(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御装置は、前記区間毎に前記最大速度データの最大値に対する前記許容限界速度の割合を算出し、該割合の乗算によって前記最大速度データを補正して前記最大速度補正データを作成する、ことを特徴とする請求項1に記載のフィラメントワインディング装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであり、最適な繊維束の巻き付けが実現できるとともに、繊維束の巻き付けに要する時間を短縮できるフィラメントワインディング装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、この課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、第一の発明は、
繊維束の巻き付けに関連する動作を行う複数の駆動装置に対して動作を指示できる制御装置を備え、
ライナーの外周面に繊維束を巻き付けていくフィラメントワインディング装置において、
前記制御装置は、
繊維束の巻き付けに関連する動作の目標位置の変移を示す位置データから目標速度の変移を示す速度データへ変換するとともに、許容限界速度に最も近い前記速度データのみを抽出して最大速度データを作成し、予め定めた区間毎に前記最大速度データを補正して最大速度補正データを作成し、該最大速度補正データに基づいて
繊維束の巻き付けに関連する動作の動作速度を調節する、とした。
【0008】
第二の発明は、第一の発明に係るフィラメントワインディング装置において、
前記制御装置は、前記区間毎に前記最大速度データの最大値に対する前記許容限界速度の割合を算出し、該割合の乗算によって前記最大速度補正データを作成する、とした。
【0009】
第三の発明は、第二の発明に係るフィラメントワインディング装置において、
前記制御装置は、前記区間毎に前記最大速度補正データから前記割合を把握し、該割合の乗算によって全ての
繊維束の巻き付けに関連する動作の動作速度を調節する、とした。
【0010】
第四の発明は、第一から第三のいずれかの発明に係るフィラメントワインディング装置において、
前記制御装置は、前記区間を任意に設定できる、とした。
【0011】
第五の発明は、第一から第四のいずれかの発明に係るフィラメントワインディング装置において、
前記制御装置は、前記許容限界速度を任意に設定できる、とした。
【0012】
第六の発明は、第一から第五のいずれかの発明に係るフィラメントワインディング装置において、
前記駆動装置は、サーボモータである、とした。
【0013】
第七の発明は、第六の発明に係るフィラメントワインディング装置において、
前記位置データは、前記サーボモータの出力軸の回転位置である、とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
第一の発明によれば、制御装置は、制御対象の目標位置の変移を示す位置データから目標速度の変移を示す速度データへ変換するとともに、許容限界速度に最も近い速度データのみを抽出して最大速度データを作成する。そして、制御装置は、予め定めた区間毎に最大速度データを補正して最大速度補正データを作成する。その後、制御装置は、最大速度補正データに基づいて制御対象の動作速度を調節する。これにより、本フィラメントワインディング装置は、区間毎に制御対象の動作速度を最適化できるので、確実に繊維束の巻き付けに要する時間を短縮することが可能となる。
【0016】
第二の発明によれば、制御装置は、区間毎に最大速度データの最大値に対する許容限界速度の割合を算出する。そして、制御装置は、この割合の乗算によって最大速度補正データを作成する。これにより、本フィラメントワインディング装置は、制御対象の動作速度を調節するために指標となる最大速度補正データを作成できる。
【0017】
第三の発明によれば、制御装置は、区間毎に最大速度補正データから上述した割合を把握する。そして、制御装置は、この割合の乗算によって全ての制御対象の動作速度を調節する。これにより、本フィラメントワインディング装置は、全ての制御対象の動作速度を最適化できる。
【0018】
第四の発明によれば、制御装置は、上述した区間を任意に設定できる。これにより、本フィラメントワインディング装置は、ライナーの形状などに応じて最適な制御態様を実現できる。
【0019】
第五の発明によれば、制御装置は、上述した許容限界速度を任意に設定できる。これにより、本フィラメントワインディング装置は、ライナーの形状などに応じて最適な制御態様を実現できる。
【0020】
第六の発明によれば、制御対象は、サーボモータである。これにより、本フィラメントワインディング装置は、単純な制御システムを構成できる。
【0021】
第七の発明によれば、位置データは、サーボモータの出力軸の回転位置である。これにより、本フィラメントワインディング装置は、従来どおり位置データを入力すれば稼動できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
まず、本発明の一実施形態に係るフィラメントワインディング装置100(以降「FW装置100」とする)について説明する。
【0024】
図1は、FW装置100の全体構成を示す図である。図中に示す矢印Tは、ライナー1の移送方向を示している。また、ライナー1の移送方向と平行な方向をFW装置100の前後方向とし、ライナー1が移送される一方向を前側(本図左側)、他方向を後側(本図右側)と定義する。なお、FW装置100は、ライナー1を前後方向に往復動させるため、該ライナー1の移送方向に応じて前側及び後側が定まる。
【0025】
FW装置100は、ライナー1の外周面1Sに繊維束Fを巻き付けていく装置である。FW装置100は、主に主基台10と、ライナー移送装置20と、フープ巻き装置30と、ヘリカル巻き装置40と、制御装置52(
図3参照)と、で構成されている。
【0026】
ライナー1は、例えば高強度アルミニウム材やポリアミド系樹脂などによって形成された中空容器である。ライナー1は、円筒形状の筒部と半球形状のドーム部によって形成されている。ライナー1は、筒部及びドーム部に繊維束Fが巻き付けられることによって耐圧特性の向上が図られる。
【0027】
主基台10は、FW装置100の基礎を構成する主たる構造体である。主基台10の上部には、ライナー移送装置用レール11が設けられている。ライナー移送装置用レール11には、ライナー移送装置20が載置されている。ライナー移送装置20は、サーボモータがボールネジ機構を動かすことで、ライナー移送装置用レール11上を移動する。また、主基台10の上部には、ライナー移送装置用レール11に対して平行にフープ巻き装置用レール12が設けられている。フープ巻き装置用レール12には、フープ巻き装置30が載置されている。フープ巻き装置30は、サーボモータがボールネジ機構を動かすことで、フープ巻き装置用レール12上を移動する。
【0028】
このような構成により、主基台10は、FW装置100の基礎を構成するとともに、FW装置100の前後方向にライナー移送装置20ならびにフープ巻き装置30を移動させることを可能としている。
【0029】
ライナー移送装置20は、ライナー1を回転させながら移送する装置である。詳細には、ライナー移送装置20は、FW装置100の前後方向を中心軸としてライナー1を回転させるとともに、FW装置100の前後方向にライナー1を移送する装置である。ライナー移送装置20は、主に基台21と、ライナー支持部22と、で構成されている。
【0030】
基台21には、該基台21の上部に一対のライナー支持部22が設けられている。ライナー支持部22は、ライナー支持フレーム23と回転軸24で構成され、ライナー1を回転させる。具体的に説明すると、ライナー支持部22は、基台21から上方に向けて延設されたライナー支持フレーム23と、該ライナー支持フレーム23から前後方向に向けて延設された回転軸24と、で構成されている。そして、回転軸24に取り付けられたライナー1は、サーボモータを備えた動力機構によって一方向に回転されるのである。
【0031】
このような構成により、ライナー移送装置20は、FW装置100の前後方向を中心軸としてライナー1を回転させるとともに、FW装置100の前後方向にライナー1を移送することを可能としている。
【0032】
フープ巻き装置30は、ライナー1の外周面1Sに繊維束Fを巻き付ける装置である。詳細には、フープ巻き装置30は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して略垂直となる、いわゆるフープ巻きを行なう装置である。フープ巻き装置30は、主に基台31と、動力機構32と、フープ巻き掛け装置33と、で構成されている。
【0033】
基台31には、サーボモータを備えた動力機構32によって回転されるフープ巻き掛け装置33が設けられている。フープ巻き掛け装置33は、巻き掛けテーブル34とボビン35で構成され、ライナー1の外周面1Sにフープ巻きを行なう。具体的に説明すると、フープ巻き掛け装置33は、主にフープ巻きを行なう巻き掛けテーブル34と、該巻き掛けテーブル34に繊維束Fを供給するボビン35と、で構成されている。そして、巻き掛けテーブル34に設けられた繊維束ガイドによってライナー1の外周面1Sに繊維束Fが導かれる。フープ巻き装置30は、フープ巻き掛け装置33を回転させながら移動することでフープ巻きを行なう。
【0034】
このような構成により、フープ巻き装置30は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して略垂直となるフープ巻きを行なうことを可能としている。
【0035】
ヘリカル巻き装置40は、ライナー1の外周面1Sに繊維束Fを巻き付ける装置である。詳細には、ヘリカル巻き装置40は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して略斜め方向となる、いわゆるヘリカル巻きを行なう装置である。ヘリカル巻き装置40は、主に基台41と、ヘリカル巻き掛け装置42と、で構成されている。
【0036】
基台41には、ヘリカル巻き掛け装置42が設けられている。ヘリカル巻き掛け装置42は、固定ヘリカルヘッド43と可動ヘリカルヘッド44で構成され、ライナー1の外周面1Sにヘリカル巻きを行なう。具体的に説明すると、ヘリカル巻き掛け装置42は、主にヘリカル巻きを行なう固定ヘリカルヘッド43と、同じくヘリカル巻きを行なう可動ヘリカルヘッド44と、で構成されている。そして、固定ヘリカルヘッド43に設けられた複数の繊維束ガイド45(
図2A、
図2B参照)と可動ヘリカルヘッド44に設けられた複数の繊維束ガイド45(
図2A、
図2B参照)によってライナー1の外周面1Sに繊維束Fが導かれる。ヘリカル巻き装置40は、回転しながら通過するライナー1に対して繊維束Fを送り出すことでヘリカル巻きを行なう。なお、ヘリカル巻き装置40は、ライナー1の外周面1Sに対して近接又は離間する方向に繊維束ガイド45を伸縮できるため、該ライナー1の形状に応じて適切に繊維束Fを案内できる。
【0037】
このような構成により、ヘリカル巻き装置40は、繊維束Fの巻き付け角度がFW装置100の前後方向に対して略斜め方向となるヘリカル巻きを行なうことを可能としている。
【0038】
制御装置52は、複数の制御対象に対して動作を指示できるモーションコントローラである。詳細には、制御装置52は、複数の制御対象に対してライナー1の外周面1Sに繊維束Fを巻き付ける一連の動作を指示できるモーションコントローラである。ここで、「繊維束Fを巻き付ける一連の動作」とは、例えばライナー移送装置20がライナー1を移送させるとともに、該ライナー1の移送に応じてヘリカル巻き装置40が繊維束ガイド45を伸縮させるなど、互いに関連しながら繊維束Fを巻き付ける動作をいう。
【0039】
ここで、FW装置100の制御システムについて詳しく説明する。
【0040】
図3は、制御装置52(以降「モーションコントローラ52」とする)を用いた制御システムを示す図である。モーションコントローラ52は、FW装置100における制御システムの中核をなしている。FW装置100の制御システムは、主にアプリケーションソフトウェア51と、モーションコントローラ52と、アンプ53a・53b・・・と、サーボモータ54a・54b・・・と、フィードバックデバイス55a・55b・・・と、で構成されている。
【0041】
アプリケーションソフトウェア51は、ライナー1の外周面1Sに繊維束Fを巻き付ける一連の動作を設定する。詳細には、アプリケーションソフトウェア51は、システム設計者が作成した位置データを設定するほか、特定のイベントが発生した際に位置データがどのように変化するかを定義する。なお、「位置データ」とは、制御対象の目標位置の変移を示す情報である(
図4参照)。また、「制御対象の目標位置」とは、制御対象であるサーボモータ54a・54b・・・の出力軸の目標回転位置である。
【0042】
モーションコントローラ52は、位置データに基づいて制御信号を作成する。詳細には、モーションコントローラ52は、位置データを微分して得られる速度データの各数値に応じた電圧信号を作成し、該電圧信号をアンプ53a・53b・・・へ出力する。また、モーションコントローラ52は、各フィードバックデバイス55a・55b・・・からの検出信号に基づいてアンプ53a・53b・・・へ出力する電圧信号を補正している。
【0043】
アンプ53a・53b・・・は、モーションコントローラ52からの電圧信号を増幅させるとともに電流信号に変換する。詳細には、アンプ53a・53b・・・は、モーションコントローラ52からの電圧信号を受信して増幅し、電流信号に変換してサーボモータ54a・54b・・・へ出力する。
【0044】
サーボモータ54a・54b・・・は、アンプ53a・53b・・・からの電流信号を回転動力に変換する。詳細には、サーボモータ54a・54b・・・は、アンプ53a・53b・・・からの電流信号を受けて電磁石を励磁させ、磁力による引張力及び反発力を用いて回転動力に変換する。
【0045】
フィードバックデバイス55a・55b・・・は、サーボモータ54a・54b・・・の駆動状態に基づいて検出信号を作成する。詳細には、フィードバックデバイス55a・55b・・・は、サーボモータ54a・54b・・・の出力軸の回転位置に応じた電圧信号を作成し、該電圧信号をモーションコントローラ52へ出力する。
【0046】
このような構成により、本制御システムは、アプリケーションソフトウェア51の設定に基づいてモーションコントローラ52が制御信号を作成し、アンプ53a・53b・・・を介してサーボモータ54a・54b・・・を駆動させる。また、サーボモータ54a・54b・・・の駆動状態や制御対象の位置などに基づいてモーションコントローラ52が制御信号を補正するので、高い精度で制御を行なうことを可能としている。
【0047】
次に、位置データについて詳しく説明する。
【0048】
図4は、繊維束Fを巻き付ける一連の動作を表した位置データを示す図である。本図の横軸は、繊維束Fを巻き付ける一連の動作を所定時間毎に区切ったステップを示している。本図の縦軸は、サーボモータ54a・54b・・・の出力軸の目標回転位置を示している。なお、本図は、FW装置100に用いられる位置データの一例を示したものであり、他の制御態様を表す位置データであっても良い。
【0049】
位置データPaは、ライナー1の回転動作を表している。詳細には、位置データPaは、サーボモータ54aの回転位置の変移を示している。モーションコントローラ52は、位置データPaを微分して得られる速度データVa(
図5A参照)に基づいて制御信号を作成し、ライナー移送装置20を構成する動力機構のサーボモータ54aを駆動させる。なお、ライナー1の回転方向は常に一定であるため(
図2B中、矢印D1参照)、位置データPaは、ステップ毎に数値が増加する発散動作を示している。
【0050】
位置データPbは、ライナー1の移送動作を表している。詳細には、位置データPbは、サーボモータ54bの回転位置の変移を示している。モーションコントローラ52は、位置データPbを微分して得られる速度データVb(
図5A参照)に基づいて制御信号を作成し、ライナー移送装置20を構成する動力機構のサーボモータ54bを駆動させる。なお、ライナー1の移送方向は前後方向に変更されるため(
図2B中、矢印D2参照)、位置データPbは、数値が増加した後に再び減少する反復動作を示している。
【0051】
位置データPcは、繊維束ガイド45の伸縮動作を表している。詳細には、位置データPcは、サーボモータ54cの回転位置の変移を示している。モーションコントローラ52は、位置データPcを微分して得られる速度データVc(
図5A参照)に基づいて制御信号を作成し、ヘリカル巻き装置40を構成する動力機構のサーボモータ54cを駆動させる。なお、繊維束ガイド45の伸縮方向はライナー1の外周面1Sに対して近接又は離間する方向に変更されるため(
図2B中、矢印D3参照)、位置データPcは、数値が増加した後に再び減少する反復動作を示している。
【0052】
位置データPdは、繊維束ガイド45の回転動作を表している。詳細には、位置データPdは、サーボモータ54dの回転位置の変移を示している。モーションコントローラ52は、位置データPdを微分して得られる速度データVd(
図5A参照)に基づいて制御信号を作成し、ヘリカル巻き装置40を構成する動力機構のサーボモータ54dを駆動させる。なお、繊維束ガイド45の回転方向は正回転又は逆回転方向に変更されるため(
図2A中、矢印D4参照)、位置データPdは、数値が増加した後に再び減少する反復動作を示している。
【0053】
位置データPeは、可動ヘリカルヘッド44の回転動作を表している。詳細には、位置データPeは、サーボモータ54eの回転位置の変移を示している。モーションコントローラ52は、位置データPeを微分して得られる速度データVe(
図5A参照)に基づいて制御信号を作成し、ヘリカル巻き装置40を構成する動力機構のサーボモータ54eを駆動させる。なお、可動ヘリカルヘッド44の回転方向は正回転又は逆回転方向に変更されるため(
図2A中、矢印D5参照)、位置データPeは、数値が増加した後に再び減少する反復動作を示している。
【0054】
以下に、本FW装置100の制御方法について説明する。
【0055】
図5Aは、位置データPa・Pb・・・を速度データVa・Vb・・・に変換した図である。
図5Bは、速度データVa・Vb・・・から最大速度データVmを作成した図である。そして、
図5Cは、最大速度データVmから最大速度補正データVrを作成した図である。各図の横軸は、繊維束Fを巻き付ける一連の動作を所定時間毎に区切ったステップを示している。各図の縦軸は、サーボモータ54a・54b・・・の出力軸の目標回転速度を示している。
【0056】
まず、モーションコントローラ52は、位置データPa・Pb・・・を速度データVa・Vb・・・に変換する(
図5A参照)。速度データVa・Vb・・・は、各ステップ当たりの所要時間と制御対象の変移量に基づいて作成される。従って、「速度データ」とは、制御対象の目標速度の変移を示す情報といえる。また、「制御対象の目標速度」とは、制御対象であるサーボモータ54a・54b・・・の出力軸の目標回転速度である。
【0057】
次に、モーションコントローラ52は、速度データVa・Vb・・・から最大速度データVmを作成する(
図5B参照)。最大速度データVmは、各ステップで許容限界速度Lvに最も近い速度データVa・Vb・・・を繋ぎ合わせて作成される。例えば
図5Bの領域Xに示すように、最大速度データVmは、許容限界速度Lvに最も近い速度データVdと速度データVbを繋ぎ合わせて作成されている。このとき、モーションコントローラ52は、予め定められた区間(本FW装置100では、八つの区間S1・S2・・・)を把握する。
【0058】
次に、モーションコントローラ52は、最大速度データVmから最大速度補正データVrを作成する(
図5C参照)。最大速度補正データVrは、区間S1・S2・・・毎に最大速度データVmを補正して作成される。例えば
図5Cの区間S7に示すように、最大速度補正データVrは、該最大速度補正データVrの最大値Vrpが許容限界速度Lvとなるように作成される。但し、最大速度補正データVrの最大値Vrpについて限定するものではなく、許容限界速度Lvを超えなければ良い。
【0059】
このように、モーションコントローラ52は、制御対象の目標位置の変移を示す位置データPa・Pb・・・から目標速度の変移を示す速度データVa・Vb・・・へ変換するとともに(
図5A参照)、許容限界速度Lvに最も近い速度データVa・Vb・・・のみを抽出して最大速度データVmを作成する(
図5B参照)。そして、モーションコントローラ52は、予め定めた区間S1・S2・・・毎に最大速度データVmを補正して最大速度補正データVrを作成する(
図5C参照)。その後、モーションコントローラ52は、最大速度補正データVrに基づいて制御対象の動作速度を調節するのである。これにより、本FW装置100は、区間S1・S2・・・毎に制御対象の動作速度を最適化できるので、確実に繊維束Fの巻き付けに要する時間を短縮することが可能となる。
【0060】
次に、本FW装置100のより具体的な制御方法について説明する。
【0061】
上述したように、最大速度補正データVrは、該最大速度補正データVrの最大値(区間S7においては最大値Vrp)が許容限界速度Lvとなるように作成されている。具体的な制御方法は、以下の通りである。
【0062】
まず、モーションコントローラ52は、区間S1・S2・・・毎に最大速度データVmの最大値(区間S7においては最大値Vmp)と許容限界速度Lvの差異を把握する。具体的に説明すると、モーションコントローラ52は、区間S1・S2・・・毎に最大速度データVmの最大値と許容限界速度Lvの割合Rを算出して、これらの差異を把握する。例えば区間S7において、このときの数式M1は、下記のように表すことができる。
数式M1:R=Lv/Vmp
【0063】
次に、モーションコントローラ52は、算出された割合Rを補正係数として最大速度データVmから最大速度補正データVrを作成する(
図5C参照)。例えば区間S7において、このときの数式M2は、下記のように表すことができる。すると、最大速度補正データVrの最大値Vrpも下記の数式M3のように表すことができる。
数式M2:Vr=Vm×R
数式M3:Vrp=Vmp×R=Lv
【0064】
このように、モーションコントローラ52は、区間S1・S2・・・毎に最大速度データVmの最大値に対する許容限界速度Lvの割合Rを算出する。そして、モーションコントローラ52は、この割合Rの乗算によって最大速度補正データVrを作成する。これにより、本FW装置100は、制御対象の動作速度を調節するために指標となる最大速度補正データVrを作成できる。
【0065】
その後、モーションコントローラ52は、区間S1・S2・・・毎に最大速度補正データVrから割合Rを把握する。つまり、モーションコントローラ52は、区間S1・S2・・・毎に最大速度補正データVrの作成に用いた割合Rを把握する。
【0066】
その後、モーションコントローラ52は、割合Rの乗算によって全ての制御対象の動作速度を調節する。例えば速度データVa・Vb・・・は、割合Rの乗算によって速度データVa´・Vb´・・・とされる。このときの数式Ma・Mb・・・は、下記のように表すことができる。
数式Ma:Va´=Va×R
数式Mb:Vb´=Vb×R
数式Mc:Vc´=Vc×R
数式Md:Vd´=Vd×R
数式Me:Ve´=Ve×R
【0067】
このように、モーションコントローラ52は、区間S1・S2・・・毎に最大速度補正データVrから上述した割合Rを把握する。そして、モーションコントローラ52は、この割合Rの乗算によって全ての制御対象の動作速度を調節する。これにより、本FW装置100は、全ての制御対象の動作速度を最適化できる。
【0068】
次に、本FW装置100の他の特徴点について説明する。
【0069】
本FW装置100のモーションコントローラ52は、上述した区間S1・S2・・・を任意に設定できるとしている。このため、本FW装置100は、ライナー1の形状などに応じて区間S1・S2・・・を設定できる。即ち、本FW装置100は、ライナー1の形状などに応じて最適な制御態様を実現できる。
【0070】
更に、本FW装置100のモーションコントローラ52は、上述した許容限界速度Lvを任意に設定できるとしている。このため、本FW装置100は、ライナー1の形状などに応じて許容限界速度Lvを設定できる。即ち、本FW装置100は、ライナー1の形状などに応じて最適な制御態様を実現できる。
【0071】
加えて、制御対象は、サーボモータ54a・54b・・・であるとした。このため、本FW装置100は、単純な制御システムを構成できる。また、位置データPa・Pb・・・は、サーボモータ54a・54b・・・の出力軸の回転位置であるとした。このため、本FW装置100は、従来どおり位置データPa・Pb・・・を入力すれば稼動できる。
【0072】
本実施形態に係るFW装置100は、以上の如くである。本FW装置100は、最適な繊維束Fの巻き付けが実現できるとともに、繊維束Fの巻き付けに要する時間を短縮できる。