(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1及び
図2は、本発明の実施形態に係る画像形成装置10の構成を示す概略構成図である。画像形成装置10は、本発明の画像形成装置の一例である。以下の説明においては、画像形成装置10が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向6を定義し、手前側(正面側)を前として前後方向7を定義し、画像形成装置10を手前側(正面側)から見て左右方向8を定義する。
【0011】
[画像形成装置10の構成]
図1に示されるように、画像形成装置10は、印刷用紙Pに画像を形成可能なプリンターである。画像形成装置10は、入力された画像データをトナーなどの印刷材料を用いて、パルプなどの植物繊維で構成された印刷用紙P(記録媒体の一例)に印刷するものである。なお、画像形成装置10はプリンターに限られず、ファクシミリや複写機などの専用機であっても、本発明は適用可能である。
【0012】
画像形成装置10は、不図示のネットワーク通信部を介して外部から入力された画像データに基づいて、印刷用紙Pに画像を印刷する。例えば、パーソナルコンピューターなどの装置から印刷ジョブが転送されると、その印刷ジョブに含まれる画像データ及び印刷条件に基づいて、印刷用紙Pに画像を印刷する。或いは、不図示のスキャナーによって読み取られた画像データに基づいて印刷用紙Pに画像を印刷する。
【0013】
図1及び
図2に示されるように、画像形成装置10は、主として、電子写真方式の画像形成部18(本発明の画像形成部の一例)、定着部19、給紙装置15、カール矯正部60(本発明のカール矯正部の一例)、用紙センサー20、画像形成装置10を統括的に制御する制御部90などを備えている。また、画像形成装置10は、搬送用モーター56及び排出用モーター57(
図5参照)を備えている。これらは、画像形成装置10の外枠のカバーや内部フレーム16(
図4参照)を構成する筐体14の内部に設けられている。
【0014】
図2に示されるように、給紙装置15は、画像形成装置10の最下部に設けられている。給紙装置15は、用紙トレイ50と、ピックアップローラー51と、給送ローラー52とを備えている。用紙トレイ50は、画像形成部18によって画像が形成される印刷用紙Pを積載するものである。用紙トレイ50は、筐体14に支持されている。ピックアップローラー51及び給送ローラー52は、用紙トレイ50の正面側の上側に設けられている。画像形成装置10に対して印刷用紙Pの給送動作を開始する指示が入力されると、搬送用モーター56(
図5参照)が回転駆動される。これにより、ピックアップローラー51及び給送ローラー52が回転される。そして、ピックアップローラー51によって、用紙トレイ50から印刷用紙Pが給送される。ピックアップローラー51によって給送された印刷用紙Pは、給送ローラー52によって印刷用紙Pの給送方向の下流側へ搬送される。具体的には、給送ローラー52によって上方へ印刷用紙Pが送り出されると、印刷用紙Pは、給送ローラー52から画像形成部18に至る搬送路26を通って後方へ向きを変えられた後に、画像形成部18へ向けて搬送される。
【0015】
搬送路26に用紙センサー20が設けられている。詳細には、用紙センサー20は、搬送路26において、画像形成部18の転写部35の手前に配置されている。用紙センサー20は、搬送路26を通過する印刷用紙Pの先端を検知するためのものであり、例えば、投光タイプの光センサーである。用紙センサー20の配置位置に対応した搬送路26中の検知位置を印刷用紙Pの先端が通過すると、用紙センサー20から制御部90へ出力される信号が変化する。この信号の変化を受けることにより、制御部90は印刷用紙Pの先端の位置を判定できる。
【0016】
画像形成部18は、入力された画像データに基づいて、搬送路26を搬送される印刷用紙Pの両面のいずれか一方の面に画像を形成する。画像形成部18は、トナーなどの印刷材料を用いて印刷用紙Pにトナー像を転写する。具体的には、画像形成部18は、
図2に示されるように、感光体ドラム31と、帯電部32と、現像部33と、LSU(Laser ScannerUnit)34と、転写部35と、クリーニング部36と、を備えている。感光体ドラム31は搬送路26の上側に設けられている。画像形成動作が開始されると、帯電部32によって感光体ドラム31の表面が一様の電位に帯電される。また、LSU34から感光体ドラム31に対して画像データに応じたレーザー光が走査される。これにより、感光体ドラム31に静電潜像が形成される。その後、現像部33によって静電潜像にトナーが付着されて、感光体ドラム31にトナー像が形成される。そして、そのトナー像が転写部35によって、搬送路26を搬送される印刷用紙Pに転写される。このとき、トナー像は、感光体ドラム31に対向する面(搬送路26を搬送する印刷用紙Pの上側の面)に転写される。トナー像が転写された印刷用紙Pは、画像形成部18から定着部19までの間に形成された搬送路27へ送り出される。そして、その印刷用紙Pは、画像形成部18よりも印刷用紙Pの搬送方向の下流側(つまり後方側)に配置された定着部19に搬送される。
【0017】
定着部19は、印刷用紙Pに転写されたトナー像を熱によってその印刷用紙Pに定着させる。定着部19は、加熱ローラー41と加圧ローラー42とを備える。加圧ローラー42は、バネなどの弾性部材によって加熱ローラー41側へ付勢されている。これにより、加圧ローラー42は加熱ローラー42に圧接される。加熱ローラー41は、定着動作時にヒーターなどの加熱手段によって高温に加熱される。印刷用紙Pが定着部19を通過する際に加熱ローラー41によって前記トナー像を構成するトナーが加熱されて溶融され、また、加圧ローラー42によって印刷用紙Pが加圧される。これにより、定着部19によって印刷用紙Pにトナーが定着される。これにより、トナー像が印刷用紙Pに定着して、印刷用紙Pに画像が形成される。
【0018】
定着部19では、印刷用紙Pが高温に加熱された状態で加圧されつつ搬送される。このため、印刷用紙Pにカールが生じる場合がある。カールには、
図2において印刷用紙Pの上面側へカールする上カールと、印刷用紙Pの下面側へカールする下カールとがある。カールの向き(カールの方向)は、例えば、印刷用紙Pに形成された画像の濃度、つまり、印刷用紙Pに定着されたトナーの量によって変わる。例えば、片面だけに画像が形成される片面印刷が行われる場合は、片面だけにトナーが定着される。そのため、溶融されたトナーが固まる際に、トナーが定着された画像形成面の方向に印刷用紙Pがカールしやすくなる。また、両面に画像が形成される両面印刷が行われる場合は、それぞれの面における画像の濃度によってカールの向きが変わる。例えば、濃度が高い面、つまりトナーの量が多い面側へ印刷用紙Pがカールする傾向がある。また、カールの強弱(大きさ)は、一般に、画像濃度が高いほど大きく、低いほど小さい傾向がある。なお、印刷用紙Pに付けられたカールは、搬送路28に設けられた後述のカール矯正部60によって矯正される。
【0019】
定着部19よりも印刷用紙Pの搬送方向の下流側には、搬送路28が設けられている。搬送路28の終端には、印刷用紙Pが排出される用紙排出口22が設けられている。つまり、搬送路28は、定着部19から用紙排出口22までの間に設けられている。定着部19において画像が定着された印刷用紙Pは、搬送路28に搬送される。搬送路28は、定着部19から上方へ向けて湾曲した後に鉛直方向へ延出されている。搬送路28には、排出用モーター57(
図5参照)によって双方向へ回転される複数の排出ローラー対23が設けられている。搬送路28に搬送された印刷用紙Pは、排出用モーター57により正転方向へ回転される排出ローラー対23によって搬送路28を通って上方へ搬送されて、用紙排出口22から画像形成装置10の上面に設けられた排紙部21へ排出される。
【0020】
画像形成装置10において片面印刷が行われる場合、画像形成部18によって片面に画像が形成された印刷用紙Pは、定着部19及びカール矯正部60を順次通過した後に、搬送路28を通って用紙排出口22から排紙部21へ排出される。
【0021】
一方、画像形成装置10において両面印刷が行われる場合、最初に片面に画像が形成された印刷用紙Pは、定着部19及びカール矯正部60を通過した後、その表裏が反転されて再び印刷用紙Pの搬送方向の上流側から逆方向へ搬送される。そして、前記片面とは反対側の面に画像を形成するために、印刷用紙Pは再び画像形成部18に搬送される。詳細には、片面に画像が形成された印刷用紙Pの先端が用紙排出口22から外部へ露出された状態で、排出ローラー対23が停止される。このとき、印刷用紙Pの後端が用紙排出口22近傍の排出ローラー対23によって挟持された状態で保持される。その後、排出用モーター57(
図5参照)の逆回転駆動によって排出ローラー対23が逆回転されることにより、印刷用紙Pが再び搬送路28を逆方向へ搬送される。つまり、印刷用紙Pは搬送路28を逆送される。
図2に示されるように、画像形成装置10には、反転搬送路29が形成されている。反転搬送路29は、搬送路28から分岐して画像形成部18側から見て印刷用紙Pの搬送方向の上流側の搬送路26に接続する搬送路である。搬送路28と搬送路29との分岐点には、逆送される印刷用紙Pを反転搬送路29へ案内するフィルム状のフラップ38が設けられている。搬送路28を逆送された印刷用紙Pは、フラップ38によって搬送路28から反転搬送路29へ案内される。反転搬送路29には、複数の搬送ローラー対44が設けられている。印刷用紙Pは、搬送ローラー対44によって反転搬送路29を通って、再び搬送路26を経由して画像形成部18に搬送される。このとき、印刷用紙Pは、既に画像が形成された面が下側となり、未だ画像が形成されていない面が上側となった状態で、搬送路26を画像形成部18へ向けて搬送される。画像形成部18に到達した印刷用紙Pは、画像形成部18及び定着部19を再び通過することによって、画像が形成されていない面に画像が形成される。その後、両面に画像が形成された印刷用紙Pは、カール矯正部60を通過した後に、正回転に戻された排出ローラー対23によって搬送路28を通って用紙排出口22から排紙部21へ排出される。このように印刷用紙Pの表裏を反転させて再び画像形成部18よりも印刷用紙Pの搬送方向の上流側へ搬送させるための反転搬送路29や搬送ローラー対44は、本発明の反転搬送部の一例である。
【0022】
[カール矯正部60]
次に、カール矯正部60の構成について具体的に説明する。
図2及び
図3に示されるように、カール矯正部60は、搬送路28に設けられている。より詳細には、カール矯正部60は、搬送路28において、定着部19から反転搬送路29の分岐点までの間に設けられている。このカール矯正部60は、画像形成部18及び定着部19による画像形成後の印刷用紙Pに生じたカールを矯正するものである。
【0023】
図4に示されるように、カール矯正部60は、硬質ローラー61と、軟質ローラー62と、ケーシング65とを備えている。硬質ローラー61及び軟質ローラー62は、本発明の一対のローラー対の一例である。硬質ローラー61及び軟質ローラー62それぞれは、弾性の異なる部材で構成され互いに圧接されている。画像形成部18及び定着部19によって画像が形成された印刷用紙Pが硬質ローラー61と軟質ローラー62との圧接部分に進入すると、硬質ローラー61及び軟質ローラー62は、印刷用紙Pを挟持しつつ搬送する。
【0024】
硬質ローラー61は、軟質ローラー62よりも硬質な材料、例えば、金属等の硬質材料で構成されている。軟質ローラー62は、合成樹脂等の柔軟であり且つ弾性を有する材料で構成されている。ケーシング65は、硬質ローラー61及び軟質ローラー62を収納する。硬質ローラー61の軸61Aと軟質ローラー62の軸62Aは互いに平行である。軸61A,62Aそれぞれは、ケーシング65に設けられた軸受け(不図示)に回転自在に支持されている。硬質ローラー61の外周面は軟質ローラー62の外周面に圧接されている。そのため、軟質ローラー62において、硬質ローラー61が圧接している部分は、硬質ローラー61によって円弧形状に凹まされている。したがって、硬質ローラー61及び軟質ローラー62によって印刷用紙Pが挟持されつつ搬送された場合に、印刷用紙Pがカール方向とは逆方向に円弧形状に変形されることで、印刷用紙Pに生じたカールが矯正され得る。
【0025】
ケーシング65には、直径方向の搬送路67(
図3参照)が形成されている。この搬送路67はカールした印刷用紙Pが進入できるような大きさ及び幅に形成されている。また、搬送路67における印刷用紙Pの入口と出口になる両側の開口部はロート状のような末広がり形状に形成されている。搬送路67の中間部に硬質ローラー61と軟質ローラー62が圧接状態で突出している。
【0026】
カール矯正部60のケーシング65は、軸61A,62Aに平行な軸65Aを有する。カール矯正部60は、硬質ローラー61及び軟質ローラー62の配置を逆転可能なように、軸65Aを中心に回動可能に支持されている。具体的には、カール矯正部60のケーシグ65は、その中心に設けられた両側の軸65Aによって、画像形成装置10の内部フレーム16に回転自在に支持されている。つまり、軸65A及びそれを支持する内部フレーム16によって、カール矯正部60は軸65Aを中心に回動可能に支持されている。これにより、カール矯正部60は、外部から駆動力を伝達されると、軸65Aを中心に回動可能になる。なお、軸65A及びそれを支持する内部フレーム16による支持機構が、本発明の回動支持部の一例である。
【0027】
軸65Aには歯車66が取り付けられている。内部フレーム16には、ケーシング回転用モーター70(本発明の駆動部の一例)が取り付けられている。ケーシング回転用モーター70は、カール矯正部60に回転駆動力を供給して、軸65Aを中心にカール矯正部60を回動させるものである。ケーシング回転用モーター70の出力軸には歯車71が取り付けられており、この歯車71は歯車66に噛合している。このため、ケーシング回転用モーター70が回転駆動されると、硬質ローラー61及び軟質ローラー62を内蔵したままケーシング65が軸65Aを中心に回動する。
【0028】
硬質ローラー61の軸61Aの一方の端部には歯車61Bが取り付けられている。フレーム16には、硬質ローラー回転用モーター75が取り付けられている。硬質ローラー回転用モーター75は、軸61Aを中心に硬質ローラー61を回転させるものである。硬質ローラー回転用モーター75の出力軸には歯車76が取り付けられており、この歯車76は歯車61Bに噛合している。このため、硬質ローラー回転用モーター75が回転駆動されると、硬質ローラー61が回転する。
【0029】
上述したように軟質ローラー62は、ケーシング65に回転自在に支持されており、硬質ローラー61に圧接されている。そのため、軟質ローラー62は、硬質ローラー61の回転によって、硬質ローラー61との接触部分が円弧形状に凹まされた状態で従動回転(連れ回り)する。本実施形態では、一対のローラーのうち、硬質ローラー61のみが回転される。これにより、硬質ローラー61及び軟質ローラー62の双方に駆動力を供給して回転させる構造に比べて構造的に簡単である。また、駆動源であるローラー回転用モーター75が、ケーシング65の内部に設けられているので、この点でもコンパクトで、構造的にも簡単である。
【0030】
また、カール矯正部60は、印刷用紙Pの搬送をするガイドとしての機能も有する。そのため、
図3に示されるように、カール矯正部60は、定着部19よりも印刷用紙Pの搬送方向の下流側に設けられている。そして、定着部19から搬送された印刷用紙Pは、ケーシング65内の搬送路67に進入し、硬質ローラー61と軟質ローラー62とによって挟持されつつ、更に印刷用紙Pの搬送方向の下流側へ搬送される。
【0031】
なお、上述したように、カール矯正部60は、硬質ローラー61及び軟質ローラー62の配置を逆転可能なように軸65Aを中心に回動可能に支持されている。本実施形態では、後述するカール矯正処理が制御部90によって実行されることにより、印刷用紙Pのカールの方向が正確に判定される。そして、印刷用紙Pのカールを矯正可能なように、カール矯正部60が予め定められた第1位置と第2位置のいずれかの位置に回動される。具体的には、カール矯正部60は、軟質ローラー62が加熱ローラー41側に配置される第1位置(
図3に示される位置)と、硬質ローラー61が加熱ローラー41側に配置される第2位置との間で回動される。なお、カール矯正処理については後述する。
【0032】
[制御部90の構成]
制御部90は、画像形成装置10を統括制御するものである。
図2に示されるように、制御部90は、CPU91、ROM92、RAM93、EEPROM94などで構成されている。なお、制御部90は、集積回路(ASIC、DSP)などの電子回路で構成されたものであってもよい。
【0033】
制御部90は、画像形成装置10の内部において、画像形成部18、定着部19、給紙装置15などに接続されており、これらの構成要素を制御する。また、
図5に示されるように、制御部90は、モータードライバー95〜97に接続されている。モータードライバー95は、制御部90からの制御信号を受けて、搬送用モーター56及び排出用モーター57の回転方向及び回転速度を制御する。モータードライバー96は、制御部90からの制御信号を受けて、ケーシング回転用モーター70の回転方向及び回転速度を制御する。モータードライバー97は、制御部90からの制御信号を受けて、硬質ローラー回転用モーター75の回転方向及び回転速度を制御する。
【0034】
本実施形態では、制御部90は、ROM92内の制御プログラムがCPU91によって実行されることにより、濃度取得部82、カール方向判定部83、回動制御部84(
図5参照)として機能する。
【0035】
濃度取得部82は、印刷用紙Pの画像形成面が複数に分割された領域P1〜P5(
図6参照、本発明の分割領域の一例)ごとに画像の濃度値を測定する。これにより、濃度取得部82は、領域P1〜P5ごとに画像の濃度値を取得する。本実施形態では、
図6に示されるように、印刷用紙Pにおいて、カール矯正部60の硬質ローラー61及び軟質ローラー62による印刷用紙Pの搬送方向(白抜き矢印の方向)の下流側の端部P21(本発明の第1端部に相当)から上流側の端部P22(本発明の第2端部に相当)へ向けて5つに分割された複数の領域P1〜P5が定められている。濃度取得部82は、領域P1〜P5ごとに画像の濃度値を取得する。画像の濃度値は、画像形成時に入力された画像データから画像濃度を得ることができる。取得された領域P1〜P5それぞれの濃度値は、RAM93に一時的に記憶される。ここで、
図6において、二点鎖線で囲まれている部分が領域P1〜P5である。
【0036】
カール方向判定部83は、画像形成後の印刷用紙Pのカールの方向を判定する。具体的には、片面印刷が行われる場合は、片面印刷による画像形成面だけに画像が形成される。そのため、カール方向判定部83は、画像が形成された面側に印刷用紙Pがカールすると判定する。
【0037】
また、カール方向判定部83は、画像形成部18によって両面に画像が形成された印刷用紙Pのカールの方向を判定する。具体的には、印刷用紙Pの両面それぞれの画像濃度に基づいて、両面に画像が形成された印刷用紙Pのカール方向を判定する。一般に、両面印刷が行われた場合は、画像が形成された両方の面のうち、画像濃度が高い方の面側に印刷用紙Pがカールする傾向がある。そのため、カール方向判定部83は、入力された画像データから両面それぞれの画像濃度を得ることができるから、両面それぞれの画像データを比較することにより、画像濃度の高い方の面を判別し、その面側へ印刷用紙Pがカールしていると判定する。
【0038】
本実施形態では、
図7(A)に示されるように、印刷用紙Pの画像形成面は、複数の領域P1〜P5に予め区分けされる。そして、印刷用紙Pの画像形成面の領域P1〜P5それぞれに対応して固有の重み係数K1〜K5が設定されている。例えば、領域P1の重み係数はK1、領域P2の重み係数はK2、領域P3の重み係数はK3,領域P4の重み係数はK4、領域P5の重み係数はK5である。この場合、カール方向判定部83は、両面に画像が形成された印刷用紙Pのそれぞれの面における各領域ごとに後述の判定値を求め、印刷用紙Pの両面それぞれごとに各領域の判定値の合計値を求め、その合計値が大きい面の方向をカールの方向と判定する。
【0039】
ここで、前記判定値は、領域P1〜P5ごとに求められるものである。具体的には、前記判定値は、濃度取得部82によって取得された領域P1〜P5それぞれの画像の濃度値に、各領域に対応する前記重み係数K1〜K5を乗じて得られた値である。例えば、領域P1の前記判定値は、領域P1の濃度値に重み係数K1を乗じた値である。同様に、領域P2の前記判定値は、領域P2の濃度値に重み係数K2を乗じた値である。この判定値が印刷用紙Pの両面ごとに求められる。
【0040】
前記重み係数K1〜K5は、印刷用紙Pの搬送方向の上流側及び下流側の両方の端部が中央部に比べてカールし易いことに鑑みて、搬送方向の中央部の領域P3から搬送方向の両方の端部へ向かうにしたがって大きい値に設定されている。具体的には、
図7(A)に示されるように、重み係数K3は「1」、重み係数K2,K4は「2」、重み係数K1,K5は「3」に設定されている。これら重み係数K1〜K5は、制御部90のEEPROM94に記憶されている。
【0041】
例えば、
図7(B)に示されるように、印刷用紙Pの上面の領域P1,P5それぞれに濃度レベル10%の画像が形成され、印刷用紙Pの下面の領域P3に濃度レベル30%の画像が形成されている画像例について検討する。この画像例において、前記重み係数K1〜K5を考慮せずに両面それぞれの前記判定値の合計値を求めると、下面の合計値の方が大きくなる。したがって、この場合、カール方向判定部83は、印刷用紙Pが下面側にカールしていると判定することになる。しかしながら、
図7(B)に示す画像例では、印刷用紙Pの下面において最もカールし難い領域P3に濃度レベル30%の画像が形成されており、印刷用紙Pの上面において最もカールし易い領域P1,P5に濃度レベル10%の画像が形成されている。そのため、印刷用紙Pにおける実際のカール方向は、上面側の方向となる傾向が強い。このため、本実施形態では、上述したように、重み係数K1〜K5を反映して印刷用紙Pの両面それぞれの前記判定値の合計値を求めて、カールの方向を判定している。具体的には、
図7(B)に示す画像例の場合は、印刷用紙Pの上面の領域P1,P2それぞれの濃度レベル10%に重み係数「3」を乗じて得られたそれぞれの判定値「30%」を合算して上面の判定値の合計値「60%」を求める(
図7(C)参照)。また、印刷用紙Pの下面の領域P3の濃度レベル30%に重み係数「1」を乗じて得られた判定値「30%」を下面の合計値「30%」として求める(
図7(C)参照)。そして、カール方向判定83は、それぞれの合計値を比較して、合計の大きい面の方向、つまり、
図7(B)の画像例では、印刷用紙Pの上面の方向をカールの方向と判定する。
【0042】
回動制御部84は、モータードライバー96を介してケーシング回転用モーター70を駆動制御してカール矯正部60を回動させる。具体的には、回動制御部84は、カール方向判定部83によって判定されたカールの方向とは逆の方向へ印刷用紙Pのカールを矯正可能な前記第1位置又は前記第2位置のいずれかの位置にカール矯正部60のケーシング65を回動させる。
【0043】
[カール矯正処理]
以下、
図8のフローチャートを用いて、制御部90によって実行されるカール矯正処理の手順について説明する。
図8におけるS11、S12、…は処理手順(ステップ)の番号を表している。これらの手順にしたがってカール矯正処理が制御部90によって実行されることにより、印刷用紙Pのカールの方向を正確に判定することができ、そのカールを矯正可能な位置にカール矯正部60の位置を変えることにより、カール矯正部60によって印刷用紙Pのカールを確実に除去することができる。なお、以下の説明では、画像形成装置10は、画像形成指示と共に画像データが画像形成装置10に入力されている状態であるとする。また、片面印刷時に画像が形成される面、及び両面印刷時に最初に画像が形成される面を第1面と称する。また、両面印刷時に2回目に画像が形成される面を第2面と称する。
【0044】
ステップS11において、制御部90は、入力された画像形成指示に基づいて、次の画像形成処理が両面印刷であるかどうかを判定する。具体的には、制御部90は、前記画像形成指示として外部から印刷ジョブが入力された場合に、その印刷ジョブに含まれる印刷条件として両面印刷が設定されているかどうかによって判定する。
【0045】
ステップS11において、両面印刷であると判定されると、制御部90は、処理をステップS12に移行させて、第1面印刷を実行する。ここで、前記第1面印刷とは、印刷用紙Pの前記第1面に対する画像形成処理のことである。本実施形態では、前記第1面印刷時に、制御部90は、印刷用紙Pのカールの方向を判定せず、カール矯正部60を初期位置に配置させたまま、前記第1面印刷を実行する。ここで、カール矯正部60の初期位置は、第1面印刷時に軟質ローラー62が前記第1面側となる位置、つまり、前記第1位置である。前記第1面印刷が行われる場合は、片面だけに画像が形成されるから、印刷用紙Pは第1面側にカールする。そのため、第1面側へのカールを除去可能な前記第1位置をカール矯正部60の初期位置としている。
【0046】
一方、ステップS11において、両面印刷ではない、つまり、片面印刷であると判定されると、制御部90は、印刷用紙Pのカールの方向を判定せず、カール矯正部60を初期位置に配置させたまま、画像形成処理を実行する。
【0047】
ステップS12において前記第1面印刷が開始されると、次のステップS13では、制御部90は、入力された画像データに基づいて印刷用紙Pの両面(第1面及び第2面)それぞれの領域P1〜P5ごとの濃度値を取得する。この濃度値は、制御部90の濃度取得部82によって取得される。両面印刷が行われる場合は、前記第1面に形成される画像データと前記第2面に形成される画像データが画像形成装置10に入力されている。そのため、制御部90は、それぞれの画像データに含まれる画像濃度情報から、各面の各領域P1〜P5の画像の濃度値を取得できる。なお、濃度値の取得方法については、様々な方法が採用可能であり、例えば、画像形成時にカウントされるドットカウント値に基づいて濃度値を取得することも可能である。また、画像形成後の紙面の濃度を検知する濃度センサーが設けられている場合は、その濃度センサーからの出力信号に基づいて濃度値が取得されてもよい。
【0048】
次のステップS14では、制御部90は、印刷用紙Pの前記第1面の領域P1〜P5それぞれの前記判定値を算出する。具体的には、前記第1面の領域P1〜P5の各濃度値に重み係数K1〜K5が乗じて得られた判定値が算出される。また、ステップS15では、制御部90は、印刷用紙Pの前記第2面の領域P1〜P5それぞれの前記判定値を算出する。具体的には、前記第2面の領域P1〜P5の各濃度値に重み係数K1〜K5が乗じて得られた判定値が算出される。
【0049】
そして、次のステップS16では、制御部90は、前記第1面印刷によって第1面に画像が形成された印刷用紙Pがカール矯正部60を通過したかどうかを判定する。具体的には、制御部90は、用紙センサー20からの信号に基づいて印刷用紙Pの先端の位置を検知してから、印刷用紙Pの後端がカール矯正部60に達するまでの距離だけ印刷用紙Pを搬送させた場合に、その搬送量に基づいて印刷用紙Pがカール矯正部60を通過したと判定する。なお、印刷用紙Pがカール矯正部60を通過することにより、カール矯正部60の回動が可能となる。
【0050】
次のステップS17では、制御部90は、ステップS14で算出された前記第1面の判定値を合算してその合計値(以下「第1合計値」と称する。)を求める。また、制御部90は、ステップS15で算出された前記第2面の判定値を合算してその合計値(以下「第2合計値」と称する。)を求める。そして、制御部90は、これらの合計値を比較して、前記第1合計値が前記第2合計値よりも大きいかどうかを判定する。
【0051】
ここで、前記第1合計値が大きい場合は、第2面印刷(第2面への画像形成処理)が行われて両面に画像が形成されたとしても、前記第2面印刷後の印刷用紙Pが前記第1面側へカールする傾向が強い。したがって、制御部90は、前記第1合計値が前記第2合計値よりも大きい場合に、印刷用紙Pが前記第1面側へカールしていると判定する。かかる判定を行う制御部90は、本発明のカール方向判定部の一例である。この場合、前記第2面印刷が行われる前に反転搬送路29によって印刷用紙Pが反転されている。そのため、前記第2面印刷時に搬送路27を搬送される印刷用紙Pは前記第1面側、つまり、
図2において下向きにカールしている。したがって、ステップS17において前記第1合計値が前記第2合計値よりも大きいと判定された場合は、制御部90は、ステップS18において、カール矯正部60を前記第2位置(硬質ローラー61が加熱ローラー41側に配置される位置)に配置する。具体的には、制御部90は、モータードライバー96に制御信号を供給して、ケーシング回転用モーター70を駆動させる。これにより、制御部90は、ケーシング65を回転させて、カール矯正部60を初期位置の前記第1位置から前記第2位置まで回動させる。その後、制御部90は、処理をステップS20に移行する。
【0052】
一方、前記第1合計値が前記第2合計値よりも小さい場合は、前記第2面印刷が行われることにより前記第2面側へ印刷用紙Pがカールする傾向が強い。したがって、制御部90は、前記第1合計値が前記第2合計値よりも小さい場合に、印刷用紙Pが前記第2面側へカールしていると判定する。かかる判定を行う制御部90は、本発明のカール方向判定部の一例である。この場合、前記第2面印刷時に搬送路27を搬送される印刷用紙Pは前記第2面側、つまり、
図2において上向きにカールしている。したがって、ステップS17において前記第1合計値が前記第2合計値よりも小さいと判定された場合は、制御部90は、ステップS19において、カール矯正部60を前記第1位置(軟質ローラー62が加熱ローラー41側に配置される位置)に配置する。その後、制御部90は、処理をステップS20に移行する。なお、カール矯正部60を前記第1位置または前記第2位置に回動させる回動制御を行う制御部90が、本発明の回動制御部の一例である。
【0053】
次のステップS20では、制御部90は、前記第2面印刷を実行する。その後、次の画像形成準備を整えるために、前記第2面印刷によって第2面に画像が形成された印刷用紙Pがカール矯正部60を通過した後に、カール矯正部60を前記第1位置に配置する(S21)。そして、次のステップS22において、次ページの印刷がある場合は、制御部90はステップS12に戻り、ステップS12以降の処理を繰り返す。一方、次ページの印刷がない場合は、制御部90は、一連の処理を終了する。
【0054】
[実施形態の作用効果]
以上説明したように、本実施形態に係る画像形成装置10においては、制御部90は、両面に画像が形成された印刷用紙Pに生じるカールの方向を正確に判定することができる。このため、印刷用紙Pのカールを矯正可能な位置(第1位置または第2位置)にカール矯正部60を配置させて、印刷用紙Pに生じたカールを確実に除去することができる。
【0055】
なお、上述の実施形態では、印刷用紙Pの領域P1〜P5を設定し、その領域ごとに前記判定値を求めて、その合計値を印刷用紙Pの両面それぞれごとに比較する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、印刷用紙Pを5つ未満の領域または6つ以上の領域に分割して、それぞれの領域ごとに前記判定値及びそれらの合計値を求めて両面それぞれごとに前記合計値を比較するようにしてもよい。また、印刷用紙Pに分割領域を設定せずに、印刷用紙Pの前記第1面及び前記第2面それぞれの全域の濃度値に基づいて印刷用紙Pのカールの方向を判定するようにしてもよい。この場合、後に実行される前記第2面印刷によって画像が形成される前記第2面の重み係数を前記第1面の重み係数よりも大きくすることが好ましい。
【0056】
また、領域P1〜P5それぞれの重み係数K1〜K5は、上述の実施形態で示した数値に限定されない。例えば、両面に画像が形成された後の複数の印刷用紙Pに対して、用紙排出口22から排出される排出方向の先端を基準にして印刷用紙Pを整合する処理や、ステープル処理、パンチ処理などの所定の後処理が行われる場合がある。この場合は、印刷用紙Pの前記排出方向の先端側の領域の重み係数を他の領域の重み係数よりも大きくすることが考えられる。つまり、印刷用紙Pの全体のカールよりも印刷用紙Pの前記排出方向の先端側のカールを除去することを重視して、印刷用紙Pの先端部のカール方向を正確に判定できるように、先端側の領域の重み係数を大きくする。同様に、両面に画像が形成された後の複数の印刷用紙Pに対して、用紙排出口22から排出される排出方向の後端を基準にして前記所定の後処理が行われる場合は、印刷用紙Pの前記排出方向の後端側の領域の重み係数を他の領域の重み係数よりも大きくすることが考えられる。また、前記第2面に画像が形成されてから用紙排出口22までの搬送路28が湾曲しており、その湾曲によって印刷用紙Pにカールが付けられる場合がある。この場合は、湾曲した搬送路28によるカール付けを打ち消すことができるように、搬送路28によるカール方向とは反対側の面の全体の重み係数を他方の面の重み係数よりも大きくすることが考えられる。
【0057】
本開示の範囲は、請求項の記載に先行する詳細な説明ではなく、添付の請求項の記載により定義されるので、本明細書に記載の実施形態は、例示に過ぎず、かつ非限定的であると理解されたい。従って、特許請求の範囲から逸脱しない変更の全て、または均等物が、請求の範囲に含まれる。