特許第5984772号(P5984772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984772
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】緑化パネル及び緑化パネルの施工方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/12 20060101AFI20160823BHJP
   A01G 1/00 20060101ALI20160823BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
   A01G9/12 A
   A01G1/00 301C
   E04F13/08 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-201913(P2013-201913)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-65854(P2015-65854A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2015年10月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】394016232
【氏名又は名称】株式会社愛木
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】牧 元次郎
【審査官】 本村 眞也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−328746(JP,A)
【文献】 特開2002−176849(JP,A)
【文献】 特開2010−193741(JP,A)
【文献】 特開平06−193072(JP,A)
【文献】 特開平11−181776(JP,A)
【文献】 特開2011−244755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 1/00;9/00−9/12
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周が壁面に接する状態で固定される網状部材と、その網状部材の中央部と前記壁面との間に介在され、前記網状部材の固定状態で前記中央部を前記壁面から所定距離だけ離した状態で保持する嵩上げスペーサと、を含んでなる緑化パネル。
【請求項2】
前記嵩上げスペーサは、上面に前記網状部材の中央部の線材が係合可能な溝が形成され、下面に前記網状部材の外周の線材が係合可能な凹溝が形成されるスペーサと、そのスペーサの上面へ着脱可能に取り付けられて前記溝に係合した前記線材の脱却を阻止する押さえ板とからなることを特徴とする請求項1に記載の緑化パネル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の緑化パネルを壁面に対して上下方向及び/又は左右方向へ複数並べて固定することを特徴とする緑化パネルの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蔓性植物が壁面と金網との間を伝い易くし、緑化を促進させる緑化パネル及び緑化パネルの施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、蔓性植物が壁面を伝うことで緑化を行う場合、壁面に対して一定の間隔を取るように壁面と金網との間に対して補助具を接地し、蔓性植物を植培する方法が知られている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−20951号公報
【特許文献2】特開平9−144129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような補助具では、壁面に対して一定の間隔を保持するように設置させる必要があることから、設置に手間がかかり、壁面の状態に左右され易いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記従来の植培方法の問題点を解消し、設置が容易であり、且つ作業が短時間で済むことに加え、壁面の状態に左右されることがない緑化パネル及び緑化パネルの施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち、請求項1に記載された発明は、外周が壁面に接する状態で固定される網状部材と、その網状部材の中央部と前記壁面との間に介在され、前記網状部材の固定状態で前記中央部を前記壁面から所定距離だけ離した状態で保持する嵩上げスペーサと、を含んでなる緑化パネルとしたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の発明に加え、前記嵩上げスペーサは、上面に前記網状部材の中央部の線材が係合可能な溝が形成され、下面に前記網状部材の外周の線材が係合可能な凹溝が形成されるスペーサと、そのスペーサの上面へ着脱可能に取り付けられて前記溝に係合した前記線材の脱却を阻止する押さえ板とからなることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載の緑化パネルを壁面に対して上下方向及び/又は左右方向へ複数並べて固定することを特徴とする緑化パネルの施工方法である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載された発明は、設置が容易であり、且つ作業が短時間で済むことに加え、壁面の状態に影響されることがない。また、網状部材がパネル状ではなく一体物であっても、中心部を嵩上げすることにより、登攀空間を形成することが可能である。他にも、登攀空間内を蔓性植物が登攀することから、網状部材に絡みつくことがない。加えて、下地としてクッション性のある繊維マットを敷き詰めれば、壁面を直接蔓性植物が登攀しないので、壁面を痛めることがない。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の発明に加え、網状部材との係合を強固に行うことを可能とする一方、着脱が容易である。また、網状部材の嵩上げと網状部材同士の固定とに兼用できる。
【0011】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載の発明に加え、壁面や網状部材の形状に合わせた施工が可能であり、汎用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】嵩上げスペーサを示した説明図である。
図2】(a)は嵩上げスペーサを使用した状態を示し、(b)は、その断面を示す説明図である。
図3】網状部材同士を嵩上げスペーサで固定した状態を示す説明図である。
図4】蔓性植物が壁面を登攀する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の嵩上げスペーサの一実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1は、嵩上げスペーサを示した説明図である。図2は、嵩上げスペーサの使用状態を示した全体図である。図3は、網状部材同士を嵩上げスペーサで固定した状態を示す説明図である。図4は、蔓性植物が壁面を登攀する状態を示す説明図である。
【0015】
先ず初めに、図1に示すように、嵩上げスペーサ1は、スペーサ10と押さえ板20とで構成する構造である。
このうち、スペーサ10は、横長長方形状の樹脂材で、平面側中央の短手方向には、後述する網状部材の中央部の線材が係合可能な半円状の溝11が形成される一方、底面側には、網状部材の外周の線材が係合可能な凹溝13が形成されている。また、平面の左右には、孔12,12が穿設されている。
【0016】
一方、押さえ板20は、中央を倒コ字状22に折り曲げ形成した金属製の板材で、左右の鍔には、孔21,21が穿設されている。他にも、図2(a)に示すように、網状部材30は、縦線材31,31・・と、横線材32,32・・とが所定の間隔で交差するように形成されている。
【0017】
このようにして構成した嵩上げスペーサ1による網状部材30の嵩上げは、以下のように行われる。
先ず初めに、外周が留め具によって壁面に接する状態で固定された網状部材30において、縦線材31,31・・のうち、嵩上げする位置の縦線材31を持ち上げる。そして、壁面と縦線材31との間で、スペーサ10の溝11に縦線材31を係止する位置に載置する。
【0018】
次に、この状態のスペーサ10の上に、スペーサ10の孔12,12に、押さえ板20の孔21,21が重なるようにセットする。そして、この状態で孔21,21にボルト2,2・・を挿入して螺合することで、嵩上げスペーサ1によって縦線材5が持ち上げられた状態で固定されるのである。このようにして、図2(b)に示すように、網状部材30の係止箇所周縁には、網状部材30の固定状態で中央部を壁面から所定距離を離した登攀空間40,40・・が形成される。
【0019】
次に、網状部材30,30同士の固定について説明する。
図3に示すように、網状部材30,30が並べられた状態において、端部の縦線材31,31同士を、スペーサ10の凹溝13で覆うようにスペーサ10をセットする。そして、孔12,12にボルト2,2を挿入して螺合することで、網状部材30,30同士が固定される。
【0020】
このようにして、嵩上げスペーサ1を用いて、壁面50と網状部材30との間に登攀空間40を形成した後、壁面50の下方に蔓性植物45を植生して登攀空間40内に蔓性植物45を登攀させると、図4に示すように、壁面の緑化を行う緑化パネル60が形成されるのである。
【0021】
上記の如く構成された緑化パネル60は、外周が壁面50に接する状態で固定される網状部材30と、その網状部材30の中央部と壁面50との間に介在され、網状部材30の固定状態で中央部を壁面50から所定距離だけ離した状態で保持する嵩上げスペーサ1と、を含んでなることにより、設置が容易であり、且つ作業が短時間で済むことに加え、壁面50の状態に影響されることがない。また、網状部材30がパネル状ではなく一体物であっても、中心部を嵩上げすることにより、登攀空間40を形成することが可能である。他にも、登攀空間40内を蔓性植物45が登攀することから、網状部材30に絡みつくことがない。加えて、下地としてクッション性のある繊維マットを敷き詰めれば、壁面50を直接蔓性植物45が登攀しないので、壁面50を痛めることがない。
【0022】
また、嵩上げスペーサ1は、上面に網状部材30の中央部の縦線材31が係合可能な溝11が形成され、下面に網状部材30の外周の縦線材31が係合可能な凹溝13が形成されるスペーサ10と、そのスペーサ10の上面へ着脱可能に取り付けられて溝11に係合した縦線材31の脱却を阻止する押さえ板20とからなることにより、網状部材30との係合を強固に行うことを可能とする一方、着脱が容易である。また、網状部材30の嵩上げと網状部材30,30同士の固定とに兼用できる。
【0023】
他にも、緑化パネル60を壁面50に対して上下方向及び/又は左右方向へ複数並べて固定する緑化パネル60の施工方法によれば、壁面50や網状部材30の形状に合わせた施工が可能であり、汎用性が高い。
【0024】
なお、本発明にかかる嵩上げスペーサ1の構造は、上記した実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、スペーサや押さえ板の形状、大きさ、材質等を適宜変更することができる。
【0025】
例えば、スペーサ10の溝11は、必ずしも縦線材31を係止する必要はなく、横線材32を係止しても良いし、両方の線材を係止するように十字状の溝としても良く、適宜変更可能である。
【0026】
一方、凹溝13は、縦線材31,31同士の固定だけでなく、横線材32,32同士の固定をしても良いし、両方の線材を係止するように十字状の溝としても良く、適宜変更可能である。
【0027】
また、スペーサ10と壁面50との固定は、必ずしもボルト2を螺合することで固定する方法である必要はなく、スペーサ10が壁面50に固定されるものであれば良く、適宜変更可能である。
加えて、押さえ板20とスペーサ10とは、必ずしも一体に固定する必要はなく、スペーサ10によって登攀空間40を形成し、縦線材31と溝11との係止が容易に解除されないものであれば良く、適宜変更可能である。
【0028】
他にも、嵩上げスペーサ1を積層しても良く、適宜変更可能である。これにより、登攀空間40をより大きく形成することが可能であり、バラ等の比較的大きい蔓性植物45を壁面に這わすことが可能である。
【0029】
また、押さえ板20は、中央を倒コ字状22に折り曲げ形成した金属製の板材であるが、必ずしも折り曲げ形成する必要はなく、平滑な板材であっても良く、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0030】
1・・嵩上げスペーサ、2・・ボルト、10・・スペーサ、11・・溝、12・・孔、13・・凹溝、20・・押さえ板、21・・孔、22・・倒コ字状、30・・網状部材、31・・縦線材、32・・横線材、40・・登攀空間、45・・蔓性植物、50・・壁面、60・・緑化パネル。
図1
図2
図3
図4