(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の湿分分離加熱器では、本来、端室内に蒸気は流入しない。しかしながら、仕切板と加熱器との隙間から蒸気室内の蒸気が僅かではあるが、端室内に流入する。端室内に流入した蒸気は、凝縮してドレンとして端室内に溜まる。端室内のドレン量が多くなると、端室内に位置している加熱器とドレンとが接触し、加熱器が冷却されるため、被加熱蒸気の加熱効率が低下する。このため、端室内にドレンが溜まることは好ましくない。
【0007】
そこで、内圧が端室の圧力以下のドレンタンクを別途設けて、端室内に溜まったドレンをドレンタンク内に排出する方法が考えられる。しかしながら、この方法では、別途、ドレンタンクを設ける必要があり、設備コストがかさんでしまう。
【0008】
本発明は、上記状況を鑑み、設備コストの増加を抑えつつも、湿分分離加熱器の端室内に溜まるドレンの量を少なくすることができる湿分分離加熱器、及びこれを備えている湿分分離加熱設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としての湿分分離加熱器は、
水平な軸方向に延び、該軸方向の両端が封止されて、内部に被加熱蒸気が流入する筒状の容器と、前記容器内を前記軸方向で分割して、端室と前記被加熱蒸気が流入する蒸気室とに仕切る端仕切板と、前記端仕切板を貫通し、一部が前記端室内に位置し、他の一部が前記蒸気室内に位置して、該蒸気室内に流入した前記被加熱蒸気を加熱用蒸気で加熱する加熱器と、を備え、前記加熱器には、前記被加熱蒸気と熱交換した前記加熱用蒸気及び/又はそのドレンを前記端室を経て前記容器外に排出する蒸気ドレン管が設けられ、前記容器には、前記端室の圧力よりも高い圧力の高圧流体を供給する高圧流体供給源と接続され、前記端室の下方から該端室内に貫通し、前記高圧流体を該端室内に噴出するノズルが設けられていることを特徴とする。
【0010】
当該湿分分離加熱器では、端室の底にドレンが溜まっていても、端室の下方から端室内に噴出する高圧流体により、このドレンが吹き飛ばされ、その一部が加熱器の蒸気ドレン管に接する。加熱器の蒸気ドレン管内には、蒸気室に流入する被加熱蒸気を加熱するための蒸気又はそのドレンが流れるため、この蒸気ドレン管は、端室の底に溜まったドレンよりもはるかに温度が高い。このため、蒸気ドレン管に接したドレンは、気化して蒸気となる。この蒸気の一部は、例えば、容器と端仕切板との隙間から蒸気室内に流入する。
【0011】
したがって、当該湿分分離加熱器では、端室の底にドレンが溜まっていても、これを気化させて端室外に流出させることができる。また、湿分分離加熱器を備えている蒸気プラントでは、湿分分離加熱器の端室内の圧力よりも高い蒸気等の高圧流体を保有する機器等が多数存在する。このため、当該湿分分離加熱器では、蒸気プラント内の機器等を高圧流体供給源として容易に利用でき、端室内のドレンを回収するために、内圧が端室の圧力以下のドレンタンクを別途設けるよりも、設備コストの増加を抑えることができる。
【0012】
ここで、前記湿分分離加熱器において、前記ノズルから前記端室内に噴出された前記高圧流体が前記蒸気ドレン管に向かうよう、該高圧流体をガイドするガイド部材を備えていてもよい。
【0013】
加熱器において、伝熱管を通った加熱用蒸気及び/又はそのドレンは、蒸気回収室に一時的に滞留した後、蒸気ドレン管から外部に排出される。このため、加熱器の蒸気ドレン管内では、加熱用蒸気のドレン等が蒸気回収室内でのドレン等の流速よりも高い流速で流れている。したがって、加熱器において、蒸気回収室を内部に形成しているボンネット等の外壁における内外の流体の熱交換率よりも、蒸気ドレン管における内外の流体の熱交換率の方が高い。
【0014】
そこで、当該湿分分離加熱器では、ガイド部材により、ノズルから端室内に噴出した高圧気体を積極的に加熱器の蒸気ドレン管に導くことで、端室の底に溜まったドレンと蒸気ドレン管との接触率(接触する確率)を高めている。この結果、当該湿分分離加熱器では、端室の底に溜まったドレンを効率的に気化させることができる。
【0015】
また、以上のいずれかの前記湿分分離加熱器において、前記蒸気ドレン管は、前記端室内で蛇行していてもよい。
【0016】
当該湿分分離加熱器では、蒸気ドレン管が端室内で蛇行し、端室内での管長が長いため、吹き飛ばされたドレンは、この蒸気ドレン管との接触率が高くなる。
【0017】
上記目的を達成するための発明に係る一態様としての湿分分離加熱設備は、
以上のいずれかの前記湿分分離加熱器と、前記湿分分離加熱器の前記蒸気室内の下部に溜まったドレンを受け入れる、前記高圧流体供給源としてのドレンタンクと、前記ドレンタンクの上部と前記ノズルとを接続し、該ドレンタンク内の蒸気を前記高圧流体として前記ノズルに供給する高圧流体ラインと、を備えていることを特徴とする。
【0018】
湿分分離加熱器を設置した場合に、この設置と合わせて、湿分分離加熱器からのドレンを受け入れるドレンタンクも設置される。当該湿分分離加熱設備では、このドレンタンクを高圧流体供給源として利用しているので、設備コストの増加を抑えることができる。
【0019】
ここで、前記湿分分離加熱設備において、前記高圧流体ラインには、前記ドレンタンク内から前記ノズルを介して前記端室内に供給される前記蒸気の流量を調節する流量調節弁が設けられていてもよい。
【0020】
当該湿分分離加熱設備では、ドレンタンク内からノズルを介して端室内に供給される蒸気の流量を調節することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、設備コストの増加を抑えつつも、湿分分離加熱器の端室内に溜まるドレンの量を少なくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る湿分分離加熱設備の一実施形態及びその変形例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
「湿分分離加熱設備の実施形態」
まず、本発明に係る湿分分離加熱設備の一実施形態について、
図1〜
図8を用いて説明する。
【0025】
本実施形態の湿分分離加熱設備は、
図8に示すように、蒸気プラントの一部を構成している。この蒸気プラントは、BWR(Boiling Water Reactor)型原子炉圧力容器1と、これを覆う原子炉格納容器2と、原子炉圧力容器1で発生した蒸気で駆動する高圧蒸気タービン3と、高圧蒸気タービン3から排気された蒸気から湿分を分離すると共にこの蒸気を加熱する湿分分離加熱設備4と、湿分分離加熱設備4からの蒸気で駆動する低圧蒸気タービン5と、高圧蒸気タービン3及び低圧蒸気タービン5の駆動で発電する発電機6と、低圧蒸気タービン5から排気された蒸気を水に戻す復水器7と、復水器7内の水を原子炉圧力容器1内に送る給水ポンプ8と、を備えている。
【0026】
湿分分離加熱設備4は、高圧蒸気タービン3から排気された蒸気から湿分を分離すると共にこの蒸気を加熱する湿分分離加熱器Mと、この湿分分離加熱器M内に溜まったドレンを受け入れるドレンタンクTと、を備えている。
【0027】
湿分分離加熱器Mは、
図1〜
図5に示すように、被加熱蒸気Sが内部に入り込む筒状の容器10と、容器10内に入り込んだ被加熱蒸気Sを加熱する加熱器55A,55Bと、を備えている。なお、
図3は
図2におけるIII−III線断面図であり、
図4は
図3におけるIV−IV線断面図であり、
図5は
図2におけるV−V線断面図である。
【0028】
容器10は、水平な軸方向Hに延びる円筒状の胴体15と、胴体15における軸方向Hの端を塞ぐ鏡16と、を有している。この容器10の内部は、端仕切板60により、端室62と蒸気室20とに軸方向Hに分割されている。なお、以下では、水平な方向であって軸方向Hと垂直な方向を横幅方向Wとする。
【0029】
容器10には、蒸気室20内に被加熱蒸気Sを受け入れる蒸気入口11と、蒸気室20内で湿分分離及び加熱された過熱蒸気HSを送出する複数の蒸気出口12と、蒸気ドレンDを蒸気室20内から排出する複数の蒸気ドレン排出口13と、が形成されている。蒸気入口11は、容器10の下部であって、軸方向Hの中央部に形成されている。また、複数の蒸気ドレン排出口13は、容器10の下部であって、蒸気入口11を基準として軸方向Hの両側に形成されている。複数の蒸気出口12は、容器10の上部に、軸方向Hに並んで形成されている。なお、複数の蒸気出口12のうち、1つの蒸気出口12は、蒸気入口11と同様、軸方向Hの中央部に形成されている。
【0030】
蒸気室20内には、蒸気入口11から流入した被加熱蒸気Sが入り込む蒸気受入室21と、蒸気受入室21と連通し且つ軸方向Hにおける蒸気受入室21の両側に隣接している供給マニホールド室22(
図4及び
図5参照)と、供給マニホールド室22と連通し且つ供給マニホールド室22の下側に隣接している湿分分離室23(
図4及び
図5参照)と、湿分分離室23と連通し加熱器55A,55Bが収納されている加熱室24と、湿分分離室23に連通し且つこの湿分分離室23及び加熱室24の下側に隣接している蒸気ドレン回収室25(
図4及び
図5参照)と、加熱室24及び蒸気出口12と連通し且つ蒸気受入室21、供給マニホールド室22及び加熱室24の上側に隣接している蒸気回収マニホールド室26と、が形成されている。
【0031】
蒸気回収マニホールド室26は、
図1及び
図2に示すように、蒸気室20の軸方向Hのほぼ全体にわたって、蒸気室20内の上部に形成されている。一方、蒸気受入室21は、蒸気室20の軸方向Hの中央部に、蒸気回収マニホールド室26の下側に隣接して形成されている。この蒸気回収マニホールド室26と蒸気受入室21とは、
図3及び
図6に示すように、天井板30により仕切られている。
【0032】
供給マニホールド室22、湿分分離室23、加熱室24及び蒸気ドレン回収室25は、いずれも、
図1、
図2及び
図4に示すように、軸方向Hにおける蒸気受入室21の両側に隣接している。
図2及び
図5に示すように、軸方向Hで蒸気受入室21からズレた位置には、横幅方向Wの中央に加熱室24が形成されている。さらに、横幅方向Wにおける加熱室24の両側に供給マニホールド室22が形成され、横幅方向Wにおける加熱室24の両側であって供給マニホールド室22の下側に湿分分離室23が形成されている。蒸気受入室21、加熱室24及び供給マニホールド室22の上側には、蒸気回収マニホールド室26が形成されている。また、軸方向Hで蒸気受入室21からズレた位置であって、加熱室24及び湿分分離室23の下側には蒸気ドレン回収室25が形成されている。
【0033】
軸方向Hで蒸気受入室21と隣接している供給マニホールド室22、湿分分離室23、加熱室24及び蒸気ドレン回収室25のうち、湿分分離室23、加熱室24及び蒸気ドレン回収室25は、
図1〜
図3及び
図6に示すように、蒸気受入室21との間が横仕切板33により仕切られている。なお、供給マニホールド室22は、蒸気受入室21と連通させるため、蒸気受入室21との間は横仕切板33で仕切られておらず、開口している。
【0034】
供給マニホールド室22は、
図5及び
図6に示すように、この供給マニホールド室22の上側に隣接している蒸気回収マニホールド室26との間が傾斜板35により仕切られている。この傾斜板35は、横幅方向Wにおいて、その中央部から遠ざかるに連れて次第に上側に向って傾斜し、中央部から最も遠い端部が容器10の内面に接合されている。
【0035】
湿分分離室23は、
図4及び
図5に示すように、この湿分分離室23の上側に隣接している供給マニホールド室22との間が分配板36により仕切られている。この分配板36には、上下方向Vに貫通し、横幅方向Wに長いスリット37が複数形成されている。蒸気ドレン回収室25は、この蒸気ドレン回収室25の上側に隣接している加熱室24及び湿分分離室23との間が底板38により仕切られている。加熱室24は、横幅方向Wにおける加熱室24の両側に隣接している供給マニホールド室22及び湿分分離室23と縦仕切板43により仕切られている。この縦仕切板43の上端43uには、
図6に示すように、蒸気回収マニホールド室26と蒸気受入室21との間を仕切る天井板30の軸方向Hの端縁が接合されている。さらに、この縦仕切板43の上端43uには、
図5及び
図6に示すように、供給マニホールド室22と蒸気回収マニホールド室26との間を仕切る傾斜板35の中央側端部が接合されている。また、この縦仕切板43の上下方向Vの中央部には、湿分分離室23と供給マニホールド室22との間を仕切る分配板36の中央側端部が接合されている。
【0036】
図5に示す蒸気回収マニホールド室26、供給マニホールド室22、湿分分離室23、加熱室24、蒸気ドレン回収室25で、軸方向Hにおける蒸気受入室21と反対側の端部は、
図1及び
図2に示すように、いずれも、端仕切板60で塞がれている。このため、供給マニホールド室22と蒸気回収マニホールド室26とを仕切る傾斜板35、湿分分離室23と供給マニホールド室22との間に配置されている分配板36、供給マニホールド室22及び湿分分離室23と加熱室24とを仕切る縦仕切板43、加熱室24及び湿分分離室23と蒸気ドレン回収室25との間に配されている底板38の軸方向Hの端は、いずれも、端仕切板60に接合されている。なお、端仕切板60の上端には、
図7に示すように、蒸気回収マニホールド室26と端室62とを連通させて、蒸気室20内の空気を抜くための空気抜き孔61が形成されている。
【0037】
蒸気受入室21内には、
図1〜
図3、
図6に示すように、軸方向Hに垂直な断面形状がU字型を成し、U字の湾曲箇所に相当する部分が下側を向いているバッフルプレート50が配置されている。
【0038】
湿分分離室23内には、
図4及び
図5に示すように、ミストセパレータ53が配置されている。このミストセパレータ53は、複数の波板(不図示)を軸方向Hに等間隔に配置したもので、波板の各頂部に被加熱蒸気Sの流れに対向するよう邪魔板(不図示)が設けられている。複数の波板の頂部及び底部は、いずれも、上下方向Vに延びている。湿分分離室23と蒸気ドレン回収室25との間を仕切る底板38には、ミストセパレータ53を構成する複数の波板の下部に相当する位置で上下方向Vに貫通した開口39が形成されている。
【0039】
加熱器55A,55Bは、
図1及び
図2に示すように、容器10内の下方に配置されている第一加熱器55Aと、容器10内の上方に配置されている第二加熱器55Bとがある。
【0040】
各加熱器55A,55Bは、いずれも、U字管で形成されている伝熱管56と、伝熱管56の端部が固定されている管板57と、管板57における伝熱管56が延びている側と反対側を覆うボンネット58と、管板57とボンネット58の内面とで形成される空間を上下に仕切る仕切板59と、を有している。U字管である伝熱管56は、湾曲側の端部56aが容器10の軸方向Hの中央部側に向けられ、伝熱管56の管端56bが容器10の軸方向Hの端部側に向けられている。管板57とボンネット58の内面とで形成される空間で、仕切板59より上側の空間が蒸気受入室59aを形成し、仕切板59より下側の空間が蒸気回収室59bを形成している。ボンネット58には、蒸気受入室59aに加熱用蒸気を供給する蒸気供給管58iが接続されていると共に、蒸気回収室59b内の加熱用蒸気及び/又はそのドレンを外部に排出する蒸気ドレン管58oが接続されている。
【0041】
第一加熱器55Aの伝熱管56には、蒸気供給管58i及び蒸気受入室59aを介して、第一加熱用蒸気S1が外部から供給される。また、第二加熱器55Bの伝熱管56には、蒸気供給管58i及び蒸気受入室59aを介して、第二加熱用蒸気S2が供給される。なお、第一加熱用蒸気S1は、高圧蒸気タービン3(
図8参照)から湿分分離加熱器Mの蒸気受入室21に流入する被加熱蒸気Sの温度よりも高い温度の蒸気である。また、第二加熱用蒸気S2は、第一加熱用蒸気S1の温度よりも高い温度の蒸気である。
【0042】
第一加熱器55Aのボンネット58は、端室62内に配置され、その伝熱管56は、端仕切板60を貫通して加熱室24内に位置している。また、第二加熱器55Bのボンネット58は、容器10外に配置され、その伝熱管56は、容器10の鏡16及び端仕切板60を貫通して、端室62内及び加熱室24内に位置している。
図6に示すように、各加熱器55A,55Bにおける伝熱管56の湾曲側の端部56aは、横仕切板33を軸方向Hに貫通し、この横仕切板33及び天井板30の軸方向Hの端部よりも、容器10の軸方向Hにおける中央部側に位置し、囲い板44で覆われている。
【0043】
容器10の鏡16には、
図1及び
図7に示すように、鏡16の下方から端室62内に貫通し、吹付用蒸気S3を端室62内に噴出するノズル63が設けられている。
【0044】
ドレンタンクTの上部には、
図7に示すように、湿分分離加熱器Mの蒸気ドレン回収室25内に溜まった蒸気ドレンDを受け入れるドレン受入口71と、内部の蒸気を排出する蒸気排出口72とが形成されている。また、このドレンタンクTの下部には、内部の蒸気ドレンDを排出するドレン排出口73が形成されている。
【0045】
ドレンタンクTの蒸気排出口72と湿分分離加熱器Mのノズル63とは、ドレンタンクT内の上部に滞留する蒸気を吹付用蒸気S3として端室62内に供給するため、吹付用蒸気ライン(高圧流体ライン)75で接続されている。この吹付用蒸気ライン75には、ここを通る吹付用蒸気S3の流量を調節する流量調節弁76が設けられている。
【0046】
次に、以上で説明した湿分分離加熱設備4での蒸気及びドレンの流れについて説明する。
【0047】
図1〜
図3及び
図6に示すように、高圧蒸気タービン3(
図8参照)で使用された被加熱蒸気Sが蒸気入口11から蒸気受入室21内へ流入すると、この被加熱蒸気Sは、バッフルプレート50で蒸気受入室21内への流入時の衝撃を緩和されながら、上方で且つ横幅方向Wの両側に案内されて、供給マニホールド室22内へ流入する。
【0048】
供給マニホールド室22内へ流入した被加熱蒸気Sは、
図4及び
図5に示すように、分配板36のスリット37を介して湿分分離室23内に流入する。湿分分離室23内では、被加熱蒸気Sがミストセパレータ53を構成する複数の波板及び邪魔板等に接触することで、この被加熱蒸気S中の湿分が複数の波板及び邪魔板に捕捉され、下方に流れ落ち、底板38の開口39から蒸気ドレン回収室25内に流れ込む。蒸気ドレン回収室25に流れ込んだ湿分、つまり蒸気ドレンDは、一部の被加熱蒸気Sと共に、蒸気ドレン排出口13から流出し、ドレンタンクT内に流れ込む。
【0049】
一方、ミストセパレータ53を通過した被加熱蒸気Sは、加熱室24内に流入して、この加熱室24内を上方に流れる過程で、第一加熱器55A及び第二加熱器55Bにより加熱され、過熱蒸気HSになる。この過熱蒸気HSは、加熱室24から蒸気回収マニホールド室26に流入した後、蒸気出口12から外部に流出する。この湿分分離加熱器Mから流出した過熱蒸気HSは、低圧蒸気タービン5(
図8参照)に送られる。
【0050】
ドレンタンクT内に流入した蒸気ドレンD及び一部の被加熱蒸気Sは、
図7に示すように、気相と液相とに分かれてドレンタンクT内に一時的に溜まる。このドレンタンクT内の圧力P4は、湿分分離加熱器Mのドレン回収室や加熱室内の圧力P1,P2とほぼ同じである。一方、湿分分離加熱器Mの端室62内の圧力P3は、蒸気ドレン回収室25や加熱室24内の圧力P1,P2よりはるかに低いため、ドレンタンクT内の圧力P4に対してもはるかに低い。このため、ドレンタンクT内の上部に滞留している気相の流体(高圧流体)、つまり吹付用蒸気S3は、このドレンタンクTの上部に形成されている蒸気排出口72、吹付用蒸気ライン(高圧流体ライン)75、湿分分離加熱器Mのノズル63を介して、湿分分離加熱器Mの端室62の下方から端室62内に噴出する。
【0051】
ところで、端室62は、ノズル63が設けられていない場合、蒸気が流れる経路の一部を成さないため、この端室62には、基本的に、蒸気は流入しない。しかしながら、前述したように、加熱室24の圧力P1,P2は端室62の圧力P3より高いため、端仕切板60と各加熱器55A,55Bの伝熱管56との隙間から加熱室24内の被加熱蒸気Sが流入する。特に、端仕切板60と第一加熱器55Aの伝熱管56との隙間から加熱室24内の被加熱蒸気Sが流入する。これは、被加熱蒸気Sにとって、第一加熱器55Aは第二加熱器55Bよりも上流側に位置しているため、第一加熱器55Aの伝熱管56の周りの被加熱蒸気Sの圧力P1が、第二加熱器55Bの伝熱管56周りの被加熱蒸気の圧力P2よりも僅かに高いからである。
【0052】
加熱室24から端室62内に流入した蒸気は、凝縮しドレンとして端室62内に溜まる。端室62内のドレン量が多くなり、端室62内のドレンレベルが高くなると、端室62内に位置している第一加熱器55Aのボンネット58の上部や蒸気供給管58iとドレンとが接触することになる。この結果、第一加熱器55Aの蒸気供給管58iや蒸気受入室59a内を流れる第一加熱用蒸気S1が冷却され、被加熱蒸気Sの加熱効率が低下する。このため、端室62内にドレンが溜まることは好ましくない。
【0053】
本実施形態では、吹付用蒸気ライン75中の流量調節弁76が開いていれば、ドレンタンクT内の蒸気が吹付用蒸気S3として端室62内に噴出するので、端室62内の圧力が高まり、端仕切板60と各加熱器55A,55Bの伝熱管56との隙間から端室62内に流入する加熱室24内の被加熱蒸気Sの量が少なくなる。
【0054】
また、仮に、端室62の底にドレンが溜まっていても、端室62の下方から端室62内に噴出する吹付用蒸気S3により、このドレンが吹き飛ばされ、その一部が第一加熱器55Aのボンネット58の下面や蒸気ドレン管58oに接する。しかも、蒸気ドレン管58oは、
図1及び
図7に示すように、端室62内で蛇行し、端室62内での管長が長いため、吹き飛ばされたドレンは、この蒸気ドレン管58oとの接触率が高くなる。この第一加熱器55Aのボンネット58内や蒸気ドレン管58o内には、第一加熱器55Aの伝熱管56に供給された高温の第一加熱用蒸気S1、又はそのドレンが流れるため、第一加熱器55Aのボンネット58の下面や蒸気ドレン管58oは、端室62の底に溜まったドレンよりもはるかに温度が高い。このため、第一加熱器55Aのボンネット58の下面や蒸気ドレン管58oに接したドレンは、気化して蒸気となる。この蒸気の一部は、例えば、端仕切板60と第二加熱器55Bの伝熱管56との隙間から加熱室24内に流入し、他の一部は、端仕切板60の空気抜き孔61から加熱室24よりもさらに圧力の低い蒸気回収マニホールド室26内に流入する。
【0055】
したがって、本実施形態では、端室62の底にドレンが溜まっていても、これを気化させて端室62外に流出させることができる。
【0056】
よって、本実施形態では、湿分分離加熱器Mの端室62内に溜まるドレンの量を少なくすることができる。しかも、湿分分離加熱器Mを設置した場合に、この設置と合わせて設置されるドレンタンクTを、端室62内に溜まったドレンを吹き飛ばす高圧流体の供給源としているため、設備コストの増加を抑えることができる。
【0057】
なお、吹付用蒸気ライン75中の流量調節弁76は、常時開けておいてもよいが、定期的に一時的に開けるようにしてもよい。
【0058】
「湿分分離加熱器の変形例」
次に、以上で説明した湿分分離加熱器の変形例について、
図9を用いて説明する。
【0059】
本変形例の湿分分離加熱器Mは、ノズル63から端室62内に噴出した吹付用蒸気S3を積極的に第一加熱器55Aの蒸気ドレン管58oに導くガイド部材65を設けたものである。
【0060】
ガイド部材65がない場合、前述したように、端室62の底に溜まったドレンは、ノズル63から端室62内に噴出した吹付用蒸気S3により、第一加熱器55Aのボンネット58の下面や蒸気ドレン管58oに接する。第一加熱器55Aにおけるボンネット58内の蒸気回収室59bでは、第一加熱器55Aの伝熱管56に供給された第一加熱用蒸気S1及び/又はそのドレンが一時的に滞留している。一方、この第一加熱器55Aの蒸気ドレン管58o内では、第一加熱用蒸気S1及び/又はそのドレンが蒸気回収室59b内でのドレンの流速よりも高い流速で流れている。したがって、ボンネット58の内外の流体の熱交換率よりも、蒸気ドレン管58oの内外の流体の熱交換率の方が高い。
【0061】
そこで、本変形例では、ガイド部材65により、ノズル63から端室62内に噴出した吹付用蒸気S3を積極的に第一加熱器55Aの蒸気ドレン管58oに導くことで、端室62の底に溜まったドレンと蒸気ドレン管58oとの接触率を高めている。この結果、本変形例では、端室62の底に溜まったドレンを効率的に気化させることができる。
【0062】
なお、以上の実施形態及び変形例では、湿分分離加熱器MのドレンタンクTを高圧流体供給源とし、このドレンタンクT内の吹付用蒸気S3を高圧流体として、湿分分離加熱器Mの端室62に噴出させるが、蒸気プラントにおける他の高圧流体供給源からの蒸気を高圧流体として、湿分分離加熱器Mの端室62に噴出させるようにしてもよい。このように構成しても、蒸気プラント中には、湿分分離加熱器Mの端室62内の圧力よりも高い蒸気を保有する機器等が多数存在するため、内圧が端室62の圧力以下のドレンタンクを別途設けるよりも、設備コストの増加を抑えることができる。