【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 「固体酸化物形燃料電池を用いた事業用発電システム要素技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のセルスタックの製造方法では、焼成中にセルスタック中間品を保持している端部と、それ以外の他の部分との間で温度差が生じ、この端部と他の部分と間での還元雰囲気の乖離に伴う還元後の還元ムラ(還元後のセルスタック軸方向での還元状態の違い)が生じてしまう。この結果、上記特許文献1に記載のセルスタックの製造方法では、セルスタックの性能が低下する、という問題点がある。
【0007】
そこで、本発明は、以上のような問題点に着目し、還元ムラを抑えることができるセルスタックの製造方法、及びセルスタックの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一態様としてのセルスタックの製造方法は、管状のセルスタックの製造方法において、導電性金属を含有する金属酸化物層を含む管状のセルスタック中間品を形成するセルスタック中間品形成工程と、前記セルスタック中間品の内部に還元ガスを供給し、該セルスタック中間品における両端部間の中間部を加熱して、前記金属酸化物を還元する還元工程と、前記還元工程を経た前記セルスタック中間品の前記両端部を切断除去する切断工程と、を実行することを特徴とする。
このように、セルスタック中間品の中間部を加熱して金属酸化物を還元した後、加熱が十分に行われていない両端部を切断除去することで、還元処理が十分になされた部位のみをセルスタックとして用いることができる。
【0009】
当該製造方法では、前記還元工程で、加熱炉内に前記セルスタック中間品の前記中間部を配置し、前記セルスタック中間品の前記両端部を前記加熱炉外に露出させた状態で、前記中間部を加熱するようにしてもよい。
これにより、セルスタック中間品の中間部のみを、加熱炉内で十分に加熱を行える。
【0010】
当該製造方法では、前記切断工程で、前記セルスタック中間品において、前記還元工程での加熱時の温度が予め定められた温度に到達した部位と、それ以外の残部との境界部で前記セルスタック中間品を切断するようにしてもよい。
セルスタック中間品を形成する材料の組成等に応じて、高い導電性を確保するのに十分な還元処理温度が異なる。そこで、十分な還元処理がなされる温度を事前に求め、この温度を切断位置を決める基準の温度とする。そして、加熱時の温度が予め定められた温度に到達した部位と、それ以外の残部との境界部でセルスタック中間品を切断することによって、加熱時の温度が事前に求めた温度に到達した部位のみをセルスタックとして用いることができる。
【0011】
当該製造方法では、前記還元工程で、前記セルスタック中間品の前記中間部に対して前記両端部の加熱を抑制するようにしてもよい。
これにより、セルスタック中間品の内部に還元ガスを供給するためのガスライン等を接続するときに、接続部に用いるゴム系材料等からなるシール部材が熱によって損なわれるのを防ぐことができる。
【0012】
当該製造方法では、前記還元工程で、前記加熱炉内から前記両端部への熱輻射を抑制するようにしてもよい。
これによっても、シール部材が熱によって損なわれるのを防ぐことができる。
【0013】
当該製造方法では、還元工程で、前記両端部を冷却するようにしてもよい。
これによっても、シール部材が熱によって損なわれるのを防ぐことができる。
【0014】
当該製造方法では、前記切断工程前に、前記還元工程を経た前記セルスタック中間品内に不活性ガスを供給する還元ガスパージ工程を実行するようにしてもよい。
これにより、セルスタック中間品を冷却することができるとともに、切断作業を安全に行うことが可能となる。
【0015】
当該製造方法では、前記切断工程で切断除去した前記両端部の電気抵抗を調べることにより、前記中間部の品質を確認する検査工程を実行するようにしてもよい。
これによって、還元処理が確実に行われたか否かを、簡便に検査することができる。
【0016】
上記目的を達成するための本発明の一態様としてのセルスタックの製造装置は、一部が導電性金属で形成されている管状のセルスタックの製造装置において、前記導電性金属を含有する金属酸化物層を含むセルスタック中間品の両端部を支持する中間品支持部と、前記セルスタック中間品の一方の端部に接続され、該一方の端部から該セルスタック中間品内に還元ガスを供給するガス供給ラインと、前記セルスタック中間品の他方の端部に接続され、前記一方の端部から前記セルスタック中間品内に供給された前記還元ガスを排気するガス排気ラインと、前記中間品支持部により前記両端部が支持されている前記セルスタック中間品の中間部を加熱する加熱源と、前記セルスタック中間品の前記両端部を切断する切断機と、を備えていることを特徴とする。
このような製造装置によれば、上記製造方法を実現できる。
【0017】
当該製造装置では、前記加熱源は、前記中間品支持部で前記両端部が支持されている前記セルスタック中間品の中間部のみに対向するようにしてもよい。
これにより、セルスタック中間品の中間部のみを加熱し、両端部については加熱しないようにすることができる。
【0018】
当該製造装置では、前記中間品支持部は、前記セルスタック中間品の前記中間部が加熱炉内に位置し、前記両端部が前記加熱炉外に露出させた状態で、前記セルスタック中間品を支持するようにしてもよい。
これによっても、セルスタック中間品の中間部のみを加熱し、両端部については加熱しないようにすることができる。
【0019】
当該製造装置では、前記加熱源から前記両端部への熱輻射を抑制する熱輻射抑制体を備えているようにしてもよい。
これによっても、セルスタック中間品の中間部のみを加熱し、両端部については加熱しないようにすることができる。
【0020】
当該製造装置では、前記両端部を冷却する冷却器を備えているようにしてもよい。
これにより、両端部の温度上昇を抑えることができる。その結果、シール部材が熱によって損なわれるのを防ぐことができる。
【0021】
当該製造装置では、前記ガス供給ラインには、還元ガス発生源からの前記還元ガスと不活性ガス発生源からの不活性ガスとのうち一方のガスのみを選択的に通す切替器が設けられているようにしてもよい。
これにより、還元処理を行うときには還元ガス発生源から還元ガスをセルスタック中間品に供給し、切断処理を行うに際しては、不活性ガスをセルスタック中間品に供給することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、還元ムラの少ないセルスタックを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るセルスタックの製造方法及び製造装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
「燃料電池モジュールの実施形態」
まず、本発明での製造対象であるセルスタックを備えている燃料電池モジュールの実施形態について、
図1〜
図4を参照して説明する。
【0026】
図1において、燃料電池モジュールMは、容器中心軸Avを中心として容器中心軸方向Dvに延びる円筒形状の圧力容器10と、この圧力容器10内に配置された、複数のカートリッジ201を備えたカートリッジ群200と、複数の各種配管300と、を備えている。
【0027】
配管300としては、燃料ガス供給源1からの燃料ガスGfを圧力容器10内のカートリッジ群200の各カートリッジ201に導く燃料ガス供給配管310と、各カートリッジ201を通過した燃料ガスGfを圧力容器10外に導く燃料ガス排出配管320と、酸化剤ガス供給源2からの酸化剤ガスGoを圧力容器10内のカートリッジ群200の各カートリッジ201に導く酸化剤ガス供給配管330と、各カートリッジ201を通過した酸化剤ガスGoを圧力容器10外に導く酸化剤ガス排出配管340とがある。
【0028】
燃料ガスGfとしては、例えば、水素、一酸化炭素、メタン等の炭化水素系ガス、石炭等の炭素質原料のガス化により得られた炭化水素を含むガス、又は、これらの2以上の成分を含むガス等が利用される。また、酸化剤ガスGoとしては、例えば、酸素を15〜30vol%含むガス等が利用される。代表的な酸化剤ガスGoとしては、空気であるが、燃焼排気ガスと空気との混合ガスや、酸素と空気との混合ガスを利用してもよい。
【0029】
圧力容器10は、例えば、内部の圧力が0.1MPa〜約5MPa、内部の温度が大気温度〜約550℃で運用される。このため、この圧力容器10は、耐圧性を考慮して、円筒形状の胴部11と、圧力容器10の容器中心軸方向Dvにおける両端部に形成されている半球状の鏡部12とを有している。この圧力容器10は、全体として円筒形状を成し、その容器中心軸Avが上下方向に延びるよう設置されている。また、この圧力容器10は、耐圧性が要求されると共に、使用条件によって、酸化剤ガスGo中に含まれる酸素などの酸化剤に対する耐食性も要求される場合には、例えば、SUS304などのステンレス系材で形成されている。
【0030】
カートリッジ201は、複数のセルスタックの束で構成されている。
図2に示すように、セル集合体であるセルスタック101は、管状(又は円筒状)の基体管103と、基体管103の外周面に形成されている複数の燃料電池セル105と、隣り合う燃料電池セル105の間に形成されているインターコネクタ107とを有する。燃料電池セル105は、燃料極112と固体電解質111と空気極113とが積層して形成されている。セルスタック101は、さらに、基体管103の外周面に形成されている複数の燃料電池セル105のうちで、基体管103の軸方向において最も端に形成されている燃料電池セル105の空気極113に、インターコネクタ107を介して電気的に接続されているリード膜115を有する。
【0031】
本実施形態では、管状(又は円筒状)のセルスタック101の内周側に燃料ガスGfが通り、セルスタック101の外周側に酸化剤ガスGoが通る。
【0032】
基体管103は、例えば、CaO安定化ZrO
2(CSZ)、Y
2O
3安定化ZrO
2(YSZ)、MgAl
2O
4等のいずれかで形成されている多孔質体である。この基体管103は、燃料電池セル105とインターコネクタ107とリード膜115とを支持する役目を担っている。さらに、この基体管103は、内周側に供給された燃料ガスGfを基体管103の細孔を介して基体管103の外周面に形成される燃料電池セル105に拡散させる役目も担っている。
【0033】
燃料極112は、例えば、Ni/YSZ等、Niとジルコニア系電解質材料との複合材の酸化物で形成されている。この場合、燃料極112は、燃料極112の成分であるNiが燃料ガスGfに対して触媒として作用する。この触媒としての作用は、基体管103を介して供給された燃料ガスGf中に、例えば、メタン(CH
4)と水蒸気とが含まれている場合、これら相互を反応させ、水素(H
2)と一酸化炭素(CO)に改質する作用である。
【0034】
空気極113は、例えば、LaSrMnO
3系酸化物、又はLaCoO
3系酸化物で形成されている。この空気極113は、固体電解質111との界面付近において、供給される酸化剤ガスGo中の酸素を解離させて酸素イオン(O
2−)を生成する。
【0035】
固体電解質111は、例えば、主としてYSZで形成されている。このYSZは、ガスを通しにくい気密性と、高温下での高い酸素イオン導電性とを有している。この固体電解質111は、空気極113で生成された酸素イオン(O
2−)を燃料極112に移動させる。
【0036】
前述の燃料極112では、固体電解質111との界面付近において、改質により得られた水素(H
2)及び一酸化炭素(CO)と、固体電解質111から供給された酸素イオン(O
2−)とが反応し、水(H
2O)及び二酸化炭素(CO
2)が生成される。この燃料電池セル105では、この反応過程で酸素イオンから電子が放出されて、発電が行われる。
【0037】
インターコネクタ107は、例えば、SrTiO
3系などのM
1−xL
xTiO
3(Mはアルカリ土類金属元素、Lはランタノイド元素)で表される導電性ペロブスカイト型酸化物で形成されている。このインターコネクタ107は、燃料ガスGfと酸化剤ガスGoとが混合しないように緻密な膜で、酸化雰囲気と還元雰囲気との両雰囲気下で安定した電気導電性を有する。このインターコネクタ107は、隣り合う燃料電池セル105において、一方の燃料電池セル105の空気極113と他方の燃料電池セル105の燃料極112とを電気的に接続する。つまり、このインターコネクタ107は、隣り合う燃料電池セル105同士を電気的に直列接続する。
【0038】
リード膜115は、電子伝導性を有すること、及びセルスタック101を構成する他の材料との熱膨張係数が近いことが必要であることから、例えば、Ni/YSZ等のNiとジルコニア系電解質材料との複合材で形成されている。このリード膜115は、インターコネクタ107により電気的に直列接続されている複数の燃料電池セル105で発電された直流電力をセルスタック101の端部付近まで導出する役目を担っている。
【0039】
カートリッジ201は、
図3、
図4に示すように、複数のセルスタック101の束と、複数のセルスタック101の束の一方の端部を覆う第一カートリッジヘッダ220aと、複数のセルスタック101の束の他方の端部を覆う第二カートリッジヘッダ220bと、を有している。複数のセルスタック101の束は、互いに平行で且つその長手方向における互いの位置が揃って、全体として円柱形状を成している。また、第一カートリッジヘッダ220a及び第二カートリッジヘッダ220bは、円柱形状を成している複数のセルスタック101の束の外径よりわずかに大きな外径の円筒形状を成している。このため、カートリッジ201は、全体として、セルスタック101の長手方向に長い円柱形状を成している。なお、カートリッジ201は、円柱形状でなくてもよく、例えば、角柱形状であってもよい。
【0040】
図3に示すように、第一カートリッジヘッダ220a及び第二カートリッジヘッダ220bは、いずれも、複数のセルスタック101の束の端部が開口228から内部に入り込む円筒形状のケーシング229a,229bと、ケーシング229a,229bの開口228を塞ぐ仕切断熱板227a,227bと、ケーシング229a,229bの内部空間をセルスタック101の長手方向で2つの空間に仕切る管板225a,225bと、を有している。管板225a,225b等は、高温耐久性のある金属材料で形成されている。管板225a,225b及び仕切断熱板227a,227bには、複数のセルスタック101の端部のそれぞれが挿通可能な貫通孔が形成されている。管板225a,225bは、その貫通孔に挿通されたセルスタック101の端部をシール部材又は接着剤237を介して支持する。このため、この管板225a,225bには貫通孔が形成されているものの、この管板225a,225bを基準にしてケーシング229a,229b内の一方の空間に対する他方の空間の気密性が確保されている。仕切断熱板227a,227bの貫通孔の内径は、ここに挿通されるセルスタック101の外径よりも大きく形成されている。つまり、仕切断熱板227a,227bの貫通孔の内周面と、この貫通孔に挿通されたセルスタック101の外周面との間には隙間235a,235bが存在する。
【0041】
第一カートリッジヘッダ220aのケーシング229aと管板225aとで形成されている空間は、燃料ガスGfが供給される燃料ガス供給室217を形成している。このケーシング229aには、燃料ガス供給配管310からの燃料ガスGfを燃料ガス供給室217に導くための燃料ガス供給孔231aが形成されている。この燃料ガス供給室217内には、複数のセルスタック101における基体管103の端部が位置し、ここで開放している。燃料ガス供給配管310から燃料ガス供給室217に導かれた燃料ガスGfは、複数のセルスタック101の基体管103の内部に流れ込む。この際、燃料ガスGfは、燃料ガス供給室217により、複数のセルスタック101の各基体管103に対してほぼ均等流量に配分される。このため、複数のセルスタック101における各発電量の均一化を図ることができる。
【0042】
第二カートリッジヘッダ220bのケーシング229bと管板225bとで形成されている空間は、セルスタック101の基体管103内を通過した燃料ガスGfが流れ込む燃料ガス排出室219を形成している。このケーシング229bには、燃料ガス排出室219に流れ込んだ燃料ガスGfを燃料ガス排出配管320に導くための燃料ガス排出孔231bが形成されている。この燃料ガス排出室219内には、複数のセルスタック101における基体管103の端部が位置し、ここで開放している。複数のセルスタック101の各基体管103内を通過した燃料ガスGfは、前述したように、燃料ガス排出室219に流入した後、燃料ガス排出配管320を通って、圧力容器10外へ排出される。
【0043】
第二カートリッジヘッダ220bのケーシング229bと仕切断熱板227bと管板225bとで形成されている空間は、酸化剤ガス供給室216を形成している。このケーシング229bには、酸化剤ガス供給配管330からの酸化剤ガスGoを酸化剤ガス供給室216に導くための酸化剤ガス供給孔233bが形成されている。この酸化剤ガス供給室216内に導かれた酸化剤ガスGoは、仕切断熱板227bの貫通孔の内周面と、この貫通孔に挿通されているセルスタック101の外周面との間の隙間235bから、第一カートリッジヘッダ220aと第二カートリッジヘッダ220bとの間の発電室215へと流出する。
【0044】
第一カートリッジヘッダ220aと第二カートリッジヘッダ220bとの間の発電室215には、複数のセルスタック101の燃料電池セル105が配置されている。このため、この発電室215では、燃料ガスGfと酸化剤ガスGoとが電気化学的反応して、発電が行われる。なお、この発電室215で、セルスタック101の長手方向における中央部付近の温度は、燃料電池モジュールMの定常運転時に、およそ700℃〜1100℃の高温雰囲気になる。また、この発電室215は、第一カートリッジヘッダ220aと第二カートリッジヘッダ220bとの間であって、外周側が複数のカートリッジ201の相互間に充填された断熱材16で囲まれた空間である。この断熱材16は、例えば、アルミナシリカ系の材料で形成されている。
【0045】
第一カートリッジヘッダ220aのケーシング229aと仕切断熱板227aと管板225aとで形成されている空間は、発電室215を通った酸化剤ガスGoが流入する酸化剤ガス排出室218を形成している。このケーシング229aには、酸化剤ガス排出室218に流れ込んだ酸化剤ガスGoを酸化剤ガス排出配管340に導くための酸化剤ガス排出孔233aが形成されている。発電室215中の酸化剤ガスGoは、仕切断熱板227aの貫通孔の内周面と、この貫通孔に挿通されているセルスタック101の外周面との間の隙間235aから酸化剤ガス排出室218内に流入した後、酸化剤ガス排出配管340を通って、圧力容器10外へ排出される。
【0046】
発電室215の高温化に伴って、各カートリッジヘッダ220a,220bの管板225a,225bが高温化する。第一カートリッジヘッダ220a及び第二カートリッジヘッダ220bの仕切断熱板227a,227bは、この管板225a,225bが高温化による強度低下や酸化剤ガスGo中に含まれている酸化剤による腐食を抑える。さらに、この仕切断熱板227a,227bは、管板225a,225bの熱変形も抑える。
【0047】
前述したように、発電室215中の酸化剤ガスGoと、この発電室215に配置されている複数のセルスタック101の内側を通る燃料ガスGfとは、セルスタック101における複数の燃料電池セル105で電気化学反応する。この結果、複数の燃料電池セル105で発電が行われる。
【0048】
複数の燃料電池セル105での発電で得られた直流電流は、複数の燃料電池セル105相互間に設けられているインターコネクタ107を経て、セルスタック101の端部側へ流れ、このセルスタック101のリード膜115に流れ込む。そして、この直流電流は、リード膜115から、第一カートリッジヘッダ220a内に設けられた集電板(不図示)を介して、カートリッジ201の集電棒(不図示)に流れ、カートリッジ201外部へ取り出される。複数のカートリッジ201にそれぞれ設けられた集電棒は、互いに直列及び/又は並列接続されている。集電棒のうち、最も下流側の集電棒は、例えば、図示されていないインバータに接続されている。カートリッジ201外部に取り出された直流電流は、直列及び/又は並列接続されている複数の集電棒を経て、例えば、インバータに流れ、ここで交流電流に変換されて、電力負荷へと供給される。
【0049】
セルスタック101の内周側を流れる燃料ガスGfとセルスタック101の外周側を流れる酸化剤ガスGoとは、このセルスタック101を介して熱交換する。この結果、燃料ガスGfは、酸化剤ガスGoにより加熱され、酸化剤ガスGoは、逆に燃料ガスGfにより冷却される。本実施形態では、これら燃料ガスGfと酸化剤ガスGoとがセルスタック101の内周側と外周側とを対向して流れる。このため、燃料ガスと酸化剤ガスとの熱交換率が高まり、セルスタック101の上部において、燃料ガスによる酸化剤ガスの冷却効率、及び、セルスタック101の下部において、酸化剤ガスによる燃料ガスの冷却効率が高まる。よって、本実施形態において、酸化剤ガスGoは、第一カートリッジヘッダ220aを形成する管板225a等が座屈変形等しない温度に冷却されてから、この第一カートリッジヘッダ220aの酸化剤ガス排出室218に流れ込む。また、本実施形態において、燃料ガスGfは、発電室215内のセルスタック101内で、ヒータ等を用いることなく発電に適した温度に予熱昇温される。
【0050】
なお、本実施形態では、燃料ガスGfと酸化剤ガスGoとがセルスタック101の内周側と外周側とを対向して流れる、つまり燃料ガスGfと酸化剤ガスGoとが逆向きに流れるが、必ずしもこの必要はなく、例えば、燃料ガスGfと酸化剤ガスGoとがセルスタック101の内周側と外周側で同じ向きに流れてもよいし、酸化剤ガスGoが燃料ガスGfの流れに対して直交する方向に流れてもよい。
【0051】
円柱形状の複数のカートリッジ201は、いずれも、カートリッジ中心軸Acが圧力容器10の容器中心軸Avと平行になるよう、圧力容器10内に配置されている。つまり、本実施形態では、カートリッジ中心軸Acは、容器中心軸Avと同様、上下方向に延びている。本実施形態において、所定数のカートリッジ201は、容器中心軸方向Dv(上下方向)における位置が互いに同じ位置になり、且つ容器中心軸Avに対して垂直な仮想面を含む方向で互いに隣接するよう配置されて、カートリッジ群200を構成している。本実施形態の燃料電池モジュールMは、このカートリッジ群200を2つ備えている。
【0052】
「セルスタックの製造方法及び製造装置の実施形態」
次に、本発明に係るセルスタックの製造方法及び製造装置の実施形態について、
図5〜
図11に基づいて説明する。
【0053】
上記したセルスタック101を製造するには、まず、最終的にセルスタック101となる管状のセルスタック中間品を形成する。このセルスタック中間品は、基体管103、燃料極112、固体電解質111、空気極113をそれぞれ積層した複数の燃料電池セル105と、互いに隣り合う燃料電池セル105間のインターコネクタ107と、リード膜115とをそれぞれ形成するために、上記に示した材料により成形されたものである。このうち、燃料極112、およびインターコネクタ107、リード膜115を形成する材料は、導電性の金属酸化物であるニッケル酸化物である。この金属酸化物は、セルスタック中間品内で金属酸化物層を成している。
このセルスタック中間品を焼成することによって、セルスタック101を得る。この焼成の際に、セルスタック中間品の内側に還元ガスを供給して、ニッケル酸化物を還元し、燃料極112、およびリード膜115に高い導電性を付与する。
この還元処理には、以下に示すようなセルスタック101の製造装置を用いる。
【0054】
図5に示すように、本実施形態のセルスタック101の製造装置30は、セルスタック中間品102を焼成するとともに還元処理を施す熱処理部40と、熱処理部を経たセルスタック中間品102の両端部を切断する切断部90と、を備える。
【0055】
図5〜
図7に示すように、熱処理部40は、熱処理炉(加熱炉)41と、セルスタック中間品102を熱処理炉41で熱処理するに際してセルスタック中間品102の両端部102a,102bを支持した状態でセルスタック中間品102を搬送するチューブ搬送機構50と、を備える。なお、
図6は、熱処理炉41にセルスタック中間品102が投入される側の製造装置30の要部立面図である。また、
図7は、セルスタック中間品102が搬送される方向に対して垂直な面での断面図である。
【0056】
熱処理炉41は、ガス炉、電気炉等を用いることができる。また、熱処理炉41は、熱処理対象のセルスタック中間品102を、規定時間の間、固定したままの状態で熱処理を行い、熱処理後に取り出すバッチ炉を用いることもできるが、本実施形態では、以下に示すような連続炉を用いる。
本実施形態における熱処理炉41は、一端41a側から他端41b側に向けて、熱処理対象物を搬送しつつ、炉内に設けた加熱源42で発する熱によって、熱処理対象物を加熱して熱処理を行う。
【0057】
この熱処理炉41は、その外周部を覆う炉壁43に、一端41a側に投入口44が形成されるとともに、他端41b側に搬出口45が形成されている。さらに、炉壁43には、投入口44から搬出口45に向かう搬送方向に直交した幅方向両側に、搬送方向に沿って連続する開口部46が形成されている。この開口部46は、投入口44および搬出口45に連続して形成されている。つまり、炉壁43は、床面上に設けられた下部炉壁47と、下部炉壁47の上端部47aから鉛直上方に間隔を隔てて設けられた上部炉壁48、とから形成されている。なお、上部炉壁48は、セルスタック中間品102の熱処理に干渉しないよう設けられた図示しない支柱等によって支持されている。
【0058】
チューブ搬送機構50として、炉壁43の外周側に、開口部46が形成された両側の側面43a,43aから搬送方向に直交した幅方向に間隔をあけて、一対の搬送装置51,51が設けられている。この搬送装置51は、例えば、床面上に設置した不図示の基部に、搬送方向に沿って循環駆動される無限軌道51bが設けられている。無限軌道51bには、搬送方向に所定の間隔を隔ててチューブ保持部(中間品支持部)53が設けられている。
【0059】
熱処理炉41を挟んでその両側に設けられた一対の搬送装置51のそれぞれにおいては、それぞれ、上側の無限軌道51bに位置する各チューブ保持部53で、セルスタック中間品102の端部102a,102bを支持する。このようにして両端部102a,102bが支持されたセルスタック中間品102は、無限軌道51bが駆動されることによって、熱処理炉41に対し、投入口44から搬出口45に向けて搬送される。投入口44と搬出口45との間において、セルスタック中間品102は、両端部102a,102bが開口部46,46から熱処理炉41の両側に露出し、両端部102a,102bの間の中間部102cが、熱処理炉41内を通るようになっている。
【0060】
熱処理炉41内には、投入口44から搬出口45に向けてセルスタック中間品102の中間部102cが通過する領域の上下に、加熱源42として例えば電気ヒータ42a,42bが設けられている。この電気ヒータ42a,42bは、熱処理炉41内の炉壁43に設けられているため、チューブ搬送機構50で両端部102a,102bが支持されているセルスタック中間品102の中間部102cと対向し、炉壁43外に露出している両端部102a,102bとは対向しない。したがって、電気ヒータ42a,42bは、セルスタック中間品102の中間部102cのみを加熱する。
ここで、電気ヒータ42a,42bは、前記チューブ搬送機構50に支持されたセルスタック中間品102の長手方向における中間部102cの各位置までの距離が等しくなるよう設置されている。また、電気ヒータ42a,42bは、搬送方向に沿って間隔を隔てて並ぶ複数のセルスタック中間品102のそれぞれの中間部102cまでの距離が等しくなるよう設定されている。このようにして、電気ヒータ42a,42bは、熱処理炉41内でセルスタック中間品102の中間部102cをなるべく均一に加熱するよう配置されている。
【0061】
このような電気ヒータ42a,42bに対し、チューブ搬送機構50で両端部102a,102bが支持されているセルスタック中間品102は、搬送方向に沿って搬送されることによって、各セルスタック中間品102が、電気ヒータ42a,42bに対して相対移動する。各セルスタック中間品102は、熱処理炉41内で電気ヒータ42a,42bに対して相対移動する間、中間部102cが加熱され、熱処理が施される。したがって、チューブ搬送機構50における各セルスタック中間品102の搬送速度を調整することによって、各セルスタック中間品102の熱処理時間が調整できる。
【0062】
熱処理炉41には、搬送方向幅方向両側の開口部46,46には、その上下、つまり下部炉壁47の上端部47aと、上部炉壁48の下端部に、電気ヒータ42a,42bから熱処理炉41外への熱輻射を抑制するため、断熱材からなる熱輻射抑制体55がそれぞれ設けられている。この熱輻射抑制体55は、搬送方向に沿って連続して設けられている。この熱輻射抑制体55により、電気ヒータ42a,42bからセルスタック中間品102の両端部102a,102bへの熱輻射を抑制し、両端部102a,102bの加熱を抑える。
【0063】
また、熱処理炉41には、開口部46,46から熱処理炉41の外部に向けて突出したセルスタック中間品102の両端部102a,102bを冷却する冷却装置(冷却器)65が設けられている。
この冷却装置65は、炉壁43の幅方向両側とチューブ搬送機構50との間において、開口部46,46から熱処理炉41の外部に向けて突出したセルスタック中間品102の両端部102a,102bの上方と下方にそれぞれ設けられている。冷却装置65は、搬送方向に沿って複数の送風口65aを有しており、図示しない冷却空気供給源から送給された冷却空気が各送風口65aからセルスタック中間品102の両端部102a,102bに向けて吹き付けられるようになっている。
【0064】
また、熱処理炉41内で、セルスタック中間品102の焼成とともに還元処理を行うため、チューブ搬送機構50で搬送されるセルスタック中間品102には、水素や、水素と水蒸気との混合体を送り込むようになっている。
このため、チューブ搬送機構50で搬送されるセルスタック中間品102の一方の端部102aに、一方の端部102aからセルスタック中間品102内に還元ガスを供給するガス供給ライン71がジョイント部材70を介して接続されている。また、セルスタック中間品102の他方の端部102bに、一方の端部102aからセルスタック中間品102内に供給された還元ガスを排気するガス排気ライン72がジョイント部材70を介して接続されている。
【0065】
図8に示すように、ジョイント部材70は、ガス供給ライン71、ガス排気ライン72の端部が嵌め込まれた雄ネジ部材73と、セルスタック中間品102の端部102a,102bが挿入される円筒状の雌ネジ部材74と、雌ネジ部材74内に収容され、セルスタック中間品102の端部102a,102bが圧入されたリング状のカラー75と、フッ素ゴム等からなるシールリング76と、を備えている。
【0066】
雄ネジ部材73は、外周部にネジ溝73aが形成され、内周部に筒状面73bを有している。この筒状面73bは、ガス供給ライン71、ガス排気ライン72の外径と同等の内径を有し、ガス供給ライン71、ガス排気ライン72の端部が挿入される。また雄ネジ部材73の先端部は、筒状面73bよりも大きな内径を有した大径筒状面73cとされて、その内部にカラー75およびシールリング76が収容される。また、筒状面73bと大径筒状面73cとの間は、その内径が、筒状面73b側から大径筒状面73cに向けて漸次拡大するテーパ面73dとされている。
雌ネジ部材74は、内周面にネジ溝74aが形成されている。雌ネジ部材74に雄ネジ部材73をねじ込むと、雌ネジ部材74内に収容されたカラー75と雄ネジ部材73のテーパ面73dとの間にシールリング76が挟み込まれ、これによってジョイント部材70におけるシール性が確保されるようになっている。
そして、雄ネジ部材73には、セルスタック中間品102の端部102a,102bの開口に突き当たる部分に貫通孔77が形成され、これによって、ガス供給ライン71、ガス排気ライン72とセルスタック中間品102とが連通する。
【0067】
図1に示したように、ガス供給ライン71には、水素等の還元ガスの還元ガス供給源78Aと、窒素等の不活性ガスの不活性ガス供給源78Bが、切替弁(切替器)78Cを介して接続されている。
また、ガス排気ライン72には、還元ガスを回収する還元ガス回収部79Aと、不活性ガスを回収する不活性ガス回収部79Bとが、切替弁(切替器)79Cを介して接続されている。
これにより、切替弁78C,79Cを適宜切り替えることによって、セルスタック中間品102内に、水素等と還元ガスと、窒素等の不活性ガスが、選択的に供給できるようになっている。
【0068】
図5に示すように、切断部90は、上記のような熱処理部40に対して搬送方向下流側に設けられている。
図9に示すように、切断部90は、チューブ搬送機構50で両端部102a,102bが支持されているセルスタック中間品102を、チューブ搬送機構50よりも内側で支持する支持部材91と、支持部材91で支持されたセルスタック中間品102を所定の位置で切断する切断機92と、を備える。
支持部材91は、チューブ搬送機構50と同様の構成のものを用いてもよいし、床面上に固定的に設けた台状のものとしてもよい。
【0069】
切断機92は、例えば円板状のカッター92aが回転する回転カッターであり、支持部材91に支持されたセルスタック中間品102を、支持部材91の両側で切断し、両端部102a,102bを除去する。セルスタック中間品102の切断位置C1,C2は、熱処理炉41内において加熱されることで、予め定めた規定温度以上まで温度が上昇した部位のみを残すように設定する。
すなわち、
図10に示すように、セルスタック中間品102を熱処理炉41内において加熱したときのセルスタック中間品102の温度分布は、熱処理炉41内に位置する中間部102cでは高く、熱処理炉41外に露出している両端部102a,102bでは低くなっている。そして、セルスタック中間品102の燃料極112、およびインターコネクタ107、リード膜115を形成する材料である、導電性の金属酸化物であるニッケル酸化物で形成されている金属酸化物層の十分な還元処理を行うには、その材料組成等に応じて決まる規定の温度以上まで、加熱を行う必要がある。
【0070】
表1に示すように、燃料極112、およびインターコネクタ107、リード膜115を形成する材料である、導電性の金属酸化物であるニッケル酸化物の金属酸化物層は、加熱された温度に応じ、還元処理後の電気抵抗値が異なる。
【0072】
そこで、予め、加熱試験等を実施して、熱処理炉41で熱処理を行ったときのセルスタック中間品102の各部の温度を計測し、規定温度以上まで温度上昇した部位と、規定温度以上まで温度上昇しなかった部位との境界部に、切断機92による切断位置C1,C2を設定する。
本実施形態では、表1に示すように、550℃以上まで加熱を行うと、燃料極112、およびインターコネクタ107、リード膜115の電気抵抗が顕著に低くなり、高い導電性が得られることから、
図10で示した温度分布に基づいて切断位置C1,C2を設定するものとする。
なお、この温度分布や、電気抵抗が低くなる規定温度は、用いる材料の組成等に応じて変動し得るため、上記に示した550℃を境界として設定した切断位置C1,C2は一例に過ぎない。
【0073】
次に、上記したような製造装置30におけるセルスタック101の製造方法について説明する。
図11は、上記製造装置30におけるセルスタック101の製造方法の流れを示す。以下、この
図11を参照しつつ説明を行う。
【0074】
(セルスタック中間品形成工程)
まず、セルスタック中間品102を形成する(ステップS201)。このセルスタック中間品102の形成では、例えば、特開2002−329505号公報に詳細に記載されているように、円筒状に形成した基体管103を形成する材料の表面に、燃料極112、固体電解質111、空気極113、インターコネクタ107、リード膜115を形成する材料を所定の厚さで成膜しておく。
【0075】
(焼成・還元工程)
次いで、形成したセルスタック中間品102の両端部102a,102bをチューブ搬送機構50で支持し、さらに両端部102a,102bにジョイント部材70を介してガス供給ライン71、ガス排気ライン72を接続する。
そして、ガス供給ライン71からセルスタック中間品102内に水素等の還元ガスを供給した状態で、チューブ搬送機構50によりセルスタック中間品102の中間部102cを投入口44から熱処理炉41内に投入し、セルスタック中間品102の焼成処理、およびセルスタック中間品102に含まれる金属酸化物の還元処理を施す(ステップS203)。
熱処理炉41においては、投入口44から搬出口45までセルスタック中間品102が搬送されるのに要する規定時間の間、電気ヒータ42a,42bにより、セルスタック中間品102における両端部102a,102b間の中間部102cを加熱する。すると、多孔質体からなる基体管103を通して、還元ガスが基体管103外表面の金属酸化物に供給され、還元処理がなされる。
【0076】
この還元工程では、セルスタック中間品102の両端部102a,102bを熱処理炉41の外部に露出させる。また、セルスタック中間品102の中間部102cにのみ電気ヒータ42a,42bを対向させ、両端部102a,102bには電気ヒータ42a,42bを対向させないようにする。さらに、開口部46に熱輻射抑制体55を設けることで、電気ヒータ42a,42bから両端部102a,102bへの熱輻射を抑制するようにする。なお、熱輻射抑制体55は、例えば、断熱材で形成されている。加えて、冷却装置65により、セルスタック中間品102の両端部102a,102bを冷却する。このようにして、セルスタック中間品102において、中間部102cに対して両端部102a,102bの加熱を抑制する。
【0077】
(パージ工程)
セルスタック中間品102が、熱処理炉41の搬出口45から搬出されたら、切替弁78Cおよび79Cを切り替え、セルスタック中間品102内の還元ガスを還元ガス回収部79Aで回収するとともに、不活性ガス供給源78Bから窒素等の不活性ガスを供給し、セルスタック中間品102内を不活性ガスに置換(パージ)する(ステップS203)。
この不活性ガスへの置換により、セルスタック中間品102の冷却、および、後の切断工程における安全性向上を図る。
【0078】
(切断工程)
この後、セルスタック中間品102を切断部90に移動させ、この切断部90において、
セルスタック中間品102を所定の切断位置C1,C2で切断する(ステップS204)。これにより、セルスタック中間品102において、中間部102cの、還元工程での加熱時の温度が規定温度以上になっている部位を残し、両端部102a,102bを除去する。
【0079】
(検査工程)
続いて、上記切断工程で切断除去したセルスタック中間品102の両端部102a,102bの電気抵抗を計測する。両端部102a,102bの電気抵抗は、セルスタック102の中間部102cに比較すると高いが、この両端部102a,102bにおいて、セルスタック中間品102の熱処理温度に応じて、電気抵抗が変動する。そこで、両端部102a,102bの電気抵抗を計測することによって、セルスタック中間品102の中間部102cの還元処理が異常なく行われたか否か、中間部102cの品質を確認する(ステップ205)。
【0080】
このようにして、セルスタック中間品102を焼成・還元処理を施し、両端部102a,102bを切除することによって、優れた品質のセルスタック101を製造することができている。
【0081】
上述したように、セルスタック中間品102の両端部102a,102bを熱処理炉41の外部に露出させて焼成・還元処理を行い、処理後、両端部102a,102bを切除するようにした。これにより、熱処理炉41内で均一に加熱された部分であるセルスタック中間品102の中間部102cがセルスタック101となるので、還元ムラを抑えて優れた品質のセルスタック101を製造することができる。
【0082】
また、セルスタック中間品102の両端部102a,102bの熱処理炉41の外部への露出、熱輻射抑制体55による両端部102a,102bへの熱輻射の抑制、冷却装置65による両端部102a,102bの冷却によって。セルスタック中間品102の両端部102a,102bの加熱を抑制することができる。これにより、シールリング76が、その耐熱温度を上回る温度になるのを防ぐことができ、ジョイント部材70のシール性が損なわれるのを防ぐことができる。
【0083】
「変形例」
上記実施形態において、チューブ搬送機構50は、チェーン状のものを用いるようにしたが、これに限るものではない。例えば、下部に走行車輪を有した台車の上部にチューブ保持部53を形成し、この台車を移動させることによって、チューブ保持部53で支持したセルスタック中間品102を搬送方向に移動させる構成としてもよい。
また、上記実施形態では、熱処理炉41に、セルスタック中間品102を支持する支持台を固定的に設けて、所定時間熱処理を行うようにしてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、セルスタック中間品102を長手方向が横方向に一致するように支持して熱処理を行うようにしたが、セルスタック中間品102を縦方向に支持したり、斜めに支持してもよい。いずれの場合においても、セルスタック中間品102の両端部102a,102bを熱処理炉41から外部に露出させ、中間部102cを加熱する。
【0085】
さらに、加熱源42としてパネル式の電気ヒータ42a,42bを備えるようにしたが、パネル状とは限らない。また、電気ヒータ42a,42bに限らず、ガスを燃焼させるガスヒータを加熱源として用いることができる。この場合、ガスを燃焼させるバーナは、熱処理炉41内のいかなる位置に設けてもよいが、セルスタック中間品102をなるべく均一に加熱できるようにするのが好ましい。
【0086】
また、チューブ搬送機構50においては、熱処理炉41において、セルスタック中間品102を、床面に平行に搬送する構成を示したが、これに限るものではない。例えば、セルスタック中間品102を、投入口44側から搬出口45に向けて傾斜させて搬送してもよい。そのような場合も、電気ヒータ42a,42bは、搬送方向に平行に設けるのが好ましい。
【0087】
また、冷却装置65においては、送風口65aから冷却空気をセルスタック中間品102の両端部102a,102bに向けて吹き付けるようにしたが、これに限るものではなく、熱処理炉41の両側に配列した複数のファンによりセルスタック中間品102の両端部102a,102bに風を当てて冷却を図るようにしても良い。さらには、ジョイント部材70に冷媒を通す流路を形成し、この流路に、水をはじめとする冷媒を流通させることによって、ジョイント部材70を介してセルスタック中間品102の両端部102a,102bを冷却することも可能である。
【0088】
さらに、切断機92に、円板状のカッター92aが回転駆動される回転カッターを用いるようにしたが、これに代えて、直線状の切断刃が往復動するジグソーであってもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記に示した構成を適宜の変更・追加・削除等を行うことができる。