(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記燃料噴射孔における前記液体燃料の噴射角度を、前記複数のメインバーナの間で異ならせることによって前記噴射パターンを異ならせたことを特徴とする請求項1に記載のガスタービン燃焼器。
前記メインノズルにおける前記燃料噴射孔の位置を、前記各メインバーナの間で異ならせることによって前記噴射パターンを異ならせたことを特徴とする請求項1に記載のガスタービン燃焼器。
前記メインノズルにおける前記燃料噴射孔の数量を、前記各メインバーナの間で異ならせることによって前記噴射パターンを異ならせたことを特徴とする請求項1に記載のガスタービン燃焼器。
前記メインノズルにおける前記燃料噴射孔の孔径を、前記各メインバーナの間で異ならせることによって前記噴射パターンを異ならせたことを特徴とする請求項1に記載のガスタービン燃焼器。
前記予混合ノズルに対する前記メインノズルの位置を、軸方向および周方向の少なくとも一方向に変更可能にすることによって前記噴射パターンを異ならせたことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のガスタービン燃焼器。
空気を圧縮する圧縮機と、該圧縮機において圧縮された前記空気に燃料を噴き込んで燃焼させる請求項1から6のいずれか1項に記載のガスタービン燃焼器と、該ガスタービン燃焼器から噴出する燃焼ガスの膨張によって駆動されるタービンとを備えることを特徴とするガスタービン機関。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全への関心の高まりとともに、窒素酸化物(NOx)等のエミッション低減が求められている。ガスタービン機関においても例外ではなく、特に燃焼器に関する種々の研究開発が進められている。
【0003】
多くのガスタービン機関に広く適用されている予混合燃焼方式の燃焼器は、燃焼筒の中心部にパイロットバーナが配置され、このパイロットバーナの周囲を取り囲むように複数のメインバーナが配置されている。ガスタービン機関には、LNG等の気体燃料を燃焼させるものと、灯油やA重油等の液体燃料を燃焼させるものとがある。
【0004】
気体燃料、液体燃料、いずれの燃料を用いる燃焼器においても、メインバーナの予混合ノズルにおいて、圧縮空気の流れの中に燃料を噴き込むことにより、予め圧縮空気と燃料との混合気を生成し、この混合気がパイロットバーナから噴射される火炎に着火されて燃焼し、高温・高圧な燃焼ガスを生成させて後流側のタービンを駆動する。このように、圧縮空気と燃料とを予め混合させることにより、空気量と燃料量との比を比較的自由に調整でき、燃焼における空気比(空気過剰率)を増大させることができるため、燃焼温度を低下させてNOxの生成量を低減することができる。
【0005】
ところが、予混合燃焼方式のガスタービン燃焼器では、燃焼振動が発生しやすい。燃焼振動が生じると燃焼圧力の変動幅が増幅されて燃焼が不安定になるとともに、燃焼器の圧力の周期的変動による低サイクル振動や騒音が発生するようになる。
【0006】
燃焼振動は、燃焼により燃焼器内に周期的圧力変動が生じ、この圧力変動周期が燃焼器の流体力学的固有振動数と一致したような場合に生じる。特に、従来では、複数のメインバーナから噴射される火炎の形状が全て同一形状となるように設計されていたため、各メインバーナから噴射される噴射火炎による発熱位置が燃焼器の軸方向の同一位置に集中しやすく、この発熱集中領域では温度上昇による急激な燃焼ガスの圧力上昇が生じ、その圧力波が燃焼器内に伝播するようになり、燃焼器内で共鳴して燃焼振動が励起されやすい状態となる。
【0007】
このような燃焼振動を抑制するようにしたガスタービン燃焼器が特許文献1,2に開示されている。
特許文献1に開示されているガスタービン燃焼器は、2つ以上の予混合管に設けられたスワーラのスワール角度を異ならせることにより、各予混合管から燃焼室内に噴射される火炎の長さ(形状)を異ならせ、噴射火炎による発熱位置が燃焼器の軸方向の同一位置に集中することを回避することにより燃焼振動を抑制している。
【0008】
また、特許文献2に開示されているガスタービン燃焼器は、複数のメインノズル(予混合ノズル)の下流側に接続されている楕円延長管の形状を異ならせることにより、全部のメインノズルからの予混合気が燃焼器の軸線方向の同一位置で着火、燃焼することを防止して、噴射火炎による発熱位置の集中を防止し、燃焼振動を抑制している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記の特許文献1,2に開示されている従来のガスタービン燃焼器は、ガス燃料を使用するガスタービン燃焼器においては少なからず貢献をもたらすが、液体燃料を使用するガスタービン燃焼器においては、複数の予混合ノズルの間における圧縮空気と液体燃料との混合気の濃度分布を変化させなければ火炎の長さ(形状)に差が出にくいため、大きな効果をもたらすことができなかった。
【0011】
しかも、特許文献1のように予混合管に設けられたスワーラのスワール角度を異ならせたり、特許文献2のように楕円延長管の形状を異ならせたりするのは、ガスタービン燃焼器の構造を大きく変更することになるため、例えば既存のガスタービン燃焼器に改造を施すのに多大なコストが掛かってしまう。
【0012】
しかも、特許文献1,2のガスタービン燃焼器では、各メインノズル(メインバーナ)の間で流入空気の経路の形状が異なってしまうため、空気の形状圧力損失が変化し、空気配分に偏りが生じる可能性がある。そのため、空気量が少ないメインノズルでは平均火炎速度が高くなり、燃焼器全体としてNOxの生成量が増加する傾向がある。
【0013】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、液体燃料を使用する場合において、簡素でコストパフォーマンスの高い構成により、NOxの生成量を低減させるとともに、燃焼振動の発生を防止することができるガスタービン燃焼器およびこれを備えたガスタービン機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
即ち、本発明に係るガスタービン燃焼器は、燃焼筒の中心部に配置されたパイロットバーナと、前記パイロットバーナの周囲を取り囲むように配置された複数のメインバーナと、を備え、前記メインバーナは、円筒状の予混合ノズルの中心部にメインノズルが設置されて、前記メインノズルの周辺に設けられた燃料噴射孔から、前記予混合ノズルの下流側に接続された延長ノズルの内面に向かって液体燃料が噴射される構成であり、前記燃料噴射孔から前記延長ノズルの内面に向かって噴射される前記液体燃料の噴射パターンが、前記複数のメインバーナの間で異なるように設定されていることを特徴とする。
【0015】
このガスタービン燃焼器によれば、複数のメインバーナの間で液体燃料の噴射パターンが異なっているため、これら各メインバーナの間における圧縮空気と液体燃料との混合気の濃度分布を変化させることができ、これによって各メインバーナから噴射される燃焼火炎の長さおよび形状に差を持たせ、複数の燃焼火炎による発熱分布および最高発熱点が燃焼器の軸方向の同一位置に集中することを防止して、燃焼振動を抑制することができる。
【0016】
しかも、複数のメインバーナの間で流入空気の経路の形状が同一形状に保たれるため、空気の形状圧力損失が変化することがなく、空気配分に偏りが生じない。したがって、空気量が少ない特定のメインバーナで平均火炎速度が高くなることによるNOxの生成が抑制され、燃焼器全体としてNOxの生成量を低減させることができる。
【0017】
前記複数のメインバーナの間で前記燃料噴射孔から噴射される前記液体燃料の噴射パターンを異ならせる構造として、前記燃料噴射孔における前記液体燃料の噴射角度を、前記複数のメインバーナの間で異ならせることが考えられる。
【0018】
また、同じく前記液体燃料の噴射パターンを異ならせる構造として、前記メインノズルにおける前記燃料噴射孔の位置を、前記各メインバーナの間で異ならせることも考えられる。ここで言う燃料噴射孔の位置とは、燃料噴射孔のメインノズルにおける軸方向位置、周方向位置、そして燃料噴射孔の設置パターン等が考えられる。
【0019】
同じく前記液体燃料の噴射パターンを異ならせる構造として、前記メインノズルにおける前記燃料噴射孔の数量を、前記各メインバーナの間で異ならせることが考えられる。
【0020】
同じく前記液体燃料の噴射パターンを異ならせる構造として、前記メインノズルにおける前記燃料噴射孔の孔径を、前記各メインバーナの間で異ならせることが考えられる。
【0021】
上記のように、メインノズルにおける燃料噴射孔の燃料噴射角度や、燃料噴射孔の位置、燃料噴射孔の数量、燃料噴射孔の孔径等を、各メインバーナの間で異ならせるようにすれば、簡素でコストの安い構成により、複数のメインバーナの間で液体燃料の噴射パターンを異なせて、各メインバーナから噴射される燃焼火炎の長さや形状に差を持たせ、複数の燃焼火炎による発熱分布(最高発熱点)が燃焼器の同一位置に集中することを防止して燃焼振動を抑制することができる。
【0022】
また、前記の各構成において、前記予混合ノズルに対する前記メインノズルの位置を、軸方向および周方向の少なくとも一方向に変更可能にすることによって前記噴射パターンを異ならせるようにしてもよい。
【0023】
上記構成によれば、メインノズル自体における燃料噴射孔の燃料噴射角度、位置、数量、孔径等は不変であっても、メインノズルの位置を軸方向および周方向の少なくとも一方向に変更することにより、燃料噴射孔の位置を軸方向および周方向に変更することができる。このため、複数のメインバーナから噴射される液体燃料の噴射パターンを、より多彩に設定することができる。
【0024】
また、本発明に係るガスタービン機関は、空気を圧縮する圧縮機と、該圧縮機において圧縮された前記空気に燃料を噴き込んで燃焼させる上記いずれかの構成のガスタービン燃焼器と、該ガスタービン燃焼器から噴出する燃焼ガスの膨張によって駆動されるタービンとを備えることを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、液体燃料を使用するガスタービン機関において、各メインノズルに設けられている燃料噴射孔に変更を加える、もしくはメインノズルの軸方向位置や周方向位置に変更を加えるのみの、比較的簡素で安価な構造により、各メインバーナの間における圧縮空気と液体燃料との混合気の濃度分布を変化させて、各メインバーナから噴射される火炎の長さ(形状)に差を持たせ、複数の噴射火炎による発熱位置(発熱分布)が燃焼器の軸方向の同一位置に集中することを防止して、燃焼振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明に係るガスタービン燃焼器およびこれを備えたガスタービン機関よれば、液体燃料を使用するガスタービン燃焼器において、簡素でコストパフォーマンスの高い構成により、燃焼振動の発生を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明に係るガスタービン燃焼器の複数の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態を示すガスタービン燃焼器の縦断面図である。
このガスタービン燃焼器1は、図示しないガスタービン機関に搭載されるものである。ガスタービン機関は、広く周知の通り、空気を圧縮する圧縮機と、該圧縮機において圧縮された空気に燃料を噴き込んで燃焼させるガスタービン燃焼器と、このガスタービン燃焼器から噴出する燃焼ガスの膨張によって駆動されるタービンとを備えており、ガスタービン燃焼器において発生した燃焼ガスのエネルギを利用してタービンを高速で回転駆動し、軸出力を得て発電機等を駆動するものである。そして、上記のガスタービン燃焼器として、本発明に係るガスタービン燃焼器1が用いられている。
【0030】
ガスタービン燃焼器1は、その外周部をなす燃焼筒2と、この燃焼筒2の中心軸線Cに沿って配置された1基のパイロットバーナ3と、このパイロットバーナ3の周囲を取り囲むように等間隔に配置された複数基(例えば8基)のメインバーナ4とを備えた典型的な予混合方式の構成を持つものである。なお、図示しない圧縮機で圧縮された圧縮空気Aは、ガスタービン燃焼器1(燃焼筒2)の内部を、
図1に向かって左側から右側に向かって流れる。
【0031】
パイロットバーナ3は、その軸心部に軸状のパイロットノズル5を備えている。このパイロットノズル5の下流側の先端部には複数の燃料噴射孔6が穿設されている。また、パイロットノズル5の周囲を、間隔を開けて取り巻くように略ファンネル状のパイロットノズル外筒7が装着されている。このパイロットノズル外筒7は、その径が圧縮空気Aの流れの下流側に向かって徐々に縮まっている。
【0032】
パイロットノズル外筒7の内周面には、複数の翼状のパイロットスワーラ8が、パイロットノズル5側に向かって起立するように設置されている。これらのパイロットスワーラ8には、同一の方向に傾斜するピッチ角が付与されているため、パイロットノズル外筒7の内部を流れる圧縮空気Aの流れが旋回流(スワール流)となる。
【0033】
また、パイロットノズル5の周囲を覆うようにパイロットコーン9が設けられている。このパイロットコーン9は、圧縮空気Aの流れの下流側に向かって径が拡大する略ファンネル状に形成されており、パイロットコーン9の上流側端部の内側に、パイロットノズル外筒7の下流側端部が、径方向に間隔を空けて短く挿入されている。
【0034】
パイロットノズル外筒7の内部を流れる圧縮空気Aの旋回流(スワール流)には、パイロットノズル5の燃料噴射孔6から液体燃料F1が噴射され、圧縮空気Aが旋回していることによって液体燃料F1との混合が促進される。このように、パイロットバーナ3において圧縮空気Aに液体燃料F1が予め混合されることにより、燃料混合気M1が生成される。
【0035】
燃料混合気M1は、パイロットコーン9から図示しない燃焼領域に向かって噴出し、図示しない種火によって着火され、パイロットコーン9の内部および下流で拡散燃焼が行われる。なお、パイロットコーン9により、パイロットバーナ3から噴射された燃料混合気M1およびその燃焼火炎が遠心方向に拡散することが防止され、後述するメインバーナ4からの燃料混合気M2燃焼火炎に干渉することが防止される。
【0036】
一方、複数のメインバーナ4は、それぞれの軸心部に軸状のメインノズル11を備えている。これらのメインノズル11は、圧縮空気Aの流れの下流側の端部が、先端に向かって細くなるテーパーコーン状である。また、メインノズル11の周囲を覆うように予混合ノズル12が設けられている。予混合ノズル12は略円筒状であり、その上流側の入口部がベルマウス状に拡開され、下流側の出口部には延長ノズル13が接続されている。延長ノズル13は、その予混合ノズル12側の端部の形状が円形であるが、出口側の端部の開口形状は、
図2に示すように燃焼筒2の内周面とパイロットコーン9の外周面とに沿う略扇型の形状となっている。
【0037】
メインノズル11の外周面から放射状に延びる複数の翼状のメインスワーラ14(
図1参照)が予混合ノズル12の内周面に固定されており、これらのメインスワーラ14によってメインノズル11が予混合ノズル12の中心部に固定されている。各メインスワーラ14には、同一の方向に傾斜するピッチ角が付与されているため、各予混合ノズル12の内部を通る圧縮空気Aの流れに同一回転方向の旋回流(スワール流)が発生する。
【0038】
メインノズル11は、その先端付近の円錐外周面に複数の燃料噴射孔15が設けられており、ここから液体燃料F2が噴射される。液体燃料F2は、延長ノズル13の内面13aに向かって斜めに噴射され、内面13aに当たることによって微粒化されて圧縮空気Aに混合される。予混合ノズル12の内部では圧縮空気Aが旋回しているため、圧縮空気Aと液体燃料F2との混合が促進される。
【0039】
このように、メインバーナ4において圧縮空気Aに液体燃料F2が予め混合されることにより、燃料混合気M2が生成され、この燃料混合気M2は、延長ノズル13から図示しない燃焼領域に向かって噴出し、パイロットバーナ3から噴射される燃料混合気M1の燃焼火炎により着火され、燃焼火炎FA1,FA2を生成する。なお、燃料噴射孔15は必ずしもメインノズル11に設けられていなくてもよく、例えばメインスワーラ14の翼面等、要するにメインノズル11の周辺に設けられていればよい。
【0040】
パイロットバーナ3とメインバーナ4から噴出する燃焼火炎の燃焼ガスの膨張圧力によってガスタービン機関の図示しないタービンが駆動され、出力として取り出されるとともに、タービンの主軸と同軸的に設けられた圧縮機が駆動されて圧縮空気Aが供給される。
【0041】
本発明において、メインノズル11に設けられた燃料噴射孔15から延長ノズル13の内面13aに向かって噴射される液体燃料F2の噴射パターンは、複数のメインバーナ4(メインノズル11)の間で異なるように設定されている。
【0042】
具体的には、燃料噴射孔15における液体燃料F2の噴射角度が、各メインバーナ4(メインノズル11)の間で異なっている。例えば、
図1では、上側のメインノズル11の燃料噴射孔15の燃料噴射角度θ1よりも、下側のメインノズル11の燃料噴射孔15の燃料噴射角度θ2の方が狭い角度に設定されている。このため、
図3の下半分の縦断面図にも示すように、燃料噴射角度がθ1の場合とθ2の場合とでは、液体燃料F2が延長ノズル13の内面13aに当たる位置が異なっている。これが即ち噴射パターンの違いとなる。
【0043】
図3に示すように、燃料噴射角度がθ1の場合は、噴射された液体燃料F2が延長ノズル13の内面13aに当たって微粒化される位置が圧縮空気Aの流れの比較的上流側となるため、燃料混合気M2への着火が早まり、燃焼火炎FA1の長さL1が比較的短くなる。また、燃料噴射角度がθ1よりも狭いθ2の場合は、噴射された液体燃料F2が延長ノズル13の内面13aに当たる位置が比較的下流側となるため、着火が遅くなって燃焼火炎FA2の長さL2が比較的長くなる。
【0044】
図3の上半分のグラフは、燃焼火炎FA1,FA2による燃焼筒2内の軸方向に沿う熱分布を示している。ここに示すように、燃料噴射孔15の燃料噴射角度がθ1の場合に生成される燃焼火炎FA1と、燃料噴射角度がθ2の場合に生成される燃焼火炎FA2とでは、発熱分布HD1とHD2の軸方向長さが異なり、最高発熱点Hmax1とHmax2の軸方向位置も異なる。
【0045】
燃料噴射孔15の燃料噴射角度は、少なくともθ1とθ2の2種類を設定し、その配置は、例えば8基設けられている予混合ノズル12(メインノズル11)のうちの半数とし、それらを交互に配置したり、燃料噴射角度θ1のものとθ2のものとを4基ずつグループ分けして対称的に配置したり、全くランダムに配置したりすること等が考えられる。また、燃料噴射角度はθ1とθ2の2種類よりも多く設定してもよい。
【0046】
以上のように構成されたガスタービン燃焼器1によれば、複数のメインバーナ4の間で液体燃料F2の噴射パターンが異なっているため、各メインバーナ4の間における圧縮空気Aと液体燃料F2との燃料混合気M2の濃度分布を変化させることができる。これにより、各メインバーナ4から噴射される燃焼火炎FA1,FA2の長さL1,L2およびその形状に差を持たせ、複数の燃焼火炎FA1,FA2による発熱分布HD1,HD2(最高発熱点Hmax1,Hmax2)が燃焼筒2の軸方向の同一位置に集中することを防止して、ガスタービン燃焼器1における燃焼振動を効果的に抑制することができる。
【0047】
本実施形態では、複数のメインバーナ4の間で液体燃料F2の噴射パターンを異ならせる構造として、メインノズル11の燃料噴射孔15における液体燃料F2の噴射角度θ1,θ2を、複数のメインバーナ4の間で異ならせたため、簡素でコストパフォーマンスの高い構成により、複数のメインバーナ4の間で液体燃料F2の噴射パターンを異なせて燃焼振動を抑制することができる。
【0048】
しかも、複数のメインバーナ4の間で圧縮空気Aの流入経路の形状が同一形状に保たれるため、空気の形状圧力損失が変化することがなく、空気配分に偏りが生じない。したがって、空気量が少ない特定のメインバーナ4で平均火炎速度が高くなることによるNOxの生成が抑制され、ガスタービン燃焼器1全体としてNOxの生成量を低減させることができる。
【0049】
なお、上記実施形態では、
図2に示すように、全部のメインバーナ4のメインノズル11に、それぞれ4つの燃料噴射孔15が正面視において90度間隔で十字状に配置されている。しかし、必ずしもこの態様である必要はなく、燃料噴射孔15の数量や配置位置(間隔)等を異ならせてもよい。
【0050】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2実施形態を示すメインバーナ4および噴射火炎の縦断面図である。この実施形態では、燃料噴射孔15から延長ノズル13の内面13aに向かって噴射される液体燃料F2の噴射パターンを複数のメインバーナ4の間で異ならせる構造として、各メインバーナ4のメインノズル11の燃料噴射孔15の軸方向位置を異ならせている。
【0051】
例えば、各メインノズル11における燃料噴射孔15の位置は、軸方向にP1,P2,P3の3種類が設定されており、P1→P2→P3の順にメインノズル11の先端側に近付いていく。このように燃料噴射孔15の位置が軸方向に異なるメインノズル11を備えた複数のメインバーナ4が燃焼筒2にランダムに、あるいはグループ分けされて設置されている。
【0052】
燃料噴射孔15の軸方向位置がP1→P2→P3とメインノズル11の先端側に近付くにつれて、噴射される液体燃料F2が延長ノズル13の内面13aに当たって微粒化される位置が圧縮空気Aの流れの下流側に移動し、燃料混合気M2への着火が遅くなってゆくため、それぞれの燃焼火炎FA1,FA2,FA3の長さが、L1→L2→L3と伸びてゆく。
【0053】
このように、各メインノズル11における燃料噴射孔15の位置を軸方向に変化させれば、非常に簡素でコストパフォーマンスの高い構成により、第1実施形態の場合と同じく、複数の燃焼火炎FA1,FA2,FA3による発熱分布(最高発熱点)が燃焼筒2の軸方向の同一位置に集中することを防止し、ガスタービン燃焼器1における燃焼振動を抑制することができる。
【0054】
[第3実施形態]
図5は、本発明の第3実施形態を示すメインバーナ4(メインノズル11、燃料噴射孔15、延長ノズル13)の正面図である。この実施形態では、複数のメインバーナ4(メインノズル11)の間において燃料噴射パターンを異ならせる構造として、各メインノズル11における燃料噴射孔15の周方向位置と設置パターンとを異ならせている。各燃料噴射孔15の孔径は同じであるが、異ならせてもよい。
【0055】
例えば、第1実施形態では、
図2に示すように、全部のメインバーナ4のメインノズル11に、それぞれ4つの燃料噴射孔15が正面視において90度間隔で十字状に配置されていた。しかし、この第3実施形態では、隣り合うメインバーナ4において、それぞれのメインノズル11に燃料噴射孔15が3つずつ形成されており、これらの燃料噴射孔15の位置が、メインノズル11の先端円錐面の円周方向Rに沿って不等間隔に配置されている。このため、それぞれのメインバーナ4において、各々の燃料噴射孔15から噴射される液体燃料F2が、延長ノズル13の内面13aの異なる領域に当たるようになっている。
【0056】
このように、各メインノズル11における燃料噴射孔15の周方向位置と設置パターンとを異ならせれば、簡素でコストの安い構成により、第1実施形態および第2実施形態の場合と同様に、各メインバーナ4から噴射される燃焼火炎の発熱分布(最高発熱点)が燃焼筒2の軸方向の同一位置に集中することを防止し、ガスタービン燃焼器における燃焼振動を抑制することができる。
【0057】
[第4実施形態]
図6は、本発明の第4実施形態を示すメインバーナ4(メインノズル11、燃料噴射孔15、延長ノズル13)の正面図である。この実施形態では、複数のメインバーナ4(メインノズル11)の間において燃料噴射パターンを異ならせる構造として、各メインノズル11における燃料噴射孔15の数量と孔径とを異ならせている。
【0058】
例えば、隣り合う一方のメインバーナ4のメインノズル11には、第3実施形態(
図5参照)の場合と同様に、孔径の同じ3つの燃焼噴射孔15aが不等間隔で配置されているが、他方のメインバーナ4のメインノズル11には、4つの燃料噴射孔15b,15c,15d,15eが不等間隔で設けられており、そのうちの1つ15bは、その孔径が15aよりも大きく、他の3つ15c,15d,15eは孔径が15aよりも小さくなっている。このため、第3実施形態と同じく、それぞれのメインバーナ4において、各々の燃料噴射孔15a〜15eから噴射される液体燃料F2が、延長ノズル13の内面13aの異なる領域に当たり、噴射量も異なっている。
【0059】
このように、メインノズル11に設けられる燃料噴射孔15の数量や孔径を異ならせれば、簡素でコストの安い構成により、第1〜第3実施形態の場合と同様に、複数の燃焼火炎による発熱分布(最高発熱点)が燃焼筒2の軸方向の同一位置に集中することを防止し、ガスタービン燃焼器における燃焼振動を抑制することができる。
【0060】
[第5実施形態]
図7は、本発明の第5実施形態を示すメインバーナ4および噴射火炎の縦断面図である。この実施形態では、複数のメインバーナ4(メインノズル11)の間において燃料噴射パターンを異ならせる構造として、予混合ノズル12に対するメインノズル11の位置を、軸方向Lおよび周方向Rの少なくとも一方向に変更可能にしている。
【0061】
即ち、メインノズル11は、予混合ノズル12に対する固定を解除し、予混合ノズル12に対して軸方向Lおよび周方向Rに移動させてから再固定することができ、これによって燃料噴射孔15の位置を予混合ノズル12および延長ノズル13に対して自由に変更することができる。
【0062】
例えば、燃料噴射孔15の軸方向Lの位置については、P1→P2→P3と無段階に調整することができる。これにより、第2実施形態(
図4参照)の場合と同じく、燃料噴射孔15がP1,P2,P3の各点にある場合における燃焼火炎FA1,FA2,FA3の長さを、それぞれL1,L2,L3に変更することができる。
【0063】
また、各メインノズル11における燃料噴射孔15の周方向Rの位置については、360度自由に設定することができる。これにより、第3実施形態(
図5参照)や第4実施形態(
図6参照)と同じく、それぞれのメインバーナ4において、各々の燃料噴射孔15から噴射される液体燃料F2を、延長ノズル13の内面13aの異なる領域に当たるようにすることができる。
【0064】
このように、本実施形態では、予混合ノズル12に対するメインノズル11の位置を、軸方向および周方向に変更可能にすることによって、複数のメインバーナ4(メインノズル11)の間において燃料噴射パターンを異ならせる構造とした。
これにより、メインノズル11自体における燃料噴射孔15の燃料噴射角度、位置、数量、孔径等は不変であっても、メインノズル11の位置を軸方向および周方向の少なくとも一方向に変更することにより、燃料噴射孔15の位置を延長ノズル13の内面13aに対して自在に変更することができる。
【0065】
このため、複数のメインバーナ4から噴射される液体燃料F2の噴射パターンをより多彩に設定し、複数の燃焼火炎FA1,FA2,FA3…による発熱分布(最高発熱点)が燃焼筒2の軸方向の同一位置に集中することを防止して、ガスタービン燃焼器における燃焼振動を抑制することができる。
【0066】
以上説明したように、本発明に係るガスタービン燃焼器、およびこれを備えたガスタービン機関によれば、液体燃料を使用するガスタービン機関において、各メインノズル11に設けられている燃料噴射孔15に変更を加える、もしくはメインノズル11の軸方向位置や周方向位置に変更を加えるのみの、比較的簡素で安価な構造により、各メインバーナ4の間における圧縮空気Aと液体燃料F2との混合気M2の濃度分布を変化させて、各メインバーナ4から噴射される火炎の長さ(形状)に差を持たせ、複数の噴射火炎による発熱位置(発熱分布)が燃焼筒2の軸方向の同一位置に集中することを防止して、燃焼振動を抑制することができる。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態の構成のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更や改良を加えることができ、このように変更や改良を加えた実施形態も本発明の権利範囲に含まれるものとする。例えば、上記の各実施形態および各参考実施形態を相互に組み合わせる等してもよい。