(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984833
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】皮膚伸張機器
(51)【国際特許分類】
A61B 17/08 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
A61B17/08
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-543562(P2013-543562)
(86)(22)【出願日】2011年11月28日
(65)【公表番号】特表2014-504912(P2014-504912A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】EP2011005959
(87)【国際公開番号】WO2012079702
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年10月20日
(31)【優先権主張番号】102010054637.2
(32)【優先日】2010年12月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513151576
【氏名又は名称】フライシュマン,ウィルへルム
【氏名又は名称原語表記】FLEISCHMANN,Wilhelm
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フライシュマン,ウィルへルム
【審査官】
中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】
特表平10−510441(JP,A)
【文献】
欧州特許第02120767(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚伸張器を有し、傷口を塞ぐための皮膚伸張機器であって、前記皮膚伸張器は、前記皮膚伸張器上の引張方向に互いに対して機械的に調整可能な、対向する複数のあご部(12)と、前記あご部(12)に付随し、前記傷口の縁部の領域内の皮膚に固定するよう構成された髭部(28)とを備え、
前記あご部(12)を調整することによって、前記髭部(28)を介して引張力が前記皮膚上に作用し、前記引張力が、前記皮膚を伸張し、前記傷口の前記縁部を互いの方へ引っ張り、
複数の髭部(28)が前記引張方向を横切る方向に延在する複数の支持体(26)の上にそれぞれ配置されており、前記支持体(26)が、前記あご部(12)上に解放可能に取り付けられ、
前記支持体(26)は、固定要素(34)を前記支持体(26)に取り付けることによって前記支持体(26)の互いに対して相対的な位置に固定されることが可能で、
前記支持体(26)が、前記固定要素(34)により前記支持体(26)の互いに対して相対的な位置に固定されている状態で、前記支持体(26)は、前記あご部(12)から解放可能であり、前記皮膚伸張器を前記傷口から取り除くことが可能であり、
前記皮膚伸張器を前記傷口から取り除いた場合に、前記支持体(26)は前記支持体(26)の互いに対して相対的な前記位置に固定されたまま、前記髭部(28)とともに前記傷口に残ることを特徴とする皮膚伸張機器。
【請求項2】
前記支持体(26)が、前記髭部(28)がその上に配置されるボルト(30)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚伸張機器。
【請求項3】
少なくとも1つの髭部(28)が各髭部モジュール(32)に配置され、前記髭部モジュール(32)が、前記ボルト(30)上に配置され、前記ボルト(30)が丸くない断面を含み、前記髭部モジュール(32)が前記ボルト(30)に対して回転することができないことを特徴とする、請求項2に記載の皮膚伸張機器。
【請求項4】
前記固定要素(34)が前記ボルト(30)の自由端上に配置可能であることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の皮膚伸張機器。
【請求項5】
前記支持体(26)が、前記引張方向の横方向に延び、前記引張方向に開放されている、前記あご部(12)の受口(24)内に配置可能であり、前記支持体が前記あご部(12)に対して回転することができないことを特徴とする、請求項1に記載の皮膚伸張機器。
【請求項6】
前記固定要素(34)が、縁部切れ込み(36)を備え、前記縁部切れ込み(36)によって、前記ボルト(30)の軸に垂直に、前記ボルト(30)上に配置され得るディスクとして設計されていることを特徴とする、請求項4に記載の皮膚伸張機器。
【請求項7】
前記固定要素(34)が、貫通部(40)を備え、前記貫通部(40)によって、その軸方向の前記ボルト(30)上に配置され得るディスクとして設計されていることを特徴とする、請求項4に記載の皮膚伸張機器。
【請求項8】
前記固定要素(34)によって、前記支持体(26)が互いに離れた状態で調節可能に固定され得ることを特徴とする、請求項1ー請求項7のいずれか一項に記載の皮膚伸張機器。
【請求項9】
前記固定要素(34)は、複数の縁部切れ込み(36)を備え、前記複数の縁部切れ込み(36)は、互いに前記引張方向にオフセットされており、前記固定要素を前記ボルト(30)上に選択的に配置するために使用されることを特徴とする、請求項6、又は請求項8に記載の皮膚伸張機器。
【請求項10】
前記貫通部(40)が、前記引張方向に延びる掛金を備え、前記ボルト(30)を前記引張方向に調節可能に前記掛金内に留めることができることを特徴とする、請求項7又は請求項8に記載の皮膚伸張機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文による、傷口を塞ぐための皮膚伸張機器に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚移植に加えて、皮膚欠損の広い領域を塞ぐための既知の方法には、いわゆる皮膚伸張が含まれる。皮膚伸張では、付随する髭部によって互いに対向する傷口の縁部内に固定される少なくとも2つのあご部を有する皮膚伸張器、または皮膚引張器が使用される。あご部は、互いに対して、および互いに向かって機械的に移動して、皮膚上に作用する引張力をもたらし、それによって、皮膚を伸張し、傷口の縁部を共に互いに向かって引っ張る。皮膚は、所定の期間加えられる引張力によって、皮膚の自然の弾性限界を超えて伸張され、追加の組織増殖をもたらして、体の皮膚の表面領域の増加が傷口を塞ぐために適する方法で達成され得るようになる。
【0003】
皮膚伸張に適する、様々な既知の皮膚伸張器設計が存在する。例えば、あご部は、心棒によって誘導装置上を互いに向かって移動することができる(例えば、欧州特許第0797406号)。別の既知の方法は、可撓性ストリップまたは剛性の棒上に設計されている、歯付掛金装置上のあご部を移動させるためのプッシャを使用することである(例えば、欧州特許第2120767号)。この先行技術から既知のように、あご部を固定するために傷口の縁部で皮膚内に突き刺さる髭部が、あご部自体に形成可能であり、または髭部モジュールとしてあご部の中に挿入され得る。既知の機器を使用して皮膚を伸張する際に、傷口縁部が共に引っ張られ、単一ステップで、または広い領域の傷口の場合、複数のステップで、傷口の対向する縁部が互いに当接し、共に縫合され得るまで、傷口に隣接する皮膚領域が伸張される。したがって、ある程度嵩張り、複雑な皮膚伸張器が、場合によっては2〜3日になることもある長期間、傷口に留まる。広い領域の傷口では、時には2つ以上の皮膚伸張器を互いに隣り合って使用する必要がある場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第0797406号
【特許文献2】欧州特許第2120767号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、傷口を塞ぐための皮膚伸張機器であって、皮膚の処置を改善することができ、使用するのが経済的である皮膚伸張機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有する機器によって、本発明により達成される。本発明の有利な実施形態が、従属項に記載されている。本発明の本質的な概念は、傷口縁部で皮膚に突き刺すことになる髭部のそれぞれを支持体内に配置することであり、その支持体は、皮膚伸張器の各あご部内に取り外し可能に取り付けられている。髭部を傷口縁部内に突き刺した後、あご部、およびあご部内に保持されている支持体は、傷口縁部を塞ぐために互いに向かって移動して、それによって、皮膚を伸張する。皮膚伸張器を使用して伸張する工程が終了すると、髭部によって、傷口縁部で互いに対向して固定されている支持体は、取り付け可能な固定要素を使用して、それらの相対的な位置に固定される。次いで、皮膚伸張器は、支持体から取り除かれることが可能であり、その結果、次に傷口縁部は、支持体および髭部によって共に保持され、支持体は固定要素によって共に結合される。
【0007】
この機器は、重要な利点を有する。傷口縁部が共に引っ張られ、傷口が縫合された後で、傷口縁部に固定されている支持体が、固定要素によって固定可能であり、皮膚伸張器を取り外すことができる。後に残る固定された支持体を使用することによって、傷口縁部をより長い期間共に保持することができ、その結果、傷口縁部を縫う必要がなくなる。取り外された皮膚伸張器は、他の作業に使用可能である。
【0008】
また、皮膚伸張器は、大きい皮膚欠損向けにも使用可能であり、その時、一連のステップで傷口を塞ぐために、最初の支持体の横方向に、髭部を有する追加の支持体を傷口縁部に取り付けることができる。このようにして、複雑な皮膚伸張器は、繰り返して使用することができる殺菌可能な機器として設計可能である。
【0009】
固定要素は、様々な相対的距離で対向する傷口縁部内に固定される支持体を保持するために、様々な寸法で提供され得る。傷口を単一の伸張ステップで塞ぐことができる場合、傷口縁部を互いに対して保持するような距離で、対向する支持体を固定する固定要素が使用される。傷口を単一の伸張ステップで塞ぐことができない場合、伸張ステップのそれぞれに対して、適切な距離で固定される、対向する支持体を保持する固定要素を使用することができる。皮膚伸張器は、次の伸張ステップのために支持体で再び使用されるまで、取り外され、他の場所で使用され得る。傷口に残っている支持体および固定要素は、ほんのわずかの空間のみを必要とするので、まだ完全に塞がれていない傷口は、皮膚伸張器が次に使用されるまで、一時的に最適に処置され得る。具体的には、例えば、傷口は、傷口縁部に固定されている支持体の上、および固定要素の上に配置される真空シールによってその間覆われることができる。
【0010】
有利な実施形態では、支持体は、ボルトが皮膚伸張器の引張方向の横方向に配置され、このボルトが髭部を支持するように設計されている。固定要素は、互い対向して固定される支持体の自由端上に配置可能であるディスクとして簡単に設計され得る。ボルトは、各あご部の受口内にそれぞれ配置可能であり、受口は、引張方向に対して横方向に延びている。これらの受口は、引張方向、言い換えれば、傷口に面する方向に開いている。皮膚伸張器を使用するとき、支持体が、皮膚の弾性のある引張力によって、各受口内に保持される。対向する支持体が、固定要素によって定位置に保持されるとき、あご部が互いから離れて移動することができ、その結果、支持体が、あご部から自由になることができ、皮膚伸張器を取り外すことができる。
【0011】
好ましくは、髭部は髭部モジュールに設計され、各髭部モジュールは、1つだけ、または2つ〜3つの小さい髭部を備える。髭部モジュールは、支持を補うボルトに押しつけることができて、その結果、髭部の数、および支持体上のそれらの互いの間隙、すなわち傷口縁部に平行な互いの間隙を様々に選択することができる。本発明は、図面に示されている例示的な実施形態を用いて以下に詳細に説明される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、皮膚の処置を改善することができ、使用するのが経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】その上に配置されている固定要素を備える機器の図である。
【
図2】固定要素を備えないこの機器の部分図である。
【
図6】支持体上に配置されている髭部モジュールの図である。
【
図7】固定要素によって固定されている2つの支持体の図である。
【
図9】第2の実施形態の支持体上に配置されている髭部モジュールの図である。
【
図10】第2の実施形態の固定要素によって固定されている2つの支持体の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による皮膚伸張機器は、図面の中の一実施形態に示される皮膚伸張器を備える。従来技術から既知の皮膚伸張器の他の実施形態もまた、本発明において使用することができる。
【0015】
皮膚伸張器は、細長いまっすぐな誘導棒10を備える。誘導棒10は、丸くない、例えば、矩形の断面を有する。長手方向に移動可能なあご部12が、誘導棒10上に配置されている。あご部12は、誘導棒10上に長手方向に移動することができ、あご部はこの目的のためにスリーブのようなプッシャ14を備え、このプッシャは、貫通部16によって誘導棒10上で導かれる。貫通部16の内径は、誘導棒10の外側断面に等しく、その結果、あご部12は回転しない形で、誘導棒10上で誘導される。歯付掛金装置18が、誘導棒10の長手方向に設計されている。掛金レバー20がプッシャ14に枢動可能に取り付けられており、前記レバーの掛金歯22が歯付掛金装置18に係合している。歯付掛金装置18は、各プッシャ14が誘導棒10の端部から誘導棒10の中間部の方へ移動することができるように設計されており、掛金歯22は、歯付掛金装置18の上を摺動し、それによって弾力的に偏向される。しかし、歯付掛金装置18に係合する掛金歯22は、プッシャ14が誘導棒10の端部の方へ逆に動くことを防止する。プッシャ14が誘導棒10の端部の方へ戻る動きは、それぞれの掛金歯22が、掛金レバー20によって歯付掛金装置18から引き抜かれる場合にのみ可能である。
【0016】
プッシャ14の下に、あご部のそれぞれが受口24を備える。この受口24は、誘導棒10に対して横に延びる連続溝の形態を有し、この溝はあご部12の前側に向かって開放されている。受口24は、例えば、矩形の断面を有し、この矩形の断面は、誘導棒10に垂直な平面に関してわずかに傾斜している。傾斜角度は、例えば、約30度であることができる。この傾斜により、受口24の開放されている前部がより高くなり、言い換えれば、受口24の閉鎖された基部よりも誘導棒10により近くなる。誘導棒10に横方向の受口24の幅は、概ね、プッシャ14の幅に等しく、または前記プッシャ14よりも幾分幅が広い。支持体26は、受口24の中に配置可能であり、皮膚の中に突き刺さることができる髭部28は、前記支持体に配置されている。支持体26は、受口24の中に位置し、支持体26は、受口24の内側断面に等しい断面を有し、その結果、髭部を有する支持体26が、回転しない形であご部12内に保持される。髭部28は、支持体26が取り付けられるとき、髭部28が誘導棒10に垂直な平面の方へ、例えば約30度の傾斜角度で傾斜するように、支持体26に配置される。
【0017】
図6から分かるように、例えば、図示の実施形態では、支持体26は、丸くない断面を有するボルト30を備える。髭部28のそれぞれは、髭部モジュール32内に配置され、髭部モジュール32は、軸方向にボルト30の上へ押されることが可能であり、ボルト30の丸くない断面によって、ボルト30上で回転することができない形で保持されている。各髭部モジュール32が、1つ、または2つ〜3つの髭部28を保持し、図示の実施形態の例では、それぞれ2つの髭部を保持している。ボルト30の長さは、支持体26があご部12よりも広い幅に及ぶように、横方向に受口24の長さよりも長いことが好ましい。ボルト30に押しつけられる髭部モジュール32の数、およびボルト30上の互いからの距離は、自由に選択可能である。
【0018】
固定要素34が、ボルト30のそれぞれの上の支持体26の少なくとも1つの自由端に配置可能であり、図示の実施形態の例では両方の自由端に配置されることが好ましい。
【0019】
固定要素34は、平坦なディスクの形状を有し、その平面は支持体26の横軸に垂直であり、具体的には、ボルト30の軸に垂直である。ディスクの高さは、固定要素が取り付けられるとき、髭部28が固定要素34の周縁部を越えて下方に延在し、一方、固定要素の上方縁部があご部を越えてできるだけ延在しないように選択されることが好ましい。誘導棒10の長手方向の固定要素34の長さは、誘導棒10上で互いに当接するあご部12内に保持されている少なくとも2つの支持体26上に固定要素34を取り付けることができるように、選択される。
【0020】
具体的に
図5〜
図7に示す実施形態では、固定要素34のディスクは、固定要素の下方縁部に縁部切れ込み36を備え、前記切れ込みによって、固定要素34は、ボルト30の自由端上に上方から取り付けることが可能である。その工程で、縁部切れ込み36は、減少した断面積の区域38内のボルト30の自由端を取り囲む。これにより、ボルト30の軸方向の任意の変位に対して、固定要素34をボルト30上に確実に保持する。区域38の断面積は、支持体26の傾斜角度で傾斜している平行な面を備え、したがって、前記断面の平行面に一致する縁部切れ込み36の平行面が存在する。このようにして、取り付けられた固定要素34は、ボルト30を保持し、それによって、支持体26はボルト30の軸の周りに回転されることに確実に対抗する。
【0021】
本発明による機器の使用を以下に説明する。皮膚欠損の広い領域を塞ぐために、皮膚伸張器が、例えば、
図1および
図2に示すように使用される。支持体26が、互いに向き合う対向する傷口縁部で皮膚の中に固定される。この目的のために、髭部を皮膚内に突き刺すことによって、特にボルト30が定位置に固定されるが、ボルトは、適切な長さ、および適切に選択された数の髭部モジュール32を有する。次いで、皮膚伸張器は定位置に設置され、2つのあご部12が、その受口24が互いに面するように、誘導棒10上に配置される。まず第1に、あご部12が、誘導棒10上に互いに遠く離れて配置され、その結果、互いから遠く離れている傷口縁部で固定される支持体26のそれぞれが、2つのあご部12の各受口24内に配置可能になる。次いで、あご部12は、互いに向かって誘導棒10上を移動する。このことにより、傷口縁部を共に引っ張り、髭部28の後ろに位置する皮膚領域が引張方向に伸張される。支持体26、および髭部28が回転しない形でそれぞれの受口24内に保持されるので、皮膚の弾力により髭部28が下方に、および離れて傾斜することができず、かつ支持体は受口24から外れて回転することができない。また、髭部28は約30度の傾斜角度で傾斜しており、髭部の先端が工程中に前方に向くので、髭部28が傷口縁部で皮膚から引き抜かれることができないことがさらに保証される。2つのあご部12が、互いに向かって移動する間、掛金歯22が歯付掛金装置18の上を摺動し、一方、掛金歯22を歯付掛金装置18の中に掛金で留めることが、あご部12が皮膚の弾性のある引張応力によって後ろに引っ張られることを防止する。
【0022】
2つのあご部12が完全に互いに向かって移動するとすぐに、
図2に示すように、対向する髭部28の先端がわずかに、例えば、約3mm重なる。
図1に示すように、あご部12のこの配置で、このとき、固定要素34がボルト30の張出し自由端上に配置される。このとき、固定要素34は、分離して配置されている2つの支持体26を確実に保持している。好ましくは、2つの固定要素34が使用され、1つの固定要素34がそれぞれボルトの両端部に配置される。このことは、ボルト30が、その全長に沿って定位置に保持されることを保証する。引張され、および伸張された皮膚の弾性のある引張力は、傾斜した位置にあるボルト30を傾斜した縁部切れ込み36内に引っ張り、ボルトが固定要素34から自由になることができなくなる。支持体26が固定要素34によって定位置に、分離して固定されるとすぐに、あご部12が互いから離れるように移動し、その結果、掛金歯22が、掛金レバー20によって歯付掛金装置18から外れて上がることができる。あご部12が、離れるように移動する場合、固定された支持体26は、受口24から外れて自由になり、その結果、皮膚伸張器を取り外すことができる。固定要素34によって共に保持されている髭部28を備える支持体26(
図7)が、傷口縁部を互いに対して保持し、その結果、傷口縁部を突き刺すことが必要でなくなる。
【0023】
図示の例示的実施形態では、特に
図5に示すように、固定要素34は、支持体26のそれぞれに対してそれぞれ2つの縁部切れ込み36を備える。このことにより、支持体26、および髭部28が、異なって対向して分離するように固定されることが可能になり、その結果、当接する傷口縁部が最適に調節可能になる。
【0024】
図1に示すように、他方のあご部12が、傷口縁部内に固定されている2つのあご部の背後で、誘導棒10上に配置可能であり、他方のあご部が、傷口縁部のそれぞれからある距離を置いて、髭部28によって伸張されることになる皮膚領域に固定されている支持体を保持する。例えば、欧州特許第2120767号から既知のように、このことにより、皮膚上に作用する引張力をより広い皮膚領域上に、より均等に分散させることが可能になる。
【0025】
皮膚欠損が非常に大きいので、単一のステップの皮膚伸張によって塞ぐことができない場合、固定要素34は、その縁部切れ込み36が引張方向により大きく離れているような形でもまた使用可能である。次いで、あご部12が、段階的に互いに向かってそれぞれ移動し、傷口縁部の皮膚が、各ステップで最大許容量まで引張される。各引張ステップの後、あご部12が、適切な長さの固定要素34によって、それぞれ定位置に固定され得る。次いで、皮膚伸張器が、次の伸張ステップのために再び使用されるまで、取り外されることが可能である。その間に、依然として開いた状態の傷口表面が、傷口縁部に固定され、固定要素34によって固定される支持体26と共に真空シールによって覆われることが可能になる。
【0026】
固定要素34の別の第2の実施形態が、
図8〜
図10に示される。この実施形態では、固定要素34もまた、平坦なディスクとして設計されている。縁部切れ込みの代わりに、平坦なディスクの固定要素34が、固定要素34の面内に貫通部40を備え、これらの貫通部は、固定要素34を支持体26の自由端上に、言い換えれば、具体的にはボルト30の自由端42上に、軸方向に配置することを可能にする。この実施形態では、固定要素34の貫通部40を誘導棒10に平行に延びるスロットとして設計することも可能である。貫通部40を通って延びる支持体26の自由端42は、2つの傷口縁部に固定されている支持体26の間の距離を再調整するために、これらのスロット内部で移動することができる。支持体26をそれぞれの再調整された位置に固定するために、固定要素34のスロットのそれぞれの内に配置される歯付掛金装置がそれぞれ存在し、コギングによって支持体26が互いに向かって移動することができるが、しかし、支持体26が皮膚の弾性のある引張力によって引き戻されることを防止する。具体的には、この実施形態では、皮膚が伸張された結果として、皮膚の弾性のある回復引張力が低下するとき、皮膚に固定されている支持体26を再調整することができる。
【符号の説明】
【0027】
10 誘導棒
12 あご部
14 プッシャ
16 貫通部
18 歯付掛金装置
20 掛金レバー
22 掛金歯
24 受口
26 支持体
28 髭部
30 ボルト
32 髭部モジュール
34 固定要素
36 縁部切れ込み
38 区域
40 貫通部
42 自由端