(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記塩が、酢酸塩、アスパラギン酸(L)塩、クエン酸塩、フマル酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、乳酸塩、リンゴ酸(L)塩、粘液酸塩(mucate salt)、リン酸塩、硫酸塩、ヘミ硫酸塩、酒石酸(L)塩、グルコン酸(D)塩、マレイン酸塩およびコハク酸塩からなる群より選択される、請求項1記載の薬学的組成物。
変形性関節症、皮膚炎、炎症性腸疾患、術後の痛みおよび炎症、一般的な鈍的外傷、骨損傷、軟部組織感染、帯状疱疹、喘息、線維筋痛、湿疹、酒さ、片頭痛、乾癬、小腸炎、関節リウマチ、神経性腫脹、浮腫、挫傷、熱傷、日焼け、髄膜炎、敗血症性ショック、ならびにアレルギーからなる群より選択される炎症性状態を治療するために用いられる、請求項1記載の薬学的組成物。
乾癬、アレルギー性接触皮膚炎、湿疹、じんま疹、扁平苔癬、および疱疹状皮膚炎からなる群より選択される炎症性皮膚状態を治療するために用いられる、請求項1記載の薬学的組成物。
ステロイド化合物、ヒドロコルチゾン、非ステロイド性抗炎症化合物、アセチルサリチル酸(アスピリン)、イブプロフェン、アセトアミノフェン、インドメタシン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される抗炎症剤と併用され、該抗炎症剤が、前記ペプチドまたはその塩の投与の前に、間にまたは後に投与される、請求項1記載の薬学的組成物。
前記塩が、酢酸塩、アスパラギン酸(L)塩、クエン酸塩、フマル酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、乳酸塩、リンゴ酸(L)塩、粘液酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ヘミ硫酸塩、酒石酸(L)塩、グルコン酸(D)塩、マレイン酸塩およびコハク酸塩からなる群より選択される、請求項11記載の薬学的組成物。
変形性関節症、皮膚炎、炎症性腸疾患、術後の痛みおよび炎症、一般的な鈍的外傷、骨損傷、軟部組織感染、帯状疱疹、喘息、線維筋痛、湿疹、酒さ、片頭痛、乾癬、小腸炎、関節リウマチ、神経性腫脹、浮腫、挫傷、熱傷、日焼け、髄膜炎、敗血症性ショック、ならびにアレルギーからなる群より選択される炎症性状態を治療するために用いられる、請求項11記載の薬学的組成物。
ステロイド化合物、ヒドロコルチゾン、非ステロイド性抗炎症化合物、アセチルサリチル酸(アスピリン)、イブプロフェン、アセトアミノフェン、インドメタシン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される抗炎症剤と併用され、該抗炎症剤が、前記ペプチドまたはその塩の投与の前に、間に、または後に投与される、請求項11記載の薬学的組成物。
抗炎症剤が、ステロイド化合物、ヒドロコルチゾン、非ステロイド性抗炎症化合物、アセチルサリチル酸(アスピリン)、イブプロフェン、アセトアミノフェン、およびインドメタシンからなる群より選択される、請求項18記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な開示
本発明は、エンドモルフィン-1ペプチド、その類似体および塩の抗炎症剤としての新規な使用に関係する。本発明のペプチドおよび組成物は特に、神経性炎症を阻害するのに効果的である。
【0016】
ペプチド
好ましい態様において、本発明は、一般式:Tyr-X
1-X
2-X
3を有し、式中、X
1がPro、D-LysまたはD-Ornであり;X
2がTrp、PheまたはN-アルキル-Pheであり、ここでアルキルは1から約6個の炭素原子を有し;かつX
3がPhe、Phe-NH
2、D-Phe、D-Phe-NH
2またはP-Y-Pheであり、ここでYはNO
2、F、ClまたはBrである、ペプチドの使用に関係する。本発明の好ましいペプチドのいくつかは、
である。
【0017】
列挙した最後の14個のペプチドは、その直鎖状一次アミノ酸配列がSEQ ID NO:13からSEQ ID NO:26に示される環状ペプチドである。この文脈において、本出願は、米国特許第6,303,578号の全体を参照により本明細書に組み入れる。
【0018】
SEQ ID NO:1のペプチドは、ミューオピエート受容体に対して高度に選択的かつ非常に強力であり、デルタ受容体に対して4000倍を超えて弱い結合、およびカッパ受容体に対して15,000倍を超えて弱い結合を有し、それによって副作用の機会を低減させる。
【0019】
本発明のペプチドは、適切な保護基およびカップリング剤の使用を伴う、通常の液相法(Bodansky, M., Peptide Chemistry: A Practical Textbook, 2nd Edition, Springer- Verlag, New York (1993))または固相法(Stewart, J.M.; Young, J.D. Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd edition, Pierce Chemical Company, 1984)により調製されうる。次いで、適当な脱保護法が、特定のまたは全ての保護基を除去するために用いられ、固相合成を利用する場合には樹脂から分離する工程を含む。
【0020】
直鎖状ペプチドの環化は、例えば適当なジアミノカルボン酸のペプチドの2位のProとの置換による、2位の側鎖アミノとC末端カルボキシル官能基の閉環を介して行うことができる。環化反応は、ジフェニルリン酸アジド法により行うことができる(Schmidt, R., Neuhert, K., Int. J. Pept. Protein Res. 37:502-507, 1991)。
【0021】
固相合成によって合成されたペプチドは、適切な抗酸化剤およびスカベンジャーの存在下で液体フッ化水素(HF)により樹脂から分離できる。
【0022】
望ましい産物は、結晶化、電気泳動、抽出、クロマトグラフィ、または他の手段により反応混合物から単離されうる。しかしながら、好ましい単離の方法はHPLCである。全ての粗ペプチドは、分取用HPLCによって精製することができ、ペプチドの純度は分析用HPLCによって確認されうる。HPLCを用いて95%を上回る純度の合成化合物が得られている。
【0023】
本明細書において具体的に例示される好ましい態様において、ペプチドは、SEQ ID NO:13(環状エンドモルフィン-1ペプチド)として示されるものであり、かつ以下の構造を有する。
【0024】
驚くべきことに、今回、エンドモルフィン-1ペプチド(EM-1)およびその類似体が免疫応答を調節し、炎症状態、特に神経性炎症状態および/または痛みを伴う炎症状態を緩和するために用いることができることが発見された。本発明のペプチドは、末梢神経系および中枢神経系におけるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)放出の強力な阻害剤である。CGRPは、ヒトではCGRP-αおよびCGRP-βとして発現され、その神経系、内分泌系および免疫系との相互作用を介して、自律神経活動、知覚活動および運動活動において中心的役割を果たす。これは、強力な血管拡張剤として機能し、全身で痛みの伝達を媒介する。
【0025】
CGRP発現は、サイトカイン、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、iNOSおよびマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)などの種々の免疫調節物質の発現により部分的に制御される。そして、CGRPはまた、cAMPの蓄積、T細胞増殖、ならびにヒト血中単球におけるIL-1およびIL-6などのインターロイキンおよびサイトカインの分泌など、炎症反応の発生および進行にも関与する。CGRPの血清中濃度は、炎症、全身感染、関節障害、ならびに心不全および高血圧などのさまざまな他の疾患で著しく上昇する。特に、CGRPは、多くの急性および慢性の炎症反応、例えば神経性炎症、関節リウマチ、敗血症、片頭痛および内分泌疾患などに関与する。
【0026】
単離されたラット気管のペプチド作動性求心性神経からのCGRPの放出は、電気的フィールド刺激(EFS)により惹起され、その濃度は、放射免疫測定によりインキュベーション培地から決定できる。EFS誘導性のCGRP放出は、刺激の間および刺激後に、本発明のペプチドを器官槽(organ bath)内に添加することにより有意に減少する。
【0027】
さらに、本発明のペプチドは、インビボで急性神経性炎症反応を効果的に抑制する。ラットの後足皮膚およびマウスの耳の神経性炎症は、カラシ油の局所適用により知覚線維を活性化することにより誘導される。血漿タンパク質の血管外遊出は、エバンスブルーの漏出および測微法による耳の浮腫によって測定できる。ラット皮膚におけるカラシ油誘導性の血漿血管外遊出は、1〜1000 μg/kg CYT-1010による静脈内での前処置によって有意に減少し、最低用量がほぼ60%の阻害作用を発揮した。同様の有意な抗浮腫効果が、3時間にわたってこれらのCYT-1010用量のマウス耳に対しても見られた。
【0028】
炎症および関連障害の治療
本発明のペプチドは、対象への投与によって、免疫応答を調節し、炎症、特に神経性炎症を治療するのに有用である。本明細書で用いられる用語「対象」は、霊長類などの哺乳動物を含む生物を表し、対象に対し本発明の組成物による治療を施すことができる。開示される治療の方法から利益を得ることができる哺乳動物種は、限定するものではないが、類人猿、チンパンジー、オランウータン、ヒト、サル;ならびにイヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、トリ、マウス、ラット、モルモットおよびハムスターなどの他の動物を含む。
【0029】
有利には、エンドモルフィン-1ペプチドおよびその類似体は、感覚神経ペプチド放出の阻害を介する、神経性炎症反応を含む炎症反応の処置のための強力な作用物質である。本発明のペプチドは、侵害受容器活性化が中心的な役割を果たす神経炎症状態に対して効果的な治療を提供する。現在、非ステロイド性抗炎症性/鎮痛性薬物およびコルチコステロイドが、侵害受容器活性化に関連する神経炎症に対して最も広く使われている薬であるが、これらの薬物は高用量であっても、炎症反応の緩やかな阻害を誘導できるだけである。
【0030】
1つの態様において、本発明は、炎症および免疫状態を治療するための方法を提供する。この方法は、そのような治療を必要とする対象に有効量のエンドモルフィン-1ペプチド(EM-1)、またはその類似体および/もしくは塩を投与する工程を含む。特定の態様において、本方法は、少なくとも部分的に神経炎症または神経性炎症に関連する状態を治療するまたは回復させる。別の態様において、本方法は、CGRP放出を阻害し、異常なCGRP活性に関連する疾患または状態を治療する、緩和するまたは回復させるのに有用である。さらに別の態様において、本発明の方法は、SP放出を阻害し、異常なSP活性に関連する疾患または状態を治療するために用いることができる。
【0031】
本発明では、他に指定のない限り、「炎症」および「炎症反応」という用語は、物理的刺激、化学的刺激または生物学的刺激に対する免疫関連応答および/またはアレルギー反応を含む。例えば、一次活性化炎症が抗原由来である炎症は、例えば細菌性リポ多糖を原因とする可能性がある。
【0032】
本明細書で用いられる「神経炎症(neuroinflammation)」または「神経炎症性の疾患、障害または状態」という用語は、脳損傷または自己免疫障害に応答して生じる炎症、ならびに健常な神経組織および/または脳組織の破壊をもたらす炎症を含む、中枢神経系および末梢神経系に関連する任意の疾患、障害または状態を含む。
【0033】
本明細書で用いられる「神経性炎症」は、サブスタンスPおよびカルシトニン遺伝子関連ペプチドなどの炎症性メディエータの求心性神経からの局所放出を含む。
【0034】
特に、神経性炎症の治療のための本発明のペプチドおよび組成物の使用が、本明細書において例示される。神経性炎症は、サブスタンスP(SP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、血管作用性小腸ペプチド(VIP)、およびニューロキニンA(NKA)など、一次求心性C線維神経末端から放出される神経ペプチドならびにマスト細胞から二次的に放出されるヒスタミンにより誘発できる(Dray, A., [1992] "Neuro pharmacological mechanisms of capsaicin and related substances" Biochem Pharm 44(4):611-15)。加えて、カプサイシン(CAP)、カイエンペッパー中に見いだされる活性成分は、皮膚に局所的に適用されると、急性の神経性炎症反応を誘導する。CAPは、特定の膜受容体上で作用することにより組織中の侵害受容体および熱感受性神経終末を選択的に刺激する、高度に選択的な発痛物質である。そのため、カプサイシンの作用様式は、ホルボールミリステートアセテート(PMA)誘導性の免疫-炎症とは大きく異なっている。比較すると、PMAは、マクロファージなど特定の免疫細胞の細胞活性化を通じてその炎症促進性効果を誘発する。
【0035】
本発明のペプチドおよび組成物は、変形性関節症、喘息、線維筋痛、湿疹、酒さ、片頭痛、乾癬、小腸炎、関節リウマチ、神経性腫脹、浮腫、挫傷、熱傷、日焼け、髄膜炎、敗血症性ショック、アレルギーおよび皮膚炎を含むがこれに限定されない、神経性炎症に関連する疾患および状態を治療する、緩和する、または回復させるために用いることができる。
【0036】
加えて、本発明のペプチドおよび組成物は、一次活性化因子が抗原由来(例えば、細菌性リポ多糖)または神経起源のものである部位での炎症を治療する、緩和する、または回復させるために用いることができる。1つの態様において、本発明のペプチドは、脳の病的炎症性状態を治療するために用いられる。
【0037】
加えて、本発明のペプチドおよび組成物は、さまざまな炎症性の皮膚状態、特に炎症および痛みを伴う皮膚状態を治療する、緩和するまたは回復させるために用いることができる。本発明は、放射線による刺激および熱傷(UVおよび電離放射線を含む)、化学的熱傷、鼻炎、熱による熱傷、皮膚の発赤、ならびに化学的に誘導された損傷を含むがこれに限定されない、炎症性の皮膚状態を治療する、緩和するまたは回復させるために用いることができる。さらに、本発明は、例えばアトピー性皮膚炎、皮膚炎、乾癬、単純苔癬、アクネ、湿疹、職業皮膚炎、脂漏性皮膚炎、結節性痒疹、じんま疹、角化上皮症、酒さ、紅斑、魚鱗癬、光線皮膚症、帯状疱疹、およびそう痒性皮膚障害などのさまざまな炎症性皮膚状態を治療する、緩和するまたは回復させるために用いることができる。さらに、本発明は、微生物、化学薬品、物理的傷害、環境条件、ストレス、加齢、および自己免疫疾患または炎症性疾患により引き起こされる炎症性皮膚状態を治療する、緩和するまたは回復させるために用いることができる。本発明のペプチドおよび組成物は、乾癬、アレルギー性接触皮膚炎、湿疹、じんま疹、扁平苔癬、および疱疹状皮膚炎を含む皮膚状態を治療する、緩和するまたは回復させるのに特に有用である。
【0038】
加えて、本発明のペプチドおよび組成物は、アレルギー応答を治療する、緩和するまたは回復させるために用いることができる。これは、急性喘息発作などの急性のアレルギー反応の治療のためのおよび化学品曝露により生じた肺の炎症の治療におけるエアロゾル形態でのペプチドの使用を含むことができる。
【0039】
本発明のペプチドおよび組成物は、炎症性の関節、筋肉、腱、神経および皮膚;変形性関節症および関節リウマチ;皮膚炎;炎症性腸疾患;術後の痛みおよび炎症;一般的な鈍的外傷;骨損傷;軟部組織感染;ならびに帯状疱疹を含むがこれに限定されない、痛みおよび炎症を伴う疾患および状態を治療する、緩和するまたは回復させるのに特に有用である。
【0040】
加えて、本発明のペプチドおよび組成物は、例えば喘息、線維筋痛、湿疹、酒さ、片頭痛、乾癬、小腸炎、関節リウマチ、神経性腫脹、浮腫、挫傷、熱傷、日焼け、髄膜炎、敗血症性ショック、アレルギーおよび皮膚炎などの疾患および状態を治療する、緩和するまたは回復させるのに特に有用である。
【0041】
治療組成物および剤形
本発明はさらに、治療的有効量のペプチドまたは塩および薬学的に許容される担体またはアジュバントを含む治療組成物を提供する。本発明はまた、ペプチドのプロドラッグまたは代謝物も企図する。
【0042】
本明細書で用いる「薬学的に許容される」、「生理的に容認される」という用語およびそれらの文法上の変化形は、組成物、担体、希釈剤および試薬を含み、区別なく用いられ、材料が哺乳動物などの対象にまたは対象上に投与できることを表す。
【0043】
本明細書で用いられる「プロドラッグ」という用語は、本発明の化合物の代謝前駆体またはそれらの薬学的に許容される形態を指す。概して、プロドラッグは、化合物の官能性誘導体を含み、対象に投与されるときは不活性であってもよいが、インビボで活性代謝化合物に容易に変換可能である。
【0044】
適当なプロドラッグ誘導体の選択および調製のための従来の手法は、例えば「Design of Prodrugs」, ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985に記載される。好ましくは、本発明のプロドラッグは、溶解性、生物学的利用能および安定性を含むがこれに限定されない、本発明の化合物の望ましい質を向上させる。したがって、本方法で使用される化合物は、希望するならプロドラッグの形態で送達されうる。本発明で用いられる化合物のプロドラッグは、日常的な操作またはインビボのいずれかで修飾が親化合物と切断されるよう化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製されうる。
【0045】
「代謝物」という用語は、例えば、対象において本発明の化合物のインビボ代謝物によって生成される、活性中間体または最終産物を含む、薬学的に活性な生成物を指す。代謝物は、例えば、酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド化、エステル化、脱エステル化、および酵素的切断などを含むがこれに限定されない、対象における投与化合物の同化プロセスおよび/または異化プロセスによって生じうる。
【0046】
代謝物は典型的には、本発明の化合物の放射標識された(例えば、
14Cまたは
3H)同位元素を調製し、それをラット、マウス、モルモット、サルなどの動物またはヒトに検出可能な用量(例えば、約0.5 mg/kgを上回る)で非経口的に投与し、十分な時間(典型的には約30秒から約30時間)代謝物を生じさせ、尿、血液または他の生体試料からその変換生成物を単離することにより同定される。これらの生成物は、標識されているため、容易に単離される(その他は、代謝物中に残存するエピトープに結合する能力を有する抗体の使用により単離される)。代謝物の構造は、従来の様式で、例えばMS、LC/MSまたはNMR解析により決定できる。概して、代謝物の解析は、薬剤代謝物研究の技術分野の当業者に周知の技術によって行われる。
【0047】
本発明のペプチド塩は、例えば、錠剤、ペレット、カプセル、リポソーム、座剤、鼻腔内スプレー、溶液、乳剤、懸濁剤、エアロゾル、標的化化学送達システム(Prokai-Tatrai, K.; Prokai, L; Bodor, N., J. Med. Chem. 39:4775-4782, 1991)、および使用に適した任意の他の形態のための、通常非毒性である薬学的に許容される担体と共に配合されうる。用いることができる担体は、水、グルコース、ラクトース、アカシア・ゴム、ゼラチン、マンニトール、デンプンのり、三ケイ酸マグネシウム、タルク、コーンスターチ、ケラチン、コロイドシリカ、ジャガイモデンプン、尿素、および固体、半固体、液体またはエアロゾルの形態に調製物を製造する際に使用するのに適した他の担体であることができ、さらに、補助剤、安定化剤、粘稠化剤および着色剤ならびに香料が用いられうる。
【0048】
1つの態様において、ペプチド塩を調製するのに適した酸は表1に示され、対応するペプチド塩は表2に示される。好ましい塩ペプチドは、マレイン酸塩、塩酸塩、乳酸塩、アスパラギン酸塩、酢酸塩、およびトリフルオロ酢酸塩を含む。
【0051】
本発明のペプチド塩はまた、抗炎症治療を提供するために用いることもできる。この文脈において、出願人らは、米国特許出願第2004/0266805号の全体を参照により本明細書に組み入れる。
【0052】
さらに、治療組成物は、第1の活性成分として1種または複数種の本発明のペプチドまたは塩、および当技術分野において公知の抗炎症化合物を含む1つまたは複数のさらなる活性成分を含むことができる。そのような公知の抗炎症薬物は、アセチルサリチル酸(アスピリン)、イブプロフェン、アセトアミノフェン、およびインドメタシンなどを含む、ステロイド性抗炎症薬物および非ステロイド性抗炎症薬物(NSAID)を含むが、これに限定されない。さらなる活性成分は、例えば、抗ウイルス性、抗菌性、抗真菌性もしくは他の抗微生物性の化合物、または抗腫瘍化合物であることができる。
【0053】
本発明の1つの態様によれば、治療的有効量の公知の抗炎症剤および本発明のペプチドは、連続してまたは同時に患者に投与される。本発明のペプチドおよび抗炎症剤の最も効果的な投与の形態および投与計画は、治療されるべき状態の種類、その状態の重症度および経過、以前の治療、患者の健康状態、および本発明のペプチドへの反応、ならびに治療する医師の判断に依存する。本組成物は、1回でまたは一連の治療にわたって患者に投与されうる。
【0054】
本発明は、本明細書に記載された治療方法を実行するのに有用な治療組成物を企図する。本発明の治療組成物は、生理的に容認される担体を、その中に活性成分として溶解または分散される治療的有効量の本明細書に記載のペプチドとともに含む。
【0055】
これらの治療で用いられるペプチドはまた、さまざまな形態をとることもできる。これらは、例えば、錠剤、ピル、粉末、液体の溶液もしくは懸濁液、座剤、注入可能な不溶解性な溶液など、固体、半固体、および液体の投与形態を含む。好ましい形態は、意図される投与の様式および治療的用途に依存する。
【0056】
組成物はまた、当業者に公知である、従来の薬学的に許容される担体およびアジュバントも好ましくは含む。好ましくは、本発明の組成物は、単位用量の形態をとり、通常、1日に1回または複数回患者に投与される。
【0057】
本ペプチドおよび組成物は、薬学的に許容される担体と組み合わせることができる形態をとることができる。この文脈において、化合物は、例えば単離されているかまたは実質的に純粋でありうる。本明細書で用いられる「担体」という用語は、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはそれによって化合物が投与される媒体を指す。そのような薬学的担体は、ミネラルオイルなどの石油、ピーナツ油、大豆油およびゴマ油などの植物油、動物油、または合成起源の油のものを含む、水および油などの滅菌した液体であることができる。生理食塩水および水溶性ブドウ糖およびグリセロール溶液もまた、特に注入可能な溶液のための、液体担体として使用できる。中枢神経系の炎症の治療または回復のための特に好ましい薬学的担体は、血液脳関門に侵入できる担体である。本明細書で用いられる担体は、天然に存在する天然植物を含まない。
【0058】
担体材料と組み合わされて1回分の投薬形態を生成しうる活性成分の量はさまざまであり、状態の種類および治療されるべき対象などに依存する。概して、治療組成物は、約5%から約95%の活性成分(w/w)を含む。より具体的には、治療組成物は、約20%(w/w)から約80%、または約30%から約70%の活性成分(w/w)を含む。
【0059】
本発明のペプチドは、薬学的に有用な組成物を調製するための公知の方法にしたがって、製剤化できる。剤形は、当業者に周知かつ容易に入手可能な多くの情報源に詳細に記載されている。例えば、Remington's Pharmaceutical Science by E. W. Martinは、本発明に関連して用いることができる剤形を記載している。概して、本発明の組成物は、有効量の生理活性化合物が組成物の効果的な投与を容易にするための適切な担体と組み合わされ、製剤化される。
【0060】
その中に溶解または分散させた活性成分を含む薬学的組成物の調製は、当技術分野において十分に理解されており、剤形に基づき限定される必要はない。典型的には、そのような組成物は、液体溶液または懸濁剤のいずれかとして注入剤として調製されるが、溶液に適した固体形態または懸濁剤を使用前に液体中で調製することもできる。調製物はまた、乳化することもできる。
【0061】
活性成分は、薬学的に許容されかつ活性成分と親和性がある賦形剤と、本明細書に記載の治療方法での使用に適した量で混合することができる。適当な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、シクロデキストリン、ブドウ糖、グリセロール、エタノール、スクロース、グルコース、マンニトール、またはソルビトールなど、およびそれらの組み合わせである。加えて、望ましければ、組成物は、活性成分の効果を向上させる湿潤剤、乳化剤、およびpH緩衝剤などの補助物質を少量含むことができる。本発明のペプチドおよび組成物のための特に好ましい賦形剤は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、およびヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む。
【0062】
液体組成物はまた、水に加えておよび水を除去して、液相を含むこともできる。そのようなさらなる液相の例は、グリセリン、綿実油などの植物油、および水-油乳剤である。
【0063】
本発明はまた、1つまたは複数の成分、例えば化合物、投与に適した担体で満たされた1つまたは複数の容器を含む、薬学的なパックまたはキットも提供する。
【0064】
投与の経路
本発明のペプチドおよび組成物は、経口、点眼、経鼻、局所、経皮、関節内、非経口(例えば、静脈内、腹腔内、皮内、皮下または筋肉内)、頭蓋内、脳内、脊髄内、膣内、子宮内または直腸内の経路を含む標準的な経路によって、治療されるべき対象に投与できる。治療されるべき状態に依存して、一方の経路が他方の経路より好ましい可能性があり、それは当業者により決定できる。
【0065】
例えば、本発明のペプチドおよび組成物は、皮膚炎症に関連する状態の治療のために、対象に局所的に投与できる。局所投与のための組成物は、懸濁剤、分散剤、溶液、軟膏、ゲル、クリーム、スプレー、泡、粉末、ローション、浸漬、経皮パッチ、固体、微粒子、蒸気、またはテープを含む、任意のさまざまな剤形をとることができる。
【0066】
本発明のペプチドはまた、リポソーム技術、徐放性カプセル、埋め込みポンプ、および生分解性容器を利用して投与されうる。これらの送達方法は有利には、長期間にわたって均一な投薬量を提供することができる。特定の疾患、状態または障害の治療に効果的な本発明の治療組成物の量は、疾患、状態または障害の性質に依存し、標準的な臨床技術により決定できる。
【0067】
ペプチドの有効量の投薬量は、治療されるべき個々の患者それぞれの年齢および状態によって異なっており、それらにも依存する。概して、適当な単位投薬量は、約0.01から約500 mg、約0.01から約400 mg、約0.01から約300 mg、約0.01から約200 mg、約0.01から約100 mg、または約0.01から約50 mgの間であってもよい。例えば、単位用量は、約0.2 mgから約50 mgの間であってもよい。そのような単位用量は、1日に1回より多く、例えば1日に2回または3回投与されうる。
【0068】
加えて、インビトロアッセイが、最適投与量範囲を同定するのを助けるために任意で用いられうる。製剤中に使用されるべき正確な用量はまた、投与の経路、および疾患、状態または障害の重篤性にも依存し、実施者の判断および各患者の環境によって決定されるべきである。有効用量は、インビトロまたは動物モデル試験系から導き出される用量反応曲線から推定されうる。
【0069】
例示的には、投与される活性成分の投与量レベルは、静脈内で0.01から約20 mg/kg;腹腔内で0.01から約100 mg/kg;皮下で0.01から約100 mg/kg;筋肉内で0.01から約100 mg/kg;経口で0.01から約200 mg/kgおよび好ましくは約1から100 mg/kg;鼻腔内滴下で0.01から約20 mg/kg;ならびにエアロゾルで0.01から約20 mg/kg動物(体)重量でありうる。
【0070】
患者の状態の改善が生じた後には、必要な場合に、維持用量が投与される。その後、投与量もしくは投与頻度、またはその両方は、症状に応じて改善した状態が維持されるレベルに低減されうる。症状が望ましいレベルまで緩和されたとき、治療は停止するべきである。しかしながら、患者は、疾患症状の任意の再発に対して長期的に間欠的治療を必要としうる。
【0071】
1つの態様において、本発明のペプチドおよび任意の第2の抗炎症剤が、患者に連続的に投与され、抗炎症剤は、本発明のペプチドによる治療の前に、後にまたは前と後の両方に投与される。連続投与は、本発明のペプチドによる治療と少なくとも同じ日(24時間以内)の抗炎症剤による治療を含み、本発明のペプチドが投与されない日の抗炎症剤による継続的治療を含みうる。
【0072】
抗炎症剤の従来の投与様式および標準的な投与計画が用いられてもよい(Gilman. A. G. et. al. [eds] The Pharmacological Basis of Therapeutics, pp. 697-713, 1482, 1489-1491 [1980]; Physicians Desk Reference, 1985 Editionを参照)。例えば、インドメタシンは、約25〜50 mgの投与量で1日3回経口的に投与できる。より高い用量を用いることもできる。あるいは、アスピリン(約1500〜2000 mg/日)、イブプロフェン(約1200〜3200 mg/日)または他の抗炎症剤の従来の治療用量が用いることができる。抗炎症剤の投与量は、個々の患者に対して用量設定できる。
【0073】
加えて、患者は、抗炎症剤、および本発明のペプチドを含む組成物による同時治療を受けうる。例えば、本発明のペプチドは、局所的病巣内注入または静脈内注入を介して投与できる(上記Gilman et. al., pp. 1290-91を参照)。抗炎症剤はまた、皮下注入、静脈内注入、または経口によっても投与できる。
【0074】
あるいは、患者は、抗菌活性、抗ガン活性、抗腫瘍活性または抗炎症活性を示す作用物質の従来の投与様式にしたがって、1つまたは複数の本発明のペプチドおよび抗炎症剤の組み合わせを含む組成物を受けることができる。これらは、例えば、非経口、皮下、上皮内または病巣内の投与経路を含む。
【0075】
材料および方法
CYT-1010(合成環状エンドモルフィン-1アナログ;FP014; Lot #: 080811-R2; Bottle H22; MW:684)は、AmbioPharm, Inc. (North Augusta, SC 29812)から購入した。さらなる材料は以下を含む:Cyclolab Ltd., Budapest, Hungary から購入した2-ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリン(HPCD; CY2005.5; CYL-3122);Sandoz, Kundl, Austriaから購入したNa-チオペンタール(Thiopental- Sandoz);Spektrum 3D, Debrecen, Hungaryから購入したウレタン;Richter-Gedeon Ltd., Budapest, Hungaryから購入したケタミン(Calypsol);Phylaxia-Sanofi, Veterinary Biology Co. Ltd., Budapest, Hungaryから購入したキシラジン(Xylavet);Bachem, Bubendorf, Switzerlandから購入したラットα-CGRP、Tyr-α-CGRP(23-37);Amersham, International, Amersham, UKから購入した
125I-標識SP;laboratory of the Department of Pharmacology and Pharmacotherapy, University of Pecs, Hungary で調製した
125I-標識Tyr-α-CGRP(23-37);Sigma, St. Louis, MO, USAから購入したアリルイソチオシアネート(カラシ油)、エバンスブルー色素;Szkarabeusz Ltd., Pecs, Hungaryから購入したパラフィンオイル、ホルムアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)。
【0076】
溶液および懸濁剤の調製
インビトロ放出実験のために、CYT-1010の10 mg/ml(14.62 mM;MW 684)原液をDMSOで作製し、器官槽で用いられる酸素化Krebs液でさらに希釈した:5.5 μlのこのCYT-1010原液を40 ml Krebs液に添加し、最高適用濃度2 μMの化合物CYT-1010を作製した。より低濃度を得るためのさらなる希釈物をKrebs液で調製した。
【0077】
各CYT-1010濃度を含むインキュベーション培地を刺激した画分および刺激後8分の画分中に投与した。
【0078】
最高濃度、2 μMのCYT-1010溶液でさえ無視できるほど少ない量のDMSOしか含んでいなかったため、単純なKrebs液を対照実験で用いた。
【0079】
インビボでのラットおよびマウスの実験のために、5.5 mlのCYT-1010の1 mg/ml原液を、滅菌蒸留水で溶解させた20%HPCDで実験日ごとに新鮮に調製した。この乳白色の微細懸濁液を振とうし、超音波処理した。媒体は、滅菌蒸留水で溶解した20%HPCDであった。より少量の投与量のための化合物のさらなる希釈物をこの媒体で作製し、500 μg/mlおよび100 μg/ml濃度は乳白光に見え、より低い濃度は透明であった。ラットでは0.1 ml/100 g、マウスでは0.1 ml/10 g量を、炎症の誘導の10分前に静脈内投与した。
【0080】
電気的フィールド刺激(EFS)による単離されたラット気管からの感覚神経ペプチド放出の誘導
実験モデル
ラットを深麻酔(ナトリウム チオバルビタール、50 mg/kg 腹腔内)下で失血させ、次いで、気管全体を除去し、脂肪を取り除き、結合組織を付着させた。2匹のラットからの気管を、十分量の放出ペプチドを得るために同じ1.8 ml器官槽内に置き、pH(7.2)制御された酸素化Krebs液で60分間(平衡化期間)37℃の温度で灌流した(1 ml/分)。流れの停止後、溶液を8分間3回交換し、刺激前画分、刺激時画分、刺激後画分を作製した。
【0081】
2番目の8分間の開始時に、電気的フィールド刺激(40 V、0.1 ms、120秒間10 Hz;1200パルス)を行い、神経伝達物質放出を誘発した。0.1 msパルス幅での刺激は、神経構造の膜にのみ存在する、Na
+チャネルを非常に早く選択的に活性化し(Birmingham and Wilson, 1963; Coburn and Tomita 1973; Szolcsanyi and Bartho, 1982)、そのため、平滑筋細胞などの気管の他の興奮性細胞に影響を与えることなく、神経終末を興奮させる。
【0082】
プロトコル
基本のCGRP流出を決定するために、Krebs液を刺激前画分で用いた。刺激時画分と刺激後画分の間、インキュベーション培地は別々の実験において、試験濃度のCYT-1010(10、100、500、1000および2000 nM)を含み、1つの濃度だけを同じ気管に適用し、神経ペプチドの枯渇を避けた。各群で、5回の実験を5つの灌流系で並行して行い、1群あたりn=5データ(1群あたり10気管)を得た。
【0083】
動物
60匹の雄のWister系ラット(250〜300 g)を全て、6つの実験群に分けた:群1:対照(n=10);群2:10 nM CYT-1010(n=10);群3:100 nM CYT-1010(n=10);群4:500 nM CYT-1010(n=10);群5:1000 nM CYT-1010(n=10);および群6:2000 nM CYT-1010(n=10)。全ての試験は、各回2群、3日の実験日で行われた。
【0084】
調査の技法:放射免疫測定によるCGRPおよびSPの濃度の測定
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)およびサブスタンスP(SP)の濃度を、Nemeth et al., 1996, 1998, 1999, 2006; Helyes et al., 1997, 2001, 2006; Borzsei et al., 2008に記載の放射免疫測定方法の手段により、調製物の器官液の400〜400 μl試料から決定した。これらの文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0085】
ペプチドCGRPおよびSPの放出量を、1 mg湿組織(気管)あたりのfmolペプチドとして計算した。各実験におけるEFSに応答する絶対的放出を、2番目および3番目の8分画分のペプチド放出を足し、次いで1番目の(刺激前の)画分で測定された基本の放出を減ずることにより計算した。RIAアッセイの検出限界は、CGRPおよびSPに対してそれぞれ0.2 fmol/チューブおよび2 fmol/チューブであった。
【0086】
カラシ油によるマウス耳の急性神経性炎症の誘導
実験モデル
マウスをウレタン(1.2 g/kg 腹腔内)で麻酔し、持続性の深麻酔を達成し、呼吸抑制を最小化した。10 μlのパラフィンオイルに溶解した5%カラシ油を両耳の両側上に塗りつけた。カラシ油はこの濃度で、カプサイシン感受性のペプチド作動性感覚神経上の一過性受容体電位A1(TRPA1)を選択的に活性化し、感覚神経ペプチドの放出を誘導する。神経刺激された領域において放出されたCGRPおよびサブスタンスP(SP)は、急性神経性炎症と総称される、血管拡張および血漿タンパク質血管外遊出を誘発する。
【0087】
プロトコル
CYT-1010(1、10、100、500および1000 μg/kg;0.1、1、10、50および100 μg/ml溶液から0.1 ml/10 g)をカラシ油塗抹による炎症の誘導の5分前に静脈内投与した。対照群のマウスを同量の媒体、滅菌蒸留水で溶解した20%ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンで処置した。実験プロトコルを
図1にも例示する。
【0088】
動物
各CYT-1010処置実験群は8匹のマウス、および媒体処置対照群は9匹のマウスであった。49匹の雄のCD1マウス(25〜35 g)を全て6実験群に分けた:群1:媒体処置対照(n=9);群2:1 μg/kg CYT-1010(n=8);群3:10 μg/kg CYT-1010(n=8);群4:100 μg/kg CYT-1010(n=8);群5:500 μg/kg CYT-1010(n=8);および群6:1000 μg/kg CYT-1010(n=8)。
【0089】
この試験は、1回あたり12〜13匹のマウスを1つの単位にして行われた。全データを4日にわたって得た。毎日2または3匹は溶媒処置ラットであり、残りの12匹の動物は無作為化され各処置を受けた。
【0090】
調査の技法:測微法によるマウス耳腫脹の測定
耳の直径を、処置前および3時間試験期間の間に4回(20分、1時間、2時間および3時間)技術者用マイクロメータで測定した。浮腫を最初の対照の値と比較した%で示した(Banvolgyi et al., 2004, 2005; Borzsei et al., 2008)。これらの文献のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0091】
カラシ油によるラットの足皮膚における急性神経性炎症の誘導
実験モデル
ラットの両後脚をチオペンタールナトリウム(50 mg/kg 腹腔内)深麻酔下で急性的に除神経し(座骨神経と伏在神経を炎症の誘導の30分前に切断した)、中枢性反射を防止した。後足の背側の皮膚における急性神経性炎症を、パラフィンオイルに溶解した1%カラシ油(アリルイソチオシアネート)の局所適用により誘発した。5%を下回る濃度のカラシ油は、カプサイシン感受性のペプチド作動性神経上のTRPA1イオンチャネルを選択的に刺激し、CGRPおよびサブスタンスPなどの、神経刺激された領域における血管拡張および血漿タンパク質血管外遊出を引き起こす炎症促進性感覚神経ペプチドの放出を誘導する。
【0092】
プロトコル
CYT-1010(1、10、100および1000 μg/kg;1、10、100および1000 μg/ml溶液から0.1 ml/100 g)を、カラシ油の塗抹による炎症の誘導の5分前に静脈内投与した。対照群のラットを同量の媒体、(滅菌蒸留水で溶解した)20%ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンで処置した。実験プロトコルを
図2にも図示した。
【0093】
動物
40匹の雄のWistar系ラット(220〜260 g)を全て5つの実験群に分けた:群1:8匹の媒体処置対照(n=8);群2:1 μg/kg CYT-1010(n=8);群3:10 μg/kg CYT-1010(n=8);群4:100 μg/kg CYT-1010(n=8);および群5:1000 μg/kg CYT-1010(n=8)。
【0094】
この試験を1回あたり10匹のラットを1つの単位にして行った。全データを4日にわたって取得し、毎日各群のラットが存在した。
【0095】
調査の技法:足の皮膚におけるエバンスブルー蓄積の測定
血漿アルブミンの血管外遊出をエバンスブルー漏出法により測定した。エバンスブルー(50 mg/kg)を静脈内に注入し、神経性炎症を10分後に誘導した。ラットをカラシ油適用の20分後に失血により殺した。後足の皮膚を取り、血管外遊出した色素を620 nmでの光度定量のために室温で72時間ホルムアミドにより抽出した。蓄積したエバンスブルーの量は、血漿血管外遊出の強さと量的に相関し、μg色素/g湿組織として示された(Szolcsanyi and Bartho 1981; Helyes et al., 1997, 2001, 2006)。これらの文献はそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0096】
麻酔
最初の一連のマウスのインビボ実験において、ケタミン(100 mg/kg、腹腔内)およびキシラジン(10 mg/kg、筋肉内)を従来のプロトコルにしたがって麻酔のために用いた。この時、10匹のマウス全てが、おそらく呼吸抑制のために、CYT-1010の静脈内注入後5分以内に速やかに死に;2匹の媒体処置動物が生き残った。このため、ウレタン(1.2 g/kg 腹腔内)麻酔をこのモデルでは選択し、その後の試験では、1 μg/kg用量群の1匹を除き、全てのマウスが生存した(この1匹は、各群でn=8となるように後に交換している)。
【0097】
統計解析
結果を平均±標準誤差として表し、データを対照群と比較する際には、一元配置分散分析、続いてDunnett post-hoc検定により統計的優位性を解析した。ラットのインビボ試験では、異なる用量の効果を互いに比較するために、Bonferroniの改変t検定による複数比較も行った。*p<0.05は有意であると見なされた。全ての個々のデータを表3〜5に示す。
【0098】
以下は本発明を実施するための手法を例示する実施例である。これらの実施例は、限定するものとして解釈すべきではない。
【実施例】
【0099】
実施例1 - 単離されたラット気管からのCGRPおよびSPの電気的フィールド刺激誘発性放出に対するCYT-1010の効果
この実施例は、CTT-1010がEFS誘導性の炎症促進性感覚神経ペプチドであるCGRPおよびSPの放出を阻害することを実証する。
【0100】
対照実験では、CGRPおよびSPの放出は、電気的フィールド刺激の結果として、2番目の8分画分において0.17±0.03 fmol/mgから0.57±0.09 fmol/mg湿組織に、および1.54+0.085 fmol/mgから2.38+0.15 fmol/mg湿組織にそれぞれ増加した。3番目の刺激後の8画分では、ペプチド放出値はさらに上昇した(CGRP:0.33±0.04 fmol/mg;SP:2.24+0.27 fmol/mg)(
図3、4)。基本となる放出を減じた後の2番目および3番目の画分におけるEFSに応答する全体放出は、CGRPでは0.56±0.09 fmol/mg、およびSPでは1.53+0.25 fmol/mgであった。
【0101】
2番目および3番目の画分へのCYT-1010(10〜2000 nM)の添加は、刺激誘発性のCGRPおよびSPの放出を有意に阻害したが、濃度-反応関係は、より低濃度の範囲、CGRPでは10から500 nM、およびSPでは100〜1000 nMの範囲で観察されただけであった。CGRP放出の場合、69.9%の阻害である最大効果が500 nM CYT-1010で得られ、1000および2000 nM濃度は阻害作用をさらに増大させなかった(それぞれ66.3%および49.1%)。しかしながら、2つの最高濃度は3番目の刺激後画分におけるCGRP放出を消失させ、100および500 nMは3番目の刺激後画分におけるCGRP放出を有意に阻害し;一方で、10 nMは、3番目の刺激後画分におけるCGRPに影響を与えなかった。SP流出について、71.8%の最大阻害が1000 nM濃度の存在下で観察されたが、500 nM CYT-1010は64.3%の阻害作用を誘発した。
【0102】
非線形最小二乗曲線あてはめ法によるS字状濃度反応曲線として実験データを解析すると、最良適合値から計算されるEC
50は、CGPRでは40.6 nMおよびSPでは34.0 nMであることがわかった(
図5、6)。
【0103】
(表3)刺激前、刺激時および刺激後の8分画分におけるインキュベーション培地内へのCGRP放出(fmol/mg湿組織)
【0104】
(表4)刺激前、刺激時および刺激後の8分画分におけるインキュベーション培地内へのSP放出(fmol/mg湿組織)
【0105】
実施例2 - マウス耳の急性神経性浮腫に対するCYT-1010の効果
この実施例は、CYT-1010がカラシ油誘導性の急性神経性浮腫を有意に阻害することを実証する。
【0106】
対照において、媒体処置群の耳の厚さは、5%カラシ油の局所適用の20分後に312.2±4.8 μmから348.3±7.7 μmに増大した(11.65±1.98%腫脹)。これは、1時間までに37.83±0.83 mmにさらに増大し、3時間まで比較的変化しないままであった。
【0107】
1時間の時点で、1、10および100 μg/kg用量は有意な抗浮腫作用を発揮したが、誘導後20分では、炎症の誘導の5分前に静脈内投与した、試験したCYT-1010はいずれも、カラシ油誘導性の耳腫脹を有意に阻害しなかった。さらに10および100 μg/kg CYT-1010の阻害作用は、両方のその後の時点でも同様に統計的に有意であることがわかった。500および1000 μg/kg用量は、耳腫脹に影響を与えなかった。用量反応相関関係はこのモデルでは観察されなかった(
図7)。耳腫脹(%)の時間経過に基づき計算したAUC値は、対照、媒体処置群で55.29±4.91単位であった。対照と比較して、CYT-1010(1、10、100、500および1000 μg/kg)で処置したマウスの対応するデータはそれぞれ、28.99±4.60 (P<O.05)、28.15±3.42 (P<0.01)、26.55±5.51 (P<O.01)、52.24±9.70 (NS)および37.25±5.72 (NS)であった。
【0108】
実施例3 - ラット皮膚におけるカラシ油誘導性の血漿タンパク質血管外遊出に対するCYT-1010の効果
この実施例は、CYT-1010がカラシ油誘導性の血漿タンパク質血管外遊出を有意に阻害することを実証する。
【0109】
具体的には、試験したCYT-1010用量(1、10、100および1000 μg/kg、静脈内)は全て、エバンスブルー漏出技術によって検出される、ラット後足の背側の皮膚における1%カラシ油誘導性の神経性血漿タンパク質血管外遊出に対して有意な阻害を発揮した。しかしながら、このモデルでは用量反応相関関係は観察されなかった。最小適用用量は、最も優れている52.83%の阻害作用を有し、一方で、より高い3つの用量はそれぞれ、血漿タンパク質血管外遊出を、27.89%、36.76%および29.90%、同様に減少させた。1 μg/kg CYT-1010の阻害作用は、10および100 μg/kg用量のものより有意に優れていた(
図6)。
【0110】
(表5)1%カラシ油の局所投与に応答するラット後足皮膚におけるエバンスブルー漏出(μg/g湿皮膚)
【0111】
実施例1〜3で実証したとおり、電気的フィールド刺激(EFS)は、CGRP放出をその基本的流出と比較してその3倍を上回る上昇を誘発した。絶対ペプチド放出の合計は、刺激中および刺激後に器官槽内へ500 nMおよび1 μM濃度でCYT-1010を添加することに応答して、70%および66%それぞれ減少した。さらに、電気的に誘導したSP放出はそれぞれ、刺激時画分で54%、および刺激後画分で45%であった。放出合計は、500 nMおよび1 μM CYT-1010の存在下で64%および72%有意に低下した。非線形最小二乗曲線あてはめ法によるS字状濃度反応曲線としてデータを解析すると、最良適合値から計算されるEC
50は、CGPRでは40.6 nMおよびSPでは34.0 nMであることがわかった。濃度反応関係は、CGRPでは10〜500 nM、およびSPでは100〜1000 nMの濃度範囲で観察された。
【0112】
マウスのカラシ油誘導性の急性神経性耳腫脹は、1 μg/kg、10 μg/kgおよび100 μg/kgの静脈内用量のCYT-1010により有意に減少した。同様の有意な抗炎症効果は、1〜1000 μg/kg CYT-1010による静脈内前処置によって、ラット皮膚におけるカラシ油誘発性の血漿タンパク質血管外遊出でも見られ;最低用量が最も優れた効果、ほぼ60%の阻害作用を発揮した。
【0113】
これらの結果に基づき、CYT-1010は神経性炎症反応を効果的に減弱すると結論づけることができ、これには感覚神経ペプチド放出の阻害が関与しうる。この種類の炎症は現在入手可能な非ステロイド性の抗炎症/鎮痛薬による影響を受けず、高用量のコルチコステロイドは穏やかな阻害しか誘導しないため、この安定かつ非常に強力なEM-1類似体は、痛みおよび侵害受容器活性化が中心的役割を果たす炎症状態の新規治療を提供する。
【0114】
実施例4 - マウスのカラシ油誘導性の急性神経性耳腫脹に対するろ過CYT-1010および非ろ過CYT-1010の効果
この実施例は、CYT-1010のろ過がCYT-1010の阻害作用を穏やかに減少させることを実証する。この阻害効果は、ろ過媒体対照と比べて著しく少なかった。
【0115】
材料および方法
CYT-1010(合成環状エンドモルフィン-1類似体;FP014;Lot #: 080811-R2; Bottle H22; MW:684)をAmbioPharm, Inc. (North Augusta, SC 29812)から購入した。さらなる材料は以下を含む:Cyclolab Ltd., Budapest, Hungary から購入した2-ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリン(HPCD; Batch No. L-36/07);Spektrum 3D, Debrecen, Hungaryから購入したウレタン;Szkarabeusz Ltd., Pecs, Hungaryから購入したアリルイソチオシアネート(カラシ油)、パラフィンオイル;およびOlimPeak, Teknokroma, Barcelona, Spainから購入した滅菌シリンジフィルター(PVDF;0.2 μm;TR-200507; Lot. 134831)。
【0116】
溶液および懸濁剤の調製
100 μg/ml濃度のCYT-1010原液(5.5 ml)を滅菌蒸留水中に溶解した20%ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリン(HPCD)で実験日毎に新鮮に調製し、適切に振とうおよび超音波処理した。媒体は滅菌蒸留水に溶解した20% HPCDであった。より少量の投与用量用の化合物のさらなる希釈物をこの媒体で作製した。適用する濃度を0.2 μm滅菌テフロンフィルターによってろ過した。この100 μg/ml溶液は、調製直後は乳白光であったが、それは4℃で1時間後には澄んできた。より低い濃度は直ぐに透明に見えた。比較のために、非ろ過溶液を同じ濃度で並行群に投与した。3つ用量のろ過したCYT-1010溶液および非ろ過CYT-1010溶液の両方の溶液(1、10および100 μg/kg;0.1、1および10 μg/ml溶液から0.1 ml/10 g)を炎症の誘導の5分前に静脈内投与した。対照群の動物を、同じろ過工程後のまたは同じろ過工程なしの同量のHPCDで処置した。
【0117】
マウス耳におけるカラシ油誘導性の急性神経性炎症
実験モデル
マウスをウレタン(1.2 g/kg 腹腔内)で麻酔し、長期持続深麻酔を達成し、呼吸抑制を最小化した。10 μlのパラフィンオイルに溶解した5%カラシ油を両耳の両側上に塗抹した。この濃度のカラシ油は、カプサイシン感受性のペプチド作動性感覚神経上の一過性受容体電位A1(TRPA1)を選択的に活性化し、感覚神経ペプチドの放出を誘導する(Banvolgyi et al., 2004)。神経刺激された領域において放出されたカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)およびサブスタンスP(SP)などのタキキニンは、急性神経性炎症と総称される血管拡張および血漿タンパク質血管外遊出を誘発する(Helyes et al., 1997, 2001, 2006; Borzsei et al., 2008)。
【0118】
プロトコル
CYT-1010(1、10および100 μg/kg;0.1、1および10 μg/ml溶液から0.1 ml/10 g)をカラシ油塗抹による炎症の誘導の5分前に静脈内投与した。対照群のマウスを同量の媒体、滅菌蒸留水に溶解した20% HPCDで処置した。
【0119】
各実験群でマウスは8匹であり、1 μg/kgろ過CYT-1010用量群、CYT-1010処置媒体処置対照群では9匹であった。
【0120】
動物
65匹の雄のCD1マウス(25〜35 g)を8つの実験群に分けた:群1:非ろ過媒体処置対照(n=8);群2:非ろ過1 μg/kg CYT-1010(n=8);群3:非ろ過10 μg/kg CYT-1010(n=8);群4:非ろ過100 μg/kg CYT-1010(n=8);群5:ろ化媒体処置対照(n=8);群6:ろ過1 μg/kg CYT-1010(n=9);群7:ろ過10 μg/kg CYT-1010(n=8);および群8:ろ過100 μg/kg CYT-1010(n=8)。
【0121】
この試験は1回あたり16〜17匹のマウスを単位として行われた。データ全体を4日(2010年4月12日、13日、16日、22日)にわたって得た。各日、2または3匹は溶媒処置ラットであり、残りの12匹の動物は各処置を受けるよう無作為化された。
【0122】
調査の技法:測微法によるマウス耳腫脹の測定
耳の直径を技術者用マイクロメータによって、処置の前および3時間の試験期間に4回(20分、1時間、2時間および3時間)、測定した。浮腫を最初の対照値と比較した%で表した(Banvolgyi et al., 2004; Borzsei et al, 2008)。化合物を、滅菌ろ過後にまたはろ過せずに別々の群に3つの用量(1、10、100 μg/kg)で、カラシ油塗抹の5分前に静脈内投与した。対照群の動物を同量の媒体で処置した。
【0123】
統計解析
結果を平均±標準誤差で表した。CYT-1010処置群のデータを特定の時点でそれぞれの媒体処置対照と比較する際に、統計的優位性は、一元配置分散分析、続いてDunnettのpost-hoc検定(改変t検定)により行われた。時間依存性耳腫脹(%)の曲線下面積(AUC)についても、同じ統計により計算および解析し、3時間の実験期間中のCYT-1010処置マウスの全体浮腫反応を各対照群と比較した。*p<0.05は、有意であると見なされた。個別のデータを保存し、ワークシートを準備するためにMicrosoft Excelを用い、統計解析のためにGrapPadPrism5を、グラフを作製するためにOrigin 7.0を用いた。
【0124】
倫理
全ての実験法を1998/XXVIII Act of the Hungarian Parliament on Animal Protection and Consideration Decree of Scientific Procedures of Animal Experiments (243/1988)に従って行い、the International Association for the Study of Painおよびthe Helsinki Declarationの勧告にしたがった。試験は、the Ethical Codex of Animal Experimentsにしたがってthe Ethics Committee on Animal Research of Pecs Universityにより承認され、認可が与えられた(認可番号:BA 02/2000-11-2006)。
【0125】
マウス耳の急性神経性浮腫に対する非ろ過CYT-1010の効果
対照では、非ろ過媒体処置群の耳の厚さは、5%カラシ油の局所適用の20分後に312.50±4.70 μmから361.25±6.05 μmに増加した(15.94±2.51%腫脹)。これは2時間比較的安定な状態であり、次いで、わずかに減少し始めた。炎症の誘導の5分前に投与されたろ過しない10 μg/kgおよび100 μg/kgのCYT-1010 静脈内用量は、カラシ油誘導性の耳腫脹を20分後に有意に阻害し、これらの阻害作用は2時間の時点まで観察された。10 μg/kg CYT-1010の浮腫減少作用は、発明者らがデータ解析に用いたDunnettのpost検定では1時間で統計的に有意ではなかったが、阻害傾向は明確に見られた。1 μg/kg用量は、耳腫脹を有意に減少しなかったが、わずかな減少が最初の2時間で観察された。用量反応相関関係はこのモデルでは見られなかった(
図9)。耳腫脹(%)の時間経過を基準に計算されるAUC値は、対照、HPCD媒体処置群で44.02±6.97単位であった。対照と比較して、CYT-1010(1、10および100 μg/kg)で処置されたマウスでの対応するデータはそれぞれ、40.33±5.32(NS)、24.21±2.75(P<0.05)、21.71±1.72(P<0.01)であった。
【0126】
マウス耳の急性神経性浮腫に対するろ過したCYT-1010の効果
対照では、ろ過したHPCD媒体処置群の耳の厚さは、5%カラシ油の局所適用の20分後に294.17±4.17 μmから339.17±7.63 μmに増大した(17.85±2.01%腫脹)。これは、3時間の試験期間を通じてほとんど変化しなかった。炎症誘導の5分前に静脈内投与した10 μg/kgおよび100 μg/kg用量のろ過CYT-1010溶液は、20分後にカラシ油誘導性の耳腫脹を有意に阻害したが、媒体処置対照群と比較して統計的に有意な抗浮腫効果は、3時間の時点で10 μg/kg用量で観察されただけであった。しかしながら、各濃度の非ろ過化合物と比較したろ過溶液の阻害作用は、有意に異なるものではなかった。ろ過した1 μg/kg用量は耳腫脹に影響を与えなかった。非ろ過化合物の作用と同様に、用量反応相関関係は、この一連の実験のいずれでも観察されなかった(
図10)。耳腫脹(%)の時間経過を基準に計算したAUC値は、対照、ろ過HPCD媒体処置群で50.04±6.96単位であった。対照と比較して、ろ過CYT-1010(1、10および100 μg/kg)で処置したマウスにおける対応するデータはそれぞれ、51.47±6.93(NS)、33.68±3.97(NS)、および33.97±5.62(NS)であった。
【0127】
この実施例4において、マウスのカラシ油誘導性の急性神経性耳腫脹は、ろ過せずに静脈内に注入された10 μg/kgおよび100 μg/kg用量のCYT-1010によって有意に低減した。阻害の範囲はどちらの場合も約50%であり、用量反応相関関係はなかった。1 μg/kg用量でも最初の2時間にわずかな阻害傾向が観察された。0.2 μm滅菌フィルターによるろ過後のHPCD媒体は、非ろ過対照と比べていかなる違いも示さなかった。ろ過後のCYT-1010の2つの高用量の投与は、穏やかな阻害作用を発揮した。それぞれの媒体処置対照と比較して、10 μg/kg用量の場合に20分と3時間の時点でのみ統計的な有意差が観察された。曲線下面積の解析は、任意の群の間にでいかなる有意差も示さなかったが、10および100 CYT-1010処置の両方で明らかな阻害傾向が観察された。ろ過1 μg/kg用量はいかなる効果も有さなかった。
【0128】
これらの結果に基づいて、ろ過はこのモデルにおけるCYT-1010の阻害作用を緩やかに減少させると結論づけることができる。この効果は、それぞれの非ろ過製剤の作用より有意に小さいものではないが、ろ過媒体対照と比べると著しく少ない。
【0129】
本明細書において言及または引用される全ての特許、特許出願、仮出願および文献は、本明細書の明らかな教示に反しない範囲で、全ての図および表を含むその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0130】
発明を説明する文脈で用いられる、「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その(the)」という用語および同様の指示物は、本明細書に他に指示がないまたは文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈される。
【0131】
本明細書における値の範囲の記載は、本明細書に他に指示がない限り、範囲内に含まれる1つ1つの値に個別に言及する簡単な方法として役割を果たすことのみを意図しており、1つ1つの値は、本明細書に個別に記載されたものとして本明細書内に組み入れられる。他に記載されていない限り、本明細書で提供される全ての厳密値は、対応する近似値の代表である(例えば、特定の要素または測定に対して提供される全ての厳密な例示的値は、対応する近似測定を提供するとみなすこともでき、必要に応じて、「約」で修飾される)。
【0132】
本明細書で提供される、任意および全ての実施例、または例示的記載(例えば「などの」)の使用は、本発明をより良く解明することのみを意図しており、他に指示されていない限り、本発明の範囲の限定をもたらさない。本明細書の記載は、同様に明白に記載されていない限り、任意の要素が本発明の実施に必須なものであることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0133】
単数または複数の要素に関して「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」または「含む(containing)」などの用語を用いる、本発明の任意の局面または態様の本明細書の記載は、他に記載がないかまたは文脈と明らかに矛盾しない限り、その特定の単数または複数の要素「からなる」、「本質的にからなる」またはそれを「実質的に含む」本発明の同様の局面または態様の裏付けを提供することを意図する(例えば、特定の要素を含むとして本明細書に記載された組成物は、他に記載がないかまたは文脈と明らかに矛盾しない限り、その要素からなる組成物も記載しているものとして理解されるべきである)。
【0134】
本明細書に記載の実施例および態様は単に例示を目的とするものであること、およびそれを踏まえた種々の修正または変更が当業者に示唆され、本出願の精神および範囲内に含まれるべきであることが、理解されるべきである。