(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
歩行可能ないし歩行不能な被験者を医学的に診断・処置する際、当該被験者に関する一
以上の生理学的及び/又は運動能力的な特性及び/又はパラメータをモニターするのが望
ましかったり、必要であったりする場合が多い。また、ストレスや危険を伴う可能性のあ
る状況下、例えば、ファースト・リスポンダー(first responders。例えば、消防士、警
察官、救急隊員等)が多くの場合遭遇するような状況下や、運動及び/又は競技のトレー
ニング中において、歩行可能な被験者の生理学的特性をモニターするのが望ましい場合も
多い。
【0004】
このようなことから、歩行可能・歩行不能な被験者の生理学的な特性・パラメータをモ
ニターするために種々のシステムや方法が開発されてきた。初期の生理学的モニタリング
システムは、一般に、着用可能な物品に固定したり、そのような物品のポケット(pouch
)の中に入れられる電気/電子機器(例えば、心拍数センサー)を備えるものであった。
各機器間の個々の電線類は、後から当該物品の外側に固定したり、その一部ないし全部を
縫い目の中などに配設したりした。例を挙げるとすれば、2001年3月6日発行の米国
特許第6,198,394号に開示された(軍事目的の)ハーネスシステムがある。当該
文献全体を本明細書に参照により援用する。
【0005】
初期の着用可能なモニタリングシステムないし物品が孕む大きな問題点としては、電線
類の一部ないし全部が、特に重要な接続領域において、布地材から分離独立しているとい
う点が挙げられる。結果として、電線類は、他の物体に引っ掛かったり絡まったりして当
該機器から切断される可能性があり、また多くの場合、そのようなことが実際起こった。
【0006】
当該初期のシステムの上記問題を解消するために、電子回路やデータ送信線を布地材に
一体化した着用可能なモニタリング衣類が開発された。例を挙げるとすれば、2000年
6月27日発行の米国特許第6,080,690号、1999年5月25日発行の米国特
許第5,906,004号、2004年4月27日発行の米国特許第6,727,197
号及び2004年8月20日出願の米国特許出願第10/922,336号(公開第20
05/0054941 A1号)に開示された着用可能なモニタリング衣類がある。これら
各文献の全体を本明細書に参照により援用する。
【0007】
米国特許第6,080,690号及び米国特許第5,906,004号には、導電性の
繊維を有する着用可能なモニタリング衣類が開示されている。上記特許には、一以上のセ
ンサーと制御装置とによる、当該機器間の接続を容易にするために、当該導電性繊維を衣
類内の数多くの地点に色々な配向で配設することができる点が記載されている。
【0008】
しかし、上記衣類及びシステムには、当該布地内において電気・データ接続部を完璧に
形成しておかないと、各機器間のデータ・電力のルーティングが制約されてしまうという
大きな欠点がある。本技術分野で周知のように、上記の如き接続部を形成するには、多く
の場合、非常に複雑で高価な製造プロセスが必要となる。
【0009】
米国特許第6,727,197号及び米国特許出願第10/922,336号には、更
に別の着用可能なモニタリング衣類が開示されている。当該モニタリング衣類も同様に、
各機器による機器間の接続を容易にするために導電性の繊維を含むものである。また、当
該衣類は、各機器(センサー等)に電力を供給し、各機器の信号を信号送信/処理回路へ
ルーティングするための一体化された(場合によっては「細長くて伸長可能な」)バスを
備える。
【0010】
上記に開示された衣類によれば、各機器間で電力・データをルーティングするための効
果的な一体型の手段が提供されるものの、それでも当該衣類(及びシステム)には幾つか
の欠点・デメリットがある。主な欠点としては、機器間の接続が依然として複雑で、よっ
て、製造に時間とコストがかかるという点が挙げられる。
【0011】
したがって、複数の生理学的特性を正確且つリアルタイムに決定するのが容易であり、
簡単に製造することのできる、改良された生理学的モニタリング衣類を提供するのが望ま
しい。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を詳細に説明する前に理解されたいのが、本発明が、特に例示した―当然変更さ
れる可能性のある―衣類、装置、システム、回路又は方法に限定されるものではないとい
うことである。したがって、本発明の実施にあたっては、本明細書に記載した着用可能な
物品、装置、システム及び回路と類似ないし均等の数多くのものを使用することが可能で
はあるが、本明細書では、好適な着用可能な物品、装置、システム及び回路について記載
する。
【0017】
また、本明細書で使用する用語については、本発明の特定の実施形態を説明するために
のみ用いられているのであって、本発明を限定する意図はないことも理解されたい。
【0018】
特段の定義のない限り、本明細書で使用する技術的・科学的な用語は、いずれも、本発
明が属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解するであろう意味を有する
。
【0019】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される、冠詞「a」、「an」及び「the」で示
す単数形の対象には、文脈上明らかに単数である場合を除いて、複数の指示対象が含まれ
る。
【0020】
また、本明細書で参照するあらゆる刊行物、特許及び特許出願については、これ以前に
参照したものも、これ以降参照するものも、その全体を参照により援用する。
【0021】
本明細書で言及する刊行物は、ただ単に、本願の出願日前に開示されたものであるため
、ここに記載したまでである。本明細書の如何なる記載についても、先発明の規定に基づ
き、本発明がこれら刊行物よりも早い日付を得る権利を有しないことを自認するものであ
ると解釈してはならない。また、ここに記載した公開日・公表日は、実際の公開日・公表
日と異なる場合があるので、個別に確認する必要があると思われる。
【0022】
<定義>
本明細書で用いる「呼吸系のパラメータ(respiratory parameter)」及び「呼吸系の
特性(respiratory characteristic)」との文言は、呼吸器系及びその機能に関連する特
性を意味しこれを含むものとする。例えば、呼吸頻度(breathing frequency(fB))
、1回呼吸気量(tidal volume(V
T))、吸息体積(inspiration volume(V
I))、
呼息体積(expiration volume(V
E))、分時換気量(minute ventilation(VE))
、吸息呼吸時間、呼息呼吸時間及び流量(例えば、胸壁容積の変化率等)が含まれるが、
これらに限定されるものではない。また、「呼吸系のパラメータ」及び「呼吸系の特性」
との文言は、胸壁の区画の同期的・非同期的な動作による換気力学的な推測(inferences
regarding ventilatory mechanics)を意味しこれを含むものとする。
【0023】
本発明によれば、体積信号から流量や呼吸の加速度を求めることができる。また、胸壁
を構成する個々の区画間の動作の非同期性の度合いから、多くの換気力学的な推測を導く
ことができる。
【0024】
本明細書で用いる「生理学的パラメータ(physiological parameter)」及び「生理学
的特性(physiological characteristic)」との文言は、心臓の電気的活動、他の筋肉の
電気的活動、脳の電気的活動、脈拍数、血圧、血中酸素飽和度、皮膚温度及び核心温度を
意味しこれらを含むものとするが、これらに限定されるものではない。
【0025】
本明細書で用いる「空間的パラメータ(spatial parameter)」及び「空間的特性(spa
tial characteristic)」との文言は、被験者の位置・向き(orientation)及び/又は動
作を意味しこれを含むものとする。
【0026】
本明細書で用いる「衣類(garment)」との文言は、被験者の身体の少なくとも一部を
覆うのに適したあらゆる物品を意味し含むものとする。例えば、シャツ、ベスト、ジャケ
ット、バンド等を含むが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本明細書で用いる「患者(patient)」及び「被験者(subject)」との文言は、ヒト及
び動物を意味しこれを含むものとする。
【0028】
肺換気量、1回呼吸気量、呼吸速度や、その他の関連する呼吸系の特性は、生体内にお
ける酸素と二酸化炭素の遷移(transpiration)について実用的で信頼性のある測定基準
となりうる。呼吸系の特性は、運動の成果、生理学的ストレスや、その他の生理学的特性
と直結している。1回呼吸気量を外部から求める一つの方法は、胸部の容積変化を測定す
ることである。胸部の容積変化は、肺の拡張・収縮に起因する。圧力範囲の最大値及び最
小値での肺の気圧は雰囲気圧と平衡であるため、肺の容積と、吸い込んだ空気の体積との
間には非常に緊密で単調な関係がある。
【0029】
胸部の容積変化を正確に測定するには、胸郭における胸部の直径の変化を測定する必要
がある。さらに、胸部の直径の変化を胸郭の下方でも測定することで、より正確に測定す
ることができる。胸郭下方で胸部の直径の変化をモニターすることで、横隔膜によっても
たらされる呼吸(diaphragm delivered breathing)を明らかにすることができる。横隔
膜による呼吸は、横隔膜筋の収縮・弛緩によって腹部の器官が下方及び外方に押されて、
有効肺容積が増加するというものである。
【0030】
呼吸系の特性をモニタリング・分析することは、運動競技での用途に特に役立ちうる。
なぜなら、運動能力と、運動競技者による酸素及び二酸化炭素の処理の仕方との間には直
接的な関係があるからである。例えば、多くの運動トレーニングの場面では、運動競技者
の身体が有酸素運動と無酸素運動との間で切り替わる時点―運動競技者の換気性作業閾値
(ventilatory threshold)とも呼ばれる―を知ることが有益である。換気性作業閾値を
超えることは、即ち、スポーツ活動の最中における懸案となる運動能力の限界を示すこと
となる。例えば、運動競技者にとって、限られた時間、無酸素状態でトレーニングするこ
とは有益である場合がある。しかし、多くのスポーツの場合、適正なトレーニングに必要
なのは、限られた時間の無酸素運動と、その間に差し挟まれるより強度の低い有酸素運動
だけである。ところが、運動競技者にとって、呼吸系特性等の生理学的特性を参照するこ
となく、自分が無酸素状態・有酸素状態のどちらの状態にあるのかを知ることは困難であ
る。したがって、呼吸をモニタリングしてデータ処理を行なうことで、運動競技者の運動
状態を正確且つ略瞬時に測定することが可能となり、それにより、運動競技のトレーニン
グにおいて実質的なメリットを提供することができる。運動競技者の経時的な換気性作業
閾値の変化や、運動後の回復期間中の1回呼吸気量のパターンは、あるトレーニング・プ
ログラム中に運動競技者のフィットネス・レベルがどの程度改善したかを測る上で有用と
なりうる。また、呼吸をモニターすることで、被験者の静止時代謝率の変化をモニタリン
グ・分析することが可能となる。
【0031】
そして、身体に対する負荷が、現在の肺換気量ではもはや十分に生命を維持することが
できないレベルに達する時点が、第2の換気性作業閾値である。この状態が長く続き過ぎ
ると、虚脱を引き起こすことになるので、この地点を決定することは、医学的な用途、特
にファースト・リスポンダー(first responder、現場に最初に駆けつける医学的訓練を
受けた人)やその他の救急隊員にとって有益となりうる。
【0032】
本発明は、被験者の生理学的・能力的な特性・パラメータのモニタリングを容易にする
、着用可能な生理学的モニタリング衣類を対象とする。上記の通り、本生理学的モニタリ
ング衣類は、当該衣類と共に使用される各機器による各機器間の通信を容易にする、一体
型の機器接続・データ送信手段(integral component connecting and data transmissio
n means)を備える。
【0033】
本発明の幾つかの実施形態においては、生理学的モニタリング衣類は、磁力計システム
を備え、当該磁力計システムは、当該着用可能な衣類に埋め込まれるか当該衣類によって
運ばれる。以降詳細に説明するが、当該磁力計システムにより、種々の呼吸系の特性・パ
ラメータを正確且つリアルタイムに求めるのが容易となる。
【0034】
幾つかの実施形態においては、生理学的モニタリング衣類は、更に追加の生理学的セン
サー及び処理・モニタリング手段を備え、これらは同様に、当該着用可能なモニタリング
衣類に埋め込まれるか当該衣類によって運ばれる。上記生理学的センサーとしては、脳、
心臓及び他の筋肉の電気的活動(例えばEEG、ECG、EMG等)、脈拍数、血中酸素
飽和度(例えばSpO
2)、皮膚温度及び核心温度をモニターし記録するのに適したセン
サーを含みうるが、これらに限定されるものではない。測定及び/又は算出される生理学
的パラメータとしては、例えば、心拍数、呼吸速度、血中酸素濃度、血流量、水和状態、
消費カロリー、筋肉疲労及び/又は体温が含まれうる。
【0035】
本技術分野における通常の知識を有する者であれば容易に理解するであろうが、本発明
の着用可能な生理学的モニタリング衣類により、呼吸系やその他の生理学的な複数のパラ
メータ・特性を正確且つリアルタイムに求めることが容易となる。また、本モニタリング
衣類によれば、歩行可能な外来患者の在宅でのモニタリングや、ストレスや危険を伴う可
能性のある状況下にある被験者や、運動及び/又は競技のトレーニング中の被験者のモニ
ターにも容易に対応することができる。
【0036】
以下、本発明に係る着用可能な生理学的モニタリング衣類及びこれに関連するシステム
につき、幾つかの実施形態を詳細に説明するが、本発明が本明細書中の衣類やシステムに
限定されるものではないことを理解されたい。本技術分野における通常の知識を有する者
であれば理解するであろうが、ここに記載した衣類及びシステムと類似ないし均等の衣類
及びシステムも、本発明の範囲内において用いることができる。
【0037】
<生理学的モニタリングシステム>
まず、
図1に、本発明の生理学的モニタリング衣類と共に使用可能な例示的な生理学的
モニタリングシステム10のブロック図を示す。以下詳細に説明するように、本発明の一
実施形態においては、本生理学的モニタリングシステム10は、(i)胸郭及び腹部それぞ
れの前後方向の直径の変化(ないし変位)と、胸壁の軸方向の変位とをモニタリング・検
出するとともに、(ii)上記解剖学的変位を反映する磁力計信号との相関関係において、モ
ニタリング中の被験者に関する解剖学的・生理学的・能力的情報を求めるのに適している
。
【0038】
図1に示すように、この生理学的モニタリングシステム10は、好ましくは、データ取
得サブシステム20と、制御データ処理サブシステム40と、データ送信サブシステム5
0と、データモニターサブシステム60と、バッテリー等の電源70とを備える。
【0039】
本発明の一実施形態においては、データ取得サブシステム20は、対を成す磁力計を含
む磁力計システム21を備える。当該磁力計は、被験者上の選択的な解剖学的位置に配設
された場合に、被験者の胸郭及び腹部それぞれの前後方向の直径の変化(ないし変位)と
、被験者の胸壁の軸方向の変位とをモニタリング・検出するのに適している。しかしなが
ら、本発明が、被験者の胸郭、腹部及び胸壁の変位測定のために磁力計対を使用すること
に限定されないことを理解されたい。
【0040】
本明細書では、磁力計及び磁力計システムに関連して本発明を説明するが、磁力計の代
わりに、或いは磁力計と共に、システム内の二以上のセンサー間の距離の変化を測定可能
な他のタイプのセンサーシステムを用いることができることを理解されたい。具体的には
、本発明は、測定した胸郭及び腹部の前後方向の直径の変化と胸壁の軸方向の変位とを現
す信号を取得するのに電磁コイルないし磁力計を使用することに限定されるものではない
。上記解剖学的パラメータの測定に容易に適合可能な種々のその他の手段や装置を、本発
明の範囲内で用いることができる。そのような手段や装置としては、ホール効果センサー
や電子コンパスセンサーを含むが、これらに限定されない。本発明によれば、一方のセン
サーから他方のセンサーへ送信された信号の時間遅延を測定し、それにより二つのセンサ
ー間の距離を求める能力のある無線センサーを、磁力計の代わりに、或いは磁力計と共に
、設けることができる。
【0041】
磁力計(ないし他のセンサー)は、例えばシャツやベスト等の着用可能な衣類に埋め込
まれていてもよいし、当該衣類によって運ばれるものであってもよい。着用可能なモニタ
リング衣類とすることで、磁力計を被験者の皮膚に直接取り付ける必要性、ひいてはそれ
に纏わる全ての問題が解消される。また、着用可能なモニタリング衣類とすることで、被
験者の胴体上の、事実上いかなる適切な(あるいは所望の)位置にも磁力計を繰り返し且
つ簡便に位置決めすることが容易となる。
【0042】
本発明によれば、上記被験者のパラメータ(ないし変位)を測定するのに、少なくとも
一つ、好ましくは二つの磁力計が使用される。よって、本発明の幾つかの実施形態におい
ては、磁力計を二対、使用する。幾つかの実施形態においては、二対より多くの磁力計を
使用する。
【0043】
図2に示すように、本発明の一実施形態においては、磁力計システム21は、第1送信
用磁力計22aと、第1受信用磁力計22bと、第2送信用磁力計24aと、第2受信用
磁力計24bとを含む。これら磁力計対22a、22b及び対24a、24bは、両者間
の距離変化に応答可能である。以降詳細に説明するが、第1送信用磁力計22aは第1電
磁場を送信するのに適し、第1受信用磁力計22bは当該第1電磁場を受信するのに適し
ている。第1受信用磁力計22bは、第1電磁場(ひいては磁力計対22a、22b間の
距離)の変化に応答可能であり、また、当該第1電磁場における第1の変化を表す第1の
信号を生成し送信するのに適している。本発明の実施形態に係る電磁コイルは、「受信用
」ないし「送信用」と記載されているが、各受信用コイルは、代わりに且つ独立して、送
信用コイルであってもよいし、各送信用コイルは、代わりに且つ独立して、送信用コイル
であってもよい。各コイルは、送信・受信の両機能を行うものであってもよい。
【0044】
第2送信用磁力計24aは第2電磁場を送信するのに適し、第2受信用磁力計24bは
当該第2電磁場を受信するのに適している。一実施形態においては、第2受信用磁力計2
4bは、第1及び第2電磁場(ひいては磁力計対24a、24b間及び磁力計22a、2
4b間の距離)の変化に応答可能であり、また、当該第2電磁場における第1の変化を表
す第2の信号と、当該第1電磁場における第2の変化を表す第3の信号とを送信するのに
適している。
【0045】
以下、
図3〜
図7を参照して、本発明の新規な磁力計を詳細に説明するが、本発明が、
本明細書中の磁力計の実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。本技術分
野における通常の知識を有する者であれば理解するであろうが、解剖学的距離ないしパラ
メータをモニタリング及び/又は測定するのに、本発明の範囲内において種々の従来の磁
力計を容易に用いることができる。
【0046】
まず、
図3及び
図4に、本発明の低背型磁力計80の一実施形態を示す。本発明の一実
施形態においては、磁力計80は、導電性の円形コイル72を含む多層プリント回路を備
える。
【0047】
本発明によれば、導電性のコイル72は、例えば銅、アルミやその他の導電性の金属等の標準的な導電性の電線を用いてコイルを巻回することで形成してもよいし、標準的な多層プリント回路技術を用いて製造してもよい。一実施形態においては、当該コイルは、直径約
5.08センチ(約2インチ)で、各層にそれぞれ18ターン有し、各層を標準的なプリント回路層コネクタ(「ビア」)を用いて互いに直列に接続して計108ターンのコイルを形成した、6層のプリント回路基板により形成される。
【0048】
異なるサイズのコイルを、上記と同様の手法で、あるいは、薄い型にて巻回して得られ
たコイルを可撓な基板に接着することで形成することができることが理解される。このコ
イルの形状係数は、細長いコイルを強磁性のロッドに巻いて形成したソレノイド型の設計
を利用した従来の呼吸系用磁力計の設計とは異なる。
【0049】
この磁力計80(及び関連するシステム)は、好ましくは、横方向に10cm〜40c
m、軸方向に20cm〜50cmの物理的範囲に亘って動作し、上記距離に亘って極めて
正確に変位を測定する能力を有する。システムのノイズも極めて少なく、10nV/rt
Hz未満であり、これを変換するとrmsで50ミクロンの測定誤差となる。
【0050】
一実施形態においては、磁力計80への電力は、電圧範囲が約2.8V〜3.7Vのバ
ッテリーにより供給される。
【0051】
磁力計の回路(サーキットリー)は、制御されていない環境下にあるコイルに接続され
るため、全ての接続を非常に広い周波数範囲に亘ってバランスさせるのが好ましい。外部
接続を全てバランスさせることで、電磁両立性(EMC)の影響を、電磁波の放射(radi
ation)及び感受性(susceptibility)の両方について最小限に抑えることができ、静電
気放電(ESD)が起こった際に極めて高いシステムのロバスト性が確保される。更に、
接続をバランスさせることで、交流幹線の寄生ピックアップの除去にあたり60dB以上
の低減効果が追加される。
【0052】
好ましくは、当該回路は、より小さな回路ブロックに分割される。各ブロックとしては
、(i)マイクロコントローラ、(ii)A/D変換器(ADC)、記憶機構及びデジタル信号
処理(DSP)、(iii)各種ドライバ、(iv)プリアンプ及び(v)入力バッファを挙げること
ができる。各回路ブロックにつき以下詳細に説明する。
【0053】
本発明によれば、ドライバ回路は、マイクロコントローラからの矩形波駆動を各コイル
のための効率的な電流駆動に変換するとともに、実際の駆動信号のモニタリング情報(mo
nitoring)をマイクロコントローラへ送り返す(
図5参照)。演算増幅器が、マイクロコ
ントローラの出力をバッファリングし、コイルをマイクロコントローラから絶縁する。
【0054】
多くのマイクロコントローラには十分な電流駆動能力があるので、(どのマイクロコン
トローラを選ぶかにより)バッファリングは必ずしも必要でない。
【0055】
比較的高電圧の矩形波駆動を、コイルの低電圧な駆動要件と整合させるために、インピ
ーダンス整合コンデンサ網を使用する。これは、回路のQを利用するものであり、駆動の
基本振動数成分を強化し、コイルを絶縁する。当該技術の使用により、コイルは、電源か
ら1mAしか使用せずに約5.8mAで駆動する。
【0056】
保護ダイオードは、静電気放電(ESD)が起こった際に、既知の電圧にクランピング
を行う。各ダイオードの静電容量は、1pF未満である。したがって、ダイオードは、通
常の回路動作には何ら影響を与えない。
【0057】
本発明によれば、プリアンプ回路は、コイルからの微小な信号を取り出すために、低ノ
イズの利得を備えた、コイルに整合する網を提供する。
【0058】
図示の実施形態では、プリアンプは、二つのNPNトランジスタからなる単純な構造を
備える。この接続形態では、搬送周波数で約90倍の利得を提供すべく低電力の2N50
88高ベータトランジスタを利用する。バイパスコンデンサは、幹線周波数(50又は6
0Hz)を90:1以上で除去するよう選択される。プリアンプの出力は、グラウンドか
らVbeだけオフセットされる。
【0059】
出力フォロワは、電力消費を増大させることなくプリアンプの出力インピーダンスを低
減するのに適しそのように設計される。100kΩの両端の電圧降下Vbeには、電源電
流を6μAしか必要としないにもかかわらず、出力インピーダンスが120Ω未満まで低
減される。
【0060】
好ましくは、プリアンプは、その入力ノイズ密度関数が10nV/√Hzであり、約1
4μA消費する。
【0061】
コンデンサ網は、コイルの低インピーダンスを、プリアンプの比較的高いインピーダン
スに整合させ、これにより更に4倍の利得が追加される。したがって、プリアンプの総利
得は360倍となる。
【0062】
本発明によれば、入力バッファ増幅器により、更に25倍の利得が追加され、マイクロ
コントローラでのデジタル化が可能な程度まで信号が増幅される(
図7参照)。プリアン
プからの信号は0.5mV〜60mVの範囲内にあるので、この段階で飽和することはま
ずないであろう。この時点では信号は十分大きく、単純なトランジスタ増幅器を用いた場
合、容認できない歪みが生じてしまうので、演算増幅器を用いてもよい。
【0063】
本発明によれば、本発明の範囲内で、種々の系統の有効なマイクロコントローラチップ
を使用することができる。一実施形態では、テキサス・インスツルメンツ社製の「TI
MSP430」マイクロコントローラチップを用いる。上記チップは、小サイズであり、
必要な電流は3.5mA未満である。
【0064】
デジタル信号処理(DSP)機能に必要な要件は、ドライバに矩形波を4つ―1対を好
ましくは8.95kHzで、他方の対を好ましくは8.85kHzで―供給することであ
る。矩形波の各対は180度位相がずれている。
【0065】
マイクロコントローラは、20kHzよりも高いレートで8チャネルについて12ビッ
トでデジタル化する能力があるのが好ましい。差動方式なので、入力値は、2つ一組で処
理するのが好ましい。
【0066】
一実施形態では、8つのチャネルは、各時間サンプル毎にTxA、TxB、Rx1及び
Rx2を表す4つの値に縮約される。
【0067】
同じサンプリングレートで、4つの積、即ち、TxA*Rx1、TxA*Rx2、Tx
B*Rx1及びTxB*Rx2を生成するのが好ましい。これら4つの積を、Ss/Sp
秒のランレングス(run length)の間4つのレジスタに蓄積する。したがって、ランレン
グス、即ちパケットサイズは400である。
【0068】
好ましくは、400蓄積毎に4つの値を取り出し、キャリブレーションファクターでそ
れらの値を調整し、呼吸系のサンプル値をメインコントローラへ供給する。
【0069】
図1を再び参照する。本発明によれば、制御データ処理サブシステム40は、データ取
得サブシステム20(ひいては、これに関連する各磁力計)、データ送信サブシステム5
0及びモニターサブシステム60を制御するためのプログラム、指令や、関連するアルゴ
リズムを備える。
【0070】
制御データ処理サブシステム40は、更に、磁力計の場の変化(ひいては、磁力計対間
の距離の変化)を反映する磁力計信号を取り込んで処理するようにプログラムされ構成さ
れるとともに、少なくとも一つの呼吸系の特性(より好ましくは複数の呼吸系の特性)を
含む、モニタリング中の被験者に関する解剖学的、生理学的及び/又は能力的な情報を(
磁力計信号との相関関係において)求めるようにプログラムされ構成されている。なお、
制御データ処理サブシステム40は、本明細書中、「プロセッサ・サブシステム」、「処
理サブシステム」、「データ処理サブシステム」とも呼ぶ。これら「制御データ処理サブ
システム」、「プロセッサ・サブシステム」、「処理サブシステム」及び「データ処理サ
ブシステム」の各用語は、本願中、互いに置き換え可能なものとして用いられている。
【0071】
データモニターサブシステム60は、制御データ処理サブシステム40によって生成さ
れ送信された生理学的・能力的な特性・パラメータを表示するように設計され構成されて
いる。
【0072】
本発明の実施形態によれば、データ送信サブシステム50は、上記通信リンク、ひいて
は、データ取得サブシステム20、制御データ処理サブシステム40及びデータモニター
サブシステム60による各サブシステム間の送信をモニターし制御するようにプログラム
され構成されている。
【0073】
上記生理学的モニタリングシステムに関する更なる詳細については、2009年9月1
日出願の米国仮出願第61/275,575号及び2010年8月26日に出願した同時
係属中の米国出願第12/869,582号に記載されている。これら各文献の全体を本
明細書に参照により援用する。
【0074】
本技術分野における通常の知識を有する者であれば容易に理解するであろうが、本発明
の各磁力計は、各磁力計間の距離の変化(ないし変位)をモニタリング・測定すべく、被
験者上の、解剖学的に適切な様々な位置に配置することができる。ここで、
図8〜
図10
を参照する。これらの図は、上記で参照した米国仮出願第61/275,575号、米国
出願第12/869,582号及び同時係属中の米国出願第12/231,692号に開
示された発明に従って、被験者ないし患者100上に位置決めした各磁力計対22a、2
2b、24a、24bを示す。同様に、当該文献の全体を本明細書に参照により援用する
。
【0075】
図8〜
図10に示すように、第1送信用磁力計(即ち、第1送信器)22aは、好まし
くは、被験者100の前側101であって被験者100の臍の近くに位置決めされ、第1
受信用磁力計(即ち、第1受信器)22bは、好ましくは、軸方向に関しては上記と同じ
位置の近くに、被験者100の後ろ側102に位置決めされる。第2受信用磁力計(即ち
、第2受信器)24bは、好ましくは、被験者100の前側101であって胸骨の底部の
近くに位置決めされ、第2送信用磁力計(即ち、第2送信器)24aは、軸方向に関して
は上記と同じ位置の近くに、被験者100の後ろ側102に位置決めされる。
【0076】
被験者ないし患者100が呼吸をすると、各コイル対22a、22b及び対24a、2
4b間で測定された電圧変化から、胸郭及び腹部それぞれの変位(即ち、それぞれ矢印2
9及び矢印25で示す、各コイル対22a、22b及び対24a、24bの間の距離の変
化)が求められる。また、送信用コイル22aと受信用コイル24bとの間で測定された
電圧変化から、矢印23で示す胸壁の軸方向の変位(例えば、臍からの距離(xiphi-umbi
lical distance(Xi)))も求められる。本実施形態においては、磁力計24bは、デュ
アル機能電磁コイルであり、「デュアル機能コイル」とは、複数の異なる送信用コイルか
らの送信を受信することのできるコイルを意味する。(したがって、磁力計24bは、磁
力計22a及び24aからの磁場送信を受信するのに適している。)
【0077】
上述したように、測定した変位は、少なくとも一つの呼吸系の特性を含む、測定中の被
験者100に関する解剖学的・生理学的情報を求めるのに通常用いられる。2009年9
月1日出願の米国仮出願第61/275,575号及び同時係属中の米国出願第12/8
69,582号に記載されているように、更に追加の磁力計対を使用してもよく、測定し
た複数の変位は、更に追加の解剖学的・生理学的・能力的特性―例えば、胸壁の動作と、
呼吸活動や会話、くしゃみ、笑うこと、咳等の呼吸に関連する事象との関係性の決定・特
徴づけ―を評価するのに用いることができる。
【0078】
また、2009年9月1日出願の米国仮出願第61/275,575号及び同時係属中
の米国出願第12/869,582号に記載されているように、データ取得サブシステム
20は、更に、モニタリング中の被験者100に関する一以上の生理学的特性をモニター
し記録するのに適した更に追加の生理学的センサーを少なくとも一つ(好ましくは、更に
追加の生理学的センサーを複数)備えてもよい。この生理学的センサーとしては、脳、心
臓及び他の筋肉の電気的活動(例えばEEG、ECG、EMG等)、脈拍数、血中酸素飽
和度(例えばSpO
2)、皮膚温度及び核心温度をモニターし記録するのに適したセンサ
ーを含みうるが、これらに限定されるものではない。測定及び/又は算出される生理学的
パラメータとしては、例えば、心拍数、呼吸速度、血中酸素濃度、血流量、水和状態、消
費カロリー、筋肉疲労及び/又は体温を含みうる。
【0079】
生理学的センサー(及び関連するシステム)の一例は、2003年4月22日発行の米
国特許第6,551,252号、2007年9月11日発行の米国特許第7,267,6
52号、2007年6月18日に出願した同時係属中の米国特許出願第11/764,5
27号及び国際出願第PCT/US2005/021433号に開示されている。これら
各文献の全体を本明細書に参照により援用する。
【0080】
また、データ取得サブシステム20は、モニタリング中の被験者が発した音をモニター
するための、例えばマイクロホン等の一以上の音声センサーと、モニタリング対象の被験
者とモニタリング局ないしモニタリング者とによる、両者間における双方向通信を可能に
するスピーカとを備えてもよい。
【0081】
本発明の幾つかの実施形態においては、データ取得サブシステム20は、被験者の位置
・向き及び/又は動作、例えば空間的パラメータを直接モニターするための手段を備えて
もよい。本発明によれば、被験者の位置・向きや動作をモニターないし測定するのに種々
の従来の手段を使用することが可能であり、例えば、光学エンコーダ、近接スイッチ、ホ
ール効果スイッチ、レーザー干渉計、加速度計、ジャイロスコープ及び/又は全地球測位
システム(GPS)等が含まれる。
【0082】
一実施形態においては、被験者の位置・向きや動作を直接モニターするための上記手段
は、多機能慣性センサー(例えば、3軸加速度計や3軸ジャイロスコープ)を少なくとも
一つ備える。本技術分野で周知のように、被験者の位置・向きや動作は、多機能慣性セン
サーから送信される信号ないしデータから容易に求めることができる。
【0083】
<生理学的モニタリング衣類>
上述したように、本発明の生理学的モニタリング衣類は、上記生理学的モニタリングシ
ステムと協働するのに適し且つそのように構成された着用可能な衣類を含む。したがって
、本生理学的モニタリング衣類は、上述した対を成す磁力計22a、22b、24a、2
4b等の磁力計対及び/又は一以上の生理学的センサー、関連するプロセッサ、制御ユニ
ット及び回路を備えうる。生理学的センサーとしては、脳、心臓及び他の筋肉の電気的活
動(例えばEEG、ECG、EMG等)、脈拍数、血中酸素飽和度(例えばSpO
2)、
皮膚温度及び核心温度をモニターし記録するのに適したセンサーを含みうるが、これらに
限定されるものではない。測定及び/又は算出される生理学的パラメータとしては、例え
ば、心拍数、呼吸速度、血中酸素濃度、血流量、水和状態、消費カロリー、筋肉疲労及び
/又は体温を含みうる。
【0084】
本発明によれば、生理学的モニタリング衣類は、例えば、シャツ、ベスト、ジャケット
、バンド等の、被験者の身体の少なくとも一部を覆うのに適した種々の衣類や物品を含み
うる。したがって、以下に記載するモニタリング衣類はベストに関するものであるが、本
発明が当該記載の衣類に限定されるものではないことを理解されたい。
【0085】
ここで
図11〜
図13を参照する。これらの図に、本発明の生理学的モニタリング衣類
110の一実施形態を示す。
図13に示すように、モニタリング衣類110は、好ましく
は、身体になじむ衣類(この例では、身体になじむ袖なしシャツ又はベスト)を含む。
【0086】
生理学的モニタリング衣類ないしベスト110は、好ましくは、前パネルないし前方部
112と、後ろパネルないし後方部114とを備え、ベスト110の、好ましくは一方の
側部に配設された開口部111を有する。図示の実施形態では、ベスト110は、更に、
底パネルないし底部116を備える。
【0087】
図12に示すように、前パネル112及び後ろパネル114は、ベスト110を被験者
の胴体に留めるための、協働する閉止手段115aを備える。本発明によれば、ベスト1
10を簡単に閉止できるように、例えば、ベルクロ社製の「ベルクロ」(登録商標)等の
パイル・アンド・フック機構(面ファスナー)、スナップファスナー、ジッパーファスナ
ー等の種々の従来の閉止手段をベスト110に組み込んでもよい。
【0088】
本発明の好ましい実施形態では、閉止手段115aは、従来式の一体型のジッパーファ
スナー機構を備える。一実施形態においては、ジッパーファスナー機構からなる閉止手段
115aは、前パネル112と後ろパネル114とを互いに閉止するとともに、ジッパー
のツマミ115bを移動させて下方向(矢印Aにて図示)に沿ってジッパーの歯同士を噛
合させることで被験者の身体にベスト110を留めるのに適するとともにそのように配置
されている。
【0089】
本発明によれば、ベスト110は、着用可能な衣類ないし衣類に適した材料であればど
のようなものを含んでもよい。一実施形態においては、ベスト110を身体に留めた際に
それが体形になじむ(即ち、身体になじむ)ことができるように、ベスト110は、例え
ば、デュポン社製の「ライクラ」(登録商標)等のポリウレタン−ポリ尿素コポリマー等
の弾性材料を含む。
【0090】
ここで
図14及び
図15を参照する。一実施形態においては、ベスト110は、外層1
20と内層124とを備え、各層120、124は好ましくは同じ材料からなる。ベスト
100上の適切な解剖学的位置及び/又は所望の位置には、少なくとも一つの衣類ポケッ
ト122(好ましくは複数の衣類ポケット122)が設けられる。
【0091】
本発明によれば、ポケット122は、モニタリングシステムの選択的な構成要素(例え
ば、磁力計22a、22b、24a、24b、生理学的センサー、これらに関連するプロ
セッサや制御ユニット等)を容易に収容し且つ確実に位置決めするために、種々の形状・
大きさを採りうる。
【0092】
また、ポケット122は、種々の従来の手段によって形成してもよい。一実施形態にお
いては、ポケット122は、一方のパネル(例えば、パネル120又はパネル124)を
切って開口を形成して、ポケットの縁を縫合することで所望の大きさ・形状の閉じたポケ
ットとすることで作成される。一実施形態においては、予め形成したポケットを、ベスト
110上又はベスト内(例えば、ベストパネル120、124の間)に縫い付ける。
【0093】
ここで
図16を参照する。当該図に、本発明による予め形成したポケット130の一実
施形態を示す。ポケット130は、本例ではポケット130の上部近くに設けられた開口
134を備える。好ましい実施形態では、開口134を補強する。
【0094】
図示の実施形態においては、ポケット130は、ベストパネル120、124の間に縫
い付けられる(参照符号「132」にて概略的に図示する)。上述のように、ポケット1
30は、上パネル120又は下パネル124の外表面上に又は外表面に対して縫い付けて
もよい。
【0095】
上述のように、ポケット122、130は、モニタリングシステム10の選択的な構成
要素―例えば、使用される磁力計、プロセッサ、制御ユニット等―を収容し且つ確実に位
置決めするのに適し且つそのように構成される。
【0096】
また、上述のように、磁力計(例えば磁力計22a、22b、24a、24b)や、任
意で使用される追加のセンサーは、ベスト110上又は内の事実上いかなる所望の位置に
も位置決めすることができる。それにより、被験者がベスト110を着用したとき、磁力
計や他のセンサーは、被験者の身体上の解剖学的に適切な又は所望の位置の直ぐ近くに位
置決めされることとなる。
【0097】
モニタリングシステムの各構成要素への送電と、各構成要素による構成要素間の通信を
容易にするために、ベスト110は、少なくとも一つの衣類回路(garment circuit)(
好ましくは複数の衣類回路)を更に備え、当該衣類回路は、それに関連づけられた一体型
の衣類用導体を少なくとも一つ有する。
【0098】
ここで
図17及び
図18を参照する。これらの図に示すのは、生理学的モニタリング衣
類110の一実施形態であって、当該衣類は、これに関連づけられた複数の一体型の衣類
用導体を有する。
図17及び
図18に示すように、本発明の幾つかの実施形態においては
、衣類110は、第1の複数の一体型の導体ないし経路152を備える。幾つかの実施形
態においては、当該第1の複数の一体型の導体152は、略水平方向に配設される。幾つ
かの実施形態においては、第1の複数の一体型の導体は、伸長可能な導体を含む。
【0099】
本発明によれば、上記第1の複数の一体型の導体152を設け(ないし構築し)、ひい
ては、磁力計等のセンサーや電子ユニットによる当該機器間の接続を容易にするために、
種々の導電性の材料を、例えば織り込んだり、編み込んだり、表面に取り付けたりするこ
とで、衣類110に組み込むことができる。
【0100】
本発明によれば、これら導電性の経路152を組み込む手法は、布地の作成法(例えば
編んだのか織ったのか)に基づいて選択される。採用可能な実施形態としては、銀メッキ
した糸、銀を含有する糸や、その他の導電性の糸状材料を含みうるが、従来の銅配線は除
くものとする。
【0101】
本発明の幾つかの実施形態においては、衣類110は、衣類外層120及び衣類内層1
24上に配設されたセンサー及び関連する機器による当該センサー・機器間の接続を容易
にする導電性のコネクタを少なくとも一つ(より好ましくは導電性コネクタを複数)備え
る。一実施形態では、当該コネクタは、銀メッキしたスナップファスナーを含む。
【0102】
本発明によれば、生理学的モニタリング衣類110は、第1の複数の一体型の導体15
2と通信状態にある中央通信路(点線で図示。概ね参照符号「154」にて示す。)を更
に備える。本発明によれば、中央通信路154は、細い電線を含むリボンや、金属被覆さ
れた、又は、他の手法で導電性を付与された撚り糸、糸又は布地の帯状片を含む一連のデ
ィスクリート・チャンネルを含みうる。
【0103】
図17及び
図18に図示した実施形態では、生理学的モニタリング衣類110に関連づ
けられたモニタリングシステム10は、磁力計システム(例えば、磁力計対155a、1
55b、155c、155dと、図示しない少なくとも一つのECGセンサー)を備える
。したがって、
図17及び
図18に示すように、モニタリング衣類110は、磁力計対1
55a、155b、155c、155dを収容し且つ確実に位置決めするように構成され
た複数のポケット133を備える。
【0104】
図19〜
図21に示すように、生理学的モニタリング衣類110は、これに関連づけら
れた磁力計回路156と、ECG回路158とを更に備える。本発明の一実施形態では、
磁力計回路156は、シャツの一方の側部に沿って鉛直方向に配置された導体であって、
衣類110に織り込まれた水平方向の導体に接続された導体を複数対備える。本発明によ
れば、鉛直方向の対と水平方向の対との間の接続は、導電性材料で縫ったり、導電性エポ
キシで繋げたり、或いは好ましくは、標準的な圧着式の穿孔ファスナー(standard crimp
ed-on piercing fasteners)によって鉛直方向の導体及び水平方向の導体に取り付けられ
る標準的な小型の衣類用スナップファスナーによって、確立することができる。
【0105】
一実施形態においては、衣類110の胸部及び腹部の領域に位置付けられた磁力計につ
いても、同様の鉛直方向・水平方向の導体対が用いられる。
【0106】
本発明の一実施形態においては、ECG回路158は、シャツの一方の側部に沿って鉛
直方向に配置された導体であって、衣類110に織り込まれた水平方向の導体に接続され
た導体を複数対備える。鉛直方向の対と水平方向の対との間の接続は、同様に、導電性材
料で縫ったり、導電性エポキシで繋げたり、或いは好ましくは、標準的な圧着式の穿孔フ
ァスナー(standard crimped-on piercing fasteners)によって鉛直方向の導体及び水平
方向の導体に取り付けられる標準的な小型の衣類用スナップファスナーによって、確立す
ることができる。
【0107】
また、幾つかの実施形態においては、水平方向の導体は、心臓の電気的活動を感知する
ための所望の位置の直ぐ近くに位置付けられた織り込み型の導電性パッチ157にて終端
する。パッチ157は、それ自体がECGセンサーとして機能してもよいし、或いは、例
えばパッチ内に圧着式のスナップファスナーを設けることで標準的な接着式ECG電極に
電気的に接続されてもよい。
【0108】
<衣類の組み立て法>
以下、本発明のモニタリング衣類の組み立て法(construction)について詳細に説明す
るが、以下に記載する組み立て法は、モニタリング衣類を組み立てる方法の一例を示すの
みであり、本発明の範囲を何ら限定するものではないことを理解されたい。
【0109】
一実施形態においては、衣類110は、導電性の糸と非導電性の糸とを使用して筒状の
衣類部分を編み上げることを含む、半自動化された方法により組み立てられる。当該衣類
部分は、衣類110の外層となるべき部分に編み込まれた水平方向の導電性領域と、衣類
110の内層におけるECG電極となるべき領域に編みこまれた導電性のパッチと、衣類
110のウエストバンドを形成すべく、弾性を有するように編まれた独立したバンドと、
電子モジュールを収容するためのポケットとを備える。
【0110】
別の作業において、金属を含む導電性の糸と非導電性の材料とから織布リボンコネクタ
(woven ribbon connector)を作成する。その一端に圧着コネクタを取り付けるとともに
、編み込まれた水平方向の各導体と接続するための各取出し点(break-out points)に、
鉛直方向に沿ってスナップファスナーを取り付ける。上記筒状部分をそれ自体の上に折り
返して内層を外層の中に配置し、腕・首用の開口部を形成して、上記ウエストバンドを縫
い付ける。衣類にスナップファスナーを取り付け、これにより、外層の導体からECGパ
ッチへの接続を確立するとともに、鉛直方向のリボンケーブルへの接続点を提供する。
【0111】
磁力計、リボンケーブル及び電子モジュールのためのポケットを、例えば音波溶接、縫
合、接着等の処理によって形成する。スナップファスナーを使って磁力計を取り付けると
ともに、鉛直方向のリボンも挿入し、織り込んだ導体に対してスナップファスナーによっ
て接続する。
【0112】
本技術分野における通常の知識を有する者であれば容易に理解するであろうが、上述し
た本発明の生理学的・能力的モニタリング衣類及び関連するシステムには、従来の生理機
能モニタリング方法・システムと比較して、多くの顕著な利点がある。それら利点のうち
の一つとしては、複数の生理学的特性を正確且つリアルタイムに求めることができ、動き
易さを阻害せず、簡単に製造することのできる生理学的モニタリング衣類が実現される点
が挙げられる。また、上記生理学的モニタリング衣類は、多くの用途、例えば、歩行可能
な外来患者の在宅でのモニタリングや、ストレスや危険を伴う可能性のある状況下にある
被験者や、運動及び/又は競技のトレーニング中の被験者のモニターにおいても有用であ
る。
【0113】
本発明の更なる利点や用途は、2010年8月26日出願の米国特許出願第12/86
9,578号、2010年8月26日出願の米国特許出願第12/869,582号、2
010年8月26日出願の米国特許出願第12/869,576号、2010年8月26
日出願の米国特許出願第12/869,585号、2010年8月26日出願の米国特許
出願第12/869,592号、2010年8月26日出願の米国特許出願第12/86
9,625号及び2010年8月26日出願の米国特許出願第12/869,586号に
開示されたシステム及び方法を参照すれば明らかである。これら各文献の全体を本明細書
に参照により援用する。
【0114】
当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明を種々の用途や
条件に適合させるために本発明を種々変更・修正することができる。よって、そのような
変更・修正も、適正且つ衡平に、本発明の均等の全範囲の内に包含されることを意図する
ものである。