(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記棒状部材における、少なくとも2つの前記袋状弾性部材が設けられている前記先端近傍が、該棒状部材の軸を中心として回転可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の透明化液徐放手段。
【発明を実施するための形態】
【0027】
実施形態の説明に先立ち、本発明の作用効果について説明する。
透明化液の徐放対象となる生体の管腔内壁面の表面は体液で覆われている。また、管腔内壁面の内部も、透明化を所望する生体組織の上層に体液が多く存在する。透明化液に体液が多く混ざると透明化液が薄められて透明化の機能が弱まり、透明化を所望する生体組織への透明化液の浸透を阻害する。管腔内壁面に対する透明化液の徐放により透明化を所望する生体組織への透明化効果が得られるまでの時間を短縮するには、透明化を所望する生体組織に対し透明化液が浸透やすくなるように、管腔内壁面の表面及び内部に存在する体液を極力減らす必要がある。
また、管腔内壁面に透明化液を徐放する時間を短縮化するための作業についても、生体への負担を極力減らすことが重要である。
【0028】
しかるに、本発明の透明化液徐放手段のように、内部に気体又は液体の供給路を少なくとも2つ有するとともに、先端近傍の側面における円周方向に沿う位置に夫々の供給路の開口部を有する棒状部材と、棒状部材の先端近傍の側面における円周方向に沿う夫々の位置に、夫々の供給路の開口部を夫々覆うように設けられ、気体又は液体の流入出量に応じて、膨張、収縮の制御が可能な少なくとも2つの袋状弾性部材と、第1の袋状弾性部材の表面に固定され、透明化液を保持し、且つ、押圧されることにより透明化液を外部へ徐放する透明化液保持部と、第2の袋状弾性部材の表面に固定され、透明化液の徐放対象から出た体液を吸収又は透明化液の徐放対象を浸透圧により脱水する体液吸着部と、を有すれば、体液吸着部により管腔内壁面の表面に付着した体液を除去し、管腔内壁面の内部の表層に存在する体液の量を極力減らした状態で、透明化液保持部により、管腔内壁面に透明化液を徐放することができる。その結果、透明化液に混ざり込む体液の量を極力減らすことができ、管腔内壁面の内部において透明化を所望する生体組織に透明化液が浸透するまでの時間を短縮することができる。
しかも、体液吸着部と透明化液保持部とを棒状部材の先端近傍の側面における円周方向に沿う夫々の位置に設けたので、体液吸着部と透明化液保持部が設けられている棒状部材の先端近傍を、棒状部材の軸を中心として回転させれば、棒状部材を生体内から挿脱することなく、体液吸着部による体液の吸着と透明化液保持部による透明化液の徐放とを切替えて行なうことができ、生体への負担及び作業負担を極力減らすことができるようになる。
さらに、透明化液保持部、体液吸着部は、夫々の袋状弾性部材に固定されており、夫々の袋状部材部材が拡張することにより、対象部位の管腔内壁面に圧接させられるので、重力に反する方向に存在する対象部位に対しても、透明化液を安定的に投与することができ、また、体液を安定した状態で除去できる。
【0029】
従って、本発明の透明化液徐放手段によれば、生体への負担及び作業負担を軽減しながら、透明化液による透明化の効果が得られるまでの時間を極力短縮することができ、しかも、重力に反する位置に存在する投与対象部位に対しても透明化液を安定的に投与することが可能となる。
【0030】
また、本発明の透明化液徐放手段において、棒状部材における、少なくとも2つの袋状弾性部材が設けられている先端近傍を、棒状部材の軸を中心として回転可能に構成すれば、棒状部材を生体内から挿脱することなく、体液吸着部による体液の吸着と透明化液保持部による透明化液の徐放とを切替えて行なうことができ、生体への負担及び作業負担を極力減らす効果が実現できる。
【0031】
また、本発明の透明化液徐放手段において、透明化液保持部が、表面に無数の凹凸部を有すれば、徐放対象部位に圧接させた場合、凹凸部が徐放対象部位の表面を押し込み、徐放対象部位の表面を透明化液保持部の凹凸部に対応した凹凸形状に変形させるので、透明化液を浸透させる徐放対象部位の表面積が格段に増える。また、透明化保持部の凹凸部で徐放対象部位の表面を凹凸形状に変形させた分、透明化保持部を徐放対象部位の内部へ入り込ませることができ、透明化液から徐放対象部位の内部に存在する透明化を所望する生体組織までの距離が近づく。このため、より多くの透明化液を徐放対象部位へ投与することができ、しかも透明化液が浸透する徐放対象部位の内部に存在する透明化を所望する生体組織までの距離を短縮することができるので、徐放対象部位の内部に存在する透明化を所望する生体組織を透明化させるために要する時間を格段と短縮することが可能となる。
【0032】
また、本発明の透明化液徐放手段において、透明化液保持部に保持される透明化液の浸透速度を高める浸透速度調整手段を有すれば、対象部位からの体液の脱水を促進することができる。このため、透明化液保持部の表面を、透明化液を外部に排出する一方で体液を通さないように構成すれば、透明化液保持部の表面から出た透明化液により、対象部位から体液を脱水させ、その後、体液吸着部を介して対象部位から出た体液を吸着し、体液が少ない状態となった対象部位に対し、再度、透明化液保持部を対象部位に圧接させることにより、透明化液保持部から出た透明化液を対象部位の内部へ浸透させ易くなる。その結果、徐放対象部位の内部に存在する透明化を所望する生体組織を透明化させるために要する時間をより一層短縮することができる。
【0033】
また、本発明の透明化液徐放手段において、浸透速度調整手段を、第1の前記袋状弾性部材に供給する気体又は液体を加温する温度調節器で構成すれば、徐放対象部位の内部に存在する透明化を所望する生体組織を透明化させるために要する時間をより一層短縮することができ、また透明化させるために要する時間を調整し易くなる。
【0034】
また、本発明の透明化液徐放手段において、浸透速度調整手段を、透明化液保持部に保持される透明化液と混合する浸透速度促進剤で構成すれば、徐放対象部位の内部に存在する透明化を所望する生体組織を透明化させるために要する時間をより一層短縮することができる。
【0035】
また、本発明の透明化液徐放手段において、棒状部材が、内部に第3の気体又は液体の供給路を有するとともに、先端近傍の側面における円周方向に沿う位置に第3の供給路の開口部を有し、棒状部材の先端近傍の側面における円周方向に沿う位置であり、且つ、第1の袋状弾性部材及び第2の袋状弾性部材とは異なる位置に、第3の供給路の開口部を覆うように設けられ、気体又は液体の流入出量に応じて、膨張、収縮の制御が可能な第3の袋状弾性部材の表面に固定され、透明化された生体組織を不透明化状態に戻すための液体を保持し、且つ、押圧されることにより、透明化された生体組織を不透明化状態に戻すための液体を外部へ徐放する不透明化液保持部を有すれば、体液吸着部により管腔内壁面の患部の表面及び内部の表層に存在する体液の量を極力減らした状態で、透明化液保持部により透明化液を徐放することで、管腔内壁面の患部の内部に存在する透明化を所望する生体組織に透明化液が浸透するまでの時間を短縮することができることに加えて、透明化した生体組織を不透明化する作業においても、棒状部材を生体内から挿脱することなく、重力に反する方向に存在する対象部位に対しても、安定的に不透明化液を投与することができ、生体への負担及び作業負担をより一層減らすことができる。
【0036】
また、本発明の透明化液徐放手段において、棒状部材が、さらに、透明化液保持部と接続する、透明化液の供給路を有すれば、対象部位への透明化液の徐放量を適量に制御することが可能となる。このため、対象部位に存在する生体組織の透明化に必要な透明化液の量が、透明化液徐放手段の透明化液保持部で保持しうる透明化液の量を上回り、更なる、透明化液の徐放が必要となる場合であっても、透明化液の供給路を介して、必要に応じて適宜透明化液を透明化液保持部に補充できるので、棒状部材を生体内から抜き出すことなく、透明化を完了させることができる。
【0037】
また、本発明の内視鏡、内視鏡手術用器具のように、上記本発明のいずれかの透明化液徐放手段を備えれば、上述した本発明の透明化液徐放手段の効果を備えた内視鏡、内視鏡手術用器具が実現できる。
【0038】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
第1実施形態
図1は本発明の第1実施形態にかかる透明化液徐放手段の概略構成を模式的に示す説明図で、(a)は袋状弾性部材を拡張させる前の状態の外観を示す側面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)の紙面と平行な方向の断面図、(d)は袋状弾性部材を拡張させた状態を示す、(a)の紙面と平行な方向の断面図である。
図2は第1実施形態の透明化液徐放手段を用いた透明化液の徐放手順の一例を(a)の紙面と平行な方向の断面で示す説明図で、(a)はいずれの袋状弾性部材も拡張させていない状態の透明化液徐放手段を管腔内に挿入し、体液吸着部を徐放対象部位に位置合わせした状態を示す図、(b)は(a)の状態から第2の袋状弾性部材を拡張させて、体液吸着部を徐放対象部位に圧接させた状態を示す図、(c)は(b)の状態から第2の袋状弾性部材を萎ませるとともに、棒状部材の軸を中心に回転させて、透明化液保持部を徐放対象部位に位置合わせした状態を示す図、(d)は(c)の状態から第1の袋状弾性部材を拡張させて、透明化液保持部を徐放対象部位に圧接させた状態を示す図である。
【0039】
本実施形態の透明化液徐放手段は、
図1(a)〜
図1(d)に示すように、棒状部材1と、拡張可能な袋状弾性部材5,6と、透明化液保持部7と、体液吸着部8を有している。
棒状部材1は、可撓性部材で構成されており、内部に気体又は液体の供給路2,3を有している。
また、棒状部材1は、
図1(b)に示すように、先端近傍の側面における円周方向に沿う位置に供給路2,3の開口部2a,3aを有している。
供給路2,3は、図示しない、ポンプ等を用いた気体又は液体の供給・排出手段と接続されている。
袋状弾性部材5,6は、例えば、バルーンで構成されており、棒状部材1の先端近傍の側面における円周方向に沿う夫々の位置に、
図1(b)、
図1(c)に示すように、夫々の供給路2,3の開口部2a,3aを夫々覆うように設けられている。
そして、バルーン5,6は、図示しない気体又は液体の供給・排出手段と接続する夫々の供給路2,3を介して、内部に気体又は液体が供給されると拡張(膨張)し(
図1(d)参照)、内部から気体又は液体が排出されると萎む(収縮する)(
図1(c)参照)ようになっており、気体又は液体の流入出量に応じて、膨張、収縮の制御が可能に構成されている。
【0040】
透明化液保持部7は、バルーン5の表面に固定されていて、例えば、スポンジ状又は表面に微小な孔の開いた袋状の部材に内部に透明化液を保持して構成されており、押圧されることにより透明化液を外部へ徐放するようになっている。
体液吸着部8は、バルーン6の表面に固定されていて、例えば、透明化液の徐放対象から出た体液を吸収するガーゼや脱脂綿等の繊維部材又は透明化液の徐放対象を浸透圧により脱水する脱水シート等で構成されている。
【0041】
また、棒状部材1は、ギア、回転軸及びモータ等で構成された図示しない回転手段を介して、バルーン5,6が設けられている先端近傍を、棒状部材1の軸を中心として回転可能に構成されている。
なお、
図2中、20は管腔内壁面、20aは管腔内壁面20における患部(透明化液の徐放対象部位)である。
【0042】
このように構成された第1実施形態の透明化液徐放手段を用いた、徐放対象部位(ここでは、管腔内壁面20の患部20a)への透明化液の徐放手順を、
図2を用いて説明する。
上述したように、管腔内壁面20の表面は体液で覆われている。また、管腔内壁面20の内部も、透明化を所望する生体組織の上層に体液が多く存在する。透明化液に体液が多く混ざると透明化液が薄められて透明化の機能が弱まり、透明化を所望する生体組織への透明化液の浸透を阻害する。管腔内壁面20に対する透明化液の徐放により透明化を所望する生体組織への透明化効果が得られるまでの時間を短縮するには、透明化を所望する生体組織に対し透明化液が浸透しやすくなるように、管腔内壁面20の表面及び内部に存在する体液を極力減らす必要がある。
【0043】
そこで、透明化液の徐放に先立ち、管腔内壁面20の透明化を所望する患部20a表面および内部の体液を減らすようにする。
バルーン5,6を拡張させていない状態の透明化液徐放手段を管腔内に挿入し、バルーン5,6を備えた先端部が管腔内壁面20の患部20aの位置に位置するように移動させ、次いで、図示しない回転手段を介して棒状部材1を所定量回転させて、
図2(a)に示すように、体液吸着部8を徐放対象部位である管腔内壁面20の患部20aに対向させる。
次に、図示しない気体又は液体の供給・排出手段に接続された供給路3を介して、開口部3aから気体(又は液体)をバルーン6の内部へ注入し、バルーン6を拡張させる。すると、
図2(b)に示すように、バルーン6が変形しながら体液吸着部8を管腔内壁面20の患部20aに圧接させる。これにより、管腔内壁面20の患部20aの表面及び内部からの体液が体液吸着部8に吸着される。
【0044】
管腔内壁面20の患部20aの表面及び内部から十分に体液を吸着後、図示しない気体又は液体の供給・排出手段に接続された供給路3を介して、バルーン6内部の気体(又は液体)を開口部3aから排出し、バルーン6を萎ませる。これにより、体液吸着部8が管腔内壁面20の患部20aから離れる。
次に、図示しない回転手段を介して棒状部材1の先端部近傍を180度回転させて、
図2(c)に示すように、透明化液保持部7を管腔内壁面20の患部20aに対向させる。
次に、図示しない気体又は液体の供給・排出手段に接続された供給路2を介して、開口部2aから気体(又は液体)をバルーン5の内部へ注入し、バルーン5を拡張させる。すると、
図2(d)に示すように、バルーン5が変形しながら透明化液保持部7を管腔内壁面20の患部20aに圧接させる。これにより、透明化液保持部7の透明化液が管腔内壁面20の患部20aに徐放される。
【0045】
管腔内壁面20の患部20aへの透明化液の徐放により、次第に管腔内壁面20の患部20aの内部に透明化液が浸透する一方、管腔内壁面20の患部20aの内部に存在する体液が滲み出し、透明化液保持部7へ入り込む。上述したように、透明化液保持部7に相当量の体液が入り込んで透明化液と混ざると、透明化液としての機能が低下する。
そこで、透明化液を管腔内壁面20の患部20aに徐放している途中の過程において、図示しない気体又は液体の供給・排出手段に接続された供給路2を介して、バルーン6内部の気体(又は液体)を開口部2aから排出し、バルーン6を萎ませ、透明化液保持部7を管腔内壁面20の患部20aから離し、図示しない回転手段を介して棒状部材1を180度回転させて、
図2(a)に示すように、体液吸着部8を管腔内壁面20の患部20aに対向させる。そして、体液吸着部8を介した管腔内壁面20の患部20aから滲み出した体液の吸着と、透明化液保持部7を介した管腔内壁面20の患部20aへの透明化液の徐放を繰り返す。管腔内壁面20の患部20aの内部に存在する生体組織が所望の透明状態となったときに、透明化液の徐放が完了する。
【0046】
透明化液の徐放完了後は、図示しない気体又は液体の供給・排出手段に接続された供給路2を介して、バルーン5内部の気体(又は液体)を、開口部2aから排出し、バルーン5を萎ませ、生体組織が透明化した管腔内壁面20の患部20aからバルーン5を離す。次いで、透明化液徐放手段を管腔内壁面20の患部20aから離れた位置に移動させる。これにより、管腔内壁面20の患部20aに存在する透明化した生体組織の診断・治療が可能となる。
【0047】
管腔内壁面20の患部20aに存在する透明化した生体組織の診断・治療が終了し、透明化した生体組織を元の不透明な状態に戻す場合は、一旦、棒状部材1を生体内から抜き出す。そして、例えば、スポンジ状又は表面に微小な孔の開いた袋状の部材に内部に生理食塩水を保持した不透明化液保持部が、バルーン5,6と同様に構成されたバルーンに固定された棒状部材1を管腔内に挿入し、上記
図2(c)、
図2(d)を用いて説明したのと略同様の手順で、バルーンを拡張させて、生理食塩水を保持した不透明化液保持部を透明化した生体組織が存在する管腔内壁面20の患部20aに圧接させて、生理食塩水を徐放する。生理食塩水が生体組織の透明化液と交換されることにより、透明化した生体組織が不透明化状態に戻る。
【0048】
第1実施形態の透明化液徐放手段によれば、内部に2つの気体又は液体の供給路2,3を有するとともに、先端近傍の側面における円周方向に沿う位置に夫々の供給路2,3の開口部2a,3aを有する棒状部材1と、棒状部材1の先端近傍の側面における円周方向に沿う夫々の位置に、夫々の供給路2,3の開口部2a,3aを夫々覆うように設けられ、気体又は液体の流入出量に応じて、膨張、収縮の制御が可能な少なくとも2つの袋状弾性部材5,6と、第1の袋状弾性部材5の表面に固定され、透明化液を保持し、且つ、押圧されることにより透明化液を外部へ徐放する透明化液保持部7と、第2の袋状弾性部材6の表面に固定され、透明化液の徐放対象から出た体液を吸収又は透明化液の徐放対象を浸透圧により脱水する体液吸着部8と、を有したので、体液吸着部8により管腔内壁面20の表面に付着した体液を除去し、管腔内壁面20の内部の表層に存在する体液の量を極力減らした状態で、透明化液保持部7により、管腔内壁面20に透明化液を徐放することができる。その結果、透明化液に混ざり込む体液の量を極力減らすことができ、管腔内壁面20の内部において透明化を所望する生体組織に透明化液が浸透するまでの時間を短縮することができる。
しかも、体液吸着部8と透明化液保持部7とを棒状部材1の先端近傍の側面における円周方向に沿う夫々の位置に設けたので、体液吸着部8と透明化液保持部7が設けられている棒状部材1の先端近傍を、棒状部材1の軸を中心として回転させることで、棒状部材1を生体内から挿脱することなく、体液吸着部8による体液の吸着と透明化液保持部7による透明化液の徐放とを切替えて行なうことができ、生体への負担及び作業負担を極力減らすことができるようになる。
さらに、透明化液保持部7、体液吸着部8は、夫々の袋状弾性部材5,6に固定されており、夫々の袋状部材部材5,6が拡張することにより、対象部位の管腔内壁面20に圧接させられるので、重力に反する方向に存在する対象部位に対しても、透明化液を安定的に投与することができ、また、体液を安定した状態で除去できる。
【0049】
従って、第1実施形態の透明化液徐放手段によれば、生体への負担及び作業負担を軽減しながら、透明化液による透明化の効果が得られるまでの時間を極力短縮することができ、しかも、重力に反する位置に存在する投与対象部位に対しても透明化液を安定的に投与することが可能となる。
【0050】
また、第1実施形態の透明化液徐放手段によれば、棒状部材1における、2つの袋状弾性部材5,6が設けられている先端近傍を、棒状部材1の軸を中心として回転可能に構成したので、棒状部材1を生体内から挿脱することなく、体液吸着部8による体液の吸着と透明化液保持部7による透明化液の徐放とを切替えて行なうことができ、生体への負担及び作業負担を極力減らす効果が実現できる。
【0051】
第2実施形態
図3は本発明の第2実施形態にかかる透明化液徐放手段の説明図で、(a)は透明化液保持部の表面形状を示す部分拡大断面図、(b)は第2実施形態の透明化液徐放手段において(a)に示した透明化液保持部の範囲を示す図、(c)は透明化液保持部を徐放対象部位に圧接させた状態を示す図、(d)は第2実施形態の透明化液徐放手段を用いて透明化液保持部を徐放対象部位に圧接させた状態における、(c)に示した範囲での徐放対象部位の圧接面形状及び透明化液保持部の圧接方向での位置を示す図、(e)は(d)の一比較例であり、滑らかな表面を持つ透明化液保持部を徐放対象部位に圧接させた状態における、(c)に示した位置での徐放対象部位の圧接面形状及び透明化液保持部の圧接方向での位置を示す図である。
【0052】
本実施形態の透明化液徐放手段は、
図1に示した第1実施形態の構成に加えて、
図3(a)に示すように、透明化液保持部7の表面に無数の凹凸部7aを有している。なお、
図3(b)において丸印で囲んだ符号Pは
図3(a)に拡大して示した透明化液保持部7の範囲を示している。
その他の構成は、
図1に示した第1実施形態の透明化液徐放手段と略同じである。
【0053】
ここで、
図3(c)に示すように、管腔内壁面20の患部20aに透明化液保持部7を圧接させたときの範囲Pでの管腔内壁面20の患部20aの圧接面形状及び透明化液保持部7の圧接方向での位置に関し、表面に無数の凹凸部7aを有する、本実施形態の透明化保持部7を用いた場合と、比較例として表面が滑らかな透明化保持部7を用いた場合とについて、
図3(d)、
図3(e)を用いて説明する。
【0054】
比較例の表面が滑らかな透明化保持部7を管腔内壁面20の患部20aに圧接した場合、
図3(e)に示すように、患部20aと圧接する面積は互いの平坦な面が接する部分の面積に限定されたものとなり、透明化液を浸透させる患部の表面積も限定されたものとなる。また、透明化保持部7の表面が滑らかな面全体で患部20aを押圧しても、透明化保持部7の圧接方向の位置を管腔内壁面20の患部20aの内側へ入り込ませることが難しい。
これに対し、第2実施形態の透明化液徐放手段のように、表面に無数の凹凸部7aを有する透明化液保持部7を管腔内壁面20の患部20aに圧接した場合、
図3(d)に示すように、夫々の凹凸部7aに設けられた凸部が管腔内壁面20の患部20aの表面を押し込み、患部20aの表面を透明化液保持部7の凹凸部7aに対応した凹凸形状に変形させるので、比較例に比べて透明化液を浸透させる管腔内壁面20の患部20aの表面積が格段に増える。また、透明化保持部7の凹凸部7aで管腔内壁面20の患部20aの表面を凹凸形状に変形させた分、
図3(d)に符号αで示したように、透明化保持部7を管腔内壁面20の患部20aの内側へ入り込ませることができ、透明化液から管腔内壁面20の患部20aの内部に存在する透明化を所望する生体組織までの距離が近づく。
このように、第2実施形態の透明化液徐放手段によれば、より多くの透明化液を徐放対象部位へ投与することができ、しかも透明化液が浸透する徐放対象部位の内部に存在する透明化を所望する生体組織までの距離を短縮することができるので、徐放対象部位の内部に存在する透明化を所望する生体組織を透明化させるために要する時間を格段と短縮化することができる。
その他の作用効果は、第1実施形態の透明化液徐放手段と略同じである。
【0055】
第3実施形態
図4は本発明の第3実施形態にかかる透明化液徐放手段の概略構成を模式的に示す説明図である。
本実施形態の透明化液徐放手段は、
図1に示した第1実施形態の構成に加えて、透明化液保持部7に保持される透明化液の浸透速度を高める浸透速度調整手段の一つとして、
図4に示すように、温度調節器10を備えている。なお、
図4中、9は
図1において図示を省略したポンプ等を用いた、気体又は液体の供給・排出手段である。なお、
図4においても図示を省略したが、供給路3にも、気体又は液体の供給・排出手段9と同様の気体又は液体の供給・排出手段が接続されている。
温度調節器10は、袋状弾性部材5に供給するための気体(又は液体)を所定温度に加温する。加温された熱が袋状弾性部材5を介して透明化液保持部7に伝わり、透明化保持部7の浸透速度が高まる。
なお、透明化液保持部7に保持される透明化液の浸透速度を高めるように調整する、その他の浸透速度調整手段として、透明化液保持部7が保持する透明化液に浸透速度促進剤を混合させておいてもよい。
その他の構成は、
図1に示した第1実施形態の透明化液徐放手段と略同じである。
【0056】
第3実施形態にかかる透明化液徐放手段によれば、温度調節器10を介して、所定の温度に暖められた気体又は液体を、気体又は液体の供給・排出手段9に接続された供給路2を介して、開口部2aからバルーン5の内部に注入すると、バルーン5が拡張するともに、バルーン5の内部の温められた気体又は液体の熱が透明化液保持部7に保持される透明化液を温める。これにより、透明化液の浸透速度が高くなる。
バルーン5を拡張させて、浸透速度が高められた透明化液を保持する透明化液保持部7を
図2(d)に示したのと同様に、管腔内壁面20の患部20aに圧接することで、透明化液保持部7から浸透速度が高められた透明化液が徐放される。
浸透速度が高められた透明化液は、管腔内壁面20の患部20aの内部に存在する体液の脱水を促進する。このため、透明化液保持部7の表面を、透明化液を外部に排出する一方で体液を通さないように構成すれば、透明化液保持部7の表面から出た透明化液により、管腔内壁面20の患部20aの内部から体液を脱水させ、その後、体液吸着部8を介して管腔内壁面20の患部20aの内部から出た体液を吸着し、体液が少ない状態となった管腔内壁面20の患部20aに対し、再度、透明化液保持部7を管腔内壁面20の患部20aに圧接させることにより、透明化液保持部7から出た透明化液を管腔内壁面20の患部20aの内部に存在する透明化を所望する生体組織へ浸透させ易くなる。その結果、管腔内壁面20の患部20aの内部に存在する透明化を所望する生体組織を透明化させるために要する時間をより一層短縮することができる。
【0057】
また、浸透速度調整手段を、袋状弾性部材5に供給する気体又は液体を加温する温度調節器11で構成したので、管腔内壁面20の患部20aの内部に存在する透明化を所望する生体組織を透明化させるために要する時間の短縮度合いを調整し易くなる。
さらに、浸透速度調整手段として、透明化液保持部7が保持する透明化液に浸透速度促進剤を混合させておけば、管腔内壁面20の患部20aの内部に存在する透明化を所望する生体組織を透明化させるために要する時間をより一層短縮することができる。
その他の作用効果は、第1実施形態の透明化液徐放手段と略同じである。
【0058】
第4実施形態
図5は本発明の第4実施形態にかかる透明化液徐放手段の概略構成を模式的に示す説明図で、(a)は袋状弾性部材を拡張させる前の状態の外観を示す側面図、(b)は(a)のA’−A’線断面図、(c)は(a)の紙面と平行な方向の断面図である。
図6は本発明の第4実施形態の透明化液徐放手段を用いた透明化液の徐放手順の一例を(a)の紙面と平行な方向の断面で示す説明図で、(a)はいずれの袋状弾性部材も拡張させていない状態の透明化液徐放手段を管腔内に挿入し、体液吸着部を徐放対象部位に位置合わせした状態を示す図、(b)は(a)の状態から第2の袋状弾性部材を拡張させて、体液吸着部を徐放対象部位に圧接させた状態を示す図、(c)は(b)の状態から第2の袋状弾性部材を萎ませるとともに、棒状部材の軸を中心に回転させて、透明化液保持部を徐放対象部位に位置合わせした状態を示す図、(d)は(c)の状態から第1の袋状弾性部材を拡張させて、透明化液保持部を徐放対象部位に圧接させた状態を示す図、(e)は(d)の状態から第1の袋状弾性部材を萎ませるとともに、棒状部材の軸を中心に回転させて、不透明化液保持部を徐放対象部位に位置合わせした状態を示す図、(f)は(e)の状態から第3の袋状弾性部材を拡張させて、不透明化液保持部を徐放対象部位に圧接させた状態を示す図である。
【0059】
本実施形態の透明化液徐放手段は、
図5(a)〜
図5(c)に示すように、
図1に示した部材に加えて、拡張可能な袋状弾性部材12と、不透明化液保持部13を有している。
棒状部材1は、内部に供給路2,3に加えて、気体又は液体の供給路11を有している。
また、棒状部材1は、
図5(b)に示すように、先端近傍の側面における円周方向に沿う位置に供給路2,3,11の開口部2a,3a,11aを有している。
供給路11は、供給路2,3と同様、図示しない、ポンプ等を用いた、気体又は液体の供給・排出手段と接続されている。
袋状弾性部材12は、例えば、バルーンで構成されており、
図5(b)、
図5(c)に示すように、棒状部材1の先端近傍の側面における円周方向に沿う位置であり、且つ、バルーン5,6とは異なる位置に、供給路11の開口部11aを夫々覆うように設けられている。
そして、バルーン12は、図示しない気体又は液体の供給・排出手段と接続する夫々の供給路11を経て開口部11aより、内部に気体又は液体を供給されることにより、拡張(膨張)し、内部から気体又は液体を排出されることにより、萎む(収縮する)ようになっており、気体又は液体の流入出量に応じて、膨張、収縮の制御が可能に構成されている。
【0060】
不透明化液保持部13は、内部に透明化された生体組織を不透明化状態に戻すための生理食塩水等の不透明化液を保持し、押圧されることにより不透明化液を外部へ徐放する、例えば、スポンジ状又は表面に微小な孔の開いた袋状の部材で構成されており、バルーン12の表面に固定されている。
その他の構成は、
図1に示した透明化液徐放手段と略同じである。
【0061】
このように構成された第4実施形態の透明化液徐放手段では、徐放対象部位としての管腔内壁面20の患部20aへの透明化液の徐放と、その後の透明化された生体組織を不透明化状態に戻すための管腔内壁面20の患部20aへの不透明化液の徐放までを棒状部材1を生体内から抜き出すことなく行なうことができる。それの手順を、
図6を用いて説明する。
管腔内壁面20の患部20aへの透明化液の徐放までの手順は、
図2に示した第1実施形態の透明化液徐放手段と略同じである。
詳しくは、バルーン5,6,12を拡張させていない状態の透明化液徐放手段を管腔内に挿入し、バルーン5,6,12を備えた先端部が管腔内壁面20の患部20aの位置に位置するように移動させ、次いで、図示しない回転手段を介して棒状部材1を所定量回転させて、
図6(a)に示すように、体液吸着部8を徐放対象部位である管腔内壁面20の患部20aに対向させる。
次に、図示しない気体又は液体の供給・排出手段に接続された供給路3を介して、開口部3aから気体(又は液体)をバルーン6の内部へ注入し、バルーン6を拡張させる。すると、
図6(b)に示すように、バルーン6が変形しながら体液吸着部8を管腔内壁面20の患部20aに圧接させる。これにより、患部20aの表面及び内部からの体液が体液吸着部8に吸着される。
【0062】
管腔内壁面20の患部20aの表面及び内部から十分に体液を吸着後、図示しない気体又は液体の供給・排出手段に接続された供給路3を介して、バルーン6内部の気体(又は液体)を開口部3aから排出し、バルーン6を萎ませる。これにより、体液吸着部8が管腔内壁面20の患部20aから離れる。
次に、図示しない回転手段を介して棒状部材1の先端部近傍を180度回転させて、
図6(c)に示すように、透明化液保持部7を患部20aに対向させる。
次に、図示しない気体又は液体の供給・排出手段に接続された供給路2を介して、開口部2aから気体(又は液体)をバルーン5の内部へ注入し、バルーン5を拡張させる。すると、
図6(d)に示すように、バルーン5が変形しながら透明化液保持部7を患部20aに圧接させる。これにより、透明化液保持部7の透明化液が管腔内壁面20の患部20aに徐放される。
なお、徐放の途中で、図示しない気体又は液体の供給・排出手段に接続された供給路2を介して、バルーン6内部の気体(又は液体)を開口部2aから排出し、バルーン6を萎ませ、透明化液保持部7を管腔内壁面20の患部20aから離し、図示しない回転手段を介して棒状部材1を180度回転させて、
図6(a)に示すように、体液吸着部8を患部20aに対向させる。そして、体液吸着部8による管腔内壁面20の患部20aから滲み出した体液の吸着と、透明化液保持部7による患部20aへの透明化液の徐放を繰り返す。管腔内壁面20の患部20aの内部に存在する生体組織が所望の透明状態となったときに、透明化液の徐放が完了する。
【0063】
透明化液の徐放完了後は、図示しない気体又は液体の供給・排出手段に接続された供給路2を介して、バルーン5内部の気体(又は液体)を、開口部2aから排出し、バルーン5を萎ませ、生体組織が透明化した管腔内壁面20の患部20aからバルーン5を離す。次いで、透明化液徐放手段を管腔内壁面20の患部20aから離れた位置に一時的に退避させる。これにより、管腔内壁面20の患部20aに存在する透明化した生体組織の診断・治療が可能となる。
【0064】
管腔内壁面20の患部20aに存在する透明化した生体組織の診断・治療が終了し、透明化した生体組織を元の不透明な状態に戻す場合は、バルーン5,6,12を拡張させていない状態の透明化液徐放手段を管腔内に挿入し、バルーン5,6,12を備えた先端部が管腔内壁面20の患部20aの位置に位置するように移動させ、次いで、図示しない回転手段を介して棒状部材1を所定量回転させて、
図6(e)に示すように、不透明化液保持部13を徐放対象部位である透明化した生体組織が存在する管腔内壁面20の患部20aに対向させる。
次に、図示しない気体又は液体の供給・排出手段に接続された供給路11を介して、開口部11aから気体(又は液体)をバルーン12の内部へ注入し、バルーン12を拡張させる。すると、
図6(f)に示すように、バルーン12が変形しながら不透明化液保持部13を管腔内壁面20の透明化した患部20aに圧接させて、生理食塩水を徐放する。生理食塩水が生体組織の透明化液と交換されることにより、透明化した生体組織が不透明化状態に戻る。
【0065】
第4実施形態の透明化液徐放手段によれば、棒状部材1が、内部に第3の気体又は液体の供給路11を有するとともに、先端近傍の側面における円周方向に沿う位置に第3の供給路の開口部11aを有し、棒状部材1の先端近傍の側面における円周方向に沿う位置であり、且つ、バルーン5(第1の袋状弾性部材)及びバルーン6(第2の袋状弾性部材)とは異なる位置に、第3の供給路の開口部11aを覆うように設けられ、気体又は液体の流入出量に応じて、膨張、収縮の制御が可能なバルーン12(第3の袋状弾性部材)の表面に固定され、透明化された生体組織を不透明化状態に戻すための液体を保持し、且つ、押圧されることにより、透明化された生体組織を不透明化状態に戻すための液体を外部へ徐放する不透明化液保持部13を有するので、体液吸着部8により管腔内壁面20の患部20aの表面及び内部の表層に存在する体液の量を極力減らした状態で、透明化液保持部8により透明化液を徐放することで、管腔内壁面20aの患部の内部に存在する透明化を所望する生体組織に透明化液が浸透するまでの時間を短縮することができることに加えて、透明化した生体組織を不透明化する作業においても、棒状部材1を生体内から挿脱することなく、重力に反する方向に存在する対象部位に対しても、安定的に不透明化液を投与することができ、生体への負担及び作業負担をより一層減らすことができる。
その他の作用効果は、第1実施形態の透明化液徐放手段と略同じである。
【0066】
第5実施形態
図7は本発明の第5実施形態にかかる透明化液徐放手段の概略構成を模式的に示す説明図である。
本実施形態の透明化液徐放手段は、
図1に示した第1実施形態の構成に加えて、棒状部材1に透明化液保持部7と接続部14aを介して接続する、透明化液の供給路14を有している。
供給路14は、図示しない、ポンプ等を用いた、透明化液の供給・排出手段と接続されている。
その他の構成は、
図1に示した第1実施形態の透明化液徐放手段と略同じである。
【0067】
患部20aへの透明化に必要な透明化液の量が、透明化液徐放手段13で保持しうる透明化液の量を上回る場合、更なる透明化液の徐放が必要となる。
第1実施形態〜第4実施形態の透明化液徐放手段を用いて、更なる透明化液の徐放を行なう場合、一旦、棒状部材1を生体内から抜き出し、透明化液保持部13に透明化液を補充した後に、棒状部材1を生体内に挿入する必要がある。
しかるに、第5実施形態の透明化液徐放手段によれば、棒状部材1が、さらに、透明化液保持部7と接続する、透明化液の供給路14を有するので、対象部位への透明化液の徐放量を適量に制御することが可能となる。このため、対象部位に存在する生体組織の透明化に必要な透明化液の量が、透明化液徐放手段の透明化液保持部7で保持しうる透明化液の量を上回り、更なる、透明化液の徐放が必要となる場合であっても、透明化液の供給路14を介して、必要に応じて適宜透明化液を透明化液保持部7に補充できるので、棒状部材1を生体内から抜き出すことなく、透明化を完了させることができる。
【0068】
以上、本発明の透明化液徐放手段の実施形態を説明したが、本発明の透明化液徐放手段は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、それぞれの実施形態における特徴的な構成を任意に組み合わせてもよい。また、例えば、袋状弾性部材は、バルーンに限定されず、袋状に拡張する弾性を有するものであれば、どのようなものでもよい。また、上記実施形態で説明した透明化液徐放手段は、内視鏡先端部に一体化した構成や、内視鏡と共に用いる鉗子等の内視鏡手術用器具と一体化した構成であってもよい。