部109Aを有し、当該握り部109Aの延在方向の各端部が外側ハウジング101に連接された側面視で略D型のメインハンドルとして備えられている。
【0029】
なお、本実施形態では、便宜上、外側ハウジング101の長軸方向におけるハンマビット119側を、「前側」ないし「前方側」として規定し、ハンドグリップ109側を、「後側」ないし「後方側」として規定する。また、
図1中の紙面上方を、「上側」ないし「上方側」と規定し、紙面下方を、「下側」ないし「下方側」と規定する。
【0030】
図2に示すように、外側ハウジング101内には、内側ハウジング103と電動モータ110が収容されている。内側ハウジング103は、外側ハウジング101内の上部側に配置される。内側ハウジング103内には、運動変換機構120及び打撃要素140が収容されている。この内側ハウジング103が、本発明における「インナハウジング」に対応する。運動変換機構120を駆動する電動モータ110は、運動変換機構120の下方において、その回転軸線(出力軸)が外側ハウジング101の長軸方向(ハンマビット119の長軸方向)と概ね直交する上下方向となるように、外側ハウジング101内の後方下部側に収容されている。この電動モータ110が、本発明における「モータ」に対応する。なお、電動モータ110は、ハンドグリップ109に配置されたトリガ109aを作業者が引き操作することにより通電駆動されるように構成されている。
【0031】
電動モータ110の回転は、運動変換機構120によって直線運動に適宜変換された上で打撃要素140に伝達され、当該打撃要素140を介してハンマビット119を長軸方向(
図2における左方向)に打撃する。この運動変換機構120及び打撃要素140が、本発明における「工具ビットを駆動する駆動機構」に対応する。
【0032】
運動変換機構120は、電動モータ110の回転運動を直線運動に変換して打撃要素140に伝達するものであり、電動モータ110によって駆動されるクランク軸121、連接ロッド123、ピストン125等からなるクランク機構によって構成される。ピストン125は、打撃要素140を駆動する駆動子を構成するものであり、シリンダ141内をハンマビット長軸方向と同方向に摺動可能とされる。
【0033】
打撃要素140は、シリンダ141内に摺動自在に配置された打撃子としてのストライカ143と、ツールホルダ159内に摺動自在に配置されるとともに、ストライカ143の運動エネルギをハンマビット119に伝達する中間子としてのインパクトボルト145とを主体として構成される。シリンダ141は、ツールホルダ159の後方に同心状に配置されるとともに、ピストン125及びストライカ143によって仕切られる空気室141aを有する。ストライカ143は、ピストン125の摺動動作に伴う空気室141aの空気ばねを介して駆動され、インパクトボルト145に衝突し、当該インパクトボルト145を介してハンマビット119を打撃する。
【0034】
また、
図2に示すように、電動モータ110の回転動力は、複数のギアを主体として構成される動力伝達機構150によって適宜減速された上で最終軸としてのツールホルダ159を介してハンマビット119に伝達され、これにより当該ハンマビット119が周方向に回転されるように構成されている。なお、動力伝達機構150の動力伝達経路中には、電動モータ110の回転出力をハンマビット119に伝達又は遮断する噛み合い式のクラッチ151が配置されている。このクラッチ151が動力伝達状態に切替えられた場合には、ハンマビット119が長軸方向の打撃と周方向の回転とを行い、クラッチ151が動力遮断状態に切替えられた場合には、ハンマビット119が打撃動作のみを行う構成である。
【0035】
なお、ハンマドリル100は、
図1及び
図2に示すように、外側ハウジング101の上面領域に作業モード切替ダイヤル147を有しており、作業者がこの作業モード切替ダイヤル147を回動操作することにより、ハンマビット119に長軸方向への打撃力のみを加えて被加工材の加工作業を行うハンマモードと、長軸方向への打撃力と周方向への回転力とを加えて被加工材の加工作業を行うハンマドリルモードとの間で切替可能に構成されている。
【0036】
上記のように構成されるハンマドリル100において、
図2に示すように、内側ハウジング103は、前後方向において、2つに分割された構成とされる。すなわち、内側ハウジング103は、クランクハウジング103Aと、クランクハウジング103Aの前方に配置される概ね筒状に形成されたバレル部103Bとに分割されている。クランクハウジング103Aが運動変換機構120及び動力伝達機構150を収容し、バレル部103Bが打撃要素140及びツールホルダ159の後方部分を収容する。そして、クランクハウジング103Aとバレル部103Bとは、その分割面、すなわち接合面を互いに当接させた状態で複数の連結ボルト(便宜上図示を省略する)により連結される。
【0037】
一方、外側ハウジング101は、
図1及び
図2に示すように、ハンマドリル100の上下方向において、内側ハウジング103を収容する本体ハウジング101Aと、電動モータ110を収容するモータハウジング101Bとに分割されている。本体ハウジング101Aが、本発明における「第1ハウジング」に対応し、モータハウジング101Bが、本発明における「第2ハウジング」に対応する。そして、本体ハウジング101Aの後側下方にモータハウジング101Bが配置されている。すなわち、モータハウジング101Bは、内側ハウジング103のうちのクランクハウジング103Aの下部側を覆うように配置され、当該クランクハウジング103Aに対してネジ等の固定手段(便宜上図示を省略する)により相対移動不能に連結されている。外側ハウジング101のうち、本体ハウジング101Aについては、防振構造とするために内側ハウジング103及びモータハウジング101Bに対して弾性部材を介して前後方向に相対移動可能に弾性連結されるが、この弾性連結構造については後述する。
【0038】
本体ハウジング101Aとモータハウジング101Bは、その対向する合わせ部が互いに開放された防塵カバー部材として構成されている。すなわち、本体ハウジング101Aの外周壁下方部分102と、モータハウジング101Bの外周壁上方部分104とのそれぞれに開口部が形成された構成である。本体ハウジング101Aの外周壁下方部分102の開口部と、モータハウジング101Bの外周壁上方部分104の開口部とのそれぞれは、平面視で前後方向に長い略四角形状に形成され、その開口部端面、すなわち合わせ面が互いに当接した状態で摺動可能とされる。本体ハウジング101Aの外周壁下方部分102が、本発明における「第1当接領域」に対応し、モータハウジング101Bの外周壁上方部分104が、本発明における「第2当接領域」に対応する。
【0039】
そして、モータハウジング101Bのうち、外周壁上方部分104は、電動モータ110を収容するメインハウジング部101Mとは別部材によって構成されている。すなわち、モータハウジング101Bは、
図1及び
図2に示すように、電動モータ110を収容するメインハウジング部101Mと、本体ハウジング101Aの外周壁下方部分102に当接される外周壁上方部分104とから構成されている。このメインハウジング部101Mが、本発明における「第2部材」に対応し、外周壁上方部分104が、本発明における「第1部材」に対応する。
【0040】
外周壁上方部分104は、
図3及び
図4に示すように、メインハウジング部101Mに取り付けた状態での後側に切れ目104aが形成された平面視で前後方向に長い略四角形状のリング状部材によって構成されている。すなわち、外周壁上方部分104は、リングの周方向の一カ所に切断部分を有する形状に形成されている。以下の説明では、便宜上、外周壁上方部分104をリング状部材104という。リング状部材104は、前後方向において、切れ目104aと反対側の前側の角部104c付近を主とする、それ自体の弾性変形により切れ目104aから外側に広げることが可能に構成され、当該切れ目104aを挟んで両端部には内向きに突出する略円柱状の係合突部104bを備えている。
【0041】
従って、リング状部材104は、
図5及び
図6に示すように、切れ目104aから広げた状態でハンマドリル100の前方から後方へと水平状に移動させてモータハウジング101Bのメインハウジング部101Mの上端外周部に嵌め込み、その後、
図1に示すように、弾性復帰により当該上端外周部に巻き付くように取付けることが可能とされる。そして、弾性復帰時において、係合突部104bがメインハウジング部101Mに形成された係合凹部(便宜上図示を省略する)に弾発状に係合される。すなわち、リング状部材104は、メインハウジング部101Mに対して着脱自在に固定される。
【0042】
リング状部材104は、
図3及び
図4に示すように、略四角形状の上面が水平方向に関して平面に形成され、この上面が本体ハウジング101Aの外周壁下方部分102の下面に対して面当たりで当接される。すなわち、
図1に示すように、本体ハウジング101Aの外周壁下方部分102とリング状部材104との合わせ面105により周方向に延在する摺動面が構成される。具体的には、本体ハウジング101Aの外周壁下方部分102には、ハンマビット119の長軸方向に延在する左右の摺動面105aと、ハンマビット119の長軸方向と交差する方向に延在する前後の摺動面105bが形成される。リング状部材104には、ハンマビット119の長軸方向に延在する左右の摺動面105cと、ハンマビット119の長軸方向と交差する方向に延在する前後の摺動面105dが形成される。外周壁下方部分102の左右の摺動面105aが、本発明における「第1延在面」に対応し、前後の摺動面105bが、本発明における「第2延在面」に対応する。また、リング状部材104の左右の摺動面105cが、本発明における「第3延在面」に対応し、前後の摺動面105dが、本発明における「第4延在面」に対応する。
【0043】
また、
図1に示すように、リング状部材104がメインハウジング部101Mの上端外周部に取付けられた状態において、メインハウジング部101Mとリング状部材104との合わせ面108のうち、前後方向に延在する左右の後方部分には、後方に向かって下向きに傾斜する斜面部108aが形成されている。すなわち、メインハウジング部101M側とリング状部材104側の斜面が互いに係合することにより、リング状部材104の前方への移動が規制されるように構成されている。
【0044】
本体ハウジング101Aの後方には、前述したハンドグリップ109が形成されている。ハンドグリップ109は、
図1及び
図2に示すように、ハンマビット119の長軸方向と交差する上下方向に延在する握り部109Aと、握り部109Aの上の端部から前方に延びて本体ハウジング101Aと一体に連接する上部連接領域109Bと、握り部109Aの下の端部から前方に延びてモータハウジング101Bに対し相対移動可能に連接する下部連接領域109Cとを有する側面視で略D形ハンドルとして形成される。すなわち、ハンドグリップ109は、上部連接領域109Bを介して本体ハウジング101Aと一体化され、本体ハウジング101Aの一部として設定されている。
【0045】
本体ハウジング101Aは、防振のために内側ハウジング103に対して弾性部材を介して前後方向に相対移動可能に連結されている。具体的には、
図9に示すように、上部連接領域109Bが防振用の第1圧縮コイルスプリング171を介してクランクハウジング103Aの後部に弾性連結され、下部連接領域109Cがモータハウジング101Bに防振用の第2圧縮コイルスプリング181を介して弾性連結される。また、
図2に示すように、本体ハウジング101Aの前方部分が弾性リング189を介してバレル部103Bに弾性連結される。第1圧縮コイルスプリング171及び弾性リング189が、本発明における「弾性部材」に対応する。第2圧縮コイルスプリング181が、態様の「弾性部材」に対応する。
【0046】
かくして、ハンドグリップ109を含む本体ハウジング101Aは、内側ハウジング103及び内側ハウジング103に固定されたモータハウジング101B(具体的には、メインハウジング101M)に対してハンドグリップ109の上下の各連接領域109B,109Cと、本体ハウジング101Aの前端領域との合計3箇所で弾性連結されている。これにより本体ハウジング101Aは、内側ハウジング103及び内側ハウジング103に固定されたモータハウジング101Bに対して前後方向、すなわちハンマビット119の長軸方向に相対移動可能に弾性連結された防振ハウジングとされる。
【0047】
次に外側ハウジング101の各弾性連結部位の構造につき、
図7〜9を参照しつつ説明する。ハンドグリップ109の上部連接領域109Bの弾性連結部位は、左右の摺動ガイド173と左右の第1圧縮コイルスプリング171とを主体として構成される。摺動ガイド173は、
図7及び
図9に示すように、ハンマビット119の長軸線を挟んだ上方位置に左右対称に配置される。左右2個の各摺動ガイド173は、上部連接領域109Bの内面側に一体に設けられ、前方へ直線状に突出する筒状ガイド174と、クランクハウジング103Aに固定されて後方へ直線状に突出する金属製のガイドロッド175とからなり、ガイドロッド175が筒状ガイド174の筒孔に摺動自在に嵌入されている。これにより上部連接領域109Bがクランクハウジング103Aに前後方向に摺動自在に支持される。ハンドグリップ109は、本体ハウジング101Aと同様、ポリアミド樹脂により形成されている。ハンドグリップ109の筒状ガイド174が、本発明における「第1ガイド部材」に対応し、金属製のガイドロッド175が、本発明における「第2ガイド部材」に対応する。
【0048】
第1圧縮コイルスプリング171は、
図9に示すように、ハンマビット119の長軸線を挟んだ上方位置に左右対称に配置される。左右の第1圧縮コイルスプリング171は、中心軸方向がハンマビット119の長軸方向に対して概ね平行となるように定められ、クランクハウジング103A側のスプリング受け171aと、上部連接領域109Bの内面側に設けたスプリング受け171bとの間に弾発状に配置されてハンドグリップ109に対し後方に向かう弾発力を付与する構成とされる。なお、クランクハウジング103A側のスプリング受け171aは、クランクハウジング103Aにネジ178で固定された固定部材177に設けられている。
【0049】
ハンドグリップ109の下部連接領域109Cの弾性連結部位は、
図8及び
図9に示すように、左右の摺動ガイド183と、左右の第2圧縮コイルスプリング181とを主体として構成される。摺動ガイド183は、ハンマビット119の長軸線を挟んだ下方位置において左右対称に配置される。左右2個の各摺動ガイド183は、下部連接領域109Cの前端面側に一体に設けられ、前方へ直線状に突出する円柱状のガイドロッド184と、モータハウジング101Bの後端部に設けられて後方へ直線状に突出する筒状ガイド185と、筒状ガイド185内に嵌入された円筒形の金属製のスリーブ186とからなり、ガイドロッド184がスリーブ186に摺動自在に嵌入されている。これにより、下部連接領域109Cがモータハウジング101Bに前後方向に摺動自在に支持される。ガイドロッド184には、ネジ187が前方から長軸方向に捻じ込まれ、ネジ187の頭部が筒状ガイド185の前端面に当接することでガイドロッド184を筒状ガイド185に対して抜け止めする。モータハウジング101Bの筒状ガイド185が、本発明における「第3ガイド部材」に対応し、金属製のスリーブ186が、本発明における「第4ガイド部材」に対応する。
【0050】
左右の第2圧縮コイルスプリング181は、左右の摺動ガイド183の外側に位置するように配置される。左右の第2圧縮コイルスプリング181は、中心軸方向がハンマビット119の長軸方向に対して概ね平行となるように定められ、下部連接領域109C側のスプリング受け181bと、モータハウジング101B側のスプリング受け181aとの間に弾発状に配置されてハンドグリップ109に対し後方に向かう弾発力を付与する構成とされる。
【0051】
なお、下部連接領域109Cの弾性連結部位は、モータハウジング101Bとの間に配置された弾性変形可能な樹脂製又はゴム製の蛇腹状部材188により周囲を覆われている。これにより、粉塵の弾性連結部位内への侵入を防止している。
【0052】
上記構成において、本実施形態では、外側ハウジング101のうち、防振ハウジングとして構成される本体ハウジング101Aと、モータハウジング101Bのメインハウジング101Mは、共にポリアミド樹脂によって形成されている。これに対し、リング状部材104は、ポリアミド樹脂と異なる材料、例えばポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、鉄、マグネシウム、アルミニウム、ステンレスのうちのいずれか1つから形成されている。なお、「ポリアミド樹脂と異なる材料」としては、ポリアミド樹脂の融点よりも高い融点を有する材料であることが好ましい。
【0053】
ハンマドリル100においては、加工作業時にハンマビット119の長軸方向に衝撃的且つ周期的な振動を発生する。そして、この振動によって本体ハウジング101Aとモータハウジング101Bとの合わせ面105が互いに当接した状態で前後方向に相対移動し、摺動面に摩擦熱が発生する。本実施形態では、当該摺動面を構成する一方の部材、すなわち本体ハウジング101Aをポリアミド樹脂で形成し、他方の部材、すなわちリング状部材104をポリアミド樹脂とは異なる材料で形成したので、本体ハウジング101Aとモータハウジング101Bの合わせ面105である摺動面が振動に伴う摩擦熱で溶着することを防止することが可能になる。
【0054】
また、本実施形態によれば、本体ハウジング101Aとリング状部材104の摺動面が周方向の全体にわたって形成された構成である。このため、摺動面の面積を大きく取ることが可能となり、本体ハウジング101Aのリング状部材104に対する摺動動作を安定させ、且つ摺動面の摩耗を低減することができる。
【0055】
また、本実施形態によれば、リング状部材104は、それ自体の弾性変形を利用して切れ目104aから外側に広げた状態でメインハウジング部101Mの外面に嵌めるようにして取付ける構成としたので、後付けでの組付けが可能であるとともに、必要に応じて新しいものと簡単に交換することができる。
【0056】
また、本実施形態によれば、ハンドグリップ109の上部連接領域109Bの弾性連結部位につき、ハンドグリップ109の筒状ガイド174をポリアミド樹脂で形成し、クランクハウジング103Aのガイドロッド175を金属で形成している。このため、当該筒状ガイド174とガイドロッド175の摺動面に摩擦熱が発生しても、当該摩擦熱による摺動面の溶着防止が可能となる。
【0057】
また、本実施形態によれば、ハンドグリップ109の下部連接領域109Cの弾性連結部位につき、モータハウジング101Bの筒状ガイド185をポリアミド樹脂で形成し、ハンドグリップ109側に固定されたスリーブ186を金属で形成している。このため、当該筒状ガイド185とスリーブ186の摺動面に摩擦熱が発生しても、当該摩擦熱による摺動面の溶着防止が可能となる。
【0058】
なお、本実施形態では、外側ハウジング101のうち、本体ハウジング101Aが内側ハウジング103Aに対して弾性連結された構成の防振ハウジングの場合で説明したが、外側ハウジング101が防振ハウジングでなくても構わない。その場合、ハンドグリップ109については、外側ハウジング101に対して弾性連結された防振ハンドルとして構成することが好ましい。
【0059】
また、本実施形態は、本体ハウジング101Aとモータハウジング101Bのメインハウジング部101Mがポリアミド樹脂で形成され、リング状部材104が、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、鉄、マグネシウム、アルミニウム又はステンレスのうちのいずれか1つから形成されるとしたが、これに限られない。例えば、本体ハウジング101Aとモータハウジング101Bのメインハウジング部101Mが、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、鉄、マグネシウム、アルミニウム又はステンレスのうちのいずれか1つから形成され、リング状部材104がポリアミド樹脂で形成される構成であっても構わない。要するに、互いに摺動自在に当接する本体ハウジング101Aとリング状部材104とは、上記の列挙された各種材料の中から互いに異なる材料で形成されていればよい。
【0060】
また、本実施形態では、モータハウジング101Bをメインハウジング部101Mとリング状部材104とに分割したが、これに限られない。すなわち、モータハウジング101Bを1つの部材で構成した上で、本体ハウジング101Aとモータハウジング101Bとの一方をポリアミド樹脂で形成し、他方をポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、鉄、マグネシウム、アルミニウム又はステンレスのうちのいずれか1つから形成する構成に変更してもよい。また、本実施形態では、リング状部材104が切れ目付きの場合で説明したが、切れ目なしのリング状に形成しても差し支えなく、このような構成とした場合であっても、本体ハウジング101Aとリング状部材104との摺動面に関する溶着防止効果は得られる。
【0061】
また、本実施形態では、打撃工具の一例としてハンマドリル100の場合で説明したが、ハンマビット119に長軸方向の打撃動作のみを行わせるハンマに適用してもよい。
【0062】
上記発明の趣旨に鑑み、本発明に係る打撃工具は、下記の態様が構成可能である。
(態様1)
「請求項1に記載の打撃工具であって、
前記第2ハウジングがポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、鉄、マグネシウム、アルミニウム及びステンレスの群より選ばれた材料によって形成されていることを特徴とする打撃工具。」
【0063】
(態様2)
「態様1に記載の打撃工具であって、
前記第1ハウジングがポリアミド樹脂で形成されていることを特徴とする打撃工具。」
【0064】
(態様3)
「請求項2に記載の打撃工具であって、
前記第1部材は、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、鉄、マグネシウム、アルミニウム及びステンレスの群より選ばれた材料によって形成されていることを特徴とする打撃工具。」
【0065】
(態様4)
「態様3に記載の打撃工具であって、
前記第2部材は、ポリアミド樹脂で形成されていることを特徴とする打撃工具。」
【0066】
(態様5)
請求項1に記載の打撃工具であって、
前記第1ハウジングは、第2ハウジングに対して弾性部材を介して弾性連結されていることを特徴とする打撃工具。」
【0067】
(態様6)
「請求項4に記載の打撃工具であって、
前記インナハウジングは、前記第2ハウジングと相対移動不能に連結されていることを特徴とする打撃工具。」
【0068】
(実施形態の各構成要素と本発明の構成要素との対応関係)
本実施形態における各構成要素と、本発明における構成要素との発明特定事項との関係は、以下のとおりである。もちろん、本実施形態における各構成要素は、対応する本発明の特定事項に関する一つの実施構成例に過ぎず、本発明の各構成要素はこれに限定されるものではない。
ハンマビット119が、本発明の「工具ビット」に対応する構成の一例である。
運動変換機構120及び打撃要素140が、本発明の「駆動機構」に対応する構成の一例である。
電動モータ110が、本発明の「モータ」に対応する構成の一例である。
外側ハウジング101が、本発明の「ハウジング」に対応する構成の一例である。
本体ハウジング101Aが、本発明の「第1ハウジング」に対応する構成の一例である。
モータハウジング101Bが、本発明の「第2ハウジング」に対応する構成の一例である。
本体ハウジング101Aの外周壁下方部分102が、本発明の「第1当接領域」に対応する構成の一例である。
モータハウジング101Bの外周壁上方部分、すなわちリング状部材104が、本発明の「第2当接領域」に対応する構成の一例である。
外周壁上方部分、すなわちリング状部材104が、本発明の「第1部材」に対応する構成の一例である。
モータハウジング101Bのメインハウジング部101Mが、本発明の「第2部材」に対応する構成の一例である。
内側ハウジング103が、本発明の「インナハウジング」に対応する構成の一例である。
第1圧縮コイルスプリング171及び弾性リング189が、本発明の「弾性部材」に対応する構成の一例である。
本体ハウジング101Aの外周壁下方部分102の左右の摺動面105aが、本発明の「第1延在面」に対応し、前後の摺動面105bが、本発明の「第2延在面」に対応する。
リング状部材104の左右の摺動面105cが、本発明の「第3延在面」に対応し、前後の摺動面105dが、本発明の「第4延在面」に対応する。
ハンドグリップ109の筒状ガイド174が、本発明の「第1ガイド部材」に対応する。
金属製のガイドロッド175が、本発明の「第2ガイド部材」に対応する。
モータハウジング101Bの筒状ガイド185が、本発明の「第3ガイド部材」に対応し、金属製のスリーブ186が、本発明の「第4ガイド部材」に対応する。