特許第5984848号(P5984848)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5984848パイロットクラッチ及びメインクラッチを備えるクラッチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984848
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】パイロットクラッチ及びメインクラッチを備えるクラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 13/52 20060101AFI20160823BHJP
【FI】
   F16D13/52 Z
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-552833(P2013-552833)
(86)(22)【出願日】2012年1月27日
(65)【公表番号】特表2014-505218(P2014-505218A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】DE2012000063
(87)【国際公開番号】WO2012107017
(87)【国際公開日】20120816
【審査請求日】2015年1月27日
(31)【優先権主張番号】102011010692.8
(32)【優先日】2011年2月8日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102011015059.5
(32)【優先日】2011年3月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】マルタン シャンブリオン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ラーバー
【審査官】 北中 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−053223(JP,A)
【文献】 特開2008−232250(JP,A)
【文献】 特開2005−133769(JP,A)
【文献】 特開2001−050307(JP,A)
【文献】 特開2006−010077(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02251465(GB,A)
【文献】 特開2001−140938(JP,A)
【文献】 特開2005−220929(JP,A)
【文献】 特開昭64−030931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/00−23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイロットクラッチ(1)とメインクラッチ(2)とを備えるクラッチであって、
前記パイロットクラッチ(1)は、緊締手段(4)を介して、閉鎖された状態又は開放された状態に移行可能であり、前記パイロットクラッチ(1)は作用結合部(80)を介して前記メインクラッチ(2)に、前記パイロットクラッチ(1)の開放位置及び閉鎖位置が、前記メインクラッチ(2)に伝達されるように結合されている、パイロットクラッチとメインクラッチとを備えるクラッチにおいて、
前記緊締手段(4)は、前記メインクラッチ(2)のクラッチケージ(18)に支持されており、
前記パイロットクラッチ(1)は、連行体ディスク(7)とディスク(6)とを有しており、
前記連行体ディスク(7)は、軸線方向に可動でかつ前記メインクラッチ(2)のクラッチケージ(18)に相対回動不能に結合されていて、
前記ディスク(6)は、伝動装置軸(37)に連結されているクラッチコア(11)に回動可能に支承されており、
前記連行体ディスク(7)は、前記パイロットクラッチ(1)のカバー(3)と前記連行体ディスク(7)との間に設けられた第1のばねエレメント(9)を介して、予負荷をかけられていることを特徴とする、パイロットクラッチとメインクラッチとを備えるクラッチ。
【請求項2】
前記作用結合部(80)は、カム(12)と、伝達エレメント(13)と、プレッシャプレート(14)とを有し、
前記カム(12)は前記パイロットクラッチ(1)に連結されていて、
前記プレッシャプレート(14)は前記メインクラッチ(2)に作用結合しており、
前記カム(12)と前記プレッシャプレート(14)との間に、力伝達用に、前記伝達エレメント(13)は配置されていて、
前記プレッシャプレート(14)は、ばね手段(82)を介して、前記クラッチコア(11)に結合されていることを特徴とする、請求項1記載のクラッチ。
【請求項3】
前記伝達エレメント(13)と前記プレッシャプレート(14)との間に、別のカム(31)が設けられており、前記カム(12,31)の相互に予負荷をかける別のばね手段(15)が設けられていることを特徴とする、請求項2記載のクラッチ。
【請求項4】
前記連行体ディスク(7)のピン(44)は、前記パイロットクラッチ(1)のカバー(3)の開口(43)内に挿入されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のクラッチ。
【請求項5】
前記メインクラッチ(2)の、前記クラッチコア(11)と内側のクラッチケージ(17)との間に螺旋ばねが配置されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のクラッチ。
【請求項6】
前記メインクラッチ(2)はクラッチケージ(18)を有し、該クラッチケージ(18)は打抜き部材として形成されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のクラッチ。
【請求項7】
前記クラッチケージ(18)は、保護リング(28)によって取り囲まれていて、該保護リング(28)は、前記クラッチケージ(18)を破損から保護していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載のクラッチ。
【請求項8】
前記クラッチを潤滑する油を案内する管(35)が設けられていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のクラッチ。
【請求項9】
前記パイロットクラッチ(1)及び前記メインクラッチ(2)は、遠心クラッチ(60)を介して互いに連結されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のクラッチ。
【請求項10】
前記作用結合部(80)のカム(12)に連結されていて、かつ前記カム(12)の加速を減衰する補償質量体(70)が設けられていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載のクラッチ。
【請求項11】
前記カム(12)は、歯車システム(71,72,73)を介して前記補償質量体に連結されていることを特徴とする、請求項10記載のクラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載のクラッチに関する。
【0002】
出願人によって、トルクフィーラを備えたいわゆるブースタクラッチが公知になっている。この種のクラッチは、クラッチの少ない操作力において高いトルクを伝達することができるようにするために使用される。さらに、ブースタクラッチは操作エネルギの減少を可能にし、惰行モーメント(アンチホッピング機能)の制限を提供する。
【0003】
本願の目的は、改良されたクラッチを提供することである。
【0004】
本発明の目的は請求項1に記載のクラッチにより達成される。
【0005】
本発明の別の有利な構成は、従属請求項に記載されている。
【0006】
提案したクラッチの利点は、クラッチのダイナミック感度が改良されている点にある。このことは、パイロットクラッチ用の緊締手段が、メインクラッチのクラッチケージにおいて支持されていることにより達成される。
【0007】
さらに別の構成において、パイロットクラッチとメインクラッチとの間の作用結合のための手段が、ばね手段を介してクラッチコア(Kupplungskern)に結合されている。こうして、作用結合のための手段、特にプレッシャプレートがセンタリングされる。
【0008】
さらに別の構成において、作用結合部のカムに予負荷がかけられている。こうして、パイロットクラッチの閉鎖又は開放が良好かつ迅速にメインクラッチに伝達される。
【0009】
さらに別の構成において、メインクラッチのクラッチケージに相対回動不能に結合されていて、別のばねエレメントによって予負荷をかけられている連行体ディスク(Mitnehmerscheibe)がパイロットクラッチに設けられている。こうして、クラッチの伝達可能なトルクの変動により発生するパイロットクラッチの振動は抑制される。別のばねエレメントの設置は、パイロットクラッチのフェーシングクッション(Belagfederung)を実現するので、漸進的なモーメント伝達が改良される。
【0010】
さらに別の構成において、メインクラッチのクラッチコアと内側のクラッチケージとの間にトルクフィーラが配置されている。こうして、クラッチのコアとメインクラッチとの間の改良された力学的な結合が達成される。これにより、クラッチが振動する傾向、特にクラッチのジャダー或いは異常な振動(Rupfen)の傾向は減じられる。
【0011】
さらに別の構成において、メインクラッチは、打抜き部材として形成されているクラッチケージを有する。したがって廉価な製造が可能である。
【0012】
さらに、クラッチケージの安定化のために、クラッチケージを取り囲み、打抜き部材として形成されているクラッチケージを破損から保護する保護リングが設けられている。
【0013】
さらに別の構成において、連行体ディスクは、パイロットクラッチのカバーの切欠き内に挿入されている外方に突出しているピンを有する。こうして、切欠きの側面は、第2のばねエレメントの調整段階(Modulationsphase)が終了した場合に、ストッパ面として働く。
【0014】
さらに別の構成において、クラッチを潤滑するための油を案内するために使用される複数の管がクラッチに設けられている。好ましくは、これらの管は、対称軸線に対して平行に配向されていて、例えば油の排出のための側方の開口を有する。したがって、潤滑油流の規定のかつ正確な案内が可能である。
【0015】
さらに別の構成において、パイロットクラッチとメインクラッチとは、遠心クラッチを介して互いに連結されている。例えばパイロットクラッチのカバーと、メインクラッチのクラッチケージとの間に遠心クラッチが設けられていてよい。こうして、カバーは遠心クラッチが閉鎖されて初めてクラッチケージと共に運動する。
【0016】
さらに別の構成において、パイロットクラッチとメインクラッチとの間の作用手段に連結されていて、作用手段の振動の減衰を可能にする補償質量体が設けられている。
【0017】
さらに別の構成において、補償質量体は作用手段のカムに結合されている。補償質量体とカムとを連結するための歯車システムが設けられている。連結は、カムが反対方向の回動方向に補償質量体を駆動するように行われる。こうしてカムの振動は、補償質量体により減衰される。したがって、作用手段は励振時には鈍感である。例えばパイロット制御クラッチがエンジンに結合されていると、補償質量体は、ブリッピング(Gasstoesse)、つまりエンジンの短時間のトルク変化に対するクラッチの鈍感性を改良する。こうしてパイロットクラッチの入力部における短時間のトルクピークが減じられるので、パイロットクラッチの閉鎖、ひいてはメインクラッチの閉鎖が回避される。さらに補償質量体により、始動時のクラッチのジャダーの問題の軽減も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】プッシュ閉鎖式のパイロットクラッチを備えたクラッチの第1の実施の形態を示す図である。
図2】プッシュ式のクラッチを備えたクラッチの第2の実施の形態を示す図である。
図3図1の実施の形態の横断面図である。
図4】プレッシャプレートとクラッチコアとの接続を詳細に示す図である。
図5図1及び図3に示した実施の形態のクラッチケージの斜視図である。
図6図3に示した実施の形態を詳細に示す別の図である。
図7図3に示した実施の形態の潤滑システムを詳細に示す図である。
図8】メインクラッチのクラッチケージとパイロットクラッチのカバーとの間に、遠心クラッチを備えたクラッチを示す概略図である。
図9】遠心クラッチを備えた、図8に示したクラッチの原理図である。
図10】補償質量体を備えたクラッチの概略図である。
図11】補償質量体の機能形式についての概略的な表である。
図12図10に示した補償質量体を備えたクラッチを示す斜視的な断面図である。
図13】歯車の概略図である。
図14図3に示したクラッチの別の断面図である。
図15図3に示したクラッチを一部分切り取って示した斜視的な断面図である。
【0019】
以下に、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1に、クラッチの第1の実施の形態の概略的な部分図を示す。図面には、中心軸線22に対してクラッチの半分が概略的に記載されている。図1に示した部分は、中心軸線22に対して回転対称的に形成されている。クラッチは、作用手段80を介してメインクラッチ2に連結されているパイロットクラッチ1を有する。パイロットクラッチ1、メインクラッチ2及び作用手段80は、パイロットクラッチの開放位置及び閉鎖位置がメインクラッチに伝達されるように形成されている。こうして、同時にメインクラッチを開放するか又は閉鎖するためにパイロットクラッチの操作が必要になるだけである。したがって、クラッチの開放又は閉鎖のための操作力は減じられる。
【0021】
クラッチは、第1の接続部33に結合されているクラッチコア11を有する。図示の実施の形態において、第1の接続部33は、伝動装置出力軸に接続されている。クラッチコア11は、プレッシャプレート14を有する。このプレッシャプレート14においては相対回動不能であるが中心軸線22の軸線方向において移動可能に、第2のカム(Rampe)31が保持されている。選択された実施の形態に基づいて、第2のばね手段15が設けられている。この第2のばね手段15は第2のカム31に、対応配置されている第1のカム12に向かって予負荷をかけている。第2のカム31と第1のカム12との間に、伝達エレメントとして球体13が配置されている。2つのカム12,31及び球体13は、作用手段を形成する。
【0022】
第1のカム12は、中心軸線22に対して平行に移動可能に支承されていて、第2のカム31に相対するように軸受10に支持されている。軸受10は、第1のカム12に相対するようにコア部分32に支持されている。第1のカム12は、結合手段8を介してディスク6に結合している。このディスク6は、メインクラッチ2のクラッチケージ18の上側の支持ディスク5に隣接して配置されている。支持ディスク5に相対して、中心軸線22に沿って軸線方向に移動可能でかつクラッチケージ18に相対回動不能に挿入されている連行体ディスク7が設けられている。さらに、クラッチケージ18の上側の端部領域に配置されているカバー3が設けられている。このカバー3は、実質的にL字状に形成されていて、支持ディスク5及びクラッチケージ18の上側の側方の端部領域を覆っている。さらに、カバー3は側方に突出しているカバー縁部23を有していて、このカバー縁部23は連行体ディスク7の下側に形成されている。カバー縁部23と連行体ディスク7との間には、第1のばね手段9が形成されていて、この第1のばね手段9は、ディスク6に向かって連行体ディスク7に予負荷をかけている。
【0023】
支持ディスク5とカバー3との間には、緊締手段として皿ばね4が配置されている。この皿ばね4は、所定の端部領域で支持ディスク5に支持されていて、カバー3の支持体30に当接している。図示のパイロットクラッチは、押して閉じるプッシュ閉鎖式のクラッチである。
【0024】
コア11は、螺旋ばねの形式で形成されているトルクフィーラ16を介して、メインクラッチの内側のクラッチケージ17と接続している。内側のクラッチケージ17内に、複数のディスク19が保持されている。これらのディスク19は、内側のケージ17と相対回動不能に、かつ中心軸線22に対して平行で、中心軸線22に対して軸線方向に移動可能に内側のケージ17内に保持されている。2つのディスク19の間には夫々、クラッチケージ18に相対回動不能に、かつ中心軸線22に対して軸線方向に移動可能に配置されている連行体ディスク20が配置されている。第2のカム31と、最も上にあるディスク19との間に1枚の連行体ディスク20が配置されている。クラッチケージ18は、底部プレート21を介して第2の接続部34に接続されている。この第2の接続部34は、エンジンのクランク軸と結合している。
【0025】
第1のカム12、伝達エレメント13及び第2のカム31を有する作用手段は、2つのカム12,31相互の所定の回動により、第2のカム31が下方に押し付けられ、ひいては連行体ディスク20及びディスク19が押し合わされ、したがってメインクラッチが閉鎖することがもたらされるように形成されている。さらに対応して傾斜して配置されたカム面が形成されている。選択された実施の形態に基づいて、一方のカム12,31だけが、傾斜して配置されたカム面を有していてもよい。2つのカム12,31の移動は、パイロットクラッチが開放されている場合には生じない。その理由は、この場合にカムは互いに回動しないからである。しかしパイロットクラッチが閉鎖されると、皿ばね4は端部でもって支持ディスク5に支持され、支持体30を介してカバー3を上方に押す。これにより、支持面47を介してカバー3に軸線方向で支持されている連行体ディスク7は、ディスク6に向かって上方に押圧される。同時に、皿ばね4により支持ディスク5はディスク6に向かって押圧される。したがって、ディスク6と連行体ディスク7との間の摩擦結合が達成される。結果的に、ディスク6はディスク7の回動運動と共に運動する。したがって、結合手段8を介して、第1のカム12も、第2のカム31に対して回動運動させられる。これによりカム面を介して球体13は、第2のカム31に向かって下方に押圧される。結果的に、第2のカム31は、連行体ディスク20及びディスク19を押し合わせる。したがって、メインクラッチ2は閉鎖される。
【0026】
パイロットクラッチ1の開放された状態において、第2のカム31に対するディスク6、ひいては第1のカム12の回動は起こらない。したがって、パイロットクラッチ1が開放された場合には、メインクラッチ2も開放されている。
【0027】
ディスク6に向かって予負荷を連行体ディスク7に加える第1のばね手段9の配置により、パイロットクラッチにおける振動を抑制することができる。カバー3は、図示の実施の形態において、クラッチケージ18に対して軸線方向に移動可能であるが、クラッチケージ18に相対回動不能に結合されている。
【0028】
第2のばね手段15の配置により、第1のカム12に対する第2のカム31の予負荷が達成される。これにより、カムは常に力結合(Kraftschluss)されているので、2つのカムの相対的な回動の迅速な伝達が互いに行われる。選択された実施の形態に基づいて、第2のばね手段を形成するために、例えば板ばねパッケージ又は圧縮ばねを使用することができる。さらに板ばね又は圧縮ばねを介して、プレッシャプレート及びカムをセンタリングすることができる。したがって、プレッシャプレート及びカムの正確な配向が、中心軸線22に対して中心対称的に与えられている。
【0029】
第1のばね手段9の配置により、パイロットクラッチのディスク6及び連行体ディスク7のフェーシングクッションが可能になるので、漸進的なモーメント伝達が可能である。別の実施の形態において、プレッシャプレート14をコア11に結合している第3のばね手段82が設けられている。
【0030】
図2に、図1に示したアセンブリに基づくメインクラッチ2が形成されている別の実施の形態を示す。2つの実施の形態における相違は、パイロットクラッチ1の構成において明らかになる。図2には別体のカバーは設けられておらず、皿ばね4が、クラッチケージ18のカバープレート26における軸受27において支持されている。さらに、皿ばね4の外側の端部は連行体ディスク7と作用結合している。この連行体ディスク7は、この実施の形態において、ディスク6の上側に配置されている。ディスク6は、第2のケージフランジ25に載置されていて、この第2のケージフランジ25は、クラッチケージ18に結合されている。さらに、クラッチケージ18の外側に、第1のケージフランジ24が形成されている。第1のケージフランジ24と連行体ディスク7との間に、第1のばね手段9が緊締されている。したがってまたパイロットクラッチ1のフェーシングクッションが達成される。図2に示したクラッチは、プッシュ式のクラッチである。その他、機能形式は、図1に示したクラッチの機能形式と同じである。
【0031】
図3に、図1に示したクラッチの斜視図の横断面図を示す。
【0032】
図3に、クラッチコア11の構成を明確に示す。このクラッチコア11は、一方の側で第1の接続部33に接続されていて、他方の側でトルクフィーラ16を介して内側のクラッチケージ17に接続されている。皿ばね4を操作するために、皿ばね4の内側のリンク端部に載置されている操作リング29が設けられている。さらに、第1の接続部33に接続されていて、さらに軸受10用の支持面として働くコア部分32が示されている。このコア部分32は、ポット状に形成されていて、外方に突出している上側の縁部領域でもって軸受10に載置されている。軸受10は、例えば針状軸受として形成されている。図面の左側に、球体13及び2つのカム12,31の横断面が看取できる。図示の実施の形態において、第2のばね手段15は、皿ばねの形状において形成されている。皿ばねは、第2のカム31の外側の縁部領域に配置されていて、第2のカム31とプレッシャプレート14との間に緊締されている。
【0033】
図示の実施の形態において、第1のばね手段9は、板ばねの形状において形成されている。この板ばねは、カバー縁部23と連行体ディスク7との間に緊締されている。さらに、連行体ディスク7のノーズが、カバー3の側方の第2の開口43を抜けて突出している。
【0034】
さらに、プレッシャプレート14は、第3のばね手段82を介してクラッチコア11に接続されていることが看取できる。第3のばね手段は、板ばねの形式において形成されている。さらに潤滑油を案内するための複数の管35が設けられている。
【0035】
さらに、連行体ディスク20は外側の端部部分でもって、クラッチケージ18の切欠きに係合していることが看取可能である。さらに、クラッチケージ18は、上側の領域において保護リング28によって取り囲まれている。保護リング28は、クラッチケージ18が破断することがないようにしている。このことは、特にクラッチケージ18が打抜き部材から形成されていると有利である。
【0036】
図4は、図3の実施の形態を詳細に示す図である。プレッシャプレート14の接続領域38が示されていて、この接続部38は内方にクラッチコア11の上まで案内されている。接続領域38は、板ばねの形式で形成された第3のばね手段82を介して、クラッチコアのピン39に結合されている。プレッシャプレートを取り付けるために、例えば3つの上記取付装置が設けられている。これにより、プレッシャプレートはセンタリングされ、コア11と相対回動不能に結合され、さらにばね弾性的に支承される。図示の実施の形態には、クラッチコア11の第1の接続部33に連結されている伝動装置軸37が示されていている。さらに、中心軸線22に対して平行に配置されていて、少なくとも1つの側方の開口50を有する管35が看取可能である。コア部分32は、図4において、図面を見やすくする理由により示していない。
【0037】
図5に、底部プレート21を備えたクラッチケージ18を示す。このクラッチケージ18は、底部プレート21及び互いに離間された側壁40を有する。これらの側壁40の間には、第3の開口45が形成されている。側壁40は、交互に中央にまでか又は上側の端部領域にまで案内されている。中央には保護リング28が配置されていて、この保護リング28は側壁を拡がりから保護している。1つおきの側壁40の上側の端部領域には、支持ディスク5が配置されている。この支持ディスク5は、側壁40と不動に接続されているウェブ41を有する。こうして、クラッチケージ18の廉価でかつ安定した形状が可能になる。クラッチケージ18は、打抜き部材として形成されていて、それにもかかわらず保護リング28に基づき安定的である。
【0038】
図6は、図3を詳細に示す図である。この実施の形態において、第2の開口43を、カバー3の側壁において明確に看取することができ、第2の開口43内に、連行体ディスク7のピン44が突入する。さらに、側壁40が、カバー23の案内開口51を通って突出していることが看取できる。さらに、ウェブ41は、カバー3の上側の角領域における開口42を通じて案内されている。さらに、クラッチケージ18の第3の開口45内に突入している、連行体ディスク20の第2のピン46が示されている。
【0039】
図7は、有利な潤滑システムを説明するために、図3を詳細に示す別の図である。潤滑油は、例えば伝動装置軸37を通じて供給される。潤滑油の通流は、矢印52を介して概略的に示されている。好ましくは、潤滑油を規定の経路で分配するために、中心軸線22に対して平行に配置されている複数の管35がクラッチに設けられている。これらの管35は、クラッチコアの種々異なる構成部材を通って案内されていて、クラッチの種々異なる平面に潤滑油流を分配する。油は伝動装置入力軸から来て、例えば軸受10を支持する領域に集められる。この実施の形態に基づき、潤滑油は管を介して深い領域に下方へと案内される。分配のために、管35は側方の開口50を有し、その結果、管35の入口と出口との間で潤滑油を放出することもできる。したがって、油は種々異なる摩擦面に分配される。選択された実施の形態に基づいて、管を曲げることもできるか又は別の角度方向に配向されていてもよい。さらに図7には、プレッシャプレート14の接続領域18の一部分を示す。
【0040】
図8に、クラッチケージ18が遠心クラッチ60を介してパイロット制御クラッチに連結されているクラッチの概略図を示す。この思想の本質は、パイロット制御クラッチと、図3の実施の形態において形状結合を介して達成されるクラッチケージとの間の結合が、遠心クラッチ60を介している、という点にある。
【0041】
図9は、図8に示した遠心クラッチを備えたクラッチの構造を示す概略図である。実質的にクラッチは、図1の概略的な構造に基づいて構成されている。しかし、カバー3は形状結合式ではなく、遠心クラッチ60を介してクラッチコアに連結されている。さらに、皿ばね4用の支持体が、カバー3の支持プレート61上に支持されている。支持プレート61は、第2の軸受62を介してコア11、特にコア部分32に対して支持されている。カバー3は、外側の縁部領域62において、クラッチケージ18に対してオーバラップするようにさらに下方に案内されている。クラッチケージ18と縁部領域62との間に、遠心クラッチが配置されている。したがって、カバー3とクラッチケージ18との間の相対回動不能な結合は、クラッチケージ18が回動して初めて達成される。クラッチケージ18の回動時に、クラッチケージ18に旋回可能に保持されている遠心クラッチ60のフラップ18は、カバー3の縁部領域62の内面を押圧するまで外方に引っ張られる。これにより、トルクをカバー3に加える接触力が形成される。これによりカバーは、クラッチケージ18とともに回動するように駆動される。
【0042】
図10には、補償質量体70が作用手段と、つまりパイロットクラッチ1のカムと連結されているクラッチのさらに別の実施の形態を示す概略図である。図示の実施の形態において、パイロット制御クラッチは、エンジン接続部に結合されている。第1のカム12は、結合手段71を介して、補償質量体70と接続している。結合手段は、第1のカム12の加速が減衰されるように形成されている。こうして、第1のカム12の不都合な励振は減じられ、特に抑制される。パイロットクラッチが開放されている限り、図示の実施の形態においてパイロットクラッチはエンジン駆動軸の回動に正確に追従する。つまり、2つのカム12,31は互いに逆方向に回動することはできないので、メインクラッチ2は開放されている。
【0043】
機能原理は、図11に基づいて説明することができる。2つのカムは、パイロットクラッチをエンジンに接続する一種のばねとみなすことができる。補償質量体70を用いていないシステムにおいて、エンジンの加速は動的な力を形成する。この力はばね(カム)を介してパイロットクラッチに伝達される。この荷重はばねを緊張させる。したがって、ばねは回動するので、メインクラッチは閉鎖される。
【0044】
補償質量体を設けることにより、エンジンの動的な力が、第1のカム12から補償質量体70に、例えば歯車を介して伝達される。この構造は、カムへの荷重を防ぐので、カムの回動は回避され、その結果、メインクラッチの閉鎖が阻止される。
【0045】
したがって、上記アセンブリの利点は、クラッチがブリッピングに対して鈍感になる、という点にある。さらに車両又は自動二輪の始動時のジャダーの問題は抑制される。
【0046】
図12は、図10に示したクラッチの斜視図の断面図である。この実施の形態において、第2のカム31は、歯付きリングシステムの形状の結合手段を介して補償質量体70に結合されている。補償質量体70は、クラッチのカバー3に回動可能に支承されているリングの形状において形成されている。第1のカム12は、歯車73に係合している外側の歯付きリング72を有する。歯車73は、クラッチに回動可能に支承されている。歯車は、補償質量体70の内面に形成されている第2の歯付きリング71に係合している。第1のカム12が加速されると、補償質量体70の歯車システムを介して反対方向に動かされる。したがって、第2のカムリングの加速は制動される。歯車の代わりに、第1のカムの運動を補償質量体70に伝達するために、例えばベルトといった他の作用手段を使用することもできる。
【0047】
図13には、第1のカム12と補償質量体70とを備えた歯車73の概略図を示す。
【0048】
図14に、図3の実施の形態の別の断面図を示す。
【0049】
図15に、図3の実施の形態の概略的な部分図を示す。
【符号の説明】
【0050】
1 パイロットクラッチ
2 メインクラッチ
3 カバー
4 皿ばね
5 支持ディスク
6 ディスク
7 連行体ディスク
8 結合手段
9 第1のばね手段
10 軸受
11 コア
12 第1のカム
13 球体
14 プレッシャプレート
15 第2のばね手段
16 トルクフィーラ
17 内側のクラッチケージ
18 クラッチケージ
19 ディスク
20 連行体ディスク
21 底部プレート
22 中心軸線
23 カバー縁部
24 第1のケージフランジ
25 第2のケージフランジ
26 カバープレート
27 軸受
28 保護リング
29 操作リング
30 支持体
31 第2のカム
32 コア部分
33 第1の接続部
34 第2の接続部
35 管
37 伝動装置軸
38 接続領域
39 ピン
40 側壁
41 ウェブ
42 開口
43 第2の開口
44 ピン
45 第3の開口
46 第2のピン
47 支持面
50 側方の開口
51 案内開口
52 矢印
60 遠心クラッチ
61 支持プレート
62 縁部領域
70 補償質量体
71 第2の歯付きリング
72 外側の歯付きリング
73 歯車
80 作用手段
82 第3のばね手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15