(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5984909
(24)【登録日】2016年8月12日
(45)【発行日】2016年9月6日
(54)【発明の名称】自動車の冷却循環路内の欠陥を検知する方法および診断テスタ
(51)【国際特許分類】
B60H 1/32 20060101AFI20160823BHJP
F24F 11/02 20060101ALI20160823BHJP
【FI】
B60H1/32 623B
F24F11/02 N
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-500302(P2014-500302)
(86)(22)【出願日】2012年2月15日
(65)【公表番号】特表2014-508681(P2014-508681A)
(43)【公表日】2014年4月10日
(86)【国際出願番号】EP2012052555
(87)【国際公開番号】WO2012126678
(87)【国際公開日】20120927
【審査請求日】2013年11月21日
(31)【優先権主張番号】102011006970.4
(32)【優先日】2011年4月7日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102011005928.8
(32)【優先日】2011年3月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ベノ ホーニヒ
【審査官】
小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0186430(US,A1)
【文献】
特開2004−017681(JP,A)
【文献】
実開昭50−086765(JP,U)
【文献】
特開平06−074621(JP,A)
【文献】
特開昭63−297973(JP,A)
【文献】
米国特許第05987903(US,A)
【文献】
特開2001−213143(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0230106(US,A1)
【文献】
特開2004−322955(JP,A)
【文献】
特開2001−012830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/32
F24F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒(12)の流れ方向で見て、コンプレッサ(6)と、コンデンサ(8)と、膨張装置(18)と、蒸発器(4)とを備えた、自動車の冷却循環路(2)内の欠陥を検知する方法であって、
(a)前記コンプレッサ(6)のスイッチオフ時に第1の冷媒圧力を測定するステップと、
(b)前記コンプレッサ(6)をスイッチオンするステップと
を有する方法において、
(c)前記コンプレッサ(6)のスイッチオンから規定された時間間隔の経過後に第2の冷媒圧力を測定するステップと、
(d)前記ステップ(c)において測定された前記第2の冷媒圧力と、前記ステップ(a)において測定された前記第1の冷媒圧力とから差分値を求めるステップと、
(e)前記差分値を、前記冷却循環路(2)内の欠陥を検知するために少なくとも1つの基準値と比較するステップと
を有し、
当該方法を、「コールド」の温度設定で実施し、
前記冷媒圧力を前記コンデンサと前記膨張装置との間で測定し、
前記基準値は、前記コンプレッサ(6)のスイッチオフ時の前記第1の冷媒圧力、前記コンプレッサ(6)のスイッチオンから前記第2の冷媒圧力の測定までの前記時間間隔および周辺温度に関連していることを特徴とする、自動車の冷却循環路(2)内の欠陥を検知する方法。
【請求項2】
前記ステップ(d)および前記ステップ(e)を診断テスタ(13)により実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記自動車がエンジンを有し、該エンジンを前記ステップ(a)の前に始動し、前記エンジンは前記測定の間、アイドリング状態にある、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)の前に、前記エンジンを10秒〜30秒間、運転させる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(a)の前に、前記エンジンを20秒間、運転させる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記コンプレッサ(6)のスイッチオンから前記第2の冷媒圧力の測定までの時間間隔は10秒〜50秒である、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記コンプレッサ(6)のスイッチオンから前記第2の冷媒圧力の測定までの時間間隔は30秒である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記ステップ(e)において、前記差分値が基準値よりも小さな場合に、前記冷却循環路(2)内の欠陥が検知される、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
冷媒(12)の流れ方向で見てコンプレッサ(6)、コンデンサ(8)、膨張装置(18)および蒸発器(4)を備えた自動車の冷却循環路(2)内の欠陥を求める診断テスタ(13)であって、
該診断テスタ(13)は、前記冷却循環路(2)内の第1の冷媒圧力と、第2の冷媒圧力とから差分値を求めるように構成されており、前記第1の冷媒圧力は、前記コンプレッサ(6)のスイッチオフ時に求められており、前記第2の冷媒圧力は、前記コンプレッサ(6)のスイッチオン後に所定の時間間隔の経過後に求められており、かつ前記診断テスタ(13)は、前記差分値を、前記冷却循環路(2)内の欠陥を検知するために、少なくとも1つの基準値と比較するように構成されており、自動車の前記冷却循環路(2)内の欠陥を求める診断テストが、「コールド」の温度設定で実施されるようになっており、前記冷媒圧力が前記コンデンサと前記膨張装置との間で測定されるようになっていて、前記基準値は、前記コンプレッサ(6)のスイッチオフ時の前記第1の冷媒圧力、前記コンプレッサ(6)のスイッチオンから前記第2の冷媒圧力の測定までの前記時間間隔および周辺温度に関連していることを特徴とする、冷却循環路内の欠陥を求める診断テスタ。
【請求項10】
前記診断テスタ(13)は、制御装置(11)に接続するように構成されている、請求項9記載の診断テスタ。
【請求項11】
前記診断テスタ(13)は、自動車のエンジン制御装置または自動車の空調設備制御装置に接続するように構成されている、請求項10記載の診断テスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の冷却回路内の欠陥を検知する方法および診断テスタに関する。
【0002】
背景技術
自動車の空調設備のメンテナンス時には、通常、空調設備の冷却循環路の欠陥が点検される。冷却循環路内のそのような欠陥を突き止めることができるように、公知の方法では、複数の測定値が機械工によって人為的に解釈され、分析される。このことは、機械工のシステムに関する深い知識と多くの経験とを必要とし、さらに極めて時間および費用がかかる。
【0003】
発明の開示
本発明の課題は、自動車の冷却循環路内の欠陥を信頼性よく検知する、廉価で簡単な方法ならびに相応する診断テスタを提供することである。
【0004】
この課題は、方法に関する独立請求項に記載の特徴を有する方法ならびに装置に関する独立請求項に記載の特徴を備えた診断テスタにより解決される。有利な変化形は、従属請求項に記載されている。
【0005】
自動車の冷却循環路内の欠陥を検知する本発明による方法は、独立請求項1に係る方法を含んでいる。
【0006】
冷却循環路内の欠陥を検知する従来の方法と比較して、本発明による方法は、自動車の冷却循環路内の欠陥を直接に検知または推測することができる、という利点を有している。従来の方法では、通常、機械工により多数の測定されたパラメータが解釈され、評価されなければならなかった。このためには、多くの経験と、冷却循環路内における熱力学的な経過に関する良好な理解とが必要である。本発明による方法は、欠陥検査を著しく容易にする。なぜならば、冷却循環路内の欠陥が、直接に本発明による方法によって検知されるからである。空調設備の複数の測定値を人為的に評価することはもはや必要ではなく、このことは一方では時間を削減し、他方では、機械工による人為的な評価ミスが排除されているので、欠陥検査の高い信頼性を提供する。
【0007】
自動車において典型的に使用されている冷却循環路は、冷媒が循環する閉じられた循環路を有しており、通常は冷媒の流れ方向で見て、コンプレッサ、コンデンサ、膨張装置および蒸発器(エバポレータ)を有している。冷却循環路の作動中に、冷媒はコンプレッサ内で高圧に圧縮され、次いでコンデンサ内にガイドされる。コンデンサを通って空気流が冷媒に対してガイドされて、冷媒が冷却され、かつ完全に凝縮(液化)される。コンデンサに次いで、冷媒は膨張装置内で膨張させられて、次いで蒸発器内に進入する。空気流は蒸発器を通じてガイドされ、空気流は冷媒を加熱する。冷媒は、蒸発器から非圧縮の状態でガス状の相で進出し、再びコンプレッサの入口にガイドされる。
【0008】
上述の冷却循環路内で起こり得る欠陥は、たとえば、コンプレッサが冷媒を十分に圧縮しないか、冷却循環路内に漏れが存在していることにより生じる。本発明者の知識によれば、このような欠陥は冷媒の圧力降下をもたらす。特に、このような欠陥は、コンプレッサのスイッチオン時の冷媒圧力と、コンプレッサのスイッチオフ時の冷媒圧力との比較により証明可能である。なぜならば、両圧力値の間で、冷却循環路内における最も大きな圧力差が形成されるからである。
【0009】
本発明によれば、方法ステップ(a)において、コンプレッサのスイッチオフ時の第1の冷媒圧力が測定される。コンプレッサのスイッチオフ時には、冷媒の圧縮が行われず、これによって測定された第1の冷媒圧力は、冷却循環路内で生じる最低の冷媒圧力であるので、冷却循環路内全体には同一の冷媒圧力が占めている。
【0010】
ステップ(b)においてコンプレッサをスイッチオンすることにより、冷却循環路内の、特にコンプレッサ出口と膨張装置の入口との間の高圧領域で冷媒圧力が高められる。
【0011】
ステップ(c)において、第2の冷媒圧力が所定の時間間隔の経過後に測定される。第2の冷媒圧力は、コンプレッサのスイッチオン後に冷却循環路内に占める圧力である。測定された第1の冷媒圧力に対して、完全な、つまり損傷のない冷却循環路の第2の冷媒圧力は著しく高い。この場合、第1の冷媒圧力の測定と、第2の冷媒圧力の測定との間の時間間隔は十分に長く選択されており、これにより冷却循環路内の一定の圧力がコンプレッサにより形成され得る。
【0012】
ステップ(d)において、測定された第2の冷媒圧力と、測定された第1の冷媒圧力との差分値が形成される。この差分値は、ステップ(d)におけるコンプレッサのスイッチオンにより引き起こされる冷媒の圧力上昇である。
【0013】
ステップ(e)では、既に述べた差分値が、冷却循環路内の欠陥を検知するために基準値と比較される。冷却循環路内の圧力上昇を表す差分値は、冷却循環路内の欠陥のための指標となる。コンプレッサのスイッチオフ時の冷媒圧力とスイッチオン時の冷媒圧力との間で圧力上昇が小さすぎる場合、このことから冷却循環路内に欠陥が存在していることが推測され得る。基準値は、完全な冷却循環路内でコンプレッサのスイッチオンにより引き起こされる圧力上昇を表す。差分値と基準値との比較によって、冷却循環路内の欠陥を直接に検知することができる。
【0014】
差分値は、Δp=p(t2)−p(t1)から成る。
ここで、p(t1)は、冷媒圧力の第1の測定の時点での冷媒圧力であり、p(t2)は、冷媒圧力の第2の測定の時点での冷媒圧力を表す。
【0015】
Δp<基準値 の場合、冷却循環路内に欠陥が存在する。
【0016】
Δp≧基準値 の場合、冷却循環路内に欠陥は存在しない。
【0017】
このような基準値は、種々異なる周辺条件での完全な、つまり損傷のない冷却循環路における実験から求められ、たとえば表形式で差分値との比較のために存在していてよい。
【0018】
本発明の第1の態様によれば、ステップ(d)およびステップ(e)は、診断テスタにより実施される。このような診断テスタでは差分値が計算され、この差分値は次いで基準値と比較される。冷却循環路内の欠陥の存在は、次いで機械工に対して表示され得る。
【0019】
本発明の別の態様によれば、自動車は、ステップ(a)の前に始動されるエンジンを有している。エンジンは測定中にアイドリング(空転)状態にある。自動車のエンジンにより、たとえばコンプレッサおよびブロアが駆動され得る。ステップ(a)の前に、かつ第1の冷媒圧力の測定前にエンジンを始動させることは、コンプレッサの後続のスイッチオン時に、自動車のエンジンが既に一定の回転数で回転し、エンジンの始動段階がコンプレッサの挙動に影響を与えない、という利点を有している。
【0020】
さらに、冷却循環路の温度設定が、「コールド」に調節される。このような温度設定は、車室に流入する空気流の温度を調節し、「コールド」では空気流のできるだけ強力な冷却が生じる。このためには、コンプレッサが続くテストにおいて全負荷で運転され、この場合に冷媒の最大の圧縮が達成されることが必要である。したがって、ステップ(e)では、できるだけ大きな差分値が求められ、冷却循環路内の欠陥を容易に検知することができる。
【0021】
さらに、測定中に、周辺温度が有利には5℃よりも高い。周辺温度が5℃よりも高い温度範囲は、通常自動車の空調設備が使用され得る温度範囲である。
【0022】
別の態様では、ステップ(a)の前に、エンジンが10秒〜30秒間、特に約20秒間、運転させられる。これにより、自動車のエンジン内で一定の条件が生じる。有利には、自動車のエンジンは、コンプレッサのスイッチオン前に一定の運転条件に達し、のちにスイッチオンされるコンプレッサを一定の回転数で駆動する。
【0023】
本発明の別の態様では、コンプレッサのスイッチオンから第2の冷媒圧力の測定までの時間間隔は、10〜50秒、有利には約30秒である。この時間間隔の間に、冷却循環路内の圧力が上昇する。コンプレッサは、冷却循環路内で一定の圧力を形成するために所定の時間を必要とする。第1の冷媒圧力と第2の冷媒圧力との間の測定可能な差分値は、コンプレッサのある程度の始動時間の経過後にようやく生じる。冷却循環路内の圧力上昇は、理想的には、一定の傾斜を有する直線で描かれ得る。しかし、冷却循環路内の実際の圧力上昇は、当初は幾らか平坦に、次いでほぼ一定の傾斜で、冷却循環路の高圧値にまで上昇する。10秒〜50秒の時間間隔で、完全な冷却循環路内で測定可能な差圧が形成され、圧力が僅かにしか上昇しないコンプレッサの始動範囲を超えていることが確実にされる。
【0024】
本発明の別の態様によれば、基準値は、コンプレッサのスイッチオフ時の第1の冷媒圧力、コンプレッサのスイッチオンから第2の冷媒圧力の測定までの時間間隔ならびに周辺温度に関連する。コンプレッサのスイッチオフ時の第1の冷媒圧力は可変であり、とりわけ冷却循環路の充填状態および冷媒の温度に依存する。通常、コンプレッサのスイッチオフ時の冷却循環路内の冷媒圧力は少なくとも+2バールであり、これにより冷却循環路を運転することができる。冷却循環路の圧力は、時間に関して必ずしも線形に上昇するのではなく、測定の間のそれぞれの時間間隔のために求められなければならない。さらに冷却循環路内の圧力上昇は、周辺温度およびコンプレッサのスイッチオフ時の出発冷媒圧力に関連して非線形である。したがって各基準値は、種々異なる条件の完全な冷却循環路内で求められる。
【0025】
本発明の別の態様では、冷却循環路内の欠陥は、差分値が基準値よりも小さい場合に検知される。差分値は、冷却循環路内の実際の圧力上昇を表しているのに対して、基準値は完全な冷却循環路内の理想的な圧力上昇を表している。差分値が基準値よりも小さな場合、冷却循環路内の圧力上昇は、完全な冷却循環路内の圧力上昇よりも小さい。このことから、故障したコンプレッサまたは循環路内の漏れのような欠陥が存在していることが推測され得る。
【0026】
さらに別の態様では、冷媒圧力の測定が、冷却循環路内の一箇所において、コンプレッサのすぐ下流側で実施される。この箇所では、測定装置とコンプレッサとの間に別の構成部材が位置していないので、冷媒の、コンプレッサのスイッチオンにより起こる圧力上昇が直接に測定可能である。
【0027】
冷媒圧力を、冷却循環路内の一箇所において、コンデンサと膨張装置との間で測定するとさらに有利である。なぜならば、この領域では冷媒の温度が、コンプレッサからの出口の下流側におけるよりも低いからである。したがって、測定装置を高温耐性に形成することは必要ない。
【0028】
本発明による方法は、自動車の制御ユニット、特にエンジンまたは空調設備制御ユニットに接続された診断テスタにより実施され得る。
【0029】
さらに本発明は、請求項9に記載の、上述した冷却循環路内の欠陥を検知する診断テスタに関する。このような診断テスタは、冷却循環路内の欠陥を検知する方法の上述の利点を実現する。全体的に方法に関して記載された態様および該態様に関連する利点は、装置に一致して、冷却循環路内の欠陥を検知する診断テスタのためにも当てはまる。
【0030】
別の態様では、診断テスタが制御装置、特に自動車のエンジン制御装置または自動車の空調設備制御装置に接続するために構成されている。
【0031】
本発明を以下に1つの実施の形態に付き、添付の図面に関連して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】制御ユニットと診断テスタとを備えた、自動車の冷却循環路の概略図である。
【
図2】
図1に示した冷却循環路内の一箇所における冷媒の圧力変化を示した概略図である。
【0033】
図1は、自動車の制御ユニット11および診断テスタ13を備えた冷却循環路2を概略的に示している。冷却循環路2内には、冷媒12が循環している。冷却循環路2は、冷媒12の流れ方向で見て、蒸発器4、コンプレッサ6、測定装置10、コンデンサ8および膨張装置18を有している。
【0034】
コンプレッサ6内では、冷媒12の圧縮が行われる。この場合、ガス状の冷媒12の圧力は、高圧にまで高められる。コンプレッサ6とコンデンサ8との間には、測定装置10が配置されている。この測定装置10において、冷媒12の圧力が測定される。次いで、コンデンサ8内で、ガス状の冷媒12がコンデンサ空気流17に対向して冷却され、完全に凝縮される。コンデンサ空気流17は、ブロア14からの空気流であり、ブロア14は、周辺空気をコンデンサ8を通して吹き込むか、または吸い込む。
図1に示したコンデンサ8は熱交換器を有している。熱交換器をコンデンサ空気流17が通流して、冷媒12を冷却するので、冷媒12は完全に凝縮する。この場合に、コンデンサ空気流17は、冷媒が完全な凝縮のために放出した熱を吸収する。加熱されたコンデンサ空気流17は、周囲に導出される。次いで膨張装置18内で、冷媒12は低圧に開放されて、これにより低温となって、蒸発器4内に進入する。周辺空気から吸い込まれる蒸発空気流16を介して、冷媒に熱が供給される。冷媒12との熱交換時に、蒸発空気流16は冷却され、次いで自動車の内室に供給される。蒸発器4に次いで、ガス状の冷媒12は再びコンプレッサ6の入口に導入される。
【0035】
図1はさらに、測定装置10に接続された制御ユニット11と、制御ユニット11に接続された診断テスタ13とを示している。制御ユニット11は、自動車エンジン制御ユニットまたは自動車空調設備制御ユニットであり、これらの制御ユニットにより典型的にはコンプレッサ6ならびにブロア14が制御可能である。診断テスタ13は、通常、工場において自動車の制御装置に接続され、測定装置10から評価のための測定値を得ることができる。さらに、診断テスタ13によって、エンジンの始動と第1の冷媒圧力の測定との間の時間間隔、ならびにコンプレッサのスイッチオンから第2の冷媒圧力の測定までの時間間隔が決定されて、制御ユニット11に伝達され得る。それに基づいて、制御ユニット11はエンジンと冷却循環路とを相応に制御する。
【0036】
図2は、
図1に示した冷却循環路2内の測定装置10における冷媒圧力の例示的な圧力変化を示すグラフ20を示している。冷媒圧力がグラフに示されている。この場合、縦軸には圧力がバール単位で記入され、横軸には時間が秒単位で記入されている。
図2に示した圧力変化が70秒間にわたって示されている。この場合、圧力は当初一定のままであるが、次いで連続的に上昇し、約20バールの値に近づく。圧力変化曲線は、この場合、始めに著しく上昇し、次いで平坦になる。これにより、最終的にほぼ一定の圧力値をとることができる。
図2に示された圧力変化は、コンプレッサ6のスイッチオン後の冷媒圧力の経験的に知られた経過であり、第1の測定時点24および第2の測定時点26がグラフに記載されている。
【0037】
図2に示された圧力変化図は、
図1に示した完全な冷却循環路2の冷媒12の圧力変化を示している。この場合、第1の測定点24において、コンプレッサがスイッチオンされる。圧力変化は、冷却循環路2内の欠陥を検知するためのテスト方法の時間にわたって示されている。この場合、テストの開始点22は、T=0秒で、5バールの冷媒圧力である。
【0038】
本発明によるテスト方法の実施のためには、幾つかの必須の前提条件が満たされなければならない。この前提条件には以下のことが含まれる。すなわち、開始点22では、
図1に示した冷却循環路2のコンプレッサ6がスイッチオフされており、ブロア14は、コンデンサ8および蒸発器4と、ブロア14により生じた空気流16,17との熱交換のために、開始点22において有利にはスイッチオンされている。さらに、自動車のエンジンは、テストの開始点22で同様に始動され、有利には測定の全機関にわたってアイドリング状態にある。周辺温度は、テスト中、5℃よりも高い。さらに、開始点22で、自動車内の空調設備操作ユニットの温度設定が「コールド(冷風)」に調節される。
【0039】
図2のグラフで開始点22において存在している5バールの冷媒圧力は、コンプレッサ6のスイッチオフ時の冷媒圧力のために例示的に示されたものである。冷媒圧力は、周辺条件ならびに冷却循環路2の充填状態に応じて変化する。以下に説明する、冷却循環路2における欠陥を検知するテストを実施することができるように、冷媒圧力は、開始点22では少なくとも+2バールでなければならない。さらに、存在し得る小さな漏れが検知されなくなってしまうので、冷却循環路2は、新たに充填されていないことが望ましい。
【0040】
自動車のエンジンは、冷却循環路2内で、たとえばコンプレッサ6とブロア14を駆動することができる。温度設定「コールド」は、空気流14,17のできるだけ強力な冷却を生ぜしめ、したがってコンプレッサ6が冷却循環路2内で引き続き行われるテストの間に全負荷の状態で運転することを確実にする。
【0041】
第1の測定点24におけるコンプレッサ6のスイッチオンは、たとえば人為的に使用者により実施されるか、またはコンプレッサ6に接続された制御ユニット11の命令により実施され得る。
【0042】
テストの開始点22の後、圧力は第1の測定点24までの10秒間にわたって一定である。この場合、10秒の時間は例示的な値である。テストの実施のためには、この値は10秒〜30秒の範囲、特に約20秒の範囲にある。この時間は、冷却循環路2内で一定の運転状態を形成するために役立つ。
【0043】
第1の測定点24では、コンプレッサ6のスイッチオフ時の冷媒12の第1の冷媒圧力が測定される。したがって、第1の測定点24で測定された冷媒12の圧力は、測定装置10により診断テスタ13に伝達され、該診断テスタ13に保存される。さらに、冷却循環路2のコンプレッサ6が、第1の測定点24においてスイッチオンされる。
【0044】
第1の測定点24におけるコンプレッサ6のスイッチオンにより、
図2のグラフに示した冷媒12の圧力は上昇を開始する。なぜならば、コンプレッサ6が冷却循環路2内の冷媒12を圧縮するからである。
図2に図示された冷媒圧力の圧力上昇は、当初いくらか平坦であり、次いで第2の測定点26に至るまで比較的に一定に上昇する。この第2の測定点26では第2の測定値が測定装置10によって測定される。
【0045】
第2の測定値26は、
図2に示されたグラフでは、第1の測定点24の30秒後に位置している。第2の測定点26では、第2の冷媒圧力が測定装置10により測定され、診断テスタ13に保存される。第1の測定点24におけるコンプレッサ6のスイッチオンから、第2の時点26での第2の冷媒圧力の測定までの時間間隔は、図示された実施の形態では30秒である。この場合、30秒の時間間隔は、冷却循環路2内の欠陥を検知する方法の確実な実施のために必要となる時間間隔のための単に例示的な値である。第1の測定点24と第2の測定点26との間の時間間隔は、有利には10秒〜50秒、特に30秒であると望ましく、これにより、第2の冷媒圧力は、完全な冷却循環路2の冷媒12における、第1の測定点24の冷媒圧力と比べて大幅な圧力上昇が確認可能である時点で、測定される。
【0046】
図2に示した圧力変化グラフ20では、第2の測定点26における冷媒12の圧力が5バールから15バールにまで上昇している。この場合、この値は、完全な冷却循環路2内で第2の測定点26において存在する冷媒圧力のための例示的な値である。第2の測定点26に続いて、
図2には評価期間28が示されている。この評価期間28において、第1の測定点24および第2の測定点26で記録された冷媒圧力の測定値が評価される。評価のためには、第2の測定点26の第2の冷媒圧力と、第1の測定点24の第1の冷媒圧力との差が求められる。この差分値は、冷却循環路2内の欠陥を検知するための基準値と比較される。このような基準値は、完全な冷却循環路2内の冷媒12の、第1の測定点24と第2の測定点26との間の期間の典型的な最小圧力上昇値である。この基準値は、完全な冷却循環路2における実験から求められる。さらに基準値は、コンプレッサのスイッチオフ時の第1の冷媒圧力、コンプレッサのスイッチオンから第2の冷媒圧力の測定までの時間間隔、ならびに周辺温度および使用された冷媒に関連している。
【0047】
冷却循環路2内の欠陥を検知するために、第2の冷媒圧力の測定値および第1の冷媒圧力の測定値から成る差分値が基準値と比較される。冷却循環路2内の欠陥は、差分値が基準値よりも小さな場合に検知される。
【0048】
P(t2)−P(t1)<基準値 の場合、冷却循環路2内に欠陥が存在する。
【0049】
P(t2)−P(t1)≧基準値の場合、欠陥のない冷却循環路2が存在する。
【0050】
この場合、p(t1)は、第1の測定点24における冷媒圧力であり、p(t2)は、第2の測定点26における冷媒圧力である。
【0051】
評価は、診断テスタ13により実施される。この場合、差分値は、第1の測定値24と第2の測定値26との間の時間間隔ならびに周辺条件および使用された冷媒12に対応する基準値と比較される。測定された圧力状態を評価するための評価期間28は、
図2に示したグラフでは例示的に5秒間である。この評価期間28は、診断テスタ13の計算機出力に依存する。
図2に示したグラフに例示的に45秒の時点に記入されているテストの終了点30で、たとえば、診断テスタ13による差分値と基準値との比較の結果が出力され、これにより、機械工に、冷却循環路2内に欠陥が存在するか否かを示すことができる。
【0052】
上述の方法は、たとえば漏れまたはコンプレッサの故障のような冷却循環路2内の欠陥を確実に検知する迅速かつ廉価な方法を提供する。方法の実施のためには、単に冷却循環路2内に既に存在する測定装置10を使用すればよく、この測定装置10により、様々な時点での冷媒圧力が測定可能である。有利には、欠陥を突き止めるために、冷却循環路2の構成部材を個別に取り出してテストする必要がない。