【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、本発明によれば、
自動二輪車用のタイヤであって、タイヤの各側でビードに繋留された補強要素で形成されているカーカス型の補強構造体を有し、ビードのベースは、リムシートに取り付けられるようになっており、各ビードの半径方向外方の延長部としてサイドウォールが設けられ、サイドウォールは、半径方向外側に向かってトレッドに合体している、タイヤにおいて、トレッドの少なくとも中央部分は、少なくとも1つの周方向連続切れ目を有し、周方向連続切れ目は、その長さの少なくとも80%に関し、少なくとも1つの切り込み及び切り込みの幅よりも大きな幅を有する最大で20%の少なくとも1つの部分で構成され、少なくとも1つの切り込みの見掛けの面積は、切り込みの幅よりも大きな幅を有する少なくとも1つの部分の見掛けの面積よりも大きいことを特徴とするタイヤによって達成される。
【0018】
好ましくは、周方向連続切れ目は、その長さの少なくとも85%に関し、少なくとも1つの切り込みで形成される。
【0019】
本発明の意味の範囲内において、切り込みは、2つの壁を形成する切れ目であり、形成し、壁のうちの一方に接する平面に垂直に沿って測定された壁相互間の距離が1.5mm未満、好ましくは1mm未満の切れ目である。トレッドの表面上のこのような距離は、切り込みの底部のところ(これは、トレッドの表面から最も遠くに位置する箇所のところであることを意味する)の距離に少なくとも等しい。特に、
オートバイ用タイヤの場合、トレッドの厚さが比較的小さいので、トレッドの表面から切り込みの底部に向かってこのような距離が大きくなることにより切り込みのエッジがトレッドの表面のところでつぶれ、かくしてトレッドが路面と接触する接触パッチの面積が減少する場合、このようにトレッド表面から切り込み底部に向かってこのような距離が大きくなることが生じてはならない。
【0020】
本発明の意味の範囲内において、切り込みの見掛けの面積は、トレッドの表面の上述の切り込みの壁によって画定された材料のない空所又は領域の面積である。これは、公称圧力までインフレートされて無負荷状態のタイヤについて測定される。
【0021】
周方向連続切れ目が少なくとも2つの切れ目で形成されている場合、少なくとも2つの切れ目の見掛けの面積は、本発明の意味の範囲内において、切り込みの各々の見掛けの面積の合計を意味すると理解されなければならない。
【0022】
周方向連続切れ目が切り込みの幅より大きな幅を有する少なくとも2つの部分で構成されている場合、切り込みの幅よりも大きな幅を有する少なくとも1つの部分の見掛けの面積は、本発明の意味の範囲内において、切り込みの幅よりも大きな幅を有する上述の2つの部分の各々の見掛けの面積の合計を意味していると理解されなければならない。
【0023】
周方向連続切れ目の長さは、この切れ目の壁の湾曲した横座標に沿って測定される。
タイヤの中央部分は、タイヤのクラウンに相当し、タイヤが直線走行しているとき、路面と接触状態にある部分である。
【0024】
タイヤの長手方向又は周方向は、タイヤの周囲に対応すると共にタイヤの走行方向によって定められる方向である。
【0025】
「周方向に連続(又は周方向連続)」という表現は、切れ目が妨げられない状態でタイヤをぐるりと一回りしていることを意味している。
【0026】
タイヤの横方向又は軸方向は、タイヤの回転軸線に平行である。
【0027】
タイヤの回転軸線は、タイヤが通常の使用の際に回転する中心となる軸線である。
【0028】
周方向平面又は周方向断面平面は、タイヤの回転軸線に垂直な平面である。赤道面は、トレッドの中心又はクラウンを通る周方向平面である。
【0029】
半径方向平面又は子午面は、タイヤの回転軸線を含む。
【0030】
半径方向は、タイヤの回転軸線と交差し且つこれに垂直な方向である。半径方向は、周方向平面と半径方向平面の交線である。
【0031】
本発明の好ましい一実施形態によれば、切り込みの幅よりも大きな幅を有する少なくとも1つの部分の見掛けの面積は、少なくとも1つの切り込みの見掛けの面積の75%未満である。
【0032】
本発明に従ってこのように製造され、
オートバイのホイールに取り付けられたタイヤは、直線走行時、タイヤの中央部のトレッドを構成しているゴムコンパウンドに過度の圧縮荷重が加わることなく、効果的にタイヤが平べったくなる又は扁平化することができるようにする。
【0033】
本発明者は、トレッドの中央部分に長さの少なくとも80%に関して少なくとも1つの切り込みで形成された少なくとも1つの周方向に連続した切れ目が設けられていることにより、接触パッチの面積を増大させ、従って、トルク伝送を増大させることができると同時に、直線走行時におけるタイヤの赤道面のゴムコンパウンドに加わる圧縮荷重を制限することができる。
【0034】
本発明の好ましい一実施形態によれば、少なくとも1つの周方向連続切れ目は、少なくとも、2.5mmより大きな幅を有する部分から成る。
【0035】
本発明の意味の範囲内において、少なくとも1つの部分の幅は、少なくとも1つの部分を包囲した長方形の幅に等しく、このことは、少なくとも1つの部分の全体を含む最も小さな長方形であることを意味している。本発明のこの実施形態によれば、タイヤのトレッドの中央部分の周方向連続切れ目は、2.5mmよりも大きな幅の少なくとも1つの切断領域によって途切れている少なくとも1つの切り込みから成る。本発明によれば、これら領域の全ては、周方向連続切れ目の長さの最大で20%に相当している。
【0036】
有利には、本発明によれば、少なくとも1つの周方向連続切れ目は、その長さの少なくとも5%に関し、2.5mmよりも大きな幅を有する少なくとも1つの部分で形成されている。これは、切り込みから成る切れ目が本発明者がタイヤの製造に起因して生じる亀裂発生領域を有するということを実証できたからである。具体的に説明すると、本発明者は、亀裂発生領域又は亀裂発生の恐れを示す領域が製造モールドのセグメント相互間の接合部と不合して生じることを実証できた。タイヤとモールドは、事実、硬化又は加硫ステップ中にタイヤを成形するために互いに組み立てられる数個のセグメントで構成される。かくして、2.5mmよりも大きな幅を有するこれら不連続部分は、有利には、モールドを構成するセグメント相互間の接合部のところに形成される。かくして、少なくとも1つの周方向連続切れ目は、有利には、その長さの少なくとも5%について、2.5mmを超える幅を有する少なくとも1つの部分で形成される。5%というこの値は、程度の差はあれ、タイヤを製造するモールドを構成するセグメント相互間の接合部の全てを覆うために必要な部分の値に相当している。
【0037】
これ又有利には、2.5mmを超える幅を有する部分の各々は、2.5〜10mmの長さを有する。一部分の長さは、これが連結している切れ目の2つの端相互間で測定され、これは、上記において定義したようにこの一部分を包囲した長方形の長さに等しい。このような長さは、亀裂がトレッドを構成しているゴムコンパウンドに現れる確立を減少させる。
【0038】
これ又有利には、本発明によれば、これら部分は、トレッドのところに長円形の断面を有する。これら部分の断面の連続曲率は、同様に、亀裂がトレッドの構成に用いられるゴムコンパウンドに現れる確立を減少する役割を果たす。
【0039】
他の実施形態によれば、トレッドの表面のところのこれら部分の断面は、任意の幾何学的形状のものであって良く、例えば多角形のものである。
【0040】
本発明の他の観点によれば、本発明は、
自動二輪車用のタイヤであって、タイヤの各側でビードに繋留された補強要素で形成されているカーカス型の補強構造体を有し、ビードのベースは、リムシートに取り付けられるようになっており、各ビードの半径方向外方の延長部としてサイドウォールが設けられ、サイドウォールは、半径方向外側に向かってトレッドに合体している、タイヤにおいて、トレッドの少なくとも中央部分は、2つの壁を形成する少なくとも1つの周方向連続切れ目を有し、切れ目は、その長さの少なくとも80%に関し、壁相互間の距離が切れ目の長さの最大で20%の壁相互間の距離の1/3未満である領域で構成され、切れ目の長さの少なくとも80%を構成する領域の見掛けの面積は、切れ目の長さの最大で20%を構成する他の領域の見掛けの面積よりも大きいことを特徴とするタイヤに関する。
【0041】
好ましくは、切れ目は、その長さの少なくとも85%について、壁相互間の距離は、この切れ目の長さの最大で15%の壁相互間の距離の1/3未満である領域で構成される。
【0042】
本発明の変形実施形態によれば、少なくとも1つの切り込みで形成された長さの少なくとも80%は、前記トレッドの表面上で周方向と角度をなす。
【0043】
本発明のこの変形実施形態によれば、切り込みは、周方向と交差する主要方向を有する。このような切り込みにより、タイヤは、湿った又は濡れた路面をグリップするのが促進される。
【0044】
本発明の好ましい実施形態によれば、切り込みは、タイヤトレッドの周囲に沿ってZ字形の線を形成する。かくして、少なくとも1つの周方向連続切れ目は、1組の切り込みから成り、2つの連続して位置する切り込みは、周方向に関し互いに逆方向に差し向けられている。これ又有利には、2つの連続した切り込みは、2.5mmを超える幅を有する切れ目の一部分によって分離される。これら部分は、この場合も又、これらの配置場所がモールドセグメント相互間の接合部に対応していない場合、トレッドのゴムコンパウンド内における亀裂発生の恐れを制限するであろう。これは、2.5mmを超える幅を有するこれら部分が存在していなかったとすれば、切り込みは、亀裂発生を開始する可能性のある角度をなして互いに出会うからである。
【0045】
本発明の好ましい一実施形態によれば、少なくとも1つの周方向連続切れ目は、2.5mmよりも大きい幅を備えた少なくとも2つの部分相互間に、トレッドの表面上の少なくとも1本の曲線から成る。このような実施形態では、切り込みは、濡れた又は湿った路面に対する更に良好なタイヤグリップを促進する。
【0046】
本発明の有利な一変形形態では、切り込みの深さは、特にタイヤの軸方向における種々の摩耗速度を考慮に入れると共に軸方向に変化するトレッド剛性を得るために軸方向に変化している。
【0047】
本発明の有利な変形形態によれば、トレッドの少なくとも表面は、中央部分の少なくとも一部にわたって延びる第1のポリマー配合物と、第1のポリマー配合物の物理化学的性質とは異なる物理化学的性質を有していて、トレッドの軸方向外側部分の少なくとも一部を覆っている少なくとも1種類の第2のポリマー配合物とから成る。
【0048】
本発明の実施形態のこのような変形形態により、例えばトレッドの中央について耐摩耗性が向上し、軸方向外側部分についてグリップ特性が向上したトレッドを作ることができる。
【0049】
本発明のこのような変形実施形態では、特に、向上した耐摩耗性を有するトレッドが少なくとも1つの周方向連続切れ目と一致することが提案される。
【0050】
本発明の有利な実施形態によれば、タイヤに対称という性質を与えるため、中央周方向バンドの中心は、有利には、赤道面上に配置される。例えばカーブが全てに本質的に同一方向であるサーキット上で走行するようになったタイヤ向きの他の実施形態では、中央周方向バンドの中心を赤道面上に配置しないようにすることが可能である。
【0051】
本発明の有利な変形実施形態では、トレッドの少なくとも表面を形成し、かくしてトレッドの特性を赤道面からショルダに向かって次第に変化させる5本又は6本以上の周方向バンドを設けることが想定できる。従前通り、このような実施形態は、赤道面に関して対称であっても良く、又は非対称であっても良く、バンドの分布状態は、これらの組成の点において又は赤道面周りのこれらの分布状態の点かのいずれかにおいて異なっている。
【0052】
本発明の好ましい実施形態によれば、第2のポリマー配合物は、第1のポリマー配合物の組成とは異なる組成のものであり、より好ましくは、第2のポリマー配合物は、第1のポリマー配合物のグリップ特性よりも優れたグリップ特性を有する。
【0053】
他の実施形態によれば、異なる加硫条件を用いることによって同種の配合物で互いに異なる特性を得ることができる。
【0054】
また、有利には、第1のポリマー配合物の半径方向厚さと第2のポリマー配合物の半径方向厚さは、軸方向におけるトレッドの耐摩耗性を最適化するよう互いに異なっているのが良い。また、有利には、厚さは、次第に異なる。
【0055】
本発明の好ましい一実施形態によれば、第2のポリマー配合物は、第1のポリマー配合物のショアAスケール硬度とは異なるショアAスケール硬度を有する。
【0056】
硬化後におけるポリマー配合物のショアAスケール硬度は、ASTM・D2240‐86規格に従って評価される。
【0057】
本発明の好ましい一実施形態によれば、カーカス型補強構造体の補強要素は、周方向と65°〜90°の角度をなす。
【0058】
本発明の変形例によれば、クラウン補強構造体は、周方向と10°〜80°の角度をなす補強要素の少なくとも1つの層を有する。
【0059】
この変形形態によれば、クラウン補強構造体は、有利には、補強要素の少なくとも2つの層を有し、1つの層から次の層にこれら補強要素相互は20°〜160°、好ましくは40°より大きい角度をなす。
【0060】
本発明の好ましい一実施形態によれば、実働層の補強要素は、繊維材料で作られる。
【0061】
本発明の別の実施形態によれば、実働層の補強要素は、金属で作られる。
【0062】
本発明の有利な一実施形態では、特に、タイヤの子午線に沿う、特に実働層の縁部のところの補強構造体の剛性を最適化する目的で、実働層の補強要素と長手方向とのなす角度は、このような角度がタイヤの赤道面のところで測定した角度と比較して、補強要素の層の軸方向外側の縁のところの方が大きいように横方向に変化しているのが良い。
【0063】
本発明の一実施形態では、タイヤは、特に、周方向補強要素の少なくとも1つの層を有するクラウン補強構造体から成り、周方向補強要素の層は、下側長手方向に対して5°未満の角度をなして差し向けられた少なくとも1つの補強要素から成る。
【0064】
また、好ましくは、周方向補強要素の層の補強要素は、金属及び/又は繊維及び/又はガラスで作られる。本発明は、特に、周方向補強要素の同一の層内に互いに異なる種類の補強要素の使用を想定している。
【0065】
また、好ましくは、周方向補強要素の層の補強要素は、6000N/mm
2を超える弾性率を有する。
【0066】
本発明の一変形実施形態では、有利には、周方向補強要素は、可変ピッチで横方向に分布して配置される。
【0067】
周方向補強要素相互間のピッチの変化は、横方向における単位長さ当たりの周方向補強要素の数の変化及びかくして横方向における周方向補強要素の密度の変化、それ故、横方向における周方向剛性の変化の形態を取る。
【0068】
本発明の別の細部及び有利な特徴は、
図1〜
図4を参照して行われる本発明の実施形態の説明から以下において明らかになろう。