特許第5984667号(P5984667)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5984667-光学機器用遮光部材の製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984667
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】光学機器用遮光部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/00 20060101AFI20160823BHJP
   G03B 9/02 20060101ALI20160823BHJP
   G03B 9/10 20060101ALI20160823BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20160823BHJP
   C08L 101/06 20060101ALI20160823BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20160823BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20160823BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20160823BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20160823BHJP
   G03B 9/36 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   G02B5/00 B
   G03B9/02 A
   G03B9/10 A
   B32B27/20 A
   C08L101/06
   C08K3/04
   C08K3/26
   C08K3/36
   C08J7/04 ZCFD
   G03B9/36 A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-523827(P2012-523827)
(86)(22)【出願日】2011年6月29日
(86)【国際出願番号】JP2011064866
(87)【国際公開番号】WO2012005147
(87)【国際公開日】20120112
【審査請求日】2014年6月18日
(31)【優先権主張番号】特願2010-156509(P2010-156509)
(32)【優先日】2010年7月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000125978
【氏名又は名称】株式会社きもと
(72)【発明者】
【氏名】堀川 晃
(72)【発明者】
【氏名】原田 正裕
【審査官】 加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−114463(JP,A)
【文献】 特開2003−004939(JP,A)
【文献】 特開2004−004600(JP,A)
【文献】 特開2008−152199(JP,A)
【文献】 特開2003−029314(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/106822(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 − 5/136
G02B 1/10 − 1/18
G03B 9/00 − 9/07
G03B 9/08 − 9/54
B32B 1/00 − 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂フィルムからなる基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された遮光膜とを含む光学機器用遮光部材の製造方法であって、
前記遮光膜は、水酸基価が100(mgKOH/g)以上であるバインダー樹脂、イソシアネート系硬化剤、カーボンブラック及び平均粒子径が1μm未満である微粒子を含有する塗布液を用いて形成され、下記測定で得られる量り量が0.7g以上である光学機器用遮光部材の製造方法
<量り量の測定方法>
測定装置:
「上部固定部」と「秤からなる計測部」をもち、上部と計測部の隙間が2cmである測定装置
円筒状サンプル作製:
幅1.5cm、長さ20cmの前記遮光部材を、長さ方向に2周させて直径3.2cmの円筒状とし、その端辺をテープにて接着したサンプルを作製する
測定:
前記測定装置の隙間に前記円筒状サンプルを側面が上部固定部及び計測部に接するように載置した時の秤の量り量を測定する
【請求項2】
請求項1記載の光学機器用遮光部材の製造方法において、
前記遮光膜は、遮光膜中に1〜10μmの無機粒子を含有し、前記無機粒子より前記微粒子を多く含有することを特徴とする光学機器用遮光部材の製造方法
【請求項3】
請求項1及び請求項2記載の光学機器用遮光部材の製造方法において、
前記遮光膜は、遮光膜中に前記微粒子を10〜40重量%含有し、かつ前記無機粒子を0.5重量%〜5重量%含有することを特徴とする光学機器用遮光部材の製造方法
【請求項4】
請求項1記載の光学機器用遮光部材の製造方法において、
前記遮光膜中に含有されるバインダー樹脂が、ポリエステルポリオールであることを特徴とする光学機器用遮光部材の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種光学機器のシャッターや絞り部材などに使用可能な光学機器用遮光部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高性能一眼レフカメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ等の各種光学機器に対する小型化、軽量化の要求により、金属材料により形成されていた光学機器のシャッターや絞り部材がプラスチック材料へと代わりつつある。このようなプラスチック材料の絞りとしては、カーボンブラック、滑剤、微粒子及びバインダー樹脂を含有する遮光膜をフィルム基材の上に形成した遮光性フィルムが知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−274218号公報
【特許文献2】WO2006/016555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した遮光性フィルムは、金属材料からなる遮光部材に比べてコシが極端に弱いため、当該遮光性フィルムを光学機器のシャッターや絞り部材として用いると使用に耐えられず、他の部材との接触部位からゆがみが生じ、変形或いは破損してしまうという問題が生じていた。このような問題は、薄型化が要求されている近年の状況では大きな課題といえる。
【0005】
これに対し、金属材料からなる遮光部材をそのまま薄型化させる手法も考えられるが、当該遮光部材をシャッターや絞り部材として用いると、他の部材との接触により変形が生じ易い。かかる変形は、金属材料の性質上元に戻ることがないため、このような遮光部材では使い勝手が良くない。また、金属材料はプラスチック材料に比べ、そもそもコスト高である。
【0006】
このように、金属材料を用いることなく、薄型化させてもコシがあり、フィルムの破損等が生じ難い光学機器用遮光部材が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、これに対し、遮光膜中にバインダー樹脂として水酸基価が100(mgKOH/g)以上であるバインダー樹脂と、平均粒子径が1μm未満である微粒子を含んだ遮光部材とすることで、薄型化させてもコシがあり、他の部材と接触してもフィルムの破損等が生じ難いものとすることができることを見出し、本発明に至ったものである。
【0008】
即ち、本発明の光学機器用遮光部材の製造方法は、
合成樹脂フィルムからなる基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された遮光膜とを含む光学機器用遮光部材の製造方法であって、
前記遮光膜は、水酸基価が100(mgKOH/g)以上であるバインダー樹脂、イソシアネート系硬化剤、カーボンブラック及び平均粒子径が1μm未満である微粒子を含有する塗布液を用いて形成され、下記測定で得られる量り量が0.7g以上である。
<量り量の測定方法>
測定装置:
「上部固定部」と「秤からなる計測部」をもち、上部と計測部の隙間が2cmである測定装置
円筒状サンプル作製:
幅1.5cm長さ20cmの前記遮光部材を、長さ方向に2周させて直径3.2cmの円筒状とし、その端辺をテープにて接着したサンプルを作製する
測定:
前記測定装置の隙間に前記円筒状サンプルを側面が上部固定部及び計測部に接するように載置した時の秤の量り量を測定する
【0009】
また、本発明の光学機器用遮光部材の製造方法は、好ましくは遮光膜中に1〜10μmの無機粒子を含有し、前記無機粒子より微粒子を多く含有することを特徴とし、さらに好ましくは遮光膜中に前記微粒子を10〜40重量%含有し、かつ前記無機粒子を0.5重量%〜5重量%含有することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の光学機器用遮光部材の製造方法は、好ましくは遮光膜中に含有されるバインダー樹脂が、ポリエステルポリオールであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
上記発明によれば、遮光膜中に水酸基価が100(mgKOH/g)以上であるバインダー樹脂及び平均粒子径が1μm未満である微粒子を含有させることにより、薄型化させてもコシがあり、フィルムの破損等が生じ難い遮光部材とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】光学機器用遮光部材のコシ強さを測定するための測定装置を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の光学機器用遮光部材(以下、「遮光部材」という場合もある)の実施の形態ついて説明する。
本発明の遮光部材は、合成樹脂フィルムからなる基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された遮光膜とを含むものである。当該遮光膜は、水酸基価が100(mgKOH/g)以上であるバインダー樹脂、カーボンブラック及び平均粒子径が1μm未満である微粒子を含有する。
【0014】
なお、本発明でいう平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所社:SALD−7000など)で測定されるメディアン径(D50)を指す。
【0015】
合成樹脂フィルムからなる基材としては、ポリエステル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィン、セルロース樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン等からなるものが挙げられる。中でもポリエステルフィルムが好適に用いられ、延伸加工、特に二軸延伸加工されたポリエステルフィルムが機械的強度、寸法安定性に優れる点で特に好ましい。
【0016】
また、基材として、透明なものはもちろん、発泡ポリエステルフィルムや、カーボンブラック等の黒色顔料や他の顔料を含有させた合成樹脂フィルムを使用することもできる。この場合、上述の基材は、それぞれの用途により適切なものを選択することができる。例えば、遮光部材として使用する際に、部材断面の合成樹脂フィルム部分においてレンズ等で集光された光が反射し悪影響を及ぼすため、高い遮光性が必要な場合には、カーボンブラック等の黒色顔料含有の合成樹脂フィルムを使用することができ、他の場合においては、透明若しくは発泡した合成樹脂フィルムを使用することができる。
【0017】
本実施形態においては、遮光膜自体で遮光部材としての充分な遮光性が得られることから、合成樹脂フィルムに黒色顔料を含有させる場合には、合成樹脂フィルムが目視で黒色に見える程度、即ち光学濃度が3程度となるように含有すれば良い。したがって、従来のように合成樹脂フィルム中に基材としての物性が損なわれる限界まで黒色顔料を含有させるものではないため、合成樹脂フィルムの物性を変化させることなく、安価に得ることができる。
【0018】
基材の厚みとしては、4〜50μmが好ましく、特に薄型化の観点から、4〜38μmがより好ましい。また、基材には、遮光膜との接着性を向上させる観点から、必要に応じアンカー処理またはコロナ処理を行うこともできる。
【0019】
基材の少なくとも片面に形成される遮光膜は、水酸基価が100(mgKOH/g)以上であるバインダー樹脂、カーボンブラック及び平均粒子径が1μm未満である微粒子を含有する。
【0020】
通常、平均粒子径が1μm未満の微粒子をバインダー樹脂中に用いると、粒子径が小さいため微粒子どうしで凝集する傾向となる。そうすると、かかる微粒子はバインダー樹脂中において均一に分散できずに偏って存在することとなる。かかる材料により遮光膜を形成すると、遮光膜中に微粒子の存在密度の低い部分が形成され易く、遮光膜に局部的に変形し易い部分ができてしまう。当該遮光膜を備えた遮光部材を一定期間使用すると、変形し易い部分からたわみ・ひずみが発生してしまうため、必ずしもコシが強いものとはいえなくなると考えられる。
【0021】
一方、平均粒子径が1μm未満である微粒子を水酸基価が100(mgKOH/g)以上であるバインダー樹脂に含有させて用いると、当該微粒子が当該バインダー樹脂の水酸基価に影響されて局部的に凝集することなく均一に分散されることとなる。それにより、遮光膜全体として微粒子の分散バランスが好適なものとなり、遮光部材として用いても局部的にたわみ・ひずみが生じ難く、コシが強いものとすることができると考えられる。
【0022】
水酸基価が100(mgKOH/g)以上であるバインダー樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン/ポリブタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂等の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0023】
バインダー樹脂の水酸基価は、100(mgKOH/g)以上とする。バインダー樹脂の水酸基価を100(mgKOH/g)以上とすることにより、上述のとおり平均粒子径が1μm未満の微粒子が遮光膜中に均一に分散されることとなり、遮光膜を薄型化させても遮光部材全体としてコシがあり、フィルムの破損等が生じ難いものとすることができる。バインダー樹脂の水酸基価は、コシをさらに発揮させる観点から、125(mgKOH/g)以上が好ましく、200(mgKOH/g)以上であることがより好ましい。一方、上限としては、曲げ応力が低下して塗膜が脆くなるのを防止する観点から、250(mgKOH/g)以下とすることが好ましい。
【0024】
水酸基価が100(mgKOH/g)以上であるバインダー樹脂の含有率は、遮光膜中、好ましくは15重量%以上、より好ましくは20重量%以上とする。前記バインダー樹脂の含有率を遮光膜中、15重量%以上とすることにより、基材と遮光膜との接着性が低下するのを防止することができる。一方、前記バインダー樹脂の含有率は、遮光膜中、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下とする。前記バインダー樹脂の含有率を遮光膜中、50重量%以下とすることにより、遮光性が低下するのを防止することができる。
【0025】
遮光膜に含有されるカーボンブラックは、バインダー樹脂を黒色に着色させ遮光性を付与させると共に、導電性を付与させて静電気による帯電を防止させるためのものである。
【0026】
カーボンブラックの平均粒子径は、充分な遮光性を得るため1μm以下が好ましく、0.5μm以下とすることがより好ましい。
【0027】
カーボンブラックの含有率は、遮光膜中、10重量%〜50重量%が好ましく、15重量%〜45重量%とすることがより好ましい。遮光膜中、10重量%以上とすることにより、遮光性及び導電性が低下するのを防止することができ、50重量%以下とすることにより、接着性や耐擦傷性が向上し、また塗膜強度の低下およびコスト高となるのを防止することができる。
【0028】
また、遮光膜には、表面に微細な凹凸を形成させることで入射光の反射を少なくし表面の光沢度(鏡面光沢度)を低下させ、遮光部材とした際の艶消し性を向上させる観点から、無機粒子を含有させてもよい。無機粒子としては、シリカ、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化チタンなどが挙げられるが、これらの中でも、粒子の分散性・低コスト等の観点から、シリカを用いることが好ましい。
【0029】
無機粒子の平均粒子径は、1μm〜10μmが好ましく、1μm〜6μmとすることがより好ましい。このような範囲とすることにより、遮光部材の表面に微細な凹凸が形成され、艶消し性が得られるからである。
【0030】
無機粒子の含有率は、遮光膜中、0.5重量%〜10重量%が好ましく、0.5重量%〜5重量%とすることがより好ましい。遮光膜中、0.5重量%以上とすることにより、表面の光沢度(鏡面光沢度)が増加して艶消し性が低下するのを防止することができる。一方、10重量%以下とすることにより、遮光部材の摺動による無機粒子の脱落が生じたり、遮光部材自体に傷が発生するのを防ぎ、摺動性の低下を招くことを防止することができる。
【0031】
特に高い遮光性や導電性が求められる場合には、無機粒子の含有率は、上述の範囲からさらに遮光膜中、5重量%以下とすることが好ましい。本実施形態で用いる無機粒子は、前述のように少量でも高い艶消し性を得ることができるので、5重量%以下とすることにより、十分な艶消し性が得られ、しかも相対的にカーボンブラック、後述する微粒子の含有率を増加させることが可能となり、コシを低下させることなく遮光性、導電性等の物性を向上させることができる。
【0032】
遮光膜に含有される平均粒径1μm未満の微粒子は、上述したように水酸基価が100(mgKOH/g)以上であるバインダー樹脂と併せて用いることにより、遮光膜全体として微粒子の分散バランスが好適なものとなり、遮光部材として用いても局部的にたわみ・ひずみが生じ難く、コシが強いものとすることができる。また、遮光膜とした際の塗膜の硬度を向上させることもできる。さらに、局部的にたわみ・ひずみが生じ難いため、熱変形が起こりにくいものとすることができる。
【0033】
このようなものとしては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の炭化水素系滑剤、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸系滑剤、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等のアミド系滑剤、ステアリン酸モノグリセリド等のエステル系滑剤、アルコール系滑剤、シリコーン樹脂粒子、ポリテトラフッ化エチレンワックス等のフッ素樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子等の樹脂微粒子からなるもの、或いは、金属石鹸、滑石、二硫化モリブデン、炭酸カルシウム、シリカ、水酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化チタン等の固体潤滑剤等の無機微粒子からなるものが挙げられる。これらの中でも、全体的に粒子の硬度が高くコシの向上に寄与し得る観点から、無機微粒子からなるものを用いることが特に好ましい。さらには無機微粒子の中でも、炭酸カルシウムを用いると、遮光部材としてコシがより強いものとなるため、好ましい。これらの微粒子は1種又は2種以上を混合して用いることもできる。なお、ここで列挙したシリカは、前述の艶消し性を向上させるために含有するシリカとは異なるものである。
【0034】
微粒子の含有率は、遮光膜中2.5重量%〜40重量%とすることが好ましく、より好ましくは10重量%〜35重量%とする。遮光膜中2.5重量%以上とすることにより、コシをより強くすることができ、40重量%以下とすることにより、カーボンブラックの相対的含有量を高くすることができ、コシを得つつ遮光性が低下するのを防止することができる。
【0035】
また、前記バインダー樹脂に対する前記微粒子の含有割合は、前記バインダー樹脂100重量部に対し、前記微粒子を30〜200重量部含有させることが好ましく、50〜150重量部とすることがさらに好ましい。このような含有割合とすることにより、遮光性を維持しつつ、遮光膜中における前記微粒子の分散バランスがさらに改善され、コシのより優れた遮光部材とすることができる。
【0036】
基材の少なくとも片面に形成される遮光膜には、本発明の機能を損なわない場合であれば、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤、分散剤等の種々の添加剤を含有させることができる。
【0037】
遮光膜の厚みは3μm〜30μmが好ましく、5μm〜20μmとすることがより好ましい。3μm以上とすることにより、遮光膜にピンホール等が生ずるのを防止することができ、充分な遮光性を得ることができる。また、30μm以下とすることにより、遮光膜に割れが生ずることを防止することができる。
【0038】
本実施形態の光学機器用遮光部材は、基材の片面または両面に、上述のような水酸基価が100(mgKOH/g)以上であるバインダー樹脂、カーボンブラック及び平均粒子径が1μm未満である微粒子等を含む遮光膜用塗布液をディップコート、ロールコート、バーコート、ダイコート、ブレードコート、エアナイフコート等の従来公知の塗布方法により塗布し、乾燥させた後、必要に応じて加熱・加圧等することにより得ることができる。塗布液の溶媒は、水や有機溶剤、水と有機溶剤との混合物等を用いることができる。
【0039】
以上のように、本実施形態の光学機器用遮光部材は、基材の少なくとも片面に特定の遮光膜を含むことから、遮光性、導電性等の遮光膜の物性を保持したものであるため、高性能一眼レフカメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、携帯電話、プロジェクタ等の光学機器のシャッター、絞り部材として好適に用いることができる。
【0040】
特に、本実施形態の遮光膜は、水酸基価が100(mgKOH/g)以上であるバインダー樹脂と平均粒子径が1μm未満である微粒子とを含有するものであるため、微粒子が遮光膜中に均一に分散することが可能となるため、薄型化させてもコシがあり、フィルムの破損等が生じ難い遮光部材とすることができる。その結果、近年、特に薄型化が求められているカメラ付き携帯電話のシャッター、絞り部材などに特に好適に用いられるものとなる。さらに、局部的にたわみ・ひずみが生じ難いため、熱変形が起こり難いものとすることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0042】
1.遮光部材の作製
[実施例1]
基材として厚み25μmの黒色ポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーX30:東レ社)を用い、当該基材の両面に下記処方の遮光膜用塗布液をそれぞれバーコート法により、乾燥時の厚みがそれぞれ10μmとなるように塗布・乾燥を行って遮光膜を形成し、実施例1の光学機器用遮光部材を作製した。
【0043】
<実施例1の遮光膜用塗布液>
・ポリエステルポリオール 9.68部
(バーノック11-408:DIC社、水酸基価200(mgKOH/g)、固形分70%)
・イソシアネート 9.37部
(バーノックDN980:DIC社、固形分75%)
・カーボンブラック 4.57部
(バルカンXC-72:キャボット社)
・シリカ 0.89部
(TS100:エボニック・デグサ・ジャパン社、平均粒子径4μm)
・微粒子(炭酸カルシウム) 7.50部
(サンライトSL-700:竹原化学工業社、平均粒子径0.74μm)
・メチルエチルケトン 36.93部
・トルエン 15.83部
【0044】
[実施例2]
実施例1で用いた遮光膜用塗布液のうち、ポリエステルポリオールをポリエステルポリオール(バーノックJ-517:DIC社、水酸基価140(mgKOH/g)、固形分70%)に変更し、イソシアネートの添加量を6.56重量部とした以外は実施例1と同様にして、実施例2の光学機器用遮光部材を作製した。
【0045】
[実施例3]
実施例1で用いた遮光膜用塗布液のうち、ポリエステルポリオールをポリエステルポリオール(バーノックD-144-65BA:DIC社、水酸基価100(mgKOH/g)、固形分65%)に変更して添加量を10.42重量部とし、さらにイソシアネートの添加量を5.04重量部とした以外は実施例1と同様にして、実施例3の光学機器用遮光部材を作製した。
【0046】
[実施例4]
実施例1で用いた遮光膜用塗布液のうち、微粒子(炭酸カルシウム)を微粒子(酸化チタン、A−100:石原産業社、平均粒子径0.15μm)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例4の光学機器用遮光部材を作製した。
【0047】
[実施例5]
実施例1で用いた遮光膜用塗布液のうち、微粒子(炭酸カルシウム)を微粒子(アクリル粒子、ケミスノーMP-1600:綜研化学社、平均粒子径0.8μm)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例5の光学機器用遮光部材を作製した。
【0048】
[比較例1]
実施例1で用いた遮光膜用塗布液のうち、ポリエステルポリオールをアクリルポリオール(アクリディックA-801P:DIC社、水酸基価50(mgKOH/g)、固形分50%)に変更して添加量を13.55重量部とし、イソシアネートの添加量を3.28重量部とした以外は実施例1と同様にして、比較例1の光学機器用遮光部材を作製した。
【0049】
[比較例2]
実施例1で用いた遮光膜用塗布液のうち、微粒子(炭酸カルシウム)を粒子(硫酸バリウム、BMH:堺化学工業社、平均粒子径2.5μm)に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例2の光学機器用遮光部材を作製した。
【0050】
2.評価
以上のようにして実施例1〜5及び比較例1〜2で得られた光学機器用遮光部材について、下記の方法で物性の評価をした。それぞれの結果を表1に示す。
【0051】
(1)遮光性
上記実施例1〜5及び比較例1〜2で得られた光学機器用遮光部材を、JIS K7651:1988に基づき光学濃度計(TD−904:グレタグマクベス社)を用いて光学濃度を測定した。光学濃度が4.0を超え、測定不能領域の濃度となったものを「○」とし、4.0以下であったものを「×」とした。なお、測定はUVフィルターを用いた。測定結果を表1に示す。
【0052】
(2)コシの強さ
実施例1〜5及び比較例1〜2で得られた光学機器用遮光部材から、幅1.5cm長さ20cmの実施例1〜5及び比較例1〜2のサンプルを採取し、当該サンプルをそれぞれ長さ方向に2周させて円筒状とし、当該サンプルが三重に重ならないようにしてポリエステルテープ(ニチバン社)にて当該円筒状のサンプルの最表面に存在するサンプル端辺が中心になる位置で幅1.5cm、長さ1.8cm接着し、幅(高さ)1.5cm、直径約3.2cmの円筒状の実施例1〜5及び比較例1〜2のサンプルを作製した。
【0053】
次いで、市販の電子天秤(BX3200D:島津製作所社)からなる計測部3と、上部固定部2とからなり、前記計測部3と前記上部固定部との隙間が2cmである図1にあるような測定装置10を用意した。かかる測定装置10の計測部3と上部固定部2との隙間に、上述した直径約3.2cmの円筒状の実施例1〜5及び比較例1〜2のサンプル1を、その円筒状の側面が当該計測装置10の計測部3及び上部固定部2と接するように載置し、サンプル1の弾性力による10秒後の計測部3の電子天秤の量り量を測定した。測定した結果、量り量が1g以上であったものを「◎」とし、0.7g以上〜1g未満であったものを「○」とし、0.7g未満であったものを「×」とした。測定結果を表1に示す。
【0054】
(3)耐久性
実施例1〜5及び比較例1〜2で得られた光学機器用遮光部材をカメラの絞り部材として用い、2万5千回動作させて当該光学機器用遮光部材の変形或いは破損の有無を目視にて確認した。変形或いは破損がなかったものを「○」とし、変形或いは破損があったものを「×」とした。また、変形或いは破損がなかったものについて、再度2万5千回動作させ、後に目視にて確認した際にも変形或いは破損がなかったものを「◎」とした。測定結果を表1に示す。
【0055】
(4)熱変形
基材の一方の面に、上記実施例1〜5及び比較例1〜2の遮光膜が設けられた光学機器用遮光部材を用意した。縦横10cm×10cmに裁断し、80℃、5分の環境に静置し、端部のカール量を測定した。カール量の四隅の合計が、0mm以上〜30mm未満であったものを「○」とし、30mm以上であったものを「×」とした。測定結果を表1に示す。
【0056】
(5)接着性
上記実験例1〜5及び比較例1〜2で得られた光学機器用遮光部材の遮光膜と基材との接着性を、JIS 5600−5−6における碁盤目テープ法に基づき測定して評価した。碁盤目部分の面績が10%以上剥離したものを「×」、5%以上10%未満のものを「△」、5%未満のものを「○」とした。
【0057】
【表1】
【0058】
表1の結果から分かるように、実施例1〜5で得られた光学機器用遮光部材は、合成樹脂フィルムからなる基材と、前記基材の少なくとも片面に形成された遮光膜とを含むものであって、当該遮光膜が、水酸基価が100(mgKOH/g)以上であるバインダー樹脂、カーボンブラック、シリカ、及び平均粒子径が1μm未満である微粒子を含有するものであったため、遮光性を発揮しつつ、薄型化させてもコシの強いものとすることができ、耐久性に優れるものであるためフィルム等の破損等が生じ難いものとすることができた。
【0059】
特に、実施例1、2の光学機器用遮光部材は、バインダー樹脂の水酸基価が125(mgKOH/g)以上のものであったため、コシの強さが特に高いものとなり、さらに実施例1の光学機器用遮光部材は、バインダー樹脂の水酸基価が200(mgKOH/g)以上であり、かつ微粒子として炭酸カルシウムを用いたものであったため、コシの強さが特に高く、耐久性にも特に高いものとなった。
【0060】
一方、比較例1の光学機器用遮光部材は、水酸基価が100(mgKOH/g)未満のバインダー樹脂を用いたため、遮光膜中に微粒子が均一に分散されず、コシの弱いものとなった。また、これにより耐久性にも乏しいものとなった。
【0061】
また、比較例2の光学機器用遮光部材は、平均粒子径が1μm以上の粒子を用いたため、遮光膜中に微粒子が均一に分散されず、コシの弱いものとなった。また、これにより耐久性にも乏しいものとなった。
【0062】
実施例1〜5で得られた光学機器用遮光部材は、当該遮光膜が、水酸基価が100(mgKOH/g)以上であるバインダー樹脂、カーボンブラック、シリカ、及び平均粒子径が1μm未満である微粒子を含有するものであったため、遮光膜全体として微粒子の分散バランスが好適なものとなり、遮光部材として遮光膜が基材の片面に設けられた場合であっても局部的にたわみ・ひずみが生じ難く、熱変形が起こり難いものとすることができた。
【0063】
比較例1で得られた光学機器用遮光部材は、当該遮光膜中の顔料割合が高いため、バインダー樹脂に起因する熱変形を起こし難いものとなった。しかし、顔料割合が高いことや微粒子が均一に分散されないものであったために、基材との接着性が悪いものとなった。
【0064】
比較例2で得られた光学機器用遮光部材は、実施例1で得られた光学機器用遮光部材と、当該遮光膜中の顔料割合は同じであるが、平均粒子径が1μm未満である微粒子を含まないものであったため、塗膜中に微粒子が均一に分散されず、局部的にたわみ・ひずみが生じてしまい、熱変形が起こるものとなった。また、基材との接着性も実施例1と比べて劣るものとなった。
【符号の説明】
【0065】
1・・・本発明の光学機器用遮光部材
2・・・上部固定部
3・・・計測部
10・・・測定装置
図1