(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984805
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】非金属基板の表面に材料層を形成する方法
(51)【国際特許分類】
C23C 24/04 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
C23C24/04
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-518573(P2013-518573)
(86)(22)【出願日】2011年6月28日
(65)【公表番号】特表2013-530313(P2013-530313A)
(43)【公表日】2013年7月25日
(86)【国際出願番号】US2011042165
(87)【国際公開番号】WO2012006082
(87)【国際公開日】20120112
【審査請求日】2013年6月3日
(31)【優先権主張番号】12/832,111
(32)【優先日】2010年7月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599078705
【氏名又は名称】シーメンス エナジー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ、ウイリアム エフ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ジャオホゥイ
(72)【発明者】
【氏名】ギャレット、ランドール エス
【審査官】
伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−173818(JP,A)
【文献】
実開平05−062163(JP,U)
【文献】
特開平02−188149(JP,A)
【文献】
特開2008−205453(JP,A)
【文献】
特開2005−005638(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0051894(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 24/00−30/00
H02K 3/30− 3/52,
15/00−15/02,
15/04−15/16
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機用の巻線間に配置される非金属基板の表面に材料の層を形成して該非金属基板の性能特性を向上させる方法であって、
前記非金属基板に、ガラス織布又はガラス繊維からなるガラス裏材を適用し、
該ガラス裏材の表面に、雲母粒子又は窒化ホウ素粒子からなる非金属粒子をコールドスプレーする、ことを含み、
前記非金属粒子をコールドスプレーするときに、
前記非金属粒子に応じて決められる温度しきい値内に温度制御した加圧ガスに、前記非金属粒子を混ぜ、
該非金属粒子を混ぜた加圧ガスを、前記非金属粒子に応じて決められる速度しきい値内に速度制御して前記ガラス裏材の表面に向けスプレーし、前記ガラス裏材の表面に前記非金属粒子を付着させる、ことを含む、方法。
【請求項2】
前記非金属粒子と共にバインダ樹脂粒子をコールドスプレーする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非金属粒子と、炭素及び炭化タングステンの少なくともいずれかを含む導電材料との混合物をコールドスプレーする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記非金属粒子のコールドスプレー後に、炭素及び炭化タングステンの少なくともいずれかを含む導電材料をコールドスプレーすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記非金属粒子と半導体材料との混合物をコールドスプレーする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記非金属粒子のコールドスプレー後に、半導体材料をコールドスプレーすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
発電機用の巻線間に配置される非金属基板の表面に材料の層を形成して該非金属基板の性能特性を向上させる方法であって、
前記非金属基板にガラス織布又はガラス繊維からなる可撓性裏材を適用して第1の層を形成し、
該第1の層上に、雲母粒子又は窒化ホウ素粒子の絶縁材料と、炭素、炭化タングステン及び半導体材料の少なくともいずれかを含む第1の導電材料との混合物をコールドスプレーして第2の層を遷移層として形成し、
該第2の層上に、炭素、炭化タングステン及び半導体材料の少なくともいずれかを含む第2の導電材料をコールドスプレーして第3の層を形成する、ことを含み、
前記第2の層を形成するために前記絶縁材料と第1の導電材料との混合物をコールドスプレーするときに、
前記混合物の材料に応じて決められる温度しきい値内に温度制御した加圧ガスに、前記混合物を混ぜ、
該混合物を混ぜた加圧ガスを、前記混合物の材料に応じて決められる速度しきい値内に速度制御して前記第1の層の表面に向けスプレーし、前記第1の層の表面に前記混合物を付着させる、ことを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非金属基板に関し、特に、非金属基板の表面に材料を適用するための方法に関する。当該材料は、熱伝導性を向上させるための電気絶縁添加物及び非金属基板に所定レベルの電導性を付与するための電気絶縁添加物のいずれか又は両方であり得る。
【0002】
本発明はまた、複数層を互いに積層して特定の特性を有する最終製品となす、複合材料の製造に関する。コールドスプレープロセスを使用することで、当該複合構造を、製紙(paper making)や溶剤転写(solvent transfer)などの既存の標準的プロセス以外には不向きである材料を使用して開発し得る。
【背景技術】
【0003】
非金属基板に電気絶縁材料を使用することは、特に、発電機の隣接した巻線といった隣接導体の表面間に位置する非金属基板について周知である。しかしながら、非金属基板に電気絶縁材料を適用するプロセスは変動することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非金属基板に電気絶縁材料を適用するための新しく有用なプロセスを開発することは有益である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
次の図面に基づいて以下で本発明を説明する。
【
図1】本発明による、導体の表面に電気絶縁材料の層を形成するコールドスプレーシステムの実施形態の概略図を示す。
【
図2】
図1に示す導体の表面に形成した電気絶縁の層の実施例の概略図を示す。
【
図3】
図1に示す導体の表面に形成した別の電気絶縁層の実施例の概略図を示す。
【
図4】
図1に示すシステムのスプレー速度対スプレー温度のプロットと、その各スプレー速度及びスプレー温度に使用される好適な材料を示す。
【
図5】本発明による、非金属基板の表面に材料の層を形成するシステムの実施形態の概略図を示す。
【
図6】
図5に示す非金属基板の表面に形成した材料の層の実施例の概略図を示す。
【
図7】
図5に示す非金属基板の表面に形成した電導又は半電導材料の層の実施例の概略図を示す。
【
図8】
図5に示すシステムのスプレー速度対スプレー温度のプロットと、その各スプレー速度及びスプレー温度に使用する好適な材料を示す。
【0006】
特に、発電機用の巻線間に配置される非金属基板の表面に材料の層を形成して該非金属基板の性能特性を向上させる方法が提供される。この方法の一態様は、
前記非金属基板にガラス裏材を適用し、該ガラス裏材の表面に
、多数の雲母粒子又は窒化ホウ素(BN)粒子からなる非金属粒子をコールドスプレーすることを含む。
前記非金属粒子と共にバインダ樹脂粒子をコールドスプレーすることができる。
前記非金属粒子と導電材料との混合物をコールドスプレーすることもできる。又は、前記非金属粒子のコールドスプレー後に、導電材料をコールドスプレーすることもできる。あるいは、前記非金属粒子と半導体材料との混合物をコールドスプレーすることもできる。さらには、前記非金属粒子のコールドスプレー後に、半導体材料をコールドスプレーすることをさらに含んでもよい。
この方法によって、絶縁材料の第1の層を含む伝導性テープが提供される。該第1の層は前記ガラス裏材から形成され、この裏材は、ロール状に保管するための弾性及び柔軟性を有する。この伝導性テープは、前記第1の層上に位置し、前記非金属粒子を含有する層を含む。さらに、この伝導性テープは、前記非金属粒子を含有する層の上に位置する第2の層を含み、該第2の層が前記導電材料又は前記半導体材料から形成される。前記ガラス裏材は、ガラス布であり得る。
【0007】
特に、発電機用の巻線間に配置される非金属基板の表面に材料の層を形成して該非金属基板の性能特性を向上させる方法の別の態様は、前記非金属基板に可撓性裏材を適用して第1の層を形成し、該第1の層上に、絶縁材料と導電材料との混合物をコールドスプレーして第2の層を遷移層として形成し、該第2の層上に、導電材料をコールドスプレーして第3の層を形成する、ことを含む。
この方法を利用して作製される伝導性テープは、ロール状保管のために弾性及び柔軟性を有する前記可撓性裏材の第1の層と、該第1の層上に位置し、前記絶縁材料と導電材料との混合物を含有する第2の層と、該第2の層上に位置し、前記導電材料を含有する第3の層と、を備える。前記可撓性裏材は、ガラス織布、ガラス繊維又は高分子材料からなるものとすることができる。
【0008】
添付図面に例示した、本発明に係る実施形態について詳細に言及する。可能な限り、各図を通して使用する同じ参照番号は同じ又は類似の要素を指す。本発明の各実施形態では、「コールドスプレーする」又は「コールドスプレー」のプロセスについて論じる。このプロセスは、ターゲット表面の方向へ選択的速度及び選択的温度のいずれか又は両方で粒子を加速又は押し進めることを含む。従来のシステムの場合、コーティング材料の粒子がターゲット金属表面へ比較的高速及び高温で加速され、当該金属表面は、比較的硬くて、例えば、ダメージを受けないように、高速高温の加速粒子に耐えることができる。本発明の各実施形態によれば、金属基板又は非金属基板(速度及び温度しきい値をそれぞれ越えない選択的速度及び選択的温度で比較的軟らかい低温特性を有するもの)に向かって非金属粒子を加速する。これらの基板は、室温で比較的軟らかい表面、例えば、粒子衝突がほぼ非反発性となり、粒子が表面ではじかれるのではなく表面に付着することができるような、可鍛性であることを特徴とする。非金属粒子が速度及び温度しきい値を超える速度でターゲット表面にコールドスプレーされた場合、該非金属粒子は、ターゲット基板表面に付着せず、ターゲット基板表面を傷つけ、あるいは突入し得る。例えば、
図1に示す本発明の実施形態に、導体又は金属基板の表面に向け非金属粒子を加速して該導体の表面に電気絶縁層を形成する際に使用する、コールドスプレープロセスが記載されている。別の例として、
図5に示す本発明の実施形態に、非金属基板の表面に向け非金属粒子を加速して該基板の性能特性を向上させる際に使用する、コールドスプレープロセスが記載されている。上述のように、本発明の各実施形態において使用する金属基板及び非金属基板は、比較的軟らかい低温特性(すなわち、粒子衝突が非反発性となるような、室温で比較的軟らかい表面)を有する。一例としての実施形態において、以下に記載するように、温度及び速度しきい値をそれぞれ越えない温度及び速度で基板に非金属粒子をスプレーすることによって、様々な種類の非金属粒子を使用することができ、該非金属粒子が非反発性衝突で基板に付着する。しかしながら、本発明の各実施形態において説明するコールドスプレープロセスは、それぞれ温度及び速度しきい値を越えない温度及び速度パラメータに必ずしも限定されるものではない。
【0009】
図1は、金属基板又は導体16の表面14に電気絶縁材料の層12を形成するシステム10の一実施形態を示す。例えば銅など、各種の金属基板又は導体が本発明の実施形態で利用できる。また、本発明の実施形態では導体16の表面14に形成される層12を説明するが、例えば、隣接導体間に電気的絶縁を提供するために、発電機の巻線など、隣接する導体の各表面に複数層を形成することもできる。一実施形態において、導体16は、例えば、発電機回転子巻線において並列形態で積層される並列矩形導体などで、
図1に示すように矩形とすることができる。
【0010】
システム10は、高圧ガス供給部20を備え、この高圧ガス供給部20は、例えば、選択的圧力でヘリウムなどの高圧ガスを貯蔵している。システム10は、さらにガスヒータ22を備え、このガスヒータ22は、高圧ガス供給部20から高圧ガスを受けるように接続され、その高圧ガスの温度を選択的に変化させる。一実施形態においては、ガスヒータ22がガスを加熱しないか、あるいは、比較的少量だけガスを加熱する。さらに、システム10は、高圧ガス供給部20と接続した粉末供給部24を備え、この粉末供給部24は、選択的粒子容積及びサイズの少なくともいずれかを有する、例えば、雲母や窒化ホウ素(BN)粒子などの、非金属粒子28を収容する。これまでは、雲母及びBN粒子(例えば、粒径5〜10ミクロンの範囲)は絶縁用途に応用されていなかった。本発明の実施形態によると、適切なデポジションプロセス、例えばコールドスプレープロセス、によって、これらの材料を今や都合良く適用することができ、絶縁特性を向上させたい金属又は絶縁表面に層を形成することができる。コールドスプレープロセスにより、様々な形状の配線(例えば、円形及び矩形)を含め、不均一な表面及び多くの幾何学的形状に沿ってデポジション(堆積物)を得られる。
【0011】
ガス供給部20、ガスヒータ22及び粉末供給部24が共同して、選択的容積及びサイズをもつ非金属粒子28を、スプレーノズル30を有するガン(吹き付け部)26へ送る。続いてスプレーノズル30が、選択的スプレー温度34(
図4)で、選択的スプレー速度32(
図4)をもって、導体16の表面14の方向へ非金属粒子28を押し進める。ガスヒータ22からガン26へ送られる加圧ガス及び粉末供給部24からガン26へ送られる非金属粒子28を基に、一例として、雲母粒子などの非金属粒子28が、選択的スプレー速度32及び選択的スプレー温度34でノズル30から送り出される。該非金属粒子28は導体16の表面14へ向け加速され、表面14との衝突で変形し又は基板へ入り込み(繊維型材料の場合)、コーティング12を形成する。本発明の実施形態においてコールドスプレープロセスを使用する1つの利点として、非金属粒子28が接着剤無しで表面14に付着するので、表面14に対する接着剤が不要である。しかしながら、本発明の一実施形態においては、例えば、接着剤を非金属粒子28に混ぜ、ワンステップで当該混合物を表面14にコールドスプレーすることができる。
【0012】
ガス供給部20、ガスヒータ22及び粉末供給部24にはコントローラ36が接続されており、このコントローラ36は、導体16の表面14に向け送り出される非金属粒子28のスプレー速度及びスプレー温度を設定するように構成されている。本発明の一実施形態において、コントローラ36は、ガス圧力や温度などの変数を制御することになる。しかしながら、混合する非金属粒子28の粒子サイズ及び容積は、非金属粒子28を粉末供給部24へ入れる前に決定又は選択され得る。非金属粒子28のサイズ、容積は、必要な要件を満たすように、具体的コーティングプロセスの適正化段階において決定され得る。
【0013】
図4の例に示すように、コントローラ36は、ガス圧力及びスプレー温度34の少なくともいずれかをモニタし、同時にガンが、導体16の表面14へ非金属粒子28を送り出して、所定の速度限界内にスプレー速度32を維持すること及び所定の最高温度しきい値35を越えないように選択的スプレー温度34を規制することのいずれか又は両方が行われる。コントローラ36によって、スプレー速度32及びスプレー温度34のいずれか又は両方を速度しきい値33及び温度しきい値35のいずれか又は両方を越えないように制限するのであれば、導体16の表面14へ送り出す非金属粒子28及び導体16それ自体のいずれか又は両方として様々な材料を利用することができる。さらに、スプレー速度32及びスプレー温度34のいずれか又は両方を速度しきい値33及び温度しきい値35のいずれか又は両方を越えないように制限することによって、導体16の表面14から滑り落ちること及び導体16の表面14に損傷を与えることの少なくともいずれかを伴わずに、導体16の表面14に非金属粒子28を付着させ得る。コントローラ36は、ガスの圧力変化を基にしてスプレー速度32を変化させる。一実施形態において、限定するものではないが、例えば、雲母粉末、窒化ホウ素、炭化タングステン、炭素粉末、有機高分子、粉末状エポキシ樹脂などのスプレー材料を使用することができる。別の実施形態において、スプレー温度しきい値35は、例えば、有機高分子又はエポキシ樹脂をスプレーする場合、−40℃〜120℃の範囲にされ得る。この温度範囲を超える温度で有機高分子又はエポキシ樹脂をスプレーした場合には導体16の表面14が少なくとも傷つき又は焼けるため、−40℃〜120℃の例示温度範囲が選択される。
図1に示すシステム10の実施形態に基づいて、導体16の表面14に様々なコーティング12をコールドスプレーすることができる。
図2は、コーティング12の実施例を示す。例えば、接着性及び絶縁性の粒子(例えば雲母)の混合物を、導体16の表面14にコールドスプレーして、導体16の表面14に対し電気絶縁の層12を形成することができる。非金属粒子28の混合物をコールドスプレーするときのスプレー速度及びスプレー温度のいずれか又は両方は、その最大速度しきい値33及び最高温度しきい値35のいずれか又は両方を超えることがないように、コントローラ36によってモニタすることができ、これにより、非金属粒子28を導体16の表面14に付着させる一方で、該非金属粒子28が導体16の表面14を貫通すること及び導体16の表面14に損傷を与えることのいずれか又は両方を防止する。コントローラ36は、非金属粒子28の所定の粒子容積及び所定の粒子サイズのいずれか又は両方に基づき、速度しきい値33(ガス圧制御で)及び温度しきい値35のいずれか又は両方を制御する。コントローラ36は、導体16に対する最小厚さなど、コーティング12の1つ以上の好ましいコーティング特性に基づき、速度しきい値33及び温度しきい値35を選択的に決定するように構成される。一実施形態において、コーティング12の絶縁特性は、コーティング12の厚さとコーティング12の均一性に依存する。上記実施形態では雲母粒子を説明しているが、例えば、窒化ホウ素(BN)粒子など、様々な粒子を導体16の表面14にコールドスプレーすることができる。
【0014】
図1の本発明の実施形態では、導体
16の表面
14(すなわち、片側)にコールドスプレーするプロセスが示されているが、導体
16の向きを単純に反転させることによって、裏面40(
図1)を含め、導体
16の複数の面に絶縁材料をコールドスプレーするように、本発明を利用することができる。さらに、高圧ガス供給部20、ガスヒータ22及び粉末供給部24は、導体
16の前面に形成されるコーティング12と比較して導体
16の裏面40に形成されるコーティングが異なる特性をもつように、コントローラ36を用いて選択的に調整することができる。例えば、導体
16の異なる面は、様々な電気的又は熱的条件及び隣接する導体との様々な間隔のいずれか又は両方におかれ得るので、その各コーティングは、当アレンジに順応するように、システム10を用いて、個々に適応させることができる。
【0015】
図3は、
図2の実施例に示すコーティング12とは異なる、コーティング12’の実施例を示す。
図3の実施例においては、ガラス繊維とエポキシ樹脂粒子との混合物42’が、
図1のシステム10を用いて、導体16’の表面14’にコールドスプレーされている。ガラス繊維とエポキシ樹脂粒子との混合物が協働することで導体表面14’に粒子が付着する。ガラス繊維とエポキシ樹脂粒子との混合物42’を導体16’の表面14’にコールドスプレーした後、混合物42’の温度を上げて、コーティング12’内でエポキシ樹脂成分を硬化させる。一実施形態において、例えば、誘導、放射加熱、導体をオーブンに通すなど、数種の方法を用いて、そのような昇温を行う。
【0016】
図5〜
図8に示して以下に説明する本発明の実施形態は、
図1〜
図4に示して上述した本発明の実施形態と類似しているが、導体の表面ではなくて非金属基板が、材料のコールドスプレーの対象とされ、該非金属基板の各種特性を向上させる。
【0017】
図5は、上述し
図1に示したシステム10と類似したシステム110の実施形態を示す。システム110は、例えば、非金属基板の絶縁特性を向上させる絶縁材料など、材料の層112を非金属基板116の表面に形成するために使用され、非金属基板116の性能特性を向上させる。システム110は、例えば、選択的圧力で、ヘリウムなどの高圧ガスを貯蔵する、高圧ガス供給部120を備える。システム110は、さらにガスヒータ122を備え、このガスヒータ122は、高圧ガス供給部120から高圧ガスを受けるように接続され、高圧ガスの温度を選択的に変化させる。さらに、システム110は、高圧ガス供給部120に接続されている粉末供給部124を備え、この粉末供給部124は、例えば、選択的粒子容積及びサイズのいずれか又は両方をもつ雲母、窒化バリウム(BN)及びバインダ樹脂粒子の少なくともいずれかといった非金属粒子128を収容する。ガス供給部120、ガスヒータ122及び粉末供給部124が共同して、選択的容積及びサイズをもつ非金属粒子128を、スプレーノズル130を有するガン126に送る。続いてスプレーノズル130が、選択的スプレー温度134(
図8)で、選択的スプレー速度(選択的圧力による)132(
図8)をもって、非金属基板116の方向へ非金属粒子128を押し進める。雲母粒子などの非金属粒子128は、例えば、ガスヒータ122からガン126へ送られる加圧ガス及び粉末供給部124からガン126へ送られる非金属粒子128を基にして、選択的スプレー速度132及び選択的スプレー温度134でノズル30から送り出される。非金属粒子128は非金属基板116へ向け加速され、非金属基板116との衝突で変形して非金属基板116に結合し又は入り込み、層112を形成する。
【0018】
システム110はさらに、ガスヒータ122、粉末供給部124、ガン126及び高圧ガス供給部120と接続されているコントローラ136を備える。コントローラ136は、非金属粒子128の所定の容積及び粉末供給部124内の非金属粒子128の所定の密度、の1つ以上に基づいて、ガス圧力(スプレー速度132)及びスプレー温度134をモニタするように構成されている。特定の粒子サイズ及び混合物の非金属粒子128が粉末供給部124へ充填される。
【0019】
一実施形態において、コントローラ136は、選択的スプレー速度132を(ガス圧力を変化させて)所定の最大速度しきい値133(
図8)を越えないようように制限し、そして、選択的スプレー温度134を所定の最高温度しきい値135(
図8)を越えないように制限する。しかしながら、別の実施形態において、コントローラは単純に、スプレー速度又はスプレー温度のいずれかをその最大しきい値に制限することもできる。一実施形態において、スプレー温度しきい値135は、非金属基板のスプレーの場合に100℃未満とし得る。
【0020】
例えば、ガラス布などのガラス裏材114が通例、非金属基板116の表面を覆う。ガラス布は織布でよく、コールドスプレー以外の手段によって基板116に適用される。
図5の実施形態に示すように、ガラス裏材114が非金属基板116に形成される。非金属基板116にガラス裏材114を形成した後、例えば、電気絶縁性など非金属基板116の性能特性を向上させるために、雲母粒子などの非金属粒子128をノズル130を通してガラス裏材表面114にコールドスプレーするべく、システム110を作動させることができる。非金属基板に材料を適用する一実施形態においては、非金属基板の密度と浸透度が、向上させるべきコーティング112の特性を規制し得る。
【0021】
図1〜
図4において上述した本発明の実施形態と同様に、雲母粒子などの非金属粒子128のコールドスプレープロセスは、加圧ガスと非金属粒子128との混合物を混ぜ合わせ、加圧ガスの温度を選択的に修正し、ガラス裏材114の表面に向けて混合物を加速することを含む。
図6に示すように、加速された雲母粒子などの非金属粒子128は、ガラス裏材114の表面に衝突する。前述したように、コールドスプレープロセス中、雲母粒子などの非金属粒子128の速度及び温度のいずれか又は両方といったスプレーパラメータを、各速度及び温度しきい値133,135を越えないようにコントローラ136によって調整することができる。
【0022】
ガラス裏材114の表面の、又は基板116内に入り込んだ加速非金属粒子128の種類に基づいて、例えば、高圧絶縁性向上、熱伝導性向上及び電導性向上の少なくともいずれかなど、非金属基板116の様々な性能特性を向上させることができる。一実施形態において、基板に窒化ホウ素粒子をスプレーして、非金属基板に損傷を与えることなく基板内へ侵入させ、均一に分布させることができる。
【0023】
一実施形態において、非金属基板116のガラス裏材114の表面へ非金属粒子128を加速する上述のコールドスプレープロセスは、電気絶縁特性など非金属基板116のパラメータを向上させるために複数の製造ライン間でガラス裏材114を移送する必要がないように単一の製造ラインで実施される、コールドスプレープロセスの個々のステップを含む。
【0024】
図7に示す本発明の別の実施形態においては、
導電材料と雲母粒子などの粒子との混合物142’が、次に上述のシステムを用いてガラス裏材114’の表面にコールドスプレーされ得る。そのような
導電材料の例として、例えば、炭素及び炭化タングステンがあげられる。例えば、ガラス裏材114’の電導性を向上させるために、コールドスプレーを行い得る。さらに、ガラス裏材114’の表面にコールドスプレーする場合に、ガラス裏材114’の電導性を向上させるのに十分な混合物を得るべく、半伝導(半導体)材料を粒子に混合することもできる。一実施形態においては、伝導性テープを形成することができ、この場合、上述のように一回にまとめた混合物142’のスプレーステップにおいてではなく、別々のスプレーステップにおいて、ガラス裏材114’の表面に
導電材料及び非金属粒子が個々にスプレーされる。別の一実施形態においては、ガラス裏材114’などの絶縁材料の第1の層を形成し、上述の混合物142’など、絶縁材料と
導電材料との混合物を含む遷移層としての第2の層を第1の層の上に形成し、例えば炭素及び炭化タングステンの少なくともいずれかなどの
導電材料を含む第3の層を第2の層の上に形成して、第1の層と第2の層との間に向上した物理的結合を形成することによって、伝導性テープを形成することができる。しかしながら、そのような伝導性テープの第1の絶縁層は、ガラス裏材114’に限定されず、第1の絶縁層はいかなる可撓性裏材材料でもよく、例えば、ロール状で保管するための又は表面に巻きつけるための弾性及び柔軟性を有する、例えば、ガラスの織布層、繊維で形成される層、高分子裏材などでよい。
【0025】
本発明の様々な実施形態を本明細書中で示し説明してきたが、これら実施形態が単なる例示として提供されていることは明らかである。本発明から逸脱することなく数多くの変種、変更及び置換が可能である。したがって、本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定されるものと意図されている。
【符号の説明】
【0026】
10,110 システム
12,12’,112,112’ 材料の層又はコーティング
14,14’ 表面
16,16’,116,116’ 基板又は導体
20,120 (高圧)ガス供給部
22,122 ガスヒータ
24,124 粉末供給部
26,126 ガン
28,128 粒子
30,130 スプレーノズル
36,136 コントローラ
40,140 裏面
42’,142’ 混合物
114,114’ ガラス裏材