(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電極部材が、前記電極部材の脳組織内への進入及びそれぞれの前記屈曲形状の維持を可能にするように調節された、剛性を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
前記電極部材の前記剛性が、前記電極部材が脳組織内に進入した後に前記検出空間の大きさ及び形状を実質的に維持するように、調節されることを特徴とする請求項10に記載の装置。
前記電極部材の前記剛性及び前記展開状態における前記電極部材の形状が、脳組織内の前記電極部材の位置を維持するように、調節されることを特徴とする請求項10に記載の装置。
前記電極部材の前記剛性が、前記電極部材が脳組織内に進入した後に前記検出空間の大きさを実質的に維持するように、調節されることを特徴とする請求項10に記載の装置。
前記電極部材の前記剛性及び前記展開状態における前記電極部材の形状が、脳組織内の前記電極部材の位置を実質的に固定及び/または安定化するように、調節されることを特徴とする請求項10に記載の装置。
前記展開状態にある前記電極部材の大きさ及び形状が、前記電極部材が展開されている脳組織に与える生理学的影響が最小になるように、調節されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、てんかんの発作または発作予兆事象/状態を、発作を防止するかあるいは発作の影響を最小限に抑えるための処置(例:薬物または刺激)を緊急に施すことができるように、検出するためのデバイス及び方法が必要とされている。また、てんかん発作の病巣は脳の様々な領域に発生し得るから、病巣がどこであってもてんかん事象の徴候を検出することができるデバイス及び方法も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に説明される実施形態は、てんかん及びその他の異常神経活動を特徴とするその他の状態を、埋込電極を用いて検出するためのシステム、装置及び方法を提供する。多くの実施形態において、脳内の異常神経活動の方向の検出及び場所の特定が可能であるように構成された直交配位電極部材を有する埋込デバイスを用いててんかんを検出するための装置及び方法が提供される。特定の実施形態は、異常電気活動の病巣またはその他の発生源によってつくられる電場ベクトルを検出することができ、この情報を用いててんかん発作の徴候またはてんかん発作を予測し得る事象の徴候を検出することができる。
【0008】
一実施形態では、てんかんによるような脳内の異常神経活動の検出のための、近端及び遠端を有し、ポートがそれぞれに与えられている複数の内腔を有する、導入器を備える装置が提供される。導入器は頭蓋に開けられたバーホールまたはその他の開口を通して脳組織内に導入されるように構成される。多くの実施形態においては、導入器自体が、頭蓋の開口に挿入されるバーホールプラグまたは同様のデバイスを通して導入され得る。一般に、プラグは、導入後は導入器が動かないように導入器をプラグにロックまたは固定する、クランプのようなロッキングデバイスも有するであろう。ロック及びクランプは、導入器の動きを検出するか、そうではなくとも導入器のロック外れ状態を検出するための、センサを収めることができる。ポートは一般に、近端が電気コネクタに接続されるように構成されている、導入器の遠端に配置される。コネクタは、電極部材によって受け取られた信号を解析するための1つ以上の信号処理回路及びアルゴリズムを有する、回路及びプロセッサに接続することができる。基準電極が導入器の遠端に配置される。3本以上の電極部材が複数の内腔内を進むことができ、それぞれの電極部材は、電極部材の長さに沿って延び、電極部材の遠位部分は露出させておく、絶縁外被を有する。4本、6本または9本の電極を有する実施形態も考えられる。それぞれの電極部材は、導入器内に収められているときの未展開状態及び導入器の外に進出したときの展開状態を有する。それぞれの電極部材は、電極部材が展開状態にあるときに、相互に実質的に直交関係にあるように構成されるが、別の配置も考えられる。この直交関係はポートの空間配置によって達成することができ、ポート自体が実質的に直交関係にあることができる。
【0009】
一般に、電極の遠位部分は展開状態にあるときに屈曲形状を有するように予備成形される。屈曲角には30°,45°及び60°を含めることができ、屈曲形状は1つ以上の形状記憶金属の使用によって達成することができる。電極部材は、脳組織内に進められ、それぞれの屈曲形状を、また以下で定められる検出空間の大きさ及び形状も、維持できる剛性を有することが望ましい。電極部材の剛性はそれぞれの屈曲形状とともに、電極部材が脳組織内で展開されたときに電極部材を固定するか、そうではなくともそれぞれの位置を安定化するためにも利用することができる。さらに、電極部材の寸法及び形状は、電極部材が展開される脳組織への、例えば異物反応を含む、生理学的影響及び脳の正常な神経活動への影響を最小する寸法及び形状である。同様に、電極部材の導電性表面領域は脳の神経活動への影響を最小にするように構成される。様々な実施形態において、電極部材の組織内進入長は約0.1〜3cmの範囲とすることができ、好ましい実施形態では約0.5〜1.5cmの範囲である。
【0010】
電極部材の屈曲は、電極部材の露出された遠位部分がてんかん性またはその他の異常神経活動の病巣の方向を決定することができる検出空間を定めるような屈曲である。一般に、検出空間は四面体形状を有するが、その他の形状も考えられる。検出空間の形状及び大きさは、前もって定められる、異常神経活動の特定の場所及び特徴、またはその他の疾患特性(例:部分発作徴候)、に整合させることができる。
【0011】
電極部材の配置は検出空間とともに異常神経活動によって発生する電場ベクトルを決定するように構成することができる。一般に、導入器の外に突き出ている3本の電極が直交して配置されて3次元直交座標系を定め、導入器の遠端または座標軸の原点になるようなその他の場所に基準電極が配置される。電極部材の露出長が分かっていれば、3つの軸のそれぞれにおける電場ベクトルの大きさを(ベクトル演算及び三角関数演算を用いて)決定することができ、続いて、それぞれの電場ベクトルの大きさを用いて電場ベクトル全体を(大きさ及び方向のいずれも)決定することができる。
【0012】
様々な実施形態において、導入器は、電極部材をポートから遠位に進めるにつれて電極部材を偏向させ、よって電極部材が屈曲形状を有して、露出遠位部分が検出空間を定めるように構成された、偏向器を備えることができる。そのような実施形態において、導入器は電極部材が通って前進する内腔を1つしか有する必要はなく、電極部材が内腔から進められるにつれて、内腔の遠位に配置された偏光器が電極部材を偏向させる。
【0013】
本発明の様々な実施形態は、てんかん発作、片頭痛またはその他の関連する神経性事象または状態に先立つかまたはその間におこるような、異常神経活動(ANEA)を検出するための方法も提供する。さらに詳しくは、実施形態はANEAの病巣を検出するための方法を提供し、方法は、ANEAの病巣の相対的な方向及び場所の検出、及びそれらの情報を用いる、てんかん発作、片頭痛またはその他の神経性事象の発症の予測を含む。本発明の方法実施形態の例において、ANEAの病巣によって発生する電場ベクトルを検出及び計算するために本明細書に説明される複数本の直交配置電極が用いられ、得られた情報を用いて展開された電極に対する病巣の方向が決定される。次いで、ANEA病巣によって発生する電場ベクトル及び神経電気信号及び波形の位置、大きさ及び周波数特性を解析するため、及びてんかん発作または片頭痛あるいはその他の神経学的事象または状態がおこっているかまたはおこりかけているかについて予測するために、信号処理及びその他のアルゴリズムを用いることができる。予測は、検出された信号及び波形の、てんかん発作あるいはその他の神経学的事象または状態に先立つかまたはその間におこる信号及び波形の波形特性のデータベースへの比較に基づくことができる。てんかん発作がおこりかけているかまたはおこっていると判定されると、次いで、外部モニタリグ装置のアラームを鳴らすための信号を送って、患者に適切な薬物をとるように警告することができる。セル式電話ネットワークを通じて保健医療専門家に無線連絡することもできる。さらに、そのような事象が検出されると、発作を防止するかまたは発作時時区時間を短くするように構成された電気刺激を(同じかまたは異なる電極部材セットを用いて)患者に与えることができる。そのような刺激と同時にまたはそのような刺激とは別に、患者には抗発作薬を(検出装置のために用いられているような頭蓋のバーホールを通して)頭内にまたは静脈内にあるいはいずれにも自動的に投与することもできる。ピーク頭内濃度が、また長期の頭内または静脈内投与も、達成されるように、投与はボーラスの形態とすることができる。頭内または静脈内投与は、患者が着用している外部薬物ポンプにより達成することができる。あるいは、投与は、頭蓋下、頸部またはその他の近傍領域に埋め込まれた薬物ポンプを用いて達成することもできる。
【0014】
脳内に検出装置を配置するための様々な方法において、ANEAを特徴とするてんかんまたはその他の状態を有する患者は、埋込に先立って、てんかんをおこさせると思われるANBNEA病巣の場所及びその他の特性を決定するために一連のEEGまたはその他の関連するスキャンを受けることができる。次いで、脳内で検出装置を誘導するか、別の手段で配置するために、それらの情報を用いることができる。特に、展開された電極を病巣に近接する場所に配置することができる。これにより、病巣によって生じるANEAの検出における装置の感度及び確度を向上させることができる。さらに、電極によって定められる検出空間を含む展開電極の形状は、ANEA検出に対する感度及び確度のいずれをも向上させるように、病巣の場所及び信号特性に対して調節することができる。
【0015】
本発明の上記及びその他の実施形態及び態様のさらなる詳細は、添付図面を参照して、以下でさらに十分に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は異常神経活動(ANEA)の検出のためのシステム及び装置の一実施形態の平面図である。
【
図2A】
図2Aは脳内の異常神経活動を検出するための
図1の実施形態のシステム及び装置の配置及び用法を示す側面図である。
【
図2B】
図2Bは頭蓋のバーホール内のプラグの配置及び脳内の組織部位におけるANEA検出装置の導入を示す側面図である。
【
図3】
図3は、導入器内の屈曲内腔を用いる電極部材の偏向を示す、展開された電極部材の遠位部分の側断面図である。
【
図4A】
図4Aは電極部材を偏向させるために導入器内に配置された偏向ジグの一実施形態を示す斜視図である。
【
図4B】
図4Bは電極部材を偏向させるために導入器内に配置された偏向ジグの別の実施形態を示す斜視図である。
【
図4C】
図4Cは電極部材を偏向させるために導入器内に配置された偏向ジグの別の実施形態を示す前面断面図である。
【
図5】
図5は偏向器から出ている電極部材を示す斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、電極部材が導入器内部で未展開状態にある、ANEA検出装置の一実施形態を示す側面図である。
【
図6B】
図6Bは、電極部材が導入器から進出して展開状態にある、ANEA検出装置の一実施形態を示す側面図である。
【
図7A】
図7Aは展開状態にある電極部材の直交配位を示す斜視図である。
【
図7B】
図7Bは電極部材の配位及び展開状態にある電極部材によって定められる検出空間を示す斜視図である。
【
図8A】
図8Aは屈曲電極の実施形態を示す側面図であり、電極が折れ曲がっている実施形態を示す。
【
図8B】
図8Bは屈曲電極の実施形態を示す側面図であり、電極が湾曲している実施形態を示す。
【
図9】
図9は絶縁スリーブ及び導電コアを有する電極部材の一実施形態を示す側面図である。
【
図10A】
図10Aは電極部材の実施形態の断面図であり、中実導電コアを有する電極部材を示す。
【
図10B】
図10Bは電極部材の実施形態の断面図であり、内腔を少なくとも1つ有する電極部材を示す。
【
図11】
図11は直交座標系にしたがう電極部材の配置を示すグラフである。
【
図12】
図12は直交座標系にしたがう電極部材の配置の略図と異常神経活動の結果としての電極部材による電圧発生を示すグラフの組合せである。
【
図13】
図13は異常神経活動及びその極性成分によってつくられる電場ベクトルを示すグラフである。
【
図14】
図14はANEA検出装置の様々な実施形態とともに用いるためのコントロールモジュールの一実施形態を示すブロック図である。
【
図15】
図15は薬物投与デバイスの一実施形態のブロック図/側面図である。
【
図16A】
図16Aは、導入器の導入及び脳内の目標組織部位における異常神経活動の病巣を検出するための電極部材の展開のための方法を示す側面図であり、頭蓋のバーホール開口を示す。
【
図16B】
図16Bは、導入器の導入及び脳内の目標組織部位における異常神経活動の病巣を検出するための電極部材の展開のための方法を示す側面図であり、バーホール開口におけるバーホールプラグの配置を示す。
【
図16C】
図16Cは、導入器の導入及び脳内の目標組織部位における異常神経活動の病巣を検出するための電極部材の展開のための方法を示す側面図であり、バーホールプラグを通した導入器の導入及び前進を示す。
【
図16D】
図16Dは、導入器の導入及び脳内の目標組織部位における異常神経活動の病巣を検出するための電極部材の展開のための方法を示す側面図であり、導入器の完全な進出を示す。
【
図16E】
図16Eは、導入器の導入及び脳内の目標組織部位における異常神経活動の病巣を検出するための電極部材の展開のための方法を示す側面図であり、病巣検出のための構成への電極部材の展開を示す。
【
図17A】
図17Aは時間の経過にともなう脳内の電場ベクトルの方向の、正常神経活動期間にわたる、3次元プロットである。
【
図17B】
図17Bは時間の経過にともなう脳内の電場ベクトルの方向の、異常神経活動期間にわたる、3次元プロットである。
【
図18】
図18は、脳内の正常神経活動期間及び異常神経活動期間内の、時間の経過にともなう電場ベクトルの強度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書に説明される様々な実施形態は、異常神経活動を特徴とするてんかんのような様々な神経学的事象を検出するためのシステム、装置及び方法を提供する。多くの実施形態において、異常神経活動を、そのような神経活動によって生じる事象または状態が実際に現れる前に検出する(例えば、てんかん発作、片頭痛またはその他の神経学的事象または状態がおこる前に神経活動を検出する)ための方法及び装置が提供される。一実施形態において、脳内の異常神経活動の方向を検出及び特定できるように構成された電極部材が適切な態様で配位されているデバイスが埋め込まれる。特定の実施形態では、異常神経活動の病巣またはその他の発生源によってつくられる電場を検出及び解釈することができる。一実施形態において、そのような情報はてんかん発作またはその他の神経学的事象または状態の発症に対するマーカーとして判定及び解釈される。
【0018】
さらにまた、本明細書に説明される実施形態は、てんかんの発作予兆事象または発作事象を生じさせると思われる、患者の脳内の異常神経活動(ANEA)の検出のための方法を提供する。一実施形態において、ANEAによって生じるか、そうではなくともANEAにともなう、電場が患者の脳または頭蓋の内部から検出される。電場から電場ベクトル特性が決定される。電場ベクトルはてんかんの発作予兆事象または発作事象に対するマーカーであると解釈される。マーカーは発作の前記症状であると思われる特徴に対応し得る。1つ以上の実施形態にしたがえば、電場の検出は、ANEA時に頭蓋内または脳内にある電極に発生する電圧(または電流)の検出の形態とすることができる。
【0019】
ここで
図1〜3を参照すれば、様々な実施形態で、異常神経活動(ANEA)の検出のためのシステム5及び装置10が提供される。システム5は装置10及び、本明細書に説明される、コントロールモジュール80を備える。装置10は、1つ以上の内腔25,基準電極35及び、内腔25内を進んで脳組織内に展開され得る、複数本の電極部材30を有する、導入器20を備える。電極部材30には、導入器内に配置されているときの未展開状態及び導入器から進出したときの展開状態がある。展開状態において、電極部材は屈曲形状30bを有する。屈曲形状はANEAの病巣を検出するための検出空間DVを定めるために用いることができる。
【0020】
導入器20は近端21及び遠端22を有し、脳B内の目標組織部位TSに電極部材30を配置するために患者の頭蓋Sに挿入されるように構成される。近端21は1つ以上の、電気コネクタ、液体コネクタまたはその他のコネクタ40に接続されるように構成することができる。電気コネクタ40の実施形態にはUSBコネクタ及びファイアワイア(Firewire)コネクタのような標準コネクタを含めることができ、外部のプロセッサ、A/Dコンバータ及び同様の回路に接続されるように構成することができる。コネクタ40にはRFポートまたは赤外線ポートのような通信ポートも含めることができる。多くの実施形態において、コネクタ40は外部コントロールモジュール80に接続されるように構成される。上記実施形態及び関連実施形態において、コネクタ40は、電気配線及び、薬物含有液を含む液体の投与のための、1つ以上の内腔46を有することができる接続部材45を介して、モジュール80に接続することができる。
【0021】
様々な実施形態において、導入器20は頭蓋Sの開口Oを通して脳組織内に直接に導入されるように構成することができ、あるいは(
図2A及び2Bに示されるように)バーホールBH内に配置されて確実に固定されるように構成されたバーホールプラグ61のような、プラグまたはその他の頭蓋構門デバイス60を用いて導入することができる。一般に、プラグ60は、導入器20が挿入後に動かないように導入器20をプラグ20にロックまたは固定する、クランプまたはその他の固定機構のようなロッキングデバイス62を有する。導入器20はプラグ60上のフランジ64(またはその他の適する構造または機構)によって安定化することもできる。プラグ、導入器またはロッキングデバイスの内の1つ以上は、導入器の動きを検出するか、そうではなくとも導入器の非ロック状態あるいは導入器がゆるんでいないかを検出するために、センサ63を収めることができる。適するセンサ63には、接触センサ、ホール効果スイッチ、加速度計、等がある。センサ63は、導入器20がもはや固定状態になければ患者または医療提供者に警告するために、本明細書で論じられるコントロールモジュール80の回路に接続することができる。この回路は正常な頭及び体の運動に起因する動きを導入器20のロッキングデバイス62からのゆるみに起因する動きから弁別するための様々なフィルタ(例:ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、等)を備えることができる。
【0022】
導入器遠端22はテーパが付けられた形状または他の似たような形状につくることができ、脳組織内への導入を容易にするために組織侵入性とすることができる。導入器は、脳内の選ばれた目標組織部位TSへの遠端20の配置を容易にするために、内腔25を通して進められる誘導ワイア(図示せず)に沿って移動するように構成することもできる。目標部位TSへの配置は、遠端22を含む導入器上の1つ以上の場所に配置することができる1つ以上のX線不透過性またはエコー源性のマーカー26の使用によっても容易になり得る。マーカー26により、X線透視法またはその他の画像形成法で観察しながら導入器を進めることが可能になる。導入器20の全てまたは一部分は、ポリエチレン、PET、PEBAX、PTFE、シリコーン、ポリウレタン及びこれらの組合せを含むがこれらには限定されない、技術上既知の様々な生体適合性高分子材を含むことができる。これらの材料は、二酸化チタンを含む、技術上既知の1つ以上のX線不透過性材料も含むことができる。
【0023】
図3にさらに詳細に示されるように、導入器20は、電極部材30,誘導ワイア、内視鏡、及び同様のデバイスを進めるように構成することができる、1つ以上の内腔25を有する。内腔25は、吸引を、またてんかん、片頭痛及びその他の脳関係の状態及び疾患の処置のための1つ以上の薬物溶液を含む様々な溶液の注入も、与えるように構成することもできる。それぞれの内腔25は、電極部材30の通過を可能にし、液体及び薬剤の通過も可能にするために、導入器の遠位部分20dpに配置されたポート27も有することができる。多くの実施形態において、導入器はそれぞれの電極部材30のための個別の内腔25を有することができる。これにより、それぞれの電極部材30を互いに独立に進めることが可能になる。本明細書に論じられるように、多くの実施形態において、部材30の遠位部分は屈曲または湾曲30bを有することができる。これは、部材30の所望の屈曲の大きさに対応し得る内部屈曲25bを有するように内腔25の遠位部分25dを構成することによって達成することができる。様々な実施形態において、屈曲25bの角度25baは20°〜90°の範囲とすることができ、特定の実施形態では30°,40°,45°,50°,60°,70°及び80°である。
【0024】
次に
図4A,4B,4C及び5を参照すれば、1つ以上の実施形態において、電極部材30の全てまたは一部が単一の内腔25内を進むことができる態様が提供される。上記実施形態及び関連実施形態において、部材30の屈曲30bは、電極部材が導入器から進出するにつれて電極部材を偏向させる偏向器50の使用によって達成できる。一般に、偏向器50は内腔25の遠位部分25dpに配置されるであろうが、偏向器50は他の場所に同様に配置することもできる。偏向器50は、所望の屈曲量を達成するように選ばれた角度で電極部材30を導く、一連の個別チャネル51を有する。一般に、偏向器は3本のチャネルを有するであろうが、チャネル数をさらに多くすることも考えられる。チャネル51は導入器の軸線20iに関して径方向に等間隔に分布されることが望ましい(例えば、3つの部材に対してはチャネル51をほぼ120°離すことができる)。また、チャネル51は偏向器50の本体52内に形成することができ、偏向器の近位部分53から遠位部分54まで偏向器の長さに沿って通ることができる。偏向器の近端55は、電極部材30が内腔25を通って進むにつれて電極部材30を偏向させてチャネル51内に入れるように構成されることが望ましい。また、チャネル51は、1本のチャネルに1つの電極部材30だけがはまるであろうような大きさにつくられることが望ましい。使用においては、これらの2つの特徴によって、ユーザが所望の本数の電極部材30を個々にまたは一括して導入器内に進めて個々のチャネル51内に誘導することができるような自己誘導能力が偏向器50に与えられる。別の実施形態において、展開された部材30の屈曲の大きさをユーザが選ぶことができ、修正することさえもできるように、チャネル51自体を(例えば、圧電材料または電流によって撓ませ得る他の同様の材料の使用により)可撓性とすることができる。使用においては、そのような特徴によって、ユーザがX線透視法またはその他の画像形成法で電極部材の位置を観察しながら電極部材30の屈曲量を変えて、電極部材の所望の配位を達成及び確認することが可能になるであろう。そのような特徴によって、脳の特定の領域内のANEA病巣Fを検出するように電極部材30の検出能力を最適化または調整するために、医療提供者が電極部材30の配向及び配位を変更することが可能になるであろう。
【0025】
次に
図6A,6B,7A,7B,8A及び8Bを参照すれば、1つ以上の実施形態において、電極部材30には、(
図6Aに示されるように)導入器内部に配置されているときの未展開状態及び
図6Bに示されるように導入器の外に進出したときの展開状態がある。展開状態において、電極部材は異常神経活動の病巣Fを検出できる配位を有する。一実施形態において、これは互に対して実質的に直交する配位を有するように電極部材を構成することによって達成される。さらに詳しくは、
図7A及び7Bの実施形態に示されるように検出空間DVに対応する3次元直交座標系を定めるように、それぞれの電極部材の軸線30iに対する電極部材間の角度30aはほぼ90°である。本明細書に論じられるように、この構成により、病巣Fで発生する電場EFによって生じる電圧を電極部材で測定して、ベクトルの方向及び大きさを含む電場ベクトルEを導くことが可能になる。直交配位のため、定められる検出空間は、
図7Bの実施形態に示されるように、実質的に四面体である。別の様々な多面体形状のような、別の検出空間DVを定める別の配位も考えられる。例えば、4本の電極部材を実質的に四角錐形の検出空間を定めるように構成することができる。6本以上のような、さらに多くの本数の電極部材を、実質的に円錐形に近づく検出空間を定めるように構成することができる。
【0026】
導入器内の未展開状態において、電極部材30は押し縮められた状態にあって、実質的に真っ直ぐである。電極部材30が遠端22から進出するにつれて、電極部材は開傘し、病巣Fの検出のための検出空間DVを定める。電極部材は導入器から進出するときに屈曲形状30bを有することができる。これは、導入器30から進出すると屈曲形状30bをとるためのバネ記憶を有するように電極部材を形成することによって達成することができる。屈曲形状30bは、本明細書で説明されるように、電極部材を屈曲内腔25または偏向器50を通して進めることによって達成することもできる。屈曲30bの角度30baは20°〜90°の範囲とすることができ、特定の実施形態では、30°,40°,45°,50°,60°,70°及び80°である。屈曲30bは、
図8Aの実施形態に示されるように実質的に折り曲げとすることができ、または
図8Bの実施形態に示されるように電極部材の展開部分30dpに湾曲形状30cを与えるような、選ばれた大きさの曲率を有することができる。
【0027】
次に
図9,10A及び10Bを参照すれば、一般の、電極部材30はコア32及び、電極部材の組織に接触する導電部分34だけが遠端30deにあるように電極部材の長さのほとんどに沿って延びる、外装絶縁スリーブまたは外被33を有するであろう。導電部分34の長さ34lは1mmないしさらに短くすることができるが、さらに長い導電部分も考えることができる。1つ以上の実施形態において、長さは約0.75mm〜約0.25mmの範囲にある。絶縁スリーブは、シリコーン及びポリウレタンのような技術上既知の様々な絶縁性の生体適合性高分子材でつくることができる。スリーブ34は組織内への電極部材の進入を容易にするために潤滑特性を有することもできる。また、スリーブ34はスリーブへの(細胞及び分子の)生体付着を抑えるための技術上既知の様々な薬剤溶出化合物を含有することもできる。電極部材30の導電コア32は、金属及び導電性高分子材及び同様の材料を含む技術上既知の様々な生体適合性導電材料で作成することができる。適する金属の例には304V鋼がある。好ましい実施形態において、電極部材30はニチノール(NITINOL)のような形状記憶材料を含む。特定の形状記憶合金実施形態では、進出した電極部材30は、選ばれた形状記憶材料の遷移温度より高い温度まで電極部材が脳組織によって暖められると、展開状態をとることができる。
【0028】
多くの実施形態において、電極部材の遠端30deは組織内への進入を容易にするために尖っているかまたはその他の組織侵入形状を有する。また、電極部材30は組織内への侵入に十分な剛性を有するが、導入器から進出したときに湾曲形状をとるに十分に柔軟でもある。剛性及び柔軟性は、医用誘導ワイア技術で既知のように、部材の直径、材料及び材料処理(例:アニール)の選択によって達成することができる。様々な実施形態において、電極部材の直径30dは0.0005〜0.018インチ(12.7〜457.2μm)の範囲とすることができ、特定の実施形態では0.001インチ(25.4μm)、0 .005インチ(127μm)、0.010インチ(254μm)及び0.015インチ(381μm)である。一般に、電極部材30は
図10Aの実施形態に示されるように中実であるであろう。しかし、様々な実施形態において、電極部材30は10Bの実施形態に示されるように内腔31を有することができる。内腔31は1つ以上の薬剤の頭内投与に用いることができる。そのような実施形態において、電極部材30は技術上既知の様々なハイポチューブ(hypotube)で作成することができる。また、様々な実施形態において、電極部材30は発作事象または発作予兆事象の予測に用いることができる様々な組織特性を測定するための1つ以上のセンサ30sを有することもできる。したがって、そのようなセンサには、pH、温度、pO
2、pCO
2及び糖のセンサ並びにその他の生化学関係センサを含めることができるが、これらには限定されない。それぞれのセンサからの測定値は、発作事象及び発作予兆事象を判定するための手段として、電圧/電場ベクトル測定値と組み合わせることができる。
【0029】
次に
図11〜12を参照すれば、多くの実施形態において、電極部材30の展開部分30dp(すなわち、導入器20からの突き出し部分)は、それぞれの電極部材が直交座標系CCSの軸Aに合わせて配位されるように、実質的な直交配位を有することができる。軸の原点Orは、一般に導入器20の遠端22にあるであろう基準電極35(
図6A)の位置に対応する。この結果、電極部材30x,30y及び30zが軸x,y及びzになる。そのように配置された電極部材のそれぞれは、好ましい実施形態においては実質的に同じである距離l
x,l
yおよびl
zになるように、基準電極35の先に選ばれた距離lまで延び出す。病巣Fで発生する電場EF(
図7B)が電極部材30x,30y及び30zにそれぞれ電圧V
x,V
y及びV
zを生じさせる。実際の電圧は、組織に接触している導電部分34と、一般に導入器遠端22近傍に配置される、基準電極35の間の電位差による。多くの実施形態において、電極部材30x,30y及び30zは共通の基準電極35を共有することができ、あるいはそれぞれがそれぞれ自身の基準電極を有することができる。
【0030】
次に、異常神経活動の病巣Fによって発生する電場ベクトル:
【数1】
【0031】
の成分の計算及びこれに続く導入器の遠端に対する病巣Fの方向Dの計算に用いられる、数学的方法の議論が提示される。上記及びその他の関連する方法を、式(1):
【数2】
【0037】
とともに、本明細書に説明されるアルゴリズム83に組み込むことができる。次に
図11〜13及び上式(1)〜(6)を参照すれば、電場ベクトル:
【数8】
【0038】
はスカラー成分がE
x,E
y及びE
zの大きさE並びに角方位θ及びψを有する。電極部材30x,30y及び30zによる電圧V
x,V
y及びV
zの測定値から、式(1)を用いる、E
x,E
y及びE
zの計算が可能になり、式(2)によりベクトル:
【数9】
【0039】
の大きさを計算することができる。式(4)〜(6)により、角度ψ及びθを決定することで原点Orに対するベクトル:
【数10】
【0040】
の方向(したがって導入器遠端22に対する方向)の決定が可能になる。この方向の決定により、次いで、ベクトル:
【数11】
【0041】
が発生している病巣Fの(導入器遠端22に対する)方向の決定が可能になる。
【0042】
次に
図14〜15を参照すれば、多くの実施形態において、装置10は1つ以上の機能を実施するように構成された(以降、モジュール80とも称される)コントロールモジュール80(
図1を見よ)に接続することができる。機能には、電極部材30及びセンサ63から受け取られた信号の格納及び解析、発作予兆事象及び発作事象の検出、切迫した発作の患者及び医療提供者への警報、並びに薬物投与及び脳組織の電気刺激を含む発作を防止するための様々な介入処置の制御を含めることができる。モジュール80は、1つ以上のプロセッサ、状態マシン、回路(例:電力制御回路、フィルタ回路、等)、アラーム、電池及びその他の電力貯蔵デバイスを備えることができる。MICSまたはその他の医用無線通信プロトコルを用いて外部医療モニタリング機器と無線通信するためのRF通信チップのような、1つ以上の通信リソース110も備えることができる。モジュール80は、一体型薬物投与デバイス90を備えることもでき、また本明細書に説明される脳刺激器100も備えることができる。コントロールモジュール80は患者が身に着けていることができ、あるいは頭部及び(
図2Aに示されるように)頸部または体の別の領域の皮下に埋め込まれるように構成することができる。
【0043】
モジュール80は一般に、プロセッサ、状態マシンまたは両者の組合せのような様々なロジックリソース82を含めることができる、コントローラ81を少なくとも1つ備えるであろう。プロセッサ82は、(例えばインテル(登録商標)またはテキサスインスツルメンツ(登録商標)で製造されたプロセッサのような)既製品とすることができ、あるいはASICのようなカスタムICとすることができる。コントローラ81は、ソフトウエア、ハードウエアまたは両者の組合せによって実施することができる、1つ以上のアルゴリズム83を備えることができる。ソフトウエア実施形態に対し、アルゴリズム83はロジックリソース82に内蔵されるかまたはロジックリソース82に接続されたメモリリソース84(例:ROM,RAM,DRAM,等)に格納することができる。アルゴリズム83は、電極部材30,センサ30sまたは63から受け取られた信号39の処理及び格納、電場ベクトル:
【数12】
【0044】
の大きさ及び方向Dを含むベクトル成分の計算、ANEA、発作予兆事象または発作事象の内の1つ以上のの検出、切迫している発作の患者及び医療提供者への警報並びに外部医療モニタリング機器との通信、及び様々な薬物投与及び脳組織の電気刺激のような発作を防止するための様々な介入デバイス及び処置の制御を含むがこれらには限定されない様々な機能を実施するように構成することができる。本明細書に説明されるように、様々な検出アルゴリズム83を発作予兆事象または発作事象がおこっているか否かを示すことができる検出評価点を生成するように構成することができる。アルゴリズム83は、高速フーリエ変換アルゴリズム、ウエーブレットアルゴリズム、ファジー論理アルゴリズム、等の、技術上既知の1つ以上の信号処理アルゴリズムを含むように構成することができる。
【0045】
多くの実施形態において、モジュール80は、発作の発症を防止するか、またはおこっている発作を止めるか、そうではなくとも発作の持続時間を縮めるために、電極部材30(または別の埋込電極)を介して神経抑制信号101を送るように構成された刺激器デバイスまたは刺激器100を備える。刺激器100は一般に電力制御/充電回路及び放電キャパシタまたはその他の可放電パワー電圧源を備えるであろう。刺激器100は、長期にわたりあるデューティサイクルの神経抑制信号を与えるための、様々な整調回路及び/または信号処理回路も備えることができる。
【0046】
薬物投与デバイス90は、容積式ポンプ(例:ピストンポンプ)、蠕動ポンプ、スクリューポンプ及び同様のポンプ装置を含む、技術上既知の1つ以上の薬物ポンプを備えることができる。ポンプは頭部または頸部あるいは身体の他の領域への埋込のために小型化することができる。小型化ポンプにはMEMSポンプ及び/またはバブルジェット(登録商標)ベース小型ポンプを含めることができる。また、ポンプは頭内投与または静脈内投与の内のいずれかのまたはいずれのためにも構成することができる。頭内投与に対し、デバイス90は、内腔25及び/または電極部材30の中空実施形態の内腔31を通して薬物を投与するために、液体コネクタ40,41を介して導入器20の1本以上の内腔25に液体流通可能な態様で接続することができる。コネクタ41には、ルアーロックコネクタ、Touhy Boestアダプタ及びその他の同様のデバイスを含めることができる。投与デバイス90は、液体または固体を、あるいは液体及び固体を、送るために構成することができる。液体輸送に対し、デバイス90には、容積式ポンプ装置、ロータリーポンプ装置または蠕動ポンプ装置の内の1つ以上を用いることができる。固体輸送に対しては小型スクリューポンプを用いることができる。一般に、デバイス90は1つ以上の薬物96を収める貯槽95を備える。しかし、貯槽95を薬物投与デバイス90から分離して、カテーテルまたは同様の連結部材によって液体流通可能な態様で、薬物投与デバイス90に連結することもできる。後者の場合、貯槽は皮下に埋め込むことができ、あるいは体の外部に配置して(例えば、皮膚を通して注入することで)薬物の補給を可能にすることさえもできる。薬物投与デバイス90は、モジュール80及びコントローラ81からの信号87によって制御されるように構成されることも望ましい。貯槽95は、貯槽に補給が必要であるときに患者または医師に警告するために、貯槽内の(液体または固体の)薬物の残量を検知するように較正されたセンサ97も備えることができる。
【0047】
次に
図2B及び16A〜16Eを参照して、ここで導入器20の導入及び電極部材30の展開を行う方法が論じられる。装置10の導入に先立ち、てんかんまたはANEAを特徴とするその他の状態を有する患者は、処置されるべき状態を生じさせると思われるANBNEAの病巣の場所及びその他の特徴を決定するために、一連のEEG及びその他の関連する脳スキャンを受けることができる。次いでこの情報は、電極部材の展開のための目標組織部位TS、したがって頭蓋における導入器の導入のための対応部位を決定するために用いることができる。多くの場合、導入器はバーホールプラグを通して導入することができる。しかし、これは例示であり、別の手法も等しく適用可能であることは当然であろう。バーホールBHはドリルで開けられ、バーホールプラグ61が配置された後、所望の目標組織部位TSまで導入器が脳組織内に進められる。前進はX線透視法またはその他の医用画像観察法の下で行うことができる。導入器の遠端22の所望の目標組織部位TSへの位置決めは、導入器の遠端マーカーの使用によって容易になり得る。さらに、挿入深さを示すことができる、長さに沿う遷移マーキング24を有することができる。導入器を所望の深さまで挿入すると、外科医は次いでロッキングデバイス62を用いて導入器を所定の位置にロックすることができる。導入器が所定の位置にロックされたことの判定は、例えば接触センサ63によって送られる信号によって、達成することができる。
【0048】
次いで電極部材30を展開して選択可能な大きさ及び形状を有する検出空間DVを得ることができる。電極部材は個別にまたは一括して展開することができる。電極部材は手動で、または(電極部材30の近位部分に結合された)前進部材28を用いて、あるいは技術上既知のその他の前進手段によって、前進させることができる。電極部材の挿入深さは、例えば、前進部材30上に配置されたストップ(図示せず)を用いて、及び/またはそれぞれの電極部材30上に配置されたストップ37(
図3)を用いることで、制御することができる。電極部材30の展開はX線透視法またはその他の画像形成法で観察することで誘導することもできる。いくつかの実施形態において、このプロセスはX線透視画像(またはその他の画像)上にANEAの病巣Fと思われる場所を表すマーカーまたはその他の標識を重畳することで容易になり得る。医師は、病巣FからのANEA信号の検出を最適化するように、展開された電極部材の位置及び配位を定めるためにこのマーカーを用いることができる。例えば、医師は電極部材の遠端が病巣Fから選択可能な距離内に配されるように電極部材を展開するためにマーカーを用いることができる。また、マーカーは、病巣FからのANEAが発生する電場ベクトルによってそれぞれの電極部材につくられる電圧を最大にするように、電極部材の1つ以上の軸線に対する選択可能な方位角、例えば90°を達成するためにも用いることができる。
【0049】
電極部材の展開後、医師は、電極部材が機能していて、1つ以上の病巣FからのANEA信号を検出できることを確証するため、1つ以上の試験を実施することができる。試験には、電極部材に対して病巣Fによる送出と同じ方位を有するように脳内に配置した別の電極(図示せず)からの試験信号の送出を含めることができる。試験信号は実ANEA信号の強度及び周波数をシミュレートするように構成することができる。電極部材が試験信号を検出できなければ、医師は、彼または彼女が所望の応答を得るまで、電極部材の全てまたは一部を展開し直すことができる。特定の実施形態において、試験信号は展開された電極部材の機能の試験に用いるだけでなく、電極部材の展開を補助するビーコンとしても用いることができる。そのような実施形態において、医師は、電極部材によって測定される発生電圧を最大にするように、試験/ビーコン信号を送り出しながら電極部材を展開及び位置決めすることができる。電極部材30が正しく配置されると、ロッキングデバイス63または別のロッキング機構を用いて電極部材を所定の位置にロックすることができる。次いで、バープラグを技術上既知の標準的方法を用いて封止/密閉して、コネクタ40(
図6A)を1本以上のワイアによってコントロールモジュール80(または他の同様のデバイス)に接続することができ、あるいは接続は無線態様とすることができる。コントロールモジュール80は頭部または頸部で皮下に埋め込むことができ、あるいは患者が身に着けることができる。ANEAの病巣Fの処置のための薬物投与デバイス90をモジュール80が収めている実施形態において、モジュールは一般に頭部または頸部で皮下に埋め込まれるであろう。そうではない実施形態において、モジュールは数多くの様々な場所に配置することができ、あるいは患者が身に着けることができる。そのような実施形態において、分離された薬物貯槽及び薬物投与デバイスは、薬物の頭内投与を与えるために頭部または頸部に埋め込むことができる。あるいは、薬物は静脈内(IV)投与とすることができ、この場合、貯槽及び薬物投与デバイスは数多くの様々な場所に配置することができ、及び/または患者が体外で身に着けることができる。頭内投与及びIV投与の組合せが用いられる実施形態において、薬物貯槽/投与デバイスは頭部及び頸部に埋め込むことができ、IV投与のための別の投与デバイス/貯槽を患者が身に着けることができる。
【0050】
装置10を用いてANEAを検出し、発作のような神経学的事象または状態の検出にこの情報を利用する方法の議論が提示される。そのような実施形態及び関連実施形態において、発作予兆事象及び発作事象(そのような事象は発作予兆状態及び発作状態に対応することができる)のいずれをも検出するための方法が論じられる。議論を容易にするため、発作予兆事象及び発作事象はてんかん発作予兆事象(発作予兆状態または事象とも称される)及びてんかん発作事象(以降、発作とも称される)を指すとする。しかし、これらの方法は、片頭痛及びその他の関連する状態のような、その他の神経学的事象または状態及び症状にともなう発作予兆事象/状態及び発作の検出にも適用できることは当然である。上で論じたように、装置10はそれぞれの電極部材30と基準電極35の間の電圧差を測定し、これらの値を用いて電場ベクトル:
【数13】
【0051】
を計算することで、神経活動によって発生する脳内の電場ベクトルを測定する。次いで、電場ベクトル:
【数14】
【0052】
の様々な特徴を発作事象または発作予兆事象のインジケータとして用いることができる。
図17〜18を参照すれば、正常な脳活動中、電場ベクトル:
【数15】
【0053】
は一般に、
図17Aで示されるように、ランダムな(上述した角度ψ及びθで定められるような)方向Dを有するであろう。また、正常な活動中、電場ベクトルの大きさ/強度:
【数16】
【0054】
はランダムであるが、
図18に示されるように、特定の閾値Tの下にとどまる時間平均値を有するであろう。対照的に、発作予兆事象中または発作事象中におこるような異常神経活動期間中、電場ベクトル:
【数17】
【0055】
は、
図17Bに示されるように、正常脳活動に比較して長時間にわたり特定の方向Dすなわち方向領域DR内に滞留するであろう。滞留時間は10分の数秒から数秒ないしまたはさらに長く(例えば0.10秒〜10秒、特定の実施形態では0.2秒、0.5秒、1秒、2秒及び5秒)であり得るが、より短い滞留時間(例えば0.01秒〜0.1秒)も考えられる。発作予兆事象中または発作事象中、方向領域DRの境界は円筒Cまたは同様の幾何形状をとるであろう。また、電場強度は、
図18に示されるように、ある持続時間にわたり正常活動の閾値Tをこえるであろう。電場強度は、発作予兆事象または他の同様の事象に対する第1の閾値T
1及び発作事象または他の同様の事象に対する第2の閾値T
2をこえることがあり得る。
【0056】
特定の実施形態において、モジュール80内に常駐するアルゴリズム83は、(ANEA期間を発作予兆事象、てんかん発作事象またはその他の発作事象のマーカーとして用いることができるように)発作予兆事象、てんかん発作事象またはその他の発作事象を表すことができるANEA期間を検出するために電場ベクトルの特性(例:電場ベクトルの強度及び方向)の上記変化の1つ以上を用いることができる。例えば、発作予兆事象または発作は、選ばれた時間よりも長時間特定の方向または方向円錐内にとどまっている電場ベクトルに基づいて検出することができる。装置10の配置前にANEAの既知の病巣の場所があらかじめ決定されている場合の適用に対して、検出された電場ベクトルの方向が先に検出された病巣Fの方向(この方向は導入器の遠端に対する病巣の方向である)を含む選ばれた方向円錐内にあれば、さらにアルゴリズムによる加重を用いることができる。
【0057】
予測電場ベクトル特性の別の例において、発作予兆事象または発作は、電場強度が特定の閾値をこえるか否か、さらに好ましくは電場強度の時間平均がその閾値をこえるか否かに基づいて検出することもできる。電場ベクトルの方向及び強度のいずれもが閾値をこえる必要があるように、これらの2つの手法の組合せを用いることもできる。さらに、パターン認識アルゴリズムを用いて、発作予兆事象または(発作事象としても知られる)発作を表すことができる電場の特定の信号パターンを検出することができる。そのようなパターンのデータベースは、それぞれの患者自身、てんかん患者母集団または両者の組合せからとられたEEG測定値からつくることができる。この場合も、検出アルゴリズムは、発作予兆事象または発作の判定を行うために電場の強度及び方向の一方をまたは両者によるいずれのパターン検出も用いることができる。ある閾値をこえる検出評価点は、発作予兆事象を示す第1の値をこえる評価点及び発作を示す第2の値をこえる評価点によって、発作予兆事象または発作の予測に用いることができる。また、アルゴリズムが上記またはその他のパラメータの関数として検出評価値を生成するように、それらの検出パラメータに加重を割り当てることができる。加重は、患者母集団からとられた重み付きデータベースから選ぶことができ、あるいは外部EEG電極を用いてまたは所定の位置にある装置10によりある時間にわたって患者をモニタし、次いで発作予兆事象または軽いてんかん発作をおこさせてそれらの検出パラメータについてのデータを記録することにより、個々の患者についてそれぞれ確立することができる。加重は、以降の発作予兆事象または発作後に、健康管理提供者によって手動で、または自己学習法を用いてアルゴリズム自体により、更新することもできる。
【0058】
検出評価点が発作予兆事象または発作事象を示す閾値をこえると、モジュール80は1つ以上の機能を実施することができる。第1に、
図14をここで参照すれば、モジュールは、患者が薬物をとるような、また座るか横になるかまたはいかなる危険な活動も中断するような、予防手段をとることができるように患者に警告するためのアラーム120に信号85を送ることができる。モジュールは(RFポートまたはIRポートを介して)病院または医師の診療所にあるモニタ装置130に無線信号86を送ることもできる(これは、セル式電話または技術上既知の様々な医療遠隔測定装置を用いて達成することができる)。モジュールは、ある投与量の抗発作薬を投与させるための信号87を薬物投与デバイス87に送ることもでき、及び/または発作の発症を防止するかまたはおこっている発作を止めるために電極部材30(または別の埋込電極)を介して神経抑制信号101を送るための信号88を刺激デバイス100に送ることもできる。様々な実施形態において、抗発作薬投与及び神経抑制刺激の介入の組合せを用いることができる。神経抑制信号101は様々な形態をとることができる。一実施形態において、神経抑制信号101は発作予兆事象または発作をおこさせる病巣Fを囲む領域を脱分極するように構成することができる。別の実施形態において、神経抑制信号101は、異常神経活動に対して位相をずらすか、そうではなくとも異常神経活動の周囲組織への影響を弱めるように、発作予兆事象または発作をおこさせる異常神経活動の特定のパターンに整合させることができる。好ましい実施形態において、神経抑制信号は電極部材30を刺激電極36として用いて送り出される。しかし、刺激電極として別の電極の使用も考えられる。
【0059】
薬物介入を用いる実施形態に対し、検出評価点の値及び/または検出された事象が発作予兆事象であるかまたは発作であるかに基づいて、所定の量の薬物を滴下投与することができる。基礎投与量は、体重、年齢、てんかんのタイプ(例:部分てんかん発作)のような、患者の様々なパラメータに基づいて決定することができる。適する抗発作薬には、フェニトインナトリウム(ディランチン)、フロセミドまたはその他のループ利尿剤があり、技術上既知の他の抗発作薬も考えられる。薬物の投与中及び投与後、発作予兆事象または発作が静まったかどうか、またその程度を、判定するための脳活動をモニタし続けるように、システム5を構成することができる。検出評価点及びその他の要因に依存して、必要に応じて薬物の反復投与を施すことができる。検出評価点が選ばれたレベルより高いままであれば、量を増やして薬物をさらに投与することができる。また、検出評価点、てんかんのタイプ、発作のパターン、年齢、体重、等の内の1つ以上に依存して、投与量選択可能方式を用いることができる。例えば、発作予兆事象に対してはボーラスを頭内に与えることができ、完全発作に対して、処置には頭内ボーラス投与及びこれに続く、発作後の選択可能な時間にわたる、同じかまたは第2の薬物の(頭内またはIV)投与の長時間維持を含めることができるであろう。また、様々な実施形態において、個々の検出評価点に基づくだけではなく、評価点が発作予兆事象または発作事象の閾値より低くとも、検出評価点の時間パターンにも基づいて投与量選択可能方式を運用できる。例えば、選ばれた時間にわたる検出評価点におけるスパイクの数に基づいて薬物の投与量を定めることができる。様々な薬物投与方式を頭内投与デバイス及びIVポンプを用いる頭内投与及びIV投与の組合せを用いるように構成することもできる。
【0060】
様々な実施形態において、薬物投与方式は投与される特定の薬物または薬物の組合せに合わせて調整することができる。フロセミドまたは他の同様の薬物の使用に対し、薬物投与方式は選ばれたピーク頭内濃度を達成し、その後の同じかまたは異なる薬物の投与量を維持するように構成されたボーラス投与の形態とすることができるであろう。複数の抗発作薬の使用を含む特定の実施形態においては、どの薬物を実際に与えるかを決定するために検出評価点を用いることもできる。例えば、第1の薬物に対して第1の閾値より高い検出評価点を用いることができ、第2の薬物を選択するために第2の閾値より高い別の検出評価点を用いることができる。
【0061】
発作事象または発作予兆事象をおこす異常神経活動を検出するための方法の他の様々な実施形態において、組織インピーダンスの変化を用いることもでき、そのような変化は電極部材30によって測定される。そのような手法は、発作予兆状態中または発作状態中には脳組織のインピーダンスが変化するという原理に基づいてはたらく。組織インピーダンスは導電部分34(
図6B)と基準電極35の間に微弱な電圧または電流を印加することで測定することができる。インピーダンスの実成分及び虚成分の両者を用いることができる。電圧/電場ベクトル測定を用いる方法と同様に、インピーダンス測定値は発作予兆事象及び発作事象のいずれをも予測するための手段としての検出評価点を生成するために用いることができる。特定の実施形態において、インピーダンス測定は、電圧/電場ベクトル測定と組み合わせて、発作予兆事象及び発作事象のいずれの予測感度もさらに向上させることができる。
【0062】
結論
上述した本発明の様々な実施形態は、例示及び説明の目的のために提示した。開示された精確な形態への本発明の限定は目的とされていない。多くの改変、変形及び改善が当業者には明らかであろう。例えば、様々な小児科への応用のための、あるいは異常神経活動を含む多くの様々な神経学的な事象または状態の処置のための、大きさにつくるか、そうではなくともそれらのために適合させることができる。
【0063】
一実施形態からの要素、特徴または作用は別の実施形態からの1つ以上の要素、特徴または作用と容易に組み合わせるかまたは置換して、本発明の範囲内の数多くの別の実施形態を形成することができる。さらに、他の要素と組み合わされるとして示されるかまたは説明される要素は、様々な実施形態において、単独要素として存在することができる。したがって、本発明の範囲は説明された実施形態の明細に限定されず、代わりに、添付される特許請求の範囲によってのみ限定される。